平成26年度青少年問題調査研究会(第4回)講演録

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日時:
平成26年12月3日(水)14:00~16:00
場所:
中央合同庁舎第8号館6階 内閣府会議室623
講師:
特定非営利活動法人ReBit 代表理事 藥師 実芳 氏
副代表理事 関谷 隼人 氏
理事 山下 昴 氏
理事 下平 武 氏
旧早稲田大学公認学生団体Re:Bit 2013年度代表 笹原 千奈未 氏
テーマ:
LGBT子供・若者セミナー~性的少数者の現状と支援を学ぶ~

内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付青少年企画担当


  • 司会 それでは、皆さん、ようこそおいでいただきました。ただいまから平成26年度第4回目の「青少年問題調査研究会」を開催いたします。

    本日、皆さん御多用なところ、定員50名を上回る60名の方に御登録もいただいておりまして、大勢の方においでいただきまして、まことにありがとうございます。

    本日は「LGBT子供・若者セミナー~性的少数者の現状と支援を学ぶ~」と題しまして、性的少数者の子供・若者の現状や必要な支援についてお話を伺うべく、特定非営利活動法人ReBit代表理事の藥師実芳様、副代表理事の関谷隼人様、理事の山下昴様、理事の下平武様。2013年度代表、笹原千奈未様の講師の皆様に来ていただきました。

    本日の次第といたしましては、最初に講義その1といたしましてLGBTの基礎知識、それからグループワーク、5班に分かれてライフヒストリーを伺うということになっております。その後、若干10分程度の休憩をいただきまして、講義その2、LGBTが困ること、まとめ、質疑応答という流れを予定しております。

    それでは、以後の進行については、ReBitの皆様にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【講義<1> LGBT基礎知識】

  • 藥師氏 御紹介いただきありがとうございます。NPO法人ReBitの藥師と申します。本日はよろしくお願いいたします。

    本日は、LGBTについてお話させていただきます。LGBTという言葉はなかなか聞きなれない言葉かなと思いますが、LGBTというのはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとった言葉です。同性愛者や両性愛者、性同一性障害者などの性的マイノリティを指します。

    まず、最近の国際的なLGBTの話題を3つご紹介させていただきます。まず1つ目にアップル社のティム・クックCEOがゲイだということをカミングアウトされて、世界的にもビジネス業界においてもすごく話題になっております。

    2つ目に、つい先日、11月末にフィンランドで同性婚が可決されました。ヨーロッパ各国では12カ国目の同性婚の可決です。

    3つ目に、アメリカのギャラップ社が、あなたの国はLGBTにとって住みやすいですかという調査を123か国・地域で実施し、日本は50位という結果がでました。123か国・地域中50位というと中盤よりちょっと上だからいいのではないかと思われるかもしれないのですが、G8の中でロシアと日本以外は21位以上だったのです。なので、先進国と言われる国の中で国際的にも日本はLGBTの話題に関しては遅れをとっていると言わざるを得ません。だからこそ、なぜ今日本でLGBTについて考えていかないといけないのかということをお話しさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

    今日は大人数で5人で来させていただいているのですけれども、一人一人短く自己紹介させていただければと思います。

    私、代表理事を務めております藥師実芳と申します。

    25歳です。自治体や教育現場などで研修講師をさせていただいたり、本日もいらして頂いている新宿区の自殺総合対策会議若者支援対策専門部会の委員をさせていただいています。また、キャリアカウンセラーでもあり、相談支援の現場に4年ほどかかわらせていただいています。ほかにも前職はウェブ広告の代理店で働いていたりとか、好きな食べ物はラーメンだったりとか、漫画でいうと『ONE PIECE』が好きなのですけれども、そういうふうに自身を表現する一軸として、僕はFtMのパンセクシュアルというセクシュアリティをもっています。

    これはどういったセクシュアリティかというと、僕は女性として生まれ、今は男性として生きているトランスジェンダーの一人で、男性も女性もそれ以外のセクシュアリティの人も恋愛対象に入るというパンセクシュアルです。今日はよろしくお願いいたします。

  • 関谷氏 初めまして。特定非営利活動法人ReBit副代表理事の関谷と申します。よろしくお願いいたします。

    僕もふだん出張授業等々やらせていただいているのですけれども、そこで講師としてお話させていただいたりしています。あとは今経理の勉強を個人的にしておりまして、管理部門ですね。経理とかを担当させていただいております。

    あと、今日、狭山市の大学の方がいらっしゃっているのですけれども、僕、地元が埼玉県の狭山市というところなので、勝手に親近感を覚えております。今日はよろしくお願いいたします。(拍手)

  • 下平氏 はじめまして。下平武と申します。

    特定非営利活動法人ReBitの理事をしている大学2年生で、セクシュアリティは男性同性愛者です。僕、長野県の伊那市というところ出身なのですけれども、まず伊那市知っているよという方、いらっしゃいますか。ありがとうございます。うれしいです。その伊那市の名物がローメンというものなのですけれども、ローメン知っているよという方はいらっしゃいますか。結構いらっしゃいますね。これは僕の独自の調査なのですけれども、LGBTとローメン、どちらがよく知られているか調べたのです。そうしたら、LGBTのほうが知られていたのです。出身者としてはローメンも知ってほしいなと思いながら、今日は頑張ってお話しさせていただきたいと思います。

    ReBitではこういう講演活動のほかにも、アメリカ大使館でのLGBTAへの学生シンポジウム。Aというのは同盟というAllyの意味で、LGBTに対して理解してくれたり支援してくれたりするという立場の方々を指す言葉なのですが、その学生と一緒にシンポジウムをやったり、13年度のLGBT成人式や13年度にTokyo Rainbow Weekというパレードとかいろんなイベントをやるのですけれども、そこの実行委員をやったりしました。今日はよろしくお願いします。(拍手)

  • 山下氏 皆さん、はじめまして。山下昴と申します。

    僕、ReBitのほうで理事をさせてもらっていまして、あと、もう一つ授業統括として小学校、中学校、高校、大学、あと教育委員会、市民講座などで、出張授業担当の学生ボランティアと一緒に楽しく授業に行ったりしています。

    僕自身としては、今、小学校と幼稚園の免許を取得しているのですけれども、将来的には保健室の先生…養護教諭になりたいなと思って、今でも大学生として勉強しています。

    大阪出身なので結構イントネーションとか関西弁とか出るかと思うのですけれども、よろしくお願いします。

    僕、セクシュアリティで言いますと同性愛男性ということで、下平と似ているのですけれども、女性になりたいとかはなく、男性として男性が好きな、ゲイとかも言われるのですけれども、そういったセクシュアリティの人間です。今日は皆さんと素敵な時間をシェアできたらなと思います。よろしくお願いします。(拍手)

  • 笹原氏 はじめまして。笹原千奈未と申します。

    ReBitで活動しながら、今、東京女子大学という大学で卒論を必死に書いている4年生です。セクシュアリティがパンセクシュアルと書いてあるのですけれども、男性も女性もその他の性も性別にかかわらず好きになるというようなセクシュアリティになっています。3日前に子犬が家にやってきまして、すごい人生浮き足立っているのですけれども、卒論を3日後までに提出なので、それに向けて今日も生きていけたらと思っています。よろしくお願いいたします。(拍手)

  • 藥師氏 5人で今日は進めさせていただければと思います。よろしくお願いします。

    改めまして、今日は本当にすてきな場をいただき感謝しております。よろしくお願いいたします。

    ということで、最初に、この数字は何の数字なのでしょうというところから始めたいと思います。まず約20人に1人 1 という数字は、日本国内でLGBTだと言われている人数の割合です。人口に換算すると660万人以上がLGBTだと考えられます。しかし、そのうち約7割のLGBTは学生時代にいじめや暴力を経験しています。この7割のうち約12%は担任の教師からのいじめだと言われています 2

    そして、約3人に2人の性同一性障害者は自殺を考えたというデータ 3 があります。特に、希死念慮の高まりは第二次性徴期、小学校高学年から中学生、高校生を含めて、その時代が一番希死念慮の高まる時期だと言われているからこそ、LGBTというのは非常に子供・若者に密接した問題だと考えられます。


    1 電通総研(2012)「LGBT調査」
    2 ホワイトリボン。キャンペーン(2013)平成25年度東京都地域自殺対策緊急強化補助事業「LGBTの学校生活に関する実態調査」
    3 新井富士美・中塚幹也他(2008)「性同一性障害の思春期危機について」『日本産科婦人科學會雑誌』60(2):827 第60回日本産科婦人科学会学術講演会

    今日は本当にさまざまな分野、さまざまな所属の方々にいらしていただいていると思うのですけれども、LGBTという問題は実は本当に各分野にまたがる問題なのです。少しずつではございますが、ご紹介させていただきます。

    まず、教育の中ではLGBTについて知らない教員は9割以上いるのです。9割以上の子供が学校の中でLGBTについて教えてもらえなかったというデータもあります 4

    では、法律の中では、世界の約3分の1の国は、LGBTに対する差別禁止法があるのですけれども、日本はない。法律的に後進的な国だと言われています。

    医療現場では、LGBTの患者がいることがなかなか想定されず、医療関係者にも知識がなかなか普及しないことで医療にかかりづらい現状があります。

    就労に関しましては、求職時に、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの人の40%、トランスジェンダーの人の70%がセクシュアリティに由来した困難を感じるといわれています。5 また、職場や支援機関の無理解などから働く上で非常に困難が多いと言われています。

    震災においては、震災時のLGBTの対応が不足していたことで、例えば避難所での生活でトイレを使えないなどLGBTの方が苦痛を覚えたというような声がたくさんあります。

    例えば地域においても、自治体での取り組みはまだまだ少なく、LGBTの方が地域の中で暮らしづらい現状があります。後ほど自治体の取り組みなどについて詳しく御紹介させていただきます。福祉の分野においても、LGBTの自殺未遂率は非常に高いと言われています。

    ということで、LGBTというのは、本当に各分野にまたがる話題があるのですけれども、今日は特に子供・若者という視点でお話させていただければと思います。

    まず、LGBTの子ども・若者の現状についてお話をさせていただきます。その後、LGBTの子供・若者はどういった人たちなのだろうというのを体感的にぜひ知っていただけたらと思っています。途中で座談会ということで、弊団体の者が中に入ってお話をさせていただくのですけれども、ぜひよろしくお願いいたします。

    その後に、LGBTの子供はどんな課題を持っていて、そのために皆様が取り組んでいただけることを御提案させていただければと思いますので、ぜひお持ち帰りいただければと思います。

    ここからは少し弊団体の御紹介をさせてください。

    私どもReBit(りびっと)といいまして、“Bit”少しずつを、“Re”何度でも繰り返すことで社会が前進してほしい、そんな願いを込めて名づけた団体です。

    「LGBTを含めた全ての子どもがありのままでオトナになれる社会」を目指し、2009年12月、僕が大学2年生のときに早稲田大学の公認学生団体として立ち上げました。2014年3月、今年の3月にNPO法人になり、NPO法人としてはまだ1年経たないような団体です。


    4 ReBit(2014)「出張授業アンケート」
    5 特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ(2014)「LGBTと職場環境に関するアンケート調査2014」

    所属としては、大学生から20代を中心に全国で約250名が参加していて、今日は5人ともLGBTのメンバーなのですけれども、LGBTではない人も多く一緒に活動しています。

    主な活動としては3軸です。1つ目がLGBT教育で、教育現場や自治体、企業など、様々な機関で普及啓発のための研修を行っています。今まで約150回実施してきました。また、横浜市教育委員会様をはじめとした自治体などと協働し、教職員向けの冊子や研修DVDなどの資材作成をしています。

    2軸目が、LGBT成人式です。世田谷区様、世田谷区教育委員会様のご後援を頂き、全国でLGBTの若者に向けたエンパワーメントのイベントを行っています。全国8地域で今まで約20回開催し、約2,000名を動員しています。

    3軸目が、1年強前に始めた事業である、LGBT就活です。就活/就労において困難が多いLGBTも自分らしくはたらける社会の実現を目指し、LGBTの若者へ向けたキャリア開発セミナーを企業と一緒に12回開催。企業に向けた研修や自立就労支援者への研修などを行っています。 以上が私どもの団体についてです。ここからは改めて、LGBTとはなにか、ということを御紹介させていただければと思います。

    まず、LGBTについてお話する前に、「性別って何なのだろう」ということを少し考えていきたいなと思うのです。性別というと、「からだの性で判断するでしょう?」と思われがちかと思うのですけれども、実は4つの軸で考えることもできます。

    1つ目がからだの性。内性器や外性器、性染色体で判断される性別です。

    2つ目がこころの性。自分の性別をどのように認識しているかということです。

    3つ目が好きになる性。どのような性別の人を好きになるかがこれにあたります。

    4つ目が表現する性。社会的性とも呼ばれるのですけれども、例えば服装だったり、しゃべり方だったり、ふるまい方等で自身の性別をどのように表現するかということで、この4軸で性別というのを考えることができるのです。

    LGBTというのは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとった言葉です。レズビアンは女性同性愛者、ゲイは男性同性愛者、バイセクシュアルは両性愛者、トランスジェンダーはからだの性とこころの性が一致しない人々を指します。

    性同一性障害は一定の基準を満たしたトランスジェンダーに対する医学的な診断名です。

    先ほど性の4軸についてお話しましたが、最後の表現する性を割愛し3軸で表にしてみました。このように、からだの性、こころの性、好きになる性を掛け合わせ、セクシュアリティを表現できます。

    こういうふうに見ていただくと御理解いただけるかと思うのですけれども、LGBTの人もそうでない人も既にセクシュアリティを持っていて、多様な性とか多様なセクシュアリティという話をするときに、それはLGBTだけを指すのではなくて、LGBTでない人にも当てはまる概念なのです。

    僕のセクシュアリティを御説明させていただくと、僕はからだの性は女性として生まれました。でも、自分のこころの性は男性と認識していて、男性も女性もそれ以外のセクシュアリティの人も恋愛対象になるので、実はこの表の中に入っていないのです。というふうに、表で示したセクシュアリティは男/女の二分法でわけた便宜上のものであり、実際はもう男女という区分だけでは分け切れず、中間にいる人や枠組みにあてはまらない人もいて、人の数だけセクシュアリティがあるといっても過言ではありません。

    上記の表には書ききれない多様なセクシュアリティの一例を紹介します。からだの性が男女どちらかに分け切れない人たちのことを、医学的な診断名で「性分化疾患」と言い、約2000人に1人くらいの割合で出生すると言われています。また、こころの性が男女どちらかに分け切れない人たちのことを「Xジェンダー」と呼んだりもします。Xジェンダーの方々は、男性と女性の中間だというふうに感じる人、両方だと感じる人、どこにも属さないと感じる人等いろいろな人がいます。他にも、いかなる他者も<好きになる性>の対象とならない「アセクシュアル」という人が、約100人に1人くらいいると言われています。

    ここのLGBTの説明の中でたくさんの用語が出てきたと思うのですけれども、ここでお伝えしたかったことは大きく2つです。

    1つ目が、性別を判断するときにからだの性別だけでは判断できないということ。

    2つ目に、御紹介したたくさんのセクシュアリティのように、一人一人多様なセクシュアリティを持っているということです。

    よく、「メディアの中や海外ではLGBTがいるのは知っているけれど、身近にLGBTはいないから、あまりいないんじゃないの?」と言われます。

    他のマイノリティと言われる子供たちと比較してみたいなと思います。小中学校の不登校児童生徒は100人中約1人 6 と言われています。発達障害の児童生徒は100人中約6.5人 7

    LGBTの人というのは、先ほども申しましたとおり100人中約5.2人なのです。約20人に1人ということは日本に住む人の約660万人がLGBTであると想定でき、身近にいるのではないかなと考えられます。

    では、この子供たちには現状どういったことが起こっているのかということなのですけれども、LGBTの話をすると、それは性の話、恋愛の話だから子供に関係ないのではないかとよく言われます。しかし、LGBTの話やセクシュアリティの話というのはアイデンティティの話なのです。進路だったり就職だったりパートナーだったり老後だったり、ライフプラン全てにかかわる話だからこそ、自身がLGBTであることを否定的に捉えること、捉えられることは自尊感情の低下につながりやすいです。実際、学校現場でいじめや暴力を受けたことがあるLGBTというのは約68% 8 、不登校を経験したことがある性同一性障害者は約29%、自傷・自殺未遂を経験したことがある性同一性障害者は約28% 9 、希殺念慮を抱いたことがある性同一性障害者は約69% 10 ということで、先ほどお話させていただいたとおり、希殺念慮のピークというのは第二次性徴期だと言われています。


    6 文部科学省(2014)「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」
    7 文部科学省(2012)「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」
    8 ホワイトリボン。キャンペーン(2013)平成25年度東京都地域自殺対策緊急強化補助事業「LGBTの学校生活に関する実態調査」
    9 中塚幹也(2010)「学校保健における性同一性障害:学校と医療の連携」
    10 新井富士美・中塚幹也他(2008)「性同一性障害の思春期危機について」『日本産科婦人科學會雑誌』60(2):827 第60回日本産科婦人科学会学術講演会

    LGBTの子供・若者はハイリスク層と捉えられていて、国の中でも取り組みの必要性というのが明記されています。例えば平成22年度、子ども・若者ビジョンの中では、「性同一性障害者や性的指向を理由とした困難な状況に置かれている者等に特に配慮が必要な子供・若者に対する偏見・差別をなくし、理解を深めるための啓発活動を実施します」と書かれています。つまり、子供・若者の課題のひとつとしてLGBTが挙げられているのです。

    その後、平成24年度、自殺総合対策大綱の中で「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、教職員の理解を促進するということで、自殺におけるハイリスクで、だからこそ教育現場で取り組まないといけない」と書かれています。

    しかし、教育現場は今どういうふうになっているかといいますと、LGBTがいるということを知っている教職員というのは実は約9%なのです。学校現場の中でLGBTや多様な性に関して知る機会があった生徒というのも同様に約9%です。ホモネタやオカマ、おとこおんな等の言葉を見聞きしたことがある生徒というのは約74%ということで、ほとんどの学校現場でLGBTに対する揶揄が今もなお飛び交っていると考えられます 11

    「20人に1人といわれても、会ったことがないけどね」とよく言われるのですけれども、24時間無料電話相談「よりそいホットライン」の性別や同性愛に関わる相談の専門ラインには年間約63万件の架電がありますが、受話件数の約半数は10・20代からの電話です 12 。 LGBTの子どもや若者が身近にいないのではなく、いないと思われているからこそ起きている問題というのがたくさんあると考えられます。

    ということで、ここまでがすごく駆け足ではあったのですけれども、LGBTの子供がどのような現状を抱えているのかということをお話させていただきました。ここからは私ども一緒にテーブルに入らせていただいて、実際に子供時代どのような経験をしたのか、今、若者としてどのような経験をしているのかということをお話させていただければと思います。よろしくお願いいたします。

    (ライフヒストリー)

    (休憩)


    11 ReBit(2014)「出張授業アンケート」
    12 よりそいホットライン(2013)「平成25年度報告書」

【講義<2> LGBTが困ること】

  • 藥師氏 ここからはLGBTの子供・若者が困りやすいことは何かということを一つ一つセクターに分けて御紹介します。

    まず、LGBTの子供が困りやすいことはどのようなことがあるのかを羅列させてはいただいているのですけれども、体験からお話しさせていただきたいなと思います。 山下さん、何か子供のころ困ったことはありますか。

  • 山下氏 たくさんあります。中でもすごく思い出に残っているのが内科検診事件というものがありまして、中学校2年生のときだったのですけれども、朝のホームルームのときに今日は内科健診があるよと担任の先生に言われて、5~6時間目にやるから、男子は面倒くさいから昼休みの間に上半身裸になって保健室で待っておけと言われたのです。僕はそれがすごく嫌だったのです。

    僕、幼稚園のときから男の子と一緒にお風呂に入ろうとするとすごく嫌でした。短絡的に考えたら、僕は好きになる性が男性なので、その男性と一緒に裸の時間を共有できるといったら嬉しいんじゃないの?ともしかしたら思うかもしれないのですけれども、僕にとってはとても辛い時間でした。というのは、僕にとって恋愛対象の人たちから自分の裸を見られることの苦痛。ほとんどの人は僕の裸などは気にしていないのでしょうけれども、僕はとにかくそれが嫌で、中学校のときも自分が同性愛者だというのは気づいてはいなかったのですけれども、心のレベルで嫌だと思ったので、相談に行ったのです。重苦しい職員室だったのですけれども、職員室へ行って担任の先生に、僕は内科検診でみんなと裸でいるのが嫌なので、もしよかったら後回しとかにしてもらえませんかねと言いました。担任の先生は男性に見受けられる先生だったのですけれども、そうしたら、その人が「何を言っているのだと、乳首が3つあるわけでもないだろう」と。今でこそ笑い話なのですけれども、「そんな男らしくないことを言っているからお前はいじめられるのだ」ということまで言われて、近くにいた先生たちもくすくすと笑っていて、対応してもらえないだけではなくて馬鹿にされ、傷つけられ、そういう先生にだけはなりたくないなと思いながら、反面教師にして今自分の教職の道を歩んでいます。

    というようなことはありました。

  • 藥師氏 ありがとうございます。

    今、山下さんが言ってくれたのは、男女で分けられるというトイレだったり制服だったり健康診断だったりというところとか、身近に相談できる人がいない、教職員に相談しても否定されるとか、それはなぜかということから考えると、LGBTがいないことが前提となって、男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく、みんな異性愛者でしょうということが前提となっているからこそ、そういった現状が起きるのかなと考えられます。

    関谷さん、どうですか。

  • 関谷氏 僕は最初の自己紹介でセクシュアリティを言い忘れたのですけれども、からだの性別は女性で、こころの性別は男性なのですけれども、僕が一番つらかったのは制服ですね。僕の通っていた中学校は制服がありました。まさかスラックスにしてくださいと相談できると当時自分で思っていなかったのです。自分で思い込んでいたので、相談せずに嫌々スカートをはいて通っていたのですけれども、高校受験の際に、一般的な制服のある高校と私服の高校があって、僕、ずっと乗馬を小学校のときから習っていたので、できれば馬術部のある高校に行きたかったのですけれども、そこは制服のある高校だったのです。それがネックになって結局制服のない共学の高校に僕は進学をして、選択肢が減ってしまうというのはすごくもったいないことなのかなと思います。
  • 藥師氏 ありがとうございます。

    下平さんはどうですか。

  • 下平氏 僕、セクシュアリティは男性の同性愛者なのですけれども、僕は幼いころから両親がいなくて、祖母と妹の3人暮らしだったのです。そのとき、僕は祖母大好きっ子なので、育ててもらってどんな恩返しができるだろうと思ったら、やはりひ孫の顔を見せることだなと思っていたのです。おばあちゃんも、あなたは結婚して幸せな家庭を持ちなさいねとよく僕に言ってくれていたのですけれども、高校生ぐらいで自分がゲイであると思ったときに絶望しましたね。なんで生きているのだっけと思うぐらいに。

    結婚できないと思ったし、子供も持てないと思ってしまったのです。LGBTの人が大学を出て就職をして、どういう大人になっていくのか全く見えなくて、自分がこれからどうやって生きていくのか全くわからなかった。勉強するときとかいろいろ考えてしまって、これが非常に苦しかったです。そんな経験があります。

  • 藥師氏 ありがとうございます。

    今の下平さんの話は、やはり自分自身、正しい知識がなくてLGBTもいないと思っているからこそロールモデルが見えないことで将来生きていけないのではないかという不安に繋がったり、選択肢が狭まったりしていくというケースでした。

    笹原さんはどうですか。

  • 笹原氏 ありがとうございます。私は女性で、男性も女性もその他の性も好きになるよというセクシュアリティなのですけれども、私の場合、4番の身近に相談できる人がいないというところに当てはまる話があります。高校のときの担任の先生にカミングアウトをすることがあって、そのときに先生から、「お前、今受験勉強で疲れてしまっているだけだよ」ということを言われて、すごい困ってしまいました。そのときに実際私はほかの問題とかもいろいろ重なって自傷行為が常習化しているような状態ではあったのですけれども、先生とかからはすごい優等生として見られていて、そういう問題は割と見えないことが多いのかなという部分で、セクシュアリティを否定されたということで、そのほかの相談も何もできなくなってしまうというような状態があったのかなと思います。
  • 藥師氏 ありがとうございます。

    トイレやお風呂などの施設や役割などを男女で分けられることや、男らしさ、女らしさの押しつけ、「みんなセクシュアルマジョリティでしょ」とLGBTがいないことが前提となったり、「誰もが結婚して、子供を産んで家庭を持つものでしょう」という考えが前提となると、LGBTの子どもは困りやすさを感じやすいです。教職員や保護者が正しい知識を知らないし、教えてもらえないから正しい知識にアクセスできない、だからこそ身近に相談できないと思って、実際相談しても笹原のように否定されるケースもあります。

    自尊感情が低下し、どんどん自傷行為が常習化したり、自殺未遂につながったり、ほかにも人間関係構築の障壁などにつながりやすいというのがLGBTの子供の問題かと思います。 LGBTの子どもを守るためにできることを以下3つにまとめました。

    1つ目に、LGBTの子供を守るためには、まず教育関係者がLGBTについて知る機会が増える必要があると思います。先生が知らなかったら子供に教えることもできません。先ほども述べたように、今、約20人に1人の割合でLGBTの子供がいることを知っている教職員は1割未満です。教職員の養成過程の中でLGBTについて伝えたり、教職員への人権研修の中にLGBT研修を入れたり、資材を提供していただくなどで知識をつけていただく。そして、LGBTの子供へ適切な対応や支援をしていただければと思います。

    2つ目に、子供がLGBTについて知る機会を提供することが必要です。今の教科書の中では第二次性徴期になると誰もが異性を好きになるという記述があったりして、LGBTがいないことを前提とした教科書になっていますが、LGBTが約20人に1人いることを前提とした教科書づくりが必要になってくるのではないかと思います。

    2016年度に学習指導要領が改訂されますが、義務教育課程の中でやはり第二次性徴期に死にたいと思うLGBTの子供が多いからこそ、義務教育課程の中での情報提供というのが急務になってくるのではないかと考えられます。

    3つ目、LGBTの子供と家族の支援体制を整えるということ。LGBTの子供だけでなく、家族も正しい知識や相談できる相手がいないからこそ、養育環境に問題があったのではなどと家族が抱え込み孤立していくケースは少なくありません。そういったように、家族や保護者もすごく孤立しやすいからこそ、家族会だったり、支援体制というのも各地域でつくられていく必要があります。

    ここからはLGBTの若者が困りやすいことについてお話します。先ほども御紹介したとおり、求職時に、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの人の40%、トランスジェンダーの人の70%がセクシュアリティに由来した困難を感じるといわれています。転職率も高いと言われていて、なかなか安定して安全にはたらける環境がありません。

    僕自身、就活/就労の際に困ったことがあります。僕は前職はウェブ広告の代理店ではたらいていました。就職活動の際は、50社程度受けて全ての企業で性同一性障害であり、戸籍上は女性ですが男性としてはたらきたい旨を伝えました。会社によっては、30分の面接の予定にも関わらず、最初の2分で「もう帰ってください」と帰らされたり、役員の方との最終面接の際に、「あなたの体はどうなっているのですかと、子供は産むのですか」という、セクハラである質問をされたりしました。有り難いことにカミングアウトした上で理解の深い会社に入社しましたが、入社後も一部の無理解な上司からパワハラやセクハラを受けることもあり、LGBTはパワハラやセクハラの対象になりやすい、また差別、偏見の対象になりやすいというのを肌身で感じました。

    関谷さん、どうですか。

  • 関谷氏 僕は前職が大手外食系企業でした。まず、就職活動をしようと思ったときに、大学などで開催される就活セミナーで配られる冊子の中には、男性の就活生の絵と女性の就活生の絵が載っていて、女性の就活生はメイクをしないといけないと書いてあったりするのですけれども、僕はまず男性と女性どちらで就職活動すればいいのかと思って大学のキャリアセンターに相談に行ったのです。僕、通っていた大学は2万人ぐらい学生がいるので、単純計算でも例年1,000人ぐらいはLGBTの学生がいる計算にはなるのですけれども、「今までLGBTの相談に来た人はいましたか」と聞いたら、「1人も知らないです」とおっしゃっていました。キャリアセンターの方はすごく親身に相談には乗ってくださったのですけれども、やはりそれだけのLGBTの学生がいるのに相談がないということは相談しにくい現状があると感じます。
  • 藥師氏 ありがとうございます。

    今の関谷さんの話は、自立就労支援機関に理解がないことで相談しづらいというケースでした。

    山下さん、どうですか。

  • 山下氏 僕は大学卒業後、養護教諭を目指し専門学校へ通っているためまだ就職活動をしていません。しかし、社会人のゲイの友達も多く、人間関係で困るという話をよく聞きます。すごくソフトな部分なのですけれども、例えば仕事終わりに上司に無理やりキャバクラや風俗に連れて行かれたり。それが強要されるのはパワハラやセクハラになると思います。

    また、例えばゲイの友人の話で、「職場で週末何をしていたの」という話になった場合、実は同性のパートナーと遊んでいても、「彼女とどこか行っていました」とか、「友達とドライブに行っていました」とか嘘をつかねばならず、最初は小さい嘘であったとしてもそこから話が広がっていくので、嘘を積み重ねていかないといけないというしんどさがあると言います。また、職場である「いつ結婚するの」などの話題に対しても、「結婚したくても同性婚は認められていないからできないんだけどな」などと思いながら、曖昧に答えたり嘘をつかねばならないのは、本当に人間関係がつくりにくいだろうなと感じています。

  • 藥師氏 ありがとうございます。

    LGBTの若者が困りやすいことについてまとめさせていただきます。特に就労の現場においては、職場や自立就労支援機関に理解がないからこそ、採用における差別や職場の待遇における差別があったり、自立就労支援機関から適切な支援を受けられないことですごく困りやすいです。差別やセクシュアルハラスメント、パワーハラスメントなどを受けやすいですし、あとは福利厚生がLGBTに対応していないことから、安全に働くことができません。

    福利厚生がLGBTに対応していないということは、例えば同性のパートナーは今の日本では法律上家族にはなれないため、法律上家族を前提とした福利厚生や制度ではパートナーが倒れたときに会社を休んだり、忌引き対象になりません。また、転勤の際に、同性パートナーと一緒にいけない、更に海外の際にはビザの問題が生じたりと、福利厚生がLGBTを想定していないことはLGBTが安心して働くことができないことにつながります。

    人間関係構築が難しいという点に関しては、山下さんが話してくれたところでもあるのですけれども、自分に関し嘘をついたりとか、自分を開示できないことで人間関係がどんどん難しくなっていて、転職などに結びつきやすいと言われています。

    現状の改善のために、できることとして3点を挙げさせていただきます。

    差別の禁止を明文化するということ。いろんなレベルでの明文化はありますが、職場はもちろん学校や地域などでLGBTを差別してはいけないというLGBT差別禁止法を、まず国のレベルでつくっていただけるとすごくありがたいです。既に多摩市様や文京区様など、自治体でLGBTへの差別禁止を条例の中で明文化しているところもあります。

    また、既に始まっている取り組みとして企業の倫理規定の中でLGBTへの差別をしてはいけないことを明確化している企業も国内にも数社あります。

    LGBTもはたらきやすい社会の実現のために、職場の理解促進や対応として、職場や自治体での研修実施や、職場や自治体での相談窓口の明確化、福利厚生の改訂などが必要です。 また、若者サポートステーションやハローワーク、キャリアセンターなど自立就労支援機関での理解促進や対応というのも必要です。職員や相談員への研修実施や、LGBTの若者の相談窓口の明確化をしていただくことで、相談できるのだな、聞いていただけるのだな、二次被害に遭わないのだなと安心し声をあげることができます。

    駆け足ではあるのですけれども、次に地域で暮らす上でLGBTの子供・若者が困りやすいことはなんだろうということについてお話をさせていただきます。LGBTが地域社会の中で困りやすいことは下平さん、ありますか。

  • 下平氏 僕は長野県出身で、先ほどロールモデルが見えないというようなお話をしたのですけれども、まずLGBTという言葉を長野県で知ることができませんでした。東京だとセクシュアルマイノリティの相談窓口を掲載したフライヤーが置いてあったり、どこかに行けばパンフレットがあったりとか、中高生が集まるピアサポートをやっている団体もあったりするのですけれども、当時自分で調べた限りでは長野県で見つけることはできなかったので、日本で男の子を好きな男の子、当時はゲイという言葉を知らず自分を説明する言葉がなかったので、男の子を好きな男の子は僕だけなんだと思っていました。なので、都市以外の地域にも情報が届くといいなと思っています。
  • 藥師氏 ありがとうございます。

    今、下平さんが言ってくれたように、各地域の中でLGBTが想定されていないことで、男性同士、女性同士で住むことだったり、見た目の性別と戸籍上の性別が違うことによって、各地域での人間関係を難しくします。

    地域のつながりが強い地域においては、隣家や地域の理解がないことでそこに住めないという事態も出てきます。しかし、相談窓口、もしくは担当課が設定されていない自治体がほとんどですので、相談できないと感じたり、相談したいと思ってもここは担当課ではないのでということで相談できないケースも少なくありません。ほかにも差別や偏見から守るための法律や条令がないからこそ相談をしても対応できない現状もあったりします。

    また、医療現場で困りやすいことも少なくありません。僕のケースなのですが、何年か前に、手足のしびれがひどかった時期に、大学病院に行きMRIなどをとっても、原因がわからないことがありました。男性らしい格好で行っていたのですが、戸籍上は女性であるため、問診の際に医師から、「もしかしたら性同一性障害ですか」と訊かれました。「そうです。性同一性障害で、18歳から男性として生きています。しかしホルモン治療などの治療は一切していません」と答えたのですけれども、その医師が性同一性障害に関してあまり知識がなかったのか、「手足が震えるのは性同一性障害だからではないか。そのストレスから手足が震えているのでは」とおっしゃられました。「僕は小学校からずっと性別違和を持っていますし、治療もしていないため副作用などの可能性もありません。性同一性障害だからといって、いきなり手足は震えないと思います」とご説明をさせていただいても、聞き入れていただけず、結局帰されてしまい、今では症状はないのですが、原因はわからないままです。

    医療関係者がLGBTに関する知識や患者にLGBTがいるという意識がないことで安全に治療を受けられないということは少なくありません。また、LGBTが想定されていない医療デザインのため、自分の戸籍名で呼ばれるのが苦痛だとか、保険証の男女欄が苦痛だとか、異性と性交渉はしていないけれども、同性とは性交渉しているけれどそう記載する欄はないからどうしようとか、そういったことで適切に医療を受けられないということもあります。

    また、日本では性同一性障害者への手術などの治療費が保険適用されていないため、医療費が数百万円~一千万円とかの単位でかかってしまうことも大きい問題となっています。 また、LGBTが家族を持つ上で困りやすいことも少なくありません。まず同性婚やパートナーシップ法が日本にはないということが大きな原因となっています。こういったことで困りやすいことはどうですか。

  • 山下氏 同性婚とかパートナーシップ法がないのはG8の中では日本とロシアだけなのですけれども、僕も将来をそろそろ考えるようになってきて、しんどいなと思っています。

    今、僕、おつき合いしている同性のパートナーがいて、彼とは将来も考えています。しかし、同性婚やパートナーシップ法がないということで、共に生きるための社会保障制度がありません。

    それが受けられないとどういうことが起こるのかというと、例えば僕のおつき合いしているパートナーが事故に遭って集中治療室に入っても「あなたは他人でしょう」と言われて入れなかったりとか、パートナーが亡くなっても、それすらも知らされない可能性があるとか、財産を相続できないとか、2人で子供を持つ、2人で家を買う、2人名義で何かをするというのもできないとか、共に生きる上での保障や権利がなくいろんな生きづらさを感じます。

    また、そもそもそうやって同性婚とかパートナーシップ法がないがゆえに、誰かとともに生きていく将来を想定できないLGBTも多いと感じます。今まで僕がおつき合いしてきた男性の中にも、「自分たちには将来がないからね」とかそういうふうな発言をする人はたくさんいました。交際関係という人間関係を築きづらいというような、すごいソフトな面でも僕は困っているなというようなことがあります。

  • 藥師氏 ありがとうございます。

    日本で同性婚やパートナーシップ法がないことというのは、今言ってくれたとおり、法律上家族になれないということで、家族における保証が一つもないということなのです。

    なので、パートナーが入院手術などをする場合も何十年も連れ添っているのに医療上の同意権がない、何十年も連れ添っているのに面会もできない、亡くなったとしてお葬式に行けないとか、お墓の場所がわからないとかというケースも少なくありません。

    2人の名義で家を買ったり財産を持つことができないのです。ということで、どちらかの名義で家を買ったりすることになるのですけれども、その方が亡くなったら、一緒に出資してきた家であっても追い出されてしまうというケースもあります。また、財産相続などもできません。

    ほかにも税制優遇や公営住宅など家族に対する保障というのも受けられません。どれだけ一緒に生きていったとしても、生きていくとしても、その人たちとともに生きる上での保障が一切ないということが同性婚やパートナーシップ法がないということなのです。

    子育てをする上での困難と書いてあるのですけれども、これはどうですか。

  • 関谷氏 今、山下さんが言ってくれたことの延長線上になってしまうかもしれないのですけれども、子供を育てるのは、やはりお金もかかりますし、様々な面において安定しないと難しいと最近感じます。僕は戸籍上同性のパートナーがいます。両方戸籍は女性なのですけれども、例えばどちらかが家を買って、どちらかが亡くなったらその家から追い出されてしまうという状況で子供を育てるのはすごくハイリスクだなと思うのです。

    例えば子供をどちらかが産んで、どちらかがシングルマザーの状態で親権を持って2人で育てていたとして、産んだ親権を持っているほうが亡くなった場合、親権を必ず産んでいないほうのもう1人が持てるかというと持てないので、そういうことを考えると、異性カップルに比べてやはり子供を持つことに対するハードルがすごく高いと感じます。

  • 藥師氏 ありがとうございます。

    今、子育てをする上での困難というのを言ったときに、「LGBTは子育てできないでしょう」と思った方もたくさんいらっしゃると思うのですけれども、日本でも子育てをしているLGBTは既にたくさんいます。また、アメリカの調査では既に約600万人の子供・若者がLGBTの親を持っていると回答しています 13 。また、LGBTのうちの約300万人が子育てに参加しているというケースもあって、LGBTは世界的に見ても日本の中でも、既に子育てをしている存在です。

    という中で、関谷さんが言ってくれたように、同性パートナーと子育てをする場合、共に親権をもつことは現状日本ではできないので、共に子育てをしていたとしても、親としての権利だったり保障だったり義務だったりというのを保証していただけなかったり、親権を持つ方が亡くなった場合親権を得られず子どもと離ればなれにならざるを得なくなったりすることがあります。

    精子提供で子供を持つケースというのは海外でも多いのですけれども、日本では精子提供は婚姻している男女にしか認められていません。特別養子縁組も婚姻している男女でしか認められていません。里親になりたいと思っても、男女のカップルしか里親になれた事例がなく、LGBTが日本で子育てに参加するためのハードルが非常に高い現状があります。

    また、既に国内で子育てをしているLGBTにおいては、周りに保護者だと承認してもらえないことで、「なんで同性同士で一緒に住んでいるのか」とか、「なんで保護者の参観にあなたが来るのか」ということで、周りに理解されないことで生じる困難というのがたくさんあります。

    以上がLGBTの困ることでした。ありがとうございます。

    ここからは、国内でのLGBTの取り組みということで御紹介させていただきたいと思います。

    まず国内での取り組みということで、国のレベルの取り組みでは、2010年8月、最初に御紹介させていただきました子ども・若者ビジョンに性的マイノリティに関する記述が入りました。

    2012年8月、自殺総合対策大綱に性的マイノリティに関する対策の必要性が書かれており、教職員の理解促進の必要性についても書かれています。

    では、最近の話題になってくると、2013年の12月、男女雇用機会均等法の改正により、性的マイノリティに対する差別的な言動や行動についてもセクハラであるということが認められました。今までは男女間の言動のみがセクハラとされていたのですけれども、たとえば同性同士であったとしても、職場や、学校、地域などで、「お前、もしかしてあっち系なの」とか、「ずっと結婚しないけれども、ホモなの」とか、「そんなことを言っていたらオネエだと思われるよ」など、そういった発言は全てセクハラであると規定されて、職場や地域で取り組まなければならない課題の一つにとなりました。


    13 Gary J.Gates(2013)「LGBT Parenting in the United States」the Williams Institute

    2014年6月、これも本当にすばらしい取り組みだと思うのですけれども、文部科学省様が小中高校での性同一性障害の子供に対する対応に関する全国調査をされた『学校における性同一性障害に係る対応に関する状況調査』を発表されました。全国で606件の対応事例が出てきました。小中高校の現場で少なくとも606件は性同一性障害の子どもに対する対応がなされたということの可視化により、教育現場の中での取り組みが促進されないといけないことが明確化されました。

    日本でLGBTの取り組みをしている自治体はまだ少ないことが現状ですが、ここからは自治体におけるLGBTへの取り組みをグッドプラクティスということで御紹介させていただききます。大阪府淀川区様がLGBT支援事業をやっております。2013年9月に、LGBT支援宣言を発表し、LGBTに関する正しい知識と理解を深め、少数者の人権を尊重したまちづくりを進められています。

    この取り組みは、LGBTだけではなく、多様な方々がいきいきと暮らせるまちを目指しています。淀川区様として、意見交換会、啓発活動、電話相談、コミュニティスペースなどについて取り組まれています。意見交換会をする中で、具体的な政策課題を発見するきっかけになったということです。

    2つ目は、LGBTの差別禁止の明文化に取り組まれている東京都多摩市様と文京区様の事例です。多摩市様では、「多摩市女と男の平等参画を推進する条例」という中で、性的指向と性的自認による差別の禁止が盛り込まれています。文京区様では、同様に男女平等参画推進条例案の中で、性的指向や性的自認に対する差別的な取り扱いの禁止を明記しています。

    また、罰則規定はないですが、学校や職場でLGBTであることを理由に例えば気持ち悪いと言われたり、いじめを受けたりした場合、申し立てをすれば区が調査して加害者や事業者に注意喚起できるとのことです。自治体がLGBTに対する差別の禁止を明文化してくださることは非常に心強いことだと感じます。

    3つ目の事例は、相談窓口の明記です。世田谷区様、川崎市様、相模原市様、横須賀市様、富田林市様、鹿児島市様などの自治体が取り組まれています。世田谷区様では、2013年夏より、自治体ホームページなどで「性的マイノリティ等の相談」窓口を明記し案内しています。また職員向けの研修を毎年実施しているとのことです。自殺の可能性が高いLGBTには専用の窓口が必要ということと、なかなか役所に対して、地域に対して、LGBTの方はどんなニーズがあるかと可視化しづらいのですけれども、窓口を設定することで、こういったことで困っていて、こういった対応が求められているのだというのが地域のレベルで理解できるというところが非常に有益であるとのことです。

    川崎市様は、2010年5月、性同一性障害に関する相談窓口というのをホームページ上で明示しました。それまで1件だった性同一性障害に関する相談が79件に増加したということで、相談窓口が明確化されることで困っている人たちが地域に声を上げやすいということがみられる事例です。

    最後の事例は、LGBTに関する教材作成配付をしている神奈川県様の事例です。神奈川県教育委員会様が作成する人権教育指導資料及び学習教材の中で教職員向けの研修だったり、小中高生に向けた指導案やワークシートを紹介した、資材があります。その中にいろんな子供の人権課題やいろんな人権課題と同列に、性的マイノリティの人権の指導案やワークが入っています。人権課題の中の一つにLGBTを加えていただいている点、教えるための指導案やワークシートがパッケージ化されている点、県内の全学校の先生に届いているという点で本当にすばらしい事例だと思います。

    ここまで各自治体様の素晴らしい事例を御紹介させていただきました。なぜ自治体が取り組まないといけないかというと、LGBTの情報はウェブなどにも探せば正しい情報もみつかりますが、例えば子供や、高齢者、貧困層の中でネット環境がない方などでは、LGBTの情報にアクセスができない現状になっています。だからこそ自治体を通じ、取り組みや情報提供がなされ、支援の体制が整えられていくことが非常に大事なのではないかと考えられます。

    最後になります。国内でもこのようなすばらしい取り組みもあるかと思うのですけれども、世界的にLGBTはどういうふうに取り組まれているのかについてお話をさせていただきます。

    差別禁止法がある国、地域は65カ国及び85地域ということで、世界の約3分の1にはLGBTを守るための差別禁止法があります。わかりづらいのですけれども、同性婚やパートナーシップ法がある国、地域というのも31カ国及び35地域となっています。日本は両方認められていないですが、同性婚やパートナーシップ法がないのは、先ほど山下さんが言ったとおり、G8の中では日本とロシアだけなのです。LGBTの人権において日本は後進国だと国連などからも注意喚起がされている状態が長年続いています。

    ロシアにおいてはソチオリンピックの際に反LGBT制度が人権侵害であるということで国際的な非難を浴び、開会式でいろんな国の首相が出席しないなどの事態が起りました。その動きも一端を担い、国際オリンピック委員会は、オリンピック開催都市との契約の中に人権保護の条項を盛り込みました。その中で性的指向による差別禁止が明文化されています。2020年の東京オリンピック開催に向けてLGBTの人権も含めてどんどん推進される必要があるからこそ、今取り組みが必要だと考えられます。

    子供・若者という視点から、教育における世界の良い事例の紹介をさせていただきます。

    教育現場啓発として、アメリカのGLSENというNPOがあります。1994年、20年前に設立されたGLSENは、年少のLGBTのサポートや教育現場でのLGBTの取り組みの向上に働きかけています。ロビーイングや、中高生のLGBTコミュニティの組織化、教員を対象とした教育、一般の人々に対する教育、カリキュラムや教材の作成や、全米への学校調査を実施しています。この全米への学校調査の中で、LGBTを含む多様性教育に積極的な学校は生徒の学校への愛着度が高く、成績もよく、生徒の心理面でもより健康な状態にあるという結果が出ています。

    冒頭でお話させていただいた通り、LGBTの子供はいじめや不登校の割合が非常に高いので、学校における取り組みが進んでいないということは、学校に行く機会や教育機会が奪われることにつながります。なので、現状改善のためにアメリカではGLSENが教育現場に働きかけています。

    次は欧米の幼少期からのLGBT教育の例です。よく、「LGBTの教育は何歳からすればいいのだろうね。まさか幼稚園は早いよね」と言われるのですが、例えばオランダやアメリカでは、幼稚園や小学校から絵本などの教材を用いてLGBTについて子供に教えるケースもあります。多様な家族という形で、ダイバーシティを伝える一環として、「車椅子に乗っているお父さんもいるよね」とか、「国籍の違うお父さんとお母さんもいるよね」、「血のつながっていない家族がいるよね」などという中で、「パパ2人の家族もあるよね、ママ2人の家族もあるよね」とLGBTの家族があることを紹介します。日本でもこういったLGBTを題材とした絵本があります。

    今日はLGBTに対してこのような取り組みをしていただきたいですとか、こういうことで困りますということを中心にお話をさせていただきましたが、LGBTに取り組むことの良い面を最後にお話させて頂きます。

    まず、第1は、約20人に1人のLGBTの子供・若者及び大人たちの人権が守られることで、社会で活躍できるということが何よりもの意義です。ほかにも、企業内における調査に、LGBT施策があるところは他のダイバーシティに関しても意識が高いという調査もあり、LGBTでない人にとっても有益だと考えられます。

    ほかにもLGBT市場というLGBTの消費市場は、日本で約5.7兆円あります 14 。この数字はどれくらいの規模かというと、お酒の市場、酒類市場が約6兆円と言われているので、ほとんど同じぐらいあるのです。ここを開拓できるかというのがビジネスの世界では大きな話題になっています。

    実際、同性婚も非常に経済効果が高いと言われていて、2011年7月にニューヨーク市で同性婚が成立して以降1年間でニューヨーク市が発行した結婚許可証のうち約1割は同性婚で、1年間で経済効果は約202億円だったと言われています。日本では同性婚やパートナーシップ法はないのですけれども、同性同士で結婚式を挙げるカップルも少なくありません。日本でもここに1つ法律が足されることで大きい経済効果が出るのではないかと考えられます。


    14 電通総研(2012)「LGBT調査」

    最後に、LGBTと子育ての関係です。既にアメリカでは、先ほども申しましたように、約300万人のLGBTが子育てをしていて、約600万人の子供がLGBTの保護者を持つと言われています。日本でも既にLGBTが子どもを持つLGBTファミリーは少なくありません。日本においても、特別養子縁組や里親制度をLGBTカップルも利用できるようになればもっと広く子育てに参加ができると考えられます。

    最後にまとめさせていただきます。

    LGBTも包括された社会のためにできることということで、いろんな分野で考えてきました。いろいろな御所属があるかと思いますので、御自身の分野のものを持ち帰っていただければと思います。

    まず、教育においては、教職員へ教員養成機関や研修において知識提供をする。児童生徒への知識提供ということで、教科書や学習指導要領に記述したり、義務教育課程で正しい知識を提供するということ。

    2つ目、法律においては、既存の条例、法律にLGBTを含んでいくということ。またLGBTの人権を守るための法律、差別禁止法やパートナーシップ法、同性婚などの制定。あとは少年院や刑務所におけるLGBTへの配慮ということで、少年院や刑務所の中でもこころの性だったりセクシュアリティに配慮した対応を行うということも大事だと考えます。

    3つ目、医療においては、まず医療者がLGBTについて知り、医療者がLGBTの患者を想定すること。また、医療現場で法律上家族ではない家族も想定すること。性同一性障害者の治療費の保険適応などが大事かと思います。

    4つ目、福祉においては、相談支援体制を整え、継続的な取り組みが必要です。相談支援者への知識提供を行ったり、「よりそいホットライン」等の専門相談機関をふやしたり、例年継続していくことというのが非常に有意義です。

    また、各地域でのLGBTの家族会というのをほかの家族会などと同様に設立、運営していくことも必要です。また、今日は全然触れられなかったのですけれども、LGBTの高齢者への対応も急務です。LGBTの高齢者は地域の中や支援機関においてカミングアウトができなかったり、法律上家族が持てないことでどんどん孤立が進んでいきます。

    5つ目、就労においては、自立就労支援機関における支援や企業の理解向上に取り組む必要があります。また、キャリア教育においてもLGBTを包括して、学生時代からLGBTが働けるということを知ってもらうということもロールモデルの可視化につながります。

    6つ目、地域においては、既存の条例や法律にLGBTを含んだり、またLGBTの人権を守るための法律を制定していただくということ。担当課や相談窓口を明示していただくということや職員や地域への知識啓発を行っていただくことが重要です。

    7つ目、被災地においては、避難所におけるLGBTの想定ということで個室シャワーを設置したり、LGBTの避難者がいることを念頭に置くことが大切です。また、法律上、家族でない家族もいることを想定してください。また、性同一性障害者でホルモン治療を行う人へのホルモン治療の薬や、HIV陽性者への治療薬が途切れ、すごく不安定な生活が続いたと聞きます。ホルモン剤や抗HIV薬を使用している方も想定してください。

    以上の7項目がLGBTも包括された社会のためにできることということで、ぜひお持ち帰りいただければと思っています。

    最後に1本動画を流させてください。国連事務総長の潘基文さんのスピーチです。

    (動画上映)

  • 藥師氏 Human Rights Watch様の動画なのですけれども、国連事務総長の潘基文さんによるスピーチです。国際的な話題としてLGBTは既に非常に大きな課題として叫ばれていますし、国際的だけではなく、国内においても例えば過去僕がそうだったように、LGBTの子供というのは誰にも相談できなくて自分だけを否定し続けて自殺未遂などをして、どんどん時間を過ごしていっているのだと思います。

    2020年に向けても、様々な面で人権への取り組みが日本の中で進んでいくと思います。

    日ごろから子供や若者の人権に取り組んでいる皆さんだからこそ、その頭の片隅に、常に約20人に1人はLGBTの子供・若者がいるのだなということで、人権について考えるときに、その子供たちを取りこぼさないでいただければと思っております。

    御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)

    (質疑応答)

  • 司会 ありがとうございました。

    以上で第4回目の研究会のほうを終了させていただきます。