本編目次 | 前ページ| 次ページ



第4部 調査結果の分析

第2章 親子関係と親の影響力

東海大学文学部助教授 大山七穂


要旨


子どもにとって家庭生活の中心は親子関係にあり,親子関係がうまくいっているかどうかが家庭生活の満足度と大きく関わってくると思われる。本章では,子どもに対する「親の理解度」を中心に,どのような親が子どもの気持ちが分かる親なのか,それが子どもの「家庭生活への満足度」とどのように繋がっていくのかについて分析していく。また,「親の影響力」という視点から,ものの考え方や自分の性格など,親子がどの程度類似しているものなのか,そうした類似性から推察される影響力というものは,子どもにとって望ましいものなのかどうかを分析していく。

親の理解度と家庭生活への満足度については前回の調査でも分析したが,今回も同様に強い関連が見られた。家庭生活への満足度には,このような親の理解度のほかに,会話の頻度や親子の共同行動が効いているのだが,概して子どもと同性の親の影響が強いという結果であった。

また,親の理解度に関して子どもの評価と親の自己評価を比較したところ,前回と同様高い相関が見られたが,その一方で子どもの家庭生活への満足度を規定しているのは,子どもが評価する「親の理解度」であって,親の自己評価ではなかった。当然といえば当然の結果であるが,親は自己評価を過信しないよう注意する必要がある。さらに,親自身の家庭生活への満足度が子どもの満足度に与える影響力が高かったことも注目に値する。このことは,親自身が楽しくない家庭は,子どもにとっても楽しくないことを示している。

親子の考え方は必ずしも類似性が高くはなかったが,性格という点では,父親よりも母親との類似性が高かった。ただそうした類似性に見られる親の影響について分析すると,これが子どもの生活満足度と直接的に結びついているわけではなかった。


1 はじめに

本章では,親の理解度が子どもの家庭生活への満足度にどのような影響を与えるか,また親の理解度について,親子間の認識にギャップがあるか,さらにどのような側面で親の影響力が大きいのか,そして影響力の強弱が子どもの生活満足度と関連するか,といったことを分析していきたい。

実は,親子関係の子どもの生活満足度への影響は,前回調査でも分析を試みた(総務庁青少年対策本部『日本の青少年の生活と意識』第4部第3章「親子関係と子どもの生活満足度」参照)。その時の分析では,以下のことが明らかになった。

1. 親の理解度は,子どもの家庭生活や学校生活への満足度と大きく関わる。

2. 親との会話や接触時間,親自身の家庭生活への満足度が,子どもに対する親の理解度と大きく関係する。

3. 「理解してくれる親」と「理解している親」の相関は高いものの,規定因に相違がみられ,前者は「会話頻度」の説明力が大きいのに対して,後者は「接触時間」が大きい。つまり,親は親子の接触量の大きさから子どもを理解したつもりになっているかもしれないが,子どもは親との会話を通して分かってもらったという意識を持つのであろう。

今回は,こうした知見の確認をとるとともに,子どもの性別や学年(小学校高学年と中学生)によって相違があるかどうかをさらに詳しく分析していきたい。また新たに「親の影響」という視点を導入し,どのような側面で親の影響がみられるのか,それは子どもの家庭生活への満足度にプラスに働くのかといったことも明らかにしていきたい。

ここでは,親子のペア・データを用いる。ペア・データを構成している親子は998組,子どもは男子504人,女子494人,小学4〜6年生493人,中学生505人,親は父親は439人,母親は559人である。これらの組み合わせは表4-2-1のようになる。子どもの調査票では,父親・母親双方に関する質問があるが,親の調査票では回答者である父親もしくは母親自身についてたずねるだけで,もう一方の親に関する質問は職業以外はない。したがって,子どもの調査票に基づいた親の分析は父親・母親とも実数が998となるが,親の調査票に基づいた分析では父親の実数が439,母親の実数は559となっている。

なお,各項目を分析する際には,項目別に無回答を除いて行っている。


表4-2-1 親子関係の分析に用いたデータ  <CSVデータ>

(人)
子ども 小学生 中学生 合計
男子 女子 男子 女子
父親 110 118 132 79 439
母親 118 147 144 150 559
合計 228 265 276 229 998
493 505

2 親の理解度と家庭生活への満足度

第2部でみてきたように,子どもたちは総じて家庭生活に満足しているが(調査票A Q19,図2-2-19と図2-2-20参照),それでも親が自分の気持ちをわかってくれると感じるほど「家庭生活は楽しい」と答えている(図4-2-1参照)。ここでは親の理解度(調査票A Q13 Q16)を,高理解度群(「とてもよく分かっている」),中理解度群(「よく分かっている」),低理解度群(「あまり分かっていない」と「全然分かっていない」)の3群に分け,家庭生活への満足度との関わりをみた。父親,母親ともに高理解度群の満足度が高くなっているが,特に父親の高理解度群では,81.5%が「とても楽しい」と答えている。

それでは,どのような親が「気持ちを分かってくれる」親なのだろうか。以下の分析では,高理解度群・中理解度群・低理解度群の親子関係の特徴を抽出していきたい。


図4-2-1 親の理解度別 子どもの家庭生活への満足度  <CSVデータ>

父親及び母親の理解度別に子どもの家庭生活への満足度を示したグラフ

(1) 親の理解度

ア 父親の理解度(調査票A Q13)

まず,父親からみていこう。第2部でみてきたように,全体として子どもは父親が「分かっている」と感じているが,小学生よりも中学生において理解度はやや低下している(図2-2-16参照)。特に,中学生女子において低くなっている。

こうした子どもが感じる父親の理解度は,父親との会話の頻度(調査票A Q12)や共同行動(調査票A Q14)と大きく関わっていると思われる。そこで,会話の頻度および共同行動と理解度との関係をみた。共同行動に関しては,親子で行う共同行動の数を加算して,「共同行動の数」という変数を新たに作成し,それとの関係もみた。

一般に,父親の理解度が高い群ほど会話の頻度が多くなっている(図4-2-2参照)。「お父さんと非常によく話す」子どもの比率は,高理解度群ではじつに67.1%となり,中理解度群(21.2%),低理解度群(8.2%)と大きな格差がある。こうした傾向は,子どもの学年・性別によって相違はない。

共同行動に関しても,理解度が高い群ほど共同行動が多くなっている。共同行動の数の平均値を比較すると,高理解度群では17項目中5.85,中理解度群では4.16,低理解度群では2.81という結果である。ここでも子どもの学年・性別による相違はない。

ただし,共同行動の中身は,子どもの年齢・性別によって異なる(表4-2-2参照)。「散歩をしたり,公園などで遊ぶ」「スポーツをする」は,小学生と中学生男子の理解度には関係しているが,中学生女子においては関係性はみられない。中学生女子ではそもそも父親とこうした共同行動をとる比率自体が低くなっている。また,「勉強を教えてもらったり,本を読んでもらったりする」は小学生男子においては明確な関係性がみられなかった。小学生と中学生男子に対しては,会話をかわすほか,一緒に食事をしたり,散歩などで屋外に出かけたり,スポーツをしたりといった行動が,理解度とつながっているようである。中学生女子に対しては勉強をみたり,一緒に買い物に行ったりという行動と関係するようだ。「テレビを見る」ことを共同行動とする比率は概して高いが(全体で71.2%),それは必ずしも父親の理解度とはつながっていないようである。


図4-2-2 親の理解度別 親との会話の頻度  <CSVデータ>

父親及び母親の理解度別に親との会話頻度の構成比を示したグラフ

表4-2-2 「親の理解度」と「親との共同行動」との関係  <CSVデータ>

父親 母親
子ども 小学生 中学生 小学生 中学生
共同行動 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子
会話の頻度 *** *** *** *** *** *** *** ***
共同行動の数 *** *** *** *** *** *** *** ***
話をする *** *** *** *** *** ** **  
食事をする * *** ***          
衣服の世話をしてもらう           **    
家事をする   ** * * * **    
風呂に入る   ***   *   ***    
夜,同じ部屋で寝る *              
勉強を教えてもらったり,本を読んでもらったりする   *** ** ***   *** * **
テレビを見る             ***  
音楽をきく **         * *** *
室内ゲームやおもちゃなどで遊ぶ   ***       *    
工作やモノ作りをする     **     *    
庭の手入れや畑仕事をする           **    
ガラスふきや風呂そうじなどをする     *   * ***    
買い物に行く     * *** **     *
散歩をしたり,公園などで遊ぶ *** ** *   * *    
スポーツをする *** ** ***       **  
その他     ***          
よく一緒にするものはない     * ***        

(注) 子どもの評価による「親の理解度」と「親との共同行動」の関係をみた。

*の数は,関係の強さを示す。

***は非常に強い関係を示す(統計的検定にて0.1%水準で有意)。

**は強い関係を示す(統計的検定にて1%水準で有意)。

*は関係があることを示す(統計的検定にて5%水準で有意)。


イ 母親の理解度(調査票A Q16)

母親の理解度は全般的に父親よりも高いが,中学生の方が小学生よりも低い点では父親と同様である(図2-2-17参照)。しかし,父親と異なり,男子よりも女子において理解度が高くなっている。同性ゆえ「分かってもらえる」という気持ちがあるのだろうか。

母親の理解度についても,母親との会話の頻度(調査票A Q15)や共同行動(調査票A Q17)との関わりをみた。理解度が高い群ほど会話の頻度が高いこと(図4-2-2参照),共同行動の数が多いこと(高理解度群6.48,中理解度群4.99,低理解度群3.98)は父親と同様である。いずれも学年・性別による相違はない。

ただし理解度につながる共同行動の中身は,子どもの学年・性別によってかなり異なる(表4-2-2参照)。小学生女子では,「勉強を教えてもらったり,本を読んでもらったりする」「風呂に入る」「ガラスふきや風呂そうじなどをする」「衣服の世話をしてもらう」「家事をする」「庭の手入れや畑仕事をする」など,日常生活における広範な行動を共にすることが理解度に繋がっているようだ。中学生男子では,「テレビを見る」「音楽をきく」などメディア接触の共同行動が理解度に関わるようだ。さらに,中学生女子においては「話をする」こと自体が大半が行っている共同行動であり,それだけでは直接的に理解度と繋がらないという結果であった。


(2) 親子関係と家庭生活への満足度

以上,みてきたように,親の理解度と,親との会話の頻度や共同行動には密接な関係がある。こうした相互関係が最終的には子どもの家庭生活への満足度(調査票A Q19)に影響を及ぼしているのであろうが,それではこれら親子関係にかかわる変数のいずれが最も子どもの満足度に影響を及ぼしているのだろうか。父親の理解度か母親の理解度か,それとも親との会話の頻度や共同行動か,影響力の相対的な強弱を分析してみた。

ここでは,子どもの性別・学年によって異なることが予想されるので,分けて分析する。被説明変数は「家庭生活への満足度(調査票A Q19)」であり,それを説明する変数として,「父親との会話の頻度(Q12)」「父親の理解度(Q13)」「父親との共同行動の数(Q14)」「母親との会話の頻度(Q15)」「母親の理解度(Q16)」「母親との共同行動の数(Q17)」を用いて,回帰分析を行った。表4-2-3に各説明変数の標準偏回帰係数と有意水準を示した。係数の絶対値が大きいほど,説明力が大きい,すなわち子どもの家庭生活への満足度に影響を及ぼしているということになる。

まず,小学生男子の結果をみてみよう。偏回帰係数の値は,「父親との会話の頻度」が最も大きく,「母親との会話の頻度」「母親との共同行動の数」「父親の理解度」と続いている。小学生女子では,「母親との会話の頻度」が最も大きくそれに「母親の理解度」が続く。中学生男子では,「母親の理解度」が最も大きく,「父親との会話の頻度」「父親の理解度」と続く。また,中学生女子では「母親の理解度」が最も大きく,「母親との会話の頻度」「父親との共同行動の数」と続く。

総じて,女子は同性の母親の理解度と会話といった「母親要因」が満足度と強く関係しているようである。また,父親とは共同行動の数が満足度に影響していると言えよう。一方,男子に関しては,これまた同性の父親との会話と理解度といった「父親要因」が影響を及ぼしているとみられる。しかし,母親との関係は,小学生と中学生とで異なり,小学生の場合は「会話の頻度」が,中学生では「理解度」が影響している。いずれにせよ,子どもの家庭生活への満足度に関しては,同性の親の影響が強いと言えよう。


表4-2-3 子どもの「家庭生活への満足度」に影響を及ぼす要因  <CSVデータ>

  小学生男子 小学生女子 中学生男子 中学生女子
影響要因 標準偏回帰係数 標準偏回帰係数 標準偏回帰係数 標準偏回帰係数
父親との会話の頻度(A-Q12) 0.215 ** 0.075   0.180 ** 0.150  
父親の理解度(A-Q13) 0.162 * 0.106   0.158 * 0.119  
父親との共同行動の数(A-Q14) -0.074   0.153   0.129   0.189 *
母親との会話の頻度(A-Q15) 0.181 * 0.234 *** 0.089   0.154 *
母親の理解度(A-Q16) 0.041   0.151 * 0.294 *** 0.232 **
母親との共同行動の数(A-Q17) 0.168 * 0.056   -0.034   -0.034  
決定係数 0.234   0.287   0.358   0.311  

(注) 子どもの評価による「親の理解度」と「親との共同行動」の関係をみた。

*の数は,関係の強さを示す。

***は非常に強い関係を示す(統計的検定にて0.1%水準で有意)。

**は強い関係を示す(統計的検定にて1%水準で有意)。

*は関係があることを示す(統計的検定にて5%水準で有意)。


3 子どもに対する理解度

(1) 子どもに対する理解度と子どもとの接触

本調査では,子どもに「親の理解度」をたずねるとともに,親には「子どもに対する理解度」(調査票B Q3)をたずねている。「子どもの気持ちをよく分かっていると思うか」という親の自己評価である。第3部でみてきたように,今回の親自身の理解度は,前回調査と比較すると全体的に上昇している(図III-2-5参照)。父親と母親と比較すると,母親の理解度に関する自己評価が高いが(図III-2-6参照),これは前節の子どもの親に対する評価と一致する。さらに,小学生よりも中学生の親の方が子どもに対する理解度が低い傾向があるが,これも子どもの親評価と一致する。なお,子どもの性別による相違は出ていない。

昨今,「理解できない子ども」がふえているとも言われるが,それではなぜ,親は「子どもの気持ちが分かる」と言い切れるのだろうか。親の自己評価の背後にあるものを検討したい。その一つは,子どもとの接触量ではないかと推察される。日常的な接触の多さとその質が,「分かる」という自信につながるのではないだろうか。具体的には,「子どもに対する理解度」と「親子の共同行動(調査票B Q1)」「親子の接触時間(調査票B Q2)」との関係をみた。なお,「子どもに対する理解度」に関しては,「全然分からない」の比率が非常に低いので,子どもの場合と同様に,「あまり分からない」と「全然分からない」をひとまとめにして,高理解度群・中理解度群・低理解度群の3群に分けて分析した。また,「親子の共同行動」についても,子どもの場合と同様に共同行動の数を加算して,「共同行動の数」という変数を作成した。

全体としては,父親も母親も自己評価が高いほど,親子の共同行動の数や平日一日の接触時間が多いという結果であった。共同行動の数の平均値は,父親については,高理解度群6.82,中理解度群5.49,低理解度群4.16であり,母親については高理解度群7.58,中理解度群6.79,低理解度群5.05という結果であった。理解度別にみた一日の接触時間の分布は図4-2-3の通りで,父親,母親とも高理解度群の方が接触時間が長い傾向がある。こうした接触の量的な多さが,「気持ちが分かる」という認識に繋がっているのではないか。


図4-2-3 子どもに対する理解度(親の自己評価)別 親子の接触時間  <CSVデータ>

父親及び母親の子どもに対する理解度別に子どもとの共同作業時間の構成比を示したグラフ

共同行動の中身は,子どもの性別や年齢によって異なるので,分けて分析した(表4-2-4)。父親の場合は,「話をする」が理解度に対する自己評価と関連するようだが,母親は「買い物に行く」(小学生に対して),「音楽をきく」「ガラスふきや風呂掃除などをする」(中学生に対して)などの行動が関係しているようだ。


表4-2-4 「子どもに対する理解度」と「親子の共同行動」との関係  <CSVデータ>

父親 母親
子ども 小学生 中学生 小学生 中学生
共同行動 男子 女子 男子 女子 男子 女子 男子 女子
共同行動の数 ** * * *   * * **
接触時間 ***   * *        
話をする *** **   **       **
食事をする                
衣服の世話をする     **   *   *  
家事をする                
入浴する *              
夜,同じ部屋で寝る.       *       *
勉強を教えたり,本を読んだりする               **
テレビを見る         **      
音楽を聴く             * *
室内ゲームやおもちゃなどで遊ぶ   **            
工作やモノ作りをする *     **        
庭の手入れや畑仕事をする   *       * * *
ガラスふきや風呂そうじなどをする *           * *
買い物に行く         * *    
散歩をしたり,公園などで遊ぶ                
スポーツをする                
その他                
よく一緒にするものはない                

(注) 親の評価による「子どもの理解度」と「親子の共同行動」の関係をみた。

*の数は,関係の強さを示す。

***は非常に強い関係を示す(統計的検定にて0.1%水準で有意)。

**は強い関係を示す(統計的検定にて1%水準で有意)。

*は関係があることを示す(統計的検定にて5%水準で有意)。


共同行動と理解度の関係性を子どもの結果(表4-2-2)と比較すると,幾つかの興味深いことがわかる。たとえば,中学生女子と母親の関係で,子どもの結果では「話をする」と「気持ちを分かること」の関連性がみられないのに対して,母親の結果にはみられるということである。このことはつまり,母親が話をしているから分かっていると過信している可能性を示している。また全般的に,親の結果では,子どもの結果ほど,共同行動と理解度との関係性がみられない。子どもはこうした日常的共同行動から親の理解を感じているのに対して,親はこうした行動をルーティン・ワークとして軽視しているのかもしれない。


(2) 子どもに対する理解度に影響を及ぼすもの

先に,親子の共同行動や接触時間との関係をみたが,こうした直接接触を通して子どもの気持ちを推測することはある意味で当然である。しかしこうした要因以外にも,「子どもに対する理解度」に影響を及ぼすものはないだろうか。

ここでは親の調査票(調査票B)の中から理解度と関係すると予想される幾つかの変数を取りだし,回帰分析を行って,理解度への影響を分析した。用いた変数は「子どもの育て方(Q5-abcd)」「自分の子どもに関する評価(Q10)」「子育てに伴う感情(Q12-ab)」「家庭生活への満足度(Q14)」であり,これらに先の「親子の共同行動の数(Q1)」と「親子の接触時間(Q2)」を加えた。

標準偏回帰係数を表4-2-5に示した。全体としてはやはり,共同行動の数や接触時間など子どもとの接触量が,こうした理解度の裏付けとなっていることがわかる。ただ,親自身の「子どもの育て方」に関する考えの影響も見られた。父親では,子どもの自主性を重んじる方が,そしてまた「男らしく,女らしく」という性役割観に賛同する方が,理解度が高いと自己評価している。性役割観との関係は母親にも見られた。また一方母親においては,子育てに伴う感情や家庭生活への満足度の影響もみられた。


表4-2-5 「子どもに対する理解度」に影響を及ぼす要因  <CSVデータ>

影響要因 全体 父親 母親
標準偏回帰係数 標準偏回帰係数 標準偏回帰係数
親子の共同行動の数(B-Q1) 0.188 *** 0.228 *** 0.142 **
親子の接触時間(B-Q2) 0.202 *** 0.164 ** 0.09 *
厳しいしつけ(B-Q5a) -0.003   0.001   0.008  
自主性尊重(B-Q5b) 0.105 *** 0.156 *** 0.046  
男・女らしく(B-Q5c) 0.08 * 0.125 * 0.102 *
厳父慈母(B-Q5d) -0.08 * -0.088   -0.084  
自分の子どもに関する評価(B-Q10) 0.056   0.086   0.057  
子育て楽しい(B-Q12a) 0.051   0.034   0.097 *
子育てつらい(B-Q12b) -0.079 * -0.086   -0.087 *
家庭生活への満足度(B-Q14) 0.06   0.035   0.095 *
決定係数 0.172   0.195   0.119  

(注) *の数は影響の強さを示す。

***は非常に強い影響を示す(統計的検定にて0.1%水準で有意)。

**は強い影響を示す(統計的検定にて1%水準で有意)。

*は影響があることを示す(統計的検定にて5%水準で有意)。


4 親子の理解度のギャップと子どもの家庭生活への満足度

(1) 親子の理解度のギャップ

子どもの気持ちを「分かってくれる」親と「分かっている」親は,一致しているのだろうか。親が,子どもの気持ちを分かっているつもりでも,子どもは分かっていないと思うこともままあるだろう。こうした親子の理解度のギャップをみていこう。

前回の調査では,父親,母親とも親子の理解度の関係性が高かったが,特に母親の相関関係が高かった。つまり,母親の方が子どもに対する認知が正確だったといえる。今回も全く同様の結果で,子どもの「親の理解度(調査票A Q13 Q16)」と親の「子どもに対する理解度(調査票B Q3)」の関係をみたところ,親子間の理解度はそれなりに一致しているが,とくに母親において相関が高かった(図4-2-4参照)。


図4-2-4 親の理解度(親の自己評価)別にみた子どもの親評価  <CSVデータ>

父親及び母親の理解度別に子どもの親評価の構成比を示したグラフ

しかし,今回は,子どもの性別に分けて,もう少し詳しく分析してみた。すると,父親と男の子の理解度に,相関が見られなかった(図4-2-5参照)。つまり,父親は男の子が分かってくれていると思っているかどうかを必ずしも正確に把握していないということになる。一方,母親の方はそれなりに把握しているようであった。


図4-2-5 親の理解度(親の自己評価)別 子どもの性別 子どもの親評価  <CSVデータ>

父親及び母親の理解度別及び子どもの性別に子どもの親評価の構成比を示したグラフ

(2) 子どもの「家庭生活への満足度」に及ぼす影響

以上みてきたように,子どもが評価する「親の理解度」と親自身が評価する「子どもに対する理解度」には,それなりの相関が見られるものの,ギャップもある。それでは,親自身の「子どもに対する理解度」は,子どもの家庭生活への満足度をどの程度説明するのだろうか。じつは親が思っているほど,子どもの満足感と関連がないかもしれない。親の理解度に関する子どもの評価と親自身の評価の相対的強さを比較して,「親のひとりよがり」の危険性を検証するために,回帰分析を行った。ここでの被説明変数は子どもの「家庭生活への満足度(調査票A Q19)」である。それを説明する変数としては,子どもの調査票(調査票A)から「親との会話の頻度(Q12またはQ15)」「親の理解度(Q13またはQ16)」「親との共同行動の数(Q14またはQ17)」,そして親の調査票(調査票B)から「親子の共同行動の数(Q1)」「親子の接触時間(Q2)」「子どもに対する理解度(Q3)」,さらに親自身の「家庭生活への満足度(Q14)」を用いた。標準偏回帰係数値とその有意水準を表4-2-6に示した。なお,父親,母親は分けて分析した。

容易に想像される通り,父親,母親とも親の回答が子どもの家庭生活への満足感を説明する力は大きくない。説明力のあるのは,あくまでも子ども自身の評価であり,親は自己評価を過信せず,子どもとの関係を常日頃から問い直す必要のあることがわかる。ただし,興味深い点は,親の家庭生活への満足度の係数値が高いと言うことである。特に母親において,説明力が高くなっている。このことはつまり,家庭生活に満足している親の子どもは,やはり家庭生活に満足している傾向があるといえる。親が満足していないと,子どもも満足できないということではなかろうか。


表4-2-6 子どもの「家庭生活への満足度」に影響を及ぼす親子の要因  <CSVデータ>

影響要因 父親 母親
標準偏回帰係数 標準偏回帰係数
親との会話の頻度(A-Q12またはA-Q15) 0.206 *** 0.111 *
親の理解度(A-Q13またはA-Q16) 0.248 *** 0.277 ***
親との共同行動の数(A-Q14またはA-Q17) 0.146 ** 0.123 **
子どもとの共同行動の数(B-Q1) -0.005   0.034  
子どもとの接触時間(B-Q2) 0.039   0.034  
子どもに対する理解度(B-Q3) -0.023   -0.041  
親の家庭生活への満足度(B-Q14) 0.113 ** 0.142 ***
決定係数 0.268   0.217  

(注) *の数は影響の強さを示す。

***は非常に強い影響を示す(統計的検定にて0.1%水準で有意)。

**は強い影響を示す(統計的検定にて1%水準で有意)。

*は影響があることを示す(統計的検定にて5%水準で有意)。


5 親の考え方の影響

今回の調査では,「社会変化に関する意識(調査票A Q32 調査票B Q23)」や「自分の性格(調査票A Q34 調査票B Q22)」についてどう思うか,同一の質問を親子それぞれに尋ねているので,それを比較することで,親子の考え方や性格の類似性について検討してみたい。


(1)社会変化に関する意識

図4-2-6,図4-2-7に示したとおり,この質問に対する回答には,もともと性別による相違がかなりみられる。たとえば,子どもの場合,「女性は,もっと積極的に社会に進出すべきだ」「当人どうしがよければ,結婚の相手はどの国の人でもかまわない」「結婚し子どもを育てることだけが幸せな人生ではない」「男性も介護を積極的に行うべきだ」「男性も,女性と同じように,家事や育児をするのは当然だ」「自分と考え方が違うからといって,その人が幸せになろうとするのを妨げるのは良くない」「どうしてもやりたいことがあるのに,無理にがまんしてやらないのは間違いだ」「人間としてやっていけないことは,どんな理由があろうとも,やるべきではない」「困っている人を見たら,頼まれなくても助けてあげるべきだ」「これからは,ゴミの処理や地域の美化など,自分たちでできることは自分たちでやるようにしないといけない」の10項目において,すべて女子の同意比率が有意に高い。いわゆるジェンダーに関する問題,そして環境問題,愛他的精神などの社会変化に関する意識については,女子の方が敏感で受容的であることがわかる。

同様のことは,父親と母親の意見の相違にもみられる。「女性は,もっと積極的に社会に進出すべきだ」「結婚し子どもを育てることだけが幸せな人生ではない」「男性も介護を積極的に行うべきだ」「男性も,女性と同じように,家事や育児をするのは当然だ」「人間としてやっていけないことは,どんな理由があろうとも,やるべきではない」「これからは,ゴミの処理や地域の美化など,自分たちでできることは自分たちでやるようにしないといけない」の6項目で,母親の同意比率が有意に高い。一方,父親の同意比率の高い項目が2項目あるが,それは「親が年老いたら,子どもが世話をしたり面倒を見るのは当然だ」「地球に住む皆が生きのびていくには,お互い,やりたいことをがまんしなければならない」の2つである。


図4-2-6 子どもの性別 社会変化に関する意識

性別に中学生の社会変化に関する意識の構成比を示したグラフ

図4-2-7 父親・母親別 社会変化に関する意識

父親及び母親別に社会変化に関する意識の構成比を示したグラフ

このような性別の相違をみると,父親が男の子に,そして母親が女の子に与える影響が大きいのではないかと予想されるが,親子の考え方はどの程度類似しているのだろうか。結果をみると,父親と子どもの類似性が高かったのは「今の社会は,高齢者に対する配慮が足りないと思う」「男性も,女性と同じように,家事や育児をするのは当然だ」など5項目であり,母親と子どもの類似度が高かったのは「人間としてやっていけないことは,どんな理由があろうとも,やるべきではない」「これからは,ゴミの処理や地球の美化など,自分たちでできることは自分たちでやるようにしないといけない」など7項目であった(表4-2-7)。子どもの性別で分けてみると,概して母親と娘の類似性が高く,それ以外の組み合わせ(父-男子,父-女子,母-男子)の類似性は高いとは言えなかった。


表4-2-7 「社会変化に関する意識」の親子の類似性  <CSVデータ>

  父-子 母-子 父-男子 父-女子 母-男子 母-女子
老親の世話は当然           *
高齢者配慮が足らない ***   ** *    
女性はもっと社会進出すべきだ            
障害者配慮が足らない   *       *
外国人と親しくしたい   *       *
改姓する必要なし            
結婚相手はどの国の人でもよい            
男性も家事・育児を ***   ***      
男性も介護を           *
幸せは結婚・出産だけではない * *       **
男性も家庭や地域を大切に            
考えが違っても幸せを妨げない   *       *
やりたいことをがまんせず            
人間としてやってはいけないことがある * **     *  
困っている人は助ける **     ** *  
ゴミ処理や美化は自分たちで   **       ***
やりたいことは互いにがまんする   *        

(注) 回答者は中学生とその親のみである。

*の数は親子の類似性の強さを示す。

***は非常に強いことを示す(統計的検定にて0.1%水準で有意)。

**は強いことを示す(統計的検定にて1%水準で有意)。

*は類似性があることを示す(統計的検定にて5%水準で有意)。


なお,子どもを対象とした調査では,こうした考え方に対する親の影響度を子ども自身にたずねているが(調査票A Q33),父親や母親からの影響が強いと答えた子どもたちが,必ずしも親と類似した回答をしているわけではなかった。ここで調査した「考え方」は,社会変化に関するごく一部の限定されたことに過ぎないのに対して,「親からの影響」について尋ねられた子どもたちは,日常生活全般における影響について回答したのではないかと推察される。


(2) 自分の性格

自分の性格についても,親子それぞれに同一の質問をしているので,その類似性を検討していく。自分の性格についての認識は,性別や学年によって大きく異なるので,その相違をまず確認しておきたい。

図4-2-8を見ていただきたい。子どもの学年・性別を見ると,「自分の力で社会を変えていけると思う」という1項目を除いて,相違がみられる。すなわち「人と一緒にいるより一人でいる方が好き」は中学生男子に多く,「どんなに大きな悩みでも相談できる人がいる」は女子に多い。「他人に迷惑をかけなければ,何をしようと個人の自由だ」「ほしいものを不自由せずにもてるような物質的に豊かな生活を送りたい」「自信を持ってやれるものは,何もない」と考えるのは中学生の方が多い。また「一人で生きていく自信がない」は中学生女子に特に多い。


図4-2-8 子どもの学年・性別 自分の性格

小学生及び中学生の男女別に自分の性格についての認識の構成比を示したグラフ

一方,父親・母親の相違もかなり明確である(図4-2-9)。「人と一緒にいるより一人でいる方が好き」「他人に迷惑をかけなければ,何をしようと個人の自由だ」「ほしいものを不自由せずにもてるような物質的に豊かな生活を送りたい」は父親の方が同意比率が高いが,「どんなに大きな悩みでも相談できる人がいる」「自信を持ってやれるものは,何もない」「一人で生きていく自信がない」は母親の同意比率が高い。


図4-2-9 父親・母親別 自分の性格  <CSVデータ>

父親及び母親別に自分の性格についての認識の構成比を示したグラフ

以上のような相違がみられる性格であるが,親子の類似性を検討すると,父親との関係はあまり見られないが,母親との類似性が強いという結果である(表4-2-8)。特に男子よりも女子,そして中学生よりも小学生との類似性が強い。母親の影響というものが改めて感じられる。


表4-2-8 「自分の性格」の親子の類似性  <CSVデータ>

  父-子 父-男子 父-女子 父-小学生 父-中学生 母-子 母-男子 母-女子 母-小学生 母-中学生
一人の方が好き           **   ** **  
相談できる人がいる           *** ** ** * **
何をしようと自由           *** **   ** **
社会を変えていける                    
豊かな生活送りたい           *   *    
自信をもってやれない                 *  
一人で生きていけない           **   *** **  

(注) *の数は親子の類似性の強さを示す。

***は非常に強いことを示す(統計的検定にて0.1%水準で有意)。

**は強いことを示す(統計的検定にて1%水準で有意)。

*は類似性があることを示す(統計的検定にて5%水準で有意)。


(3) 親の影響力と家庭生活への満足度

上述した考え方や性格の類似性とは別に,子どもたちは親が自分に及ぼす影響についてそれなりに感じている(調査票A Q33)。今回のペア・データでは,「考え方」について父親から「最も強く影響を受けた」と答えたものは全体の27.7%,「次に強く影響を受けた」と答えたもの17.8%,「いずれでもない」もの54.5%という分布であり,母親から「最も強く影響を受けた」もの27.5%,「次に強く影響をうけた」もの30.7%,「いずれでもない」もの41.8%という分布であった。

こうした親の影響力は,親の理解度や子どもの家庭生活への満足度と関係するのだろうか。親の影響力が大きいということは,親の理解度が高いということなのか,またそれは子どもの家庭生活への満足度へと繋がるものなのか,これらを探ってみた。親の影響力について「最も強く影響を受けた」「次に強く影響を受けた」「いずれでもない」と3分割し,「親の理解度(Q13 Q16)」と「家庭生活への満足度(Q19)」との関係をみた。

父親に関しては,影響力の強いものほど,理解度が高いという結果であった(図4-2-10)。また,家庭生活にも満足する傾向が見られる。しかし母親の場合は,母親の理解度や家庭生活への満足度との関係は必ずしも直線的ではなく,「次に強く影響を受けた」の方が,理解度,満足度共に高くなっていた(図4-2-11)。


図4-2-10 父親の影響と親子関係  <CSVデータ>

子どもの父親への理解度及び家庭生活の満足度別に父親の影響の構成比を示したグラフ

(注) 父親の影響,理解度,家庭生活への満足度のいずれも子どもの回答である。父親の影響は,「最も影響を受けた人」,「次に影響を受けた人」のいずれにも父親をあげなかったものを「あまり影響なし」とした。


図4-2-11 母親の影響と親子関係  <CSVデータ>

子どもの母親への理解度及び家庭生活の満足度別に母親の影響の構成比を示したグラフ

(注) 母親の影響,理解度,家庭生活への満足度のいずれも子どもの回答である。母親の影響は,「最も影響を受けた人」,「次に影響を受けた人」のいずれにも母親をあげなかったものを「あまり影響なし」とした。


子どもの性別で分けると,男子の場合は父親の影響が強いほど,理解度,家庭生活満足度ともに高くなっている.母親に関しては「中程度の影響力」において,理解度,満足度が高い。女子の場合は,父親,母親ともに影響力の強弱による相違はみられなかった。親の影響度が子どもの家庭生活にとって良いのかどうかは,簡単には結論づけられないところである。


6 まとめ

以上,様々な側面から親子関係についての分析をすすめてきたが,最後に,親が子どもとの関係を見直すための示唆的な知見を幾つかまとめておきたい。


1. 子どもからみた「親の理解度」は,親子の接触量と大きく関係していたが,理解度を促進させると思われる接触の中身は,子どもの性別・学年によってかなり相違が見られた。しかし親は,性別や成長過程に見られるそうした相違について,必ずしも敏感ではないようであった。

2. 子どもの「家庭生活への満足度」を規定するのは,子ども自身の目を通した親子関係であり,親自身の評価の規定力は意外に小さい。ただし,親の「家庭生活への満足度」と子どもの満足度との関係性は高く,親自身にとって楽しい家庭かどうかが重要だと言える。

3. 考え方や性格の類似性という点では,どちらかといえば母親の女子に対する影響が強いという結果であったが,その影響の強さが子どもの家庭生活への満足度とは直線的に関係しなかった。影響力の強さの善し悪しは簡単に論じられないので,注意する必要がある。



このページの上へ

本編目次 | 前ページ| 次ページ