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第4部 調査結果の分析

第4章 発達段階からみた学校生活満足度と家庭生活満足度

国際武道大学教養教育部教授 高見令英


要旨


本章では,学校生活に対する満足度と家庭生活に対する満足度を,発達段階を視点として分析することを目的とした。

学校生活の満足度については,全体としてはおおよそ80%を超える高い満足度を示している。しかし,発達段階を視点として調査対象者集団をトレースしてみると,発達段階の特性に応じた満足度の低下傾向がみてとれた。それは,「児童期」(本調査対象ではおおむね小学校4年生〜6年生に相当)を満足度の頂点として,「青年期前期」(同おおむね中学校1年生〜3年生に相当),「青年期中期」(同おおむね高等学校1年生〜3年生)に至るまで低下傾向が出現し,「青年期後期」(同おおむね大学1年生以降)に満足度がやや回復するというものである。この傾向には,心理的な発達過程が大きく影響していることと,学校における勉強や部活動への関わり方が満足度に関係していることが考えられる。

家庭生活の満足度については,全体としては,学校生活の満足度を超えるほどの高い満足度を示す結果であった。発達段階を視点として家庭生活の満足度をみてみると,学校生活に対する満足度とほぼ同様の傾向がみられた。学校生活の満足度と異なる点は,家庭生活に対する満足度を高い評価(とても楽しい)でみてみると,「青年期前期」「青年期中期」においては,「児童期」と比べると満足度がほぼ半減するという結果であった。また,家庭生活の満足度をささえる要因として,父母との会話の頻度,父母が子どもをどの程度理解していると考えているか,といった点との関連をみると,会話の頻度が多く,その結果ともいえる,父母が子どものことをよく理解してくれていると考えている者ほど,家庭生活の満足度が高いことが示された。

学校生活及び家庭生活のいずれも,高い満足度を示していた。しかしながら,学校生活でいえば,おおよそ10%〜20%の子どもが不満を抱いていることを見逃してはならない。これらの不満の要因を検討し必要な対策を講じる必要があろう。


1 はじめに

本章では,子どもたちの学校生活に対する満足度と生活に対する満足度を中心に検討したいと考えている。分析の視点としては,人の発達段階に着目し,それぞれの発達段階ごとにどのような状況にあるかを検討する。また,前回調査時点と今回調査時点の比較については,たとえば前回調査時点で小学生であった対象者集団は今回調査時点では中学3年生から高等学校2年生になっており,これらの対象者集団を比較検討することによって学校生活満足度および家庭生活満足度に対してそれぞれの発達段階における特性等がどのように影響しているかを検討することとしたい。

発達段階についての考え方は,その区分の仕方により1.社会的慣習による区分,2.身体的発達による区分,3.特定の精神機能を中心とする見地による区分,4.全体的精神構造上の変化による区分がある。そして,この4つの区分の中においても研究者によって詳細な区分の仕方が異なっている。そこで,本章における分析では,教育体制などの特徴に基づいて時期が区分されている「社会的慣習による区分」及び個人が周囲に示す態度,生活空間とのかかわり方,ものの見方・考え方に存する変容,さらには自我意識,社会意識などの特徴に基づいて時期が区分されている「全体的精神構造上の変化による区分」をとって発達段階区分として活用することとした。

具体的には,本調査対象である小学校4年生〜小学校6年生(暦年齢は9歳〜12歳)は「児童期」,中学校1年生〜中学校3年生(暦年齢は12歳〜15歳)は「青年期前期」,高等学校1年生〜高等学校3年生(歴年齢は15歳〜18歳)は青年期中期,大学1年生以上(歴年齢18歳〜24歳)は青年期後期として区分することとした。ただし,それぞれの発達段階における次の発達段階への移行については個人差等もあり,たとえば,12歳から13歳になったからといって「児童期」から「青年期前期」に移行したといったように明確に区分できるものではないことを理解しておいていただきたい。従って,前述した区分は大まかな目安として考える必要があるということである。


2 学校生活の満足度

(1) 学校生活の満足度

学校生活の満足度に関する質問項目は,小学生・中学生の対象者に対しては「あなたは,今の学校での生活が楽しいですか。」という質問に対して「とても楽しい,楽しい,あまり楽しくない,楽しくない」から選択させ,高等学校以上の対象者に対しては「あなたは,現在の学校生活に対してどのくらい満足していますか。」という質問に対して「満足である,まあ満足である,やや不満である,不満である」から選択させている。図4-4-1は,各年齢段階ごとに,この質問に対して「とても楽しい・満足である,楽しい・まあ満足である」と回答した割合を前回調査と今回調査を比較したものである。


図4-4-1 学校生活満足度(年齢別)  <CSVデータ>

9歳〜24歳の年齢別に学校生活の満足度を前回調査と比較して示したグラフ

これをみると,前回調査,今回調査とも相対的に高い満足度を示す回答結果となっている。発達段階でみると児童期(調査対象は小学校4年生〜6年生)においては90%を越える子どもたちが学校生活に対して満足であると回答している。その次の青年期前期(歴年齢12歳〜15歳)においても児童期に比べるとやや満足度が低下するものの,学校生活が満足であるとの回答が80%を超える割合を示している。

青年期中期(歴年齢15歳〜18歳)においては青年期前期に比べてやや満足度が低下する傾向が見受けられるが,80%前後の割合で満足であると回答している。このようにみてみると,学校生活に対しては,相対的に高い満足度を示しながら,発達段階が進行するにつれて,わずかに満足度が低下する傾向があることがうかがえる。これは,発達段階が進行することにともない自我が次第に確立されることが影響していると考えることができる。すなわち,与えられるものに対して自らが持つ欲求との格差が次第に大きくなっていくことから相対的な満足度の低下をもたらすといえる。しかし,前述したように全体的な傾向は,どの発達段階においても高い満足度を示していることを考えると,学級崩壊あるいは不登校等の問題との関連をどのようにとらえるべきか疑問の残るところである。


次に,前回調査と今回調査を比較検討してみたいと思う。ここでの比較は,前回調査時点での歴年齢を今回調査時点における歴年齢にスライドさせ,同一対象集団がどのような満足度の変化を示しているかを中心に検討することとした。たとえば,前回調査において10歳の対象者集団は今回調査時点では15歳の対象者集団となっている。したがって,発達段階としては「児童期」から「青年期前期」に移行していると考えることができる。しかし,前回調査と今回調査の間隔が5年であることから,前回調査時点で「児童期」に相当していた対象者集団は,今回調査時点で「青年期前期」と「青年期中期」にまたがることになる。そこで,前回調査の「児童期」と今回調査の「青年期前期」及び「青年期後期」における学校生活満足度を比較したものが図4-4-2と図4-4-3である。


図4-4-2 学校生活満足度(1)児童期(前回調査)と青年期前期(今回調査)  <CSVデータ>

児童期(前回調査)と青年期前期(今回調査)での学校生活の満足度を比較して示したグラフ

図4-4-3 学校生活満足度(2)児童期(前回調査)と青年期中期(今回調査)  <CSVデータ>

児童期(前回調査)と青年期中期(今回調査)での学校生活の満足度を比較して示したグラフ

これをみると,前回調査の「児童期」と今回調査の「青年期前期」における学校生活満足度は,4ポイントの減少であり,それほど大きく変化していないことがわかる。それに対して,前回調査の「児童期」と今回調査の「青年期中期」における学校生活満足度は,8ポイント減少しており,前回調査の「児童期」と今回調査の「青年期前期」間の減少に比べると,それよりも満足度が低下している。参考のために前回調査と今回調査の同一の発達段階を比較したもの(図2-1-8及び図2-1-10参照)をみると前回調査と今回調査において同一の発達段階間ではほとんど差がみられない。「児童期」の子どもの特徴としては,次第に学校生活に慣れ,行動範囲も広がり,いわゆる「ギャング・エイジ」と呼ばれる時代の始まりということができる。「ギャング集団」と呼ばれる集団を形成し,その集団を行動の単位として様々なことを体験しながら社会生活技能の基礎を身につけていく時代だということができるが,最近ではTVゲームの出現等環境の変化もあり,従来のようなギャング集団の形成がみられない場合があることも指摘されている。いずれにしても次の発達段階に比べると心理的には安定している時期であることと,「児童期」の段階では,自我が確立している時期ではないために,学校のルールや社会の規則を素直に受け入れることができるときであると考えることができる。そのために,生活環境の一つである学校という既存の環境に適応することが比較的容易であり,結果として学校生活の満足度を高めていると考えることができる。それに対して,「青年期前期」,「青年期中期」は,いわゆる「思春期」と呼ばれる時期であり,この時期は第2次反抗期の出現,自我同一性の獲得(自分は本当は何者であるか,ということを自ら理解すること),性役割の獲得等の課題を達成することを要求される時期だといえる。したがって,この時期は他の発達段階の時期と比較するともっとも心理的に不安定なときであり,そのために,環境への適応が困難さを伴うことがある。学校という環境への適応も,自我の獲得過程におけるさまざまな欲求の出現と第2次反抗期特有の,既成の学校環境あるいは大人社会への反発などにより,ようやく自分をごまかしながらの適応をしていくという姿をとることとなる。「児童期」から「青年期中期」において満足度の低下が比較的大きいのはそのような心理的背景があることが要因として存在しているためと考えられる。

しかし,「青年期前期」及び「青年期中期」のいわゆる「思春期」においても,学校生活に対する満足度が80%を超えていることを考えると,たとえば不登校児童・生徒の増加傾向を示す調査結果等を,どのように考える必要があるのか,詳細な調査研究の必要性を感じるところである。


次に,前回調査の「青年期前期」の対象者集団がどのような学校生活に対する満足度に移行しているかをみてみる。前回調査の「青年期前期」の対象者集団は,今回調査では「青年期中期」と「青年期後期」にまたがっている。図4-4-4,図4-4-5が前回調査の「青年期前期」と今回調査の「青年期中期」及び「青年期後期」との学校生活満足度を比較したものである。


図4-4-4 学校生活満足度(3)青年期前期(前回調査)と青年期中期(今回調査)  <CSVデータ>

青年期前期(前回調査)と青年期中期(今回調査)での学校生活の満足度を比較して示したグラフ

図4-4-5 学校生活満足度(4)青年期前期(前回調査)と青年期後期(今回調査)  <CSVデータ>

青年期前期(前回調査)と青年期後期(今回調査)での学校生活の満足度を比較して示したグラフ

これをみると,前回調査の「青年期前期」と今回調査の「青年期中期では学校生活満足度が7ポイント減少し,前回調査の「青年期前期」と今回調査の「青年期後期」では同じく5ポイント減少している。一般的に「青年期」は,他の発達段階に比べるときわめて不安定な時期であることは前述したとおりである。その不安定な「青年期」のなかでも,「青年期中期」の時期にもっとも学校生活に対する満足度が低下する傾向がみられる。図4-4-6は前回調査の「青年期中期」と今回調査の「青年期後期」との学校生活満足度を比較したものである。これらの発達段階間での学校生活に対する満足度は,ほとんど差がないことがわかる。


図4-4-6 学校生活満足度(5)青年期中期(前回調査)と青年期後期(今回調査)  <CSVデータ>

青年期中期(前回調査)と青年期後期(今回調査)での学校生活の満足度を比較して示したグラフ

以上のことを概観すると,年齢が進み,発達段階が進行するに従い,「児童期」に極めて高かった学校生活満足度が,「青年期前期」,「青年期中期」へと移行するに従い相対的に低下していき,「青年期後期」以降は学校生活に対する満足度が下げ止まることが見て取れる。心理的に安定する時期に移行する時期にあたり,これにより学校環境への適応が比較的スムースにできるようになる等のことが,学校生活に対する満足感を再度高めることになっていると考えることができる。


(2) 学校での活動状況

ここで,学校生活の満足度と学校での活動状況を,今回調査についてみてみる。まず,学校での部活動の状況と学校生活満足度との関連を検討してみたい。図4-4-7及び図4-4-8に「青年期前期」にあたる中学生の文化部と運動部への参加状況と学校生活の満足度との関係を,図4-4-9及び図4-4-10に「青年期中期」以降のものを示した。これをみると,学校生活が「とても楽しい」「楽しい」と回答しているものほど運動部への参加状況が高いことがわかる。心理的に不安定な時期である「青年期」においては,混沌として満たすことができない欲求を体を思いっきり動かすことによって代償することが相対的な満足度の高さに結びついていると考えることができる。それに対して,文化部に参加しているものは「青年期前期」の中学生においても,「青年期中期」以降においても,学校生活に満足していない者の参加状況が比較的高くなっていることも前述したことと関連があると思われる。


図4-4-7 学校生活満足度別部活動の状況(文化部に入っている中学生)  <CSVデータ>

文化部に所属している中学生の学校生活に対する満足度を示したグラフ

図4-4-8 学校生活満足度別部活動の状況(運動部に入っている中学生)  <CSVデータ>

運動部に所属している中学生の学校生活に対する満足度を示したグラフ

図4-4-9 学校生活満足度別部活動の状況(文化部に入っている:高校生以上)  <CSVデータ>

文化部に所属している高校生以上の学生の学校生活に対する満足度を示したグラフ

図4-4-10 学校生活満足度別部活動の状況(運動部に入っている:高校生以上)  <CSVデータ>

運動部に所属している高校生以上の学生の学校生活に対する満足度を示したグラフ

次に,児童会,生徒会あるいは学生自治会との関わりと学校生活満足度との関連をみてみる。図4-4-11に「児童期」と「青年期前期」における関わりを,図4-4-12に「青年期中期」以降における関わりを示した。これをみると,学校生活の満足度が高い者ほど児童会,生徒会等の活動を積極的に行っていたり,あるいは活動へ協力的な態度を持っていることがわかる。


図4-4-11 学校生活満足度と児童会・生徒会との関わり(小学生・中学生)  <CSVデータ>

児童会・生徒会と関わりがある小中学生の学校生活に対する満足度を示したグラフ

図4-4-12 学校生活満足度と児童会・生徒会との関わり(高校生以上)  <CSVデータ>

児童会・生徒会と関わりがある高校生以上の学生の学校生活に対する満足度を示したグラフ

学校は学舎であり,勉強を避けて通ることはできない。図4-4-13に「児童期」と「青年期前期」における学校生活満足度と勉強の得意さ加減の関連を,図4-4-14に「青年期中期」以降の関連を示した。これをみると,傾向としては,勉強が得意な者ほど学校生活の満足度が高くなることがわかる。やはり,当然のことではあるが,学校に行く目的が明確にあり,それによって自らが達成感等を感じうるものがあれば,学校生活の満足感につながっていくといえる。しかし,「青年期前期」及び「青年期中期」のいわゆる思春期に当たる時期においては,不安定な心理的な状態を抱えながら何とか学校に適応しようとして部活動に参加しようと試みたりするものの,なかなか自らの欲求を充足できない姿が,文化部の参加者の中で学校生活に満足することができない者が比較的多いことなどから垣間見ることができる。


図4-4-13 学校生活満足度と勉強(小学生・中学生)(「とてもとくい」「とくいなほう」の合計)  <CSVデータ>

勉強が得意な小中学生の学校生活に対する満足度を示したグラフ

図4-4-14 学校生活満足度と勉強(高校生)(「とてもとくい」「とくいなほう」の合計)  <CSVデータ>

勉強が得意な高校生以上の学生の学校生活に対する満足度を示したグラフ

学校生活に対する満足度を概観してきた。全体としては高い満足度を示していると考えることができる。しかしながら,おおよそ10%〜20%の割合で,学校生活に不満を抱いている子どもがいることも見逃してはならない。不満を抱く要因を検討し必要な対策を講じることが大切であると考える。


3 生活の満足度

(1) 家庭生活

家庭生活の満足度に関する質問項目は,親を除くすべての対象者に対して「あなたは,自分の家庭での生活が楽しいですか。」という質問に対して,「とても楽しい,楽しい,あまり楽しくない,楽しくない」から選択させている。図4-4-15は,家庭生活の満足度について,各年齢段階ごとに「とても楽しい」「楽しい」と回答した割合を前回調査と今回調査について比較したものである。


図4-4-15 家庭生活満足度(年齢別)  <CSVデータ>

9歳〜24歳の年齢別に家庭生活の満足度を前回調査と比較して示したグラフ

これをみると,「とても楽しい」「楽しい」と回答した割合は,前回調査及び今回調査ともすべての年齢段階で80%を超えており,学校生活の満足度以上に,家庭生活に対して高い満足度を示していることがわかる。しかし,「とても楽しい」に注目してみると,前回調査,今回調査とも「青年期前期」以降で20%台に低下していることがわかる。9歳から12歳の「児童期」比べると特に16歳〜20歳の「青年期中期」から「青年期後期」にかけて顕著に満足度が低下している。この時期は前述したように第2次反抗期の始まる時期で,この時期は,親や教師の期待や価値観等に疑問を感じ始める時期であり,特にこの時期の子どもの考え方は一般的に純粋であるため,より現実的な(いわゆる長いものに巻かれろ式の)親の意見や態度が納得できない,といった感情を持ちやすいという特徴を持っている。そのために相対的に家庭生活に対する揺るぎない満足を得ることが困難である時期といえる。


次に学校生活の満足度と同様の方法で,前回調査と今回調査を比較してみたいと思う。前回調査時点での「児童期」と今回調査の「青年期前期」における家庭生活満足度は6ポイント減少しているのに対して,前回調査の「児童期」と今回調査の「青年期中期」における満足度の差は11ポイント減少となっている。特に「とても楽しい」という選択肢に注目すると,前回調査の「児童期」と今回調査の「青年期前期」で14ポイントの減少,前回調査の「児童期」と今回調査の「青年期中期」で23ポイントの減少を示しており,家庭生活の満足度が大きく低下しているといえる。


図4-4-16 家庭生活満足度(1)児童期(前回調査)と青年期前期(今回調査)  <CSVデータ>

児童期(前回調査)と青年期前期(今回調査)での家庭生活の満足度を比較して示したグラフ

図4-4-17 家庭生活満足度(2)児童期(前回調査)と青年期中期(今回調査)  <CSVデータ>

児童期(前回調査)と青年期中期(今回調査)での家庭生活の満足度を比較して示したグラフ

同様に,図4-4-18及び図4-4-19に示すように,前回調査の「青年期前期」と今回調査の「青年期中期」では,10ポイントの減少,前回調査の「青年期前期」と今回調査の「青年期後期」では3ポイントの減少となっている。また,「とても楽しい」だけを比較すると,前回調査の「青年期前期」と今回調査の「青年期中期」では8ポイントの減少,前回調査の「青年期前期」と今回調査の「青年期後期」では7ポイントの減少となっている。前述したように,前回調査の「児童期」との比較では大きく満足度が低下していたが,「青年期」の前期・中期・後期の比較では「児童期」との比較のような大幅な低下はみられないものの,前回調査の「青年期前期」と今回調査の「青年期中期」では10ポイント前後の家庭生活満足度の低下がみられた。これは,「児童期」と「青年期」における心理的な安定度の違いが顕著に現れていると考えることができる。しかし,図4-4-20に示すように,「青年期」の中でも,後期に移行すると家庭生活の満足度が逆に高まっていくことがみてとれる。


図4-4-18 家庭生活満足度(3)青年期前期(前回調査)と青年期中期(今回調査)  <CSVデータ>

青年期前期(前回調査)と青年期中期(今回調査)での家庭生活の満足度を比較して示したグラフ

図4-4-19 家庭生活満足度(4)青年期前期(前回調査)と青年期後期(今回調査)  <CSVデータ>

青年期前期(前回調査)と青年期後期(今回調査)での家庭生活の満足度を比較して示したグラフ

図4-4-20 家庭生活満足度(5)青年期中期(前回調査)と青年期後期(今回調査)  <CSVデータ>

青年期中期(前回調査)と青年期後期(今回調査)での家庭生活の満足度を比較して示したグラフ

(2) 父母と家庭生活満足度との関係

前述したように,発達段階によって家庭生活に対する満足度の低下傾向は見られたものの,全体的には極めて高い満足度が示されている。ここでは,家庭生活の満足度と父母とのコミュニケーションとしての会話との関係をみてみることとする。図4-4-21は,「児童期」及び「青年期前期」,「青年期中期」以降における家庭生活の満足度と母親との会話の頻度をみたものである。これをみると,「児童期」及び「青年期前期」,「青年期中期」以降の発達段階を問わず,家庭生活の満足度が高いほど母親との会話の頻度が顕著に高いことが示されている。図4-4-22は,家庭生活の満足度と父親との会話の頻度をみたものであるが,母親とほぼ同様の傾向であることがわかる。やはり,親子の親密な会話は,子どもの不安定な心理をも包み込む大切なコミュニケーションであるということができる。「青年期」特に思春期における子どもの取り扱いは,困難を極める。この時期の子どもは,「のれんに腕押し」のつもりで扱うぐらいでちょうどいいといわれるくらいである。しかしながら,このような時期であっても,コミュニケーションとしての会話は大切なものであるということができよう。それが親が子どもを理解し,子どもが親を理解することの手がかりとなりうるからである。


図4-4-21 家庭生活満足度と母親との会話  <CSVデータ>

母親との会話が多い小中学生の家庭生活に対する満足度を示したグラフ

図4-4-22 家庭生活満足度と父親との会話  <CSVデータ>

母親との会話が多い高校生以上の学生の家庭生活に対する満足度を示したグラフ

次に,母親や父親が,普段子どもの気持ちをどの程度わかっていると考えているかということと,家庭生活の満足度との関係をみてみる。図4-4-23は,「児童期」及び「青年期前期」,「青年期中期」以降に区分して,家庭生活の満足度と母親が子どもをどの程度理解していると考えているかを示したものである。これによると,「児童期」及び「青年期前期」,「青年期中期」以降のいずれも,家庭生活の満足度が高いものほど母親は自分のことをよく理解してくれているととらえていることがわかる。図4-4-24は,同様に父親に関するものである。これについても母親とほぼ同様の結果が示されている。やはり,家庭生活の満足度をささえる主要な部分は,お互いの理解度が大きな要因となっていると考えることができる。前述した父母との会話の頻度の高さが家庭生活の満足度の高さと密接な関係を持っていることが示されたが,お互いを理解するためにも家族間における会話は大切な要素であろう。それらが積み重ねられることにより,家族の構成員がお互いを理解し合い,結果として家庭生活の満足度を形作っていくと考えることができる。


図4-4-23 家庭生活満足度と母親の理解度  <CSVデータ>

母親の理解度が高い小中学生の家庭生活に対する満足度を示したグラフ

図4-4-24 家庭生活満足度と父親の理解度  <CSVデータ>

母親の理解度が高い高校生以上の学生の家庭生活に対する満足度を示したグラフ


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