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第3章 子どもの問題行動の発達的特徴とその背景にある諸要因
―親の養育態度に注目して―


お茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授 伊藤 美奈子

要旨


本章では,非行の低年齢化が危惧される小・中学生を対象に,問題行動(逸脱行動,抑鬱傾向,攻撃性)と規範意識についての発達的特徴を明らかにすると同時に,その背景にあると考えられる親の養育態度との関係について,“関係性”と“規制”という観点から検討することを目的とした。

その結果,以下のような特徴が明らかにされた。まず分析1では,発達的分析を行い,年齢とともに逸脱行動の増加と規範意識の弱まりという現象がパラレルに生じ,逸脱行動・攻撃性・抑鬱性が中学生で強まるという問題の深刻化傾向が示唆された。特に女子においては,行動に顕在化される逸脱性は低いが,脱規範得点の高まりや抑鬱性の強さに見るように,中学生段階で「本人さえよければ」という条件付きで逸脱していく傾向やより内向した抑鬱性が強まるという結果になった。また,親の養育態度に対する子どもの評価,親自身の評価も,年齢に応じて,また男女の間で特徴的な変化を示すことが示唆された。

分析2では,親の養育態度を“関係性”と“規制”の2軸により,4つのタイプ(両高タイプ・密着タイプ・管理タイプ・低関与タイプ)に分類し,タイプ間比較を行った。その結果,最も健全な子どもを持つ親が多い“両高タイプ”,逸脱行動はやや多いが自己イメージは良好で親子の関係も好ましい“密着タイプ”,逸脱行動は少ないが子どもの自己イメージと親子関係はやや否定的な“管理タイプ”,子どもの問題傾向が最も強い“低関与タイプ”という特徴が示された。また,関係性の乏しい親には,親としての自信の欠如や子育てへの迷いのあること,さらには夫婦の会話の少なさに示されるように父親の関与も低いことが明らかになった。子どもたちの健全育成には,親としての自信と優しさに裏付けされた“血の通った厳しさ”が必要とされていることが示唆された。


問題

近年,「キレる子どもたち」と言われるように,ストレスに対する耐性が弱く,すぐに攻撃性を他者に向かわせる子どもたちが増えてきた。平成5年以降の少年非行の増加傾向は“戦後第4のピーク”として注目されているが,その特徴として,年少・年中少年の増加,女子非行の増加,罪悪感の欠如,規範意識の乏しさ,行為結果に対する理解の欠如などが挙げられ,「いきなり型非行」,「遊び型非行」の増加が問題視されている。

これら非行現象の背景としては,家庭,学校,社会などさまざまな要因が複雑に絡みながら関与することが指摘されている。とりわけ,現代社会全体の問題として,家庭における“厳しい父性の欠如”が問題視されるようになり(林,1996),子どもたちに社会の厳しさやルールを伝える“厳しい父性”が欠如し,それが子どもたちの非行化や逸脱化を抑制できないという状況を作り出しているという指摘もある。ただし,ここでいう“父性”とは父親そのものを意味しない。近年,古典的な性役割分業が崩れつつあるといわれる一方で,離婚家庭や崩壊家庭の増加に伴い,一人親に父性・母性の両方が求められることも増えている。父親・母親個人の中にも父性と母性は備わっていると考えるべきであり,子どもに対してもそれら両面をバランスよく発揮することが求められているのかもしれない。

本章では,子どもの問題行動が年齢や性別によってどのように異なるのか,その背景にある要因は何なのかについて検討する。その際注目したいのが親の養育態度である。家庭の教育力の低下が叫ばれる昨今,子どもの問題と親の養育態度はどのように関連しているのであろうか。

Baumrind(1991)によると,養育態度は,親の行動から抽出された要求性と反応性という2軸でとらえられ,その強弱の組合せにより,権威的,権威主義的,寛容拒否・無視の4タイプに分類された。その後さまざまな追試研究の結果,要求性・反応性をともに備えた権威的養育スタイルの家庭の子どもが最も良好な適応状態を示すという結果が得られている(Weiss&Schwarz,1996;Lamborn et al.,1991など)。これはつまり,子どもの健全な成長に対しては,子どもの要求に対し親密に対応する“反応性”だけでなく,子どもを正しい方向に志向させるようコントロールする“要求性”を,ともに備えることが重要であるということを意味している。ただし,親子の絆を重視し,特に最近の少子化に伴って過保護な家庭の増加が危惧されつつある日本社会においては,どのような養育態度が子どもの非行化抑制に関与しているのであろうか。

本稿では,非行の低年齢化が危惧される小・中学生を対象に,問題行動の発達的特徴を明らかにすると同時に,その背景にあると考えられる親の養育態度との関係について検討することを目的とする。


方法

分析対象 保護者用を母親が回答したデータにしぼり,子ども・親のペアデータを分析対象とした。

調査内容 本稿では,以下の調査結果に注目する。

《子ども対象データ》

1)養育態度に関する質問:親の養育態度を表す項目(青−Q7,Q8)について,「よくある/あてはまる」から「めったにない/あてはまらない」までの4件法に「わからない」を加えた5択肢から1つ選択するよう求めた。2)逸脱行動経験度を聞く11項目(青−Q15)。3)自己意識に関する項目(青−Q19)。4)問題性尺度:攻撃性と抑鬱性に関する尺度(青−Q16,Q17,Q18)。これら2)〜4)については1)同様に5択肢の中から一つ回答するという形式で実施した。5)問題行動に対する規範意識に関する質問:逸脱行動15項目(青−Q20)に対し,「してはいけないと思うもの」を選ぶ(複数可)という回答方法を採った。6)脱規範性に関する質問:逸脱行動や違法行為6項目(青−Q21)に対し「本人の自由だと思うもの」を選択(複数可)するよう求めた。

《保護者対象》

1)'養育態度に関する質問:自らの養育態度や子どもとの関係を意味する項目について(保−Q1,Q2,Q3,Q7),「あてはまる/よくある」から「あてはまらない/めったにない」までの4件法に「わからない」を加えた選択肢から1つ選択するよう求めた。2)'子育てに関する迷いと自信に関する質問(保−Q6):9項目に対し1)と同様の方法で回答を求めた。3)'問題行動に対する規範意識に関する質問:子ども対象の質問紙と同様の逸脱行動15項目に6)の違法行為6項目を加えた21項目(保−Q10)に対し,「子どもくらいの児童・生徒がするのはどのくらい悪いことか」という質問に対し「とても悪い」から「全然悪くない」までの4件法に「わからない」を加えた選択肢から1つ選ぶという回答方法を採った。本稿では,子どものデータと対応している15項目の合計得点を分析対象とした。さらに,4)「夫婦の会話」に関する質問:保−Q2(ウ)に対し,1)'と同様の方式で回答を求めた。

以上の項目について因子分析した結果,それぞれ以下のような下位因子が抽出された(詳しい因子分析結果については,付表3−3−1〜付表3−3−5までを参照のこと)。

1)子ども対象の親の養育態度

 <信頼>:「親を尊敬している」「親の言うことは正しい」など4項目。

 <対話>:「家族と買い物や遊びに出かける」「お父さんと話をする」など,家族との外出や対話に関する6項目。

 <しつけ>:「人に迷惑をかけるなと言われる」「だらしなくするなと言われる」の2項目。

 <干渉>:「友達づきあいに口をはさむ」「私を思い通りにしたいと思っている」など5項目。

2)逸脱行動経験尺度

 主成分分析の結果,一因子性が確認されたため,11項目の合計点を“逸脱行動”得点と扱う。

3)自己意識に関する尺度

 <目標志向>:「人の役に立ちたい」「勇気のある人間になりたい」という8項目。

 <自己評価>:「私はやる気がある」「いつも頑張っている」という4項目。

4)規範意識尺度

 これについても一因子性が確認されたため,本稿では合計得点を“規範意識”得点と扱う。

5)問題性尺度

 <攻撃性>:「怒ったり乱暴をしてしまう」「腹が立つとつい手が出てしまう」など4項目。

 <抑観性>:「過去の失敗をくよくよ考える」「ものごとに集中できない」など3項目。

6)逸脱規範性尺度

 これについても,一因子性が確認されたため,合計得点を“脱規範性”得点と扱う。

1)'保護者対象の養育態度

 <コミュニケーション>:「子どもとよく話をする」「子どもの話をよく聞く」など5項目。

 <外出>:「家族で食事に出かける」「家族で旅行に行く」など3項目。

 <規制>:「食事中にテレビを見ないようにしている」「子どもの寝る時刻を決めている」など3項目。

 <叱責・束縛>:「子どもをひどく叱ったりたたいたりする」「親の思い通りにさせたい」など4項目。

2)'子育てに対する迷いと自信尺度

 <迷い>:「子育てに関して途方に暮れる」「子どもをうまく叱れない」など4項目。

 <自信>:「子どもはうまく育っている」「子どもとの関係はうまくいっている」など4項目。

3)'規範意識尺度

 子どもとの比較検討を可能にするため,子ども対象と同じ項目15項目について合計得点を“規範意識”尺度として扱う。

調査対象 親子ペアのデータで,かつ母親回答によるもの2217組を分析対象とした。


結果と考察

分析1:校種・性別による比較と各得点間の関連

1 学年・性別による得点の比較

各得点について,小学校4〜6年の平均得点と中学校1〜3年までの平均得点を男女別に算出した(表3−3−1)。性別と校種別の2要因の分散分析を行った結果,逸脱行動・攻撃性得点については校種による主効果が有意で(それぞれF(1,2042)=99.22,p<.01;F(1,2042)=4.58,p<.05),3得点とも小学生より中学生の方が問題性を顕著に示した。逸脱行動では性による主効果も有意で(F(1,2042)=34.38,p<.01),男子の方が有意に強い傾向を示した。また,抑鬱性では交互作用が見られたため(F(1,2042)=3.98,p<.05),下位検定を行った結果,小学生では性差は認められなかったが,中学生では女子の方が得点が高いことが確認された(t(1045)=3.39,p<.01)。


表3−3−1 各得点の性別・校種別平均と標準偏差  <CSVデータ>

df=3/2042
  小学校男子
521人
中学校男子
515人
小学校女子
478人
中学校女子
532人
主効果性 校種 交互作用
逸脱行動 14.58(3.04) 15.79(3.87) 13.44(2.37) 15.19(3.81) 34.38** 99.22** 3.39+
抑鬱性 2.12( .65) 2.26( .61) 2.14( .65) 2.39( .59) 6.84** 48.62** 3.98*
攻撃性 2.08( .71) 2.10( .68) 2.03( .73) 2.15( .69) n.s. 4.58* n.s.
規範意識 12.00(3.78) 10.70(3.90) 12.54(3.29) 10.75(3.65) 3.11+ 89.74** n.s.
脱規範 .68(1.24) 1.21(1.40) .78(1.29) 1.35(1.41) 3.89* 85.79** n.s.
目標志向 3.41( .58) 3.36( .54) 3.47( .53) 3.53( .46) 25.26** n.s. 5.78*
自己評価 2.83( .69) 2.72( .66) 2.72( .69) 2.62( .65) 11.87** 12.06** n.s.
信頼 3.12( .75) 2.96( .69) 3.19( .74) 3.08( .67) 9.95** 17.08** n.s.
対話 2.92( .46) 2.78( .50) 3.10( .43) 3.02( .49) 102.98** 28.45** n.s.
しつけ 3.14( .80) 3.09( .78) 2.98( .88) 2.90( .85) 22.79** 2.90+ n.s.
干渉 2.01( .62) 2.13( .60) 2.07( .63) 2.17( .61) 3.77+ 15.57** n.s.
コミュニケーション 3.61( .36) 3.60( .40) 3.59( .37) 3.66( .37) n.s. 3.86* 5.95*
外出 3.01( .70) 2.75( .77) 3.12( .66) 2.91( .70) 19.38** 56.13** n.s.
規制 2.50( .75) 2.15( .78) 2.46( .78) 2.10( .79) n.s. 108.75** n.s.
束縛 1.98( .58) 1.80( .56) 1.97( .56) 1.75( .56) n.s. 63.62** n.s.
迷い 2.14( .65) 2.19( .64) 2.22( .63) 2.15( .64) n.s. n.s. 4.81*
自信 3.46( .50) 3.40( .53) 3.37( .53) 3.42( .50) n.s. n.s. 5.47*
親の規範 3.50( .33) 3.49( .33) 3.50( .30) 3.48( .32) n.s. n.s. n.s.
**:p<.01 *:p<.05 +:p<.1

次に,逸脱行動を抑制すると考えられる規範意識得点,促進すると考えられる脱規範得点については,ともに校種による主効果が有意で(それぞれF(1,2042)=89.74,p<.01;F(1,2042)=85.79,p<.01),脱規範では性による主効果も見られた(F(1,2042)=3.89,p<.05)。このように,規範意識は小学校では女子の方が明らかに強いが,中学校では男女の差がなくなる。また脱規範は,小学校より中学校の方が強く,男女で比較すると女子の方が強いということが明らかにされた。

このように,問題行動についてほ小学生より中学生の方に強く見られ,外向的な逸脱行動や攻撃性は男子の方が強いが,内向的な抑観性は女子(とりわけ中学生の女子)に強く見られた。また,それを裏付けるように,規範意識は小学生より中学生の方が低く,一方脱規範は中学生で高まる。さらにこの規範意識の低下減少は女子の方に顕著であることも明らかになった。このように,年齢とともに逸脱行動の増加と規範意識の弱まりという現象がパラレルに生じ,逸脱行動・攻撃性・抑鬱性が中学生で強まるという多様な問題が同時に深刻化していく傾向が示唆された。特に女子においては,行動に顕在化される逸脱性は低いが,脱規範得点の高まりや抑鬱性の強さに見るように,中学生段階で「本人さえよければ」という条件付きで逸脱を許容していく傾向や,より内向した抑鬱性が強まるという結果になった。

次に,自己意識2得点のうち目標志向については女子の方が高く,さらに交互作用が有意であった(F(1,2042)=5.78,p<.05)。下位検定の結果,男子においては校種による差が見られなかったが,女子では小学生より中学生で有意に高いということが示された(t(946);2.03,p<.05)。自己評価については校種・性による主効果がともに有意で(それぞれF(1,2042)=12.06,p<.01;F(1,2042)=11.87,p<.01),女子に比べ男子の方が高かったが,ともに年齢とともに低下する様子がうかがえた。自らに課す目標は女子の方が高いが,その反面で女子の方が自己評価は低く,理想と現実のギャップが大きいことを示唆するが,これは女子の抑鬱傾向の強さを裏付ける結果であるといえる。また,中学生の方が自己評価が低下するという点は,先の問題性の増大と考え併せると,小学生に比して中学生という時期が行動面・心理面両方で不安定になりやすいという特徴を持つことを示唆する結果である。

子どもが認知した親の養育態度3得点<信頼><対話><しつけ>については性差が有意で(それぞれF(1,2042)=9.95,p<.01;F(1,2042)=102.98,p<.01;F(1,2042)=22.79,p<.01),<信頼><対話><干渉>では女子の方が,<しつけ>については男子の方が高かった。また,<信頼><対話><干渉>は校種差も見られた(それぞれF(1,2042)=17.08,p<.01;F(1,2042)=28.45,p<.01;F(1,2042)=15.57,p<.01)。肯定的な関係性を意味する<信頼><対話>と<しつけ>では小学生の方が,否定的な関係を意味する<干渉>では中学生の方が高得点であった。つまり,親との良好な関係を意味する信頼関係や対話は,男子より女子に多く認知されており,子どもの年齢とともに減少する。また人への迷惑やだらしなさを禁止する<しつけ>は,男子の方が高く評定しており,また,小学生より中学生の方が多く認知していることがわかる。

このように,親の養育態度に対する子どもの認識は,<信頼>や<対話>のようにポジティブな関わりの濃密さは年齢とともに低下し,その一方で干渉と見なす傾向が強まる。また性差に注目すると,社会の規範を伝える意味を持つしつけは男子の方により強く認知されており,親からの関わりを「鬱陶しい」と認知する傾向は年齢とともに高まるといえる。

他方,親自身が評価する養育態度については,<コミュニケーション>のみで交互作用が見られ,(F(1,2042)=5.95,p<.05),下位検定の結果,男子においては校種による差が見られなかったが,女子では小学生より中学生で有意に高いということが示された(t(1008)=3.18,p<.01)。また,<外出><規制><束縛>では校種差が有意で(それぞれF(1,2042)=56.13,p<.01;F(1,2042)=108.75,p<.01;F(1,2042)=63.62,p<.01),中学生の子どもを持つ親の方が低かった。また,<外出>では性差も見られ,女子の親の方が子どもとの外出をより多く行っていると答えていることがわかる。子ども自身の親に対する評価と同様,年齢とともに子どもから距離を置くようになる親が多いが,女子に対する積極的関わり(外出とコミュニケーション)は,中学生になっても依然強いことが示唆された。


2 問題性3得点の内部相関と,自己意識2得点との相関

問題行動の背景にある心理的要因を探るため,問題性得点と自己意識との関連を男女別に調べた。その結果,表3−3−2に示すように,逸脱行動は,攻撃性・抑鬱性とも有意な正の相関があり,また攻撃性と抑鬱性との間にも正の相関が見られた。つまり,モラル破りやルール違反のような逸脱行動の背景には,外向的な攻撃性や内向的な抑鬱性が共存している可能性が示された。これは,非行や攻撃行動という反社会的問題と抑鬱性に代表される非社会的問題との境界が曖昧になりボーダレス化が進みつつあることを示唆する結果であるといえる。また,これらの問題傾向と規範意識との関連に関して,逸脱行動は,規範意識がなく脱規範傾向が強い者に多く見られることが示された。さらに,攻撃性についてもそれとほぼ同じ特徴が見られたが,抑鬱性については規範意識との関連は弱いということがうかがえた。逸脱行動や攻撃性のように外向的な問題は,規範意識により抑制されうるが,鬱傾向のような内向的な問題は規範意識とは無関係に生じることを示唆する結果といえる。


表3−3−2 問題性得点の内部相関と自己意識2得点との相関  <CSVデータ>

  逸脱行動 抑鬱性 攻撃性 規範意識 脱規範 目標志向 自己評価
逸脱行動 - .229** .385** -.332** .173** -.271** -.188**
抑鬱性 .263** - .330** -.032 .031 .050 -.115**
攻撃性 .379** .330** - -.147** .073* -.089** -.082**
規範意識 -.366** -.115** -.176** - -.149** .252** .162**
脱規範 .263** .138** .143** -.256** - -.084 -.087
目標志向 -.171** .089** -.086** .250** -.015 - .509**
自己評価 -.168** -.154** -.111** .155** -.025 .462** -
**:p<.01 *:p<.05
右上段:男子,左下段:女子

さらに,自己意識との関連を見ると,逸脱行動は目標志向性・自己評価ともに負の相関が見られた。つまり,逸脱行動を多く行う者には目標志向性も自己評価も低く,否定的な自己イメージを持つ者が多いといえる。また攻撃性も,ごくわずかであるが,否定的な自己イメージとの関連が見られた。

一方,抑鬱性についても自己評価との負の相関は共通してみられたが,目標志向性については正の関係が見られた。つまりこの結果は,抑鬱性が高い者には,目標を高く掲げその一方で自己評価が低い者が多いという傾向を示すと解される。抑鬱傾向の強い者の場合,目標を高く掲げつつもそれに到達しない自分自身に対し嫌悪感(自己評価の低さ)を持ち,それがさらに抑鬱気分をもたらすというメカニズムがあることをうかがわせる。また,規範意識の高さは,目標志向性・自己評価とも正の関連が見られた。つまり,規範意識が強い者には,逸脱行動や攻撃性を示す者が少ないというだけでなく,良好な自己イメージを抱く者が多く,これら三者は相互に関連しながら,子どもの適応性を示唆する指標となっていると考えられる。

以上は男女にほぼ共通した結果であったが,女子の特徴として,脱規範得点が逸脱行動,抑鬱性,攻撃性3得点との間に,弱いが有意な正の相関を持つ点が挙げられる。1で見たように,女子の方が脱規範傾向が強く,かつその傾向が問題行動と関連するという点に,女子青少年の危うさがうかがえる。


3 親の規範意識と子どもの問題行動得点との関連

親自身の規範意識の高さが子どもの問題行動とどのような関連を有するかを調べるために,両者の相関を調べた(表3−3−3)。その結果,親の規範意識ほ子どもの問題行動並びに脱規範傾向とほとんど関連を示さないことが明らかになった。一方,子どもの規範意識と親の規範意識との間には,弱い正の相関が見られた。つまり,親から子どもに対するしつけを通して,親の規範意識が伝授される可能性は若干ながら残されたが,親の規範意識が直接子どもの問題行動を抑制する可能性はほとんどないということが示唆された。


表3−3−3 規範意識と子どもの問題行動得点との関連  <CSVデータ>

  問題行動 規範意識
逸脱 抑鬱性 攻撃性 規範意識 脱規範
親の規範意識 -.047* .012 -.012 .161** -.008
**:p<.01 *:p<.05

4 子どもが認知した問題性得点・規範意識・自己意識と親の養育態度との関連

そこで次に,親の養育態度と子どもの特性との関連に注目する。そこでまず,子ども自身が認知した親の養育態度と,子ども自身の問題性・規範意識・自己意識との関連を調べたところ,表3−3−4に示すように,親との良好な関係性を意味する<信頼><対話>と,否定的な関係を意味する<干渉><しつけ>とでは,明らかに相関の在り方に違いが見られた。まず<信頼><対話>については,逸脱行動とは負の関連が見られ,規範意識や自己意識2得点とは正の相関が有意であった。この結果より,親との間に信頼関係が形成されており,対話が成立していると評価する子どもには,逸脱行動が見られにくく,規範意識も形成され,目標志向性や自己評価も良好なものが多いということが示された。一方,親から干渉されていると認知している子どもには,逸脱行動・抑鬱性・攻撃性ともに高く,規範意識が低い者が多い。

また,親からのしつけを多く受けていると認知する子どもには,逸脱行動も多く攻撃性も高いが,一方目標志向性は高いということが示唆された。


表3−3−4 子どもの問題性得点・自己意識得点と親の養育態度(子ども評価)との相関  <CSVデータ>

  問題行動 規範意識 自己意識
逸脱 抑鬱性 攻撃性 規範意識 脱規範 目標志向 自己評価
信頼 -.239** .002 -.073** .192** -.080** .380** .385**
対話 -.224** -.039+ -.071** .174** -.105** .292** .269**
しつけ .141** .099** .147** .027 -.035 .093** .024
干渉 .233** .234** .214** -.105** .041+ .035 -.023
**:p<.01 *:p<.05 +:p<.1

以上のように,親との間で「信頼」や「対話」という良好な関係を評価している子どもには,問題行動が現れにくく,規範意識も高く,自己イメージもポジティブであるが,親からの関わりを「干渉」というように“うるさい”ものととらえる子どもには,問題性を有し規範意識も低い者が多い。また,社会規範としての「しつけ」を強く受けていると認知している子どもには,外向的な問題性も感じられるが,その一方で目標志向性のように自分自身に対して前向きな意識を持つ者も多く含まれる傾向にある。ただしこれらの結果は,見方を変えると,たとえば逸脱行動に走りやすい子どもが親の対応を干渉というようにネガティブに認知しやすいということとも解され,その因果関係の読みとりには慎重であるべきであろう。


5 子どもの問題性得点・規範意識・自己意識と親評価による養育態度との関連

親自身の評価による養育態度と子どもの各変数との関連を調べた(表3−3−5)。まず,相関の強さに注目すると,この親自身の評価との関連は,子どもによる養育態度評価との関連に比して弱い。子どもの問題行動は,親自身が実際にどのような養育態度で子育てをしているかに規定されるというより,子どもの側の要因(問題性や自己意識)がその親への評価を左右するという関連の方がより顕著であるといえる(たとえば,「逸脱行動に走りやすい子どもほど,親からの関わりを「干渉」と受け取ることが多い」など)。


表3−3−5 子どもの問題性得点・自己意識得点と親の養育態度(母親評価)との相関  <CSVデータ>

  問題行動 意識規範 自己意識
逸脱 抑鬱性 攻撃性 規範意識 脱規範 目標志向 自己評価
コミュニケーション -.024 -.037+ -.046* .081** -.040+ .104** .142**
外出 -.104** -.034 -.035 .084** -.082** .067** .078**
規制 -.159** -.045* -.049* .170** -.114** .075** .089**
束縛 .058 .017 .124** .030 -.090** -.005 -.021
**:p<.01 *:p<.05 +:p<.1

次に,相関の中身について検討する。親自身が子どもを叱責・束縛するような養育態度を取る場合,子どもの攻撃性は高い。一方,対話や外出のようなコミュニケーションを大事にする親の子どもには,目標志向性や自己評価という自己イメージが良好であることが多く,特に,子どもとの外出の機会を多く持つ親子の場合,子どもが逸脱行動を起こす頻度は小さい。さらに,子どもを規則で統制しようとする傾向が強い親の場合も,子どもが逸脱行動を起こしにくく,規範意識は形成され,脱規範の傾向も弱いという結果が得られた。以上の結果から考えると,親からの叱責や束縛は決して肯定的に作用せず,かえって子どもの反抗や混乱を生じさせるが,親密な関係性(コミュニケーションや外出)や正当なしつけ(規制)は,子どもを非行化から守り,肯定的な自己イメージと規範意識を形成するのに貢献しているといえる。

ただしこの結果は,逸脱行動に走りやすい子どもに対しては,親も高圧的な態度で接することが求められるという結果を示唆するとも考えられ,親の養育態度が一義的に子どもの問題に影響するという図式が成立するわけではないという点も考慮すべきであろう。他方,親自身により評価された迷いと自信得点との相関に注目すると(表3−3−6),<コミュニケーション>と<自信>,<叱責・束縛>と<迷い>との間にかなり強い正の関連が見られた。自らの子育てに自信を持っている親ほど,子どもとのコミュニケーションをさかんに行い,自らの子育てに迷いを抱えている親ほど子どもを縛り付けようとするというメカニズムが明らかにされた。これより,子どもに対する高圧的な叱責や束縛が,親としての威厳に裏打ちされたものではなく,親としての自信のなさを背景とする防衛的な振る舞いである可能性が示唆された。


表3−3−6 親の迷い・自信と養育態度(母親評価)との相関  <CSVデータ>

  迷い 自信
コミュニケーション -.163** .375**
外出 -.076** .089**
規制 -.047* .054*
束縛 .359** -.074**
**:p<.01 *:p<.05

6 子どもが認知した親の養育態度と母親による養育態度との関連

では,実際の親の養育態度は,子どもにどのように評価されるのであろうか。子ども評価による養育態度得点と母親評価による養育態度得点との相関を調べた(表3−3−7)ところ,子どもからのポジティブな評価といえる<対話><信頼>は,親側の<コミュニケーション><外出><規制>との間に有意な正の関係が見られた。一方,子どもが<干渉>と認知しているのは,親からの<叱責・束縛>的な態度のみである。


表3−3−7 子どもが認知した養育態度と親の養育態度(母親評価)との相関  <CSVデータ>

子ども\母親 コミュニケーション 外出 規制 束縛
信頼 .142** .193** .060** -.003
対話 .137** .337** .021 -.016
しつけ .145** .152** .030 -.062*
干渉 -.013 -.007 .087** .180**
**:p<.01 *:p<.05

以上のことからも,親からの関わりのうち,理不尽な叱責や体罰を含む束縛的態度は子どもにはうるさいものとうつり,それが子どもの攻撃性を引き出すことにもなりうるが,受容的で親密な関係であるコミュニケーションや外出といった関わりのみならず,きちんとしたルールや習慣をしつけようという規制的態度は,子どもからも好意的に評価されるということが示唆された。


分析2:親の養育態度による4タイプ抽出とその比較

1 親のタイプ抽出

上記の分析で,親の養育態度の中でも,子どもにとって干渉とうつり攻撃性や逸脱行動とも関連を持つ“叱責・束縛”と,子どもに肯定的にとらえられるという点で共通性を持つ“関わり”(コミュニケーション,外出,規制)とは異なった位相にあることが示唆された。

そこで,これら4得点の内容及び2次因子分析の結果から,次の2軸を抽出した。一つは,子どもの要求に対して親密に対応する“反応性”(Baumrind,1991)に通じる<コミュニケーション>と<外出>であり,もう一方は,日常生活のしつけを意味しBaumrindがいう“要求性”に近い内容を含む<規制>である。そこで,本稿ではこれを“関わり”“規制”得点と再定義し,これら2得点の高低の組合せにより,母親の養育態度を以下の4つに分類した(ただしこの際関わり得点・規制得点について性と校種による主効果が有意であったので,各群の平均得点で高低2群に分けるという方法を取った。そのため,各群の校種・性別人数に偏りは見られない)。抽出された4タイプは,関わり・規制ともに高い“両高タイプ”,関わりは高く規制は低い“密着タイプ”,関わりが低く規制が高い“管理タイプ”,ともに低い“低関与タイプ”と命名された(図3−3−1)。


図3−3−1 4タイプの特徴  <CSVデータ>

関わり得点及び規制得点による母親の4つの養育態度の分類を示した図

2 4タイプ間の得点比較

4タイプそれぞれの平均得点を算出し,分散分析を行った(表3−3−8)。まず,逸脱行動と攻撃性については,有意差及び差の傾向が見られ(それぞれF(3,2042)=11.96,p<.01;F(3,2042)=2.15,p<.1),低関与タイプと密着タイプが高く,両高タイプと管理タイプは低かった。また,規範意識と脱規範は,ともに群間の差が有意であったが(それぞれF(3,2042)=14.03,p<.01;F(3,2042)=6.36,p<.01),規範意識については両高タイプが高く,ついで管理タイプが高く,密着タイプと低関与タイプでは低いという結果になった。さらに,脱規範の結果から,規範意識の内面化の程度は,両高タイプ・管理タイプ>密着タイプ・低関与タイプという順で低下していくことが示唆された。一方,自己意識2得点についても群間差が有意で(それぞれF(3,2042)=5.78,p<.01;F(3,2042)=10.17,p<.01),目標志向性では,最も低い低関与タイプとそれ以外の3タイプとの差が有意であった。自己評価については,関わり得点の高い2タイプ(両高タイプと密着タイプ)で高く,低い2タイプ(管理タイプと低関与タイプ)で低いという特徴が見られた。


表3−3−8 親の養育態度の違いによる各得点の比較  <CSVデータ>

  両高タイプ 密着タイプ 管理タイプ 低関与タイプ F値 多重比較
関わり・規制→ HH:589人 HL:498人 LH:369人 LL:590人 df=3/2042  
逸脱行動 14.29(3.34) 14.97(3.33) 14.36(3.08) 15.36(3.78) 11.96** LL,HL>LH,HH
抑観性 2.22( .62) 2.21( .63) 2.21( .65) 2.27( .64) 1.28  
攻撃性 2.05( .67) 2.11( .70) 2.05( .70) 2.14( .74) 2.15+  
規範意識 12.17(3.66) 11.34(3.69) 11.64(3.70) 10.79(3.80) 14.03** HH,LH>LL
脱規範 .87(1.29) 1.03(1.29) .92(1.36) 1.19(1.49) 6.36** LL,HL>HH LL>LH
目標志向 3.49( .50) 3.45( .54) 3.45( .55) 3.37( .53) 5.78** HH,HL,LH>LL
自己評価 2.80( .65) 2.76( .70) 2.72( .67) 2.60( .67) 10.17** HH,HL>LH,LL
信頼 3.20( .67) 3.13( .73) 3.07( .69) 2.94( .74) 14.96** HH,HL,LH>LL HH>LH
対話 3.08( .48) 3.06( .45) 2.90( .45) 2.77( .48) 56.13** HH,HL>LH,LL LH>LL
しつけ 3.05( .85) 3.02( .84) 3.00( .83) 3.02( .82) .33  
干渉 2.10( .64) 2.08( .59) 2.04( .60) 2.13( .61) 1.84  
迷い 2.10( .63) 2.14( .67) 2.19( .60) 2.26( .63) 7.20** LL>HL,HH
自信 3.52( .47) 3.47( .50) 3.33( .54) 3.32( .53) 21.74** HH,HL>LH,LL
**:p<.01 *:p<.05 +:p<.1

また,各タイプの子どもが抱く親イメージを比べてみた。その結果,<信頼>と<対話>で有意な差が見られ(それぞれF(3,2042)=14.96,p<.01;F(3,2042)=56.13,p<.01),ともに,関わり得点の高い2タイプ(両高タイプと密着タイプ)で高く,ついで管理タイプ,低関与タイプと差が見られた。

さらに,4タイプの特徴を明確化するために,子育てについての<迷い>と<自信>の得点を4タイプの間で比較したところ,ともにタイプ間の差が有意で(それぞれF(3,2042)=7.20,p<.01;F(3,2042)=21.74,p<.01),関わり得点が高い2タイプ(両高タイプと密着タイプ)では,迷いが少なく自信があるのに対し,低関与タイプは,親としての自信が低く迷いも強いということが明らかにされた。管理タイプでも自信の低さが特徴的であった。子どもに対して親密な関わりができる母親は,親としての迷いがなく強い自信を持っていることがうかがえる。

以上の結果から,4タイプの親子の特徴を考察してみたい。まず,両高タイプの母親を持つ子どもは,問題行動も少なく規範意識も高い。自己意識も良好で,親に対するイメージ(子どもが認知した親の養育態度)も好意的で,親自身にも迷いがなく自信にあふれている。これと対照的であるのが低関与タイプで,このタイプの親を持つ子どもは,問題行動が多く規範意識も薄い。自己意識は低く,親に対する評価も否定的である。また親自身も迷いが強く自信が持てない状態にあることがわかる。一方,密着タイプの親を持つ子どもは,逸脱行動はやや多く見られ,規範意識もそれほど内面化されていないが,自己意識は良好で,親に対するイメージも好意的である。親自身も,両高タイプと同様,親としての自信を持っていることがわかる。また,管理タイプの親の場合,その子どもは逸脱行動は少なく,規範意識も高い。ところが自己意識はそれほど高くなく,親の養育態度に対する評価もやや否定的である。そしてこのタイプでは,親としての自信が持てない者が多いという結果になった。

このように,両高タイプの親を持つ子どもがすべてに肯定的な特徴を示し,低関与タイプの子どもがすべてに否定的な結果を示すという対比的な結果は,子どもにとって親からの関わりと規制という両方向がそろって与えられることの必要性を示唆するものといえる。これに対し,親から子どもへの厳しいしつけを伴わない親密な関わりは,子どもの自己評価を高め親に対してもポジティブなイメージを抱かせるが,その一方,逸脱行動や攻撃性のような外向きの問題行動を抑制しきれないという特徴を持つ。他方,親密な関係性を伴わない厳格なしつけを受けた子どもは,高い規範意識を持ち逸脱行動の心配もないが,それがそのまま肯定的な自己評価につながらず,親に対してもネガティブなイメージを抱きやすい。自他双方に対する信頼感の欠如をうかがわせる結果となった。


3 タイプ別に見た「夫婦の会話」

以上の4タイプでは,特に母親のしつけがクローズアップされた。ここで母親とともに子どもの教育を担うはずの父親の関わりについても考察してみたい。「子どもの教育やしつけについて夫婦で話し合う」に対し,「あてはまる」から「あてはまらない」まで4件法で尋ねたが,回答者の少なかった「あまりあてはまらない」と「あてはまらない」を1つにまとめ,回答の分布をタイプ間で比較した。その結果,表3−3−9に示すように,両高タイプと密着タイプでは「あてはまる」と回答した者が過半数に及び,以下,管理タイプ,低関与タイプでは「あてはまらない」の方向に比率が高まることが示された。つまり,最も健全な子どもを持つ親が多い両高タイプ,逸脱行動はやや多いが自己イメージは良好で親子の関係も好ましい密着タイプでは,夫婦間の会話も頻繁であるのに対し,逸脱行動は少ないが子どもの自己イメージと親子関係はやや否定的な管理タイプでは,夫婦の会話も若干減り,子どもの問題傾向が最も強い低関与タイプでは,母親からの関与が(関わり面でも規制面でも)乏しいというだけでなく,夫婦間での子どもをめぐる会話も少ないということが示唆された。このように,養育態度と子どもの問題傾向との関連の背景には,子育てをめぐる夫婦の会話が欠如しているという実態も垣間見ることができた。


表3−3−9 親の養育態度タイプ別「子育てに関する夫婦の会話」  <CSVデータ>

  あてはまる まああてはまる あてはまらない
両高タイプ 383(65.7) 162(27.8) 38( 6.5)
密着タイプ 258(52.3) 163(33.1) 72(14.6)
管理タイプ 168(45.7) 144(39.1) 56(15.2)
低関与タイプ 157(27.0) 239(41.1) 186(32.0)
「子どもの教育やしつけについて夫婦で話し合う」に対する回答
χ2(6)=225.7**
「あてはまらない」には「あまりあてはまらない」を含む


さいごに

親から子どもへの親密な関わりは子どもの自己評価を高め,親との良好な関係を形作るという機能を持ち,厳しさやルールを教えようという規律的な養育態度は子どもが逸脱行動に走るのを抑えるという効果を持つことが示唆された。

社会の規範や厳しさを子どもに伝える“父性”が欠如していると言われる現代,子どもの自主性や個性を尊重しない束縛は,かえって子どもの反発を生み,問題行動に走らせることになるが,親による正当なしつけ(規制)は,子どもを逸脱行動から守る“防壁”となる。ただし,そのしつけも親としての自信に裏付けされた親密な関わりなしには,子どもの自信や自他への信頼感を奪うことになる。そして,そのしつけの責任は決して母親だけにあるわけではなく,夫婦での会話に象徴される家族の協力が支えとなっていることも示唆された。親としての在り方が問い直されようとしている今,子どもたちは,親としての自信と優しさに裏付けされた“血の通った厳しさ”を求めているのかもしれない。


引用文献

Baumrind,D. 1991 The influence of parenting style on adolescent competence and substabce use. Journal of Early Adolescence,11,56-95.

林道義 1996 父性の復権 中公新書.

Lamborn,S.D., Mounts, N.S., Steinberg, L., &Dornbusch, S.M. 1991 Patterns of competence and adjustment among adolescents from authorltative, authoritarian, indulgerlt, and neglectful families. Child Development, 62, 1049-1065.

Weiss, L.H., &Schwarz, J.C. 1996 The relationship between parenting types and older adolescents' personality, academic achivement, adjustment, and substance use. Child Development, 67, 2101-2114.



付表3−3−1 「養育態度(子ども評価)」の因子分析結果(バリマックス回転後)  <CSVデータ>

項目内容 Fac.1 Fac.2 Fac.3 Fac.4 共通性
805 親を尊敬している .726 .125 -.043 .065 .549
811 親の言うことは正しい .722 .080 -.006 .056 .553
802 親は自分のことをわかって・・ .700 .110 -.023 -.016 .503
804 親は自分の話をよく聞いて・・ .628 .276 -.145 .010 .492
074 家族と買い物や遊びに出かける .039 .677 -.112 .113 .485
073 家族と食事に出かける -.016 .625 -.107 .182 .435
071 お父さんと話をする .098 .564 .010 -.090 .336
072 お母さんと話をする .144 .562 .081 -.101 .353
809 親と友達のことをよく話す .359 .485 .071 -.023 .369
810 ニュースや本の話をする .286 .415 .151 .018 .277
813 友達づきあいに口をはさむ .002 -.029 .692 .059 .484
801 友達を引き合いに出す -.130 .090 .646 .052 .445
812 私を思い通りにしたいと思って・・ .272 -.135 .631 -.142 .510
803 叱られて納得いかないことがある -.112 -.013 .436 .173 .262
807 男(女)の子だから・・と言われる -.059 .089 .407 .292 .233
815 人に迷惑をかけるなと言われる .094 .036 .064 .798 .651
816 だらしなくするなと言われる .047 -.007 .192 .767 .627
寄与率 17.8 11.7 8.1 6.9  
α係数 .707 .616 .517 .554  
  信頼 対話 干渉 しつけ  

付表3−3−2 「養育態度(母親評価)」の因子分析結果(バリマックス回転後)  <CSVデータ>

項目内容 Fac.1 Fac.2 Fac.3 Fac.4 共通性
69 子どもとよく話をする .772 .101 -.136 .091 .633
68 子どもの話をよく聞く .754 .021 -.191 .039 .607
14 テストの結果は聞く .512 .053 .035 .017 .266
11 仲のよい友達をよく知っている .489 .055 -.053 .090 .253
74 人に迷惑をかけないように・・ .439 -.002 .268 -.109 .276
32 家族で食事に出かける .069 .837 .038 .016 .707
31 家族で旅行に行く .037 .778 .004 .133 .625
33 家族と買物や遊びに出かける .117 .748 .080 .080 .586
34 子どもをひどく叱ったりたたく -.116 .098 .725 .061 .553
73 場合によっては体罰を与える -.064 .035 .712 .096 .521
72 友達づきあいに口をはさむ .118 -.010 .569 -.062 .341
71 親の思い通りにさせたい -.080 .012 .476 .031 .234
22 食事中にテレビを見ないように・・ .100 .100 .086 .807 .416
25 子どもの寝る時刻を決めている .155 .133 .145 .729 .595
24 テレビを見る時間を決めている -.063 .010 -.085 .636 .679
寄与率 16.8 13.4 9.3 9.1  
α係数 .532 .570 .859 .586  
  コミュニケーション 外出 束縛 規制  

付表3−3−3 「自己意識(子ども評価)」の因子分析結果(バリマックス回転後)  <CSVデータ>

項目内容 Fac.1 Fac.2 共通性
1902 人の役に立ちたい .771 .171 .624
1905 努力する人間になりたい .732 .241 .593
1904 人には親切にしたい .705 .090 .505
1901 人の気持ちがわかる・・ .705 .156 .521
1903 自分の気持ちに誠実な・・ .645 .207 .459
1906 勇気のある人間になりたい .627 .239 .500
1916 勉強のできる子になりたい .542 .073 .299
1913 将来のために今頑張りたい .411 .380 .313
0183 やる気がある .143 .787 .635
0184 いつも頑張っている .219 .713 .556
0181 自分に自信がある .039 .696 .486
1910 自分の気持ちに正直に・・ .234 .502 .307
寄与率 36.6 11.3  
α係数 .828 .657  
  目標志向 自己評価  

付表3−3−4 「攻撃性・抑鬱性尺度(子ども評価)」の因子分析結果(バリマックス回転後)  <CSVデータ>

項目内容 Fac.1 Fac.2 共通性
171 怒ったり乱暴をしてしまう .821 .090 .681
172 腹が立つとつい手が出てしまう .785 -.041 .618
174 小さなことでイライラしてしまう .634 .311 .499
173 腹が立つとすぐ顔に出る .584 .179 .373
161 過去の失敗をくよくよ・・ .048 .738 .546
162 ものごとに集中できない .184 .675 .490
182 だめな人間だと思う .100 .653 .436
寄与率 34.9 17.1  
α係数 .696 .505  
  攻撃性 抑鬱性  

付表3−3−5 「子育てに対する母親評価」尺度の因子分析結果(バリマックス回転後)  <CSVデータ>

項目内容 Fac.1 Fac.2 共通性
67 子育てに関して途方に暮れる .736 -.157 .566
66 子どもをうまく叱れない .704 -.138 .515
62 子どもが何を考えているか・・ .660 -.066 .440
61 よその子どもと比ぺてしまう .624 .204 .431
64 子どもはうまく育っている -.294 .705 .568
63 子どもとの関係はうまく・・ -.293 .694 .585
65 自分を越えて育ってほしい .263 .636 .474
53 子どもの成長の責任は家庭・・ .021 .335 .112
寄与率 28.7 17.4  
α係数 .648 .516  
  迷い 自信  


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