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メディアによって表現された暴力・残虐表現が青少年に与える影響について、その接触実態及び問題になる意識・行動との関連、保護者のこれらに対する認知状況や意識を調査することを通じて、青少年の非行防止・健全育成に向けた取組のための基礎的な資料を得ることを目的とする。
茨城県、埼玉県、愛知県、京都府及び兵庫県
i 青少年調査
小学6年生及び中学2年生 3,242人
ii 保護者調査
青少年調査の対象となった小学生及び中学生の保護者 3,096人
平成10年10月〜12月
年齢差が少し見られるが、青少年全体では、ふだん学校がある日の1日の平均視聴時間は約3時間10分である。4時間以上視聴する者は中学生よりも小学生に多く、小学生の女子では、約半数である。
1998年7月14日から8月3日までの3週間の午後5時から11時までに、全国ネットを持つ民間放送で放送された、アニメ、ドラマ、時代劇、バラエティ番組の暴力描写の数について分析した。
これらの中から、3週間(あるいは2週間)の平均で、暴力描写を含んでいる番組を調査対象とし、各ジャンルで代表的なものと思われ、比較的よく視聴されている番組で、特定局に偏らないように24番組を選んだ。
調査対象となった番組を、どのくらいの頻度で視聴しているか調べ、その結果に基づいて青少年の暴力シーン接触量の平均を算出した。一カ月当たり、全体の平均暴力シーン接触量は113.5シーンである。
この1年の間での経験として友人や他人相手への行為として暴力行為の有無を尋ねたところ、全体では「よくある」と「少しある」を合わせた回答が多い項目は「たたく・なぐる・けとばす」(53%)と「相手の傷つくようなことを言う」(54%)であり、両項目とも50%を超えている。
テレビ暴力シーンへの接触量に応じて「上位群」「中位群」「下位群」に分け、テレビ暴力シーンへの接触量と暴力行為の経験との関連を見ると、テレビ暴力シーンへの接触量が多くなるほど暴力行為を経験している者の割合が多くなっている。
この1年の間での暴力被害の有無を尋ねたところ、全体では「ある」という回答が多い項目は、「たたかれる・なぐられる・けとばされる」(49%)と「相手の傷つくようなことを言われる」(48%)で、暴力行為の経験をした者と暴力被害の経験をした者の割合はあまり変わらないという傾向が見られる。
テレビ暴力シーンへの接触量との関連は見られなかった。
この1年の間での非行・不良行為の経験とテレビ暴力シーンへの接触量との関連については、調査項目の5項目中すべてにおいて、テレビ暴力シーンへの接触量が多くなるほど非行・不良行為を経験している者の割合が多くなっている。
暴力の許容性について、全体では「そう思う」という回答が多いのは、「相手からやられたら、やりかえしてもよい」(36%)であり、次に多いのは、「男がケンカをするのはあたりまえだ」(24%)である。
テレビ暴力シーンへの接触量との関連については、調査項目7項目中5項目において、テレビ暴力シーンへの接触量が多くなるほど、暴力を許容する内容に賛成する者の割合が多くなっている。
全体で、「むしょうに暴れたくなること」が「よくある」は14%、「たまにある」は45%であり、「ない」と答えた者は40%である。
「誰かを殴りたくなる」については、「よくある」は11%、「たまにある」は34%であり、「ない」と答えた者は53%である。
「自分を守るためにナイフなどを持っていたいと思うこと」については、「よくある」は 3%、「たまにある」は 5%であり、「ない」と答えた者は92%である。
暴力シーン接触量と脱感作効果との関連については、「人がなぐられるシーン」、「どついて笑うシーン」などの比較的軽度の暴力シーンほど脱感作効果が生じている。また、テレビ暴力シーン接触量が多いほど「悪いやつが主人公に殺されるシーン」を見てすっきりする人の割合が高い。
[*刺激に対する感情・感覚が鈍化すること]
被害者への共感性が最も高いのが小学校女子で、最も低いのが中学校男子である。また、テレビ暴力シーン接触と被害者への共感性については、テレビ暴力シーン接触量が多いほど被害を受けた者のつらさに対する共感性が低くなっている。
言葉でうまく説明できないことの経験頻度の観点から「高頻度群」「中位群」「低頻度群」に分けた上で、暴力に対する欲望との関係を見ると、「むしょうに暴れたくなること」と「誰かを殴りたくなること」のいずれについても、高頻度群(言葉でうまく説明できない経験)ほど「よくある」(暴力に対する欲望が高い)と答えている。また、この1年くらいの間に友人や他人を「たたく・なぐる・けとばす」経験率を、言葉でうまく説明できない頻度別に見ると高頻度群ほど「たたく・なぐる・けとばす」経験(暴力経験)が多い。
言葉で説明できない経験は、暴力への欲望だけでなく、実際の暴力経験とも強い関連を持っている。
ゲームセンターや店先のゲーム機で遊ぶ頻度は、全体では「遊んだことはあるがめったにしない」者が42%と最も多い。
ふだん学校がある日、自分の家や友だちの家でテレビゲーム機で遊ぶ頻度は、全体では「遊ばない」という者が最も多く35%であり、性別に見ると男子が13%、女子が57%である。「1時間くらい」遊ぶ者は24%(男子は33%、女子は14%)である。「3時間くらい」と「4時間以上」を合わせると男子が17%、女子が4%である。
ゲームセンターでのゲーム、家庭でのゲームのいずれにおいても、ゲームに関与することと暴力経験との間に何らかの関係があることが示唆される結果が得られた。性別に見ても、男女ともゲームへの関与の度合いが大きいほど、暴力経験が多くなる傾向が見られる。
また、ゲームへの関与と非行・問題行動の有無との間にも関連が見られ、ゲームをしている時間が長い者ほど、非行・問題行動のある割合が高くなる傾向がある。
テレビの所有台数は、1台という家庭が13%、2台が35%、3台が27%、4台以上ある家庭が25%であり、3台以上ある家庭が半数を超えている。また、子ども専用のテレビがある家庭は24%で、4家庭に1家庭が子ども専用のテレビを持っている。
平日に親子一緒に見るテレビの1日の平均視聴時間は、「1時間くらい」が44%で最も多い。「ほとんど見ない」という保護者の比率も高く、父親では31%、母親では16%である。
テレビのチャンネル権・番組の選択権では、「父」が38%、「子」が34%である。
保護者による子どもの見る番組の選別に関しては、全体で「全部選別している」と「ある程度選別している」を合わせても35%で、「ほとんど選別していない」が42%、「全く選別していない」が22%である。
アニメなど7番組、ドラマ8番組、時代劇2番組、バラエティ7番組、計24のテレビ番組のそれぞれに対して保護者がどれほど問題視しているかその番組を見た保護者の回答では、時代劇では問題がないとする意見が多いが、アニメなど、ドラマ、バラエティに関しては、ジャンルに関係なくケース・バイ・ケースである。
「テレビ番組で次のようなシーンは、子どもにどの程度悪影響があると思うか」と尋ねたところ、全体で「たいへん悪影響がある」と「やや悪影響がある」という回答を合計した比率では高い順に、「強姦のシーン」(75%)、「いじめやいやがらせのシーン」(71%)、「人を殴る暴力シーン」(67%)である。
テレビ番組での暴力表現に対しての対策に関しては、父親母親共に「各家庭で対応すればよい」という回答が最も多く、保護者総数で44%である。「テレビ局・番組制作者の自主規制にまかせるべきである」と「何らかの法的措置が必要である」を合わせると保護者総数で44%である。
「Vチップ」の認知では、父親では「よく知っている」と「何となく知っている」を合わせると41%で母親では27%である。「聞いたこともない」という父親は46%で母親は55%である。
「Vチップ」制度の導入については、「積極的に導入すべきである」と「導入を検討すべきである」を合わせると父親では42%、母親では45%である。これに対し、「導入の必要はまったくない」と「あまり導入の必要はない」と回答した者は、父親で46%、母親では34%である。
テレビ番組のオンブズマン制度導入については、「積極的に導入すべきである」と「導入を検討すべきである」を合わせると父親では50%、母親では57%である。これに対し、「導入の必要はまったくない」と「あまり導入の必要はない」と回答した者は、父親で40%、母親では22%である。
学校でのテレビ視聴についての教育・指導に関しては、「学校で教育・指導する必要はない」という回答が、父親で54%、母親では44%である。「学校で教育・指導すべきである」という回答した者は、父親で30%、母親では28%である。
少年犯罪事件と暴力的映像との関係については、「おおいに関係ある」と答えた者は、父親母親共に36%である。「やや関係ある」という回答を加えると、父親で77%、母親では83%である。「まったく関係ない」は父親で5%、母親では1%であり、「あまり関係ない」は父親で16%、母親では11%である。
少年犯罪事件と格闘ゲームとの関係については、「おおいに関係ある」と答えた者は全体で16%であり、「やや関係ある」という回答を加えると49%である。「まったく関係ない」は7%であり、「あまり関係ない」は29%である。