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カ フランス
(ア)労働政策の動向
 欧州諸国同様,フランスにおいても若者の失業は大きな社会問題となっており,雇用・連帯大臣が「社会連帯プラン」の中で,5年間で80万人の若者を就職させるという目標を掲げている。
 なお,フランスでは最低賃金の高さが若者雇用の障害となっているという指摘がある。若者も含めて最低賃金が高く,賃金以外の社会保障費などのコストも安くない。例えば2002年に若者雇用を促進するための法律が制定されたが,フルタイム又はパートタイムの無期限労働契約で職業資格レベルが低い若者を雇用した者は雇用開始後2年目までは社会保険料の雇用主負担の全額,3年目は半額が免除されるような内容であり,このことからも社会保険料の高さが雇用の障害となっていることが分かる 。<注38>
 フランスにおける年代別の失業率は以下のような状況であり,15〜24歳の失業率は20〜30%台で推移しており,ほかの年代の者よりも非常に高くなっている。

図 2 − 54 フランスにおける失業率(年代別)(CSVデータ)

 図 2 − 54 フランスにおける失業率(年代別)
(出所)OECD(2006)「OECD Employment Outlook−Boosting Jobs and Incomes」より作成

 ニュースタート制度は,主に長期的に離職状態が続いている者に対する就職支援のための制度であり,職業能力評価や職業訓練を施すものである点で参考となる制度であるが,対象者が必ずしも若者に限定されていない点に留意が必要である。
 一方,若者に限定して支援を実施する施策としてはミッション・ローカルの取組が特徴的であり,就職支援のみにとどまらず家庭問題・住宅問題など若者が抱える問題を全般的にカバーしていることから参考となる制度である。
(イ)ニュースタート制度について
 ニュースタート制度は,1997年11月のルクセンブルク・プロセス<注39>と呼ばれる欧州雇用戦略を受け,1998年に導入された制度である。EU加盟各国はそれぞれの優先的問題に応じた措置を採択したが,フランスでは長期失業が当時最も深刻な問題と考えられていたため,同制度の目的は「長期失業の予防」及び「長期失業者の再就職支援」とされている。
 長期失業者が中心的な対象者であり,具体的には失業期間12か月以上の求職者(16〜25歳の若年求職者の場合は失業期間6か月以上)が対象である。
 制度の運用主体は国立職業安定所<注40>であり,具体的なサポートとしては,同制度に登録した対象者に対して職業能力評価を行い,適職についての指導を実施する。個別の相談者に対して個別行動計画を作成し,職業訓練を施すことが主要な内容である。
 最初の面談から4か月後に各求職者の就職活動とその成果の状況を把握し,実施した求職支援の活動の評価を行うほか,3か月ごとに個別にフォローを行い,求職支援期間(最長24か月)が終了しても就職ができなかった場合は,その原因を再度検討した上で新規の支援活動を提案するなど,個別的・継続的な支援を実施することが特徴である 。<注41>
 なお,2005年の「社会結束計画に関する法」の制定を受け,政府では雇用アクセス個別プロジェクト(PPAE)を施行し,国立職業安定所では2006年1月より,個別に月ごとに継続的な支援を行う個別マンスリーフォローと題する措置を開始した。
 これは,求職者が雇用保険支払機関(ASSEDIC)に登録した際,当該求職者の「雇用からの距離」が計算され,この計算の結果として,雇用復帰までに4か月以上掛かると推定される求職者については月1度の面談(所要時間の平均は20分前後)が行われるというもので,「雇用からの距離」が長い求職者に対しては,面談以外にも能力・スキルを向上させるための各種訓練などが重点的に配置されるようになっている。
 具体的には最初の面談の際に通常45分ほど掛け,希望する職業・職種や,それに対応する資格について相談員との話合いが行われ,その後4か月目から月1度の面談が行われる。この4か月目からの面談は,毎回同一の相談員が担当する(従来のプログラムでは,毎回相談員が異なることが多かった。)。
(ウ)ミッション・ローカルの活動について
a 行政機構
(a)組織の法的位置付け・行政上の位置付け
 ミッション・ローカル及びPAIOは,主としてコミューン(市町村)議会のイニシアチブによって設立される若者支援のための組織で,シュヴァルツ報告書(1981年)に基づき公布された1982年3月26日のオルドナンス(行政命令)をその法的なよりどころとして設立・運営されている組織である。
 1982年以前は,国の各省庁の若者担当部局が別々に若年失業者問題を取り扱っていたが,業務を効率的に進める必要性からミッション・ローカル及びPAIOが設立されたという経緯がある。
 法的にはそのほとんどが非営利団体(NPO法人)の形態をとっており,各々のミッション・ローカル及びPAIOは独立した組織として独自の活動を行っている。
 ミッション・ローカル及びPAIOの州レベル,全国レベルの団体として全国ミッション・ローカル連合,全国ミッション・ローカル所長協会,州ミッション・ローカル協会が存在するが,すべて任意加盟であり加盟率は全国ミッション・ローカル連合で2分の1程度,全国ミッション・ローカル所長協会で3分の1程度,州ミッション・ローカル協会についてはイル・ド・フランス州の例では4分の1程度である。
 これらの団体はミッション・ローカル間の情報交換並びに政府及び欧州委員会に対するロビー活動を行っており,また,一部の州ミッション・ローカル協会では職員の研修メニューの作成などを通じた加盟ミッション・ローカルへのサービス提供を行っている。一方,全国ミッション・ローカル評議会<注42>はミッション・ローカルのネットワークと国及び地方レベルのパートナーとの協議の場であり,首相府に属するが,実務面では雇用・社会結合・住宅省の管轄下にある政府機関である。評議会はミッション・ローカルの代表,州議会の代表,県議会の代表及びコミューン議会の代表と,国の若者支援に関係する省庁の代表により構成されており,若者の社会参加についての政府の諮問を受けること,各ミッション・ローカルの活動状況把握,調査・研究などを行っている。
 なお,毎年関係大臣が出席する全体会議を開催し,5年ごとに5年間の活動方針,予算などを決定する計画が策定される。この計画においては,首相,雇用・連帯大臣,全仏州連合会長,ミッション・ローカル全国評議会長,全仏県連合会長,全仏メール会長の署名が追加され,多数の関与者を巻き込んでいるものとなっている。
(b)財源
 財源の内訳は国が34%,コミューン及びコミューン間広域行政組織が25%,州が18%,欧州社会基金(欧州委員会)が10%,県が5%,その他の公的・私的機関が8%を負担している形となっている。ただし,これは全国平均であり,実際の出資者や財源構成は個々のミッション・ローカル及びPAIOによって大きな幅があることに注意が必要である。
 なお,全国のミッション・ローカル及びPAIOが受け取る公的資金は4億2,500万ユーロ(約658億8,775万円<注43>)に上る。
b 制度の概要
(a)ミッション・ローカルの役割と位置付け
 フランスではミッション・ローカル及びPAIOは若者の包括的な支援を行う唯一の団体として存在している点が特徴的である。
 ほかに,若者を取り巻く様々な課題の特定の側面(例:雇用など)に特化した公的・私的な支援団体は存在するが,同一の活動範囲を持つ団体は皆無である。
 ミッション・ローカル及びPAIOの役割は,16〜26歳(26歳の誕生日まで)の若者(特に,学校から卒業した者のみならず,退学等や自主的に通学をやめてしまうなどの行為により学校との関連性が一切なくなってしまった若者)が,同組織の究極的な目的である「永続的な雇用(ILOの定義では6か月以上の雇用契約とされている。)」に就くまでの包括的な支援を提供することにあり,この「包括的アプローチ」を大きな特色としている。
(b)ミッション・ローカルの提供するサービス
 上記の役割を達成するために,ミッション・ローカル及びPAIOでは<1>雇用へのアクセス,<2>教育・訓練,<3>職業プロジェクト,<4>住宅,<5>健康・医療,<6>市民生活,<7>スポーツ・レジャー・文化の七つの分野にわたって若者の支援を行っている。
 これらの支援はミッション・ローカル 及びPAIOの内部資源により供給されることもあるが,多くは外部パートナーに依存しており,このためミッション・ローカル 及びPAIOを様々な支援オファーを受けるための窓口とも位置付けることができる。また支援の具体的な形態としては,面接(年間300万件)のほかに電話連絡,訪問,ワークショップなどを挙げることができる。
c 相談・支援機関の組織・体制
(a)ミッション・ローカル,PAIO全体の組織・体制
 2005年12月末現在,404のミッション・ローカルと100のPAIOが存在し,フランス全国のコミューンをすべてカバーしているため,若者の居住しているところには必ず一つのミッション・ローカル又はPAIOが存在している。
 職員数で規模を見ると,「5人以下」が全体の7%,「6〜10人」が19%,「11〜20人」が39%,「21〜30人」が19%,「30人超」が16%となっている。
 なお,ミッション・ローカル及びPAIOに直接雇用されている職員は約10,200人,地方自治体,国立職業安定所などからの出向者が約950人となっている。またフルタイムの職員は全体の74%,無期労働契約で雇用されている職員(正職員)は全体の84%,残り16%は有期労働契約である。なお全職員のうち,若者の支援をしているアドバイザーが72%を占めており,残りの職員は広報(4%),事務(10%)担当,管理職(9%)及びその他(4%)となっている。性別では女性が全体の75.5%を占める。
(b)個別のミッション・ローカルの組織・体制
 ヴィタシテ<注44>(ViTaCiTe)を例とすると,職員数は,17人である。うち,アドバイザーが12人,所長が1人,支部長が2人,所長秘書が1人,IT担当が1人という構成になっている。なお,ほかに国立職業安定所からの出向者が1人,市役所からの出向者が1人在籍している。
(エ)相談業務について
a 対象者の概要 
(a)対象者の属性や条件
 ミッション・ローカル及びPAIOが対象としているのは,16〜26歳まで(26歳の誕生日まで)の若者である。なお,特に学校から卒業した者のみならず,退学等や自主的に通学をやめてしまうなどの行為により学校との関連性が一切なくなってしまった若者が対象であり,「学校がサポートすることが難しい若者」が支援対象者である。
 対象となるのはこの年齢層にあるすべての若者であり,学歴・性別・国籍などの条件は皆無であり,また既に職に就いている者も労働契約が短期であったり,転職を希望しているなどの理由がある場合には,相談対象者として登録が認められる場合がある。
(b)実際の相談者数と属性
 登録者数は過去3か月に連絡のあったアクティブな登録者だけで130万人おり,毎年平均して45万人の新規登録がある。登録者数は増加傾向にあり,2002年からは毎年5〜11%の増加率となっている。
 登録者の学歴は,各地域のミッション・ローカルによって様々であるが,ローヌ・アルプ州(州都:リヨン)の例ではレベル6(中卒相当)が11%,レベル5a(中学卒業後1年の職業教育)が20%,レベル5(中学卒業後2年の職業教育)が36%,レベル4(高卒相当)が27%,レベル3(短大卒相当)以上が5%となっている。またオート・ノルマンディー州(州都:ルーアン)ではレベル5a及びレベル6が32%,レベル5が40%,レベル4以上が29%であった。
 また,年齢別に見ると,プロバンス・アルプ・コートダジュール州(州都:マルセイユ)の例では16〜17歳が8%,18〜21歳が48%,22〜25歳が40%,25歳超が4%である。
 性別に見た場合は,男女比は47.7(男)対52.3(女)である(全国,2006年9月現在)。
b 関係機関との連携について
 国立職業安定所とミッション・ローカルは協定を締結しており,16〜26歳(26歳の誕生日まで)の若者が国立職業安定所を訪れた場合は,ミッション・ローカルへの訪問を勧めることとなっている。
 ヴィタシテを例とすると,ミッション・ローカルにはボランティア職員はいないが,退職者が作っている若者支援のためのNPO法人と協力することがある。ヴィタシテでは同じ建物内にあるNPO法人のメンバーによる履歴書・志願書作成,面接の準備などに関するワークショップを行っている。ヴィタシテではこのNPO法人に対し年間1,500ユーロ(約22万5,045円)を支払っているが,退職者は無給で,交通費などの直接的な費用の給付を受けるだけである。退職者の前歴は公務員,教員,民間企業勤務など様々である。
(オ)相談員について
a 相談員の素養
(a)全国的なミッション・ローカルの相談員の素養
 前述のように各々のミッション・ローカル及びPAIOは独立した組織であり,職員の雇用は2001年2月21日に制定された労働協定を遵守しながらも,それぞれのミッション・ローカル及びPAIOが独自にポリシーを定め実施している。
 このため全国レベルでの雇用の基準や方針などは存在せず,人事権は各ミッション・ローカル及びPAIOの所長に委ねられている。ただし,全体的な傾向として,学歴よりも実務経験を重視する傾向があることは指摘できる。
(b)ミッション・ローカルの個別の素養
 ヴィタシテでは,アドバイザーは合計12人いるが,うち1人は「企業との関係の構築・維持」,もう1人は「職業オリエンテーションコース<注45>」に特化しており,残りの10人はジェネラリスト(特段の専門職務が決められていない者)である。
 雇用・募集については空きポストができたときに求人広告で募集している。
 アドバイザーには受付担当(Charge d'accueil),アドバイザー・レベル1(Conseiller niveau 1),アドバイザー・レベル2(Conseiller niveau2),プロジェクト担当(Charge de projet)の四つの階級があり,労働協約によりそれぞれの階級の雇用で要求される知識・技能の基準が定められているが,すべて主観的な基準であり,学歴や職歴を要求するものではない。
 アドバイザーは大学で心理学(臨床心理学,社会心理学,企業心理学等)を専攻した人が多く,ほかには地域整備や販売論などを学んだ人もいる。
 学位は学士又は修士相当がほとんどである。
 大学を卒業して直接ミッション・ローカルに就職する人と他の職業(主として民間企業)を経験してからミッション・ローカルに来る人がほぼ半々である。
 なお,平均年齢は35歳であり,女性が7割を占めている。
b 相談員の職務形態
 報酬については労働協約で俸給表が規定されており,これにのっとり決められるが,階級と勤続年数で完全に決められる仕組みであるため,個人的に努力をするモチベーションがほとんど与えられない。このためヴィタシテでは実績・能力により手当てを増やせる制度を現在構想中である。
 なお,ボランティア職員はいないが,若者の教育訓練などについては外部のパートナーと連携して実施していることが多い。
c 相談員の職務内容
(a)全国のミッション・ローカルの職務内容
 支援対象者である若者を対象として訪問・登録・面接や相談の受付などを行っているが,活動参加は飽くまでも支援対象者である若者の任意ベースで行われ,強制的な色彩を伴う活動は全くない。
 なお,受入れや情報提供,指導だけを行うのではなく,同行を行うところに特性があり,アドバイザーが支援対象者に同行して確実に就職できるまで共同で作業を進め,必要に応じて就職後のフォローも行っている。1人の若者は原則として同一のアドバイザーが継続的に担当する。なお,ミッション・ローカルの一つであるヴィタシテの例で見ると,1人のアドバイザーが300人程度の若者のサポートを担当していることになるということであり,対応している若者の数は相当程度多い状況である(ヴィタシテの例については後述する。)。
(b)ミッション・ローカルの具体的な職務内容
 上述のように,ミッション・ローカルは個々が独立した組織であり,活動内容の大枠や方向性は同様であるものの,具体的な活動内容はミッション・ローカルによって異なっている。ヴィタシテを例に,具体的な職務内容を整理する。
表 2 − 16 ミッション・ローカルの職務内容<注46>
項目 職務内容
雇用へのアクセス
  •  国立職業安定所,フランス企業連盟(MEDEF),中小企業経営者総連合(CGPME),青年企業指導者センター(CJD),エッソンヌ県商工会議所,パレゾー市企業協会などのパートナーとパートナーシップ協定を交わし,求職者と求人企業とのマッチングを促している。
  •  具体的な活動としてはテーマを一つ選んで毎月1回行われている朝食会(企業と若者が参加)や,年1回行われている雇用フォーラム(2006年10月に開催されたフォーラムでは求人企業60社強が5,000件を超える雇用を提供し,1,500人の求職者が訪れた。参加は求人企業,求職者共に無料)などがある。
教育・訓練
  •  商工会議所や民間企業などによる職業教育や,NPO法人が行っているフランス語が母国語でない人や非識字者のためのフランス語教育などが主な教育・訓練の内容である。
  •  若者に全く職能が認められない場合には,24〜36か月の長期訓練を受けさせることになっている(従来は24か月が最長であったが,昨今の若者の状況に合わせて延長された。)。
  •  教育・訓練のための資金は基本的には州が負担するが,必ずしもすべての教育プロジェクトが州の予算により賄われるわけではなく,不足する場合には県や国,欧州委員会などの援助を要請しなければならない。
職業プロジェクト
  •  大きな流れとしてははっきりとした就職ビジョン,計画等がない(どんな仕事を探したらいいのか分からない。),若者を対象に,テストやアンケートへの回答,面接などによる「心理・社会アセスメント」を行い,その結果をアドバイザーと分析した上で,職業プロジェクトの作成に取り掛かる(ここの段階までは州・県・欧州社会基金の共同出資)。
  •  次にプロジェクト作成中に判明した不足項目を補うために,予備訓練を受け,本人の意思を確認した上で本格的な資格取得のための教育訓練を実施するように勧める。
住宅(に関する支援)
  •  フランスではこの数年で地価が急騰したため,若者がアパートなどを借りて親元から独立することが非常に難しくなっている。
  •  このような背景の中でヴィタシテでは,もともと移民労働者のために建設された寮の部屋や公団アパートを借り上げて,深刻な住宅問題を抱えている若者に提供している。
  •  この事業は県及び市から資金を得ている。
健康・医療に関する相談
  •  週に半日,臨床心理カウンセラーが来所し,あらかじめ予約した若者との面接・カウセリングを行う。また,必要に応じてカウンセラー・アドバイザー・若者間の三者面談が行われる。カウンセラーの費用はヴィタシテが負担する。
  •  より総合的な健康・医療面での支援としてはソーシャルワーカーとの協力が挙げられる。ヴィタシテでは地元の医療福祉センターと提携し,健康面・福祉面での問題を抱える若者をセンターに紹介している。
市民生活
  •  主としてNPO法人と協力して若者の市民や住民,あるいは有権者としての意識の向上を目指す啓発活動(「市民の夕べ」と称する夕食会など)を開催し,支援対象者である若者に参加してもらっている。
  •  またその一環として,例えば若者がバカンス(休暇)のプロジェクトを立て,それに対する市からの資金供与を得るためにある地区の若者や高齢者のための活動を行う(「ギブ・アンド・テイクの考え方の浸透」)などという仕組みもある。
レジャー・スポーツ・文化(を通じた社会参加・社会認知に関する活動)
  •  前項で触れたバカンスプロジェクトのほかに,地元企業がスポンサーとなり地元のラグビーチームとの交流,試合観戦,それにミニ雇用フォーラムを組み合わせた1日のイベントや,若者が参加して町を練り歩く大道芸フェスティバルを催したり,また映画に関心を持つ若者を集ってカンヌの映画祭へ参加したりという活動を行っている(カンヌ映画祭の参加は州・県・欧州社会基金の共同出資)。
  •  様々なプロジェクトへの参加を通じて若者に責任を持って一つのプロジェクトを成就することの意味を教え,また企業に対しても若者のそういう姿を見せ,ポジティブなイメージを持ってもらうことが目的である。
  •  また直接雇用に結び付く活動としては地元のオペラ座や県のテレビ局での研修のあっせんもある。
その他(受刑者のアフターフォロー,法律カウンセリングの実施)
  •  刑務所で受刑中の若者が出所したときの社会復帰・職業復帰のために,ヴィタシテのアドバイザーが月に1度,県内にあるフルリ・メロジス刑務所に赴き,裁判所,刑務所,教育指導員,家族又は本人の要請に基づいて,指導,助言,オリエンテーションなどを行う。一時出所の際にヴィタシテで行うこともある。この活動は県から資金を得ているため,他県の若者の指導を行うことはできないが,県内の他のミッション・ローカルがカバーしている市町村出身の受刑者の場合には,2度目以降,担当のミッション・ローカルに紹介する。
  •  法律専門家が週に半日程度来所し,予約した若者と2人で,あるいはアドバイザーと3人で,法律カウンセリングを行い,必要に応じて(例えば使用者による労働契約違反の場合など)労働裁判所にも赴く。この法律専門家に対する報酬はヴィタシテが負担している。

 アドバイザーは平均して1人当たり300人前後の若者を担当している。面接の頻度は対象となる若者の自立度により大きく異なり,週に1度会わなければならない場合もあれば,年間2〜3度で済む場合もある。
 若者の登録期間(支援期間)は通常,1年から2年程度である。アドバイザーは,勤務時間の半分を担当する若者との面接に割き,残りの時間を使ってパートナーとの連絡・協議や若者に関する情報の入力,それに自らの研修などを行っている。
d 相談員の育成・養成
 職員の教育については多くが州レベル(州ミッション・ローカル協会)で行われている。
 シャンパーニュ・アルデンヌ州(州都:シャロン・シュール・マルヌ)では,2007年の教育オファーのメニューとして「若者への対応」,「口頭表現」,「支援対象の若者のポートフォリオを管理する。」,「社会統合への道の構築」,「企業との関係」,「外部パートナーと協力する。:地域プロジェクトを導く。」,「仕事文の書き方」,「時間の管理」,「組織のコミュニケーションを管理する。」,「変化を管理する。」,「紛争の管理」があり,これらの研修の受講に要する期間は2〜4日間程度である。
 また,アキテーヌ州(州都:ボルドー)では「社会除外を理解する。:社会統合への障害物の認識」,「若者のモチベーションを高めるための面接方法」,「企業の雇用体制:アキテーヌ州の現在と将来の雇用」,「若者と企業との仲介における役割」,「企業の開拓と交渉」,「企業における仕事の分析」,「自立のアプローチ」,「若者支援の方法論の組織と管理」,「若者支援関係者の民事・刑事責任」,「困難な若者の対応と対立状況の管理」,「パートナーとの会議の運営」,「若者のグループとのミーティング運営」,「事務書類の形式化」,「地域プロジェクトの運営」,「ミッション・ローカル:変わりつつある環境」,「会計財務管理」,「広報媒体の作成に参加する。」というテーマのコースが用意されており,所要期間は2〜5日となっている。
(カ)今後の課題
a アドバイザーのモチベーションへの配慮
 報酬については労働協約で俸給表が規定されており,これにのっとり決められるが,階級と勤続年数で完全に決められる仕組みであるため,個人的に努力をするモチベーションがほとんど与えられないことで,努力が給与報酬につながっていないことが問題である。
b 個別のミッション・ローカルの活動
 一つ一つのミッション・ローカルは独立したNPO法人であり,設立団体であるコミューンのモチベーションや政治色などによってその活動の充実度や多様性などにかなり大きな開きがあることが課題である。

参考文献等

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  •  U.S. Department of Labor Office of Job Corps (2006)「Program Assessment Guide」
  •  Job Corps Career Development Resource Centerホームページ(2007年3月時点)
  •  Gruthieジョブ・コア・センターホームページ(2007年3月時点)
  •  Cascadesジョブ・コア・センターホームページ(2007年3月時点)
<イギリス>
  •  内閣府(2006)「英国のコネクションズ・パーソナル・アドバイザーの養成制度等に関する調査報告書」
<オーストラリア>
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    (http://www.connecttoyourfuture.dest.gov.au/youthpathways/)
<韓国>
  •  独立行政法人労働政策研究・研修機構(2005)「アジア諸国における職業訓練政策」
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  •  韓国労働部「青少年失業対策事業」ホームページ(2007年3月時点)  (http://www.kyci.or.kr/kyci/research/research.asp)
  •  現地ヒアリング『韓国青少年相談院』
  •  現地ヒアリング『ソウル市青少年相談センター』
  •  現地ヒアリング『韓国国家青少年委員会』
<スウェーデン>
  •  独立行政法人労働政策研究・研修機構(2003)「諸外国の若者就業支援政策の展開−イギリスとスウェーデンを中心に−」
  •  独立行政法人労働政策研究・研修機構(2004)「先進国の雇用戦略に関する研究」
  •  経済社会総合研究所(2005)「スウェーデン企業におけるワーク・ライフ・バランス調査」報告書
  •  財務総合政策研究所(2006)「主要諸外国における国と地方の財政役割の状況」報告書
  •  スウェーデン統計局ホームページ(2007年3月時点)
    (http://www.scb.se/default____2154.asp)
<フランス>
  •  自治体国際化協会パリ事務所(2005)「海外都市リポート ミッション・ローカル−フランスにおける若年失業者対策−」市政636号全国市長会館 2005年7月号
  •  白川一郎(2005)「日本のニート・世界のフリーター−欧米の経験に学ぶ−」中央公論新社


<注38> (出所)白川一郎(2005)「日本のニート・世界のフリーター」(中央公論新社)
<注39> (出所)EUホームページ(http://europa.eu/scadplus/leg/en/cha/c11318.htm:2007年3月時点)
<注40> 国立職業安定所(Agence Nationale Pour l'Emploi:ANPE)は,我が国のハローワークに類似する機能を有する組織である。1967年に設立された国立公施設法人(Establissement Public National)と呼ばれるカテゴリに属する団体である。
<注41> (出所)日本労働研究機構欧州事務所(2003)「フランスの失業保険制度と職業訓練政策」
<注42> 会長1名,州・県・コミューンの代表が3名ずつ,ミッション・ローカルの代表33名,各省庁の代表16名で構成されている(2005年6月現在)。
<注43> 1ユーロ=155.03円(2007年3月1日時点)。本報告書ではこの換算レートを使用する。
<注44> エッソンヌ県マシー市を中心とした13コミューン(人口約13.2万人)を対象とするミッション・ローカルである。マシー市(パリ中心部から南15キロ,人口約4万人のコミューン。パレゾー市及びロンジュモー市に支部がある。)に所在している。1991年に創設された。登録者数は4,020人である。
<注45> 職業オリエンテーションコース(Parcours d'Orientation Professionnelle:POP)は,国が定めた枠組みの中でミッション・ローカルやNPO法人が一定の条件に当てはまる若者を対象に重点的にオリエンテーションを行う制度である。

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