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第2部 調査の結果

第4章 共感性(一般−Q12 非行−Q13)

質問 次にあなたが日常生活で出合ういろいろな出来事が書かれています。それぞれについて右側の回答欄(「まったくそうだ」,「ややそうだ」,「どちらでもない」,「ややちがう」,「まったくちがう」)のあてはまる数字を1つだけ選んで○を付けてください。
1 私は親しい友だちがよい成績を取った時は,自分のことのように喜んでしまう
2 私は見知らぬ人であっても,その人の表情や態度から心の中を想像してみることがある
3 私はテレビなどのドラマを見て涙ぐんでいる人を見ると,おかしいと思うことがある
4 私は落ち込んでいる人を見ると自分まで落ち込んでしまう
5 私はテレビなどで感動的なドラマを見ると,自分をすぐその主人公に置き換えてしまう
6 私は口に出して言わなくても,親友ならば何を考えているのかが大体わかる
7 私は一人暮らしのお年寄りを見ると,かわいそうになる
8 私は悲しくて涙を流している人を見ると,同情するよりいらいらしてしまうことがある
9 私は人から何か言われると簡単に決心を変えてしまいやすい
10 私は漫画を読んでいると,その主人公の気持ちに引き込まれてしまうことがよくある
11 私は人が冷たくされているのを見ると,大変腹が立つ
12 私は話し合いをしているときは,相手が自分の考えをどう思っているのかまず知ろうする
13 私はまわりの人たちが細かいことを気にしたりすると,自分までいらいらしてしまう
14 私はテレビなどでドラマを見ているとつい夢中になってしまう
15 私は友達が悩みごとを話し出すと,話をそらしたくなる

この質問は心理学で言う,共感性(Empathy)を測定するための質問である。上に挙げた15の質問でできており,これに対して,「まったくそうだ」「ややそうだ」「どちらでもない」「ややちがう」「まったくちがう」の5つの回答のうち,自分に当てはまる回答1つを選ばせるものである。得点は共感性が高いと考えられる方から,4,3,2,1,0の得点を与え,15問全部の得点を合計して共感性得点とする。

共感性とは一般の用語で言えば,「思いやり」を意味するもので,例えば人助けをするときに,助けようとする行動をとるきっかけとなる感情のことである。そのためには,他人の感情を正しく推し量ることが必要であるとされる。ただし,共感性については,高ければ良いというものではなく,家族や親友など身近な人に対しては思いやりの気持ちが強いものの,それ以外の人に対しては冷たくしがちである場合もあり,ここで得られた得点が高ければよいというものではなく,高すぎることも低すぎることも問題として考えられることに注意する必要がある。


性別・群別・学年(年齢)別の共感性得点の平均点を示したのが図2-4である。この結果で見ると,非行少年の方が中学生,高校生より得点が高い。これは犯罪者や非行少年についてのこれまでの研究結果と同様であり,犯罪者や非行少年がより過剰な思いやりを示しやすいのだと言われている。しかし,それは誰に対してもというわけではなく,身近な人には過剰なまでの思いやりを見せるが,その他の人に対しては全く示さないといった,相手により極端な差があるのではないかとも考えられている。そうしたことから,前述のように単純に得点の高低だけを指標として考えることはできない。

次に,年齢との関係を見ると,直線的ではないが,年齢が高くなるにつれて得点が高くなる傾向が中学生,高校生,非行少年に共通して見られる。これも従来の研究で明らかにされていることと同様であり,年齢が高くなるにつれて,他人の感情を推し量ることができるようになっていくものと考えられている。


図2-4 共感性平均得点

男女別、群別、学年別にみた共感性得点の平均点を示した折れ線グラフ

次に,性による差について見ると,中学生,高校生,非行少年とも,女子の方が男子に比べて得点が高い。これはこれまでの共感性についての研究結果と同様であり,女子の方が他人の気持ちを推し量ることが期待され,また,そのようにしつけられていることの現れではないかといわれている。

非行少年の中でこれまでに暴力非行により警察に補導された経験のある者とない者との共感性得点の平均を表2-4に示す。


表2-4 暴力非行と共感性得点  <CSVデータ>

  男子 女子
暴力非行あり 暴力非行なし 暴力非行あり 暴力非行なし
人員 677 517 68 140
平均点 39.3 39.0 41.4 41.7
標準偏差 7.53 8.48 5.85 6.59

この結果では,暴力非行のある者とない者とでは男女とも共感性得点に差はみられない。



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