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第3部 調査結果の分析

第5章 暴力観・暴力経験と非行


法務総合研究所主任研究官 小柳 浩子

要旨


先に,最近の青少年が,暴力的行動についてどんなとらえ方をしているのか,あるいは,実際に,暴力的行動をとることがどの程度あるのか,を見ている。本章では,これらと非行とのかかわりに注目して分析・検討した。

1) 暴力経験の有無については,いずれの質問項目についても,経験有りとする率は,一般群より非行群の方が高く,非行群の中でも暴力非行群の方がその他の非行群よりも高くなる傾向が見られる。

2) 家庭場面での項目については,「家出する」において,一般群と非行群との差が大きく,非行群では半数近くが経験ありとしている。「家出」が非行の準備状態につながることがうかがえる。

3) 暴力非行群においては,他の群と比べて,家庭場面に加えて学校場面での暴力的発散行動の経験率も高い。また,攻撃的なエネルギーが「人」に向かい,しかも,加齢するにつれて,その範囲が広がる傾向もうかがえる。

4) 暴力的な行動について,「したことはないが,思ったことはある」とする回答の結果を見ると,非行群より一般群の方が高い回答率を示す項目が現れる。一般群においても,攻撃のエネルギーとなりうる否定的な想念を抱く者が相当数存在するといえる。

5) 暴力にかかわる考え方については,暴力行使を正当化する考え方においては,暴力非行群の肯定回答率が,他の群と比べて高い。

6) 暴力黙認傾向については,非行群より一般群において肯定回答率が高い。中でも,いじめを見過ごすこともしかたがない,とする考え方を一般群の半数若しくはそれ以上が肯定している。いじめの問題に対する一般青少年の姿勢をうかがわせている。

7) 世の中をやや斜めに見るような考え方に対しては,非行群より一般群の肯定回答率の方が高く,加えて,加齢するにつれて肯定回答率が上昇する傾向が認められる。



1 暴力的行動の経験と非行

(1) 一般群・非行群別の状況

直近1年間の暴力的行動の経験の有無についての調査結果を見ると,実際に「ある」としたものについては,どの質問項目においても,一般群より非行群の方が多い。一般群と非行群とで10ポイント以上の差があるものが10項目に上る。

表3-5-1は,調査結果を,群別及び非行種別に見たものである。


表3-5-1 群・種別暴力的行動  <CSVデータ>

1) 一般群・非行群・暴力非行群・その他の非行群
(%)
  一般群 非行群
  暴力非行群 他の非行群
したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない
親の言うことを聞かない 69.9 22.2 7.9 85.4 11.2 3.4 86.9 10.3 2.8 83.8 12.3 4.0
親をなぐる 6.9 27.9 65.2 15.2 26.6 58.2 17.0 25.8 57.3 13.2 27.6 59.3
家出する 4.8 33.9 61.3 45.8 18.2 36.0 46.4 18.0 35.5 45.2 18.4 36.4
家の品物をこわす 11.0 15.8 73.2 23.6 17.0 59.4 25.9 16.1 58.0 20.9 18.1 61.1
授業をさぼる 10.7 33.6 55.7 66.8 18.6 14.6 72.3 15.2 12.6 60.5 22.6 16.9
教室で騒ぐ 7.1 17.6 75.3 36.6 20.8 42.6 41.2 21.9 36.9 31.4 19.6 49.0
先生の言うことを聞かぬ 16.4 33.0 50.6 70.4 14.4 15.2 75.7 12.8 11.5 64.4 16.3 19.3
先生に暴力を振るう 0.6 17.3 82.2 13.9 31.9 54.3 18.1 33.1 48.8 9.0 30.5 60.5
友だちを無視する 19.8 23.7 56.5 23.9 18.5 57.5 24.1 20.1 55.8 23.8 16.7 59.5
友だちに暴力を振るう 11.0 15.2 73.8 33.8 17.0 49.1 40.0 16.5 43.5 26.8 17.6 55.5
自殺しようとする 2.4 19.2 78.4 6.6 22.7 70.6 5.5 23.8 70.6 7.8 21.5 70.7
たばこの火で自傷 1.8 4.3 93.9 36.5 6.8 56.7 39.3 6.5 54.1 33.3 7.1 59.6
見知らぬ人をなぐる 0.8 5.8 93.5 16.5 14.9 68.6 24.1 16.0 59.9 8.0 13.7 78.4
オヤジ狩りをする 0.3 2.9 96.7 4.6 10.3 85.1 6.4 11.0 82.7 2.6 9.5 87.9
動物をいじめる 3.6 5.2 91.2 4.3 4.2 91.4 6.0 4.2 89.8 2.5 4.3 93.3
公園の花を踏みつける 3.4 3.7 92.9 5.0 3.5 91.5 5.0 3.5 91.4 5.1 3.4 91.6
数値は、%である。

2) 非行種別
(%)
  財産犯 粗暴犯 凶悪犯 性犯 交通犯 薬物犯 ぐ犯
  したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない したことがある したことはないが、思ったことはある したことも思ったこともない
親の言うことを聞かない 85.7 11.1 3.2 86.8 10.2 3.0 90.1 8.4 1.5 95.5 4.5 0.0 85.8 11.0 3.3 88.6 9.4 2.0 93.1 5.9 1.0
親をなぐる 16.5 26.6 56.9 16.4 25.6 58.0 23.1 26.2 50.8 27.3 25.0 47.7 19.1 26.0 55.0 19.2 26.5 54.3 17.6 22.5 59.8
家出する 48.0 17.7 34.3 46.9 17.8 35.3 46.2 23.1 30.8 36.4 20.5 43.2 47.4 16.5 36.2 55.3 16.8 27.9 70.6 8.8 20.6
家の品物をこわす 26.0 16.7 57.4 25.7 16.4 57.9 29.8 13.0 57.3 22.7 15.9 61.4 28.1 16.6 55.3 22.6 18.9 58.4 26.0 17.0 57.0
授業をさぼる 69.5 17.2 13.3 73.2 14.2 12.6 65.9 21.2 12.9 61.4 13.6 25.0 72.1 16.7 11.2 75.9 12.2 11.8 76.5 13.7 9.8
教室で騒ぐ 37.2 20.4 42.4 42.0 21.1 37.0 35.6 21.2 43.2 25.0 22.7 52.3 42.6 18.7 38.7 39.2 18.4 42.4 39.2 20.6 40.2
先生の言うことを聞かぬ 74.1 12.5 13.4 76.2 12.6 11.2 67.4 15.2 17.4 68.2 18.2 13.6 76.4 12.2 11.4 78.0 11.4 10.6 75.5 11.8 12.7
先生に暴力を振るう 15.3 32.8 51.8 18.8 32.4 48.9 9.8 38.6 51.5 4.5 25.0 70.5 17.4 33.5 49.1 15.1 31.4 53.5 12.7 33.3 53.9
友だちを無視する 25.6 16.5 57.9 24.4 20.8 54.9 25.8 13.6 60.6 25.0 15.9 59.1 23.9 18.3 57.8 25.3 17.6 57.1 32.4 16.7 51.0
友:だちに暴力を振るう 36.9 16.8 46.3 40.4 16.3 43.3 37.1 22.0 40.9 52.3 4.5 43.2 38.5 16.6 44.8 38.0 16.3 45.7 34.3 6.9 58.8
自殺しようとする 5.7 23.5 70.8 5.5 23.7 70.9 6.1 26.5 67.4 0.0 22.7 77.3 4.7 20.1 75.3 13.5 22.1 64.3 17.8 34.7 47.5
たばこの火で自傷 39.0 6.4 54.6 40.6 6.5 52.9 36.4 7.6 56.1 36.4 4.5 59.1 38.7 6.5 54.8 46.3 7.4 46.3 40.2 8.8 51.0
見知らぬ人をなぐる 19.2 15.0 65.8 24.4 15.8 59.8 29.5 14.4 56.1 13.6 11.4 75.0 21.3 14.4 64.3 17.1 13.9 69.0 18.8 15.8 65.3
オヤジ狩りをする 5.3 12.4 82.4 6.5 10.8 82.8 15.2 13.6 71.2 2.3 4.5 93.2 4.3 10.5 85.2 4.1 13.5 82.4 8.8 12.7 78.4
動物をいじめる 4.8 4.5 90.7 5.6 3.9 90.5 9.1 6.8 84.1 0.0 0.0 100.0 4.7 3.9 91.5 4.5 3.3 92.2 3.0 3.0 94.1
公園の花を踏みつける 6.0 3.7 90.4 4.9 3.7 91.4 8.3 1.5 90.2 6.8 0.0 93.2 5.9 2.9 91.2 6.2 2.1 91.8 7.9 5.9 86.1
数値は、%である。

家庭場面に関する項目では,「親の言うことをきかない」は一般群69.9%に対し,非行群85.4%となっており,非行群の方が高いが,一般群でもほぼ7割の者が行動経験ありとしている。「親の言うことを聞かない」という行動は,思春期にある青少年に比較的,一般的に見られる行動であると言ってよいであろう。

一方,「親を殴る」になると,一般群では6.9%にとどまる。これに対し,非行群では15.2%の者が経験有りとしており,非行群の親子関係の一端が垣間見えるとともに,非行群における暴力にかかわる問題の存在もうかがわせている。「親をなぐる」と同様に直接的な暴力発散行動であるが,そのほこ先が「人」ではなく,「物」に向かうものである「家の品物をこわす」は,一般群11.0%に対し,非行群では23.6%となる。「物」に攻撃を向ける行動は,一般群においても,10人に1人は存在する,ということになる。「家出する」は,一般群4.8%に対し,非行群では45.8%となり,両者の開きが大きい。親に叱られて家庭内に身の置き所がなくなって「家出する」場合もあれば,親への抗議として「家出する」という行動をとることもある。また,勝手気ままな生活のために「家出する」こともある。「家出する」という行動の持つ意味は様々であり,その様相は不明であるが,いずれにしても家庭という保護領域からの脱落と言える。非行群において半数近くがここ1年の間に経験ありとしていることは,家出が非行発現の準備状態につながることをうかがわせるものとも言えよう。

学校場面に関する項目では,一般群,非行群ともに,消極的な攻撃行動と意味付けされる「授業をさぼる」と「先生の言うことをきかない」が,積極的あるいは明示的な攻撃行動と意味付けされる「教室でさわぐ」,「先生に暴力をふるう」より高い。また,「先生の言うことをきかない」は,非行群では7割を超えているのに対し,一般群では16.4%である。上記の「親の言うことをきかない」に対する回答結果と比べると,非行群ではともに高い数値を示しているのに対し,一般群では,「先生の言うことをきかない」は大幅に低い数値になっている。家庭外の社会的な場面における権威の代表と言える「先生」に対する攻撃は,消極的なものであれ,一般群では少ない,と見ることができる。「親」に対する攻撃発動には,甘えの表現としての意味合いをもつものもあることを考えると,非行群に見られる「先生」に対する攻撃発動には,「家庭」と「家庭外」の場面が充分に分化されていないことも要因の一つになっている可能性があろう。

交友場面に関して見ると,ここでも,経験有りとする率は,「友達を無視する」,「友達に暴力を振るう」ともに,一般群より非行群の方が高いが,一般群では,消極的な攻撃と意味付けられる「友達を無視する」の経験有りとする者の方が,積極的・明示的な攻撃行動である「暴力を振るう」の経験有りとする者より多いのに対して,非行群では,逆に,「暴力を振るう」の経験有りとするものの方が,「友達を無視する」の経験有りとするものより多い。非行群では,攻撃がストレートに表出される傾向がうかがえる。

個人的な場面に関しては,「自殺しようとする」,「たばこの火で自傷」ともに,経験有りとするものは,一般群より非行群に多いが,「自殺しようとする」がいずれも低い数値である一方で,「たばこの火で自傷」については,一般群18%に対し,非行群では36.5%の者が経験有りとしている。この数値には,「たばこの火で自傷」という行為が、いわゆる「根性焼き」として非行文化の中に取り込まれているものであることも反映されているものと考えられる。

公共での対人場面に関しては,一般群では,「見知らぬ人をなぐる」,「オヤジ狩りをする」ともに,経験有りとするものは1%に達しない。非行群では,「見知らぬ人をなぐる」は16.5%,「オヤジ狩りをする」は4.6%となっている。非行群では,6人に1人は見知らぬ人をなぐった経験がある,ということになる。

公共の場面での「人」ではない対象への暴力について見ると,「動物をいじめる」,「公園の花を踏みつける」ともに,一般群より非行群の方が経験有りとする率が高いが,いずれも3ないし5%程度であり,一般群と非行群との差も余りない。

「したことはないが思ったことはある」と回答したものを見ると,非行群より一般群の方が高い項目が現れる。「家出する」,「授業をさぼる」,「先生の言うことをきかない」では,一般群のほぼ3人に1人が,「したことはないが,思ったことはある」と回答している。一般群では,家庭,学校,あるいは交友場面において,直接的な暴力的行動として表出はされないものの,攻撃のエネルギーとなりうる不満や鬱屈等の否定的な想念を抱いている者が相当数存在することをうかがわせている。

次に,非行群を暴力非行群とその他の非行群に分けて集計した結果について見る。経験有りの回答については,「自殺しようとする」のほかは,暴力非行群の方がその他の非行群より高い。「授業をさぼる」,「先生の言うことをきかない」,「先生に暴力を振るう」,「友達に暴力を振るう」及び「見知らぬ人をなぐる」においては,10ポイント前後,ないしはそれ以上の開きがある。これらの項目に,暴力非行群の特徴が現れていると見ることができよう。「授業をさぼる」及び「先生の言うことをきかない」は,子どもにとって家庭の次に現れる社会的空間である学校場面にかかわるものである。家庭場面においても,暴力非行群の方がその他の非行群より暴力的行動をとる率が高くなっているが,その差は,学校場面にかかわる項目と比べると小さい。暴力非行群では,家庭場面に加えて学校場面においても暴力的行動が発現することがかなりあり,先生であれ,友達であれ,見知らぬ人であれ,攻撃が人に向かって表出されることがうかがえる。

一方,「したことはないが,思ったことはある」とする回答について見ると,家庭場面に関する項目においては,いずれも,暴力非行群よりその他の非行群の方が高い数値となる。学校場面に関する項目においても,「授業をさぼる」及び「先生の言うことをきかない」では,暴力非行群よりその他の非行群の方が高い。暴力非行群において行動化される攻撃エネルギーは,その他の非行群においては抑止される傾向がある,といえよう。

暴力的行動の有無についての回答に,一般群,暴力非行群及びその他の非行群の各群間で差があるかを見ると,表3-5-2のとおりである。


表3-5-2 群間の差(暴力的行動)  <CSVデータ>

    平均値の差
親の言うことを聞かない 暴力・非行/その他の非行 -0.0423
その他の非行/一般群 -0.1782*
一般群/暴力・非行 0.2204*
親をなぐったりする 暴力・非行/その他の非行 -0.058
その他の非行/一般群 -0.1216*
一般群/暴力・非行 0.1795*
家が面白くなくて家出する 暴力・非行/その他の非行 -0.021
その他の非行/一般群 -0.6523*
一般群/暴力・非行 0.6733*
わざと家の品物などをこわす 暴力・非行/その他の非行 -0.0807*
その他の非行/一般群 -0.2201*
一般群/暴力・非行 0.3008*
面白くない授業は抜け出してさぼる 暴力・非行/その他の非行 -0.1605*
その他の非行/一般群 -0.8854*
一般群/暴力・非行 1.0459*
教室で騒いで授業をできなくしてしまう 暴力・非行/その他の非行 -0.2194*
その他の非行/一般群 -0.5054*
一般群/暴力・非行 0.7248*
先生の言うことをきかない 暴力・非行/その他の非行 -0.191*
その他の非行/一般群 -0.7934*
一般群/暴力・非行 0.9843*
先生に暴力を振るう 暴力・非行/その他の非行 -0.2078*
その他の非行/一般群 -0.3014*
一般群/暴力・非行 0.5092*
友達を無視する 暴力・非行/その他の非行 -0.0398
その他の非行/一般群 -0.0095
一般群/暴力・非行 0.0493
友達に暴力を振るう 暴力・非行/その他の非行 -0.2517*
その他の非行/一般群 -0.3408*
一般群/暴力・非行 0.5925*
自殺しようとする 暴力・非行/その他の非行 0.0226
その他の非行/一般群 -0.1318*
一般群/暴力・非行 0.1092*
タバコの火などで自分の体を傷つける 暴力・非行/その他の非行 -0.1148*
その他の非行/一般群 -0.6582*
一般群/暴力・非行 0.7729*
むかついて見知らぬ人をなぐる 暴力・非行/その他の非行 -0.3454*
その他の非行/一般群 -0.2231*
一般群/暴力・非行 0.5685*
オヤジ狩りをする 暴力・非行/その他の非行 -0.0898*
その他の非行/一般群 -0.1111*
一般群/暴力・非行 0.2009*
動物をいじめる 暴力・非行/その他の非行 -0.0692*
その他の非行/一般群 0.0322
一般群/暴力・非行 0.037*
公園の花などをわざと踏みつける 暴力・非行/その他の非行 -0.0009
その他の非行/一般群 -0.0291
一般群/暴力・非行 0.03
*平均の差は.05で有意

(2) 年齢層と暴力的行動

次に,年齢とのかかわりを見ていく。年齢層別・群別に,暴力的行動の現れ方を見たものが,表3-5-3である。

家庭場面に関する項目を見ると,「親の言うことをきかない」は,各群を通じてかなり高い率を示しているが,暴力非行群とその他の非行群を比べると,暴力非行群においては加齢するにつれて上昇する傾向を示すのに対し,その他の非行群においては逆に低下する傾向を示す。「親をなぐる」についても,類似の傾向が見られる。

一方,暴力非行群の特徴の一つであることがうかがえる「先生の言うことをきかない」について見ると,上記の「親」の場合と違って,暴力非行群,その他の非行群ともに,加齢につれて低下する傾向がうかがえる。

交友場面での「友達に暴力をふるう」を見ると,暴力非行群では年齢層別の差は余り見られないのに対し,その他の非行群では,低年齢層と比べて中年齢層及び高年齢層では低下している。また,公共の対人場面にかかわる項目である「見知らぬ人をなぐる」については,暴力非行群では低年齢層と比べて中年齢層及び高年齢層で上昇するのに対し,その他の非行群では逆の傾向を示している。暴力非行群においては,暴力的な攻撃行動が発現する対人場面の範囲が,加齢するにつれて拡大する傾向がある,と見ることができよう。 一般群については,3年齢層の中では,中年齢層の行動発現率が他の2年齢層と比べて若干高くなる傾向がうかがえる。非行群でも,同様のパターンを見せる項目があるが,非行群ではそれと同時に年齢が上がるほど発現率の上がる項目,中年齢層でいったん低下した後,高年齢層で上昇する項目も見られる。一般群では,思春期の特徴として情緒的に不安定になり,「荒れ」を見せることがあるとしても,加齢するにつれて次第に収まっていくことを示しているものと考えられる。


表3-5-3 年齢層別・群別暴力的行動  <CSVデータ>

  暴力非行群
低年齢層 中年齢層 高年齢層
したことがある したことはないが思ったことはある したことがある したことはないが思ったことはある したことがある したことはないが思ったことはある
親の言うことを聞かない 85.6 11.4 86.2 11.6 88.9 7.4
親をなぐる 17.5 25.3 15.5 26.8 19.0 24.5
家出する 57.8 9.0 44.8 19.4 40.3 22.7
家の品物をこわす 20.5 14.5 27.6 15.5 27.2 18.4
授業をさぼる 76.6 10.2 71.6 16.9 69.9 16.2
教室で騒ぐ 47.9 17.4 39.9 23.0 38.2 23.5
先生の言うことを聞かぬ 80.2 9.0 76.7 12.9 70.5 15.7
先生に暴力を振るう 31.1 26.3 15.2 35.1 12.9 35.0
友だちを無視する 23.4 13.8 26.7 18.5 20.3 27.6
友だちに暴力を振るう 40.7 10.8 40.2 18.3 39.2 18.0
自殺しようとする 9.0 23.5 5.1 24.7 3.7 22.6
たばこの火で自傷 47.6 3.6 37.5 9.3 36.1 4.2
見知らぬ人をなぐる 21.1 11.4 25.0 15.4 24.9 20.3
オヤジ狩りをする 7.2 9.6 7.0 12.1 4.6 10.1
動物をいじめる 5.4 5.4 5.9 4.8 6.5 2.3
公園の花を踏みつける 4.8 6.1 6.5 2.5 2.8 3.2
  他の非行群
低年齢層 中年齢層 高年齢層
したことがある したことはないが思ったことはある したことがある したことはないが思ったことはある したことがある したことはないが思ったことはある
親の言うことを聞かない 85.2 12.3 83.7 13.1 83.1 11.2
親をなぐる 15.6 19.7 13.1 24.1 12.0 35.3
家出する 63.1 13.1 43.9 15.7 37.8 24.1
家の品物をこわす 21.8 16.0 17.6 15.5 24.1 22.0
授業をさぼる 54.9 24.6 65.5 19.2 57.7 25.4
教室で騒ぐ 35.2 22.1 32.6 16.7 28.1 21.7
先生の言うことを聞かぬ 67.2 16.4 67.3 13.2 59.8 19.7
先生に暴力を振るう 13.1 32.8 10.3 29.4 5.6 30.5
友だちを無視する 28.1 15.7 22.7 15.6 22.9 18.5
友だちに暴力を振るう 36.9 15.6 22.4 17.8 26.9 18.5
自殺しようとする 12.4 32.2 7.1 19.1 6.5 19.0
たばこの火で自傷 45.9 4.9 27.1 8.9 34.1 6.0
見知らぬ人をなぐる 10.7 16.5 5.7 13.1 9.2 12.9
オヤジ狩りをする 4.9 14.8 1.8 8.2 2.4 8.4
動物をいじめる 3.3 5.0 2.5 3.5 2.0 4.8
公園の花を踏みつける 10.7 3.3 3.2 3.5 4.4 3.2
  一般群
低年齢層 中年齢層 高年齢層
したことがある したことはないが思ったことはある したことがある したことはないが思ったことはある したことがある したことはないが思ったことはある
親の言うことを聞かない 66.6 24.0 74.6 19.8 69.1 22.0
親をなぐる 7.2 27.2 7.8 30.3 4.0 25.1
家出する 3.6 33.3 6.1 36.3 5.4 30.9
家の品物をこわす 10.1 13.5 13.2 18.0 8.9 17.5
授業をさぼる 2.6 28.0 18.6 41.2 17.1 33.4
教室で騒ぐ 6.0 15.6 9.3 21.2 5.7 15.4
先生の言うことを聞かぬ 13.4 29.6 21.6 37.5 13.8 33.2
先生に暴力を振るう 0.6 13.4 0.7 22.9 0.3 16.0
友だちを無視する 20.0 23.3 22.7 26.7 13.1 18.3
友だちに暴力を振るう 13.9 15.0 10.4 16.2 4.3 13.4
自殺しようとする 2.3 18.3 2.4 22.1 2.6 15.4
たばこの火で自傷 1.6 3.7 2.3 4.9 1.4 4.6
見知らぬ人をなぐる 1.0 4.4 0.4 8.0 0.9 4.9
オヤジ狩りをする 0.3 2.7 0.3 3.4 0.6 2.6
動物をいじめる 4.6 6.5 3.0 4.3 2.0 3.4
公園の花を踏みつける 4.2 4.8 3.0 3.1 2.3 1.7
数値は、各群・層において経験有りと回答したものの%である。

2 暴力観と非行

(1) 一般群・非行群別の状況

表3-5-4は,暴力にかかわる考え方に「はい」又は「いいえ」で回答を求めた結果を,群別及び種別に見たものである。


表3-5-4 群・種別暴力観  <CSVデータ>

1) 一般群・非行群・暴力非行群・その他の非行群
  一般群 非行群
  暴力非行 他の非行
周りが言う必要はない 15.9 19.7 20.3 19.1
知らんぷりもしかたない 44.5 23.8 22.4 25.5
その人が怒らせるから 41.9 57.3 59.9 54.3
仕返しなら当然 36.7 59.2 62.7 55.3
大人がだらしない 41.2 17.5 15.8 19.5
いじめは無くならない 65.3 50.5 48.3 52.9
誰も暴力経験はある 70.8 83.0 85.3 80.2
子どもがまねをする 52.2 39.4 37.7 41.4
世の中は変わらない 52.7 41.3 41.9 40.6
先輩に従うのは当然 37.4 30.3 31.3 29.1
まじめな人はごめん 20.1 13.3 13.9 12.7
我慢は馬鹿げている 56.2 31.5 32.7 30.1
ルール破りも仕方ない 53.1 52.8 54.6 50.8
暴力で片を付ける 27.9 31.6 35.0 27.8

2) 非行種別
  財産犯 粗暴犯 凶悪犯 性犯 交通犯 薬物犯 ぐ犯
周りが言う必要はない 20.9 20.5 17.3 11.1 19.1 16.7 18.6
知らんぷりもしかたない 23.1 22.0 29.9 26.7 23.1 18.3 23.5
その人が怒らせるから 57.1 60.3 53.7 43.2 54.8 51.8 51.5
仕返しなら当然 61.4 62.1 63.4 44.4 60.8 52.9 61.4
大人がだらしない 15.8 15.7 24.1 20.0 16.7 17.8 17.0
いじめは無くならない 49.9 48.5 53.0 48.9 48.5 53.5 54.5
誰も暴力経験はある 83.2 85.6 54.8 84.4 85.9 84.8 86.1
子どもがまねをする 39.5 37.5 43.6 46.7 38.3 42.0 53.9
世の中は変わらない 41.2 42.5 43.6 31.1 42.5 38.9 41.6
先輩に従うのは当然 29.3 30.5 36.8 35.6 27.9 23.5 27.7
まじめな人はごめん 13.2 14.0 17.3 6.7 12.3 15.2 15.7
我慢は馬鹿げている 30.7 31.9 38.6 33.3 29.6 34.7 36.3
ルール破りも仕方ない 53.1 53.8 57.9 46.7 55.2 51.8 56.9
暴力で片を付ける 32.5 35.2 32.6 22.2 34.6 29.6 31.7
数値は、各質問項目に「はい」と答えたものの%である。

この調査で取り上げた考え方については,「はい」の回答が,非行群より一般群の方で高かったものの方が多くなっており,「いじめられている人をかばうと,自分もやられるかも知れないから,知らんぷりをするのもしかたがない」,「暴力がはびこるのは,大人がだらしないからだ」,「今の社会では,強い者が弱い者を押さえつける仕組みになっていて,どうやってもいじめはなくならない」,「親や先生が暴力をふるうから,子供がまねをする」,「世の中はどうせ変わらない」,「先輩に従うのは当たり前だ」,「まじめな人と付き合うのはごめんだ」,「将来のために今の楽しみを我慢するのは,ばかげている」及び「悪い者をやっつけるためなら,ルールを破るのもしかたがない」については,非行群より一般群の方が肯定回答率が高くなっている。このうち,10ポイント以上の開きのある項目が6項目となる。

さらに,項目ごとに調査結果を見ていくと,「暴力がはびこるのは,大人がだらしないからだ」については,暴力非行群よりもその他の非行群において肯定回答率が高く,さらに,一般群の肯定回答率は非行群より20ポイント以上高くなっている。これほどの開きではないが,「親や先生が暴力をふるうから,子供がまねをする」についても,一般群の方が非行群より高い肯定回答率を示している。暴力的な行動の当事者である暴力非行群にとっては,これらの考え方は,遠いもの,あるいは余り現実味のないもの,と感じられるものと考えられる。

また,「いじめられている人をかばうと,自分もやられるかもしれないから,知らんぷりをするのもしかたがない」,「いじめはなくならない」においても,一般群の方が非行群より高い肯定回答率を示している。「いじめ」の問題については,周囲がそれを黙認することの問題が指摘されているが,一般群の,この2項目における44.5%,65.3%という肯定率には,この問題についての懸念を改めて抱かさせられる。一般の青少年にとって,「いじめ」は避けて通るに如かず,という状況になっていることがこの調査結果にも示されている,ということなのかも知れない。

「世の中はどうせ変わらない」,「先輩に従うのは当たり前だ」についても,一般群の方が非行群よりも肯定回答率が高く,非行群の中では,暴力非行群の方がその他の非行群よりも肯定回答率が高い。一般群の肯定率の高さは,既成の枠組みの重みを認識するゆえのものとも考えられよう。

「まじめな人と付き合うのはごめんだ」,「将来のために今の楽しみを我慢するのはばかげている」についても,非行群よりも一般群の方で肯定的にとらえられており,一般群では,後者の考えに対する肯定回答率は56.2%となっている。近時の青少年集団の中に見られる,まじめさや堅実さ・忍耐を軽視する風潮にかかわるものとも考えられる。

一方,「暴力も,相手がけがをしなければ,周りがいろいろ言う必要はない」,「人から暴力をふるわれるのは,その人が相手を怒らせるようなことをしているからだ」,「友達がやられた仕返しのためのけんかなら,仲間に加わるのは当然だ」,「表にでない暴力は,多かれ少なかれみんな経験している」及び「妥協するくらいなら,腕力でかたを付ける方がすっきりする」については,暴力に直接かかわるものであるだけに当然とも言えようが,一般群より暴力非行群において肯定回答率が高い。このうち,「暴力も,相手がけがをしなければ,周りがいろいろ言う必要はない」,「ひとから暴力をふるわれるのは,その人が相手を怒らせるようなことをしているからだ」,「友達がやられた仕返しのためのけんかなら,仲間に加わるのは当然だ」の3項目については,10ポイント以上の開きとなっている。これらは,暴力を行使する側の論理,とでも言えるものであろう。

「悪い者をやっつけるためなら,ルールを破るのもしかたがない」については,一般群と非行群とに余り大きな差はない。

暴力にかかわるいろいろな考え方についての回答に,一般群,暴力非行群及びその他の非行群の各群間で差があるかを見ると,表3-5-5のとおりである。


表3-5-5 群間の差(暴力観)  <CSVデータ>

    平均値の差
相手がけがをしなければ暴力について周りがいろいろ言う必要はない 暴力・非行/その他の非行 -0.0121
その他の非行/一般群 -0.0316
一般群/暴力・非行 0.0437*
いじめられている人をかばうと自分もやられるかもしれないから知らんぷりをするのはしかたない 暴力・非行/その他の非行 0.0304
その他の非行/一般群 0.1906*
一般群/暴力・非行 -0.221*
人から暴力を振るわれるのはその人が相手を怒らせるようなことをしているからだ 暴力・非行/その他の非行 -0.0565*
その他の非行/一般群 -0.1243*
一般群/暴力・非行 0.0809*
友達がやられた仕返しのためのけんかなら仲間に加わるのは当然だ 暴力・非行/その他の非行 -0.0739*
その他の非行/一般群 -0.1859*
一般群/暴力・非行 0.2598*
暴力がはびこるのは大人がだらしないからだ 暴力・非行/その他の非行 0.0374
その他の非行/一般群 0.217*
一般群/暴力・非行 -0.2544*
今の社会では強い者が弱いものを押さえつける仕組みになっていてどうやってもいじめはなくならない 暴力・非行/その他の非行 0.0459
その他の非行/一般群 0.1235*
一般群/暴力・非行 -0.1694*
表に出ない暴力は多かれ少なかれみんな経験している 暴力・非行/その他の非行 -0.0508*
その他の非行/一般群 -0.0945*
一般群/暴力・非行 0.1454*
親や先生が暴力をふるうから子供がまねをする 暴力・非行/その他の非行 0.0375
その他の非行/一般群 0.1104*
一般群/暴力・非行 -0.1479*
世の中はどうせ変わらない 暴力・非行/その他の非行 -0.0135
その他の非行/一般群 0.1209*
一般群/暴力・非行 -0.1074*
先輩に従うのは当たり前だ 暴力・非行/その他の非行 -0.0226
その他の非行/一般群 0.0831*
一般群/暴力・非行 -0.0605*
まじめな人と付き合うのはごめんだ 暴力・非行/その他の非行 -0.0115
その他の非行/一般群 0.0737*
一般群/暴力・非行 -0.0622*
将来のために今の楽しみをがまんするのはばかげている 暴力・非行/その他の非行 -0.0253
その他の非行/一般群 0.2612*
一般群/暴力・非行 -0.2359*
悪い者をやっつけるためならルールを破るのもしかたがない 暴力・非行/その他の非行 -0.0373
その他の非行/一般群 0.0222
一般群/暴力・非行 0.0151
妥協するくらいなら腕力でかたを付ける方がすっきりする 暴力・非行/その他の非行 -0.0721*
その他の非行/一般群 0.0009
一般群/暴力・非行 0.0712*
*平均の差は.05で有意

(2) 齢層と暴力観

表3-5-6は,暴力にかかわる考え方について,年齢層と非行の発現のかかわりを見たものである。


表3-5-6 年齢層別・群別暴力観  <CSVデータ>

  暴力非行群 他の非行群 一般群
低年齢層 中年齢層 高年齢層 低年齢層 中年齢層 高年齢層 低年齢層 中年齢層 高年齢層
周りが言う必要はない 27.5 21.6 12.7 33.6 17.4 13.9 16.6 15.6 14.6
知らんぷりもしかたない 17.4 22.4 26.2 29.5 23.7 25.5 39.9 50.3 45.5
その人が怒らせるから 63.3 61.6 54.8 59.8 57.3 48.2 43.5 41.1 38.6
仕返しなら当然 68.1 63.9 56.6 61.5 59.8 47.2 33.7 38.0 42.6
大人がだらしない 15.2 16.0 15.9 28.9 14.3 20.8 38.9 43.2 43.7
いじめは無くならない 43.4 50.8 48.0 54.9 49.5 55.8 60.3 69.9 70.0
誰も暴力経験はある 81.1 86.0 87.3 82.6 77.2 82.5 64.0 77.4 76.4
子どもがまねをする 41.0 38.8 33.3 47.5 37.7 42.6 48.6 57.3 53.2
世の中は変わらない 40.7 40.8 44.7 43.4 41.3 38.4 45.6 58.4 60.9
先輩に従うのは当然 35.8 30.5 29.2 37.7 28.4 25.6 42.6 33.1 31.4
まじめな人はごめん 22.2 12.9 9.1 26.2 11.1 8.0 23.1 19.6 12.4
我慢は馬鹿げている 35.2 33.1 30.0 41.0 28.4 26.8 53.2 63.9 48.8
ルール破りも仕方ない 52.1 55.9 54.3 56.6 51.4 47.4 47.0 59.9 56.3
暴力で片を付ける 43.0 36.7 26.1 38.5 27.0 23.5 31.2 26.5 20.9
数値は、各群・層において経験有りと回答したものの%である。

ものの見方,考え方は,実際の生活経験を通して形成されるものである。そこには,年齢も一つの因子となってかかわってくるものと考えられる。一般群,非行群ともに,加齢に伴って肯定回答率が低下する項目は,「人から暴力をふるわれるのは,その人が相手を怒らせるようなことをしているからだ」,「まじめな人と付き合うのはごめんだ」,「先輩に従うのは当然だ」及び「妥協するくらいなら,腕力でかたを付ける方がすっきりする」の4項目である。「その人が怒らせるからだ」は,一般群より,非行群さらに暴力非行群の方が,肯定回答率がかなり高く,肯定回答率の低下する高年齢層の肯定回答率でさえ一般群の低年齢層を上回る数値となっているが,加齢により,一般の考え方に近づく傾向がうかがえる。「腕力でかたを付ける」については,一般群と暴力非行群とで,低年齢層においては10ポイント以上あった開きが,高年齢層においては5ポイント程度に縮まる結果となっている。

一方,一般群においては,「いじめられている人をかばうと,自分もやられるかもしれないから,知らんぷりをするのはしかたがない」,「友達がやられた仕返しのためのけんかなら,仲間に加わるのは当然だ」,「暴力がはびこるのは,大人がだらしないからだ」,「今の社会では,強い者が弱い者を押さえつける仕組みになっていて,どうやってもいじめはなくならない」,「表に出ない暴力は多かれ少なかれみんな経験している」,「親や先生が暴力をふるうから,子供がまねをする」,「世の中はどうせ変わらない」及び「悪い者をやっつけるためなら,ルールを破るのもしかたがない」では,加齢に伴って肯定回答率が上昇するのに対し,非行群では様相が複雑である。

すなわち,「知らんぷりもしかたない」は,暴力非行群より,その他の非行群,さらに,非行群より一般群の方が肯定回答率の高い項目であり,一般群の高年齢層では半数近くが肯定しているが,暴力非行でない非行群においては,低年齢層より高年齢層において肯定回答率が低下している。「世の中は変わらない」も同じようなパターンを見せる項目である。「ルール破りもしかたがない」は,暴力非行群では加齢と共に肯定回答率が上昇するが,その他の非行群では低下する。「みんな暴力を経験している」は,暴力非行群における肯定回答率が高い項目であり,一般群と同様に加齢と共に肯定回答率も上昇するのに対し,暴力非行ではない非行群においては,中年齢層においていったん低下した肯定回答率が,高年齢層において,低年齢層とほぼ同レベルになっている。

「大人がだらしないからだ」について見ると,一般群では,加齢に伴って肯定回答率が上昇するのに対し,暴力非行群では,年齢層による差はあまりない。このことは,「子供がまねをする」についても当てはまる。「友達がやられた仕返しなら,けんかに加わるのは当然だ」は,一般群では肯定回答率が上昇しているのに対し,暴力非行群では加齢と共に低下している。また,「ルール破りもしかたがない」は,一般群では加齢に伴って上昇する傾向があるのに対し,暴力非行群では年齢による差は余りない。

以上,見てきたように,一般群において,年齢が上がるにつれて肯定回答率が上昇する傾向が見られる項目には,世の中をやや斜めに見る姿勢をうかがわせる項目が多い。そのような姿勢は,自他のかかわりを冷静に受け止める構えに通じる面をもつものであり,感情暴発や攻撃発散を自制させるブレーキになっているものとも思われるが,現代の青少年にとっての成熟・成長のひとつの側面をうかがわせるようにも思われる。


3 共感性尺度

暴力的な行動,あるいは暴力にかかわる考え方には,人の資質も当然かかわってくる。ここでは,その指標の一つである共感性得点を取り上げる。

この調査の質問12(非行少年用では13)は,共感性に関する質問事項で構成されている。 表3-5-7は,ここで算出される共感性得点から,一般群・非行群別に,低得点群,中間群及び高得点群に被験者を分類し,一般群・非行群別に示したものであり,表3-5-8は,平均得点の状況を示したものである。


表3-5-7 共感性得点別・一般群・非行群別人員  <CSVデータ>

  低得点群 中間群 高得点群
人員 人員 人員
男子            
一般群 252.0 23.7 531.0 49.9 281.0 26.4
暴力非行群 40.0 6.5 204.0 33.3 368.0 60.1
その他の非行群 31.0 6.1 175.0 34.4 303.0 59.5
女子            
一般群 290.0 28.2 433.0 42.0 307.0 29.8
暴力非行群 9.0 12.9 30.0 42.9 31.0 44.3
その他の非行群 20.0 14.1 61.0 43.0 61.0 43.0
男子-低得点:42点以下、中間:43点-52点、高得点53点以上
女子-低得点:48点以下、中間:49点-56点、高得点57点以上

表3-5-8 群別共感性平均得点  <CSVデータ>

  男子 女子
一般群 47.40 52.32
暴力非行群 54.17 56.55
その他の非行群 53.97 55.81
注 男子、女子ともに、一般ぐんと暴力非行群及びその他の非行群との差はP.005で有意である。

共感性に関する先行研究でも指摘されているように,本調査でも一般群と非行群とを比べると,非行群の方が,ほぼ5点,高い得点を示している。先行研究(注1)と同様に,この調査の非行少年群は少年鑑別所収容少年であり,調査結果にはテスト場面が状況要因として影響を与えた可能性があるものと考えられるが,健全な社会適応にとって共感性尺度の得点が高いことが,必ずしも望ましいというわけではないことが本調査においても確認される。

得点の広がり方には,一般群と非行群,さらには暴力非行群とその他の非行群との間で違いがある。各群の得点状況を図示すると,図3-5-1のようになる。

一般少年群と比べて非行少年群の方が,また,非行少年群の中では,その他の非行群と比べて暴力非行群の方が,共感性得点は高得点の方に偏りを見せる傾向が認められる。暴力非行群には,感じやすさ,感情の動きに対する敏感さ,といった特徴があり,それらが共感性得点となって示されているものと考えられる。


注1

大川 力,出口保行,大西美加 1997「非行少年の共感性に関する研究(その1)」中央研究所紀要7,71-83

大川 力,出口保行,大西美加 1998「非行少年の共感性に関する研究(その2)」中央研究所紀要8,53-61


図3-5-1 共感性得点ヒストグラム

一般群、暴力非行群、その他の非行群別及び男女別に共感性得点の得点状況を図示したヒストグラム

4 まとめ

本章では,青少年の,暴力的な行動経験の状況及び暴力にかかわる考え方と,非行発現とのかかわりについて,一般群と非行群,非行群については,さらに,暴力非行群とその他の非行群に分けて分析・検討した。

暴力的な行動経験については,どの項目においても,非行群の方が一般群より,非行群の中では,暴力非行群の方がその他の非行群より経験有り,とする率が高い。ことに,非行群の場合,「家出」の経験有りとする回答が45.8%である。一般群の4.8%との間に大きな開きがあると同時に,2人に1人は家出経験をもつ,ということになり,家出が非行発現に大きくかかわることを示唆している。

学校場面でも,非行群,中でも暴力非行群は,他の群と比べて,暴力的行動の経験有りとする回答率が高い。また,暴力非行群の場合,家庭での親,学校での先生,交友場面での友達,さらに公共の場面での見知らぬ人,と,暴力が人に向かって発現する傾向が指摘される。

一方,一般群の中にも,暴力的な想念を抱く者はある水準存在していることが指摘できる。暴力にかかわる考え方については,暴力非行群においては,暴力を行使する側の論理とも言うべき暴力行使を正当化する考え方を肯定する回答率が高い。一般群では,非行群と比べて,暴力黙認につながる考え方を肯定する回答率が高くなる。ことに,いじめに関しては,一般群の半数若しくはそれ以上が,いじめを見過ごすことも仕方がない,とする考え方を肯定している。

世の中を斜めに見るような考え方については,非行群より一般群において肯定回答率が高くなり,しかも,年齢が上がるに連れて上昇する傾向が認められる。物事をさめた目で見る姿勢につながるものと考えられる。

共感性尺度を通して非行群,一般群の回答を見ると,共感性得点は一般群より非行群,非行群の中では,暴力非行群の方が高い。

以上のように,暴力非行群において暴力的な行動が場面のいかんにかかわらず人に向かって発現しやすいことが確認できたと同時に,一般群においても攻撃のエネルギーに転化しうる否定的な想念を抱いている者が相当数存在すること,一般群では,加齢につれて世の中をさめた目で見る姿勢が見られるようになっており,それが,暴力的行動発動を押さえることになっていることがうかがえた。



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