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地域における若者支援のための体制整備モデル事業
第3章 中央企画委員会委員による総括
  3.小杉委員からの示唆  

3 小杉委員からの示唆

『若年者雇用の変化と無業化』


急激な景気悪化の中で、若者の雇用状況にも急激な変化がおきている。まず、データで現れているのは、新規学卒者の内定状況である。この5年ほど、高卒者にしろ大卒者にしろ、就職内定率は毎年改善してきた。それが、2009年3月卒業予定者の1月末(大卒は2月1日)時点での内定率は、昨年を下回った(厚生労働省職業安定局2009年)。求人数の伸びが止まってしまったのだ。

学校卒業時点で無業になるか否かを決める最も大きな要因は、求人がどれだけあるかである。図には各年の高卒就職希望者一人当たりの求人数(=求人倍率)と高卒時点での無業者(=進学でも就職でもない者)比率を載せたが、この2つの数字の間に強い関係があることは明らかである。今後求人状況が悪化すれば、高卒時無業率は再び上昇する可能性が高い。


図表77 高卒求人倍率と高卒時無業率

図表77 高卒求人倍率と高卒時無業率

資料出所:厚生労働省「新規学卒者の労働市場」、文部科学省「学校基本調査」


学校にも職場にも所属しなくなる契機は、このほか、学校中途退学と就職先職場からの早期離職がある。学校中退については、高校生の場合2000年代初めごろは10万人を越えていたが、最近では減少し2007年度は約7万3千人となった。再入学・編入が約8千人いたので、おおむね6万5千人程度が学校から卒業することなく離れたと考えられる(文部科学省2008)。一方、高等教育からの中途退学者は増加している可能性が高い。詳しい調査はないが、入学者数と卒業者数の差から、4年制大学で5万人弱には達すると思われる。高等教育への進学者の増加が続いてきたが、同時に中途退学者も増加している。

一方、早期離職者については、就職3年以内の早期離職の比率が、7・5・3(中卒者7割、高卒者5割、大卒者3割)という数字が知られている。これは昨今に始まったことではないが、近年その比率が若干高まっている。離職後は、正社員としての仕事に転職する者が長期的に低下傾向にあり、非典型雇用に就く者が増えている。さらに、無業状態に長く留まる者も少なくないことが推測される。

こうした傾向についても景気低迷が続けば、問題が深刻化する可能性が高い。


『若者就業支援の政策と今後と課題』


我が国において、若年者の就業をめぐる問題が正面から受けとめられて政府を挙げての対策が採られるようになったのは2003年の「若者自立・挑戦プラン」が最初である。「自立・挑戦プラン」そのものは3年間で終了したが、その後の「再チャレンジ政策」や「新雇用戦略」などへと、若者を対象にした就業支援の政策は引き継がれてきた。

「自立・挑戦プラン」は省庁横断的な総合的政策であり、そこには多様な施策が組み込まれた。教育段階での就業体験を重視したキャリア教育の推進、あるいは、企業を対象にした人材投資促進のための税制の改革など幅広い対策が採られてきた。

若者に直接働きかける施策としては、当初は「やる気のある若者の職業的自立を促進する」という目的が掲げられており、若者に特化して職業相談から就職斡旋までをワンストップで行う「ジョブカフェ」が創設され、また、若者に試験的な雇用機会を与える「トライアル雇用」などの制度が導入された。2年目になって、若者が無業化するプロセスにも視野が広がり、生活訓練までふくむ合宿型の訓練施設である「若者自立塾」が創設され、さらに3年目には地域の相談体制の充実等のために「地域若者サポートステーション」の仕組みが導入された。その後、地域の若者の自立支援を担う専門的相談員として「ユースアドバイザー」の育成が図られるようになり、現在につながっている。

本国会で審議中の「青少年総合対策推進法案」は、こうした地域における若者の自立支援を体系化し、関係機関のネットワークを確立して、さらに充実したものにすることを主なねらいとしたものである。

すなわち、この「青少年総合対策推進法案」では、地方公共団体が、青少年育成に関する地域住民からの相談に応じ、関係機関の紹介や情報提供などを行う拠点、および、地域の関係機関(教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の青少年育成に関連する分野)等により構成される青少年自立支援地域協議会を置くように努めることを求めている。すでに国では地方公共団体や民間団体と協働して「地域若者サポートステーション」を全国77箇所に設置し、若者自立支援ネットワークの構築をすすめているが、この施策と整合的に地域体制が充実することが期待される。

この地域の若者自立支援ネットワークに私が期待するのは、第一に教育と自立支援・就業支援の機関とのを深めて、学校中途退学者・退学予定者の支援を充実すること、第二に福祉行政との連携を深めて、家庭の貧困を背景にした若者の自立困難に対して、積極的な支援を行うことである。

その際、この「青少年総合対策推進法案」で謳われている青少年自立支援地域協議会に対しての秘密保持義務は非常に重要だと思われる。上記のような問題について、自立支援ネットワークが有機的に機能すれば、当然、若者個人のプライベートな情報を共有する必要がでてくる。この条文は地域協議会(及びその構成機関)が個人情報をそのネットワーク外に漏らすことを禁ずるものであり、これにより逆にネットワーク内での情報共有は可能になる。「青少年総合対策推進法案」を力にして、地域の支援活動が更に活性化することを期待している。

引用文献

文部科学省(2008)「平成19年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査について」

厚生労働省職業安定局(2009)「平成20年度高校・中学新卒者の就職内定状況等(平成21年1月末現在)について」http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0313-5.html


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