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子ども・若者支援地域協議会体制整備モデル事業
第3章 中央企画委員会委員による総括

中央企画委員会委員による、「地域における若者支援のあり方について」(本年度モデル事業の成果と課題を踏まえて)と題した論稿を以下に示す。

 
  3−1.座長 宮本みち子委員からの示唆  

3−1.座長 宮本みち子委員からの示唆

ユースアドバイザー研修の2年目が終わった。1年目の悩みは、ユースアドバイザーはどこで活動する人材なのかという具体的なイメージが掴めないことだった。すでに、子ども・若者に関係する業務を行う専門機関・団体があり、その業務に従事しているワーカーがいるなかで、ユースアドバイザーはそれらとどのような位置関係に置かれ、新たに何を果たせばよいのかがはっきりしないからだった。

2年目の研修が始まりつつある2009年7月1日に子ども・若者育成支援推進法が成立し、2010年4月施行の運びとなったことは、ユースアドバイザー研修に法的な枠組みが与えられたことを意味した。とはいえ、新法が示す「子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援」の体制作りはこれから本格的に開始する段階にあり、しかも、法的に規定されているわけではないユースアドバイザーの地位と役割に関しては依然として不鮮明さがあるだろう。


【支援の対象となる子ども・若者は多様】


そこで、推進法の趣旨を整理し、ユースアドバイザーの果たす役割について、あらためて考えてみたい。まず、推進法の対象者は、「修学および就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有する者」と定めている。この定義を単純に解釈すると、「ひきこもりかニートの状態にある若者」または、その前段階にある「不登校の子ども」が対象となると考えがちだが、このような解釈には問題がある。

困難をかかえる子ども・若者の実態はもっと複雑であり、しかも時間軸に沿って変化している。不登校、中退、ひきこもり、ニートなどの状態は、相互に入り組んでいるし、学校にも仕事にも就いていない状態(純粋にニートの状態)が継続しているとも限らないからである。ただ、共通していえることは、学校にも、職場にも、あるいは家族にも、その他の組織にも、不完全にしか繋がっていない状態にあり、ジグザグの不安定な生活を続けているという点である。つまり、安定した社会関係と安定した社会的帰属先を持てない状態に置かれている子ども・若者であることは間違いない。

このような特性をもつ子ども・若者は、実に多様な背景と様相を呈している。いわゆる非社会的子ども・若者も、反社会的子ども・若者も当然含まれるが、非社会的若者が推進法の対象だと誤解される傾向がみられるが、それも間違いである。私たちが支援の対象とすべき子ども・若者の範囲は広く、しかも今後とも不変であるとは限らない。時代が変われば新しい問題が生じるだろう。その場合にも、推進法は、支援のための法的根拠にならなければならない。

私たちは、子どもが成長する長い過程を視野に納め、さまざまな理由のために豊かな社会関係のネットワークの外に追いやられてしまった子どもや若者が、社会関係を回復し、就学・就労・社会活動に参加できるように、支援をしていく必要がある。


【子ども・若者育成支援推進法のねらい】


推進法では、支援としてつぎの項目を挙げている。<1>社会生活を円滑に営むことができるようにするために必要な相談・助言・指導、<2>医療および療養を受けることを助けること、<3>生活環境の改善、<4>修学または就業を助けること、<5>社会生活を営むために必要な知識技能の習得を助けること、<6>その他、社会生活を円滑に営むことができるようにするための援助、である。これらの支援をするため関係機関等にはつぎの責務があると定めている。<1>子ども・若者の状況の把握、<2>相互に連携を図るとともに、子ども・若者またはその関係者を、適切な関係機関等に誘導すること、である。また、<3>関係機関等が行う支援について、地域住民に周知することを責務と定めている。推進法の主な趣旨は、関係機関の連携体制の下で支援の必要な子ども・若者を早期に発見し、地域資源のベストの組み合わせ(つまり連携)によって、有効性の高い継続的な支援をしようということにある。そのためには、シームレスな支援体制の整備が必要であるが、その点で現体制には多くの課題がある。


【高校と地域支援機関の連携をめざす取り組みから】


私がこの1年間関係してきたテーマのひとつに、高校中退問題がある。毎年7万人の高校中退者がいる。高卒就職さえ困難な時代のなかで、中退者はより大きなリスクを抱えているが、その問題は放置さ れてきた。若者支援現場では、中退歴のある来所者が少なくないことに気づいていたが、彼ら/彼女らの背景をみると、学校段階で手厚い支援が必要だったと感じる支援者が多い。家庭の貧困や崩壊、親子の葛藤、障害や疾病、友人関係や学力問題、教師との軋轢など、中退に至る原因は多様だが、10代で学校を去る若者には誰かの支援の手が必要だということだけは確かである。

何割もの生徒が中退する高校には現代社会の諸問題が色濃く投影されている。教師の努力だけで解決できない重い問題が渦巻いている。このような状況に対して、どのような方法が必要だろうか。ひとつの取り組みを紹介しよう。札幌にある地域若者サポートステーションの例である。

いわゆるニート支援機関として活動しているこのサポステ(通称)は、ニートになる前に予防的な支援が必要だと感じていた。サポステの来所者には20代後半から30代の若者が少なくないが、もっと早期に支援をしていれば、効果はもっと大きかったはずだという思いをもっていた。学校とサポステの間を短縮すること、つまり早期支援開始ができないかと感じていたところに、市内のある高校から協力依頼の声がかかった。複雑な諸事情を抱えて中退する生徒たちも多い学校の教師から、サポステのワーカーが在学中から支援を開始し、社会へと送り出す手助けをしてほしいという要請だった。

それを受けて、昨年から学内に進路相談室が設けられ、サポステなどから3名のワーカーが常駐するようになった。3名はそれぞれ役割分担をしているものの、生徒ひとりひとりの状況を把握し、何が必要かを見極め、必要に応じて外部機関に結びながら、社会へと出て行く支援を進めている。


【ユースアドバイザーへの期待:優れたコーディネーターになること】


このような取り組みは、まだ少ないとはいえ、確実に広がりを見せ、とくに、推進法の施行を前に、推進法の趣旨に照らし合わせて、整備していこうという動きとなりつつある。これらの活動を見て感じることがある。求められる支援者のタイプに関してである。

今、一番必要とされているのはコーディネーターである。つまり、地域の諸機関、諸制度、諸資源を熟知し、自分自身の足であちこち顔を出して顔の見えるネットワークを作り、ニーズをもった子ども・若者のための支援計画を立て、地域資源を動員し、必要に応じて関係者によるケース会議を開き、経過をチェックし、うまくいっているかを見届けることのできる人材である。介護保険制度のケアマネージャーがまさにそれで、子ども・若者支援にも、ケアマネージー役が必要なのである。

コーディネートという機能は、子ども・若者支援に限らず、いまやあらゆる分野で必要とされている。専門分化した諸組織・諸機関を、支援の必要なひとりひとりの人のニーズに合わせてつなぎ合わせるという営みがなければ、効果が上がらないことに気づきつつあるのである。ユースアドバイザーは、地域の優れたコーディネーターとして活動してほしい。



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