A 地域で青少年を育成する環境づくりの推進

1 基本的考え方
 現在の青少年には、他者の立場の理解や社会の一員としての認識の不足、自己抑制力の低下といった傾向がみられるが、この一因として、青少年が家庭やその他の場所を含む地域社会全般において多様な人間との交流と、他者との共同体験を行う機会が少なくなっていることが挙げられる。
 これまでにも、社会全体での青少年の健全育成の取組を推進する観点から、青少年育成国民会議・青少年育成都道府県民会議・青少年育成市町村民会議(以下、それぞれ「国民会議」「都道府県民会議」「市町村民会議」という。)などによって青少年育成国民運動が推進され、青少年の社会参加活動の促進、大人の意識啓発等のための事業が展開されてきているが、社会情勢の変化等により、なお、青少年育成活動は不足している状況が続いていると考えられる。
 一方、地域社会に関する意識について調査した「社会意識に関する世論調査」(平成9年12月総理府)によると、地域社会における活動についてどのような活動に参加しているか聞いたところ、「特にない」と答えた者の割合が、34.4%となっており、特に大都市では49.0%と高く、また、年齢層別では、20〜24歳の者は72.9%、25〜29歳の者は65.2%と若年層で高くなっている。また、近所付き合いをどの程度しているか聞いたところ、「親しく付き合っている」と答えた者は42.3%であり、昭和50年以降の同様の質問をした世論調査の中で、最も低い回答となっている。特に、大都市では31.1%と低く、また、年齢層別では、20〜24歳の者は13.9%、25〜29歳の者は18.5%と若年層ほど低くなっている。

<A−1表 地域社会における活動(年齢層別)>


資料:総理府「社会意識に関する世論調査」(平成9年12月)

<A−2表 近所付き合いの程度(年齢層別)>


資料:総理府「社会意識に関する世論調査」(平成9年12月)

 また、青少年育成活動の1つである子ども会に参加している青少年と参加していない青少年の差について見ると、参加している青少年の方が、大人へ挨拶をしたり、異年齢児と遊んだりすると答えた者の割合が高くなっている。

<A−1図 子ども会に参加している子どもと参加していない子どもの差>

(ア)大人との関係
(イ)友人の数等

資料:社全国子ども会連合会調べ

 こうした状況を踏まえれば、地域社会において、青少年に多様な人々との交流や多様な活動を体験できる場を豊富に提供していく必要があると考えられる。そのためには、青少年の健全育成を主な目的として行われる青少年育成活動だけでなく、地域における様々な活動を活発化させる必要があり、大人自身が積極的に参加し、楽しみつつ継続できる地域活動にしていくことが必要である。
 このため、新しい時代にふさわしい青少年育成の環境づくりとして、一定の地域内に存在する家庭、学校、地域住民、企業、民間団体その他の関係機関が、連帯感のある有機的なまとまり(=地域コミュニティ)を地域主導で形成していくことを促進し、その地域コミュニティを基盤として青少年が多様な人間関係を経験できる場を充実させていくことが必要である。なお、新しい「地域コミュニティ」については、構成員の個性とプライバシーを尊重し、様々な価値観を持つ者との共生の場としていく配慮が必要である。

<共生の場としての地域コミュニティのイメージ>

2 地域コミュニティの形成
 一部の地域においては、従来から、地域の特色を生かした住民主導の地域活動が活発に実施されており、このような地域活動は、多様な年齢層の人々との交流の機会を青少年に提供し、地域の多くの大人が青少年を見守るという雰囲気が醸成されるなど、青少年を健全に育成する上で有益なものとなっている。平成11年7月の青少年問題審議会答申が提言している「地域コミュニティの形成」の考え方は、各地域においてそのような環境づくりが行われるよう、地域社会の構成員がネットワークを構築し、有機的なまとまりをかたちづくっていき、青少年に多様な体験ができる活動の場を提供していこうというものである。
 今後、他の地域においても各地域の実状に応じた地域コミュニティの形成及び地域コミュニティにおける多様な地域活動の実施が進められるよう、国、都道府県、市町村等は、先進的な事例についての情報提供等を行っていく必要がある。また、地域住民が、自らの町の地域コミュニティについて情報発信したり、複数の地域コミュニティによるネットワークを作り、協力体制を整えたりすることにより、より一層の地域活動の充実・発展又は広域化が期待される。

事例紹介1 秋津コミュニティ
秋津コミュニティは、千葉県習志野市の秋津小学校を拠点として活動している生涯学習の推進を図る地域住民による任意団体である。
小学校の余裕教室4室、畑用敷地及び陶芸窯小屋が開放されており(秋津小学校コミュニティルーム)、秋津コミュニティに登録されているサークルの活動やその他の一人の個人利用を含む会合等に使われている。お盆と年末年始の閉館日以外は、毎日午前9時から午後9時まで、誰もが無料で利用できる。
登録されているサークルは41(平成12年10月現在)あり、コミュニティールームの利用は年間延べ1万3千人ほどである。
保護者以外の大人も含めた地域の大人たちと子どもたちの交流の場ともなっている。
活動のきっかけ
 秋津小学校での地域住民、特に父親を中心とする男性参画の活動のきっかけは、1991年(平成3年)のPTA創立10周年記念行事の飼育小屋づくりである。予算の制約の下、PTA会長などが中心となり父親の参加を呼びかけ、労力及び材料の提供を受けて完成させた。
 この飼育小屋づくりをきっかけに、翌年から土曜日のクラブ活動に保護者や高齢者が参加するようになったり、余裕教室を図書室に改造したり、保護者や子どもを持たない住民までが学校に出入りして行う活動が次々と行われた。これらの交流を通じて、「できる人が、できるときに、無理なく、楽しく!」というスローガンができていった。

 秋津コミュニティの活動へと結びついていく最初のきっかけとなった活動はPTAが行う飼育小屋づくりであったが、(ア)建築の作業が中心となる飼育小屋づくりを「父親が活躍する場」と位置づけて父親の参加を呼びかけたこと、(イ)PTA会長などが中心となって父親の参加を呼びかけるに当たり、強制的な雰囲気にならないようにし、つねに進行具合を公表することなどに配慮して、参加しやすくしていたこと、(ウ)職業を生かした知識、労力及び材料の提供といった様々な形での協力が可能であったこと、(エ)会社等の週休2日制が普及していたこと等が、積極的な参加に結びついたものと考えられる。また、作業の後の「お疲れ飲み会」が、さらに懇親を深める場となり、次の活動に結びつくようなユニークなアイデアが飛び出す場ともなって、連鎖的に活動が続いていくことに貢献していると考えられる。
 無理なく楽しい活動であれば、単に子どものために、あるいは、学校のために協力するということではなく、大人自身が喜んで参加する雰囲気となり、そのような雰囲気こそが今日までの活動の発展につながっていると言える。

学校施設の開放と自主管理
 秋津小学校の余裕教室4室、畑用敷地及び陶芸窯小屋(秋津小学校コミュニティルーム)の開放は、秋津コミュニティの前身である「秋津地域生涯学習連絡協議会」からの「地区要望」を習志野市の教育委員会が認め、1995年(平成7年)に実現した。これにより、それまで校長の裁量による施設開放であったものが正式に認められて、校長管理から教育長管理へと変わり、学校管理負担の軽減が図られた。
 なお、このときに認められた予算は、200万円であった。これには、市において阪神大震災を踏まえた防災体制整備のために予定外の予算が必要になり、要求額から大幅に減額されたという背景がある。もともと新興住宅地ということもあり生活面において行政から十分に支援を受けているという思いから、行政に頼らずに自主管理したいという要望を住民が出していたが、このように、予算が制限され管理費用をかけられないことになったため、予算は施設改造(閉校時にコミュニティルームの利用者等が他の教室に行けないようにするシャッターの設置)のために使い、管理はほぼ完全に住民に任されることになった。こうした経緯を経て、この秋津小学校コミュニティルームは、秋津コミュニティ内のすべての利用サークルや地域の諸団体などで構成する「秋津小学校コミュニティルーム運営委員会」を内部に設置し、「自主・自律・自己管理」により運営されるようになった。具体的には、運営委員50人の内の9人による鍵の貸し出し管理、利用サークル全員参加の掃除、地域からのクレームの処理などが行われている。このため、教職員の善意による休日出勤を必要とせず、また、人件費がかからないことにより、行政が支出する年間の経費は消耗品費等約3万円のみである。
 その他、習志野市民は全員がボランティア保険に加入していることや、PTA保険や行事保険などを利用していることにより、事故への備えも行っている。

 学校は一定区域ごとに存在しており、特に小学校は地域住民に身近な施設として地域活動の拠点となることが期待される公共施設であり、その開放が推進されているが、開放に当たっては、施設管理の責任の問題や、教職員の勤務時間外の負担の問題がある。秋津小学校の開放に関しては、予定外の予算の制約のため、思いがけず鍵の管理を始めとする運営管理のほとんどが利用者の自主管理で行わることになったことがかえって、学校の負担の減少、住民が鍵を預っていることによる防災避難所機能の確立、地域住民の創造性や一体感の醸成などのメリットを生み出した点が注目される。また、あと1年弱に迫った2002年度(平成14年度)から実施の完全学校週5日制後の休日の子どもの居場所としての地域の受け皿としても学校を拠点に活動できることから万全の体制が整っている点も注目される。多くの場合、施設利用に係る予算等の制約は厳しいが、利用する者が自主的にあらゆる運営管理やクレーム処理に責任を持つことが、それらの問題を克服する上で重要なポイントとなり得る。

多様な人材の参加
 秋津コミュニティにおいては、何か特別な技術、知識を持つ人だけではなく、特技がない人であっても人材ととらえている。これは、「何かを学ぼうとする大人の姿そのものが教材である」との発想からきているものである。このような基本姿勢の下で、子どもの保護者だけではなく、高齢者や独身者なども参加するようになり、大人の参加者がどんどん増えている。
 このような様々な人材の参加を得て、学校の授業としてのクラブ活動にも地域の大人が参加し、また、保護者以外の大人も参加する「学校と地域の大運動会」も行っている。秋津小学校での諸活動は、多様な大人と子どもが交流する場となっており、それらのさまざまな行事での交流により多くの大人が少数の子どもたちを見守る地域社会が実現している。
 また、2002年度(平成14年度)から実施の新学習指導要領の目玉である「総合的な学習の時間」に関しても、すでに地域の多くの大人の参画により全学年が多様な授業に取り組んでおり、学校教育のそのものの充実に寄与している。

 クラブ活動のために役立つ人材のみを「活用」しようという発想から、誰もが人材であるという考え方に転換したことにより、大人自身が学びたい、楽しみたいという気持ちを持って積極的に活動に参画できるようになっていることが注目される。

情報発信による他の地域への影響
 秋津コミュニティは、秋津小学校の前校長先生が、学校と地域の交流・連携の歩みをまとめて1997年度(平成9年度)の読売教育賞・地域社会教育活動部門に応募し、最優秀賞を受賞したことをきっかけに他の地域の人々に知られるようになった。その後、秋津コミュニティ会長が秋津コミュニティ誕生までの経緯や活動内容を本にまとめて紹介したり、パソコン倶楽部のメンバーが「秋津のまち紹介ホームページ」を開設したりすることにより、活発な情報発信を行っている。また、「学校と地域の融合教育研究会(融合研)」を全国規模で発足させ、年1回の全国大会、事例研究を行う「ミニ・フォーラム」の開催、会報の発行等を通じて、各地域の取組の事例を広く発信交流している。

 秋津コミュニティは、様々な方法による情報発信により、他の地域の人々の注目を集め、人々の活動意欲に刺激を与えていることも特長の1つである。また、融合研の活動は、複数の地域の活動グループのネットワーク化により、さらに大きな取組促進の力となることを体現していると言える。このような既に軌道に乗った地域の取組が広く他の地域に伝わることにより、より多くの地域での特色ある多様な取組の展開につながっていくことが期待される。

事例紹介2 足利未来倶楽部
足利未来倶楽部は、産業界、行政、大学、民間部門の様々な分野の人々が参加し、市民主体のまちづくりを実施する非営利団体(NPO)である。
現在の会員は、商工会議所会頭、特定非営利活動法人(NPO法人)代表理事、財団法人理事長、グラフィックデザイナー、建築設計事務所長、大学教 授などのコアメンバーが30人とサポーター会員が70人である。その他、プロジェクトごとに関わってもらう人々を含めると年間4,000〜5,000人が活動に参加している。
倶楽部設立の基本的な考え方は、(ア)地域の人材を見つけ、育てる、(イ)職業、年齢、団体等を超えて多様な人がアイデアを提案できる場とする、(ウ)市を挙げて起業家精神を見直す、の3つである。
このような考えの下、足利未来倶楽部は、個々の団体(経済団体、ボランティアグループ、趣味のサークルなど)や個人が個性を生かしながら協力し合ってイベントやまちづくりの研究提案などを行うための、市民主導型のサロンや情報交流センターといった性格を有するものなっている。
地域の新しい人材を育む「インキュベーター(ふ化器)」機能と「シンクタンク」機能を担い、様々なプロジェクトを実施したり、青少年の活動に補助や助言を与えたりしてきた。現在は、「まちづくり」「男女共同参画」「社会教育」「国際交流」「ボランティア」などの様々な市民活動のサポートに力を入れている。また、すでに倶楽部の中から2法人が別途NPO法人の認証を受けている。今後もNPO法人の輩出を目指すとともに、それらの法人のマネジメントのフォローアップの役割を担っていくこととしている。
活動のきっかけ
足利市にあった、歴史的建造物として価値の高いユニイースト工場が売却される計画が持ち上がったことをきっかけに、その保存運動が起こった。その保存は実現しなかったが、運動に参加していた各種経済団体、趣味の会、サークルなどが集まり、平成元年、市民主導のまちづくりを目指す「足利未来倶楽部」が結成された。

 商人たちが身銭をきって地域に貢献するという足利市の伝統を踏まえ、行政主導ではなく、市民主導でまちづくりを行おうと考える者がボランタリーに活動を始めたという点が注目される。しかし、まちのために役立ちたいという貢献の精神だけでなく、「学び」や「遊び心」が含まれている活動であり、参加者の自己表現の場でもあるところが、参加者にとっても魅力あるものとなっていると言える。

ゆるやかなネットワーク
 1団体や個人ではできないイベントやまちづくりの研究・提案などを行うためのゆるやかなネットワークとして、(ア)機関誌の発行、(イ)月1回の未来サロンの開催(ユニークな発想やまちづくりのプラン等を持ち寄って交流する場)、(ウ)年1回の「グループ92」の開催(テーマに合わせたゲストを迎える講演会とディスカッションを行いまちづくりの政策に関する研究を実施)などの定期的な活動の他、商工会議所と連携した様々な異業種交流活動、ベンチャービジネス起業の支援、在日外国人のための相談活動など、多様な活動を行っている。
 各参加者は、未来サロンごと、あるいは個別のイベントごとに組まれるプロジェクトに参加することになるので、個人の都合に合わせた参加が可能である。

 まちづくりに関わりたいと思う者がアイデアを提案する場が、定期的にあるということ、また、プロジェクトごとに活動に参加することができるというスタイルであることが注目される。これまでに足利未来倶楽部が実現したまちづくりの活動は多岐にわたっており、誰かの小さな思い付きが、各種の才能を持った参加者の協力により実現するという面白さが魅力であると言える。

資金面での自立

 足利未来倶楽部の活動に係る運営費は、公的な補助金は一切受けておらず、会員からの会費(500〜600万円)、自主活動(メンバーによる講演や、まちづくりに関するコンサルテーション)により得た資金(1,500〜2,000万円)及び篤志家の個人基金によって賄っている。これは、参加者が身銭を切り、汗をかき、知恵を持ち寄るという「ボランタリーなまちづくり」に重点を置いているからである。

 市民主導のまちづくりを目指す観点から、資金面でも自立している点が注目される。足利未来倶楽部は、大人が「ボランタリーなまちづくり」にかかわる姿勢を青少年に見せることにより、彼らの相互扶助型地域社会づくりへの参加につなげていくことを目指している点においてもユニークな活動であると言える。

3 地域活動の発展を阻害する要因の除去
 2で紹介したように、一部地域で多様な地域活動が実施されている反面、他の地域においては、このような地域活動の実施に向けた取組を行ったが成果が挙がっていないとか、取組そのものがなされていないというのが実状である。
 取組の成果が挙がらない理由として、施設管理者が施設の開放に消極的であったり、活動の費用が確保できないなどの点も挙げられるものの、最大の要因は地域の大人が地域活動への参加に消極的なことであると考えられる。また、取組がなされていない最大の理由は、地域コミュニティの形成を推進し、また、地域コミュニティにおける地域活動を企画し実施していく人がいないか、不足していることであると考えられる。さらに、都市化及び少子化や過疎化の影響で、青少年育成活動やその他の地域活動の運営母体となり得べき地域の子ども会等の青少年団体、自治会、町内会等への地域住民の参加意識が低下傾向にあることも大きく関係しているものと思われる。
 なお、都市部と農山村部では、地域社会における連帯意識の程度に差があると考えられることから、それぞれの地域の実状に応じて、地域コミュニティの形成及び地域コミュニティにおける地域活動の推進を図っていく必要がある。

(1) 地域住民の積極的な参加の促進
 地域の大人が地域活動への参加に消極的な理由として、
* 大人自身が興味を持ち、参加したいと思うような地域活動が行われていない
* 大人自身が、次代を担う青少年の育成を積極的に担わなければならないということの重要性を認識していない
* 職場での拘束時間が長いため地域活動へ参加する時間がないか、又は余暇を地域活動に費やす精神的・肉体的余裕がない
等が考えられる。
 また、青少年育成活動の実践の現場からは、青少年の育成に関わることで、大変な思いをしたり苦労したりしながらも、最終的には何ものにも換えがたい喜びを大人が得ている面があるにも関わらず、そういったことが他の大人に伝わっていないという声も出ている。
 このため、子ども会、自治会、町内会等は、他の地域における活動の実例について情報提供・交換を行いそれらを参考としながら、大人も興味を持てるようなものを含んだ多様な内容の地域活動を計画する必要がある。
 また、国及び地方公共団体は、地域の大人が地域活動へ積極的に参加するような環境づくりを支援する必要がある。その具体策として、
* 国民会議・都道府県民会議・市町村民会議との連携により、青少年育成活動への参加の呼びかけ等の国民運動を積極的に展開する
* 企業等に対し、職場拘束時間の短縮及び勤労青少年福祉推進者・勤労青少年福祉員を通じた従業員の地域活動への積極参加促進を働きかける
* NPO法人等の非営利団体が地域活動の運営に積極的に関わっていけるようにするため、他の地域の活動に関する情報提供等適切を支援を実施する
等の取組を行っていく必要がある。

(2) 地域コミュニティの形成及び地域活動の企画・実施の中心となる人材の確保
(ア) 既存の職員、ボランティア等の活用
 いわゆる青少年の健全育成活動、非行防止活動、児童福祉活動などの各分野において、青少年に関わる行政機関の職員、民間企業・団体の職員、行政機関が委嘱する専門委員、民間の自主的活動者といった多様な青少年育成関係者がいる(参考資料1「地域における主な青少年育成関係者」参照)。
 地域コミュニティの形成及び地域活動の企画・実施に当たっては、このような人材を推進役として活用しつつ、地域住民がそうした人々に協力し一体となって取り組んでいけるよう、仕組づくりや地域活動の実践を促進する必要がある。
 このため、まず、地域に密着した各種団体・個人の連携を図りつつ青少年育成活動を推進する役割を持つ市町村民会議などの既存の育成組織や青少年団体が、より一層その機能を発揮することが期待される。
 国民会議では、これまでに市町村民会議の活性化に向けた研究を進め、今後の取組の指針を示しているが、当面の重要課題の一つとして、市町村民会議がこれまでの枠組みだけにとらわれない地域の様々な団体・組織との協力関係を作りながら、青少年の育成支援に情熱を持ち、青少年と共に活動できる多様な人材の確保や人材の若返りを図るべきことを挙げている。また、国民会議や都道府県民会議についても、これまで以上に青少年に係る各種情報を市町村民会議に適時に提供していく等の支援を積極的に行い、市町村民会議の活動の活性化を図る必要があることを提起している(青少年育成国民運動推進研究委員会報告)。
 このような提言を受け、国民会議・都道府県民会議には、市町村民会議に対する情報提供体制のさらなる充実に努めることが求められる。また、地方公共団体においては、首長部局、教育委員会、(公安委員会)の青少年育成に関わる組織が、都道府県民会議や市町村民会議の主管であるかどうかに関わらず、都道府県民会議・市町村民会議と緊密に連携をとり、地域活動に関する情報を積極的に提供するよう留意する必要がある。市町村民会議においても、できる限り多様な人材の確保に努める必要がある。
 また、国民会議・都道府県民会議・市町村民会議は、1)で述べた行政との連携を図りつつ、青少年育成国民運動推進指導員、青少年育成国民運動推進員及び青少年育成アドバイザー(13ページ事例紹介参照)が地域コミュニティの形成及び地域活動の企画・実施の中心となっていくよう研修、講習会等を行いそれらの資質の向上を図る必要がある。
 地方公共団体は、社会教育委員、青少年指導員、青少年相談員等が地域コミュニティの形成及び地域活動の企画・実施に積極的に関与するよう研修を行う等の資質の向上を図る必要がある。また、特定分野の専門的技術を有する行政機関の職員又は行政が委嘱する専門委員が、地域における青少年の体験活動に積極的に参加し、青少年育成活動やその他の地域活動の発展に貢献できるような措置を講ずることも望まれる。
 その他、地域活動に関わる地域住民や青少年団体等の求めに応じて、地方公共団体又は地域に根ざしたNPO等が、その活動に参加・協力してくれる青少年育成関係者やその他のボランティアなどの人材の紹介を行う仕組を充実させる必要がある。
(イ) 新たな専門家の必要性についての検討
 (ア)で述べたように、各分野において多様な青少年育成関係者が活動しているが、もっぱら、それぞれが担当する役割に沿って個別に活動している状況にあるため、複数の種類の青少年育成関係者が連携して地域活動に取り組むことや、各地域における青少年育成の長期的・総合的なビジョンを持って地域活動の企画・運営を行うことは、難しい場合が多い。しかし、各地域の青少年育成力を高めるために、青少年育成に関する分野について専門的な知識を持つと同時に、関係機関・関係者について一通り総合的に把握している者によって、現状では実施が難しいそのような地域活動が行われるようにすることが必要であるとの指摘がある。
 このため、社会教育委員、青少年指導員、青少年相談員等の地域における青少年育成関係者が果たしている役割を踏まえながら、青少年育成に関するより一層高度な専門能力の必要性について検証し、新たな専門家を養成することが考えられる。この新たな専門家は、日常的に地域の青少年、各分野の青少年育成関係者、行政等と接点を持ちつつ、(ア)長期的・総合的な観点から、自らが地域活動の企画・運営を行うこと、(イ)多様な地域活動に寄与し得る人材をその都度発掘し、活用すること、(ウ)各種団体や各関係者の調整役となるなど、青少年関係行政への働きかけも含めた創造的活動を行うことが期待される。
 現在、この新たな専門家についてその役割や名称が確立されているわけではないが、地域における様々な活動を具体的に実現していくためには、このような「地域の青少年育成活動のキーパーソン」として地域に密着した総合的な活動の推進役となる者が必要であるとの考えから、育成組織や青少年団体、地方公共団体、大学の教育学部などの各方面において、その養成が進められている(事例紹介1〜3参照)。
 また、「アウトリーチ」又は「デタッチドワーク」とも言われている、通常大人が接点を持ちにくい、自ら地域活動に参加せず街頭にたむろしている青少年への積極的な接触・働きかけ(B3(2))「街頭での青少年への働きかけの検討」参照)を、この新たな専門家の役割として位置づけるべきとの意見もある。
 この新たな専門家の養成については、まず、既存の青少年育成関係者にこのような総合的な専門能力を身につけられるような学習の機会を提供し、養成していくことが考えられる。
 各方面で養成されているこの新たな専門家の地域における実践状況を踏まえ、今後、その制度化や普及・確立の在り方について検討し、国、地方公共団体、民間団体、それに教育機関等がそれぞれ役割を担っていく必要がある。
 なお、国、都道府県等が実施する青少年国際交流事業の参加者が、より積極的に地域活動に関わっていくように働きかけていくことも必要である。

事例紹介1 青少年育成国民会議における青少年育成アドバイザーの養成
青少年育成国民会議が実施する「青少年指導者のための通信教育」の受講を完了し、集合研修に参加した者を、「青少年育成アドバイザー」として認定している。
昭和52年から受講者の募集が始まり、平成11年度までの通信教育の受講者総数が10,060人、青少年育成アドバイザーの認定者が3,051人となっている。
青少年指導者のための通信教育
 広く青少年に関わる活動や仕事をしている人を対象とする通信教育であり、2年間の受講期間に8冊のテキストを学習し、各冊ごとにレポートを提出し、3泊4日の集合研修に参加して評価を受けるという仕組である。集合研修は、(ア)青少年理解と育成、(イ)青少年のための明るい村町づくり、(ウ)相談・助言のこころと技術、(エ)青少年活動の調査の方法と実践プログラムの作り方の4つの専門領域に分かれており、いずれか一つのテーマに参加する。受講を完了し、青少年指導者としての知識、指導技法等を習得したと認められる者は、国民会議により、「青少年育成アドバイザー」として認定される。これまでに、受講申込者のうち約30%が青少年アドバイザーの認定を受けている。
<通信教育の流れ>
<テキストの内容>
1.伸びよう伸ばそう青少年
 「青少年の育成についての基本的な考え方やねらいなどを理解し、青少年育成にどう反映させたらよいのかなどを学習する。
◆青少年の育成ということ ◆青少年育成のねらい
◆青少年育成のはたらき ◆家庭、学校、社会の連携
◆青少年育成見直しのポイント ◆青少年育成計画を立てる
2.現代社会と子どもたち
 21世紀がどんな世界になるかは、大人がどんな子どもを育てるかにかかっている。子どもたちが日々生活し、成長していく場である家庭、学校、地域社会は彼らにどの様な意味を持っているのか、現状と課題などを学習する。
◆子どもたちは今 ◆地域の中の子どもたち
◆家族の中の子どもたち ◆21世紀を担う子どもたち
◆学校の中の子どもたち  
3.現代社会と青年たち
 青年の成長と発展の機会となっている今の生活環境を家庭から社会の広がりの中で探求し、その現状と問題点を明らかにするとともに青年期の特徴や内に秘めいている問題点などを学習する。
◆青年を考える視点 ◆挑戦への備え
◆青年と社会状況 ◆青年の活動への支援
◆人間完成への道程 ◆育成者への期待
4.仲間を求める青少年
 青少年の仲間集団は、青少年の人間形成にとって独自の役割を担っている。仲間集団の今日的意義やリーダーの在り方、青少年指導者が仲間集団を支援し、指導する際の役割や期待などを学習する。
◆仲間を求めて ◆青年の仲間集団
◆グループ活動とリーダーシップ ◆仲間集団の課題
◆子どもの仲間集団 ◆仲間集団を援助し指導する
5.青少年のための明るい村町づくり
 青少年の健全育成に果たす地域の社会の役割は重要である。広く地域住民を巻き込みながら、青少年の健全な育成を図るため地域社会はどうあるべきか、また、青少年にとっての明るい村町づくりに向けての指導者の在り方などを学習する。
◆青少年育成と地域社会のかかわり ◆青少年の社会参加と明るい村町づくり
◆望まれる地域ぐるみの地域活動 ◆明るい村町づくりへの挑戦
◆青少年のための明るい村町づくり ◆地域社会における青少年指導者
6.仲間を求める青少年
 何のために相談・助言をするのか、相談・助言の目的と方法の基本や心構え、また、相談・助言が効果的に行われるための例示を通じて、カウンセリングの原理などを学習する。
◆相談・助言とはどんなことか ◆集団指導と人間関係
◆相談・助言がうまくいくために ◆相談・助言がうまくいくための事例
7.団体運営の技術
 団体や組織に共通する成長・発展の仕組みなど基本的な事柄の考え方と実際を明らかにするとともに、「役割をどの様に分担するか」「プログラムの効果的展開」など団体運営にあたっての具体的な方法などを学習する。
◆さまざまな団体とリーダー ◆グループへの働きかけ
◆リーダーの育成 ◆青少年育成と広報活動
◆育成の技術 ◆安全の確保と対策
8.青少年のための行政・法令・施設・調査
 青少年や青少年育成にかかわる行政と法令について、その作用や種類を整理し、理解するとともに、青少年施設の目的と分類、青少年調査の持つ意味や方法などを学習する。
◆青少年行政の役割と現状 ◆青少年調査の意味と方法
◆青少年にかかわる法令 ◆青少年のための施設
 通信教育という方法で、青少年育成に関わる者に必要な知識等を幅広く身につけてもらう制度として20年以上の蓄積を積んできた点が注目される。国民会議に置かれた青少年指導者に関する研究委員会が昭和51年に出した提言により、青少年指導者の専門性の欠如、養成研修の仕組の不備等が指摘されたことを受けて導入された制度であり、一定の成果を挙げているが、今後、更に高度な養成過程の導入が期待される。
青少年育成アドバイザーの組織化
 青少年育成アドバイザーは、主として通信教育という方法で養成されることもあり、全都道府県に認定者がおり、アドバイザーの全国組織として「全日本青少年育成アドバイザー連合会」が組織され、毎年全国集会を開催している。また、42道府県において、青少年育成アドバイザー会を組織し、情報交換や研修の機会を持っている。国民会議は、アドバイザーの活動支援の一環として、「青少年育成アドバイザーニュース」を年4回発刊している。

 青少年育成アドバイザーは、認定者が全国に存在しており、組織化の動きも進みつつあることから、より一層、各地域での青少年育成活動の総合的な推進の役割を担っていくこと及びその積極的な活動が組織的に推進されることにより、全国的な取組となっていくことが期待される。

事例紹介2 東京都におけるユースワーカーの養成
地域社会の教育力の向上のため、ユースサービス(青少年育成支援活動)の強化とシステム化を目指し、ユースワーカーを養成する。
ユースワーカーとは、青少年に関する相談対応及び社会参加・情報提供能力を有し、青少年を対象として諸活動を行う専門家である。
平成12年度から、東京都青少年センターにおいて、「青少年施設で活動するユースワーカー」の養成講座を開設する。
心の東京革命の推進と地域の人材の養成の必要性
 東京都では、次代を担う子どもたちに対し、親と大人が責任を持って正義感や倫理観、思いやりの心を育み、人が生きていく上で当然の心得を伝えていく「心の東京革命」に取り組んでいる。
 今日の子どもたちの問題は、結局は子どもたちをそう育ててきた大人自身の責任であり、「心の東京革命」は、その反省の上に立って、進めていく運動である。
 これをを推進していくため、平成12年8月「心の東京革命行動プラン」を策定した。
 このプランでは
 ・社会の基本的なルールなどを子どもたちにきちんと教え伝えていく。
 ・体験・経験を通じて、子どもたちに他者とのかかわり方などを学ばせていく。
の二つを行動目標に掲げ、親と大人が責任を持って社会全体で取り組んでいくこととしている。
 また、「毎日きちんとあいさつさせよう」「他人の子どもでも叱ろう」「体験の中で子どもをきたえよう」などの七つの呼びかけを、子どもたちに教え伝えていくべき社会の基本的な「心の東京ルール」として提案をしている。
 この運動の推進に当たっては、家庭、学校、その他の地域社会のあらゆる場ですべての大人が一人ひとり具体的行動をとることにより、それぞれの教育力を発揮していくことが大切である。特に昔ながらの地域共同体が衰退している中で、地域社会の教育力の向上が欠かせない要素の一つである。地域は子どもたちにとって主要な生活圏であり、遊び場や地域の様々な人々とのふれあいを通じて社会性を身につけていく重要な場であるにもかかわらず、都市化による人間関係の希薄化や少子化による子ども数の減少、テレビゲームの普及や塾通いなどによりますます子どもたちは地域社会における人間関係から遠ざかっている現状がある。
 子どもたちが地域において多様な人々とふれあえるような機会をつくっていくとともに、区や市などに設置されている児童・青少年施設等において気軽に相談に応じたり、自主的な活動を支援できる人材の養成に都として積極的に取り組んでいくことが求められている。本年度から東京都の青少年センターを活用して取組を開始したユースワーカーの養成事業について紹介する。
 東京都における地域社会の現状として、(ア)青少年健全育成活動者の高齢化、(イ)青少年の意識・行動とのかい離、(ウ)活動のマンネリ化、散発な状況、(エ)青少年の居場所の不足、(オ)活動に参加しない青少年の増加が挙げられることから、既存の仕組での対応だけではなく、カウンセリングに関する技術等の高度の専門性を有し、兄・姉や友人のような立場から、青少年と同じ目線で青少年の心理、行動等を把握することができ、また、青少年から気軽に相談を受けられ、地域や青少年施設等において青少年活動の支援・コーディネートを行う比較的若い人材を「ユースワーカー」として養成し、地域社会の教育力の向上を図る。
 地域社会で活動するユースワーカーについては、(ア)急な人材の養成は難しいこと、(イ)養成しても職業としての受け皿がないという問題もあることから、当面は、現在、青少年施設で活動している職員又はボランティアにユースワーカーとしての役割を期待し、組織的な講座の提供を行う。
<ユースワーカーの役割>
(ア)地域における青少年の健全育成のための長期的な構想や契約の検討・策定
(イ)地域で青少年が主役となってできる事業ないし活動の開発と運営支援
(ウ)地域の青少年の健全育成に資する、青少年と地域住民との交流及び共同体験の場と機会の企画と実施
(エ)青少年施設及び青少年利用施設でユースワーカー的業務に携わる職員、学校の教師、父母、住民との連携協力及び専門的な助言指導
(オ)心と身体の居場所をなくして漂う青少年への接触とアドバイス
 
(青少年施設で活動するユースワーカー)
(ア)青少年に対する適切なアドバイスや相談
(イ)青少年活動の企画と運営(主として、青少年関係施設における青少年のための活動
(ウ)青少年活動団体等の自主的な活動に対する支援
(エ)後進者に対する指導・後進者の養成
<養成講座の概要>
(開設場所)東京都青少年センター
(開設期間)15日間
(受講人数)20人
(講座内容)青少年論、発達心理学、カウンセリング技法、施設運営技法を講義、演習、フィールドワーク、集団討議等により実施
 地域社会の変化が著しいこと、多くの繁華街があることなどが特徴として挙げられる東京都において、「ユースワーカー」という新たな専門家の養成に向けた取組が始まったことが注目される。今後の、ユースワーカーの活動の実績や課題について、更なる研究が期待される。

事例紹介3 ユースサービス大阪((財)大阪府青少年活動財団)における「ユースワーカー養成講座」
昭和54年に始まった「大阪府青少年活動専門指導者研修(基礎コース)」から、ユースワーカー的な指導者の養成を行っている。
指導者養成のコースは様々に変遷してきたが、受講のしやすさを考慮してカリキュラムを絞るなどし、平成10年から、名称も「ユースワーカー養成講座」として実施している。
「ユースワーカー養成講座」においては、時間数80時間のコースで年15名程度ずつ養成している。

指導者研修

 大阪府では、ユースサービス大阪により、昭和54年から青少年育成活動の指導者研修が実施されており、これまでに400人弱の人が研修を修了している。受講者の募集は、各青少年団体や市町村の青少年主管課、小中学校の先生に働きかけて行ってきており、関係者間での講座の周知度は高い。平成10年からは、「ユースワーカー養成講座」と名称を変更し、カウンセリング理論や、人間関係トレーニングなどを含む講座内容となっている。
 現在の「ユースワーカー養成講座」は、受講生の参加しやすさなどの現実的な事情から、80時間の研修プログラムとしている。また、研修参加者のその後の状況を把握できていないので、参加者が地域活動に取り組んでいく上で、いかにして参加者相互の連携及びネットワーク化を図っていくかが課題となっている。

 <平成12年度ユースワーカー養成講座の概要>
 
 (※)後期の講座を、11月〜3月にかけて同様のカリキュラムで実施。

 20年余りも前から、青少年育成活動のコーディネートを含めた活動を行う専門家の養成のための研修が実施されてきたことが注目される。課題となっている研修参加者のネットワーク化を図ることにより、研修後の活動状況を把握していくことが今後求められる。

ユースワーカー養成についての検討
 ユースサービス大阪において、平成9年に検討した結果、家庭や学校だけでは行えない青少年の健全育成活動を地域社会で行うためには、地域社会の教育力を高める必要があることから、総括的に地域の青少年育成活動をコーディネートするユースワーカーの養成が必要との結論をまとめた。  今後は、制度としての確立方法や養成カリキュラムの内容の検討、職業としての受け皿作り、同種の資格との整理が重要な課題となる。
<ユースワーカーの概念>
 有給あるいはボランティアとして、青少年とともに青少年の利益のために働くことを任務とする
 (ア)グループワークを中心とした技法
 (イ)青少年活動に適用することにおいて展開される人間発達と集団運営の知識と技能をもつ青少年活動の専門家
 青少年が、地域社会(家庭、学校、職場以外)で活動するときに、専門的知識、技能をもって、豊な大人へと成長するよう援助する
 地域社会で活動する青少年指導員等の有志指導者と青少年関係機関、団体を有機的に結びつけるコーディネーターの役割を果たす
<ユースワーカーの職務内容>
 青少年個人との接触
 特に、学校を離れた青少年あるいは在学中であっても不登校などのため社会とのかかわりが少ない青少年に重点を置く
 地域の中で取り残されがちな青少年と接触し、その人間性にまで迫ることで、自立の方向を自らの力で見つけ出させるといった方法で青少年を援助する
 学校教師との情報交換・専門的交流、青少年の家庭との接触も必要である
 青少年グループ・サークルの育成
 青少年グループ・サークルの成長を見守り、時に接近し、時に突き放し自主活動を支えていく
 主として、グループ・サークルの指導者と関わりを持ち、活動を支援し最良の方向に導く
<ユースワーカーの活動の場>
 この検討において、ユースワーカーの役割の必要性が指摘されると同時に、制度化や職業としての受け皿作りといった普及・確立に当たっての課題が指摘されている点が重要である。今後、ユースワーカーが青少年育成方策全般の中で果たすべき役割も踏まえ、その普及・確立について各方面での検討が求められていると言える。

4 その他の必要な取組
 地域コミュニティの形成及び地域活動の企画・実施に当たっては、各地域の人的資源の活用と併せ、物的資源も十分に活用して、特色ある取組を展開させていくことが有意義である。
 また、地域活動を精力的に継続させていくためには、大人も青少年も含めた地域活動への参加を希望する者に必要な情報が伝わるようにする必要がある。
 その他、青少年の自主的な参加を誘発するという視点も必要である。

(1) 公共施設等の利用
 地域活動を実施するには活動の拠点が不可欠であり、地域活動の発展のためには、多くの場合そうした拠点となることが考えられる公共施設等を利用しやすいものにすることが必要である。
 このため、地方公共団体は、公共施設等の開館時間の弾力化や、青少年の運営への参加等の措置をとる必要がある。
 学校も地域住民に最も身近な公共施設の一つであることから、より一層の開放の促進が必要であり、特に余裕教室の社会教育施設等への転用の一層の推進が期待される。学校施設利用に当たっての管理運営上の諸課題については、学校だけですべての責任を負うのではなく、利用する団体や住民が希望すれば責任を担えるよう関係者との調整を行うことが必要である。
 
(2) 地域活動に関する情報提供及び相談体制の充実
 地域活動をより充実・発展させていくには、青少年や大人が地域活動に関心を持ったときに、必要な情報が提供されること又は彼らが適切な助言を得られることが必要である。
 このため、地域活動の情報提供に当たっては、多様な媒体を活用することが必要である。
 行政機関や学校からだけでなく、より地域住民が利用しやすい媒体・場所から情報提供を行う観点から、地方公共団体や青少年団体等は、地域活動への参加や地域活動の実施に有用な情報のインターネット、有線テレビジョン放送(CATV)等の媒体を通じた提供、郵便局、コンビニエンスストア、スーパー等での提供に積極的に努める必要がある。
 これに加え、地方公共団体や青少年団体等は、地域活動に関心を持つ青少年や大人から相談を受ける体制を整備し、参加する立場からの活動の選択や活動を実施する立場からの各種ノウハウなどについて、相談者が必要な助言を受けられるようにする必要がある。

事例紹介 青少年の学校外活動に関する多様な情報提供方策の研究開発
平成10年度に、こども・あそび・まなび研究会が、従来の役所や学校を通じた情報提供以外に、保護者や青少年にとって身近な生活拠点で情報を提供し、利用者が自ら選択して情報を得れば、より活用されるだろうとの発想から、情報誌を企画・作成し、千葉市、福岡市、札幌市で発行するという先導的な研究を実施した。
(文部省委嘱事業 生涯学習の促進に関する研究開発)
実験の内容と結果
 千葉大学教育学部の研究室に事務局を設置した「こども・あそび・まなび研究会」(学識経験者、行政関係者、民間事業者によって構成される研究開発委員会)は、千葉市教育委員会と連携して、各種の生涯学習関係施設から情報を収集し、千葉市内の地域に密着した費用の安い遊び、学びの活動を掲載した「ティアオ」という情報誌を作成した。これを、千葉市のコンビニエンスストア97店舗において100円で販売したところ、2か月で、2000部のうち、1200部が売れた。
 福岡市、札幌市においても同様の情報誌発行を行った。福岡市では、コンビニエンスストアにおいて200円で販売したところ、2000部のうち、200部が売れ、札幌市では、郵便局において無料で置いたところ、10000部のうち、6000部が持ち帰られた。
<子どものためのあそびとまなび情報誌「ティアオ」創刊号の目次>
読み物 『お父さんのための'公民館ってどんなとこ?'』
コラム「言いたい放題(1)」
情報 PART1
「見る・聞く」
「調べる・学ぶ」
「ふれあう」
読み物 『自立への道第一弾W初めての一人旅−持ち物チェックリストW』
Information <千葉市生涯学習フェスティバル>第6回'98学びを楽しむ日
Information 千葉県立中央博物館 友の会
情報 PART2
「自分でつくる」
「お父さんといっしょ・お母さんといっしょ」
「チャレンジ」
「エキサイティング」
プレゼントコーナー&みんなの声「言いたい放題(2)」
Information 千葉市動物公園「千葉市動物公園へ集まれ」
読み物 ティアオ流休日の過ごし方
 現状では、役所、学校、公共施設を通じた情報提供がほとんどであるが、保護者や青少年がもっと頻繁に利用する場所で提供するという視点や、一方的に配るのではなく、有料化も含めて自主的に情報を選んでもらうという視点からの取組であることが注目される。また、情報誌の作成にかかる費用は広告料で賄うことも可能であり、多様な情報提供の方法が考えられる。

(3) 青少年の自主的な参画の促進
 青少年が参加したいと思うような地域活動の場について、地方公共団体、子ども 会等の青少年団体、自治会、町内会等の地域住民がそれぞれの役割や得意分野を踏 まえ、工夫をこらして提供していくことが必要である。
 スポーツや趣味などのクラブにおいて、町内などの範囲では、十分に参加者が集 まらない実態があることも踏まえ、校区などのより広い範囲で、特定の活動に興味 を持つ青少年がクラブ活動に参加できるようにすることも必要である。
 また、中高生向きの地域活動の場が少ないという指摘があることから、これらの 世代の参加を促す努力が必要であり、地方公共団体は、このための環境整備や情報 提供を行っていくことが必要である。

事例紹介 ボランティアグループ「風」
ボランティアグループ「風」は、足利市社会福祉協議会のボランティアルームを拠点とし、活動する若者のグループ。
足利市内外の十数校の高校生が中心であり、大学生、社会人も含めて約210名が参加している。現在、希望者が多く、断らざるを得ない状況。
活動の目的は、ボランティア活動そのものというより、ボランティア活動を手段として自然に生活の一場面として過ごせる若者の「居場所」の提供である。<ひとり>の自分と<地域>との出会いの場でもある。
活動のきっかけと運営体制
 足利市社会福祉協議会主催の「中学生・高校生のボランティアスクール」が第10回を記念して開催したヤングボランティア・シンポジウムの参加者のうちの19名で「自分たちで何かできることを」やりたいとの意志のもとに発足した。
 大学生や社会人のメンバーも相当数参加しているが、毎日のようにボランティアルームに集まってくる高校生が活動の中心となっている。運営体制においても、高校生がキャプテンとなり、社会人と学生がバイスキャプテンとなって支援する体制ができている。各種の地域イベントに参加し、高校生の主体的な参加が注目されるようになり、大人たちのボランティア活動の中に高校生ボランティアが位置付けられるようになった。
<体制図>
 社会人、大学生を含むグループでありながら、毎日活動に参加する高校生がキャプテンとなり、高校生を中心として活動している点が注目される。自分たちが住む地域について意識を持ったり、様々な年齢層の大人たちと関わり合う機会が少ない高校生たちが、活動を通じて自然に異年齢の人々と関わり、多様な経験をする機会となっているだけでなく、活動の企画・運営自体を高校生自身が中心となって担っており、「居場所」がないと言われる高校生が、参加を希望する者の次々に入ってくる場所を自ら作り上げていることは、青少年がより参加しやすい環境づくりという観点から意義深いと言える。
自然体の参加
 日常的な活動は、月1回の定例会や広報紙制作、春・夏の合宿、特別養護老人ホーム訪問、市内福祉施設の納涼祭等への協力、夏の中・高生ボランティアスクールへのリーダー参加、その他の地域イベントへの参加など、多種多様である。
 「風」のモットーは、「できる人が、できる時に、できることを、責任を持って」というもので、他人のためではなく、自分がやりたいからやるという意識が強い。
 自ら望んで、普通の生活の一場面として活動に参加するという気負わない基本姿勢が、活動の活発化につながっていると考えられる。また、適度な距離感で参加者の一人一人を見守り、地域のネットワークの活用を手助けしている足利市社会福祉協議会ボランティアセンターの職員の存在も、「風」が地域に拓かれた居場所となり、若者たちを育てる役割を担うことに大きく貢献していると言える。


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