B 非行等問題行動に対応する相談機関の連携強化等の総合的推進

1 基本的考え方
 非行等問題行動について、その兆候を早期に発見し、適切な対処を行うには、学校や警察を含む関係諸機関が相互に機動的な情報提供や協力が行える連携体制を構築する必要がある(参考資料2「主な青少年関係の相談機関」参照)。
 また、相談をしたい人にとって各相談窓口をより利用しやすいものとする方策や、また、街頭補導活動等において積極的に指導・助言を行うための方策についても検討する必要がある。

2 相談機関等の連携強化のための方策
 非行等問題行動に関係する諸機関の連携の必要性については、これまでに種々の指摘がなされ、取組がされているが、一方的な連絡に終わったり、押し付け合いになることがあるなどといったことが指摘されている。複数の機関が連携するに当たっては、形式的な仕組ではなく、真に機能するものとする必要がある。
 このためには、どんな事案でも、どの機関も扱わないことがないようにすること及び日常的に担当者間で意思疎通を図っていくことが、機動的・効果的に連携を図っていく上で必要である。

(1)  複数の相談機関の連携の仕組づくり
 児童福祉、警察、教育、精神保健などの様々な分野の相談機関があり、また、それぞれの設置主体が、国、都道府県、市町村などに分かれていることから、各機関の役割、専門性等を互いに理解し、どの機関の担当とも判断しにくいものはカバーし合い、重複する部分では役割分担をするなどの視点が重要である。
 こうした視点を踏まえ、各機関の職員が、他機関の権限及び役割の範囲を十分把握し、他の機関へ協力依頼すべき相談を受けた又は事案を発見した場合にスムーズに連絡がとれるようにしておく必要がある。
 さらに、必要に応じて、公的機関だけでなく、民間の医療機関、市民団体、有志協力者等とも同様に連携を図ることができるようにしておく必要がある。
 このため、各機関の管轄や役割に応じて、関係機関相互の日常的な業務連絡、情報交換の場(定期的な連絡会議、事例研究会など)をより充実させるとともに、日ごろから意思疎通を図ることについて担当者の意識を醸成していく必要がある。また、突発的な事例に迅速に対処するため、個別の事案解決のためのチームを臨機応変に組織できる仕組を整備する必要がある。さらに、地域の実情に応じ、適切な機関に情報が円滑に伝達・共有されるための関係機関のネットワーク化による連絡網を整備することや、行政機関に持ち込まれる相談事案を一元的に受付・管理するための総合相談窓口を設置すること等が考えられる。
 その他、最初に相談を受けた又は事案を発見した機関は、仮に当機関の専門に関わらない事案であっても、相談者が適切な対応を受けられるようにすることについて、一定の責任を持つべきである。他の機関による対応が必要な場合に、相談者にその機関を紹介するだけでなく、相談者と共にその機関に足を運んだり、最初に相談を受けた又は事案を発見した際の情報を他の機関に適切に伝えるなどにより、相談者が確実かつ適切に対応を受けられるようにすべきである。

事例紹介1 熊谷児童相談所が関わる機関連携のためのネットワーク
 熊谷児童相談所が主催しているもの
「大里地域児童福祉関係機関連絡会」
「秩父地域児童福祉関係機関連絡会」
「児玉地域児童福祉関係機関連絡会」
「北埼玉地域児童福祉関係機関連絡会」
各地区ごとの児童問題に関する関係機関(福祉事務所、教育委員会、少年補導センター、警察署、家庭裁判所支部等)が年4回集まり、関係機関相互の連絡調整、情報交換、児童問題に関する事例研究及び研修を行っている。
 熊谷児童相談所が参加しているもの
「深谷市子どもの虐待防止ネットワーク会議」(深谷市が主催)
「本庄市児童虐待防止ネットワーク会議」(本庄市が主催)
「熊谷市児童虐待防止ネットワーク会議」(熊谷市が主催)
各市内の児童虐待に関する関係機関、協力者(児童相談所、児童委員、人権擁護委員、医師会、保健所、警察署、保育園、教育委員会等)が随時集まり、研修、情報交換、事例研究等を行っている。
各種ネットワーク
 一定の地域エリアごとに、児童問題に関わる関係機関が集まり、情報交換等を行うためのネットワークを作っている。連携を円滑にするためには、お互いの機関の仕事の内容を理解しておくことが大前提であるが、それとともに具体的な事案を扱う担当者同士が親密な関係を築いておくことに努めている。

 近年表面化してきた児童虐待の問題に関するネットワーク作りとともに、非行問題についても、その前兆段階での対応が不可欠との認識が高まり、関係機関によるネットワーク作りが各地域で始まりつつある。どこの機関が中心となるかということについては、熊谷児童相談所のように、児童相談所が主催する場合も見られる。今後の関係機関共通の課題として、情報共有とプライバシー保護の仕組の確立、個別の事案への対応に複数機関が適切に役割分担して取り組む仕組の確立などが挙げられる。

事例紹介2 福岡市のこども総合相談センター(仮称)の整備計画
児童福祉、教育等の各相談機能を一元化し、総合相談窓口を備えた「こども総合相談センター(仮称)」の平成14年度中の開館を目指し準備中である。
総合相談窓口があらゆる悩み・不安を受け、必要な場合にはより適切な各種専門相談に伝達する仕組となっている。
「こども総合相談センター(仮称)」の整備
 平成2年度に発端となる構想が出され、平成9年度から具体化のための検討を開始した。平成11年度に、児童相談所、青少年相談センター及び教育相談の機能を合わせて「こども総合相談センター(仮称)」を設置することを定めた基本計画を策定。平成12年度から建物の基本設計に着手しており、平成14年度中の開館を目指している。
<主要機能>
<現在の相談体制との関連>
 青少年に関する相談機能を一元化し、総合相談及び専門相談双方の機能を持たせるという先進的な試みが注目される。総合相談窓口が一次的な相談を受け付けるため、相談者に適切な専門機関が紹介されることとなると考えられる。相談機能を持つほか、他の関係機関や関係者等との調整、連携体制づくり、地域団体リーダー等への情報提供の役割も持ち、様々な青少年問題に関する対応の中心となると考えられる。
子ども部の設置
 福岡市では、相談機能の一元化だけでなく、青少年行政に関わる行政組織の再編も行われており、市長部局の青少年対策課の業務と教育委員会の青少年教育課の業務の一部を統合して「子ども育成課」を設置し、さらに、新たに青少年に関する行政の総合調整を行う専門の組織として「子ども行政総合調整担当」を設置し、従来からの「青少年相談センター」の3つの組織を合わせて、平成12年度に「子ども部」を設置した。
 「こども総合相談センター(仮称)」については、この「子ども部」の当面の重要課題として整備が進められているところである。
<子ども部について>
 首長部局の業務と教育委員会の業務の一部を統合し、青少年行政の総合調整を担当する組織を設置するという、先進的な組織改革である点が注目される。しかしながら、一部の業務の統合を経てもなお、教育委員会や児童福祉を主管する組織との調整は必要であり、今後とも総合調整機能をよりよく発揮していくことが期待される。

事例紹介3 北海道警察本部少年サポートチームの取組
犯罪被害少年、非行少年等で、複数の機関が連携して支援する必要があると判断されるケースについて、必要とされる関係機関の実務担当者による「少年サポートチーム」をつくり各機関の業務内容に基づき相互に連携して対応する。
北海道警察本部少年課が事務局となり、具体的ケースごとに機関を指定し、指定された機関がチーム員を派遣してチームが編成される。
具体的ケースごとの対応
 個別の少年に着目して、具体的ケースごとに少年サポートチームが編成される仕組であり、平成8年9月に体制を整えて以来、18件のチームが編成され、実績を挙げている。18件のうち、犯罪、いじめ、虐待等の被害少年の事例は4件、非行等の問題行動を起こした少年の事例は14件である。
<少年サポートチームの仕組>
 
 具体的ケースごとにチームを編成し、対応する仕組の先進事例として注目される。また、少年サポートチームの構成機関等は、国・道・市の設置の区別なく、児童福祉、教育、医療、矯正保護の各種分野の機関にわたっており、多様なチーム編成が可能となっている。
守秘義務等
 少年サポートチームの関係者は、取り扱うケースについて、各機関、職種に応じた守秘義務を有し、民間ボランティア等の協力を得るときも、協力を要請する機関が、協力者に対してケースの秘密を守ることを要請しなければならないこととなっている。  また、未成年者である少年に関わるため、特殊なケースを除き、関係機関が連携して対応することに関して保護者の承諾を得ることとなっており、この承諾の要請は、原則としてチームの編成を要請する機関が行うこととなっている。

 下記2(2)でも後述するように、複数機関が連携してケースに対応するに当たっては、プライバシーの保護への配慮が特に求められる。少年サポートチームにおいても、民間ボランティア等も含めケースに関する秘密を守る必要があることが確認されている点や保護者の承諾を得ることとされている点においてプライバシーの保護の観点が重視されていると言える。

(2)  プライバシー保護に配慮した情報共有の仕組づくり
 複数の機関で円滑な連携を図るには、それらの間で必要な情報の共有が不可欠であるが、プライバシー保護に配慮した情報共有の在り方についても工夫する必要がある。
 具体的な方策としては、どこの機関が最初に相談を受けても、必要な情報を確実に記録し、共有できるよう、共通のインテーク票を導入することも考えられる。また、一人の少年に対する各機関の対応を一元的に記録する「カルテ」を作成することも考えられる。このような方策の検討に当たっては、プライバシーの保護に配慮しつつ、共有すべき情報の具体的内容についても検討する必要がある。
 また、複数機関による対応について保護者等がプライバシーの保護の観点から懸念を持つことがないよう、保護者等との話合いを行ったり、関係機関でルール作りをするなどの工夫をすることが必要である。

事例紹介 泉大津市児童虐待防止ネットワーク(CAPIO)
泉大津市内の保健、福祉、医療、教育、警察等の関係機関が連携し、児童虐待の予防・発見から児童や家庭への援助まで各種援助を検討するためのネットワークであり、代表者会議(総括的事項担当)と実務者会議(具体的事項担当)に分かれて活動している。
各関係機関等に具体的ケースについての情報が入った場合、必ず事務局である泉大津市福祉部児童福祉課が把握できるようそこへ連絡することになっており、必要に応じて実務者会議の臨時ケース会議が開催され、対応チームが編成される仕組となっている。
実務者会議の臨時ケース会議による具体的ケースへの対応
(1) 地域住民等から各関係機関に入った情報は必ず事務局(児童福祉課)に入ることとなっている。
(2) 事務局が個別児童ごとの取組を記録する「児童カルテ」を作成する。
(3) 事務局、実務者会議の座長、堺子ども家庭センターの三者で「緊急度判定会議」を行う。必要に応じて、実務者会議の臨時ケース会議の開催を決定し、会議に招集するメンバーを決定する。
(4) 事務局が招集メンバーとなった関係機関と調整を行い、実務者会議の臨時ケース会議を開催する。
(5) 実務者会議の臨時ケース会議において、(ア)問題の所在の明確化、(イ)議 論、(ウ)役割分担、(エ)今後の方向性の確認が行われる。
(6) 実務者会議の臨時ケース会議終了後、そこで決定された方針に従って、各機関の実務者が対応を実施する。
(7) 各実務者はチームリーダーと連絡を取り合いながら対応し、チームリーダーは事務局及び実務者会議の座長に対応の状況を報告する。
(8) 必要な場合、再度実務者会議の臨時ケース会議を開催し、状況確認や今後の方針の決定などを行う。
 平成11年7月に本ネットワークが設置されて以来、臨時ケース会議を開催したケースは8件あり、それぞれ個別の対応を行っている。

 児童虐待の具体的なケースに応じて、必要な関係機関による対応チームを編成する仕組の先進事例である。ネットワークに参加するどの機関に情報が入っても事務局(市の児童福祉課)に連絡が入ることとなっており、また、臨時ケース会議によるチーム編成後もチームリーダーが事務局に状況の報告を行うなど、事務局が一貫して情報を一元的に把握し、全般の連絡調整を行っている点が注目される。

プライバシーの保護への配慮
 ネットワークの設置要綱に秘密の保持についての規定を置いているのみではなく、
 (ア) 実務者会議の臨時ケース会議において使った資料のうち、実名の記載された児童カルテは必要に応じて回収する措置もとる
 (イ) 児童カルテは、事務局及び子ども家庭センターだけが保存する
 (ウ) その他の機関が提出した資料は各機関において保管し活動に利用する資料とするが、資料の扱いには注意を徹底する
ということをルールとしている。

 「児童カルテ」の作成により、事務局が一元的に取組の経緯等を把握できるだけでなく、それを事務局と子ども家庭センターだけが保存できることにすることにより、プライバシーの保護にも配慮している点が注目される。必要な情報の共有を行いながら、プライバシーの保護に配慮している取組と言える。

(3)  行政組織間の人事交流の促進
 各相談機関や専門家が行政組織ごとに系列化されているため、相互の役割等についての理解が進みにくい実情がある。機関の連携の仕組を整備するだけではなく、以下のような行政組織の枠組みを超えた人事交流の促進が必要である。
 地方公共団体においては、首長部局・教育委員会・公安委員会の間の人事交流を一層推進する
 国・都道府県・市町村のそれぞれが設置主体となっている青少年の相談に関わる機関同士で人事交流を実施する

3 相談機関をより一層利用しやすいものとする方策等
(1)  相談機関の利便向上及び周知の推進
 青少年に関する相談を受け付ける多様な機関があることから、一般には相談機関の役割及び連絡先が十分に知られておらず、また、気軽に相談しにくいと受け取られている現状があるため、保護者等や青少年がより一層利用しやすいものとなるよう、相談機関の窓口の利便の向上や周知を図る必要がある。
 このため、各相談機関においては、相談受付時間の延長、電話やインターネットによる相談の受付の実施などにより、窓口を一層利用しやすいものとしていく必要がある。
 また、各機関で行われている広報活動に加え、青少年行政を担当する国や地方公共団体の組織が、青少年に関する相談窓口の連絡先、メールアドレス等を十分周知させていくよう、地域で開催されるイベントや祭りなどの場も利用して積極的な広報活動を行う必要がある。

事例紹介 総務庁青少年対策本部の平成12年度補正予算
(困ったときは相談しようキャンペーン(仮称))
各種情報媒体を用いて、各種の相談窓口等の利用を呼びかける「困ったときは相談しようキャンペーン(仮称)」の実施に必要な経費(6,104万円)を含む平成12年度補正予算が、11月22日、第150回国会において成立した。
困ったときは相談しようキャンペーン(仮称)
 少年非行を防止するに当たっては、その前兆となり得る問題行動等の段階で適切な措置を講じる必要があり、各種相談機関が利用されやすくすることも重要である。このため、それらの機関の連絡先が十分に知られていなかったり、情報不足のために気軽に相談に行きにくいと受け取られたりしないよう、意識啓発や具体的な相談機関の連絡先等の情報を提供するためのキャンペーンを実施する。  具体的な事業内容は現段階では検討中であるが、パソコンや携帯電話の普及により急速に利用が増加しているインターネットによる情報提供を中心として実施する予定である。なお、キャンペーン終了後も、「青少年のためのホームページ」(平成13年初頭の本格運用を目指し準備中)において、各種相談機関の連絡先等の情報を提供していく予定である。

 国の青少年行政の総合調整を担当する総務庁青少年対策本部(省庁再編後は内閣府の組織へと移行する)による、広報活動の一例である。設置主体や分野に関わらず、青少年の問題について相談を受け付ける各種機関の存在や連絡先等が多くの国民に認識されるようになることが期待される。

(2) 街頭での青少年への働きかけの検討
 相談機関での把握が困難な非行等問題行動に対応するために、街頭で青少年に積極的に働きかけを行う必要がある。このため、街頭で喫煙等を注意したり、帰宅を促したりという声かけを行っている民間協力者等による街頭補導活動をさらに発展させることなどが期待される。
 例えば、民間協力者と警察官等が共同でより踏み込んだ街頭補導活動を行い、問題行動の見られる青少年を自宅まで送ったり、保護者等を説得して相談機関への相談持ち込みをさせることも考えられる。
 また、コンビニエンスストアやゲームセンターなど、青少年が集まりやすく、適切な対応が必要な店の従業員等に対する講習会を実施するなどして、青少年を指導する役割を担ってもらう試みが既に行われているが、これをさらに充実していく必要がある。
 さらに、青少年育成国民運動推進指導員、青少年育成国民運動推進員、青少年育成アドバイザー等の地域において青少年の健全育成に携わる民間有志者が、少年補導員等と協力しながら日常的に青少年の状況を把握し、相談機関の対応が必要と判断した青少年やその保護者等に適切な機関を紹介するなどの活動を行うことも期待される。また、地方公共団体又は青少年団体等が、デタッチドワーク(※)をA3(2)(イ)で述べた新たな専門家の役割の一つとして位置づけ、地域の中での活動拠点づくり及びその活動が幅広く理解されるための広報啓発活動を実施していくことも期待される。
(※) デタッチドワークについて
 青少年活動の専門家が、街頭に出て青少年に積極的に働きかけをする活動を言う。街の中を活動の拠点とし、普段から青少年のみならず、地域の住民と接触を図りつつ地域の顔なじみとなっている必要がある。そうした日常的な活動を踏まえ、必要に応じて青少年の悩みや望みを聞き出し、その解決や実現に力を貸す役割を担う。

事例紹介1 ゲームセンター管理者を対象とした青少年指導員養成講座
地域から信頼されるゲームセンターづくりを目指し、青少年に対して適切に指導・助言できる管理者をゲームセンターに配置するため、社全日本アミューズメント施設営業者協会連合会(AOU)と青少年育成国民会議とが共催で、昭和58年から、ゲームセンター管理者を対象とした青少年指導員養成講座を開講している。
平成12年までに21回開講し、この間に1,600名強のゲームセンター管理者が受講した。
養成講座が生まれた背景
 昭和56年に、当時流行していたインベーダーゲームの問題が表面化し、(ア)ゲーム内容によっては人命軽視の風潮を助長するのではないか、(イ)ゲームセンターの中が外から見えづらく、薄暗く汚い、(ウ)管理者は未成年者の喫煙を黙認しているのではないか、(エ)恐喝など非行の温床になっていないか、(オ)シンナーの売買が行われているのではないか、などのゲームセンターを問題視する声が地域から上がり社会問題化した。こうした声を受け、青少年育成国民会議が、毎年開催してきた「青少年と社会環境に関する中央大会」にゲーム関連業界の代表者に出席してもらい、地域の青少年育成関係者との懇談・協議の場を設けた結果、「本来、子どもは屋外で伸び伸びと遊ぶのが望ましいが、時代の流れの中で、子どもたちがゲーム場に立入りすることは、やむを得ない状況である。とするならば、そこに遊びに来る子どもたちに対して、不正や不良行為、お金の使い過ぎなどを、適切に指導できる管理者を配置すべきである」との提案がなされた。この案を具体化するため、業界の関係者の連合組織である社全日本アミューズメント施設営業者協会連合会(AOU)と国民会議とが共催でゲームセンター管理者を対象とした青少年指導員養成講座を開講することとし、講座内容の企画、運営について国民会議が協力支援することとなった。

 ゲームセンターなどへの青少年の立入りを制限することには限界があるため、青少年がそれらの場所で問題行動を起こさないように指導できる管理者を養成するという、現実に即した対応方策を実施している点が注目される。ゲーム業界が、地域の声にいち早く応えたのは、小・中学生のゲームセンターへの立入り禁止の動きや、補導員・PTAによる頻繁な巡回が行われるなど、ゲームセンターに対する社会の目が大変に厳しかったという状況があったためと考えられる。

<養成講座の内容>
養成講座の成果
 国民会議は、講座に参加するゲームセンター管理者に、
(ア) 子どもたちに積極的に声をかける(例えば、名前を覚える、ほめる、聴く、注意するなど)
(イ) 業界が会社という組織の枠を超えた連携づくりをする(例えば、家出捜査に協力する、いじめ・恐喝防止に一役買うなど)
(ウ) 地域行事に積極的に参加する(例えば、祭り、障害者・高齢者福祉活動など)
(エ) 地域の青少年育成関係者を積極的に受け入れる(対立関係ではなく、協調関係を築く)
といったことの実践を呼びかけてきている。
 当初の懸念に反して、参加者の養成講座への参加意欲は極めて高いものであり、地域において、ゲームセンター管理者が、青少年に積極的に声をかけようという気運が高まってきている。一部では、「地域のおじさん、おばさん」運動(※)を導入し、実践しているところもある。
 これらの管理者養成も含めたゲーム業界の努力により、今日のゲームセンターは、明るく、綺麗で、安全という評価を得るようになり、青少年の立入りを禁止する地域はほとんどなくなっている。
(※)「地域のおじさん、おばさん」運動について
国民会議が、平成10年から提唱している「大人が変われば、子どもも変わる運動」の一環として、”地域の子どもは、地域で守り育てる”という気持ちで、大人が子どもたちを暖かく見守り支援する実践 活動であり、子どもへの声かけや相談相手になることなど、身近なこ とから行動していくことを呼びかける運動である。
 以前と比べてゲームセンターの環境は改善され、青少年の遊び場として定着しているが、引き続き、適切な指導ができる管理者の必要性は高いものと考えられ、更なる指導者養成が必要である。  また、これらと同様に青少年に対する適切な指導者がいることが望まれる他の業界においても、このような観点からの人材養成の取組が広がっていくことが期待される。

事例紹介2 東京都におけるデタッチドワークの試行
各ユースワーカーシステム導入の試行として、青少年施設や街頭にいる青少年への語りかけ等を東京都中野区で実施した。
実際にデタッチドワークを試みたことにより、それらを十分に機能させる ためには、各種の条件整備が必要となることなどの課題が明確になった。
(東京都ユースワーカーシステム検討委員会の試行調査)
デタッチドワークの試行と課題
 ユースワーカー検討委員会の委員及び青少年施設職員が、実際に青少年に語りかけてみて(「今日は何をしにきたのか」等)、どのような反応があるかを試みた。
(ア) 青少年施設の中での語りかけ
 青少年施設の中にいる青少年は、声をかけてきた大人が施設の職員あるいは関係者であると認識し、積極的な反応とまではいかなくとも、会話が成り立つ程度の反応はあった。
(イ) 商店街のビルの中での語りかけ
 青少年が好むマンガや収集品を扱う店やゲームセンター等が集まっているビルの中にいる青少年は、突然に声をかけられたためか、元気のない反応であり、あまり話にのってこなかった。
(ウ) 街頭での語りかけ
 街頭(青少年施設の周辺や駅前等)を歩いている青少年は、声をかけても足をとめることがなく、全くコミュニケーションはとれなかった。2人組で実施していても、役割の裏付け(仕事として語りかけを行っているのだと人々に認識されているという前提)がなく街頭を歩いている青少年に声をかけることは、語りかけを実施した者自身に非常に躊躇が伴った。
 このような試行を行ったことにより、デタッチドワークを機能させるには、以下のような課題があることが明確になった。
(ア) 見知らぬ大人から目的も分からずに声をかけられても、青少年が会話に応じないため、「各地域を担当する、青少年が必要とする手助けをしたり相談にのったりする専門家(ユースワーカー)」が活動しているのだということが一般的に理解されている必要がある。
(イ) 青少年と十分なコミュニケーションをとるには、そのような専門家(ユースワーカー)が地域にいるということが知られているだけでなく、その専門家が普段から地域に密着した活動を行い、人々と接触し、顔なじみになっている(青少年が、少なくともどこかで見たことがある人と分かるような存在になっている)必要がある。
(ウ) 普段から地域に密着した活動を行えるようにするには、活動拠点が必要である。また、活動拠点があれば、そこに行けば顔なじみの専門家(ユースワーカー)に会えると認識されるようになり、青少年が積極的に接触を求めてくることも可能になる。
 実際に検討委員会の関係者がデタッチドワークを試み、各種の問題点を体験した事例であり、改めてデタッチドワークの難しさが確認されたと言える。今後、デタッチドワークを機能させるための各種の条件整備を図るため  には、我が国にふさわしいデタッチドワークがどのようなものかという観点も踏まえながら、A3(2)(イ)で述べた新たな専門家の在り方と合わせて検討が行われる必要があると言える。


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