子ども・若者育成支援推進点検・評価会議
第1部会(第6回)議事要旨
1.日時:平成24年10月5日(金)13:30~16:30
2.場所:合同庁舎第4号館4階 共用第3特別会議室
3.出席者:
(構成員(敬称略))
明石 要一、安藤 哲也、 二三彦、古賀 正義、
政男、高塚 雄介、谷口 仁史、花井 圭子、原田 謙介
(ヒアリング(敬称略))
和歌山県青少年・男女共同参画課主事 田村 修平
秋田県生活環境部県民生活課長 村上 健司
秋田県生活環境部県民生活課主査 高橋 浩樹
大洲市教育委員会学校教育課長 原田 淳子
大洲市教育委員会学校教育課課長補佐 櫛部 昭彦
特定非営利活動法人ビーンズふくしま理事長 若月 ちよ
NPO法人恒河沙・NPO法人恒河沙母親の会理事長 福島 美枝子
NPO法人恒河沙母親の会相談員 手嶋 美香
NPO法人恒河沙母親の会相談員 伊藤 淳子
(事務局)
伊奈川子ども若者・子育て施策総合推進室長、梅澤参事官(青少年企画・支援担当)、山本参事官(青少年環境整備担当)、後藤調査官(青少年担当)
【概要】
1.平成24年度重点テーマに係る地方公共団体・支援団体からのヒアリング
- 和歌山県
- 秋田県
- 愛媛県大洲市教育委員会
- NPO法人ビーンズふくしま
- NPO法人恒河沙母親の会
各団体から資料に基づき以下のとおり説明が行われた。
(1)和歌山県(資料1)
- 和歌山県での不登校・ひきこもり支援に主に二つの流れがあるとすると,一つは、教育相談活動からの流れ,もう一つは精神障害者支援からの流れである。 一つ目の方は,昭和63年に県の教育相談センターが開設された。平成5年には、不登校児・者親の会が誕生して、活動を始めた。平成9年には、「レインボーハウス」という団体が不登校児への居場所の提供を始めた。平成14年には、田辺市に「ハートツリー」というひきこもり支援団体が、和歌山市には「エルシティオ」というひきこもり支援団体が、ともに教員のOBによって始められた。
- もう一つの方は、昭和50年代ぐらいから精神障害者共同作業所設置運動が全国的に起き、その中で和歌山県でも共同作業所ができてきた。平成元年には「社会福祉法人一麦会(麦の郷)」という総合型の社会福祉法人ができ、そこが、平成8年に「ハートフルハウス」(不登校支援)を、平成21年に「創~HAJIME~」(ひきこもり支援)を開設した。「社会課題を放置しておくことができない」(和歌山弁で言う「ほっとけやん!」)として不登校・ひきこもり支援にも取り組んでいる。このほか、やおき福祉会や美熊野福祉会などでも幅広く不登校支援をやっている。
- 行政でのひきこもり支援体制については、障害福祉行政の一環としてなされている。平成16年に「ひきこもり者社会参加促進事業」が開始され、「ひきこもり者社会参加支援センター」を設置した。「ハートフルハウス」、「エルシティオ」、「ハートツリー」の3カ所を指定して補助金を出している。平成21年に「ひきこもり地域支援センター」を県の精神保健福祉センター内に開設した。関係機関の連携強化、情報発信、相談窓口の充実、人材育成など、県内のひきこもり支援を統括するセンターとなっているほか,現在、全30市町村にひきこもり一次相談窓口を設置し、専門的な立場から統括する保健所を中心にした各圏域での支援ネットワークを形成しているところ。
- 和歌山大学「アミーゴの会」の事例を紹介する。昭和57年に保健管理センターの宮西照夫先生が、スチューデントアパシーや社会的ひきこもりの実践研究を始められた。その中で、不登校・ひきこもりがちな学生の多くには、仲間づくりや自助グループの活動が大事だとして、平成5年に学内の自助グループ「老賢人会」が発足した。それが平成15年に「アミーゴの会」となった。そこでひきこもり回復支援プログラムが実施されている。アミーゴの会が受け入れたら半年以内に9割が外出可能になる。キーワードは「ひきこもり臭」、ひきこもりを経験したからこそ醸し出せる同じ雰囲気や共感性を持っているからこそ、非常に高い効果を上げている。
- もう一つ特徴的な支援として、田辺市のひきこもり支援を紹介する。平成13年度末にひきこもり相談窓口が設置され,開設して10年が経つ。これまで6,822件の相談を受け付け、ここ数年は500件前後、実人数60人前後で推移している。保健師が2名体制で、保健所や児童相談所などの公的機関と、NPOや社会福祉法人など様々な民間機関が参加している。検討委員会を年2回行っており、具体的なケースについては検討小委員会で検討している。
- それから,新しい働き場・生き場の創造として、中間的な働き場づくりに取り組んでいる。和歌山市では、BBS活動の中から生まれてきた団体が「コミュニティランチ和」という弁当屋を市の中心商店街の中でやっており、非行少年等を積極的に受け入れている。田辺市では町家カフェ「上屋敷二丁目」でひきこもり者などを受け入れている。形としてはA型作業所である。好評で2号店もオープンした。2号店「ララ・ロカレ」では障害者手帳を取れない若者たちを受け入れている。さらに、新宮市にある「山の学校」という団体では、「田舎では、若いということ自体が、それだけで付加価値になる」として、田舎での新しい働き方を目指す若者の支援を行っている。
- 子ども・若者育成支援推進法に基づく取組について説明する。実施体制は、環境生活部県民局青少年・男女共同参画課に平成22年4月「自立支援班」ができ、事務職員が3名体制で、うち1名は教員から出向する体制となっている。この体制で、「若者総合相談窓口With You」という法に基づく子ども・若者総合相談センターや、子ども・若者支援地域協議会、さらには地域若者サポートステーションを運営している。サポステは県内2カ所あり、県の独自予算で、訪問支援員を多く配置するとともに、臨床心理士も置いている。
- 若者自立支援事業が平成22年に開始したときは約3分の2が国庫財源。ふるさと雇用再生特別基金を活用していたが平成23年度末で終わってしまったため、平成24年度は県の一般財源からの支出が非常に多くなった。県全体の予算が厳しくなっており、このままではより厳しい状況になるのではないかと危惧している。
- 子ども・若者総合相談センターの窓口は、月曜日から金曜日の9時から5時、県庁内に設置している。相談員は2名体制。約半分がメールでの相談で、2年2カ月で450人、相談件数3,599件になっている。広報を非常に大事にしており、身近なところで知ってもらうため、公共機関やコンビニに名刺型のPRカードを置いている。ホームページでは、県内の様々な機関で働いている方から若者に充てた若者応援メッセージを掲載している。各支援機関へのリンクを11個のカテゴリーに分けており、実質的な支援機関マップとして機能している。
- 子ども・若者支援地域協議会について、調整機関は環境生活部県民局青少年・男女共同参画課になっており、指定支援機関は現在のところ置いていない。全部で23の機関が構成機関になっている。支援者のネットワークづくりに重点的に取り組んでおり,代表者会議を年1回定期的に行っている。広域自治体なので参加者には交流にニーズがあるため,その点を意識した研修を行っている。
- 県内市町村については、小さい町村になるほど役場そのものが子ども・若者に限定しない住民総合相談センターとなっており、若者支援の専門的な対応をとるのはなかなか難しいことから、若者支援機関の情報を提供していく必要がある。大きい市では、地域の若者の課題を把握することと、既存の社会資源を整理していくことがまず必要。その上で、青少年センターや子ども総合支援センターといった既存施設があればその拡充や、新たな子ども・若者総合相談センターを新設していくのがいいのではないか。市町村の子ども・若者支援地域協議会については、核となる機関がどこなのかが曖昧であること、要保護児童対策協議会や次世代育成支援対策協議会、和歌山県がオリジナルで設置している圏域ひきこもり支援連絡協議会などよく似た既存の協議会があることから、小規模な市町村ほど設置が難しいというのが実感。さらに、一部の地域では社会資源がどうしても重複してくるので、共同で設置していくのが望ましいのではないか。
- 国に望むことは、まず一つ目に、子ども・若者支援施策のフレームを提示していただきたい。子ども・若者育成支援推進施策に係るそれぞれの領域が深く、また、若者に限定しない施策との関連性から、体系化は簡単ではないが一方縦割りの弊害を防ぐ必要がある。子ども・若者支援に関する国の諸施策を省庁単位ではなく,一括して地方自治体へ提供する仕組みを内閣府が作れば、地方レベルでも縦割りの弊害が軽減されていくのではないか。
- 次に、都道府県と市町村の役割分担モデルを提示してほしい。都道府県という広域自治体と市町村という基礎自治体では役割が違うと思うが、子ども・若者育成支援推進法では地方自治体と一括りになっている。「地域の実情に応じて」と裁量を認めてくれているのだろうとは思うが、市町村からは、何から始めて何をしたらいいのかと言われている。核となる機関はどこなのかということや広域自治体が具体的支援に踏み込めるのかなどの素朴な疑問を解決し得る有効なモデルを提示していただきたい。
- もう一つは,財源が必要。若者支援は受益者負担を求めにくい。民間団体では大きな課題になっている。和歌山県でも地元力応援基金というNPO向けのファンドを立ち上げようという動きはあるが、まだまだ補助金頼みというところがある。民間団体が利用できる財源の情報が縦割りの壁を越えて一元的に提供されるのがよい。また、子ども・若者育成支援推進法に基づく諸施策に活用できる交付金ができれば、子ども・若者総合相談センターや既存の相談支援機関の機能拡充ができる。
- それから,子ども・若者育成支援には非常に広い専門知識が必要であり、支援者だけではなく行政担当者にも研修機会を提供する必要がある。地域での支援者をつなぐ研修機会として、内閣府が子ども・若者支援ネットワーク形成のための研修会事業を実施しているが、市町村と大学が対象であり、都道府県が対象外になっている。県内の支援者の人材育成も広域自治体である都道府県の役割として大事であり、県の協議会で交流研修会を行っているが、そうした取組を内閣府が支援していただけたら非常に助かる。
(2)秋田県(資料2)
- 平成18年度に基礎的な調査として専門家・民間団体の意見を聴取し、その結果に基づき、平成19、20年度に、専門家や民間団体から成る自立支援ネットワーク会議の立ち上げや、地域の理解を得るためのセミナー、個別相談グループワーク、外出サポート、親支援などを行った。
- こうした取組から様々な課題が見えてきた。まず、専門機関に地域的な偏在があること。専門機関は秋田市中心に集中しており,北の方が非常に手薄である。二つ目に、若者やその家族に継続的に関わる必要性があること。親ゼミや個別相談を行ったが、1回来てそれきりで,次につながらないと自立支援にならない。三つ目に、本当に困っている子ども・若者とその家族をどう把握するかということ。周りの方にも相談できず,結果的に家族全体がひきこもっているといったこともあるので,いかにそういう方々を把握するか。四つ目として、今の課題の三つ目に対応して,困っている人たちに,いかにして情報を的確に届けることができるのかということ。
- これら四つの課題を踏まえ、平成21年度から今年度までは、ネットワーク会議や自立支援セミナーを引き続き行うとともに、若者自立サポーターを養成している。また、自立支援マップを改定し,県北、県央、県南の3ブロックごとに分けて作成した。若者自立サポーターの資質向上を目指し、地域ごとの会議や専門的なセミナーを細かく行っている。サポーターの養成と派遣については、NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡のいわゆる「静岡方式」を参考にしている。
- 若者自立サポーターは、本人の状況や家族の理解を踏まえながら、伴走型支援を行っている。本人の状況に合わせて適切な支援団体を案内しながら、就労、社会的自立を果たしたと言えるまで支援を継続的に行っていくスキームである。サポーターは県北、県央、県南を網羅している。
- 予算的には非常に苦しい。ネットワーク会議、自立支援セミナー、サポーター派遣(民間団体への委託)が県の一般財源であり、サポーターの資質向上を目的とする事業は住民生活に光をそそぐ交付金を活用している。
- 国への要望については、和歌山県の言うとおりである。加えて、財政支援に関しては、平成23~25年度まで行われる予定の特別交付税措置がその後も延長されれば、市町村に対しては有効である。また、長年地道に取り組んでいるような民間団体の自主的な活動を最大限生かすための財政支援ができれば、かなりの実績が上がるだろうという認識を持っている。
(3)大洲市教育委員会(資料3)
- おおずふれあいスクールは、平成9年1月に大洲市教育委員会と国立大洲青少年交流の家との共催により開設された不登校対応の施設で、今年度で16年目を迎える。職員3名が、不登校及び不登校傾向にある児童生徒やひきこもりがちな青年に、自然体験や生活体験等を通して、生産の喜びや親子及び仲間とのふれあいを体験させるなどの支援活動を行っている。
- 対象は、大洲市及び近隣地区の小学校、中学校、高等学校等に在籍し、主として心理的・情緒的理由で不登校状態にある児童生徒と、16歳から22歳までのひきこもりがちな青年。15名程度を受け入れることにしている。
- 自然体験活動は、自然の厳しさや恩恵を知り、動植物に対する愛情を培うなど、自然や生命への畏敬の念を育て、自然と調和していくことの大切さを理解させることを目的としている。農業体験、魚釣り、カヌー、自然観察、遠足などの活動を通して、豊かな人間性とたくましい心身を育み、一人一人の生きる力を育てたいと考えている。体験農園「なるなる畑」では、1年を通じて20種類ほどの野菜を収穫している。ここでの作業を通して、子どもたちは、自然の中で季節を感じ、種まきから収穫までの野菜を育てる喜びを体験している。この活動には、思春期親の会のメンバーに調理から協力していただき、会食には、青少年交流の家の職員や現場の教員や養護教諭、そして私たち教育委員会の者も呼ばれて、子どもたちと一緒に楽しいひとときを過ごしている。
- 次に、社会体験活動については、仲間と触れ合い、自らを律しつつ、協調性を育てるとともに、自己の長所や能力を発見し、感動する心など豊かな心を育てることを目的としている。また、宿泊体験活動、職場体験学習、社会見学などを通して、今までの自分を見つめながら、これからの生き方について考え、たくましく生きる力を養うとともに、自立への力を育てることも目的としている。
- 文化・スポーツ体験活動については、テニス、陶芸、茶道、コンサートや英会話など、外部から専門家の講師を招き、ルールやマナーを身につけさせ、コミュニケーション能力の育成を図りながら、自分らしさを表現するとともに、社会性を育てることを目的としている。また、心身を鍛え、たくましく生きるための健康、体力を維持増進し、主体的に生活する意欲を育てることも目指している。
- 保護者への対応と支援について紹介する。親の会を開催しており、昨年度は年6回行った。参加者は、保護者やふれあいスクール関係職員など、毎回10人程度で、臨床心理士をアドバイザーとして会を進めている。会では、参加者が悩んでいることや苦労していること、子どもの状況、家庭内の人間関係や進路・進学など多岐にわたり悩みを持っている者が本音で話し合う。ふれあいスクール担当者は、学習状況や生活状況、心の動きなど、ふれあいスクールでの子どもの様子や変化を伝えている。
- 思春期親の会は、様々な悩みを持つ子どもや保護者が安心して集い、話し合える地域の居場所づくりや仲間づくりをすることを目標に掲げ、平成11年に地元の保健所で「思春期保健事業」として発足した。平成19年より国立大洲青少年交流の家の支援事業として受け入れられ、おおずふれあいスクールを拠点として活動している。ふれあいスクールの子どもたちは思春期親の会のメンバーの方々や保護者との交流を通して社会性の向上を図っている。
- 国の施策について、人を雇ったり事業を行ったりするためには、その裏づけとなる財源が必要である。継続した十分な財源を確保していただくことが要望の1つ目である。
- 2点目、多様な体験活動ができるのは,施設はもちろんスタッフが充実した青少年交流の家のおかげであると感謝している。施設設備の更なる充実をお願いしたい。
(4)NPO法人ビーンズふくしま(資料4)
- 不登校を持つ親と、地域で子どもたちの学びの場をつくりたいと言っていた若者の出会いから、ビーンズふくしまはスタートした。福島にフリースクールを創る会として、市民の方々にも声をかけ、40~50名ぐらいで一から準備し1999年9月9日9時9分9秒にフリースクール「ビーンズふくしま」が立ち上がった。
- 2003年にNPOの認定を受け、その際にひきこもりのお子さんを持っていらっしゃる家族会との出会いがあった。不登校の子どもたちの場所だけではなくてひきこもりの若者の場所もやってもらいたいと言われ、家族の会の方にも参加していただき、「ビーンズプレイス」という20歳以上の若者たちのための居場所がスタートした。2006年には、臨床心理士の方に来ていただいて、こころの相談室といういわゆるカウンセリングの場もはじめた。その後、県からふくしま・こおりやま若者サポートステーション事業を受託した。さらに、ビーンズ寮というものを始めた。「ビーンズプレイス」は運営上なかなか厳しく、サポステのプログラムとして2009年に統合した。
- 現在は、福島事業と郡山事業と分けて展開している。郡山では市の委託を受けて就労体験を実施している。また、被災した子どもたちの支援に昨年から取り組んでおり、委託も受けて、独立部門として動いている。さらに、様々な悩みを抱え孤立している若者たちの支援としてピアサポートネット事業を行っている。加えて、郡山では生活保護を受けている子どもたちの学習や遊びの支援を行っている。
- 自主事業はフリースクールビーンズふくしまと心の相談室と自立寮だけであり、残りは助成事業や委託事業である。
- フリースクールビーンズふくしまで大切にしているのは、子どもたちが安心して過ごせる居場所で仲間たちと一緒に活動できる、いろいろな体験も含めた学びができるところ。ここで、自己肯定感と自分で決めていく力をつけてもらい、自信の回復につなげ、それから自分らしく社会に自分らしい形で参画していけるようにというのを目指している。これはフリースクールの子どもたちだけではなくて若者支援にも繋がると感じている。
- 子どもたちが主体となってプログラムをつくっている。子どもたちが自分たちでやることを決め、それを実行していくことで、成功が自信になり、失敗もあるけれどもそれも学びにすることができる。また、学びタイムいう時間も確保している。これは、子どもたちの学ぶ権利をきちんと保障するべく、スタッフが教科学習を中心に行うとともに、学ぶ楽しさが伝わるように子どもたちとスタッフが一緒になって工夫している。
- 仕事体験については、安心できる居場所にこもっていたのでは意味がなく、地域の中につながっていくことで社会に出ていくという自信をつけていってほしいとの思いから、宅配花屋と資源回収のプログラムを行っている。希望する子たちで展開しているが、自分で事業所にアポを取ったりお金の計算を自分たちで行ったり仕事体験としてはすごく子どもたちの力になっている。
- フリースクールの利用者は、2011年3月末で実数として118名いる。卒業した子どもたちのほとんどが、進学したり、復学したり、就職している。このところの傾向としては、小学校、中学校に通いながらフリースクールを利用する、すなわち、時々学校を休んで利用したり、逆に、普段フリースクールを利用していて時々学校に行くようなダブルスクール的な利用や、定時制や通信制高校の子がダブルスクールで日中利用していることが1つ。もう1つの傾向としては、発達障害傾向の子どもたちが不登校になってくるというのが多くなってきている。
- 20歳以上の若者の居場所を提供する「ビーンズプレイス」は助成金でスタートした。県のジョブトレーニングという委託を受けてプログラムとして取り入れて行ってきた。安心して人とかかわれる場で若者たちは確かに元気になっていったが、そこから卒業するタイミングがフリースクールのように年度で区切りができず難しい。また、自主事業としての運営も難しく、その後サポステプログラムに統合する形をとった。
- サポステでは、グループでの活動やコミュニケーションのトレーニング、生活改善を行っている。朝活や生活改善プログラムを経て、仕事体験に行くのだが、そこから就活に行けないというケースが少なくなく、そこに滞留してしまう。こうした若者たちには2つのタイプがある。1つは、自己認知がなかなかできず、叶わない夢を追ってしまう若者たち。もう1つは、いろいろな意味で自信をなくしている若者たち。親からのプレッシャーだったり人間関係がうまくいかなかったりして、自分から一歩踏み出せない状況になっている。
- 家や学校生活から仕事にストレートにはつながりにくい。人のつながりの中で人の役に立つ体験や「失敗してもいい」体験、「生きていることや人にかかわることは本当は楽しいんだ」という体験が若者たちに必要。地域で育つ仕組みがやはり必要だと思う。
- 今年度、地域で育てる取組の一つとして、ピアサポートネット事業を県の委託事業として行っている。地域の中につながるということを1番の目的として、地域の中のいろいろなところに実際に出かけていって、そこの先の人たちとのつながりを持ちながら事業を展開している。ビーンズふくしまがある地域で継続してやりたかったが、県内各地で行ってほしいとの県の意向もあり、県内6地域で期間限定になった。参加した若者たちは本当に元気になっていく。
- ふくしまサポステでは、いわゆる一般就労が難しいケースが来るが、本人は一般就労が難しいということを認知していなかったりするので、精神保健福祉士が相談を受け親御さんも呼んで話をした上で、病院や福祉のサポートに繋いでいる。ここで難しいのは、ボーダーと言われる方たちがなかなか行く場所がないこと。御家族の方も自分たちで何とかマッチングするところを探すなどして努力している。
- こころ相談室では、訪問相談や来所相談をしており、年間1,000件以上の相談がある。サポステやフリースクールに来ている子どもたちが併用して受けているケースがある。自分に向き合う機会と、集団の中で自分を見つめる機会を併用することで、すごく育っていく感じがあり、いい効果になっている。
- 親支援としては、不登校の親を対象にした「親の会」と、ニート・ひきこもりの家族を対象にした「家族の集い」を実施している。
- 学校があるうちは、とりあえず所属していれば何となくやり過ごしてしまう環境があり、例えば,川の流れを上から下に乗っていけば何となく行けてしまうけれども、海という社会に入ったときになかなか難しいというようなことである。泳ぎ方を知らなかったりして泳げなかったりする若者たちが出てくる。また、川の流れから外れたときには戻る道がなかったり、流れに身を任せたときには上手く泳げなくて溺れてしまったりという状況になる。自分の力で泳ぐ力がないと難しい。
- 不登校になったときは、「ちゃんと不登校しよう!」とよく私は言うが、中途半端な不登校じゃなくてきちんと不登校して、自己肯定感や自己決定能力をきちんとつかんだ上で学校に戻るなり社会に戻ってほしい。したがって、不登校したときに、学校復帰を目指すのではなく、これから先どう生きていくかというところを目指せる形が保障されると良いと思う。新しい道をつくっていくと、きちんと自分の力で社会という海の中で泳ぐことができるという気がする。
- 社会に出たけれども泳ぎ方を知らなくて、海に入ったら溺れそうになっている若者たちには、自分に合った形で生きる何かが欲しいだろうし、あと、泳ぎ方を教える浮輪を渡すところが欲しいだろうし、そうすると、自分で動いたり、浮輪に乗って浮くことができたり、何となく浮いているというのもまあいいのではないかと、それぞれに合った生き方が見つかればいいと思う。
- 若者たちを見ていて思うのは、今、子どもたちがきちんと育つことができなくなっているのではないかということ。いわゆる困難を抱えてからの支援ではなく、きちんと育つ仕組みというものをつくらないとだめなのではないか。ただし、家庭や学校には限界があるため、地域の中に育つ仕組みというものをつくる。それが学童保育であってもいいし、フリースクールであってもいい。課題のひとつは利用料。利用したくても経済的な理由で利用料が払えない者がいる。
- 社会で生きにくさを抱えている若者たちが、福祉サポートにつながる場合はいいが本人や家族が認知しないと滞留してしまうため、ジョブコーチのような人がいると働いていくのにつながるのではないか。出口が必要であり、中間的労働市場を何らかの形でつくれないか。これは若者支援をしている方たちみなが思っていること。独自にやるのはすごく難しく、政策が必要。
- 福祉的支援からいわゆるサポステに来る間の中間的支援が必要。指導する人ではなく、楽しく生きている人のモデルのような支援員として、例えばユースアドバイザーを養成したり、公民館のような場所でプログラムを展開したり、一人一人の状況に合わせたパーソナルサポートができていくといい。これもやはり自主事業では難しいので、何らかの政策が必要。
(5)NPO法人恒河沙母親の会(資料5-1、5-2)
- 理事長が中学校に勤めていたとき、「先生、学校に行きたくないよ」といって教え子から電話がかかってきたことがきっかけで始めた。それから、地元の新聞紙に載り、いろいろな人が相談にやってきた。子どもたちに何がしたいか聞きながら様々な取組を行い、13年目を迎えた。
- 登録しているのは60名程度で、日常的に通っている若者はそのうち40名程度。その子の状態や都合によって、京都や大津市で活動している。
- 「家族のサポート」と「いろいろな意見を大切にすること」の2つを意識していろいろな取組をしている。1つ目の家族のサポートについて、お子さんの問題を抱えている家庭は、家族のほかのメンバーも苦しさを抱えていることが多い。その関係を解きほぐしていくのを手伝うことで家族本来の力を取り戻すと、全員の状態がよくなることもある。2つ目はいろいろな意見を大切にすること。1つの考えや方針に従うのではなくて、考えが違っていても一緒にいられる関係を目指している。
- 若者たちに身につけてほしいことは、頭を下げること、私がやりますと言えること、にこにこ笑顔でいられること、礼儀作法、お寺のお掃除。そうした基本的な型が身についていくと、彼らの自信回復につながることを実感として感じている。また、自分たちだけで解決しようとしないことも大切に考えている。不登校やひきこもりの原因がたった一つというのはなかなかない。悪者探しをするのではなく、それぞれのできることを探していくことを考えている。今、一番大切だと思っているのは、父親の協力を呼びかけること。父親の協力、家族の協力があると、回復は早い。
- 専門的な知識が必要なときはすぐに専門家に相談することで、正しいことを伝えるようにしている。京都市子ども・若者支援地域協議会の協力体制は大変ありがたい。また、精神科医や臨床心理士、精神保健福祉士、弁護士、司法書士、税理士、企業の経営者といった専門家の皆さんや、近所のボランティアの方や主婦の方、不登校を克服した子のお母さんたち、こういう多種多様な人たちがサポーターとして協力してくれることで、必要なものが利用できている。
- 家族向けの支援としては、個別相談、訪問支援、保護者向けの勉強会、京都市教育委員会と連携して月2回実施するほのぼのワークショップ、大津市共同募金会の助成事業として月1回の母親塾を行っている。保護者が直接の活動に参加し、お手元の資料「親があって、子が育つ」というリーフレットも作成した。
- 毎日の活動として、スポーツや畑作業、野菜販売、コミュニティ食堂、フリースクールの補助、ホームページ制作、新聞制作を行っている。
- 安養寺にはつい立てがある。このつい立てを使うことで、何人かの子がとても元気になっていった。社会参加への階段としては、1対1でのかかわり、次に少人数、最後に、人数が大きいかかわりという方向に持っていくわけだが、少人数の活動すら難しい子にはこのつい立てがとても有効。同じ空間にいるのだけれども、緩いつながりのある安全な空間というものをつくり出すことができる。みんなと一緒で大丈夫だと思えるようになったときに、このつい立てが必要なくなって活動に参加することができるようになり、大人数の活動まで来ることができる子は実は多くいる。でも、その後の就労へのあと一歩が難しいということは、他の方が指摘されているとおり。
- 若者たちの言葉を紹介したい。「荷物は一つしか持てない」という言葉が印象的だった。就労までには階段状の道のりがあって、仕事を覚える前に場になれること、仕事を1つずつ覚えること、どれも時間がかかってしまうことがある。2年、3年という時間が必要なときもあって、でも、この過程を見守ってほしい。まだ覚え切っていないのに次の荷物を渡されると重過ぎてダウンしてしまう。ペースは自分で決めたい。訓練と言われるとやる気が出ない。仮につまずいてしまっても戻れる場所があれば安心してまたチャレンジできる。働いているという実感のためにも、自信のためにも、給料が欲しい。給料はやる気につながる。障害者手帳を取ることで受けられるサービスがあるのは知っているし、教えられるけれども、それには抵抗がある。これらが彼らの主張である。困ったときは誰かにすがりたいし、全てを受け入れてほしいと思うもの。完全に請け負える人や制度は本当にないと思うが、まずそこから始めてほしいと思っている。
- 不登校の親が困るのは、どこに相談していいかわからないこと。学校や病院や公共の用意してくれたサービスには、独特の縛りや空気、雰囲気がある。乗せられている感じとも言える。真摯に取り組んでいただいても「合わないな」と感じることがある。また、別の見方が欲しいと思うときもある。相談先や行き先が全くなくなってしまうと感じると、本人や家族が孤独感や絶望感にさいなまれてしまう。どんなところも完璧なところはない。子ども・若者支援協議会のようにいろいろな選択肢を公共機関で示していただけるのは本当にありがたい。情報は信頼の置けるところから欲しいと思っている。ぜひもっと広めていただきたい。
- 次に安養寺フリースクール不登校支援について説明する。これは、ひきこもりだったお兄ちゃんたち、お姉ちゃんたちがスタッフとして心の支援を子どもたちにしてくれている、京都府教育委員会認定のフリースクールである。たとえ一時期不登校になったとしても、誰かが子どもの心とかかわる方法を見失わなければ、子どもは休養を経て社会に戻っていくことができるのではないかと考えている。スタッフの支援はマニュアルでは全くなくて、子ども自身に生身の人間としてかかわっている。心を育てるために必要なのは「人」であって、「人」を超える万能なマニュアルはない。同じひきこもりだったからこそ、不登校だったからこそ、わかり合える雰囲気があるというところが、非常に武器になっている。
- 家族支援として、ペアレント・トレーニングや、学校内での味方探しを支援している。学校には、子どもの心の寄り添い方がすごく上手な先生やいいところを見つけるのが上手な先生方がいる。そういう先生が子どもの心の育ちを家庭にフィードバックしてくださる。心を育てるという意識が家庭の中で薄いとそのフィードバックを受け切ることができないが、家庭の中で先生方の心の育ちに関するフィードバックを受けようという意識があると、防ぐことができる不登校やひきこもりは増えていくと想像する。そういう学校現場にある資産を活かすためには、現場の余裕が必要。
- ほのぼのワークショップという母親塾は、主に母親の勉強会。経験者や専門家、複数の当事者と意見を交換し合うことで安心感が生まれ、また、自身の状況を話すことによって問題が整理できる。親御さん自身の自己肯定感や安心感を守ったり、孤立を防いだりすることが大事だろうと思う。心理的に重要な問題を抱えているケースについては、専門家への橋渡しもする。
- たとえ不登校やひきこもりであったとしても、個人的にごきげんな毎日を過ごすことはできるのではないかと思う。子どもにとっての安全地帯(基地)になる。これは、親ができたら、やはり一番いいと思う。安全地帯をつくることによって、心の健康を保って、失っている場合は取り戻して、見えているとおりではない心の発達段階にあった子が、それぞれの段階を経て大きくなれるのかなと思う。
- 家庭だけで、もしくは学校だけで心が育つのは難しい。完璧な人はいない。できるだけかかわる人が多いほうがいい。様々な時期や相手との出会いの中で心が育っていける。
説明後、以下の質疑応答が行われた。
- 高塚部会長代理
和歌山の様々な取組に関心をもっている。しかし、現地でよく言われるのは、例えばひきこもりについて、入口の対策はある程度できている、特に田辺市などは先鞭を切ったが、出口が問題になっているということである。困難を抱えている若者たちが社会復帰をしようとしても、働くところが田辺市にはほとんどない。そうかといって、大阪や東京へ出て行くということはまず無理である。何とかして地元で働く場をつくらなければいけないのだけれども、残念ながらできない。これは、秋田県にしても同様と思う。 働く機会を開拓していくことが必要である。今の企業としては、ひきこもり経験のある若者は欲しくないというのが本音だと思うが、農業や作業所というレベルで終わってしまっていては、ひきこもりの若者を吸収するには難しいだろうと思う。市区町村ではなかなか取り組めないけれども、県として、事業所に働きかけるなど、就労の道を探る努力は行われているか伺いたい。 - 秋田県
県庁の中も縦割りであり、雇用・労働政策は若者支援とは違う部署でやっている。ひきこもり・ニートに対しても雇用・労働の部局が熱心に取り組んでもらえると有難い。 秋田県は全体的に企業活動が低迷しており、一般の方でさえなかなか就労が難しい。比較的大きな企業でも解雇が行われている状況。県職員の給与を削減して財源をねん出し、今後2年間で約103億円を投入し、5千人を雇用するという施策も打ち出しているが、その中にニートやひきこもりの方が入ってこられるかというと、なかなか難しいのではないか。 部局ごとに適正な対応はしているが、ニート・ひきこもりの視点から全体的な取り組み、部局横断的、庁内一体的な取組までは行っていないのが実情だと、反省も込めて思っている。 - 和歌山県
自らの事業の予算が厳しい状況であり、ニート・ひきこもりの若者たちの就労のために一般企業に対して何かやっているかというと、やっていないと答えざるを得ない。県内には、サポステを経由して、就職する若者を受け入れた企業に対して奨励金を設けている市がある。 農業や共同作業所では厳しいという話があったが、過疎集落では収入も少ないかわり支出も少ないため、農業などで1人分ぐらいは食べていけるという実態もある。紹介した新宮市の「山の学校」の活動は、本当に限界集落と言われるようなところで、耕作放棄地が多いし、地域全体がお年寄りばかりという状況で、若い人が本当に非常に貴重な存在になっている。そうした地域課題とミックスした形で解決するというのがモデルになり得るのではないかと思って注目している。 - 秋田県
一般的に、厚生労働省の雇用対策などでは、いわゆる就職困難者を採用したら奨励金を与えるという手法が多くとられている。しかし、1年、2年働くと奨励金だけで給料の分は賄えないため、リタイヤする方も多いのではないかと聞いている。行政的な手法の中で就職困難者に対して短期ではなく継続的に支援するやり方はなかなか難しい。 「長信田の森診療クリニック」というところでは、地域の中でひきこもり経験のある若者を理解する企業を探して歩いている。大体今、20社ぐらいあると聞いている。こうした理解ある、心ある企業で、若者たちがまずは無償で3カ月間働き、そこで適性を見て、きちんと働けるようになったら本格的な採用に至るという取組をしている。実際に20名ぐらいがそのプロジェクトに参加していて、たしか12名ぐらいが企業の中で働き、うち5名ぐらいはもう少しで正社員になれそうだと聞いている。 これは今まで行政の中では考えられなかった手法である。就職困難者に対する就職支援については、こうした地道な取組が非常に大事になるのかなと思う。 - ビーンズふくしま
中間的な就労の場が必要である。ただ、そこを生み出すのはすごく難しい。例えば、日本型のワークシェアができないかと思う。オランダではワークシェアを行い多くの人たちが仕事についた実績がある。それを日本で全部そのままできるとは思わないが、若者の特性を踏まえながら企業活動の一部に参加することができたらよい。 - 花井委員
和歌山県から3つのNPOを指定して補助金を出しているというお話があったかと思うが、指定要件はどうなっているか伺いたい。 次に、秋田県の大変詳細なマップがすばらしいと思って見ていたのだが、どういうところに置かれているのか。若者が見られるような場所に置いておくとか、あるいは学校に置いておくとか、どのような活用がされているのか。 もう1点、ビーンズふくしまと恒河沙母親の会からは、家族に対する支援についてのお話があったが、父親も関わっているのか,もう少し教えていただきたい。 - 和歌山県
ひきこもり者社会参加支援センターの要件については、別部署の所管事業であるので詳細な指定要件を把握していない。この場での回答は差し控える。 - 秋田県
自立支援マップは、支援機関・団体はもちろんのこと、病院、特に精神科関係の病院に配っている。また、ホームページにも公開している。どこに置けば有効なのかというのは非常に悩んでいるところであるが、まず幅広に漏れなく配布している。 - 恒河沙母親の会
お母さんが相談に来られて、次に来るときに必ず、お父さんも連れてきてくださいと伝える。お父さんには決断力がある。例を言うと、子どもがどうしても家から出られなかったけれど,安養寺フリースクールに自転車で来ると言った。危ないところなので死ぬかもしれない。そこで,お母さんが「やめて、やめて」と言うのに、お父さんが「やるんだ」と言って、子どもが一生懸命、20分くらいかかって,交通量の激しいところをやってくる。そのときの子どもの自信のつけ方というのは全然違うし、こういうことはお父さんしかできない。そういう話をお母さんたちの勉強会で話題にしたら,「うちのお父さんも,うちのお父さんも」と言って,どんどんお父さんが出てきて,うまくいっている。 それから、働く機会について言えば、子どもたちは、訓練は絶対嫌だと言う。だからひきこもったときは,「1万円分働いてみない?」という。すると目がきらきらっと輝いて、その後、お父さんと一緒に仕事を探すことになった。どんなことでもいいからやれることをやってお金を得るというのはすごく大切なことだと思う。 - 明石部会長
秋田県に質問だが,マップはつくることも大事だけれどもつくるプロセスが非常に大事と思うが、プロセスの中で何か成果はあったか。 - 秋田県
県北、県央、県南の中で中核的な支援をしていただくところに働きかけをし、委託して作成した。作成の過程では関係団体を取材するので、自らの存在を関係団体に認知してもらうことで繋がりができるなど、中核的な支援団体を育成するといった視点でマップを作成した。 - 谷口委員
厚生労働省の社会保障審議会では、生活困窮者対策として、中間的労働市場をつくっていくことが検討されている。すばらしい取組の方向性の一つだと現場から感じているが、慎重に考えなければいけないところが幾つかある。まず第一に、事業者に対する補償が必要である。秋田県の話にもあったように、企業にこれ以上の努力を一方的に求めることはできないだろう。障害者の雇用が義務づけられ、高齢者の雇用も延長させられている中で、合理化も求められている。第二に、支援を受ける側、利用者側もしっかり保障してやらなければいけない。単なるただ働きとして安い労働者として使われる危険性やリスクが当然ある。 そこで、和歌山県にお伺いしたい。事業者に補償する場合にはいわゆる同業者に対する影響を考えなければいけない。例えば農業をやっている事業者に補助金を出した形で若者を受け入れてもらうと、安い資金で生産できるようになり、他の事業者に影響を与えてしまうことがあると思う。田辺市で行われている中間的就労の取組ではそういった競合があるのか、あるとすればどういった対策を打たれているのか、お聞かせいただきたい。 - 和歌山県
「町家カフェ」については、競合という意識は恐らくないのではないかと思う。 - 谷口委員
もう1つ留意しなければいけないのは、例えば農業で1つ打ち上げたとしても、それに当てはまらない子どもたちも必ず出てくる。しっかりとした多様性を認めていく、訓練が必要だからといって、全てを枠にはめて、習慣的に働けという話にはならないと思っている。この点について、親の会の皆さんに、中間的労働市場や訓練の場が提供されるとしたときに、親の立場として望むことというのが何かあれば教えていただきたい。 - 恒河沙母親の会
1人でどこかの仕事場に行って働くのは無理だけれども、毎日毎日会っている仲間たちと一緒に作業をするというのは、ものすごく力を発揮する。様々なひきこもりの団体があり、いろいろな特徴があるので、それを踏まえて生活の補償から働く場の補償がなされることが大切だと思っている。生活保護をもらった子はそこからはい上がれないという思いをしながら、どんどん生活保護に頼っていく。しかし、そのお金を働く場の補償に使えば、子どもたちは元気になって脱出することができる。働く場の保障として団体に財政援助をすれば、その団体の中でみなができる仕事が提供できる。先ほど申したように、お寺のお掃除などで「1万円で働いてみない?」と言ったら、本当に喜ぶ。そのあたりの予算の組み方をきちんとやっていただければ、もっと働く子どもたちが元気になってくると思っている。 - ビーンズふくしま
親の会という視点ではないのかもしれないが、コミュニティビジネスのようなものができないか考えている。例えば、高齢者の助けになり、それが収入になるという形で、お墓参りに行きたいが行けない高齢者の代わりにお墓掃除や供花をしたり、家の周りの草むしりなど高齢者が困っていることを若者たちにさせたり、話をしたい高齢者の話し相手に若者がなる。そういう仕組みがあるといいと思っている。 - 原田委員
不登校やひきこもりになっていない子どもや若者に対して、不登校やひきこもりになった人を理解してもらうような活動をしている事例があったら教えていただきたい。 - 恒河沙母親の会
一般の人たちとサッカーや野球、グラウンドゴルフしている。また、一般の方も含めて対象の、実際にひきこもりを体験した人の気持ちなどを理解してもらうような講演会を開いてお話をしている。 - 高塚部会長代理
「荷物は一つしか持てない」と若者たちが感じているとの話があった。階段状にレベルを上げていく道筋になっていて、安心できる場所を確保、自分で決めたい、給料が欲しい、普通でいたい、これは私が数年前に内閣府の調査を行った際にひきこもりの人たちが述べていることそのままである。多くのひきこもりの人たちがこういう感覚でいることがわかった。 給料が欲しい、自分で決めたい、そこを大事にしてあげなければいけないが、問題は、出口をどうやって確保していくか。確かに農業も大事、介護も大事だが、人手不足のところへ当てはめればいいのではないかという少し安易な発想があるのではないかという気もしないではない。農業が好きならばそれはいいだろうし、介護が好きならばそれでいい。しかし、日本に70万から100万人ぐらいいるだろうと推定されるひきこもりの人たちみんながそれで満足するかというと、決してそうではないだろうという気がする。お寺のお掃除をするというのも大事なことだし、そういうことを通して社会訓練をしていくことも大事だけれども、下手をするとボランティア的な段階で終わってしまう可能性もある。どうやって収入や生活の自立につなげていくかを我々は考えていかなければならないと思う。 例えば、鉄道事業者に駅には必ず人を置くようにさせ、無人駅に鉄道の好きな若者を配置して、普通の給料は出せないとしても何らかの収入を得るような、そういう工夫をしていくことがひきこもり対策においては次のステップとして大事なことではないかという気がしている。そのあたりについて皆さんがどのようなお考えか少し意見を聞きたい。 - 恒河沙母親の会
お寺の掃除にしてもフリースクールの補助作業にしても、ボランティアは一切させません。フリースクールのお母様方から1日2,500円をいただくが、それをみんな子どもたちに与え、「みんなよく考えて。フリースクールの子たちは2,500円払って来ているのよ。そうしたら、あなた方はどうしたらいいの。働くってすごいことだよ。1,000円働くって大変だよ」と教えていく。お寺のお掃除も、したら、きちんとお弁当を出して、お給料をあげる。みんなただ働きしないようにさせている。 とにかく働かせることだと思う。500円でも100円でもいいから、ボランティアではなくて働いて自分でお給料をもらうことが、子どもたちの自信につながると思う。 - ビーンズふくしま
中間的な労働市場がビジネスとして成り立つのかというと難しさがあるのだろうと思うが、幾らかでも稼いで、最終的に生活保護を受けるようにならないようにすることが大事なのではないかと思っている。国が生活保護費として負担するのか、その前の段階にお金を投入して中間的な労働市場をつくるのかをてんびんにかけ、中間的な労働市場をつくる方にお金をかけて試行錯誤しながらつくっていくという施策を取ってもらえれば、私たちもいろいろなことにトライできる。 中間的な労働市場をつくるためには,実際にそれをやる人が必要。何らかの手当がいただけると現実的になっていく感じがする。 - 明石部会長
和歌山県は働き場所の創設にいろいろ取り組まれているが、高塚委員の問題意識に対して、例えば障害者のように、不登校・ひきこもりの方に対して雇用を保障する法律が必要なのか、そこまで行かないけれども働いて賃金を稼ぐための施策があればいいと思うのか、和歌山市とか田辺市、新宮市の実践から何か見えてくることはあるか。 - 和歌山県
「コミュニティランチ和」に関しては,最初は商工関係のコミュニティビジネスの補助金が出ており、町家カフェに関してはA型作業所の指定を受けていると思うがほとんど行政はタッチしていない。不登校・ひきこもりの子たちの雇用に係る法律ができればいいなとは思う反面、行政としては、その法律を適用させるにあたり,どうやって不登校・ひきこもりというのを定義づけるというのが,障害者とは違って難しいと思う。 雇用を保障するということについては,やはり出口がないということを何とかしない限りは難しいと思う。出口を民間レベルでつくる取組をどんどん活性化すべきなのではないかとは感じる。 - 明石部会長
大洲市教育委員会にお聞きしたい。スクールソーシャルワーカーの配置を国は進めているが、大洲の経験から、国の施策としてもっと増やすべきか、それともこの程度でいいのか、何かご意見があれば教えていただきたい。 - 大洲市教育委員会
もっと増やしていただきたい。子どもを取り巻く環境は本当に複雑化しており、専門的な資質を身につけたソーシャルワーカーやカウンセラー、臨床心理士の配置をぜひお願いしたい。 - 安藤委員
話を聞けば聞くほど、当たり前のことというか、何でこれが日本には機能していないのだろうか、NPOの方々が本当に努力をしてこぼれ落ちないように子どもたちを救っているという現状があると思う。 昨今の政局を見ても、若者支援や少子化の問題が政策の優先上位に一向に上がってこない。 ドイツでは連邦政府が家族省をつくり、州政府がきめ細かい支援を行っている。多世代の家のようなものがきちんと政策として位置づけられていて、移民の方も受け入れながら機能していた。根底にあるのが青少年・若者の育成であり、国の将来を担う人材をどうやって国が育成するか、財源をどう充てていくかということが、同じ少子高齢化のドイツではきちんと政策の一番上のほうにあって、機能している。でも、日本はそこがいつまでたっても上に上がってこないということを思う。 政局も流動化しているが、この問題がどういう政策順位になっていくのか、私は国家戦略としてまず第1に上げるべきだと思っているが、なかなかこれが見えてこない。今日はせっかく少子化や若者支援を担当する審議官や参事官がいらっしゃるので、意気込みを語っていただけないかと思う。 - 伊奈川室長
私は現在、少子化対策、そして青少年対策を担当するポストにある。前職は厚生労働省の社会保障担当参事官であり、社会保障と税の一体改革にもずっとかかわってきた。その中では、従来、高齢者あるいは高齢世代にかなり財源が投入されてきたのに対して、今回は人生前半の社会保障、そして、それを全世代型にしていくということで、ようやく消費税の中で子ども・子育てに0.7兆円、さらにそれ以外も合わせて1兆円超ということを目指していこうということになってきた。 子ども・子育て、その先に青少年がある。そして、その先には大人があり、高齢者がある。そういうライフサイクルで見ていかなくてはいけない。そういう点で、やはりこの青少年の関係施策というのは特に大事ではないかということを感じている。 私の担当している分野には国際交流というものもあり、海外の青年たちともいろいろと交流する機会があるが、子どもや若者は国際社会の中を生きている。また、先ほど限界集落の話もあったが、高齢化が必然的に進む日本において地域を子どもや若者が元気にしていく。将来明るい展望が開けなければ、少子化もなかなか解決していかない。そういった点で、この子ども・子育てと青少年対策を一体として取り組んでいきたいと考えている。
以上