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資料3


米国フルタイムサービス事業
「アメリコー(AmeriCorps)」について


日本青年奉仕協会
村上 徹也

文化的社会的歴史的な背景

 米国におけるボランティア活動やコミュニティサービスの文化的、社会的、歴史的な背景を説明する際に、「米国では、政府や行政機関ができる前に、人々のボランティア活動によって国づくり、まちづくりが行われていた。解決されるべき社会課題が生じたときに、市民が自発的に組織をつくり事に当たるのは米国の伝統である」というようなことが一般的に言われている。このような意識は、今でも米国市民の中に根付いていて、ボランティア活動やコミュニティサービスを行うことは、市民としての自由と義務であると考えられている。
 また、もともと先住民のネイティブアメリカンが住んでいた広大な新大陸に、世界中からあらゆる人種の人々が移り住んで、短期間に先進国家を築いてきた米国では、その多様性が社会のダイナミズムを生み出していると同時に、社会の一体化が常に課題となってきた。そして、国家的な危機が生じた際に、国民を一致団結させる象徴として、ボランティア活動やコミュニティサービスが国家的事業(以後、ナショナルサービス)としてたびたび取り組まれてきた。
 例えば、大恐慌の時代には、ボランティアによる国立公園の整備や建設事業「市民保全部隊(CCC-Civilian Conservation Corps)」が国家的に行われ、失業者が何百万人も参加した。東西冷戦時代には、ケネディ大統領によって青年たちが海外協力ボランティア活動を行う「平和部隊(ピースコー)」が創設された。深刻な国内の貧困問題に立ち向かうためには、青年たちが長期間国内でこの問題に取り組む「VISTA(ボランティア・イン・サービス・トゥ・アメリカ)」が創設され、非常に大きな成果を挙げてきた。
 さらにさかのぼると、教育学者であり哲学者でもあったジョン・デューイとともに社会貢献を通した学習に関する知的基礎をつくりあげていた哲学者ウィリアム・ジェームズが、1910年に論文「The Moral Equivalent of War(戦争に代わる道徳的行為)」において非軍事的ナショナルサービスを構想した。これが、その後に様々な形で行われてきた米国のナショナルサービスの原点と言える。


アメリコーの政策的背景と制度の概要

 ナショナルサービスを含むボランティア活動およびコミュニティサービスの推進強化を図る政策を打ち出したクリントン政権は、1993年に「全国および地域サービス信託法1993(National and Community Service Trust Act of 1993)」を議会の承認を得て施行した。これによって、その政策推進を行う組織としてナショナルサービス公社(CNS-Corporation for National Service、現在はCNCS-Corporation for National and Community Service、以後CNCS)が設立された。それにともないVISTAやRSVP(退職高齢者ボランティア事業-Retired and Senior Volunteer Program)などのナショナルサービスは、CNCSの管轄事業とされた。
 また、CNCSは、既存のVISTAを含めて、新たなナショナルサービス事業枠「アメリコー」を発足させた。アメリコーは、18才以上の市民が参加して国内の貧困問題解決に1年間取り組む(住民にたいする直接的なサービスではなく、プランニングや財源づくり、啓蒙活動など事務局的な活動を行う)「AmeriCorps* VISTA」のほかに、新たに2つのナショナルサービス事業を発足させた。一つは、市民保全部隊をモデルとして、18才から24才までの青年が10人から15人のチームになって10ヶ月間合宿をしながら、地域の教育、環境保全、さらには災害救援などに取り組む「AmeriCorps* NCCC」(NCCC-National Civilian Conservation Corps)である。もう一つは、CNCSの助成を受けて、全国各地の非営利民間団体、行政機関、宗教関連団体などが、17才以上の市民に10ヶ月から12ヶ月のフルタイムサービスの機会を提供する「AmeriCorps* State and National Direct Service」である。
 アメリコーの参加者には、CNCSから生活手当が支給され、医療保険などの福利厚生制度の利用に関する支援も受ける。また、CNCSは、活動終了後に大学や大学院の学費または学費ローンの返済にあてる奨学金を、一人あたり4,750ドル(一時金として1,200ドルを受け取る選択肢がある)を支給している。
 2001年9月11日の同時多発テロを受けて、現在のブッシュ政権は、テロとの戦いに関連して、ナショナルサービスの推進強化策を打ち出し、CNCSが管轄する各種のナショナルサービス事業と、平和部隊(Peace Corps、ピースコー)をまとめて推進する「アメリカ自由部隊(USA Freedom Corps、USAフリーダムコー)」を発足させた。USAフリーダムコーは、「生涯で4,000時間(約2年間)の社会貢献活動を行おう」というブッシュ大統領の呼びかけに対応して、市民によるサービスの文化を促進し、社会の一員としての市民意識、社会に貢献する責任感を高める啓蒙活動を行っている。
 このブッシュ政権によって、テロとの戦いとナショナルサービスが関連づけられたことにより、アメリコーのVISTA以外の事業における活動内容に、あらたに国家保安活動(Homeland Security)として、テロ防止のための警備、テロが起きた際の救援活動、テロの被害者の支援などが加えられた。


AmeriCorps* VISTAの概要

 この事業は、「貧困撲滅戦争(War on Poverty)」の一環としてジョンソン大統領が、1964年に創設したナショナルサービスである。以来、40年近くの間、一貫して貧困問題の解決に向けた様々な地域活動に、市民のフルタイムサービスを結び続けている。参加者は、全国の非営利民間組織、行政機関などにおいて、識字、保健衛生事業の改善、失業対策、起業支援、住宅提供、デジタルデバイドの解決などに、専従者として1年間取り組んでいる。2001年度には、約6,000名が、約1,200のプロジェクトで活動を行った。
 CNCS本部は、参加者の募集と書類の審査、配属先の調整、事前研修の実施、生活手当や参加旅費の支給、奨学金の支給、医療保険など福利厚生に関する支援、受け入れ希望事業の審査、受入担当者への研修などを行う。
 各州には、CNCSのナショナルサービス事業を推進する事務局が設置されている。各州の事務局は、参加者の活動のモニタリング、助言指導、初期中間研修の実施、受入先への助言、助成金の支給などを行っている。
 事業の大まかな流れは、下記の通りである。

 (1) CNCSによる募集広報
印刷物、インターネットなどによって常時行われている。OB・OGをネットワークする組織があり、募集広報の支援も行っている。
 (2) 参加申し込み
オンラインまたは郵送で応募する。常時受け付けているが、書類審査と配属先の調整のために、活動開始希望時期の約4ヶ月前の応募が奨励されている。書類選考を通過して、配属先の調整が済むと、事前研修の案内と参加の手引きなどが送付される。
 (3) 事前研修
人数をまとめて、地域や時期に応じて開催される。参加のための旅費は、CNCSの規定によりコースが決められ、全額支給される。CNCSのスタッフ、OB・OG、受入先スタッフ、外部講師などにより、3日間で活動のオリエンテーションとグループワークを通じた活動のためのスキルアップを行う。ここで、最終的に適性が判断されて、参加の可否が決定する。
 (4) 活動開始
住居は、支給される生活手当の中で家賃を払う。活動先が手配する場合もあれば、参加者が自分で探す場合もある。配属後、3週間以内に活動先による活動のためのオリエンテーションと研修が実施される。
 (5) 初期中間研修
活動開始後3ヶ月以内に、配属地域のCNCS州事務局が初期中間研修を行う。活動のために必要とされる具体的なスキルを向上させるのが目的。個々の参加者に応じて、研修の内容が組み立てられる。
 (6) 期間中の個別研修
個々の活動を発展させるために必要な他団体での研修、研修会への参加などを活動先が積極的に計画するように奨励されている。研修経費は、CNCS州事務局から支援される場合があるが、審査がある。
 (7) CNCS州事務所によるモニタリングと指導
参加者と活動先の状況をCNCS州事務局が訪問によってモニターし、必要に応じて、助言指導を行う。
 (8) VISTAリーダーによる助言指導
リーダー研修を受けたVISTAまたはピースコーの経験者が、全国で参加者と活動先にたいして助言指導を行っている。
 (9) 活動終了と事後のフォローアップ
活動が10ヶ月目になると、CNCS州事務局から、事後の進路に関する調査書、奨学金受領に関する手続き書類、活動の引継手引きなどが送付される。進路に関しては、活動先からの助言が行われるが、CNCSとして積極的な情報提供や仲介などはしていない。活動先から事後に参加者が居住する場所への旅費は、CNCSの規定に従って支給される。

AmeriCorps* NCCCの概要

 AmeriCorps*NCCCは、青年を対象とした合宿形式のフルタイムサービス事業である。年齢の上限が24才までとされていることからも分かるとおり、他のアメリコー事業と違い、社会における実体験や共同生活を通して、青年たちの市民としての自立や社会に貢献して生きる力を育むというねらいがより強く意識されたプログラムである。参加者募集パンフレットにも、青年の変身願望や成長意欲に訴えかける「冒険」「挑戦」「学び」「ヒーロー」などという言葉がちりばめられている。
 参加者は、10?15人が一チームとなって、自然公園の森林保守作業、低所得者向けの住宅建築、小学校での学習指導などの活動を、6?8週間行っては、次の活動に移るという10ヶ月間を過ごす。災害が起きた際には、いち早く被災地に派遣され、救援活動に従事する。こうした活動に必要な器具の操作、救急法などの研修をその都度受けるし、軍隊式の生活による集団生活の規律やリーダーシップの学習も大きな要素である。
 教育的な側面の強いプログラムではあるが、市民の自発的な活動によって国家を維持発展させるという米国の伝統に則り、安全で住み良い社会をつくるために青年の力を最大限に活用するということも、充分に配慮されている。民間非営利団体や行政機関との連携によって、個々の活動の質を高め、持続的な成果が得られるように努力が続けられている。
 事業の大まかな流れは、下記の通りである。

 (1) CNCSによる募集広報
印刷物、インターネットなどによって常時行われている。OB・OGをネットワークする組織があり、募集広報の支援も行っている。
 (2) 参加申し込み
オンラインまたは郵送で応募する。常時受け付けている。
 (3) キャンパスでの合宿の開始
書類審査を通過すると、CNCSから全国に5ヵ所あるキャンパス(寮)への集合と参加手続きに関する書類が送付される。交通費は、CNCSの規定に従って全額支給される。キャンパスでは、リーダー研修を受けたプログラムの経験者がチームリーダーとしてあてがわれ、その指導のもとで合宿生活が行われる。
 (4) 研修
キャンパスに入寮後、3週間に渡りキャンパスのスタッフ、AmeriCorps* NCCCスタッフなどによる活動と生活を充実させるための研修が行われる。さらに、個々の地域活動に向けて、その都度、受入先とキャンパスのスタッフが協力して、事前の研修が行われる。これらの研修は、全体のサービス時間(1,700時間)の20%を超えない範囲で行われる。また、参加者は、活動日誌、活動の達成目標と実現の度合いを記録するポートフォリオ、自己の学習目標とその達成度を記述する計画書などを作成しなければならない。これらは、CNCS、活動先、リーダーなどに公開され、事業の質を向上させることに役立てられる。
 (5) 活動プログラム
活動のプログラムは、地域の団体、組織からCNCSが申請を受け付け、チーム活動としての適性を判断する。活動を要請する団体、組織は、キャンパスから移動に90分以上かかる活動を要請する場合、宿舎と食事の提供が求められる。移動の交通費は、CNCSが負担する。活動先は、活動に必要な機材や物資を提供しなければならない。また、参加者は、チーム活動に影響を与えない範囲で、キャンパスのディレクターの承認を得て、少なくとも80時間のコミュニティサービスを単独で行うことが求められている。
 (6) 活動終了とフォローアップ
参加者は、活動期間を満了するとCNCSからその証明と奨学金に関する通知、手続き書類が与えられる。進路についての個別の指導は、制度的には行われていない。活動終了後の居住地までの旅費は、CNCSの規定に従って支給される。

AmeriCorps* State and National Direct Serviceの概要

 年間約44,000人もが参加するこの事業は、他のアメリコー事業と違い、個々の活動先が主体的に行うプログラムに、CNCSが一定の条件で助成を行うという形式である。他の事業と同様に、参加者は活動中の生活手当、活動終了後の奨学金を支給されるが、活動時間がフルタイム(年間1,700時間)からミニマムタイム(年間300時間)まで6つのパターンに分けられ、それに応じて生活手当、奨学金の支給額も分かれている。
 この事業は、各州の知事が任命した委員会が地域組織からの要請にたいして審査を行い、助成とモニタリングを行う「AmeriCorps* State」と、州を越えて活動している組織のプログラムにたいしてCNCSが直接助成を行う「AmeriCorps* National」に分かれている。また、その他にも、生活手当の支給や福利厚生の支援は行わず、活動先にたいして少額のプログラム運営費を助成する「AmeriCorps Education Award」(44,000人の内の13,000人がこのプログラムの参加者)と、青少年の人格形成や能力向上のためのメンタリングを行うフルタイムサービス「AmeriCorps Promise Fellows」(44,000人の内の500人がこのプログラムの参加者)がある。
 いずれの形式のプログラムも、個々の活動先が参加者の募集や研修を主体的に行い、各州の委員会またはCNCSがそれらの適性や実施状況を監督するが、参加者の選考にはタッチしないという方式である。CNCSは、全国で行われるプログラムのデータベースを公開して、個々の活動先の参加者募集広報を支援している。


日本におけるナショナルサービスの可能性

 米国におけるナショナルサービスは、歴史的にも、また現在の社会情勢においても、国民の大多数による賛同を背景として、巨大な国家予算が投入されて実施されてきた。また、それだけの規模の事業にたいして、充分な参加者が以前も現在も存在している。
 日本において、ボランティア活動および体験活動の推進を考える上で、米国のおけるナショナルサービス推進の歴史と現状は、大いに参考になると言えるが、両国の歴史や文化、社会状況の違いを充分に理解しておくことも同時に必要である。米国並みの予算を国家として拠出することは、国家予算の現状から見ても、また、国民の理解が得られるかという視点からも、ほぼ不可能と言える。さらに、そのような事業に充分な参加者が得られるのか、地域の受け入れ態勢はあるのかという点でも、早くから官による社会運営のシステムが確立され、市民による自発的で自由な地域づくりという伝統が根付いていない日本では、非常に懐疑的にならざるを得ない。
 なおかつ、今後の日本における健全な市民社会の発展を考える上で、多くの人々の自発的な社会貢献意欲を盛り上げ、その意欲が充分により良い社会づくりに生かされるシステムをつくることは、望ましいというよりもまさに必要なことであると考える。それは、官と民という立場を越えて、社会全体の共通課題として意識されるべきである。
 今回、米国のナショナルサービス事業「アメリコー」を研究して、今後の日本における同種の事業展開を考える上で得たヒントが、いくつかある。一つ目は、このような活動が参加者にとっての学びの場として非常に効果的な機会となることは、事業を組み立てる基本的な考え方として押さえておくべきだが、だからといってこうしたプログラムが教育的側面からのみ検討されるというこれまでの日本の状況は、偏っているのではないかということである。基本として押さえられるべき「自発的で自由な市民による社会貢献の力を、より良い社会づくりに最大限生かそう」という思想が欠けては、このような事業推進に国家や行政機関が関わることへの社会のコンセンサスも、活動を受け入れる地域社会の積極的な協力も得られないのではないか。しかも、充分に貢献の成果が自覚されてこそ、活動を行う本人の学びも深まると考えられる。つまり、人づくりを考える上でも、まず社会が市民によるどのような貢献を必要としているのか、ニーズの観点から推進策を練るべきではないだろうか。
 米国の場合、貧困問題に対応するVISTAはもとより、他のアメリコーのプログラムでも、青少年の教育や健全育成、環境問題、安全な地域づくりなど、米国社会がまさに直面している社会課題にたいする取り組みが重点的に行われている。日本でも、こうした課題は、形が違っていても、共通するのではないだろうか。学校に通っていない子どもたちの自宅における学習指導、引きこもりの青少年と地域社会との接点をつくるための関わりなどのメンタリングを専門組織の協力を得て広げるというようなことは、非常に社会的にニーズが高いのではないだろうか。
 また、長期間の活動を広げるためのシステムについても、ヒントがあった。まず、アメリコーの奨学金支給制度は、単に参加を奨励するためのインセンティブというだけではなく、実社会の様々な課題を発見し、その解決に取り組む経験を積んだ多くの人々が、大学や大学院において目的を持って学習し、その成果をさらにより良い社会づくりに生かすという、社会にとって非常に有意義な循環を生み出している。例えば、日本においては、かならずしも貧困家庭の子どもたちが利用するとは限らなくなってきている各種の団体や大学の奨学金制度とタイアップして、フルタイムサービス事業参加者への奨学金支給制度をつくることはできないのだろうか。
 また、AmeriCorps* NCCCのようなプログラムを日本で実施するとすれば、国や自治体レベルの少年自然の家や青年の家をそのキャンパスとして活用し、環境保全活動や過疎地域の福祉事業などに、青年たちの力を生かすというのはどうだろうか。どちらも日に日に切迫する日本の社会課題なのだから。
 もちろん、そうした事業が単純に実現できるわけではなく、参加者の福利厚生をどうするのか、活動の内容を充実させるための支援体制をどうつくるのかなど、課題は山積みである。しかし、そうした課題は、長い歴史の中で有効なシステムを綿密に積み上げている米国の実践から、学べるものがたくさんある。米国の協力を得てスタッフや指導者の養成研修を企画してはどうだろうか。
 最後に、日本ではこのような体験的活動について奉仕活動という表現や、義務化案についての議論があったが、米国においてはそれをボランティア活動と呼ぶか、コミュニティサービスと呼ぶかにかかわらず、参加者の自由意志が尊重されているということを付け加えて、拙文のまとめとしたい。


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