若者の包括的な自立支援方策に関する検討会報告

平成17年6月


目次


はじめに

近年、我が国の若者をめぐっては、就労の不安定化や親への依存の長期化など社会的自立の遅れが新たな課題として生じている。そして、この問題の背景には、若者の雇用情勢の変化といった短期的な原因のみならず、少子高齢化、核家族化、情報化、消費社会化やこれらに伴う人々の価値観の変化など、我が国社会や青少年をめぐる環境の大きな変化が存在するものと考えられる。

本検討会においては、このような問題意識の下、若者の自立をめぐる問題を青少年の育成という幅広い観点からとらえ、その支援方策について総合的、包括的に検討を行ってきた。そして、若者の自立はいわば青少年期の育ちの結実であり、家庭、学校、就労、地域社会といった様々な分野における取組の結果であることから、これら各分野の課題を明らかにし、包括的な自立支援方策を推進することの重要性について述べた。

昨今の問題状況を踏まえれば、いわゆる「ニート」と呼ばれる若者など、特に自立に困難を抱える者を中心に、その支援方策の検討を行うことが喫緊の課題であった。本報告書においては、中間取りまとめの「座長試案」で提示した事項を掘り下げ、今後これらの若者を支援していくための布石となる具体的な提案をすることができたものと考える。

本検討会においては、平成16年9月から17年6月までの期間、計13回にわたる会議を開催し、また17年3月に公表した中間取りまとめに対する意見募集の結果も踏まえて検討を行い、ここにその結果を検討会の提言として取りまとめた。政府の関係者はもちろん、青少年育成にかかわる多くの方々が、本報告書の趣旨を踏まえ、若者が力強く自立し、活躍していくことのできるような社会の構築に向け努力していただくよう期待したい。

平成17年6月 若者の包括的な自立支援方策に関する検討会

1 若者の社会的自立をめぐる課題−若者の「社会的孤立」

(1)若者の自立をめぐる問題状況とその背景

(問題状況)

若者から大人への移行期の長期化は、多くの先進国に共通した課題であるといわれている。我が国においても、高度成長期を経て経済・社会が成熟し、多くの若者にとって親の保護の下で長期間生活を続けることが可能となっている。また、人々が多様な生き方を模索し、「卒業、就職、結婚、子育て」というライフコースが既に自明のものとはいえなくなる中で、若者にとって職業を得て親から自立することの意義自体が分かりづらくなっている面もあるだろう。さらに、近年の長期の景気低迷により企業等が若者の雇用を抑制し、学校から雇用への移行もかつての円滑さを失い、若者の経済的自立に向けたルートも不明確になってきている。

このような背景の中で、我が国においても若者の社会的自立の遅れが指摘されて久しいが、近年では、問題が職業的自立を果たせない若者の急増として現れ、社会的な問題ともなっている。具体的には、厳しい雇用情勢の下、いわゆるフリーターなど就労状態の不安定な若者や、学校を卒業後も無業でいる若者など、経済的に自立できない若者が増加し、我が国社会の活力にも影響を及ぼしかねない事態としてとらえられるにいたっている。

例えば、内閣府が実施した「青少年の就労に関する研究調査」によると、2002年時点における15歳から34歳、独身で通学も仕事もしていない者(失業者に相当する者を含む。)は213万人に及び、1992年からの10年間で約80万人もの増加を見せている(資料1)。これらの者は、特に20代という職業人としての基礎を固めるべき世代において多く、20歳から24歳において人口比で8.6%、25歳から 29歳において同7.4%に及んでいる。

また、無業で高校を卒業する者の数も依然として高止まりで推移しており、さらに、就業した若年層についてみても、近年ではパートタイムなど不安定な職に就く者の割合が急増し、離転職率も上昇傾向にあるなど、若者の就労をめぐる状況は極めて厳しい。

これら若者の職業的自立をめぐる問題はさらに、単なる雇用や就職の問題にとどまらず、若者をめぐるより深刻な問題状況をうかがわせるものとなっている。例えば、前出の内閣府調査についてさらに詳しくみると、求職活動を行っておらず、いわゆる「ニート」(通学も仕事もしておらず職業訓練も受けていない人々)として理解される若者が約85万人に達する(*)。さらに、そのうち就業希望さえ表明していない若者が約半数を占めている(約42万人)。

もちろん、これらの若者が実際にどのような問題を抱えているかについては、この調査からは明らかではない。しかしながら、就業希望を表明しない若者のうち約7割は過去に就業経験さえ持っていないこと、これらの若者には中学・高校卒など比較的学歴の低い者が多く、また低所得世帯に属する者の割合も近年増加していることなどにかんがみると、これら無業の若者が置かれた大変厳しい状況が想像される。

さらに、若者の自立をめぐっては、より深刻な問題として、従来から社会的ひきこもりの増加も指摘されている。2003年度において子どものひきこもりから推測される全国のひきこもりのいる世帯数は32万世帯に上ると推計している報告がある。このようなひきこもりの若者の多くは、社会への参加を欠いたまま親に依存し続けざるを得ず、また近年ではひきこもりの平均年齢の上昇が指摘されるなど、問題のさらなる深刻化も懸念されている。

以上のように、若者の社会的自立をめぐる問題は、職業的自立を果たせない若者の増加や、さらには社会の中で活動の場を求めることのできない、いわば社会とのつながりを失った若者の増加として現れている。このような社会的に孤立した若者の増加は、本人の幸せや自己実現という点からみても、また我が国社会の活力という点からみても、将来にわたる重大な問題である。若者の自立支援は国をあげて取り組むべき喫緊の課題となっている。

(*)同調査においては、総務省「就業構造基本調査」を特別集計しており、集計に当たっては、青少年の問題を幅広くとらえるため、独身で通学も仕事もしておらず、「家事」をしていると回答した者(約20万人)も対象に含めている。

(問題の背景)

最近では、いわゆる「ニート」と呼ばれる若者の増加について社会的関心が高まり、マスコミ等において取り上げられる機会も増えている。ここでは、特にこのような若者を中心に、若者の自立をめぐる問題の背景について述べたい。

まず、若者の自立に、近年の厳しい経済状況や若者の雇用情勢が影響を与えていることは否定できないものと思われる。すなわち、15〜34歳の完全失業者数は、2004年は148万人と、1994年の93万人から大幅に増加しており、若者の雇用機会そのものの減少という大きな要因がうかがえる。また、若者自身が、厳しい就職状況や、学校や家庭における価値観と職場における価値観のギャップを前に立ちすくんでしまうといったこともあるのではないかと考えられる。

いわゆる「ニート」の問題等について論じられる場合、このような若年雇用をめぐる状況に加え、若者自身の問題点が指摘されることも多い。例えば若者が無業に留まる原因について、自分の将来に対するビジョンを持てないでいることや、職業に関する知識の不足、職業意識や仕事に対する忍耐力のなさ、またそもそも職を得て親から自立しようとする意欲が乏しいこと等が指摘される。さらには、少子化の進展や地域における集団遊びの機会の減少等を背景に、子どもの頃からコミュニケーション能力などが育成されておらず、対人関係を築いたり修復したりする能力が弱いこと等も考えられる。

しかしながら、冒頭で述べたように、若者から大人への移行期の長期化は他の先進国にも共通の課題であり、欧米の多くの諸国においては若者の自立を社会的に支援する体制を整え問題に対応してきている。このことを踏まえると、我が国におけるより重要な課題は、移行期が長期化し、若者の自立のための環境整備や社会的サポートが必要となっているにもかかわらず、それに十分対応していない社会の側にあるのではないか。例えば、職業的自立についてみても、新規一括採用による学校から仕事へのスムーズな移行という日本型のシステムが崩れる中で、これに対応し得る社会的仕組みは整備されていない。2以降で具体的に述べるように、若者の自立という課題に向けて、我が国でも若者を支援する体制を早急に整備する必要があるものと考えられる。

なお、自立をめぐる問題の背景にある社会的状況や格差の問題について付言したい。前出の内閣府調査にもみられるように、無業の若者の中でも就業希望を表明していない若者には、比較的低学歴の者の占める割合が高い。また、いわゆる「ニート」のうちには、貧困や複雑な家庭状況等の原因や、不登校など学校での問題、心身の障害、さらには地域の産業衰退等本人の意欲とは別の様々な原因による者も存在すると考えられる。このように、若者の自立をめぐる問題状況には、本人を取り巻く経済・社会状況等が明確に影響を与えているものと考えられ、これら背景にある問題にも今後は目を向けていく必要がある。

最後に、別の観点から、我が国の経済・社会の成熟によりいわゆる「ニート」が家庭にひきこもる余裕ができたということも指摘できる。しかしながら、将来的には親世代に経済的余裕がなくなり、問題が一層深刻化するおそれがあることを忘れてはならない。これは、前出の内閣府調査において、「非希望型」の若者の属する親世帯の収入が近年急速に悪化している状況がみられることからも、十分に予想されるシナリオである。

以上のように、若者の自立支援方策の検討を進めるに当たっては、多様な背景や要因を視野に入れる必要がある。

(2)目指すべき自立の概念とその目的

(社会的「自立」の概念)

ここで、目標とすべき若者の社会的「自立」の概念と、自立を目指すことのそもそもの目的について、改めて整理しておきたい。

これまで述べたように、若者の社会的自立をめぐっては、就業による職業的自立という課題と、親からの精神的・経済的自立という課題とがみられるが、問題はさらに、若者が日々の生活において自立しているかどうか、社会に関心を持ち公共に参画しているかどうかなど、多様な課題を含むものといえる。

また、これらの課題は相互に密接に関わり合っている。例えば、職業的自立を果たせない若者の多くは未婚のまま親に依存し続けざるを得ず、また責任ある個人として社会に参加するのが難しい。逆に、例えば職業的自立が親からの精神的・経済的自立を容易にし、それらがあいまって、現実的な責任感に裏打ちされた公共への参画意識を高めるとも言える。したがって、若者の自立支援に当たっては、これらの課題に向け施策を総合的、包括的に実施していくことが求められる。

なお、これらの課題は若者の自立について判断する際の共通の視点ではあるものの、人々の生活様式や価値観が多様化した現代の我が国においては、自立の在り方は一様ではない。すなわち、自立しているかどうかは、個人個人について、その置かれた家庭環境、経済状況等の社会的状況などに応じて判断されるべき問題であり、また、自立に向けた支援の必要性やその程度についても、個々に判断されるべきことがらである。さらに、自立に至る精神的成熟の速度にも個人差があってしかるべきものと考えられる。このように、若者の自立についてみる際には、常に若者一人ひとりにとってふさわしい在り方を考える必要がある。

(自立の目的)

若者の自立を支援する第一の目的は、いうまでもなく「若者自身のため」である。すなわち、若者の自立支援は、若者が独立した個人として社会の中に地歩を築き、自己実現を図り、豊かな人生を送る手助けをすることに他ならない。

そして、第二の目的として、将来にわたる我が国社会の活力の維持ということがある。すなわち、若者一人ひとりの自立を支援することは、若者の世代を世代として独立させ、社会の担い手として育成することでもある。若者及びその世代は社会の貴重な資源であり、税や社会保障制度等を支えることはもとより、社会の持続と発展のために、若者の活力・思考力・創造性を生かしていくことも、自立支援の重要な目的である。

2 若者の自立に向けた取組

(1)若者の包括的な自立支援方策の推進

(社会的コンセンサスの形成)

若者の自立の問題について考えるとき、そもそも我が国においては、欧米諸国とは異なり、伝統的に個人の自立が明確な社会的目標とされてこなかったという特徴が想起される。例えば、我が国においては従来から若者の自立を個々の家庭の役割と考えがちであり、親に依存し続ける若者の問題を親の責任や家庭環境の問題とする傾向がみられるところである。

しかしながら、自立支援という課題に社会全体で取り組んでいくためには、我が国においても若者の自立に価値を認め、社会的な目標としていくことが必要である。そして、若者を自立させ、次世代を育成するためには、家庭はもちろんのこと、国や地方自治体、企業、民間団体等の社会全体が若者の自立の必要性を認識し、協同していくことが求められる。我が国においても、いわば自立促進型社会の形成に向けた一歩を踏み出すべきである。

そのためには、理念的ではあるが、社会と若者のそれぞれが、若者の自立に向けた責務を負っていることをしっかりと認識する必要があるのではないだろうか。

すなわち、社会の側は、若者には自立し成長段階に応じて社会に参加する権利があることを認識し、これを支援する責務がある。一方、若者の側にも、自ら自立のために努力し、社会にその一員として参加するよう努める責務がある。これは、我が国社会の次代を担う若者と、その若者を育成する社会との関係からくる相互の責務である。

(包括的な自立支援方策の推進)

以上のように、若者の自立に向けた社会的な機運を醸成するとともに、政府においても若者の自立支援を国の最重要課題の一つとして位置付け、教育・生涯学習・就労・社会保障・家族・健康医療等に関する包括的な自立支援方策を全政府的に推進すべきである。その具体的な方策については次項以降で述べる。

その際、特に、無業の若者など自立に困難を抱える若者に対する重点的な対策が必要である。これまでにも政府は、例えば関係府省で「若者自立・挑戦プラン」(平成15年6月若者自立・挑戦戦略会議)やこれに関連する施策を取りまとめるなど、若者への就労支援を始めとする様々な対策を実施してきたところである。しかしながら、いわゆる「ニート」やひきこもりと呼ばれる若者など、社会とのつながりを築きにくい若者に対しては、これまで政策的な支援が十分には届いていなかったのではないかと考えられる。このような若者に対しても、今後は明確に政策の焦点を当てていく必要がある。

なお、若者の状態や問題状況が多様であるにもかかわらず、特定の若者、例えば無業の若者を一律に支援が必要な者とみなすのは適当ではない。先に述べたとおり、若者の自立を支援する際には、個々人の状況や抱える問題を正しく認識する必要がある。そして、支援が特定の若者に対する否定的なレッテル貼りにならないよう十分に留意する必要がある。

(基本的な視点)

若者の自立に向けた社会的なコンセンサスを形成し、また具体的な取組を推進していくに当たっては、特に次の諸点が基本的な考え方として重要ではないかと考えられる。

一点目は、若者の自立を促すためには、若者が何もしない状態で放っておかれてはならないということである。これは当然のこととも思われるが、いわゆる「ニート」が問題とされるのも、若者が学習や仕事に励み、成人期へと移行するかけがえのない時期を新たな経験や自己探求の機会として充実して過ごすことが重要だからである。自立の問題に対する意識の薄かった我が国においては特に、若者を活動的な状態に置いておくことの大切さについて、もう一度認識する必要があるのではないだろうか。

この点に関して、若者の自立支援の進んだ英国では、自立を包括的に支援する「コネクションズ・サービス」を導入し、学校を離れた若者が無業のままいることのないよう、学校段階から若者の状態を継続的に把握し、適切な支援を行うなどの取組を行っている。我が国においても、特に、卒業・中退等により無業のまま学校を離れた若者や、不安定な職歴の後無業の状態に陥った若者など、従来は支援の手が届いていなかった者に対しても、今後は積極的に働きかけ、フォローしていくことが必要であるものと考えられる。

二点目は、自立に向け若者が身に付けるべき能力についての考え方である。前述のように、自立をめぐる若者の側の問題点として、意欲や忍耐力、コミュニケーション能力の不足等がしばしば指摘されるが、さらに自分の力で物事の選択ができないなど、いわば個人としての力が不足している者の増加が見受けられるのではないか。若者の自立支援においては、このような若者にどう力を付けるかが課題であるが、その際、最近の欧米諸国の若者のための施策は、カウンセリングなど個人を対象とした手法へとシフトしており、参考にすることができると考えられる。また、具体的な目標としては、成人となるのを控えた高校卒業段階で自立のための基礎能力を身に付けさせることを目標として、発達段階に応じた取組を推進すべきである。

三点目は、若者の自立をさらに積極的な社会参加に結び付けていくことである。現在のように、若者が自立し、自らの生き方を積極的に選び取っていくことが期待される時代においては、若者の能動性を尊重し促進していくことが特に重要である。したがって、若者政策の進んだ欧州諸国の取組も参考とし、社会における若者の参画を促進し、若者の影響力を高め、その力を社会の資源として生かしていくという視点が重要ではないか。これは、現代の消費文化の中では若者が受身のまま成長しがちであるが、若者自身が社会で価値をつくり出していく意欲を持ち、自立を目指すよう動機付けを行う必要があることにかんがみても、特に重要な視点であるといえる。

最後に、四点目として、大人への移行がスムーズにいかず、いわゆる「ニート」やひきこもりの状態を経験する若者が増加する中では、これらの若者が、再度教育や職業訓練を受け、自立に向けて立ち直ることができるような社会システムを構築していくことが求められる。このためには、各種の訓練プログラム等が必要であるとともに、若者をこれにつなげるルートの確立も重要である。いわば再チャレンジを可能とする社会を目指していくことが必要である。

(2)いわゆる「ニート」など自立に困難を抱える若者の支援

(若者を個人ベースで包括的・継続的に支援する体制の整備)

これまでに述べたとおり、いわゆる「ニート」と呼ばれる若者など、若者の中でも特に自立に困難を抱える者の支援が喫緊の課題となっている。本検討会中間取りまとめの「座長試案」(資料2)においては、これらの若者を中心に支援するため、英国で導入されているコネクションズ・サービスなども参考に、個々の若者の状態を十分に把握し、個人ベースで自立のための包括的・継続的な支援を行う体制を整備すべきことを提言した。これは、このような若者が学業面や精神保健面、就労面などで複合的な問題を抱え、様々な分野の支援を必要とすることが多いため、個々の若者をしっかりとサポートし、各分野の専門支援機関等が連携して相談・支援を行う体制を早急に構築する必要があるためである(11ページ図)。

この「座長試案」については、中間取りまとめに対する一般からの意見募集においても様々な意見が寄せられたが、体制整備に向けた現実的な課題を指摘しつつ取組の趣旨・目的・必要性等には賛同するものがほとんどであった。

このため、本報告では、3において、この「座長試案」の趣旨に沿った取組で既に各地域において実施されているものを例示しつつ、さらに考察を進めたい。このような例も参考にしながら、自立支援に向けた体制整備が早急に進められるよう望みたい。

なお、意見募集においては、より困難な状況にあるひきこもりの若者への支援の必要性を指摘するものが寄せられた。ひきこもりの若者への対応には固有の課題があるものと思われ、本検討会でそれを検討するには至らなかったが、他の取組と併せて、この「座長試案」の取組をひきこもりの若者への支援も視野に入れつつ運用することが有効であると考えられる。

(中長期的な取組の必要性)

問題を抱える若者に対しては、上記のような支援体制の整備を進めるとともに、幼少期からの中長期的な取組により問題状況に陥ることを防止することも必要である。このため、次項の若者全般に向けた取組を推進すべきである。

(3)若者全般に向けた各分野における取組

(親・家庭による取組)

本項においては、若者全般の自立に向け各分野において推進すべき取組やその基礎となる考え方について述べる。

内閣府が実施した「青少年の社会的自立に関する意識調査」(平成17年6月)の分析によると、親の子育ての方針が子どもの自立を志向しているほど実際の自立によい影響を与えていることがうかがえる。また、子どもが親の仕事をよく知っているほど、また親の人生を生きがいのあるものと思っているほど、やはり子どもの自立への自覚や社会参加への意欲が高まることも示されている。このように、青少年の自立に対しては、親・家庭の在り方が大きな影響を与えており、これに対する支援が極めて重要であると考えられる。

まず、従来父親の労働時間が長く、子育ての負担が母親に偏りがちな我が国においては、親が子どもの乳幼児期のみならず中・高校生になるまできちんと向き合うことができるようにすることが課題である。このため、子育て支援の充実や、男女の働き方や家庭における役割の見直しなど、両性が親としての役割を果たすことができるようにするための企業を含めた社会全体の取組が必要である。また、問題を抱える青少年には不安定な家庭環境が影響を与えていることが多い。安定した家庭環境をつくるためには、特に若い家庭や困難を抱える家庭への支援が重要である。

次に、上記調査の結果にもみられるとおり、子どもの自立には幼少期の育ち方が重要な影響を与えると思われるため、幼少期から子どもの意思決定や自主性を尊重しつつ、自立に向けた判断能力を高めていくことが重要であると考えられる。具体的には、幼少の頃から子どもに自分のことは自分でさせ、家庭の中で一定の役割を果たさせるなど、自立に向けた教育を行うことが重要である。また、少子化の進展の中、子どもに対し過保護・過干渉な親の増加も指摘されるところであるが、親自身が子どもの自立はすなわち親自身の自立であると認識し、子離れの時期についての明確なイメージを思春期段階の子どもと共有していく必要がある。

さらに、若者が親の保護から抜け出し、多少なりとも自力で教育を受け、独立した生活を営むことを可能にするには、教育資金の貸付けや、親からの自立のための住宅面でのサポート、独立資金の貸付けなど、自立に向けた多様な側面からの支援が必要である。

若者を継続的にサポートする専門支援機関のネットワーク

若者を継続的にサポートする専門支援機関のネットワーク

(学校における取組)

学校教育においても、社会的自立に向けた基礎的な能力や意識の向上を図るため、小学校から発達段階に応じた組織的・系統的な指導を行うとともに、職場体験等を通じた職業意識の形成を図るなど、キャリア教育の充実が重要である。

学校において、子ども・若者が基礎知識・技能をしっかりと習得し、また自らものごとに取り組む意欲や思考力を育むことは、将来の社会的自立に向けて必須のことがらである。このため、学業における児童・生徒のつまずきを早期に発見し、サポートするとともに、児童・生徒の中には、人間関係を築く能力等の自立の力が弱く、学校生活において困難を抱える者が見受けられるため、このような者に対する支援をしていく必要がある。したがって、学校においても、外部の専門家の協力も得つつ、児童・生徒一人一人の状況を適切に把握し、家庭状況等も踏まえて個々の問題状況に応じた支援を行うことのできる体制を確保する必要がある。

また、子どもの将来の自立に向けた教育として、様々な実体験を積ませることが重要である。これは、社会や職業に対する子どもの関心を高めるとともに、自ら学び、学んだことを実社会に生かす喜びを見出させ、また自分の能力や適性について考えさせる機会となるなど、自立に向けた多様な意義を持つと考えられるためである。このため、特に、学校と地域社会とのつながりの中で、既に各地で始まっている中学校段階から職場体験等の体験活動を行わせる取組は、地域の人々との関わりの中で仕事や自分の役割を果たすことの楽しさ、自己の有用感を学ばせていく上で大きな意義があると考えられる。

さらに、子ども・若者の社会的成長を促し、社会の一員として必要な知識・態度・技能を身に付けさせるための教育(シティズンシップ教育)も有効であり、授業、生徒会活動、学校外での活動などにおける取組を通した教育が重要である。このシティズンシップ教育には、大きく二つの要素が含まれるものと考えられる。第一に、現実の社会で生きていくために必要な具体的な知識と技能を身に付けることである。すなわち、若者に高校卒業段階を目標に社会の中で権利義務の行使ができるよう現実的な能力を身に付けさせ、また社会保障や雇用関係の制度などの社会的な仕組みをしっかり教えることにより、自立のために必要な基礎能力を備えさせることが必要である。

第二に、子ども・若者に社会の一員としての意識を持たせ、社会に参加していく態度を習得させることである。子ども・若者の意識が身の回りの狭い世界に閉じられがちであることはしばしば指摘されるが、彼らの関心を広げ、社会参加や公共への参画を支援していくためには、民主主義や社会の構成員としての役割を果たすことの重要性と、そのための知識や方法について学ばせることが大切である。

(就労面の取組)

これまで述べたように、若者が自立し、社会とのつながりを保っていくためには、学校卒業後に就職し、働き続けることが極めて効果的である。我が国では1990年代まで新規学卒採用による就職の仕組みがうまく機能していたため、職業的自立の支援はそれほど大きな課題とはならなかった。しかしながら、近年の厳しい経済状況の下、企業等が若者の雇用を抑制し、また人材育成に対する姿勢が弱まる中では、若者の失業・無業を社会の側の問題ととらえ、若者をサポートすることが必要となっている。政府においても、関係府省が一体となって、「若者自立・挑戦プラン」を策定するなど若者の職業的自立を支援する施策を推進しているところであるが、今後さらに取組を進めるに当たっては、特に次の諸点が重要であると考えられる。

第一に、これまで企業等が若者の職業的自立や人材育成に果たしてきた役割を考えると、近年の厳しい経済状況の下とはいえ、企業等による若者の雇用抑制が過度に進められ、また人材育成への意識が弱まることには問題がある。本人の自立や自己実現という観点からみても、また社会全体の人材育成という観点からみても、職業を通じた若者の能力開発やキャリア形成は大変重要である。したがって、長期的な展望を持って、企業をはじめ雇用する側が若者の雇用の促進や人材育成を担える状況をつくり出すことが重要である。

第二に、非正規雇用型の若年労働者に対するニーズが減少せず、フリーター等の働き方を選ばざるを得ない若者が増加する中では、このような若者も含め、若者が自分自身で将来を見据え、意識的にキャリア形成を行うことができるよう支援していく必要がある。例えば、学校卒業後やいったん職業に就いた後であっても、自分のキャリア形成の必要に応じ改めて学校等で学んだり、また職業訓練を受けたりできるよう選択肢を増やしていくことが重要である。これを現実的に支えるため、奨学金の一層の充実や貸付制度の拡充等の支援も必要である。

第三に、若者が目標とする仕事や働き方について、もっと視野を広げられるようにすべきではないか。すなわち、現実の職業は多様であり、職業によって求められる労働者の資質や能力も異なるが、若者の間ではサラリーマン(企業の正社員)というモデルが一般化されすぎてきたものと考えられ、そのために就職に向けた一歩を踏み出せなくなっている者もいると思われる。特に、いわゆる「ニート」などの若者の中には、体験の不足から職業イメージがサービス産業などに限定されていて、様々な職業に対する自らの興味に気付いていない者もいるものと考えられる。このため、若者が多様な職業観を持ちチャレンジすることを支援したり、若者一人ひとりの向き不向きや能力、興味を見極めて仕事とマッチングしたりすることが重要である。現在でも、企業人等を講師として学校に派遣し、職業や産業の実態、働くことの意義等を生徒に理解させ、職業観を醸成する取組を行うとともに、ジョブカフェ等における就職支援を行っているところであるが、今後も上記の観点を踏まえ取組を充実していくことが重要である。

また、これに関連して、特にいわゆる「ニート」などの若者に対しては、地域において他者と関わる機会を増やすためにも、農業やものづくりを始め多様な就労体験やその他の社会体験を積ませる取組を推進することが効果的であると考えられる。さらに、このような取組を推進する際には、例えば地域の産業振興等に寄与する就労体験を行わせるなどすれば、若者自身が必要とされているという自信や地域社会の一員としての意識を持つことができ、社会参加や就業への動機付けにもつながるものと考えられる。本年度からは、このような若者に対し、合宿形式による集団生活の中で生活訓練、労働体験等を積ませる「若者自立塾」の創設等の取組が開始されるところであるが、引き続き上記の観点を踏まえ取組を充実していくことが重要である。

なお、以上のような若者の就労支援を継続的に推進する上では、国民的な理解の増進を図るとともに、施策を若者の視点から評価しつつ改善していくことが重要である。現在でも、若年者問題について国民的な関心を喚起するための国民運動の展開や、また「若者自立・挑戦プラン」の評価のため有識者会合において検討を進めるなどの取組を行っているところであるが、引き続き上記の観点を踏まえ就労支援を充実していくことが重要である。

(地域社会における取組)

若者の自立を促進していくためには、その育成の基盤となる地域社会において若者が様々な活動に参加し、体験を豊かにし、多様な人々と交流していくことが極めて重要である。このため、地域において様々な取組を工夫していく必要があるが、特にまちづくりや地域おこしなど様々なプログラムへの子ども・若者の参画を促すことは、彼らが自分自身の意思や興味、責任で社会に参加する機会となり、また地域での人間関係を再構築し、他者と触れ合う中でコミュニティのセンスを学ぶ場ともなり、自立の力の育成にとって非常に有効であると考えられる。

地域におけるこのような取組を支えるよう、コミュニティが協力していくための仕組みづくりも重要である。すなわち、これらのプログラムの実施のため、自治体のみならず地域住民、企業、NPO等民間団体などが協力する場が必要であり、また前述のように学校と地域社会とが協力して中学生等の体験活動を行う際にも、受け入れ先となる地域の企業やNPOの協力を得る仕組みが不可欠である。このような様々なプログラムを実施する上でのNPO等民間団体の役割の重要性にかんがみ、支援を充実していくことも必要である。

さらに、地域の取組への若者の参加を促進するため、若者自身を支援していくことも求められる。既に述べたとおり、学校卒業から就業までのルートが多様化している現在では、若者が職業訓練を積み、また様々な活動を行うことを通して自立できるようサポートが求められている。地域社会における取組についても、例えば若者が長期ボランティア活動やNPO等の活動に取り組むための経済面を始めとする支援が必要である。若者がNPO等に参加し、コミュニティを支えることにより、コミュニティが若者の教育の場としてのみならず、働く場としても機能していくことが期待される。

我が国においては、高度成長期を経た都市化の進行や、少子高齢化、人口減少などにより地域のつながりや人間関係が弱まり、青少年の育成にも影響を与えていることがしばしば指摘される。しかしながら、若者の自立をめぐる問題をみても、地域の人々が若者のためにいわば「おせっかい」を焼き、これを支援していくことは、いつの時代においても必要である。若者の育成の基盤となる地域社会において、様々な主体が協力し、自立に向けた取組に関わっていくという社会的機運を醸成することが極めて重要であろう。

(地方自治体における取組)

以上のような各分野における取組を促進し、また自立支援に向け親・家庭や学校、企業、地域社会の協力を進めていくためには、国レベルのみならず、身近な地方自治体レベルにおいて若者の自立支援を重要課題として位置付ける必要がある。そして、例えば若者に関する協議会等の場でその地域の実状に応じた自立支援計画を策定するなど、諸施策を包括的に推進していくことが重要である。

その際、いわゆる「ニート」など特に問題を抱える若者の支援という喫緊の課題に対しては、2(2)で述べた各分野の専門支援機関等の連携した取組が特に有効であると思われるため、3(2)で紹介する取組例も参考とし、地域においてこのような支援体制を早急に整備していくことが望まれる。

なお、就労面の取組の部分でも触れたとおり、若者に影響を与えるような政府の政策・方針や各種機関の意思決定過程に若者の参画を促進することは、政策・方針を若者の視点を反映させたものとする上でも、また若者の一層の社会参加を促す上でも重要である。例えば、若者支援のための取組にNPO等を通じて若者を参加させることは、彼らの知恵を生かし、意欲を引き出すことにつながるだろう。若者も含め住民に身近な行政を行う自治体においては、このための様々な工夫を行っていくことが期待される。

3 地域において若者の自立を支援する体制の整備に向けて

(1)体制整備に向けた課題

2(2)で述べた地域における若者の自立支援体制の整備は、いわゆる「ニート」等の若者やその家族のための身近な相談窓口(ユースサポートセンター(仮称))を明確にし、また、若者一人ひとりが必要とする様々な分野にわたる支援を、専門的な相談員(ユースアドバイザー(仮称))のサポートの下で受けられるようにするなど、今後の取組において大きな役割を果たすことが期待される。このような体制整備を各地域で進めるに当たっては、今後、次のような事項についての掘り下げた検討が必要である。

(1)関係支援機関の範囲及び中核機関について

第一に、関係する支援機関の範囲についてである。すなわち、自立の問題に対応するためには、教育、福祉、保健・医療、就労、少年非行関係など様々な分野の機関の協力が必要であるが、諸機関が実際に実施している業務の内容も踏まえ、連携の範囲について具体的に検討する必要がある。その際、特に、若者の自立支援のための活動を行っているNPO等の団体について、連携可能なものをよく把握する必要がある。このNPO等の団体の所在地や支援内容等の情報については、一般に利用できるよう地域ごとのリストを作成するなど、相談に関する情報提供機能の強化に努めるべきである。また、「座長試案」(資料2)では、中核機関(ユースサポートセンター(仮称))となり得る機関として、地方自治体の下の青少年相談機関やジョブカフェを例に挙げたが、これらのケースを含め地域の連携の例となるようないくつかのモデルケースを検討すべきである。

(2)ユースアドバイザー(仮称)の養成について

第二に、若者の自立支援に対応する専門的な相談員(ユースアドバイザー(仮称))についてである。中核機関や関係支援機関に、若者の抱える複合的な問題を理解し、協力を必要とする他の支援機関等についての幅広い知識を持ち、また自立支援を必要とする幅広い年代の者の相談に対応することのできる相談員を配置することにより、一層の効果的な支援が可能になると考えられる。このような相談員の制度的な位置付けや、備えるべき具体的な資質や能力、及び相談員となるために受講すべきプログラム等について、具体的な検討を早急に開始すべきである。その際には、既に様々な分野で自立支援のための取組を行っている人材をどのようにユースアドバイザー(仮称)として育成するのかという視点に立ち、検討することが望ましい。

なお、中核機関や関係するNPO等の団体には、これらの機関や地域の自立支援体制全体をコーディネートする役割を担う人材が不可欠である。このような人材の育成についても、中長期的な観点から取り組んでいく必要がある。

(3)連携上の課題(特に若者の個人情報の共有)について

第三に、これらの関係支援機関が連携を図る際の課題についても明らかにしていく必要がある。例えば、これまで十分に連携をとっていなかった機関どうしが若者を相互に紹介する場合、そのルートや方法を新たに確立する必要がある。また、関係支援機関が連携して若者をサポートするためには、若者の問題状況等についての共通認識を持つため、若者本人やその家庭等についての情報を共有することが必要になると考えられるが、その際に個人情報の保護や関係者の守秘義務との調整をどのように図るかについても検討しておく必要がある。

(4)若者への働きかけの方策(特に学校との連携)について

第四に、自立支援を効果的に実施していくためには、特に、若者への働きかけをどのようにするかが課題であり、この点についても検討が必要である。まず、若者が問題を抱えるのは学校段階での勉強や人間関係等のつまずきに発することも多いことから、早期に問題を発見し支援を開始するため、学校と関係支援機関が人的な面も含めどのように連携するかについての検討が必要である。また、自ら相談窓口等に出向かない若者をどのように把握するかや、高校の中退者や就職をせずに中学、高校を卒業した者を支援するため学校とどのように協力していくかなど、支援対象を広げるための検討を進め、支援をより効果的なものとすることが重要である。

以上のような点についての検討が必要であるものの、既に地域によっては様々な関係機関が連携して自立支援の取組を実施しているところが見られる。このため、次項においては、今後の各地域における取組の参考とするため、これらの取組を紹介したい。

(2)地域における取組の例

(1)京都市青少年活動センターにおける取組

京都市では、市の出資により設立された財団法人京都市ユースサービス協会が、市内七ヶ所の青少年活動センターを運営し、青少年の社会参加を促進するための様々な活動を行っている。具体的には、スポーツやまちづくり、環境学習など様々な青少年活動の支援や、青少年指導者の育成、青少年グループ・育成団体・NPO等の支援、及び青少年相談等の広範な活動を行っている。

ここで、協会の名称にもある「ユース・サービス」は、市の青少年育成計画にも盛り込まれた理念であるが、もともと英国で発展した概念であり、青少年の自己成長を支援することを意味する。すなわち、青少年の育成を、単なる青少年の問題行動への対応や、大人世代による指導としてとらえるのではなく、青少年が主体的に社会に参加し、成長していくよう、その必要とする情報や活動の場を提供し支援することとしてとらえるものであり、本検討会の整理した自立支援の概念にも沿った考え方である。

具体的な相談、支援体制についてみると、各青少年活動センターで相談活動を実施するとともに、特に就労支援については、厚生労働省のヤングジョブスポット事業を受託し、中京青少年活動センターを中心として、各青少年活動センターにおいて相談や支援事業に取り組んでいる。このように、青少年活動センターにおいてヤングジョブスポット事業を行うことにより、相談に訪れた若者に就職支援を行うのみならず、若者の状況に応じて様々な青少年活動等へと導くことも可能になっており、効果的な相談活動が行われているものと考えられる。

また、京都市ユースサービス協会においては、大学や他の青少年団体等とも協力し、青少年活動の指導や青少年相談を行う「ユースワーカー」の養成にも取り組み、実際の相談にも認定を受けた者を活用していこうとしている。このような取組は、今後「座長試案」の提案するユースアドバイザー(仮称)の制度を検討していくに当たっても、特に参考になるものと考えられる。

相談活動の実施に当たっては、必要に応じて官民の保健・医療機関や、ジョブカフェ等就労支援機関、市の教育委員会等とも協力を行っているところであるが、今後さらに「座長試案」のような包括的、総合的な取組としていくためには、関係機関間や担当者間の連携・協力を一層強化するなどにより、様々な課題を抱える若者の相談に対応し、また若者を就労に至るまで継続的に支援する体制を整備していくことが必要であると思われる。

(2)沖縄県キャリアセンターにおける取組

高い若年失業率を抱える沖縄県では、県、市町村、労働・経済団体等が構成する財団法人雇用開発推進機構の下に沖縄県キャリアセンター(ジョブカフェ)を設立し、平成15年から若者の就労支援に向けた様々な取組を実施している。

キャリアセンターでは、在学生や学卒未就職者、若年失業者等を対象に、キャリアコーチ(キャリア・コンサルタント等)による就職相談や各種セミナー等を行うほか、ハローワークと併設されている点をいかし、具体的な就職活動につなげる支援を行っている。なお、これら若者の就職相談に当たる者としては、大学生の有償ボランティアを積極的に活用し、相談しやすい同世代の若者による支援を可能にするとともに、相談に当たる若者の側も社会に出る準備が行えるよう工夫がされている。

また、キャリアセンターにおいては、無業者を生まないという予防面の取組に力を入れており、具体的には、大学、専修学校、高等学校等との協力により、これらの学校でセンター職員が講座を行ったり、産業界の協力も得てインターンシップの研修を行ったりするなど、学校段階から若者への積極的な働きかけを行っている。このような相談窓口の周知により、若者が学校卒業後に自らセンターを訪れることにもつながっている。

さらに、キャリアセンターでは、フリーターやいわゆる「ニート」の若者も対象とした取組を行っている。その一つとして、平成16年度には、農業の専門家や地元の農協、企業とも協力し、お菓子づくりを通じた起業体験プログラムを実施した。プログラムは、これらの若者に、素材となるイモの植付けから収穫、商品開発、企業への提案、販売活動まで一連の体験させることにより、働くことの楽しさを知り、実社会の仕組みを理解するよう構成されている。

以上のように、沖縄県キャリアセンターでは、ジョブカフェの中でも発展的な様々な取組を行っている。今後さらに「座長試案」のような総合的、包括的な取組としていくためには、様々な問題を抱える若者や就労意欲の低い若者など幅広い若者を支援できるよう、これらの若者の相談に応じるための体制整備や、関係機関との連携の一層の強化を行っていくことが期待される。

(3)滋賀県少年センター「あすくる」における取組

滋賀県においては、刑法犯に占める少年の割合が全国的にみても高い値を示すなど、少年非行への対策が喫緊の課題となっている。特に、地域に戻った犯罪少年の約3割が再び犯罪を犯している実状を踏まえ、これらの少年の立ち直り支援の取組が求められていた。

このため平成15年度には、県青少年対策本部において知事部局、教育委員会、警察本部の参画の下で検討を行い、非行少年等の立ち直りを支援する制度を構築した。平成16年度より、これを具体化する拠点として、県内の少年補導センター内に青少年支援センター「あすくる」を設置し(現在6ヶ所)、立ち直り支援のための様々な取組を行うとともに、県関係機関に加え、保護観察所、家庭裁判所等の職員を構成員等とする「非行少年等立ち直り支援連絡会議」を設置し、運営上の課題を調整する体制をとっている。

各センターにおいては、具体的には、センター職員や少年補導員に加え、新たに支援プログラムのコーディネーター、現職教員、臨床心理士を配置して体制を整備するとともに、個々の少年の非行程度や少年を取り巻く環境に応じて生活改善、自分探し、就学支援、就労支援、家庭支援の各種プログラムを支援ボランティアの協力を得て実施している。

この取組は、少年補導センターを中核として従来から県が実施していた無職少年対策指導に加えて、特に非行等の問題を抱え、自分の居場所もなく悩み苦しんでいる少年を支援していくため始まった事業であるが、支援している少年の状況は、不登校状態にあったり、求職が困難な状況にあったりすることが多く、結果的にはいわゆる「ニート」と呼ばれる若者などへの支援にもつながっているものと考えられる。この点、関係機関とも連携し、就職相談や就労体験を行うなど、就労まで視野に入れたプログラムを用意している点は特徴的である。また、支援協力要員として、就労分野ではハローワーク等の相談員など、福祉分野では児童福祉司、民生委員など、広く各分野の協力を得た体制となっている。

以上のように、滋賀県においては、少年補導センターを核として支援体制を構築しているところであるが、今後さらに取組を充実させていくためには、他の取組例とも共通の課題であるが、教育関係機関やNPO等との連携による支援対象者の効果的な把握や、ボランティア体験、就労体験の場の確保など地域における自立支援のための資源の拡充にも取り組んでいく必要があるものと考えられる。

(4)あだちヤングジョブセンターにおける取組

東京都足立区では、若年者の就労を促進するため、「あだちヤングジョブセンター」を本年6月から開設している。これは、区が施設とその運営経費を提供し、若者の自立支援やキャリア・コンサルティングのノウハウを持ったNPOが相談事業を行うという、自治体と民間の協働の体制で職業的な自立に向けた支援事業を展開しているものである。

センターにおいては、キャリア・コンサルタントによるカウンセリングや就職相談、セミナー、地元企業と連携した職場体験事業などを実施するほか、親に対する相談窓口も開設している。このように、NPOの自立支援のためのノウハウが相談事業にいかされている。また、こうした事業の運営経費をNPOが自ら確保している点も特徴である。

若者の職業的自立やそのための基本的な能力の習得に向けては、就職支援に加えて、地域の主体が連携し、様々な資源を活用して自立支援を行っていくことが必要であることから、センターにおいてはハローワークや区の保健所、福祉事務所、民生委員など関係機関とも連携した取組を検討している。センターは開所されて間もないが、今後の取組を進めるに当たっては、「座長試案」の考え方も踏まえ、教育機関や保健・医療機関などとも連携を深め、地域の若者支援の拠点として機能していくことが期待される。

むすび

13回にわたる検討会を通して得た共通認識とスタンスを述べて報告をむすびたい。

これまで我が国では、若者の「ひとり立ち」が、個人や家庭まかせにされ、社会的課題として位置付けようとする意識は薄かった。しかし、大人になるための太いレールが敷かれていた時代が終ったことが、若者に様々な影響を及ぼしている状況にあって、若者の自立は社会的責任とするコンセンサスを確立することがまず必要である。その上で、若者の自立を社会的な目標として定め、国・地方自治体・家庭・企業・民間団体等、社会全体が協同してこれに取り組まなければならない。このような取組が各レベルで開始されるべきである。

欧米先進国に比べて、若者の雇用問題の発生が遅かった我が国では、大人への移行の長期化に内在する諸問題を認識するのが遅かった。近年ようやく社会的関心が高まり、国としても対策に乗り出した段階にあるが、それらは雇用対策が中心となっているのが現状である。また、現在の若者問題は、景気が回復すれば解消されるという楽観的な見方や、原因を若者自身の自立意識の甘さからくるものとする見方も根強くある。しかし、これらは木を見て森を見ない認識といわざるを得ない。若者の実態はもっと複雑で、総合的視野で理解する必要性のある問題であることを指摘したい。むしろ工業化時代に形成された、社会で一人前になるための仕組みが消滅しつつある中で生じている現象と理解し、長期的視野に立って若者の自立支援方策を確立すべき段階にあるという考えに立って提言を行った。

若者の中でも、仕事に就けず社会的にも孤立した若者が特に自立の困難に見舞われている。社会階層格差の拡大という傾向は、若者の中でも明確に進行しているのである。本報告は、これらの若者が存在することに注意を喚起し、支援体制を早急に整えることを提言した。これらの若者の問題を、大人への移行の困難として再確認し、より正確な実態把握を進めながら、取組を強化することが必要である。

近年、各地で官民それぞれに、若者の就労支援の取組が進められているが、これらはまだ単発的であり、諸機関・団体の連携は限られている。そのため、自立するまでの継続性のある有効な支援ができてはいない状況にあり、特に若者の複合的問題(例えば家庭の複雑な事情が原因となって、学校も続けられず、仕事にも就けないなど)に対処することができないという問題を抱えている。既存の行政の壁を打ち破り、教育・生涯学習・就労・社会保障・家族・健康医療等を包括する自立支援の仕組みこそが有効性を発揮するはずである。このような仕組みを作るための具体的検討作業を、各地で官民一体となって開始するべきであることを提言する。

人口減少社会において、若者の人口比率は相対的に小さい。それゆえ、若者の力量を高め、社会参加を促し、社会的な影響力を高めることが、社会の活力を持続し、また世代間の公平性を確保するための不可欠な条件である。このような認識に立って、若者政策を国の最重要課題の一つとして位置付けるべきであることを指摘してむすびとする。

若者の包括的な自立支援方策に関する検討会座長

宮本 みち子


資料

目次

資料1
若年無業者に関する調査(中間報告)の概要(内閣府「青少年の就労に関する研究調査」)(平成17年3月)
資料2
若者を個人ベースで包括的・継続的に支援する体制の整備について(検討会中間取りまとめ「座長試案」)
資料3
「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」の検討の位置付け
資料4
「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」の開催について(平成16年8月30日内閣府政策統括官(共生社会政策担当)決定)
資料5
若者の包括的な自立支援方策に関する検討会委員
資料6
検討の経緯

資料1

若年無業者に関する調査(中間報告)の概要

若年無業者に関する調査(中間報告)の概要
(CSVデータ)


資料2

若者の包括的な自立支援方策に関する検討会

若者を個人ベースで包括的・継続的に支援する体制の整備について(座長試案)

趣旨

いわゆる「ニート」と呼ばれる若者を始め自立に困難を抱える若者を中心に、自立に向けた包括的・継続的な個人ベースの支援を行う体制を早急に整備する。

仕組みの概要

(1)ユースサポートパートナーシップ(仮称)の構築

(2)若者の支援に当たる中核機関(ユースサポートセンター(仮称))の設置

(3)専門支援機関のユースアドバイザーの連携

(4)学校と支援機関との連携

高校の中退者や就職をせずに中学、高校を卒業した者に対して、関係支援機関等が継続的な支援を行うことができるよう、学校とこれら支援機関との連携の仕組みについて引き続き検討する。

推進体制

地方自治体において、関係支援機関等を構成員に含む協議会の場を設け、ユースサポートパートナーシップの構築を含め、地域の実状に応じた若者の自立支援計画を策定することなどにより、自立支援に向けた取組を包括的に推進する。


資料3

「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」の検討の位置付け

「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」の検討の位置付け
(テキストデータ)


資料4

「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」の開催について

平成16年8月30日

内閣府政策統括官(共生社会政策担当)決定

1 趣旨

少子高齢化、核家族化、情報化等の進行は、青少年を取り巻く環境を大きく変化させ、価値観の多様化をもたらしている。このような社会の変化の中で、今日、若者の就労の不安定化、親への依存の長期化など若者の社会的自立の遅れという新たな問題が生じている。

このため、若者が就業し、親の保護から離れ、公共へ参画し、社会の一員として自立した生活を送ることができるよう、若者の包括的な社会的自立支援のための具体的方策を検討するため、有識者による「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」(以下「検討会」という。)を開催する。

2 検討事項

  1. 社会的自立における若者の現状と問題点の整理
  2. 職業的自立に向けた、家庭、学校、職場、地域等の取組
  3. 親・家族からの自立に向けた、家庭、学校、職場、地域等の取組
  4. 公共への参画促進に向けた、家庭、学校、職場、地域等の取組
  5. 1.〜4.を踏まえた若者の包括的な支援策について

3 検討会の構成

検討会は、別紙の有識者により構成する。

4 開催期間

検討会は、おおむね平成17年6月頃まで開催する。

5 庶務

検討会の庶務は、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(青少年育成第1担当)付において処理する。


資料5

若者の包括的な自立支援方策に関する検討会委員

(座長)
宮本 みち子 放送大学教養学部教授
(委員)
木下 勇 千葉大学園芸学部教授
工藤 啓 特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長
玄田 有史 東京大学社会科学研究所助教授
河野 真理子 株式会社キャリアネットワーク代表取締役会長
小杉 礼子 独立行政法人労働政策研究・研修機構副統括研究員
斎藤 環 医療法人爽風会佐々木病院診療部長
萩原 信一 財団法人日本進路指導協会理事
村上 徹也 社団法人日本青年奉仕協会調査研究主幹

〔五十音順・敬称略、肩書は平成17年4月現在〕


資料6

検討の経緯

平成16年
9月7日 第1回会合
・検討会の運営について
・社会的自立に係る若者の現状・問題点について
・今後の進め方について
10月6日 第2回会合
・海外における自立支援のための取組について(宮本座長、村上委員より発表)
10月19日 第3回会合
・社会的ひきこもりの問題等について(斎藤委員、工藤委員より発表)
11月8日 第4回会合
・職業的自立について(玄田委員、小杉委員より発表)
12月21日 第5回会合
・学校や企業の視点からみた課題について(河野委員、萩原委員より発表)
平成17年
1月12日 第6回会合
・まちづくりへの若者の参画について(木下委員より発表)
・分野ごとの重要事項の整理
1月28日 第7回会合
・これまでの議論の整理
2月9日 第8回会合
・中間取りまとめに向けた検討
2月22日 第9回会合
・中間取りまとめに向けた検討
3月14日 第10回会合
・中間取りまとめに向けた検討
3月22日 中間取りまとめ公表(意見募集実施:3月23日〜4月15日)
4月26日 第11回会合
・中間取りまとめに対する意見募集の結果について
・「青少年の社会的自立に関する意識調査」集計結果について
6月13日 第12回会合
・最終報告取りまとめに向けた検討
6月24日 第13回会合
・最終報告案の検討