少年の凶悪・粗暴な非行等問題行動について当面取るべき措置

平成13年2月28日
青少年育成推進会議
申合せ


I  少年の非行等問題行動の現状
 最近の少年非行に関しては,凶悪・粗暴な犯罪の検挙人員が増加し,深刻化している。平成12年に検挙された刑法犯少年は13万2,336人で前年に比べ9,385人減少したが,殺人,強盗,強姦及び放火の凶悪犯の検挙人員は2,120人で,前年に比べ117人減少したものの,平成9年以降4年連続して2,000人を超えている。
 さらに,社会を震撼させる特異・重大な少年犯罪が相次いでいるなど,少年非行の凶悪化・粗暴化は極めて憂慮すべき状況にある。

II  当面取るべき措置
 青少年の非行等問題行動への対応については,「青少年育成推進要綱」(平成13年2月28 日青少年育成推進会議申合せ)等に基づき諸施策を推進しているところであるが,少年非行の凶悪化・粗暴化が深刻になっている現状にかんがみ,関係省庁の緊密な連携の下に,当面,次の措置を推進することとする。


 非行の前兆となり得る問題行動等の段階での的確な対応
 少年非行の凶悪化・粗暴化対策としては,その前兆段階で有効な対策を講じることが極めて重要である。
 このため、非行に結び付く問題行動等の段階においてその要因を取り除くことができるよう,各種相談窓口の充実強化,家庭教育への支援,学校における積極的な非行の兆候の把握,警察における街頭補導活動等の充実,関係機関と保護者等との協議の場の確保等の諸施策を講じることとする。

(1)

 少年やその保護者・家庭を対象とした各種相談窓口・事業の充実強化等
 少年やその保護者・家庭が必要なときに相談し,非行の兆候を逃さずに受け止め適切な措置を講じることができるよう,警察署等の少年相談窓口,児童相談所の相談窓口,福祉事務所の家庭児童相談室,教育委員会の子どもや親のための24時間電話相談等各種相談窓口・事業について,それらの周知を図るとともに,夜間・深夜における電話相談受理体制の整備や出張・巡回相談を実施するなど体制・内容の充実を図る。
 また,地域における相談機関相互の連携及び相談機関と学校等との連携の強化を図る。
[主要推進省庁:内閣府,警察庁,法務省,文部科学省,厚生労働省等]

(2)

 家庭教育への支援
 家庭教育手帳,家庭教育ノート等を活用した親の子育てについての学習活動を公民館等において推進する。
 また,思春期の子どもを持つ親の悩みや不安に応えるための資料の作成や学習機会の充実を図る。
[主要推進省庁:文部科学省]

(3)

 学校における対応
 スクールカウンセラーや心の教室相談員等の配置,児童生徒の問題行動の兆候を早期にとらえられるようにするための教員の資質の向上,PTAや関係機関との連携の強化などの対策を講じる。
[主要推進省庁:文部科学省]

(4)

 警察における対応
 一層相談のしやすい窓口の充実を図るほか,ふだんから非行集団等の活動実態を把握しておくとともに,少年相談活動や街頭補導活動等において,非行の前兆や端緒を見落とさず,少年サポートセンターが中心となって,少年やその保護者等に対するきめ細かな指導,助言等を行う。
[主要推進省庁:警察庁等]

(5)

 関係機関と保護者等との協議の場の確保等
 非行の兆候がみられた場合には,学校,警察,児童相談所等の関係機関と少年の保護者や少年自身が直接顔を合わせて対応を協議し,必要に応じ少年の保護者や少年自身に対し適切な指導を行うことができる場を設けるようこれらの関係機関にはたらきかける。
 また,これら関係機関や民間ボランティアが協力して街頭補導活動,カウンセリング,継続的な指導等を実施できるよう,連携の一層の強化を図る。
[主要推進省庁:内閣府,警察庁,文部科学省,厚生労働省等]


 悪質な少年犯罪に対する厳正な措置

(1)

 警察における少年事件捜査に関する対応
 少年事件捜査力の充実強化のため,都道府県警察本部において,少年事件特別捜査隊(班),少年警察特別捜査隊(班)等の設置や警察署の少年事件捜査体制の拡充に努めるとともに,少年の特性等に配意した専門的技能が求められる少年事件捜査に対して少年担当部門の捜査員を捜査体制に編入させるなど,関係部門との緊密な連携を図る。
[主要推進省庁:警察庁等]

(2)

 「少年法等の一部を改正する法律」の円滑な施行と適切な運用
 第150回国会において,少年事件の処分等の在り方の見直し,少年審判の事実認定手続の一層の適正化及び被害者への配慮の充実を内容とする「少年法等の一部を改正する法律」が成立したことを受け,その円滑な施行及び適切な運用を図る。
[主要推進省庁:法務省]


 最近の特異・重大事件に関する動機・原因の解明

(1)

 最近の特異・重大事件に関する分析・調査の実施
 最近の少年による特異・重大事件について,事案の詳細を解明することにより,事件前の行動,いじめ・暴力行為等と事件との因果関係を明らかにし,今後の効果的な非行対策や適切な事後の対応に資するよう,下記の分析・調査を実施する。

(ア)

 青少年の社会的適応能力と非行に関する研究調査[内閣府]
 近年の青少年は,社会的適応能力が身についていない者が増加しているといわれており,そのことが非行等をもたらす要因になっていると考えられている。このような青少年の社会的適応能力と非行等問題行動の関係を明らかにすることにより,今後の非行対策及び青少年に関する諸施策を樹立するための基礎資料を得るため,本研究調査を行う。

(イ)

 少年の問題行動等に関する総合的調査研究[文部科学省]
 少年の問題行動等について,その実態や適切な対応の在り方等に関する総合的な調査研究を行うため,文部省に学校・教育委員会関係者,学識経験者,関係省庁担当者等を構成員とする専門家会議が設置されているが,当会議において,最近の少年の一連の事件について,それらの事件の原因・背景や少年の状況,学校における指導体制や関係機関との連携の状況などについて実態を把握し,分析等を行う。

(ウ)

 少年の前兆行動についての調査[警察庁]
 警察庁において,平成12年12月に,最近の少年による特異・凶悪事件の前兆行動に関する緊急調査の結果をとりまとめたところであるが,上記調査を踏まえ,効果的な対応策を推進するとともに,継続して同様の調査を実施する。


 非行等問題行動の防止にもつながる積極的な青少年健全育成施策の実施
 青少年の健全育成を図ることは,非行等問題行動の防止の観点からも極めて重要である。このような認識の下,青少年からの意見表明の機会の提供,地域社会における青少年育成環境の整備,学校における命の大切さについての周知徹底等の諸施策を講じることとする。

(1)

 青少年の意見表明の機会の提供
 青少年からの悩みに対する相談窓口の紹介並びに青少年自身や保護者を始めとする青少年育成関係者への情報提供,啓発及び意見交換・聴取を行うことを可能とする「青少年のためのホームページ」を開設し,関係省庁間のみならず地方公共団体,青少年団体等とも青少年の非行問題等に関する情報の交換及び共有化を図ることとする。
 また,平成12年8月に開催した「全国ユースフォーラム」において,高校生が主体となって教育,社会等に関し討論,意見交換等を行ったところであるが,このような,高校生等が主体となって,身近な家庭・学校や地域社会での問題や少年犯罪,いじめ等社会全般の問題についての討論,意見交換等を行う機会を随時設ける。
[主要推進省庁:内閣府,文部科学省等]

(2)

 地域社会における青少年育成環境の整備
 青少年が多様な人々と交流する機会や自然体験・社会体験等を積み重ねられる機会や場を提供するなど,地域社会における青少年の多様な育成方策を推進する。
 また,地域社会におけるPTA等が行う青少年の育成に有害な環境の浄化活動に対する支援の充実を図る。
[主要推進省庁:文部科学省,内閣府,環境省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省等]

(3)

 命の大切さについての周知徹底
 教育改革国民会議座長緊急アピール及び文部大臣からの「各学校へのお願い」を出したところであるが,引き続き,学校において,青少年に対し命の大切さについて訴えていくこととする。
[主要推進省庁:文部科学省等]

(4)

 青少年健全育成等についての広報啓発活動等の推進
 平成12年7月の「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」及び同年11月の「全国青少年健全育成強調月間」において,地方公共団体,民間団体等と連携を図りつつ,青少年の非行防止に関する広報啓発活動等を実施したところであるが,今後とも,地域社会が青少年の健全育成及び非行防止に対する関心を一層高めていくような広報啓発活動,家庭の育成機能に対する支援等の取組を推進することとする。
 また,家庭や地域社会全体で子どもとふれあい話し合う機会を充実するとともに,心豊かな子どもたちを育むため,平成9年8月以降実施している「〔子どもと話そう〕全国キャンペーン」において,今後とも,行政機関,企業,各種団体,個人等への呼びかけを推進する。
[主要推進省庁:内閣府,文部科学省,警察庁,厚生労働省等]