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平成11年版青少年白書概要

第1部 青少年行政のあゆみと21世紀への展望


 来るべき21世紀に向け、自律的な個人を基礎としたより自由かつ公正な社会にふさわしい行政システムへの転換が進められる中、国民一人一人には、自律的存在として主体的に社会を築き、担っていくことが求められている。
 今日の青少年をめぐる状況をみると、戦後第4の上昇局面にあるといわれる少年非行の増加や、青少年の規範意識や社会性の低下傾向等が指摘されている。
 個人が個性や創造性を伸長させ、自己実現を追求していく場となるのは社会であり、その基盤を確固たるものとするためには、規範意識や社会性を社会の構成員一人一人がしっかりと身に付けていなければならない。次代の社会を担う青少年の育成の目指すべきところも、規範意識や社会性を備えた自律的個人としての自己の確立にあるといえるだろう。
 昨年7月には、青少年問題審議会から、21世紀の青少年行政の基本的方向を提唱する総合的な答申が出され、各方面でも、青少年の育成方策に関し活発な議論が行われている。今、正に新たな時代における青少年行政の在り方について、議論が必要な時期にさしかかっているといえよう。
 このような状況を踏まえ、第1部では、この一年の青少年行政に関わる主な動きをトピックスとして紹介するとともに、戦後の青少年行政のあゆみを振り返り、青少年問題審議会答申を踏まえて、今後の方向性について考察を加えた。


1 青少年行政のあゆみ

(1) 昭和20年代〜戦後の緊急保護対策と基本的法制度の制定〜

(青少年をめぐる状況等)
 終戦直後の社会的混乱から経済復興への過程で、戦災孤児、浮浪児及び家出少年が増加し、少年犯罪が激増した。少年犯罪の数の増加は、昭和26年ころまで激しい上昇を示し、戦後最初のピークを記録した(第1図)。
 また、覚せい剤(ヒロポン)の流行や人身売買の問題、有害な出版物や映画等、戦後社会の不安定な状況に起因する様々な問題が起こっていた。
 当時の青少年の不良化の原因として、家庭環境や社会の混乱の問題を挙げる者が多くなっている。
[青少年不良化の原因](全国25歳以上の者1,200人対象)

家庭環境(親のしつけ、家庭不和、愛情の欠如) 42.9%
混乱した社会のため(道義世相の退廃、大人が悪い、刑が軽い) 39.4%
戦後の青少年の特質(自由のはき違い、希望がない、好奇心、虚栄心等) 21.3%
(複数回答、上位三つ)

(昭和25年3月国立世論調査所「青少年不良化防止に関する世論調査」)


(青少年施策の動向)
 終戦直後の混乱した社会状況の中で、浮浪児や少年非行への対策が施策の中心であった。
 一方、新憲法を始め、教育基本法、学校教育法、労働基準法、児童福祉法、少年法、社会教育法等の基本的な法律が相次いで制定され、今日に至るまでの社会の基盤となる諸制度が実施されていった。

 浮浪児の収容・保護等のための緊急対策が講じられた。
 児童福祉法が制定され(昭和22年)、児童福祉施設の拡充、児童相談所・児童福祉司の設置等、児童福祉の向上が図られたほか、児童育成の基本理念を示した児童憲章の制定(昭和26年)等が行われた。
 教育基本法及び学校教育法が制定され(昭和22年)、教育の機会均等の理念に基づき、「6・3・3・4制」の新しい学校体系がつくられた。
 昭和24年には、社会教育法が制定され、社会教育に関する国と地方公共団体の任務や公民館の制度化等の規定が整備された。また、勤労青少年を対象とした青年学級は、青年学級振興法の制定により、一層普及することとなった。
 昭和22年に制定された労働基準法に基づき、事業場への監督を通じて年少労働者の保護が積極的に図られることとなった。
 昭和23年の少年法改正により、20歳未満の者を少年とすること、家庭裁判所においては、保護処分を中心としつつも、16歳以上の少年による死刑、懲役等の罪の事件で、刑事処分相当と認められる場合、事件を検察官に送致すること等が規定された。
 新憲法の下で制定された青少年をめぐる各種の法制度は、複雑に分化し、運用の足並みがそろわないといった問題や、関係機関相互の協力の不足、連絡調整の不十分さが指摘されていたが、昭和24年、国会における青少年犯罪防止に関する決議を受け、閣議決定により内閣官房に青少年問題対策協議会が設置された(同協議会は、25年には、総理府の附属機関である中央青少年問題協議会に改組)。

(2) 昭和30年代〜戦後処理的対策から健全育成の推進へ〜

(青少年をめぐる状況等)
 経済復興から高度経済成長へ移行する中で、国民の生活水準は向上し、テレビ等耐久消費財の普及がみられた。
 消費ブームの中、一部の青少年の深夜外出、盛り場はいかい、深夜喫茶等への出入り等の問題に加え、青少年に有害な出版物、映画等の氾濫が問題となった。
 また、勤労青少年の都市集中傾向の激化に伴い、中小企業に従事する年少労働者の労働条件の問題や余暇生活の充実等も大きな課題であった。
 このような情勢を背景に、少年非行は再び増加に転じ、低年齢化、集団化といった特徴や、刃物を使った凶悪な非行の増加がみられ、刑法犯少年数は、昭和39年に戦後第2のピークを迎えた。

(青少年施策の動向)
 青少年対策は、戦後の緊急保護対策的な取組から積極的な健全育成へと視点を拡げ、青少年健全育成施設の整備等が進められた。また、経済発展や国民生活の向上を背景に、児童福祉の進展や学校教育の改善がみられた。

 中央青少年問題協議会は、数多くの意見具申や基本要綱等の決定を行うなど、勢力的な活動を行った。中央青少年問題協議会意見具申等を受けて、スポーツの振興(スポーツ振興法の制定)、青少年の刃物携帯問題対策(「刃物等をもたない運動」の実施、法規制)、有害な出版物・ 映画対策(優良映画の推薦、「太陽族映画」等有害な映画の「成人指定」措置等)、深夜喫茶対策(法規制)等が実施された。
 また、同協議会により、青年海外派遣事業(昭和34年度から)、青少年保護育成運動、マスコミと青少年に関する懇談会等が行われた。
 地方公共団体においても、青少年に有害な出版物、映画等を規制するため青少年保護育成条例を制定するところが相次いだ。
 家庭に関しては、市町村の開設する家庭教育学級の奨励、福祉事務所への家庭児童相談室の設置、児童厚生施設の整備、母子福祉法の制定、重度障害児に対する施策の実施等が行われた。
 学校教育に関しては、学習指導要領の改訂(道徳教育の徹底、基礎学力の充実、地理・歴史教育等の充実等)、学級編制等の標準の設定、高等学校の生徒の急増に対する施設、教員、学級規模等についての措置等が行われた。
 職域に関しては、年少労働者福祉員制度の創設、勤労青少年ホームの設置の促進、職業訓練法の制定等が行われた。

(3) 昭和40年代〜国民的な運動の推進〜

(青少年をめぐる状況等)
 高度経済成長下、国民は豊かな消費生活を享受する一方、急速な重化学工業化や都市化の進展に伴い、公害、交通戦争、住宅問題、享楽的風潮のまん延等がみられた。また、核家族化が進行するとともに、女性の就労の増加等により、保育サービスの需要が増大した。
 所得水準の上昇による豊かな生活の実現を背景に、労働時間の短縮が進み、週休2日制の普及とあいまって増加した余暇時間の有効活用に対する人々の関心が高まった。また、社会の情報化が進む中で、テレビ等マスコミの青少年に与える影響力が強まっていった。
 少年非行は、昭和39年をピークとして40年代に入ると減少傾向をみせ始めた。

(青少年施策の動向)
 昭和41年、青少年の指導、育成、保護及び矯正に関する基本的、総合的施策の調査審議を行う機関として青少年問題審議会が総理府に設置されるとともに、青少年行政における総合調整機能の強化に向けて、同年、総理府に青少年局(現総務庁青少年対策本部)が設置された。
 また、非行防止の観点のみでなく、健全育成の積極的推進のために国民運動を推進することが重要との認識が広まり、昭和41年、青少年育成国民会議が結成された。
 余暇時間の増大に対応した余暇関連施設の整備が進められたほか、核家族化等に対応した家庭支援の充実、進学率の向上に対応した高等学校の整備、勤労青少年の福祉対策の充実等が行われた。
 非行対策については、少年補導センターの設置の促進、少年補導員制度の導入など、地域における非行防止の体制づくりが進められた。

 オリンピック東京大会(昭和39年)を契機に国民一般の体力つくりの必要性が認識される中、40年に「体力つくり国民会議」が発足した。また、44年度からは毎年10月が「体力つくり強調月間」とされ、国民一般の健康・体力つくり運動が展開されることとなった。
 青少年のニーズに即した青少年健全育成施設の体系的な整備、芸術鑑賞機会の提供、青年の船事業や青年海外協力隊事業等が開始された。
 家庭に関しては、幼児をもつ親に対する相談事業や児童相談所等における家庭児童相談の拡充が図られたほか、保育所の整備、児童手当制度の創設、母子保健法の制定、心身障害者対策基本法の制定等が行われた。
 学校教育に関しては、学習指導要領の改訂(教育内容の精選・集約と時代の進展に対応した教育内容(集合論等)の導入等)や、定時制及び通信制の高等学校の設立等が行われた。
 職域に関しては、勤労青少年福祉法の制定、職業訓練法の制定、農林省農業者大学校の設置等が行われた。

(4) 昭和50年代〜青少年施策の多様化と総合化に向けた動き〜

(青少年をめぐる状況等)
 経済の高度成長は終焉を迎え、安定成長へと移行していった。生活水準の向上に伴い、人々の生活に対する考え方も変化し、物的な面での豊かさよりも、心の豊かさやゆとりのある生活を重視する人が増えていった(第2図)。
 核家族化、少子化の進行や都市化の進展に伴う家庭の孤立化等により、家庭の教育機能が低下する傾向がみられた。
 学歴等を重視する傾向が広まる中、受験競争の過熱化がみられた。
 また、都市化の進展に伴う人間関係の希薄化に加え、豊かな消費生活の中で性産業やゲームセンターの増加等享楽的傾向の強まり、情報化の進展による知識の豊富化や感覚的傾向の増大等、地域の育成環境が変化していった。
 このような状況の中、少年非行情勢は戦後最悪の状況(昭和58年、戦後第3のピーク)を迎え、窃盗、校内暴力、家庭内暴力、いじめ等問題の多様化が進行した。

(青少年施策の動向)
 青少年の非行等問題行動については、昭和57年6月の青少年問題審議会答申を契機に、関係省庁が総合的に取り組む体制が整備された。
 また、各分野においても、家庭をめぐる状況の変化に対応した子育て支援の取組の充実、ゆとりある充実した学校生活の実現に向けた取組、高学歴化の進展に対応した大卒者への採用情報の提供の充実、国際交流の促進等が進められた。

 昭和57年に、青少年問題審議会答申を受けた閣議決定「青少年の非行防止対策について」を受けて、非行防止対策推進連絡会議が設置され、総合的な非行防止対策が採られることとなった。また、「青少年を非行からまもる全国強調月間」による広報啓発活動等の推進、風俗営業等に関する法規制の強化等が行われた。
 家庭に関しては、乳幼児学級や「明日の親のための学級」等市町村の行う家庭教育学級の拡充が図られたほか、留守家庭児童(いわゆる「鍵っ子」)のための都市児童健全育成事業の開始、夜間・延長保育等保育需要の多様化への対応、「障害者対策に関する長期計画」の策定等が行われた。
 学校教育に関しては、学習指導要領の改訂により、ゆとりある充実した学校生活が送れるよう標準授業時数の削減や指導内容の精選等が図られたほか、養護学校教育の義務制の実施、新構想大学や放送大学の設置、共通第一次学力試験の実施、専修学校の創設等が行われた。
 職域に関しては、大卒等採用計画企業情報の提供、勤労青少年福祉員による中小企業の勤労青少年の福祉の増進、青年農業士や青年林業士の認定等が行われた。

(5) 昭和60年代から現在〜総合的な施策の推進〜

(青少年をめぐる状況等)
 バブル経済とその崩壊を経て、平成9年以降、景気の停滞が長引き、失業者の増加(特に若年層で高い失業率)が社会的問題となっている。
 少子化の進行に伴い、異年齢の子ども同士の交流機会の減少や、親の過保護あるいは過干渉の問題など、家庭や地域の教育機能の低下が指摘されている。こうした中、保護者等による児童虐待の問題も、大きな問題となっている。
 また、不登校児童生徒数の増加に関して指摘される学校に絶対行かなければならないという意識の希薄化や、いわゆるフリーアルバイターの増加にみられる若者の就業意識の変化など、青少年の意識の変化、多様化がみられる。
 青少年を取り巻く社会環境については、様々なメディアを通じた有害情報の氾濫、テレホンクラブ、カラオケボックス等、不良行為を誘発、助長しやすい環境が問題となっている。
 平成5年以降、主要刑法犯少年の人口比(少年人口千人当たりに占める主要刑法犯少年の人員)が増加し、青少年による薬物乱用、凶悪・粗暴な非行、いじめ・暴力行為、性の逸脱行為等問題が深刻化した。

(青少年施策の動向)
 平成元年には、関係省庁の連携、協力の下、施策を効果的に推進していく枠組みが作られ、青少年施策の総合化の面で大きく前進することとなった。
 各分野においても、社会経済情勢の変化への対応を進めつつ、一層の改善が図られた。家庭については、親への多様な学習機会の提供や相談体制の充実、児童福祉制度全体にわたる見直し等が行われた。学校教育については、これまでの知育偏重の風潮等を見直し、子ども一人一人の個性を生かし、豊かな人間性等をはぐくむ教育へと転換が図られている。また、地域社会における多様な体験活動を通じて、青少年の社会性等をはぐくんでいく方向が、近年、重視されている。

 青少年問題審議会意見具申を受け、平成元年9月に非行防止対策推進会議が青少年対策推進会議に発展的に改組されるとともに、政府の青少年行政の基本方針を定める青少年対策推進要綱が制定され、青少年行政の新たな枠組みの下で、対策が強化されることとなった。
 現在、平成11年7月の青少年問題審議会答申等を踏まえ、青少年対策推進要綱を改正し、青少年をはぐくむ社会環境づくりに向けた総合的な施策を推進しているところである。
 青少年の多様な学習・体験活動を推進するため、科学活動、自然体験活動、ふるさとについての学習活動、青少年団体による青少年交流、ボランティアを始めとする社会参加活動、文化活動、スポーツ活動、国際交流等が促進された。現在、平成14年度からの完全学校週5日制の実施も踏まえ、地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの活動を振興する体制を整備する「全国子どもプラン(緊急3ケ年戦略)」等により、多様な体験活動の機会の充実が進められている。
 家庭に関しては、市町村による家庭教育学級の開設の促進や家庭でのしつけの在り方等を盛り込んだ家庭教育手帳等の母子保健の機会等を活用しての配布など、親等への多様な学習機会の提供が進められている。また、児童相談所を中心とする相談体制の整備や、家庭教育カウンセラーの活用、24時間親からの相談に対応できる体制の整備等相談体制の充実が図られている。
 また、児童手当制度の充実、放課後児童健全育成事業の実施、子育て支援のための施策の総合的・計画的推進を図る「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン)の策定等が行われるとともに、平成9年6月には、利用者の立場に立った保育所制度の改善、放課後児童健全育成事業の法制化、児童福祉施設等の体系の見直し等を内容とする児童福祉法の改正が行われた。
 学校教育に関しては、子どもたちに様々な体験を行う場や機会を増やす学校週5日制の導入や学習指導要領の改訂による教育課程の改善充実に加え、暴力行為、いじめ、不登校といった問題の現状を踏まえ、教育相談体制の充実等が図られている。
 また、単位制高等学校や総合学科の導入等高等学校教育の個性化、多様化の推進、中高一貫教育の導入(平成11年度から)、大学審議会答申を踏まえた制度改正等高等教育の改革、特色ある多様な入学者選抜の実施等が進められている。
 職域に関しては、学生等が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うインターンシップの導入について、平成9年度から関係省庁が連携を図りつつ、総合的な推進が図られている。
 また、求人秩序の確立に向けた取組、勤労青少年福祉対策基本方針に基づく勤労青少年の福祉対策、職業能力開発の促進等が進められている。
 青少年を取り巻く環境浄化については、関係行政機関や社青少年育成国民会議等により関係業界への自主規制の充実等の要請が行われるとともに、法令等による規制の強化(「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の改正、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の制定等)が行われた。
 また、平成10、11年度には、「青少年と放送に関する調査研究会」及び「青少年と放送に関する専門家会合」が開催され、郵政省及び放送事業者により取組方針が取りまとめられるなど、放送の分野における取組が推進された。


2 日本の青少年の意識〜諸外国の青少年との比較を通して〜


 青少年問題審議会答申(平成11年7月)においては、今日の青少年をめぐる問題の背景として、社会全体の風潮の問題、子どもに対する基本的なしつけの欠如及び青少年の人間関係の希薄さが指摘されている。そこで、総務庁青少年対策本部の行った「第6回世界青年意識調査」を中心に、こうした点に関して、我が国と諸外国の青少年の意識との比較等を通じて、我が国の青少年の意識の特徴や問題点等を明らかにする。

(1) 社会に関する意識

 社会に対する満足度
 我が国社会への「満足層」は昭和63年調査以降減少傾向にあり(第3図)、各国と比べても低いものとなっている。
 日本社会の問題点
 日本社会の問題点として、「学歴によって収入や仕事に格差がある」、「よい政治が行われていない」、「環境破壊に対して国民が無関心」、「就職が難しく、失業も多い」を挙げる者の割合が高い(第1表)。特に、「学歴によって収入や仕事に格差がある」を挙げた者の割合は、各国中では、韓国に次いで2番目に高く、また、「就職が難しく、失業も多い」を挙げた者の割合については、平成5年調査と比較して大幅に上昇している。
 社会への貢献意識
 日本では、「自国のために役立つようなことをしたい」と考える者の割合及びボランティア活動の経験は、各国と比べて低いものとなっている(第4図第5図)。
 社会のきまりに関する意識 「法律や規則を守ってばかりいると時には損をする」という意見に対し、我が国の中・高校生の多くがそう思うと答えている(第6図)。
 将来仕事を選ぶときに大切なもの
 日本の高校生に将来仕事を選ぶとき何が一番大切かについて聞いたところ、「自分の才能が生かせられ、興味がもてること」(58.0%)、「安定した収入で、生活が保証されること」(19.0%)、「社会のためになり、やりがいがあること」(10.9%)、「のんびりと気楽に普通の生活ができること」(11.4%)となっている。また、社会に出て成功するために大切なものとして、「努力すること」を挙げた者の割合が高く(中学生:58.4%、高校生:53.9%)、「高い学歴をつけること」を挙げた者の割合は低くなっている(第7図)。
 このように、我が国の青少年の多くは、社会において、自己の才能を生かして活躍したいと望んでおり、そのためには本人の努力が重要であると考えていることが分かる。

(2) 家庭に関する意識

 家庭教育
 父親から生き方、行動の仕方、道徳などの社会生活についての指導を受けたことがあるか聞いたところ、日本では、「はい」と答えた者の割合は約65%で、各国と比べて低いものとなっている(第8図)。
 また、「タバコを吸う」、「友達と酒を飲む」、「深夜まで街で遊ぶ」といった未成年者の問題行動に対する保護者の意識として、「高校生ならばよい」、あるいは「高校を卒業したらよい」といった許容的な傾向が、若年の保護者になるほど高くなっている(第9図)。
 親子関係
 理想の父親像として、日本では、「家庭重視」と答えた者の割合は、時系列的には増加しているが、各国と比べると低いものとなっている。
 また、青少年の休日の過ごし方について聞いたところ、「家族と過ごす」と答えた者の割合は男子で18.7%、女子で38.7%となっており、各国と比べて低いものとなっている。
 さらに、親子の対話の有無についてみると、非行少年の家庭では、一般少年の家庭に比べて親子の対話が乏しくなっている(第10図)。
 基本的生活習慣
 「朝食を毎朝食べる」、「夕食を家族と一緒に食べる」、「決まった家事の手伝いがある」という家庭における基本的な生活習慣について、一般少年と非行少年の間で差が目立つ。例えば、「朝食を毎朝食べる」と答えた者の割合は、一般少年で7割強であるのに対し、非行少年では3割強にとどまっている(第11図)。

(3) 人間関係に関する意識

 友人を得たきっかけ
 友人を得たきっかけとして、各国とも「学校」、「職場」が多くなっているが、日本の場合、「近所」といった地域社会にかかわる項目が、各国と比べて非常に少ないことが注目され(第2表)、日本においては、地域社会を基盤とする多様な人間関係の構築が行われにくくなっているものと思われる。
 悩みの相談相手
 悩みや心配ごとがあった場合相談する相手として、両親(特に母親)と並んで友人を挙げる者の割合が高くなっている。特に日本の特徴として、友人と母親以外の相談相手を挙げた者の割合が低くなっている(第3表)。
 他者との関係を円滑に進める能力
 「相手が怒っているときにうまくなだめる」、「知らない人とでも、すぐに会話を始める」、「話し合いの輪の中に、気軽に参加する」、「何か失敗したときに、すぐに謝る」、「自分とは違った考えをもっている人とうまくやっていく」の5項目について、「いつでもできる」、「なんとかできる」、「できない」の3段階でどの程度できるかを聞き、各項目について「いつでもできる」と答えた者の割合を加えてみると、日本の青少年については、各国と比べて低いものとなっている(第12図)。

(4) まとめ

 21世紀の社会を担っていく青少年に規範意識や社会性の低下傾向等がうかがえることは憂慮せざるを得ない状況である。
 この問題は、青少年自身の問題にとどまらず、青少年をはぐくむ環境としての社会全体の風潮、基本的なしつけを担当する家庭の役割あるいは地域社会の問題等、我が国社会全体の在り方にかかわる問題として考えていくべきである。
 社会生活上の基本的な生活習慣やモラルといったものは、第一義的に家庭の責任において行われるべきものである。今日、特に父親が家庭で果たすべき役割や、職場優先の考え方について、国民一人一人が自ら問い直していく必要があろう。また、家族形態の変化や地域社会のつながりの希薄化等の中で子育てに十分な知識や助言を得られず自信を失っている親たちをいかに支えていくかを考えていかねばならない。
 形式的な学歴がほかの多様な尺度よりも過度に重視される風潮は、青少年が志向や適性に応じて主体的に自己の実現を図っていくことを妨げていると考えられる。青少年の自己実現を支援し、青少年が将来に夢や希望をもてる社会にしていくという観点から、今後、個人の多様な経験、能力等が適切に評価される社会への転換を進めていくことが課題であろう。
 日本の若者について、ボランティア経験等の少なさが指摘されるが、阪神・淡路大地震の際には、若者がボランティア活動の中心的な役割を果たした。多くの若者が活動に参加した背景には、震災の模様が、テレビ・新聞等で広く伝えられたことがある。このことは、活動の場や機会が提供されれば、進んでボランティア活動を行おうと考える若者が少なくないことを示唆していると考えられる。
 我が国の青少年の人間関係の希薄化という状況を踏まえ、今後、こうしたボランティア活動等を通じて青少年が多様な人間関係を経験する機会を豊富に提供していくことが重要であり、平成14年度からの完全学校週5日制の実施も踏まえ、多様な体験活動の機会を提供する潜在能力をもつ地域社会の役割が、今後、見直されていくべきものと考えられる。


3 青少年行政の21世紀への展望


(21世紀の青少年行政の方向性〜青少年問題審議会答申を踏まえて〜)

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