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第3節 青少年労働者の職業能力の開発に関する施策
 近年の技術革新の進展,産業構造の変化,労働者の就業意識の多様化等に伴う労働移動の増加,職業能力のミスマッチの拡大等に的確に対応し,雇用のミスマッチを解消するため,今後は,職業能力開発行政の重点として,労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力開発(キャリア形成)を促進するとともに,これに資する職業能力評価制度を整備することが必要となっている。
 一方,青少年労働者の雇用をめぐっては,[1]高い失業率,[2]高水準の未就職卒業者数,[3]早期離職の増加,[4]フリーターの増加等の問題があり,現状を放置すれば,適切なキャリア形成を行わない若年者の増加により,今後,青少年労働者自体の知識社会への不適応,さらには産業全体が必要な人的資源を確保し得なくなり,ひいては高失業化への大きな懸念がある。
 このため,青少年労働者についても,キャリア形成が適切に行えるよう,従来から実施してきた,事業主等が行う教育訓練に対する支援,公共職業訓練の推進,職業能力評価制度の整備を含む,総合的な支援が必要となっている。

1.労働者のキャリア形成支援の推進
(1) 職業能力開発促進法の改正,第7次職業能力開発基本計画の策定
 平成13年4月に,職業能力開発の基本法である職業能力開発促進法を改正し,労働者の自発的な職業能力開発を促進するために事業主が講ずべき措置の明確化等を行った(平成13年10月1日施行)。また,事業主が労働者の自発的な職業能力開発を促進するために講ずべき措置を指針として明確化した(平成13年10月1日,厚生労働大臣告示)。
 また,上記の法改正の趣旨も踏まえつつ,今後の職業能力開発の目標及び施策の基本的な考え方を示した第7次職業能力開発基本計画(平成13年厚生労働省告示199号)を策定し,職業能力のミスマッチを解消し雇用の安定を図るため,労働力需給調整機能の整備とともに,以下のようなインフラストラクチャーの整備を進めていくこととしている。
[1] キャリア形成の促進のための支援システムの整備
[2] 職業能力開発に関する情報収集・提供体制の充実強化
[3] 職業能力を適正に評価するための基準,仕組みの整備
[4] 能力開発に必要な多様な教育訓練機会の確保
(2) キャリア・コンサルティングの推進
 労働者個人の主体的なキャリア形成,求人と求職の効果的なマッチングを促進するため,労働者等に対するきめ細かな相談を行う「キャリア・コンサルタント」の養成を推進することにより,職業生活設計を踏まえた能力開発や職業選択に関する相談機能の強化を進めている。
(3) 青少年労働者のキャリア形成支援
 上記のように,青少年労働者のキャリア形成支援が重要であることから,今後は,[1]在学中からの職業体験機会の充実,[2]若年者に対する職業訓練等の充実,[3]若年者の適職選択及び定着促進,[4]不安定就労若年者(いわゆるフリーター)対策の強化の各政策を展開していく必要があり,一部事業については平成14年度補正予算において実施したところである。
 また,若年層を中心に職業の体験機会や職業情報を提供するとともに,職業に関する相談・援助を行うなど,学校,企業,地域社会や他の若年者支援施設・機関とも連携しながら,キャリア形成を総合的に支援することを目的として,平成15年3月に「私のしごと館」(京都府関西文化学術研究都市)の事業運営を開始した。

2.労働者の自発的な能力開発の推進
 技術革新の進展,産業構造の変化,就業意識の多様化等に伴い,労働者の自発的な職業能力の開発及び向上を推進することが重要となっている。このため,ハローワークや,雇用・能力開発機構都道府県センターに設置された「キャリア形成支援コーナー」において,労働者及び求職者等に対して,キャリア・コンサルティングを実施し,能力開発プランの作成等きめ細かな相談支援を実施している。
 また,労働者が自発的に能力開発に取り組むことを支援し,雇用の安定等を図るため,「教育訓練給付制度」を推進している。厚生労働大臣の指定する教育訓練講座は,平成15年4月1日現在で1万6,822講座となっている。本制度は,平成13年度の利用者数が約28万5,000人となり,労働者の自発的な能力開発や雇用の安定のために重要な役割を果たしている。

3.事業主等が行う能力開発に対する支援
 労働者の職業生活の全期間を通じて職業能力開発が行われることが重要であり,労働者の主体的な職業能力開発とともに,事業主が行う能力開発を積極的に推進する必要がある。厚生労働省では各種施策を通じて,事業主が行う能力開発を支援している。
 まず,事業主が職業能力開発を段階的・体系的に進めるための計画(事業内職業能力開発計画)の策定等を支援するため,都道府県職業能力開発協会の職業能力開発サービスセンターにおいて助言,相談等を行っている。また,全国の公共職業能力開発施設においては,地域の事業主等のニーズに基づいて,在職者訓練を実施しているほか,職業訓練を行う施設の貸与,指導員の訓練の援助を行っている。
 また,事業主が事業内職業能力開発計画及びこれに基づく年間職業能力開発計画において能力開発の目標及び内容を明確化し,これを労働者に周知した上で,職業訓練の実施,職業能力開発休暇の付与,長期教育訓練休暇制度の導入,職業能力評価の実施又はキャリア・コンサルティングの機会の確保を行った場合に助成を行う制度として,「キャリア形成促進助成金」の支給を行っている。

4.公共職業訓練の推進
 国(雇用・能力開発機構)及び都道府県等は,公共職業能力開発施設を設置・運営し,離職者が再就職に必要な能力を身につける離職者訓練,労働者の技能のレベルアップを図る在職者訓練,中学・高等学校卒業者等に対して,職業に必要な技能及び知識を身に付けさせる学卒者訓練を実施している。
 平成13年度においては,離職者約52万人,在職者約51万人,学卒者約3万人計106万人に対し公共職業訓練を実施したところであるが,とりわけ,現下の厳しい雇用情勢が続く中で,公共職業訓練では特に離職者を対象とした訓練を重点的に実施し,求人者の人材ニーズ,訓練受講者の適性等に応じた多様な委託訓練を実施するため,これまでの専修学校等に加えて,大学・大学院,NPO,求人企業等の民間教育訓練機関の機能も有効に活用しつつ,積極的に推進しており,平成13年度においては,離職者訓練約52万人のうち約33万人,平成14年度(速報値)では,離職者訓練約42万人のうち約33万人に対して委託訓練を実施しているところである。また,再就職に結びつく効果的な職業訓練を実施するため,ハローワークに「能力要件明確化アドバイザー」を配置し,綿密なキャリア・コンサルティングを実施し,離職者の能力・適性に応じた訓練コースを選定することにより,早期再就職を図ることとしている。
 また,高等学校・大学等を卒業した未就職者のうち,在学中に習得した能力に加えて実務能力の付与が必要な者に民間教育訓練機関等を活用した,比較的短期間の職業訓練を受講させ,卒業時よりも実務能力を高めることにより,これらの者の早期就職を図る,職業能力開発支援を実施しており,今後は,学卒早期離職者,フリーターに対しても職業能力開発支援を実施することとしている(第2−5−2表)

公共職業訓練の実施状況


5.職業能力評価制度の整備
 技能検定制度は,労働者の有する技能の程度を検定し,これを公証する国家検定制度であり,職業能力開発促進法に基づき昭和34年度から実施され,労働者の雇用の安定,円滑な再就職,労働者の社会的な評価の向上に重要な役割を果たしている。本制度による技能検定試験は,政令で定める職種ごとに,等級(特級,1級,2級,3級,基礎1級,基礎2級又は単一等級)に区分して,実技試験及び学科試験により行われており,平成13年度には全国で約18万人の受検申請があり,約10万人が合格し,技能検定制度開始からの累計で,延べ252万人が技能士となっている。
 技能検定職種は,平成15年4月末現在137職種あり,これらについては,時代のニーズに合ったものとなるよう,職種・作業の新設・統廃合,試験基準の見直し等を毎年行っている。
 技能検定の実施体制については,131職種について,都道府県知事が厚生労働大臣の定める実施計画に従って技能検定試験の実施等の業務を行い,試験問題の作成は中央職業能力開発協会が行っている。また,6職種について,厚生労働大臣が民間の機関を指定試験機関に指定し,これらの機関が技能検定試験の実施等の業務を行っている。
 技能検定については,若年技能者の育成,若年者の職業意識の啓発及びキャリア形成を図るために,高等学校卒業者,職業訓練修了者(いずれも卒業見込みの者を含む。)等を対象とした3級の技能検定を拡充しているところである。
 また,平成14年度以降,産業界等との連携の下に,労働市場で通用する,幅広い職種を対象とする包括的な職業能力評価制度の整備に向けた検討を行っている。

6.技能の振興
 青少年を中心としたものづくり離れや熟練技能者の高齢化が進む中で,我が国産業の発展を担う優れた技能を維持・継承していくためには,広く国民がものづくりに対する技能の必要性,重要性について理解を深め,技能や熟練技能者が尊重される社会を形成していく必要がある。
 厚生労働省においては,広く社会一般に技能尊重の気運を浸透させること等を目的として,卓越した技能者の表彰(通称「現代の名工」)を毎年実施するとともに,青年技能者が技を競う「技能五輪全国大会」(平成14年度は熊本県において開催,34職種に781名が参加),特に優れた技能を有する一級技能士等が参加しその技を競う「技能グランプリ」(平成14年度は千葉県において開催,29職種に436名が参加)等の技能競技大会を開催するなどの取組みを行っているところである。なお,平成19年には,国際的に青年技能者がその技を競う「技能五輪国際大会」を静岡県で開催することが決定している。
 また,高度な熟練技能を駆使して,高精度・高品質な製品を作り出すこと等ができる高度熟練技能者の認定を行うとともに,高度熟練技能に関する情報の収集・提供,高度熟練技能者等による,青少年に対するものづくり教育・学習に係る実技指導等に対する支援等を通じて,高度なものづくり熟練技能の後継者の育成・確保に資する事業を行っている(平成14年度は12業種について456人認定)。
 さらに,青少年のものづくり離れや技能の継承が懸念される中で,ものづくりを担う人材として技術・技能の双方に通じ,かつ,マネジメントもできる新しいタイプの人材を育成することを目的とした「ものつくり大学」に対し,その設立を支援し,同大学は平成13年4月1日開学した。


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