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第2部 青少年に関する国の施策

第6章 社会環境の整備に関する施策

第1節 有害環境の浄化等

1.概説
 青少年を取り巻く社会環境は,発達途上にある青少年の人格形成に強い影響を及ぼしている。とりわけ青少年の健全な育成に有害であると認められるもの,例えば,性的感情を著しく刺激し,又は粗暴性,残虐性を助長するおそれのある出版物,ビデオ,パソコンソフト,映画,広告物,放送番組等や享楽的な色彩の強いスナック,ディスコ,深夜飲食店,ゲームセンター,カラオケボックス等は,しばしば非行の誘引ともなっており,少年非行防止対策上憂慮すべき問題である。有害な雑誌,ビデオ等の刺激を受けわいせつや残虐な行為等に走るケース,ディスコやゲームセンターで遊ぶための小遣い銭欲しさに非行に走るケース等は,依然として後を絶たない。また,最近では,テレホンクラブ,「出会い系サイト」に係る営業等の出現により,これらに係る女子少年の性的な被害,問題行動等が大きな問題となっているほか,インターネットの普及により,青少年のわいせつ画像等有害情報へのアクセスが懸念されている。

2.青少年を取り巻く環境の浄化等対策
 有害な社会環境については,青少年自身の意思と判断による対応が基本となるが,同時に,これを支える家庭や学校における指導,そして,地域の人たちによる青少年の健全育成の観点からの有害環境浄化のための積極的な活動,青少年のための有害環境浄化についての関係者の深い理解と協力が必要である。
(1) 関係業界の自主規制の促進
 有害環境の浄化には,何よりもまず関係業界自身が自主規制を図ることが大切である。
 そのため,政府としても,これまでたびたび業界団体等に対して自主規制の要請を行ってきた。平成14年10月にも,青少年育成推進会議の「「出会い系サイト」に係る児童買春等の被害から年少者を守るために当面講ずべき措置」の申し合わせを受け,より一層の取組の推進・充実について協力を要請したところである。
 なお,現在行われているマスコミはじめ関係業界の自主規制の状況は,第2−6−1表のとおりである。

関係業界の自主規制の状況

(2) 住民の地域活動の促進
 露骨な性描写のある少年少女向けコミック誌・単行本等の追放については,各方面で住民の活発な地域活動が展開され,かなりの成果が収められている。しかしながら,近年の社会情勢の変化に伴い生活環境も年々変化し,青少年を取り巻く新たな有害環境の発現もみられるようになってきている。このような環境の浄化のためには,幅広い住民の一般的な合意に基づき,地域を挙げての住民運動を通じて,問題が解決されることが最も望ましい方向であるとともに,これを促進することにより,関係業界の自主規制も促進されるものと考えられる。
 これら住民の活動の促進を図るため,内閣府が関係省庁,関係機関・団体等の参加・協力を得て毎年行っている「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」(7月)及び「全国青少年健全育成強調月間」(11月)においても,「有害環境の浄化活動の推進」を月間の重点事項として定め,住民の参加による有害環境の浄化活動を推進している。
 また,「平成13年環境浄化重点地区」においては,地域住民やボランティアが中心となって,各種の環境浄化活動が活発に行われている。
 さらに,文部科学省では,青少年の健全育成のための環境整備の観点から,PTAが平成10年度から実施しているテレビ番組の全国モニタリング調査を支援しているところである。
(3) 法令による規制と取締り
 現在,有害環境を規制する法令には,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭23法122。以下「風適法」という。)等がある。風適法は,18歳未満の者を客として風俗営業等の営業所に立ち入らせたり,そこで接客業務に従事させたりすること等を禁止しているほか,平成10年の改正により,性を売り物とする営業として,新たに「無店舗型性風俗特殊営業(アダルトビデオ等の通信販売営業及び派遣型ファッションヘルス営業)」及び「映像送信型性風俗特殊営業(インターネット等を利用してポルノ映像を見せる営業)」が規制の対象に加えられ,18歳未満の者を客とすることを禁止するなど年少者保護のための規定等が整備された。また,いわゆるピンクビラ,ピンクチラシ対策として,これらの営業と「店舗型性風俗特殊営業(ソープランド,ストリップ劇場等,従来の風俗関連営業)」に対する広告及び宣伝の規制が新設・強化された。
 テレホンクラブ営業等性を売り物とする性風俗関連特殊営業等の営業は,性の逸脱行為や福祉犯被害の契機となるおそれが強いことから,警察では,風適法の法令による指導取締りに努めている。
 特に,テレホンクラブ営業については,同営業の利用を契機とした少年の性被害が多発しているとともに,「援助交際」と称する児童買春(かいしゅん)の温床となっている状況がみられることから,平成13年の改正により,「電話異性紹介営業」として風適法によって規制されることとなった。この改正により,テレホンクラブ営業を営む者に対し,電話による会話の申込みをした者が18歳以上であることを確認する措置(年齢確認措置)等が義務付けられ,これに違反した場合には,都道府県公安委員会による行政処分を課すことができるようになった。
 このほか,地方公共団体でも青少年の保護育成に関する条例がある。条例による規制においては,主に,青少年に有害なものとして知事が指定した興行,図書類(雑誌,ビデオ,CD−ROM等),いわゆるブルセラ商品,広告物等の観覧,販売,提出等の禁止等が規定されている。
 なお,知事による指定方法については,都道府県に設置される審議会の意見を聴くなど,図書類の内容を個別に審査し,指定する方式(個別指定方式)と緊急の場合に審議会の審議を経ないで指定し,後日,審議会へ報告する方式(緊急指定方式)やわいせつな写真等の一定基準以上のものを自動的に指定する方式(包括指定方式)があり,これらを併用する条例が多い(第2−6−2表)

青少年の保護育成条例による有害指定件数の推移

 また,カラオケボックス等の娯楽施設は,不良行為少年のたまり場となり,あるいは,飲酒,喫煙等の不良行為が行われるおそれが大きいことから,警察では,補導活動や営業者等による違法行為の取締りに努めるとともに,業界団体や営業者に対して,少年の健全育成に配慮した営業の自主規制を徹底するよう指導している。
 また,テレホンクラブの全国的な増加に伴い,福祉犯(児童買春や覚せい剤密売など少年の福祉を害する犯罪)の被害に遭う少年が問題となり,これらの広告ビラなどが公衆電話ボックス等に氾濫するなど,少年の健全育成上に大きな問題となったことから,これら被害を防止するため,都道府県においては,テレホンクラブの利用カード販売等,テレホンクラブ営業の利用を助長する行為を規制する条例が制定されている。
 警察では,有害環境の浄化に関し,違法行為を認知した場合には,風適法や前記条例等の各種法令を活用した積極的な取締りに努めている。
(4) 青少年を取り巻く環境に関する実態調査等
ア 青少年有害環境対策推進事業
 内閣府では平成13年度から,青少年育成国民会議に委嘱して,青少年を取り巻く有害環境の実態等を調査・把握し,青少年を保護するための方策を検討するとともに,青少年有害環境対策についての情報を収集・編集し,関係機関等に提供する「青少年有害環境対策推進事業」を実施している。
イ 青少年を取り巻く有害環境対策に関する調査研究
 メディアが提供する情報には有用なものも多い反面,特に性・暴力表現に関する情報などは,子どもに悪影響を及ぼす場合があるとの指摘もあるなど懸念される状況にある。このような中,子どもとメディアとのより良い関係を社会全体で構築していくという観点から様々な活動が行われ始めており,今後,NPO等の活動の一層の活性化が期待されるところである。
 そこで,文部科学省では平成13年度から,我が国におけるNPO等の活動の参考となる事項を広く紹介するため,学識経験者等の協力を得て,海外におけるNPO等の先進的な取組の調査を実施している。
 平成13年度は「テレビ放送」をテーマに実施し,報告書をとりまとめたところであるが,平成14年度は,「インターネット」をテーマに,米国のNPO等の取組について実地調査を実施した。
 また,この調査結果を基に協力者会議において議論を行い,これらを「『子どもとインターネット』に関するNPO等についての調査研究―米国を中心に―」を取りまとめたところである。平成15年度も引き続き有害環境対策に関する調査研究を実施する予定である。

3.メディア分野における取組
(1) 政府における指針
 青少年を取り巻く環境の整備という課題に,国,地方公共団体,関係業界団体等及び国民が一体となって取り組んでいくため,平成13年10月の青少年育成推進会議において,関係省庁間でより緊密に連携しながら取組を進めていくための共通指針として「青少年を取り巻く環境の整備に関する指針」の申合せを行った。同指針は,[1]国の取組事項,[2]国から地方公共団体への要請事項,[3]国から関係業界団体等への要請事項について盛り込むとともに,政府が実施する各調査研究の概要や関係業界団体等における取組の現状について紹介している(参考資料3(3)参照)
(2) 放送における青少年対策
 総務省では,平成11年11月から12年6月まで「放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会」を開催し,青少年が「メディア社会を生きる力」としてのメディア・リテラシーの向上に向けた施策の方向性について検討を行った。本研究会の提言を受け,メディア・リテラシー教材を開発,現在,各総合通信局において貸出を行っている。
(3) インターネットにおける青少年対策
 総務省では,インターネット上の違法・有害情報の流通に関するルールを検討するため,平成9年10月から12月まで「電気通信サービスにおける情報流通ルールに関する研究会」を開催した。この研究会の提言に基づき,プロバイダ等が加盟する(社)テレコムサービス協会が10年2月に策定した自主規制のためのガイドライン「インターネット接続サービス等に係る事業者の対応に関するガイドライン」及びこのガイドラインの趣旨を具体化するため12年1月に策定した「インターネット接続サービス契約約款モデル条項」について,その策定を支援し,一層の周知徹底に努めている。また,モデル地域の横浜市の協力を得て,受信者側においてインターネット上の有害情報を選別(フィルタリング)する技術の研究開発を13年3月まで実施した。さらに,これらの取組の現状を踏まえ,プロバイダ等による自主規制の支援とフィルタリング等による技術的な取組の一層の促進を図り,国民が安心してインターネットを利用できる環境を整備するため,12年5月から12月まで「インターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会」を開催し,その提言を踏まえ適切な対応を進めている。
 また,風適法では,インターネット等を利用してポルノ映像を見せる営業(映像送信型性風俗特殊営業)が18歳未満の者を客とすることを禁止しているほか,18歳未満の者が通常利用できない方法による客の依頼のみを受けることとしている場合を除き,電気通信事業者に対し料金徴収を委託してはならないこと,及び客が18歳以上である旨の証明又は18歳未満の者が通常利用できない方法により料金を支払う旨の同意を受けた後でなければ,当該映像を送信してはならないことを規定している。また,プロバイダに対してもわいせつな映像及び児童ポルノ映像の送信防止に関して一定の努力義務を課し,これを遵守していない場合には都道府県公安委員会は総務大臣と協議した上で必要な措置をとるべきことを勧告することができることとされている。
 さらに,インターネット等コンピューターネットワークを通じて,少年でも有害な情報にアクセスできる状況が出現していることから,警察では,平成14年3月に取りまとめられた「インターネット上の少年に有害なコンテンツ対策研究報告書」の提言を踏まえ,ネットワーク上の少年に有害な情報に対する総合的な対策を推進している。
(4) ダイヤルQ2における青少年対策
 NTTのダイヤルQ2サービスにおいて,いわゆるアダルト番組,ツーショットなど青少年に悪影響を与える番組の提供が社会的に問題化したため,(社)全日本テレホンサービス協会による倫理規定の制定,NTTによるダイヤルQ2につながらないようにする利用規制,高額利用の契約者への請求前のお知らせ,加入電話契約者以外の者が利用した場合のダイヤルQ2情報料の回収代行取りやめなどの対策を講じてきたところであるが,さらに,平成14年1月には,ダイヤルQ2の利用について原則事前申込みによるパスワード制を採ることとなった。

4.少年の福祉を害する犯罪の取締り等
 児童買春(かいしゅん)・児童ポルノ法違反や児童福祉法違反等の福祉犯は,少年の心身に有害な影響を及ぼし,健全な育成を著しく阻害することから,警察では,その積極的な取締りと被害少年の発見保護に努めている。
(1) 福祉犯の被疑者の検挙状況及び少年に対する暴力団の影響の排除
 平成14年の福祉犯の検挙人員は6,221人で,前年に比べ158人(2.5%)減少した(第2−6−1図)。このうち,暴力団員の検挙人員は635人で,福祉犯における検挙人員の10.2%を占めている(第2−6−3表)。また,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平3法77)を活用し,少年の暴力団離脱・加入防止対策を推進するなど,少年に対する暴力団の影響の排除に努めている。

福祉犯の法令別送致人員


福祉犯の法令別暴力団等関係者の関与状況

(2) 児童買春・児童ポルノ問題
 国際的にも問題となっている児童買春や児童ポルノは,児童の権利保護や少年の健全育成を図る上で大きな問題であり,平成11年11月,児童買春・児童ポルノ法が施行されたことから,同法による積極的な取締りに努めており,14年中は2,091件,1,366人を検挙している。
(3) 「出会い系サイト」問題
 「出会い系サイト」を利用した犯罪については,児童買春・児童ポルノ法等による積極的な取締りに努めており,平成14年中は,児童買春・児童ポルノ法違反事件813件,499人,青少年保護育成条例違反435件,349人を検挙している。
 また,このような犯罪被害を防止するための広報啓発活動をはじめ,プロバイダやサイト管理者に「出会い系サイト」の児童の利用を防止するための表示を行うなどの協力要請を行っている。

5.少年の福祉を害する成人の刑事事件
 平成13年度中における少年の福祉を害する成人の刑事事件(以下「成人刑事事件」という。)の全国の家庭裁判所での新規受理人員は306人で,前年と比較して58人(23.4%)の増加となっている。
 平成13年度中に家庭裁判所において成人刑事事件で有罪の言渡しを受けた者は269人で,その罪名別の内訳は第2−6−4表のとおりである。

家庭裁判所の成人刑事事件有罪人員の罪名別構成比

 平成13年度中に家庭裁判所において成人刑事事件で有罪の言渡しを受けた者を刑名別にみると,懲役が218人,罰金が51人である。懲役刑を言い渡された者のうち160人(73.4%)は,執行猶予となっている。
 なお,平成13年度における成人刑事事件の被害者である少年は,前年度より46人(14.4%)増加して366人となっている。その内訳をみると,年齢別では,16・17歳が238人(65.0%),15歳以下が128人(35.0%)となっている。男女別では,女子が337人(92.1%),男子が29人(7.9%)となっている。


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