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第1部 青少年の現状
乳児死亡率(出生千人当たりの生後1年未満の死亡数)は,地域及び社会全体の保健水準や生活水準を反映する指標の一つと考えられる。我が国においては,大正末期まで150を超えていたが,戦後,急速な改善をみせ,現在では世界でも有数の低率国となり,平成14年は3.0となっている(第1−2−1表)。

乳児死亡の原因としては,戦後は肺炎や腸炎等の感染症疾患が多かったが,近年それらは減少し,先天奇形・変形及び染色体異常,出生時仮死,周産期の呼吸障害及び乳幼児突然死症候群(SIDS)などが中心となってきている(第1−2−2表)。

厚生労働省が昭和35年から10年ごとに実施している「乳幼児身体発育調査」により乳幼児の身長と体重の推移をみると,第1−2−3表のとおりである。

平成15年度の小学校,中学校,高等学校及び中等教育学校における児童生徒の身長,体重及び座高の全国平均値を年齢別にみると,第1−2−4表のとおりである。

ア 身 長
男子の身長は,前年度の同年齢より,9歳,15歳及び16歳で増加し,9歳で過去最高となっている。
女子の身長は,前年度の同年齢より,11歳で増加している。
また,女子の身長は,10歳及び11歳で男子の身長を上回っている。
イ 体 重
男子の体重は,前年度の同年齢より,7歳から9歳及び15歳から17歳の各年齢で増加し,8歳及び15歳から17歳の各年齢でそれぞれ過去最高となっている。
女子の体重は,前年度の同年齢より,6歳,9歳,11歳及び16歳の各年齢で増加し,16歳で過去最高となっている。
また,女子の体重は,11歳で男子の体重を上回っている。
ウ 座 高
男子の座高は,前年度の同年齢より,15歳で増加している。
女子の座高は,前年度の同年齢より,11歳で増加している。
また,女子の座高は,10歳から12歳の間で男子の座高を上回っている。
全体的には,身長,体重,座高のいずれも,男女とも横ばい傾向にある。
文部科学省が昭和39年以来毎年実施している「体力・運動能力調査」の平成14年度調査によると,青少年の体力・運動能力の現状は次のとおりである。
走(「50m走」・「持久走」)・跳(「立ち幅とび」)・投(「ソフトボール投げ」又は「ハンドボール投げ」)の基礎的運動能力及び握力(「筋力」)の年次推移の傾向をみると,長期的には,発育期の一部の年齢において年次変化の差が認められないものもあるが,ほとんどの年齢段階でいずれの基礎的運動能力及び握力も低下傾向にあることがうかがえる(第1−2−5表)。

11歳の「50m走」及び「ソフトボール投げ」について,親の世代(30年前の昭和47年度調査)と比較すると,両項目とも親の世代を下回っている(第1−2−1図)。

運動・スポーツの実施と新体力テスト合計点との関係をみると,積極的に運動・スポーツを実施している群(週1〜2日程度)の体力水準は,運動・スポーツを実施していない群との差が9歳ごろから明確になり,発育とともにその差は開く傾向を示している(第1−2−2図)。

乳幼児期は身体的にも精神的にも急速な成長・発達の途上であり,人の一生の基盤を形成する時期でもあることから,この時期の栄養は,特に重要である。
近年の乳幼児期の栄養状態は,国民経済の伸長による国民全般の栄養状態の向上を背景にして,また,育児知識の普及,食品加工技術の進歩等とあいまって著しく改善されている。
乳汁栄養法(母乳,人工乳等)の状況を年次推移でみると,母乳栄養から一時期,人工栄養による育児への移行がみられたが,近年,母乳中の栄養成分をはじめ,免疫抗体や精神的,情緒的発達など母子相互作用の面からも母乳の重要性が見直される傾向にある。
また,核家族化や女性の社会進出等の影響により,幼児を取り巻く家庭環境や社会環境は,大きく変化してきている。
例えば,家族の生活時間のずれから,家族団らんの場である食事の時間がバラバラになってきたことや市販品の安易な使用など,幼児の食生活にも変化がみられ,最近は小児期から肥満など生活習慣病の予防のための健康な食習慣の形成とともに,食を通じた家族形成や人間性の育成についての重要性が指摘されてきている。
健康の保持増進及び体位・体力の向上を図るためには,その基盤の一つとして,栄養素等の摂取に対する適切な配慮がなされる必要がある。
栄養素等の摂取状況をみると,平均的にはおおむね良好であるが,個々人においては栄養素等の過剰摂取や偏り等の新たな問題が生じてきている。
栄養素等の摂取状況をみると,いずれの年齢層でも,鉄の摂取量が,対象年齢層の栄養所要量を下回っている(第1−2−6表)。

また,適切な食品選択や食事の準備のために必要な知識や技術が,「あまりない」,「まったくない」者が,15〜19歳では,男性78.1%,女性75.5%であり,これらの年齢層における,栄養・食生活や健康に関する知識等に関する知識等の普及啓発が必要である(第1−2−3図)。

なお,最近の青少年期における食生活の問題として,欠食の習慣化が挙げられる(第1−2−7表)が,欠食は,摂取栄養素のバランスを乱し,貧血症等の原因にもなっている。

厚生労働省の「患者調査」から平成14年の青少年の受療率(人口10万人当たりの推計患者数)を年齢階級別にみると,最も高いのは0歳(6,574)で,1〜4歳(5,567)がこれに次いでいる。最も低いのは15〜19歳(1,859)である。男女別にみると,0〜14歳では男子が高いが,15〜24歳では女子が高くなっている。疾病別にみると,0〜14歳では呼吸器系の疾患が最も高く,15〜24歳では消化器系の疾患が最も高い。
次に,平成15年度における児童生徒の被患率の高い疾病・異常を学校種別にみると第1−2−4図のとおりである。被患率の最も高いものは「むし歯」で,虫歯のある者(処置完了者も含む。)の割合は,小学校及び高等学校で70%を超えているが年々低下傾向にある。次に高いものは「裸眼視力1.0未満の者」で,学校段階が進むにつれて高くなっている。次に高いものは「その他の歯疾患」で,次いで「鼻・副鼻腔疾患」となっている。男女別にみると「むし歯」,「裸眼視力1.0未満の者」については,おおむね女子のほうがやや高いが,「その他の歯疾患」,「鼻・副鼻腔疾患」については,全体的に男子のほうがやや高くなっている。
