特集 キャリア教育等の時代へ〜自分でつかもう自分の人生〜 はじめに  皆さんは「キャリア教育」という言葉をご存知ですか。まだまだなじみの薄い言葉かもしれませんが,学校教育の分野では,「望ましい職業観・勤労観や職業に関する知識・技能を身に付けさせるとともに,自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力・態度を育てる」教育を指すものとされています。  具体的には,小学生や中学生が,近くの企業や工場を訪れる職場体験のようなものや,大学で行われるインターンシップ(就業体験)のようなものが該当しますが,このほかにも,日々の学科の授業の中で,社会の仕組みについて勉強したり,さらには「数学を学ぶことが将来どのような意味を持つか」といったことを学ぶのもキャリア教育に含まれます。  また,キャリア教育は必ずしも学校教育の場に限られるものではありません。  職業訓練校で就職に必要な技能を身に付けることや,さらに言えば,高校卒業後進学も就職もできずにいる若者に対して,必要な相談支援等を行うことも「自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力・態度を育てる」ことにつながります(こうしたことも含める意味で本稿では「キャリア教育等」という言い方を用います。)。  こうしたキャリア教育等は従来から必要なものであったわけですが,雇用形態の多様化等を背景に非正規雇用の増大等若者の進学・就職をめぐる環境が大きく変化するのに伴い,「若者の社会的自立」ということがクローズアップされ,その中でキャリア教育等の重要性・必要性が強く認識されるようになってきました。  政府では,これまでもキャリア教育等に関する各種取組を推進してきたところですが,このキャリア教育等をより一層推進するため,関係閣僚で構成される「キャリア教育等推進会議」を設置し,この度,「キャリア教育等の推進」という視点で,初めて関係施策を体系的にまとめた「キャリア教育等推進プラン」を策定しました。  この特集では,こうしたキャリア教育等について,その必要性が高まってきた背景や我が国における取組の現状,政府が取りまとめた推進プランの内容等を紹介します。 1. 若者の就職をめぐる状況  近年,経済構造の変化や雇用形態の多様化等を背景に,若者の進学や雇用をめぐる環境が大きく変わってきています。まず,就業等の状況ですが,平成19年4月の完全失業率は3.8%ですが,15歳〜24歳の年齢層では7.5%と高い水準となっています。また,平成18年平均では,フリーターが187万人,いわゆるニートに近い概念である若年無業者が62万人となっており,前年と比べていくらか改善がみられたものの依然として深刻な状況が続いています。  次に,卒業後3年以内の離職率をみると,中卒70.4%,高卒49.3%,大卒35.7%(平成15年3月新規学卒者)となっており,いわゆる「七五三現象」といわれるように,若者がせっかく職を得ても,自ら抱いたイメージと現実とが異なる等の理由で,わずか数年勤めただけで辞めてしまうような事態が生じています。また,就職も進学も決まらないまま,学校段階を終えていく人も,少なくありません。  このように,社会的な自立を果たしていくことが困難な状況にある若者が多く存在している状況は,社会全体にとっても健全な状態とはいえず,若者が自らの個性や適性を自覚し,主体的に進路を選択し,社会的自立を果たしていく力を身に付けるキャリア教育等の必要性がクローズアップされています。 2. キャリア教育等の意義とこれまでの政府の取組 (1)キャリア教育等の意義  キャリア教育等は,「望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに,自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力・態度を育てる」ものであり,若者一人一人にとっては,自己の個性・特性をよく知り,将来の進路と毎日の学びや体験の意義とを結び付け,社会的自立に向けて必要な力を身に付ける極めて重要な学習機会です。  また,学校にとっては,職場体験の実施等を通じ,産業界や地域社会との対話を得る機会が増えることにつながり,教育目標やその達成のための教育内容・方法の改訂など,教育課程編成の改善や見直しを促すとともに,産学連携教育の一層の推進に資するものです。  さらに,企業等にとっては,職場体験者の受入等を通じ,若者の就業に対する理解を深めさせることや,実践的な能力を備えた人材を育てることに寄与するものであり,また,地場産業が受入先になることで,地域に対する愛情をはぐくみ,地場産業や地域工芸等に対する理解の促進と継承に資するものです。  そして,我が国全体としては,少子高齢化による労働力人口の低下を補い,活力ある経済社会の発展に資するとともに,結婚には経済的基盤や就業等についての将来の見通し・安定性が大きな影響を与えていることから,キャリア教育等を通じた社会的自立の促進は,我が国喫緊の課題である少子化対策にも資するものといえます。さらに,経済のグローバル化が進展する中で,実践的な能力を備えた人材を育成していくことは,我が国社会の活力や国際競争力の向上に寄与するものです。 (2)キャリア教育等に関する政府の取組  先に述べたような若者の就職状況をめぐる環境の変化に伴い,政府ではこれまでもキャリア教育等に関する様々な施策を講じ,推進してきました。  表は,過去5年間程度の動きをまとめたものですが,例えば,平成15年6月,ニート,フリーターの増加等を背景に,官民一体の総合的な人材対策として若者自立・挑戦戦略会議が策定した「若者自立・挑戦プラン」において,キャリア教育,職業体験等の推進等が盛り込まれ,また,同年12月に策定された「青少年育成施策大綱」においても,すべての年齢期を通じて特に重点的に取り組む課題として「社会的自立の支援」を掲げ,インターンシップの充実やキャリア教育の推進が必要であるとしています。  さらに最近では,平成18年12月に策定された「再チャレンジ支援総合プラン」において,「長期デフレ等による就職難,経済的困窮等からの再チャレンジ」として,いわゆる「就職氷河期」に直面した若者,特にフリーターの常用雇用化やニートの職業的自立を促進することとし,具体策の一つとして,キャリア教育等関連の施策が盛り込まれています。  また,平成19年2月,成長力底上げ戦略構想チームは,経済成長を下支えする基盤の向上を図り,働く人全体の所得や生活水準を引き上げつつ,格差の固定化を防ぐことを目標に,[1]人材能力戦略,[2]就労支援戦略,[3]中小企業底上げ戦略の3つを柱をとした「成長力底上げ戦略(基本構想)」を策定しました。このうち人材能力戦略では,職業能力形成プログラムの提供と履習実績等を記載する「ジョブ・カード」の交付による「職業能力形成システム」(通称:『ジョブ・カード制度』),大学・専門学校等を活用した教育プログラムによる「実践型教育システム」の構築等の取組を進めることとしています。 キャリア教育に関する政府の主な施策等 年月日 平成15年6月 12月 平成16年12月 平成18年1月 12月 平成19年2月 施策等の名称 若者自立・挑戦プラン 青少年育成施策大綱 若者の自立・挑戦のためのアクションプラン 若者の自立・挑戦のためのアクションプラン(改訂) 再チャレンジ支援総合プラン 成長力底上げ戦略(基本構想) 関係府省等名 若者自立・挑戦戦略会議 青少年育成推進本部 若者自立・挑戦戦略会議 若者自立・挑戦戦略会議 再チャレンジ推進会議 成長力底上げ戦略構想チーム 3. キャリア教育等の様々な試み (1)日本における先進的取組事例  ここでは,日本における取組事例として,[1]各学校段階におけるキャリア教育の取組,[2]地域社会・民間団体の協力によるキャリア教育プロジェクトを紹介します。 □ 各学校段階におけるキャリア教育の取組 ● 「みんなで職場探検〜あかつき探検隊〜」―愛知県田原市立東部小学校の取組―  この学校では,平成16年度から,「地域の良さを体験し夢の実現へ」という目標を掲げ,独自の学習プログラムを作成し,総合的な学習の時間や生活科の時間を体験活動の核としたキャリア教育を実践しています。  具体的には,3年生から6年生の縦割り班で「あかつき探検隊」を編成し,校区内の工場や商店・農家などを訪ね,仕事の様子や職業への思いなどを見聞する活動を行っています。また,自主性や社会性を身に付けるため,子どもたち自身が探検先への依頼を行うなど,探検先探しから探検コースづくりまで,子どもたちが主体的に準備を進めていくことが,この活動の特徴です。  平成18年度は,一班当たり約18名の児童を単位とする班を全8班編成し,校区内の多彩な探検先を訪ねました。参加した児童からは,「どんな仕事でも一生懸命やることが大切だと思いました。」,「人のために工夫や努力をして喜んでもらえたとき,とても嬉しいんだということを学びました。」といった感想が聞かれています。 自動車販売店を探検中 仕事の内容や,楽しいこと,たいへんなことなどをインタビューしているところ ● 「育ててくれた街に感謝」―京都市立伏見中学校の取組―  この学校では,総合的な学習の時間を中心に,地元の商店街や伝統産業を始めとする様々な事業所と連携し,伝統的教育風土を有する京都市ならではの取組を展開しています。  具体的には,2年生において,地元事業所の協力のもと5日間の職場体験を実施しています。ここでは,職場探し,アポイントから体験活動までを生徒個々が主体的に進めています。平成19年度は,96の事業所の協力を得て2年生の生徒187名が5日間の職場体験に参加しました。この体験を通して,生徒からは,「学校で学べないことが学べて良かった。」,「人生の先輩の生き様が見られてよかった。」などの感想が報告されています。  また,職場体験を行うに当たっての事前・事後学習も充実させており,「ひと・まち・ろまん伏見に活きる」をテーマに,1年生では豆記者体験を行い,グループに分かれて生徒自らが地元事業所を訪問し,事業所の方から経営方針や働くことの楽しさなどを取材しています。また,その内容を発表するなどの活動を通して,単に職業観や勤労観を育てるだけでなく,情報を集め,整理,活用し,まとめあげる力を育成しています。  さらに,3年生では,これまでの学習の成果を踏まえ,平成18年度には,「地場産業活性化プラン」として,地元の伝統産業であるアラメと京瓦に関するCMビデオ・ロゴ作成や商品開発等を商店と連携して行い,その成果を発表しました。  このように,地元事業所と連携しつつ,地元の活性化に寄与する視点も入れながら,すべての学年を通じて,系統的なキャリア教育を行っています。 スーパーでの職場体験 惣菜部門で揚げ物調理中 ● 「変化する自分〜体験で自己を知り,進路を考える〜」―佐賀県立嬉野高等学校の取組―  この学校では,「学力」を社会に出てから生きてくるものととらえ,学年を通して,体系的なキャリア教育を実践しています。特に,1年生を対象に行われるインターンシップでは,「何のために働くのか?」を原点に望ましい職業観・勤労観を身に付けさせ,主体的に生きる力を育成することを主眼として実施しています。  平成17年度においては,1年生160名が36事業所で最長6日間のインターンシップをしました。「変化する自分」を実感させるために,事前準備としてインターンシップの前に自分史を作ることにより,自己分析を行わせ,今後の自分の進むべき道を考えてもらうようにしています。また,期間中は帰宅後,体験内容や感想を日記に記入させ,その日1日を振り返り,明日へのステップアップになるように指導しています。さらに体験後,アンケートを実施し,体験前後の気持ちの変化について記入をさせるなどの指導をしています。この取組については,事前指導をより充実させるとの観点から,平成19年度からは2年生が実施する予定となっています。 保育園でのインターンシップ 保育士として実際に子どもたちの世話をする体験を行っているところ ● 「キャンパスを超えた人材育成〜職業人の基礎力から実践力まで」―鹿児島大学の取組―  鹿児島大学では,地元のマスコミ,企業等と連携した総合的キャリア教育を通じ,「地方の視点」から問題発見・解決と提言を行う人材の育成に取り組んでいます。この取組は,学部の専門教育とキャリア教育を関連付ける試みであり,地方の視点を持つことにより,新たな問題を発見し,特色ある解決策を提言して,それを実践する能力を有する人材を育成するための,実践的キャリアプログラムです。  具体的には,従来の必修科目,選択科目,自由科目の枠組に加えて,「地方の視点から情報を読む」,「自己表現力をつける」,「職業人としての自分をイメージする」の3本を柱とする「キャリア教育科目群」が編成され,学生が4年間を通じて自らのキャリアビジョンを作っていけるような工夫がなされています。  「地方の視点から情報を読む」では,地域マスコミ12社と連携協力して行う「マスコミ論」や,実習科目をキャリア形成の視点から見直し地域振興の視点を強化する「地域実習」,「離島実習」などが設けられています。「自己表現力をつける」では,例えば,法政策学科で「ディベート論」等を核とした論理的思考等に関する教育プログラムを設けるなど,法政策・経済情報・人文の3学科でそれぞれ専門性を活かした「自己表現開発プログラム」が企画・実施されています。「職業人としての自分をイメージする」では,学外の実務家講師による「職業人と実践倫理」や企業・県庁等と連携・協力して行われる「行政・企業体験実習(インターンシップ)」等,実践的なプログラムが設けられています。 鹿児島大学における取組の全体図 □ 地域一体となった取組(地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクト) ● 「NPOがつなぐ地域と学校」―佐賀県佐賀市の取組―  佐賀県佐賀市では,地域のNPOを活用して,働く大変さや生きがいを学ぶキャリア教育に取り組んでいます。  小学校では,商店街での販売体験を中心に,市場調査・仕入れから収支決算までの商売活動を体験する授業を実施,中学校では,職場体験を中心に,職業観や就業観の養成,ビジネス能力・スキルの醸成を図るための事前・事後学習に取り組み,高校では,ものづくり体験を取り入れ,会社設立から商品製作,販売・収支決算に至るまでの一連の企業活動を体験する授業を行っています。  同市では,授業実施に当たり,「学校現場と地域社会との持続的なつながり」を実現するために,NPOをコーディネーターとして,商工会議所や金融機関等の地元産業界,小中高校大学等及びPTA・保護者などとの広範なネットワークを形成し,地域社会全体で子どもたちのキャリア形成をバックアップしていく協力体制を確立しています。 <小学校における取組> 事前学習(15時間) 地元商店街で,買い物客,商店主にインタビュー。 売れ筋やニーズを調査。 体験学習(33時間) 商店街の空き店舗等を活用し,販売体験。陳列,値付け,売り方(タイムサービス制等)を,事前学習をもとに工夫。 事後学習(3時間) 収支決算。会社設立時に融資を受けた金額を返済。 利益は,寄附や学校の植林に還元。振り返りの授業も実施。 ● 「やきものから学ぶ職人魂」―愛知県瀬戸市の取組―  1300年の歴史を誇る“やきものの町”愛知県瀬戸市では,従来からやきものづくりをいかした教育が行われてきました。その体験をベースに,職人の心構えや働く人々の工夫,喜び,苦労などを学ぶことのできる体系的なキャリア教育を実施するため,地元の商工会議所とNPOが中心となり,産業界,教育界,行政,PTAなどで組織する推進協議会を設立し,地域一体となってキャリア教育に取り組んでいます。  まず,小学校では,実際に自分たちの企画したやきものを製作し,地元のやきものフェスティバルで販売する授業を行っています。瀬戸焼の職人からやきものの技法を学ぶだけでなく,創業,商品企画,広報PR,販売,損益計算などの各段階に応じて,地域の社会人講師の協力・指導を受けて,授業を実施しています。  中学校では,2年生の職場体験(あいち・出会いと体験の道場)に加え,社会人講師による生きがい・働きがい講座,職業講座,マナー研修,コミュニケーション講座を実施するなど,職場体験の事前・事後の学習に取り組んでいます。  授業後のアンケートでは,「仕事というキーワードからイメージされる言葉」について,「信頼・協力・人のため・努力・楽しみ」であるという回答が,体験前の37%から61%に増加するなど,仕事に対する積極的なイメージの増加などの変化がみられています。 職人による実演 やきものの街としての特徴をいかし,子どもたちがやきものの体験を通じて,職人の仕事への姿勢を学んでいる。 (2)外国における先進的取組事例  ここでは,諸外国における若者に対する自立支援の制度から,学校段階から職業生活への移行が困難な層への対応に着目して,イギリスの例を取り上げて紹介します。 ● コネクションズ(Connexions)―イギリス(イングランド)―  コネクションズは,2001年から本格的に実施されている,13歳から19歳までのすべての若者を対象にした多面的で総合的な自立支援サービスです。  イングランド各地に47のコネクションズ・パートナーシップがあり,7,700人以上のパーソナルアドバイザー(PA)が相談員として活動しています(2003年9月)。1人のPAが個々の若者を在学中から継続的に,また,教育,職業選択,差別,いじめ等あらゆる問題に対し包括的に支援するということがコネクションズ・サービスの特徴となっています。さらに,学校,警察等の公的機関や職業紹介・訓練等の民間企業,ボランティア,NPOなど,若者にかかわる様々な組織が関わり,多方面からの総合的かつ継続的なサービスを提供しています。  コネクションズの主な活動は,学校における情報提供・キャリアガイダンス(学校内活動)と,学校を離れた後でも若者の進路を把握し,適切なサービスを提供すること(学校外活動)です。このうち,学校内活動では,就業又は進学への移行が難しい若者に対しては,専門的訓練を受けたPAが担当し,必要に応じて特定のプログラムを実施するなど,手厚い支援が行われます。  また,学校外活動では,CCISs(Connexions Customer Information Systems)と呼ばれる若者の個人情報である追跡データベースの活用により,義務教育を終了した若者の進路を確認し続けるとともに,教育・雇用・職業訓練いずれにも参加していない者に対しては3か月に1回,進学者に対して1年に1回接触し,継続して支援することが決められています。 4. 我が国におけるキャリア教育等の更なる推進に向けて (1)キャリア教育等推進会議の設置と活動  政府は,既に述べてきたように,キャリア教育等を推進するため,様々な施策を講じてきました。この結果,各学校段階におけるキャリア教育等の取組は広がりつつあります。  その一方で,例えば,インターンシップ実施状況をみると,大学においても高等学校においても,実施している学校数や学科数の割合に比べ,体験した学生・生徒数の割合が低い状態にあります。また,先に紹介したように,全国各地において積極的な取組の例はみられるものの,なお,地域や各学校段階においてばらつきや偏りがあり,受入企業数の確保が困難などの問題もみられ,保護者や企業等にもキャリア教育等の意義が十分に浸透しているとは言い難い状況がうかがえます。さらに,各学校段階を通じた組織的・体系的な実施や関係機関の連携・協力のための体制整備もなお少なからぬ課題を残しています。  このような課題を検討し,キャリア教育等の推進に向けた取組を強化・加速化するための関連施策を取りまとめるため,平成18年12月,青少年育成推進本部の下に,青少年育成を担当する高市早苗内閣府特命担当大臣を主宰者とし,文部科学大臣,厚生労働大臣及び経済産業大臣で構成する「キャリア教育等推進会議」が設置されました。その後,関係府省の課長クラスを中心に推進方策の検討を行うとともに,主宰者である高市大臣が,教育現場や企業等においてキャリア教育等の実務に携わっている有識者と懇談を行うことを通じて,議論を深めました。  こうした経緯を経て,政府は「キャリア教育等推進プラン〜自分でつかもう自分の人生〜」を策定しました(平成19年5月29日キャリア教育等推進会議)。 (2)キャリア教育等推進プラン〜自分でつかもう自分の人生〜  キャリア教育等推進プランでは,政府のキャリア教育等推進施策について,次の3つの基本的考え方に基づき,5つの項目に分けて,それぞれの課題,対応方針及び具体的施策を整理しています。 →(詳しくは,参考資料8参照) キャリア教育等推進プラン 《プランの基本的考え方》 [1] 小学校から大学院まで各学校段階を通じた,体系的なキャリア教育等の推進 [2] 関係機関等が連携し,学校,企業,保護者等の共通理解と協力の下でのキャリア教育等の実施 [3] 進学や就職に困難を抱える青少年に対する教育,就労,保健,福祉等の関係機関等が連携・協力した包括的な支援 《推進方策》 1 各学校段階における組織的で系統的なキャリア教育等の推進 ●組織的で系統的なキャリア教育等の体系の構築の推進,キャリア教育等の意義・目標等の明確化 ●学校段階を越えて,児童生徒のキャリア教育等の実績を受け継いでいく仕組みづくりの推進 ●進学や就職に困難を来している者等に対し,教育,就労,保健・医療,福祉等の関係機関が連携し,継続的な支援を行っていく仕組みの構築,普及 等 2 教員の資質・能力の向上等 ●都道府県等教育委員会における研修機会の充実 ●校長・教頭等に対する研修の充実 ●すべての教員にキャリア教育の理解を促す環境の整備 等 3 企業等の協力を促す環境整備 ●キャリア教育等に関する国民運動の推進により,産業界の理解と協力促進 ●キャリア教育等の企画や事後評価等への企業等の参画促進 ●職場体験等の受入先での自損他損事故への対応整備 等 4 学校,産業界,関係行政機関等の連携強化,必要な基盤整備 ●各学校段階におけるキャリア教育等の実施体制整備に向けた取組の支援 ●学校,教育委員会及びその他の行政機関及び企業等の関係機関・団体等で構成する協議体を各地域で組織する等,関係機関が一体となった推進体制の整備 ●各地域で関係機関の間に立って,キャリア教育等のコーディネートを行う組織・人材の育成・活用 等 5 キャリア教育等に対する社会全体の理解の促進 ●行政,教育現場,産業界,家庭(保護者)が一体となった国民運動等の推進 ●白書や各種広報媒体を活用し,キャリア教育等の意義や取組事例等についての広報の推進 等  政府は,本プランに掲げた個別具体の施策を「行動計画」として取りまとめ,これに基づいて具体的な取組を実施するともに,本プランに基づく取組の成果と課題を検証・評価し,更なる取組へと継続・発展させていくため,本プランのフォローアップを定期的に実施し,公表していくこととしています。 おわりに  既に述べたように,キャリア教育等は,若者の社会的自立のみならず,我が国社会の活力や競争力の向上にも寄与するものです。この度,「キャリア教育等の推進」という視点で,初めて関係施策を体系的にまとめたプランが策定されましたが,今後は,ここに盛り込まれた施策を着実に実行に移していくことが必要となります。  政府では,今後とも,同プランに基づく施策を総合的に推進していきます。