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(2)地域社会をめぐる状況

次に,家庭と並んで子どもの成育に重要な環境である地域社会の変化について見ていきましょう。

● 近所付き合いの希薄化

近年,指摘されるようになってきたことの一つに近所付き合いの希薄化が挙げられます。

近所付き合いの程度について,平成12年と平成19年を比較すると,「よく行き来している」及び「ある程度行き来している」が減り,「あまり行き来しない」及び「ほとんど行き来しない」が増え,これに「あてはまる人がいない」を加えると,約6割が近所付き合いに消極的という結果となっており,近所付き合いが疎遠になる傾向にあることがうかがえます(図14)。

図14 近所付き合いの程度の推移
図14 近所付き合いの程度の推移の図
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● 「地域の教育力」が低下しているとの保護者の認識

「地域の教育力」について小中学生の保護者に聞いた結果では,半数を超える保護者が自分の子ども時代と比べ低下していると回答しています(図15)。その理由については,「個人主義が浸透(他人の関与を歓迎しない)」が5割を超えて最も多いほか,「地域が安全でなくなり,子どもを他人と交流させることに抵抗感が増加」,「近所の人々が親交を深められる機会の不足」,「人々の居住地に対する親近感の希薄化」,「母親の就労の増加」,「高層住宅(マンション)の普及など居住形態の変化」等の回答が約3割となっています(図16)。

*この調査では,地域内の子ども,保護者,一般住民が交流などを行うことにより,地域全体で子どもを育て・守る雰囲気や仕組みを生み出す「地域の教育力」としている。

ここからは,日常的な地域における交流の機会が減り,その結果地域への愛着が薄れ,「地域の子どもは地域で育てる」という意識も希薄化していることが伺えます。

図15 自分の子ども時代と比べた現在の地域の教育力
図15 自分の子ども時代と比べた現在の地域の教育力の図
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図16 地域の教育力が低下した原因
図16 地域の教育力が低下した原因の図
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● 遊ぶ場所,仲間,時間の不足

では,子どもたち自身は,どのように感じているかを見てみましょう。

小・中学生に「放課後や休みの日に困っていること」を複数回答で聞いたところ,およそ5人に1人が「家の近くに遊び場がない」と感じており,次いで,「家の近くに一緒に遊ぶ人がいない」となっています。その他,「自由な時間がない」,「楽しい遊びがない・何もしたことがない」,「子どもだけで遊ぶのは危ないと言われる」がそれぞれ1割前後あり,遊ぶための時間,空間,仲間など,遊びの自由がないと感じている状況が見て取れます(図17)。

図17 子どもが放課後や休みの日に困っていること(複数回答可)
図17 子どもが放課後や休みの日に困っていること(複数回答可)の図
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● 子ども時代の体験・交流機会の重要性

このような変化は,子どもにどのような影響を与えるのでしょうか。

子ども時代の体験の重要さを示す調査結果から考えてみたいと思います。

25歳〜35歳の若者に対し,現在の仕事や生活の様子と小・中学校時代の体験等についてたずねた調査結果(Benesse教育研究開発センター「若者の仕事生活実態調査報告書」2006年)では,若者の「仕事における態度・能力に対する自信」は,子ども時代の体験や親とのかかわりと関連しており,なかでも,子ども(小中学校)時代に「親や学校の先生以外の大人と話すこと」があった若者ほど,「仕事における態度・能力に自信をもっている」としています。このほか,「親と将来のことについて話をすること」,「大勢の友だちと遊ぶこと」,「地域の行事に参加すること」などについても,仕事における自信の有無において子ども時代の体験差が大きいとされています(図18)。

子ども時代の様々な年齢層の人々との触れ合いは,異なる価値観や考え方との出会いであり,それらとのやりとりの中で,他者への説明,自分と他人との比較,感情のコントロールなどの社会的なスキルの向上につながっていると考えられます。

図18 ふだんの仕事の中でできていることと子ども時代の体験
図18 ふだんの仕事の中でできていることと子ども時代の体験の図
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ここまで見てきたところからは,まず,家庭においては,親子の接触時間が少なくなり,じっくりと向き合って話をすることがなく,子どもの悩みや困っていることも親はなかなか分からない状態にあり,近所付き合いは希薄化し,地域の教育力は低下していると認識している保護者が多いという状況が見られました。このような状態にあって,子どもたちは遊ぶ時間も場所も友達もなく,また,親以外の大人と出会う機会に乏しい環境にあり,日常生活では,もっぱらテレビと携帯メールとゲームに多大な時間を費やしています。

そのような状況では,本来どの子どもにも備わっている力を伸ばすことができないのではないでしょうか。また,バランスのとれた発達・成長という点からも問題がないとは言えないのではないかと思われます。

親や地域の大人,同世代や異世代の子ども同士など,多様な交流の場が望まれるところです。

そのためにも,青少年の様々な体験活動の場を整備して,多様なプログラムを用意し,異世代の大人と触れ合う機会を提供していくことは重要なことであるといえます。

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