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第3章 困難を抱える青少年等に対する施策
第1節 困難な状況ごとの取組

1 障害のある青少年の支援

(1)障害のある青少年の支援

ア 福祉施策(厚生労働省)

障害のある人が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう,必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行う「障害者自立支援法」(平17法123)に基づき,安定的かつ持続可能な制度の下で,障害福祉サービスの一層の充実を図るよう努めている。

イ 教育に関する施策

<1> 特別支援教育(文部科学省)

障害のある子どもについては,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し,社会参加するために必要な力を培うため,一人一人の障害の状態等に応じ,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級において,特別の教育課程や少人数の学級編制のもと,特別な配慮をもって作成された教科書,専門的な知識・経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備などを活用して指導が行われている。

また,通常の学級においては,通級による指導※12のほか,習熟度別指導や少人数指導などの障害に配慮した指導方法,支援員の活用など一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われている。

近年,特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化が見られること,小・中学校において発達障害のある児童生徒への適切な指導及び必要な支援が求められることなど,障害のある児童生徒の教育を取り巻く最近の動向を踏まえ,特別支援教育を推進するための制度の在り方について見直しが行われた。文部科学省においては,中央教育審議会において平成17年12月に取りまとめられた答申「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」における提言等を踏まえ必要な制度の見直しについての検討が進められ,平成18年4月より通級による指導の対象に学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)が新たに加えられたとともに,平成18年6月に「学校教育法等の一部を改正する法律」(平18法80)が成立した(改正法は平成19年4月より施行)。この改正法は,従来の盲・聾・養護学校の制度を,複数の障害種別を受け入れることができる特別支援学校の制度に転換することや,小・中学校等においても特別支援教育を推進することを法律上明確に規定すること等を主な内容とするものである。

これらの法改正も踏まえ,平成20年3月に幼稚園,小・中学校の学習指導要領等が,平成21年3月に高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等が改訂された。

現在,文部科学省では,「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」を開催し,平成19年4月より新たな制度としてスタートした特別支援教育の実施状況を評価しつつ,特別支援教育の具体的な推進方策について検討を行っており,平成21年2月には早期からの教育支援の在り方等を主な内容とする審議の中間とりまとめを公表したところである。

<2> 特別支援教育の一層の推進のための取組(文部科学省,厚生労働省)

○ 障害の重度・重複化,多様化への対応

近年,特別支援学校に在籍する子どもの障害の重度・重複化,多様化が進んでおり,適切な教育的対応が求められている。

特別支援学校の学習指導要領においては,障害の重度・重複化等に応じた弾力的な教育課程が編成できるよう,児童又は生徒の障害の状態により特に必要がある場合には,各教科の目標及び内容の一部を取り扱わないこととしたり,自立活動を主として指導を行ったりすることができることなど,様々な配慮事項を規定している。

また,一人一人の障害の実態に応じた指導を充実するため,個々の児童又は生徒の実態を的確に把握し,個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成することとしているほか,障害のため通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対しては,特別支援学校の教員を家庭や医療機関等に派遣して教育を行っている(訪問教育)。

さらに,障害の重度・重複化に伴い,日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒への対応が求められていることについて,文部科学省では,厚生労働省との連携の下,養護学校(現特別支援学校)と医療機関との連携の在り方などについて実践的な研究を行い,医療的ケアの体制整備を図ってきた。一方,厚生労働省においても,平成16年10月に医政局長通知「盲・聾・養護学校におけるたんの吸引等の取り扱いについて」を発出し,医療安全の確保が確実となるような一定の条件の下であれば,教員が看護師との連携・協力の下に,医療のニーズの高い幼児児童生徒に対して,たんの吸引,経管栄養及び導尿を行うことを盲・聾・養護学校全体に許容することは,やむを得ないとの整理が示された。これを受けて,文部科学省としては,同通知の趣旨を踏まえ,指導主事や教員を対象に「特別支援学校における医療的ケアに関する研修事業」を全国4ブロックに分けて実施している。

○ 特別支援学校と関係機関等との連携・協力による就労支援

障害のある生徒が,生涯にわたって自立し,社会参加していくためには,企業等への就労を支援し,職業的な自立を果たすことが重要である。このため,特別支援学校においては,生徒の障害の状態等に応じ,例えば,コンピュータや情報通信ネットワークを活用して,情報技術や情報処理の能力を育成したり,産業界との連携を図った職場体験の機会を設けたりするなど,時代の進展や社会の変化に対応した職業教育を行っている。特に,企業等における現場実習は,生徒の職業観や勤労観を育成し,学校生活から社会生活への円滑な移行を進める上で重要な学習活動であることから,積極的に取り組まれている。

また,障害のある生徒の就労を促進するためには,教育,医療,福祉関係機関が一体となった施策を講じる必要がある。このため,文部科学省では,平成19年度から2箇年で「職業自立を推進するための実践研究事業」を実施し,厚生労働省との連携・協力の下に,特別支援学校における職業教育や進路指導の改善を図り,職域・職種を拡大するための方策などについて先進的な研究を行った。

さらに,平成21年2月20日には,特別支援学校卒業後,直ちに就職が難しいと考えられる就職未内定者に対して,公共職業訓練の受講を積極的に促し,就労に必要とされる知識・技能等を付与するため,各都道府県の職業能力開発主管部と各都道府県教育委員会等が連携を強化するよう,厚生労働省との連名通知を発出し,積極的な取組を促したところである。

○ 交流及び共同学習の充実

障害のある子どもと,障害のない子どもや地域の人々が活動を共にすることは,子どもの経験を広め,積極的な態度を養い,豊かな人間性や社会性をはぐくむ上で意義があるばかりでなく,地域の人々が障害のある子どもに対する正しい理解と認識を深めるためにも有意義である。特別支援学校及び小・中・高等学校の学習指導要領等においては,その充実を図るように規定している。

また,文部科学省においては,交流及び共同学習が一層推進されるよう,「交流及び共同学習事例集」の発行や,「交流及び共同学習ガイド」をホームページに掲載するなどの取組を進めた。

さらに,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において,小・中学校等の教員等を対象に「交流及び共同学習推進指導者研究協議会」を開催し,具体的な方策について伝達・普及を図るなど交流及び共同学習の充実に努めている。

○ 特別支援教育の改善・充実のための体制整備

文部科学省では,平成19年4月の改正学校教育法(参照ページ)の施行を踏まえ,体制整備を含む基本的な考え方や留意事項等について「特別支援教育の推進について」(初等中等教育局長通知)を発出し,学校や教育委員会等の取組を促進している。

また,発達障害を含め障害のある幼児児童生徒への学校における支援体制を充実するため,すべての都道府県に委嘱して,「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業(平成15年度から平成19年度までは「特別支援教育体制推進事業」)」を実施している。同事業では,「校内委員会」の設置,「専門家チーム」の設置,「特別支援教育コーディネーター」の指名,専門家などによる「巡回相談」の実施,学校と福祉・医療・労働などの関係機関とが連携するための「特別支援連携協議会」の設置,「個別の教育支援計画」の作成・活用,特別支援学校による小・中学校等への支援の実施など,学校や地域における支援体制を強化する取組を行っている。

さらに,平成19年度より公立小・中学校に在籍する発達障害を含む障害のある児童生徒をサポートする「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が各市町村に対して地方財政措置されているところであり,平成20年度は,全公立小・中学校数に相当する約3万人分,約360億円に拡充された。

なお,私立の特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級において,障害に適応した教育を実施する上で必要とする設備を学校法人が整備する場合に,国がその一部を補助している。

○ 就学支援

特別支援学校及び特別支援学級等への就学の特殊事情にかんがみ,これらの学校に就学する幼児児童生徒の保護者等への経済的負担を軽減し,就学を奨励するため,保護者の経済的負担能力に応じて,国及び地方公共団体は就学奨励費を支給している。

(2)発達障害のある青少年の支援

ア 福祉施策(厚生労働省)

自閉症,注意欠陥多動性障害(ADHD),学習障害(LD)などの発達障害についての国民の理解を促進し,地域において発達障害者を一貫して支援していくための国民や国・地方公共団体の責務などを定める「発達障害者支援法」(平16法167)が第161回臨時国会で成立し,平成17年4月1日から施行された。

厚生労働省では,自閉症,ADHD,LDなどの発達障害について,家庭,学校等において適切な支援が実施できるよう,乳幼児健康診査等を通じた早期発見に努めるほか,保健指導手引書の普及等により適切な相談・指導の実施を推進している。

また,地域において,医療・保健・福祉・教育・雇用等の関係者と連携して,発達障害者やその家族に対する相談支援等を行う「発達障害者支援センター」の整備を推進しているところであり,平成20年度末において62都道府県・指定都市に設置されているところである。これに加え,「発達障害者支援体制整備事業」により,乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援を行うための支援関係機関のネットワークを構築することで,発達障害者の地域支援体制の整備を進めてきたところであり,平成21年度からは,市町村における個別の支援計画の作成等を含む支援体制の整備状況の調査及び評価を実施し,都道府県によるサポートを行うことで支援体制の充実を図ることとしている。

さらに,先駆的な取組を通じ,発達障害者への有効な支援手法を開発・確立する「発達障害者支援開発事業」の実施や,発達障害に関する知見を集積し,全国へ情報提供を行う「発達障害情報センター」の設置,発達障害研修事業の充実,発達障害の成因や病態の解明,診断・評価,療育方法等に関する研究事業への助成を行っている。

イ 教育に関する施策(文部科学省,厚生労働省)

近年,小・中学校等の通常の学級に在籍している発達障害のある子どもの教育的支援の必要性が高まっており,文部科学省では,平成15年3月の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」の提言を受け,モデル事業の実施や「小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」の作成・配布等を通じて,関係機関と連携した総合的な教育的支援体制の整備を図ってきた。

また,「発達障害者支援法」や「学校教育法等の一部を改正する法律」の施行等を踏まえ,幼稚園,小・中学校,高等学校,特別支援学校等のすべての学校において,発達障害を含め障害のある幼児児童生徒への支援体制を整備することを目指し,各都道府県への委嘱事業を実施しているところである。

各学校における特別支援教育体制の整備状況について,文部科学省において実施した調査によると,公立の小・中学校においては基礎的な支援体制はほぼ整備されつつあるが,幼稚園や高等学校は体制整備に遅れが見られることが明らかとなった。

そこで,新たに平成19年度から,幼稚園及び高等学校に在籍している発達障害のある幼児・生徒に対する支援手法の開発や関係機関との効果的な連携方策等に関する実践研究を行う「発達障害早期総合支援モデル事業」「高等学校における発達障害支援モデル事業」を実施している。これらの事業を通じて,指定を受けたモデル地域や学校の支援体制整備を進めるとともに,優良な取組については,全国の地方公共団体や学校の支援体制整備の参考となるよう,広く情報提供していくこととしている。

また,平成20年度から学校の教職員や保護者等に対し,発達障害に関する正しい理解や支援等に関する様々な教育情報,また教員研修用の講座等をWEBサイトにて提供する中核センターとして「発達障害教育情報センター」を独立行政法人国立特別支援教育総合研究所に開設した。今後は厚生労働省とも連携を図りながら,必要なコンテンツ等を充実することとしている。

平成20年6月に,「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(平20法81)が成立し,国は検定教科用図書等において,一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な発達障害等のある児童及び生徒が使用する教科用特定図書等の整備及び充実を図るため,必要な調査研究等を推進することとされた。

学校における支援をより充実するためには,教職員に対する研修が不可欠である。そこで,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において各種研修を行っており,本年度は各都道府県等において,発達障害のある幼児児童生徒への支援について指導的な立場にある教職員の専門知識の習得や技能を高めるため,「発達障害教育指導者研究協議会」が開催された。

これらの取組を通じ,発達障害のある幼児児童生徒に対し,乳幼児期から卒業後まで切れ目のない一貫した支援体制の充実を図っていくこととしている。

2 少年非行対策等

(1)総合的取組

ア 関係省庁の連携(内閣府)

近年の少年非行等の情勢は,刑法犯少年の検挙人員が5年連続で減少する一方で,少年による社会の耳目を集める重大な事件の発生が後を絶たず,また,児童虐待事件や児童ポルノ事件等の被害が増加するなど,少年の非行防止,保護の両面において予断を許さない状況となっている。政府としては,少年非行対策の推進について密接な連絡,情報交換,協議等を行うために,青少年育成推進本部に少年非行対策課長会議を設置し,関係省庁が連携の上,少年非行対策の充実強化を図っている。

イ 法整備(法務省)

深刻な少年非行の現状に適切に対処するため,平成18年2月,第164回国会に「少年法等の一部を改正する法律案」を提出し,同法律案は,衆議院(第166回国会)で修正の上,平成19年5月25日参議院本会議(第166回国会)において可決,成立し,同法は,同年6月1日に公布され,同年11月1日に施行された。

この法律による主な改正点は,

<1> いわゆる触法少年に係る事件について,警察官による調査手続を整備する。

<2> おおむね12歳以上の少年について,家庭裁判所が特に必要と認める場合には少年院送致の保護処分をすることができることとする。

<3> 保護観察に付された者が遵守すべき事項を遵守しなかった場合の措置等に関する規定を整備するとともに,少年院及び保護観察所の長が保護処分中の少年の保護者に対し指導,助言等をすることができる旨を明確化する。

<4> 一定の重大事件について,国選付添人を付する制度を創設する。

ことなどを内容としている。

ウ 家庭,学校,地域の連携(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省)

少年非行は,家庭,学校,地域社会のそれぞれが抱えている問題が複雑に絡み合って発生しており,その対策の基本としては,次代を担う青少年を健全に育成することが国民的課題であるとの認識に立って,真剣に国民一人一人が,この問題に地道に取り組み,息の長い国民的運動にまで高めていくことが重要である。このような立場から,家庭,学校,地域社会のより一層の緊密な連携の下に,一体的な非行防止対策を更に推進していく必要がある。

関係機関では,地域ぐるみの活動の強化に関して,例えば,

<1> 地域の実情に応じた非行防止のための活動・行事の展開

<2> 学校における非行防止教室や薬物乱用防止教室の開催

<3> 地域における多様な活動機会や居場所づくり

<4> 街頭補導活動の強化,サポートチームの形成の推進

等に取り組んでいる。

エ 調査研究(内閣府,法務省,文部科学省)

関係省庁では,少年非行対策への総合的な取組という観点から,関係機関の協力による非行防止のための先進的な事例などについて,調査研究や情報提供を行うことに努めることとしている。

法務省では,保護処分の適正かつ円滑な執行を図るために,毎年十数庁の少年院において,関係する検察庁,少年鑑別所,地方更生保護委員会,保護観察所及び家庭裁判所の協力を得て,処遇実践に基づく事例研究会を実施している。

文部科学省においては,児童生徒の深刻な状況や「児童虐待防止法」第4条の規定を踏まえ,国内・諸外国の児童虐待防止に向けた先進的取組等を収集・分析し,その成果について,平成18年5月に報告を取りまとめた。

また,平成21年度においては,本調査研究の成果を受け,児童虐待防止法の趣旨を踏まえ,学校における児童虐待の早期発見・通告,関係機関との連携,虐待を受けた子どもへの対応等について,教職員の意識啓発と対応スキルの向上を図るため,「児童虐待防止と学校」というタイトルで研修教材を作成し,都道府県・指定都市教育委員会に配布した。

なお,関係省庁では,「少年非行事例等に関する調査研究」として,少年非行の原因・背景として考えられる事項を踏まえた上で,これに対応する現在の少年非行対策の整理・集約と,これに関する分析,検討を実施するとともに,新たな対策の検討を行っている。

平成21年3月には,「いきなり型」非行に関する報告書を取りまとめた。

オ 「サポートチーム」等(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省)

「サポートチーム」は,少年の問題行動が多様化,深刻化している現状において,個々の少年の問題状況に着目し,的確な対応を行うため,学校,警察,児童相談所,保護観察所等の関係機関がチームを構成し,適切な役割分担の下に連携して対処するものである。「サポートチーム」の円滑な組織化のためには,日常的な関係機関によるネットワークの構築や,必要に応じて「サポートチーム」への参加を求め得る団体等との緊密な連携を図っていくことが重要である。

文部科学省では,これまでも個々の児童生徒に対して的確な対応を行うため,学校,教育委員会,関係機関等からなる「サポートチーム」の取組を推進しており,「学校と関係機関との行動連携に関する研究会」が取りまとめた報告書(平成16年3月)では,これまでの取組の成果と課題を踏まえ,学校が関係機関等との連携を進める際の基本的な視点や具体的な方策が示されているところである。

平成19年度から,問題行動等の未然防止,早期発見・早期対応など,児童生徒の支援に効果的な取組について,これまで構築してきた関係機関と連携したサポート体制をいかしつつ調査研究を行う「問題を抱える子ども等の自立支援事業」を実施している。

さらに,平成17年度から,文部科学省,警察庁,都道府県教育委員会及び管区警察局が共催して,「児童生徒の問題行動に対する連携ブロック協議会」を開催し,児童生徒の問題行動に対する地域における関係機関相互の緊密な連携を図っている。

政府では,非行少年等に対して,予兆の把握,深刻化する前の段階での対応等を可能とするための少年サポート体制の在り方に関する基本的な考え方をまとめた「関係機関等の連携による少年サポート体制の構築について」(平成16年9月少年非行対策課長会議申し合わせ)を地方公共団体に対して周知し,取組の一層の普及促進を図っている。

カ その他の関係機関の連携(警察庁,法務省,文部科学省)

児童生徒の非行や校内暴力を防止するためには,学校と警察が密接に連携する必要があるため,全国の小学校,中学校及び高等学校の約93%の参加を得て,平成21年4月1日現在,約2,500組織の学校警察連絡協議会が結成されている。

また,都道府県警察と都道府県教育委員会(庁)等との間で締結した協定,申合せ等に基づき,非行少年,不良行為少年その他の健全育成上問題を有する児童生徒に関する情報について警察・学校間で通知を行う,いわゆる「学校警察連絡制度」が各地で構築され,非行防止,健全育成に関し,効果を上げつつある。

少年非行の深刻化に対処するため,少年のプライバシー等との調整を図りながら,関係機関が情報を共有し,各機関のなすべき役割を果たしていく必要がある。そこで,家庭裁判所,少年鑑別所,少年院,地方更生保護委員会及び保護観察所においては,少年院や保護観察における効果的な処遇及び連携の在り方を検討するため,定期的に協議会等を開いている。

さらに,処遇機関においては,必要に応じ,学校,警察及び福祉施設の職員とも個別事例の検討を行っている。

最近の少年非行の増加の要因として,少年の規範意識や社会性の欠如,あるいは対人関係能力の未熟さが指摘されているが,特に,中学生の問題行動が深刻化している現状にあって,次代を担う中学生に焦点を当てた非行防止活動を推進し,その健全な育成を図る必要がある。

そこで,法務省においては,「中学生サポート・アクションプラン」を実施している。具体的には,非行問題に関する豊富な知識,保護観察対象者に対する処遇経験等を有する保護司(学校担当保護司)が,直接中学校へ赴き,非行問題,薬物問題をテーマにした非行防止教室,問題を抱えた生徒への指導方法等について教師との個別協議を実施するなどして,中学生の犯罪・非行の未然防止及び健全育成を図っている。

そのほか,多くの少年鑑別所が,地域レベルで整備が進められている少年相談機関のネットワークに参加し,非行問題の専門機関としての役割を果たしている。

(2)非行防止,相談活動

ア 社会を明るくする運動(法務省)

法務省の主唱の下,犯罪予防活動の一環として,“社会を明るくする運動”が全国で実施されている。同運動は,すべての国民が,犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め,それぞれの立場において力を合わせ,犯罪や非行のない地域社会を築こうとする運動であり,運動の趣旨に賛同した様々な機関・団体により,各地域の実情に応じた方法による運動が展開されている。

具体的には,全国各地で,非行防止活動,子育て相談活動,地域で非行問題や非行のある少年の立ち直り支援を話し合うシンポジウム,ミニ集会活動,各種広報活動などのほか,作文コンテスト,ワークショップ,親子触れ合い行事など青少年の主体的参加を得た行事等を積極的に実施している。

イ 非行防止教室・薬物乱用防止教室(警察庁,文部科学省)

学校,家庭,地域等が十分連携を図り,子どもの豊かな人間性や社会性などをはぐくむため,道徳教育の充実を図るとともに,関係機関等と連携した非行防止教室の開催などにより,少年の非行防止に努めている。

また,青少年の薬物乱用防止対策として,「薬物乱用防止広報強化期間」を実施するなど,家庭・地域に対する広報啓発活動の推進を図っている。

ウ 多様な活動機会・居場所づくりの推進(警察庁,文部科学省)

警察では,少年の多様な活動機会や居場所づくりの一環として,関係機関・団体及び地域社会と協力しながら,環境美化活動を始めとする少年の社会奉仕活動,生産体験活動等の社会参加活動や警察署の道場を開放して地域の少年たちに柔道や剣道の指導を行う少年柔剣道教室等のスポーツ活動を行っている。

文部科学省では,完全学校週5日制の実施を契機に,関係省庁,民間団体等との連携の下,地域の人材を活用した子どもの週末等の活動支援やボランティア活動等の奉仕活動・体験活動の総合的な推進を図っている(参照ページ)。

エ 相談活動(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省)

警察では,少年の非行,家出,自殺等の未然防止とその兆候の早期発見や犯罪,いじめ,児童虐待等に係る被害少年等の保護のために少年相談窓口を設け,心理学等の知識を有する少年補導職員や経験豊かな警察官等が,少年や保護者等からの相談を受け,必要な指導や助言を行っている。

また,ヤングテレホンコーナー等の名称で電話による相談を受けているほか,フリーダイヤルを導入したり,FAXや電子メールを活用するなど,少年相談を利用しやすい環境の整備に努めている。平成20年に警察が受理した少年相談の件数は,7万5,274件で,前年に比べ3,515件減少した(第2-3-1表)。

第2-3-1表 警察が受理した少年相談の状況(平成20年)
第2-3-1表 警察が受理した少年相談の状況(平成20年)
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少年相談の内容をみると,少年自身からの相談では,学校,交友及び犯罪被害の問題に関する悩みが多く,保護者からの相談では,非行,家庭の問題に関する悩みが多い(第2-3-1図)。

第2-3-1図 少年相談の内容(平成20年)
第2-3-1図 少年相談の内容(平成20年)
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相談後も,継続的な指導・助言を必要とするケースは,平成20年は,1万112件で,全体の13.4%を占めている。

法務省の人権擁護機関では,子どもの人権問題について,「子どもの人権専門委員」を中心とする人権擁護委員や法務局・地方法務局の職員が相談に応じている。

さらに,少年鑑別所は,主として家庭裁判所から観護の措置により送致された少年を収容するとともに,その資質の鑑別を行う施設であるが,子どもの非行等の問題に悩む学校関係者や一般市民からの相談等に応じる一般少年鑑別も行っている。一般少年鑑別においては,臨床心理学の専門家である法務技官が助言や指導に当たっている。

そのほか,保護観察所においても,犯罪予防活動の一環として,保護観察官や保護司が,子どもの非行や問題行動で悩む親等からの相談に応じている。

少年補導センターは,地域住民に身近な市町村を中心に設立された機関であり,街頭補導,少年相談,有害環境の浄化等の活動を行っている。少年補導センターが扱う少年相談の内容は,非行に関するもののほか,いじめ,不登校,虐待の問題など様々である。

また,文部科学省では,いじめ問題の対応等のひとつとして,子どもたちが全国どこからでも夜間・休日を含めて,いつでもいじめ等の悩みを相談することができるよう,全国統一の電話番号(0570-0-78310(なやみ言おう))により平成19年2月から全都道府県及び指定都市教育委員会で24時間いじめ相談ダイヤルを実施している。

(3)薬物乱用防止(警察庁,文部科学省,厚生労働省)

政府では,「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動」等における広報啓発の積極的な展開,少年に対する薬物の供給源となっている外国人密売人等に対する取締りの強化等の各種施策を実施している。

警察庁では,青少年の薬物乱用防止対策として,「薬物乱用防止広報強化期間」を実施するなど,家庭・地域に対する広報啓発活動の推進を図っている。

薬物乱用防止教育の充実を図るため,競技場等の大型ディスプレイを活用した広報啓発活動等を推進している。

厚生労働省では,地域において,若者の心の健康,薬物乱用防止,性感染症対策等に関する相談の充実を図るとともに,医療機関による対応の充実を図っている。

また,薬物乱用防止キャラバンカー等による学校,地域等における教育の充実,保健所・精神保健福祉センター等における相談活動の実施と相談窓口の周知等の各種施策を実施している。

なお,薬物関連問題に関しては,ホームページ等で相談窓口を紹介しており,平成19年度実績で,警察1,523件,保健所6,061件,精神保健福祉センター3,325件の相談があった。

(4)補導活動及び事件の捜査・調査

ア 補導活動(内閣府,警察庁)

少年の非行を防止する上で,少年の問題行動の初期段階での適切な対応が極めて重要である。警察では,全国に設置された「少年サポートセンター」を中心として,盛り場,公園等非行の行われやすい場所に重点を置いて日常的に補導活動を実施し,非行の前兆ともなり得る不良行為等の問題行動を早期に認知して,少年やその家庭に対する適切な助言,指導等に努めている。

また,少年の非行を防止し,その健全な育成を図るため,警察では,少年指導委員,少年補導員及び少年警察協助員を民間ボランティアとして委嘱しており,これらのボランティアは,少年補導活動や少年を取り巻く社会環境の浄化活動等地域に密着した活動を行っている。

平成18年5月には,公安委員会の指示の下,少年指導委員が風俗営業の営業所等に立ち入ることができることとする規定を盛り込んだ「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」(平17法119)が施行され,都道府県公安委員会の指示に基づき立ち入りを行っている。

内閣府では,街頭補導,少年相談,有害環境の浄化等の青少年健全育成活動を行う機関として全国に設置されている「少年補導センター」の機能の充実・強化を図るため,センター職員等の知識や能力の向上のための研修を実施している。

イ 事件の捜査・調査

<1> 警 察(警察庁)

警察は,非行少年を発見した場合は,必要な捜査又は調査を行い,検察官,家庭裁判所,児童相談所等の関係機関へ送致し,又は通告するほか,その少年の保護者等に助言を与えるなど,非行少年に対して適切な指導がなされるよう措置している。

○ 犯罪少年

犯罪少年(14歳以上20歳未満で罪を犯した少年)については,「刑事訴訟法」(昭23法131),「少年法」(昭23法168)等に規定する手続きに従って,必要な捜査を遂げた後,罰金以下の刑に当たる事件は家庭裁判所に,禁錮以上に当たる事件は検察官に送致又は送付する。

○ 触法少年

触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年)については,その者に保護者がいないか,又は保護者に監護させることが不適当と認められる場合には,児童相談所に通告し,その他の場合には,保護者に対して適切な助言を行うなどの措置を講じている。

なお,平成19年の少年法の一部改正により,触法少年事件に係る警察官による任意調査権限の明確化,押収・捜索・検証等の強制調査権限の付与等が図られるとともに,警察官は,調査の結果,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に触れると考えられる等一定の場合には,事件を児童相談所長に送致しなければならないこととされた。

○ ぐ犯少年

ぐ犯少年(20歳未満で一定の事由があって,その性格又は環境に照らして,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年)については,その者が18歳以上20歳未満の場合は,家庭裁判所に送致し,14歳以上18歳未満の場合は,事案の内容,家庭環境等から判断して家庭裁判所又は児童相談所のいずれかに送致又は通告し,14歳未満の場合には児童相談所に通告し,又は,その非行の防止を図るために特に必要と認められる場合には,保護者の同意を得た上で,補導を継続的に実施する。

<2> 検察庁(法務省)

検察官は,警察から送致されるなどした少年の犯罪について必要な捜査を行い,犯罪の嫌疑があると認めたときは,事件を家庭裁判所に送致する。犯罪の嫌疑がなくとも,ぐ犯などの事由がある場合も,同様に事件を家庭裁判所に送致する。

その際,検察官は,少年に刑罰を科すのが相当か,保護観察,少年院送致等の保護処分に付すのが相当かなど処遇に関する意見を付すことになっている。

また,検察官は,家庭裁判所から少年審判に関与すべき旨の決定があった場合に,これに関与し,裁判所の事実認定を補助することとなっている。

さらに,家庭裁判所から,刑事処分相当として検察官に送致された少年については,検察官は,原則として刑事裁判所に公訴を提起することとなっている。検察官が,このように十分な捜査を行い,事案を解明した上で適切な処理をすることは,少年犯罪に対する最も基本的で重要な対策であり,今後も,一層充実させることとしている。

(5)少年審判

家庭裁判所は,非行少年に対する調査・審判を行い,非行があると認めるときは,家庭裁判所調査官の調査結果等も考慮して,少年を保護処分(保護観察,児童自立支援施設等送致又は少年院送致)に付し,保護処分に付さない場合でも教育的措置(指導助言など)を講じる。また,犯行時14歳以上の少年に係る禁錮以上の刑に当たる罪の事件について,刑事処分を相当と認めるときは,検察官に送致する。

ア 受理の状況(最高裁判所)

平成19年における少年保護事件の全国の家庭裁判所での新規受理人員は,19万4,650人で,その非行別の内訳は,第2-3-2図のとおりである。

第2-3-2図 家庭裁判所の少年保護事件の新規受理人員非行別構成比(平成19年)
第2-3-2図 家庭裁判所の少年保護事件の新規受理人員非行別構成比(平成19年)
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平成19年は前年と比較して1万7,149人(8.1%)減少している。増加人数の多い非行は,軽犯罪法違反(1,177人・61.3%),器物損壊等(220人・13.8%),暴行(64人・4.6%)等で,減少人数の多い非行は,窃盗(5,324人・7.7%),道路交通法違反(4,783人・10.7%),横領(3,949人・12.8%)等である。

イ 処理の状況(最高裁判所)

平成19年における少年保護事件の終局人員は19万7,574人で,このうち一般事件(交通関係事件を除く少年保護事件)が12万4,217人,交通関係事件(業務上(重・自動車運転)過失致死傷,危険運転致死傷及び道路交通事件)が7万3,357人となっている。

これを終局決定別にみると,第2-3-3図のとおりである。

第2-3-3図 家庭裁判所の少年保護事件終局決定別構成比(平成19年)
第2-3-3図 家庭裁判所の少年保護事件終局決定別構成比(平成19年)
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<1> 保護処分

平成19年に保護処分に付された少年は3万4,987人で,その内訳は,一般事件が1万8,018人(51.5%),交通関係事件が1万6,969人(48.5%)である。前年と比較し3,468人(9.0%)減少している。

○ 保護観察

保護観察に付された少年は3万597人で,その内訳は,一般事件が1万4,035人(45.9%),交通関係事件が1万6,562人(54.1%)であり,交通関係事件のうち1万2,511人(75.5%)は交通短期保護観察に付されたものである。前年と比較し2,999人(8.9%)減少している。

○ 児童自立支援施設等送致

児童自立支援施設又は児童養護施設送致となった少年は300人である。この処分は,少年を児童福祉施設に送致するもので,その対象のほとんどが15歳以下の少年である。

○ 少年院送致

少年院送致となった少年は4,090人で,その内訳は,一般事件が3,684人(90.1%),交通関係事件が406人(9.9%)である。前年と比較して,一般事件は365人(9.0%),交通関係事件は43人(9.6%),それぞれ減少している。

<2> 検察官送致

平成19年に刑事処分が相当であるとして検察官送致となった少年は5,085人で,前年と比較して572人(10.1%)減少している。そのうち4,729人(93.0%)が交通関係事件によるものである。

<3> 児童相談所長等送致

知事又は児童相談所長送致は,少年の処遇を児童福祉機関の措置にゆだねるもので,児童自立支援施設等送致と同様にその対象のほとんどが15歳以下の少年であるが,毎年その数は少なく,平成19年は229人である。

<4> 審判不開始及び不処分

審判不開始及び不処分は,調査の結果,審判を開いたり保護処分に付する必要がないと認められる少年に対して行われる決定である。保護処分に付する必要がないとしてこれらの決定がされる場合にも,調査及び審判の段階で,少年の持つ問題性に応じて,裁判官,家庭裁判所調査官が訓戒や生活改善,被害者への謝罪等の指導を行って非行を反省させたり,家庭,学校等の環境を調整するなどの指導,教育的措置を講じて,再非行防止の働き掛けをしている。

(6)被害者への配慮(内閣府,警察庁,法務省,最高裁判所)

平成17年12月27日,総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱等を定めた「犯罪被害者等基本計画」が閣議決定された。同計画においては,少年事件の被害者等に係る施策も盛り込まれている。

警察では,被疑少年の健全育成に留意しつつ,捜査上の支障のない範囲内で,少年事件の被害者の要望に応じて,捜査状況等に関する情報を可能な限り提供するように努めている。

また,法務省では,全国の検察庁において,少年事件の犯罪被害者等を含むすべての犯罪被害者やその親族の心情等に配慮するという観点から,犯罪被害者等に,事件の処分結果等の情報を提供し,少年院,地方更生保護委員会及び保護観察所においては,少年院送致処分又は保護観察処分を受けた加害少年について,加害少年の健全育成に留意しつつ,被害者等の希望に応じて,少年院における処遇状況に関する事項,仮退院審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している。検察庁,地方更生保護委員会及び保護観察所においては,刑事処分となった少年についても,被害者等の希望に応じて,事件の処分結果,裁判結果,加害者の受刑中の処遇状況に関する事項,仮釈放審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している。

さらに,全国の地方検察庁に被害者支援員を配置し,青少年を始めとする犯罪被害者及びその家族からの相談への対応,法廷への案内・付添い,検察庁での各種手続の手助けをするほか,青少年を始めとする犯罪被害者及びその家族の状況に応じて精神面,生活面,経済面等の支援を行っている関係機関や団体等を紹介するなどの支援活動を実施している。

加えて,「更生保護法」(平19法88)に基づき,地方更生保護委員会が,少年院からの仮退院の審理において犯罪被害者等の意見等を聴取する制度及び保護観察所が犯罪被害者等の心情等を保護観察中の加害少年に伝達する制度を実施している。

「少年法」(昭23法168)では,被害者への配慮の充実を図るために,

<1> 被害者等による記録の閲覧及び謄写

<2> 被害者等の申出による意見の陳述

<3> 被害者等に対する審判結果等の通知

の制度が設けられている。家庭裁判所は,これらの制度の適切な運用に努めているほか,被害者の心情等に十分配慮しながら,被害状況,被害感情等について,家庭裁判所調査官が被害者に直接会って話を聞くなどして,その声を少年審判手続に反映させている。

また,平成20年の「少年法」の改正で,

<1> 一定の重大事件の被害者等による少年審判の傍聴

<2> 被害者等に対する審判状況の説明

の制度が設けられ,

<3> 被害者等による記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大

<4> 被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大

が行われた。これらのうち<4>については平成20年7月8日から,<1>から<3>までについては同年12月15日から,それぞれ施行されている。

(7)非行集団対策(内閣府,警察庁)

ひったくり,路上強盗等の街頭犯罪は,その検挙人員の6割が少年であり,暴走族や非行少年グループ等の非行集団によって敢行される各種の犯罪は,我が国の治安にとって無視できないものとなっている。

非行集団は,暴走行為,集団的暴行事件等の集団的な違法行為に限らず,遊興資金や背後にある暴力団等への上納金等の獲得を目的として,各種の街頭犯罪を敢行することが少なくない。

また,暴力団等が非行集団を裏から支え,これを資金源としている実態もうかがえる。

このため,警察では,非行集団に対する取組を街頭犯罪抑止対策の重要な柱と位置付け,少年部門,交通部門及び刑事部門の連携を強化して,非行集団やその予備軍となる非行少年,さらには,非行集団の背後にある暴力団等による犯罪を徹底的に取り締まり,非行集団の弱体化,解体を図っているほか,少年の非行集団への加入阻止,離脱支援等の施策を推進している。

暴走族については,平成13年2月,暴走族対策関係8省庁により,「暴走族追放気運の高揚」,「家庭,学校等における青少年の指導の充実」,「暴走行為阻止のための環境整備」,「暴走族に対する指導取締りの強化」等を柱とする暴走族対策の強化について申し合わせ,暴走族対策の強化を継続している。共同危険行為等の禁止違反を始めとする各種法令を活用した取締りはもちろんのこと,暴走族への加入防止や暴走族グループからの離脱促進,車両の不正改造防止対策等総合的な暴走族対策を推進するとともに,暴走族追放条例等制定の促進等,暴走族を許さない社会環境づくりを,政府一体となって推進している。

さらに,地方公共団体においても,暴走族追放条例等の制定と,その的確な運用を行い,暴走族追放気運の高揚に努めている。

(8)施設内処遇

ア 少年院・少年刑務所(法務省)

少年院は,家庭裁判所において少年院送致の保護処分に付された少年及び16歳に達するまでの間少年院において刑の執行を受ける少年を収容し,これに矯正教育を行う施設である。収容対象となる少年の年齢,犯罪的傾向の進度及び心身の故障の有無に応じて初等,中等,特別及び医療の4種類がある。

各少年院では,意図的,計画的な教育を実施するため,生活指導,職業補導,教科教育,保健・体育及び特別活動の各領域で構成される教育課程(在院者の特性及び教育上の必要性に応じた教育内容を総合的に組織した標準的な教育計画)を編成するとともに,個々の少年について,少年鑑別所及び家庭裁判所の情報や意見を参考にして個別的処遇計画を作成し,効果的な教育を実施するよう努めている。

刑事裁判において,懲役又は禁錮の実刑の言渡しを受けた少年は,刑執行のため,少年刑務所又は少年院に収容されるが,少年刑務所においては一人一人に個別担任を指定し,個別面接や日記指導等の個別的な指導を行う等,心身が発達段階にあり,可塑性に富む等といった少年受刑者の特性に応じた矯正処遇を処遇要領に基づき実施している。

イ 児童自立支援施設(厚生労働省)

児童自立支援施設においては,不良行為をなし,又はなすおそれのある子どもなどに対して,その自立を支援することを目的として,一人一人の状況に応じた支援・ケアを行っている。

(9)更生保護,自立・立ち直り支援

ア 少年院からの仮退院,少年刑務所等からの仮釈放及び保護観察の概要(法務省)

少年院からの仮退院及び少年刑務所等からの仮釈放は,少年院及び少年刑務所の矯正施設に収容されている者について,法律,判決又は決定によって定められている収容期間の満了前に仮に釈放し,その円滑な社会復帰を促す措置であり,少年院からの仮退院及び少年刑務所等からの仮釈放を許された者は,収容期間が満了するまでの間,保護観察を受ける。平成20年における少年院仮退院者は,全出院者の99.0%に当たる3,994人であった(数値は速報値)。

少年院からの仮退院及び少年刑務所等からの仮釈放に先立って,保護観察所は,出院・出所後の少年を取り巻く環境(家庭,職場,交友関係等)が,本人の改善更生を促す上で適切なものとなるよう,引受人等との人間関係,出院・出所後の職業等について調整を行い,受入体制の整備を図っている。

保護観察は,非行があったり犯罪をした少年等に,社会生活を営ませながら,本人の改善更生を図る上で必要な生活及び行動に関する一定の事項(遵守事項及び生活行動指針)を守って健全な生活をするよう指導監督するとともに,自助の責任を踏まえつつ,就学・就職その他について補導援護することにより,その改善更生を促すものであり,保護観察官と民間篤志家である保護司とが協働して,その実施に当たっている。

平成20年中に保護観察所が新たに開始した保護観察事件数は,成人事件を含め50,715件であったが,このうち61.4%に当たる31,162件が,家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年又は地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院を許された少年の事件であった。少年の保護観察に関する動向として近年では,暴走族に関係のある少年や無職少年の比率が高い比率を占める状態が続いている(数値は速報値)。

イ 保護観察の実効性の向上等(法務省)

複雑かつ困難な問題性を抱えた処遇困難な少年が増加していることを踏まえ,問題性の高いケースについては,保護観察官による直接的関与の程度を強める等により重点的な働き掛けを行うほか,少年の持つ問題性,その他の特性を類型化し,各類型の特性に焦点を当てた処遇を実施している。

また,北海道雨竜郡沼田町において,主に少年院を仮退院した少年を対象とし,旭川保護観察所の駐在官事務所に設置された宿泊施設に居住させ,濃密な保護観察を実施するとともに,同町が運営する農場で農業実習を受けさせ,改善更生の促進を図る「沼田町就業支援センター」が平成19年10月に開所した。

なお,保護観察における遵守事項を整理して充実させるとともに,保護観察の実施状況に応じて特別遵守事項の変更ができることとするなど更生保護の機能を充実強化する「更生保護法」が平成19年6月に成立し,平成20年6月1日に全面施行された。

ウ 民間ボランティア団体等との連携(法務省,厚生労働省)

非行のある少年の改善更生を図るためには,国の機関による指導・援助ばかりでなく,彼らを取り巻く地域社会,更には,国民全体の理解と協力が不可欠である。そのため,更生保護の施策の多くの分野で地域のボランティアが協力している。

また,法務省の主唱により実施している“社会を明るくする運動”等の機会において,非行防止と改善更生の援助について,国民一人一人の理解と協力を広く求めている。更生保護を支えているボランティアとしては,次のような人々が挙げられる。

<1> 保護司

「保護司法」(昭25法204)に定めるところにより,法務大臣から委嘱された非常勤の国家公務員である。処遇の専門家である保護観察官と協働して,保護観察,生活環境の調整,地域社会における犯罪予防活動等に当たっている。現在,全国で約49,000人の保護司が法務大臣の定めた保護区ごとに配属され,地域事情に通じた利点をいかして活動している。

<2> 更生保護施設

「更生保護事業法」(平7法86)の定めるところにより,法務大臣の認可等を受けて設置・運営される施設であり,保護者がいないなどの理由で,改善更生が困難な少年院仮退院者や保護観察中の少年を保護し,各種の生活指導や宿泊場所の提供,食事の供与,就労の援助等を行うことにより,その自立更生を支援している。平成21年4月現在,全国に更生保護施設は102施設あり,このうち少年を保護の対象とする施設は,82施設ある。なお,更生保護施設は1施設を除き,すべて「更生保護事業法」の規定により設立された更生保護法人により運営されている。

<3> 更生保護女性会

犯罪や非行のない明るい地域社会を実現しようとするボランティア団体であり,非行のある青少年の改善更生の援助,地域社会の非行防止,子育て支援活動など,地域に根ざした幅広い活動を展開している。

平成21年4月現在,全国で約19万人の会員が,市町村等を単位に地区会を結成し,全国各地で活動している。

<4> BBS(Big Brothers and Sisters Movement)会

非行など,様々な問題を抱える少年の悩み相談に乗ったり,学習支援などを通して,その自立を支援する「ともだち活動」を始め,非行防止や子どもの健全育成のための多彩な活動を行っている青年ボランティア団体である。

平成21年4月現在,全国で約4,200人の会員が,市町村等を単位とした地区組織や大学を単位とした学域組織を結成し,全国各地で活動している。

<5> 協力雇用主

犯罪や非行歴のある人に,その事情を承知した上で職場を提供し,その人の立ち直りに協力しようとする民間の事業主で,平成21年4月現在,全国に約7,700の事業主がいる。

犯罪や非行歴のある人は,そのために職業を得ることが難しく,また,就職しても職場での理解を得にくい場合があるため,協力雇用主は,健全な就業生活の確保に極めて重要な役割を果たしている。

法務省においては,引き続き,これらの民間ボランティアの活動を支援するとともに,その研修の充実を図ることとしている。

また,少年専用の更生保護施設では,入所中の少年の円滑な自立更生を促進するための効果的なプログラムの実施等,処遇機能の充実化を図るための取組がなされている。

エ 「自立援助ホーム」の充実(厚生労働省)

施設等を退所したが,社会的自立が十分ではない児童等の社会的自立を支援する「自立援助ホーム」(児童自立生活援助事業)の充実に努めている。

オ 立ち直り支援(警察庁,法務省,文部科学省)

少年による凶悪重大な事件やいじめ,不登校,ひきこもり等,青少年を取り巻く様々な問題の背景として,地域社会における連帯感の欠如や人間関係の希薄化など,従来,地域社会が持っていた犯罪抑止力や教育力の低下が指摘される現状にあっては,ボランティア団体を含めた地域の関係機関・団体と連携し,これまで以上に,地域に根ざした幅広い活動を行うことにより,明るい地域づくりに積極的に貢献することが求められている。

現在,法務省が主唱する“社会を明るくする運動”等において,全国各地で,街頭での声掛け等の非行防止活動,地域で非行問題等を話し合うミニ集会等を実施・推進しており,今後とも,地域の青少年育成に携わる機関や団体が幅広く連携し,地域が一体となって,多様な活動の機会や場所づくりを進めることとしている。

警察では,少年が非行を繰り返さないために,少年本人に対する助言,指導等の補導を継続的に実施しているほか,環境美化活動,生産体験活動,社会参加活動等を通じた立ち直り支援活動を推進している。

文部科学省では,青少年の活動拠点として求められる機能など地域社会全体での立ち直りを支援する体制づくりを行う事業や,立ち直りのための活動を円滑にすすめるための方策等新たな社会活動の場を開拓する取組を推進している。

カ 処遇全般の充実・多様化(法務省)

<1> 社会奉仕活動や自然体験活動等への参加

保護観察を実施する上においては,犯罪や非行の態様の変化や個々の少年の抱える問題性に適切に対応できるよう,処遇の充実・多様化を図っている。

例えば,非行少年には,否定的な自己イメージを抱き,健全な対人関係を持てず,社会からの疎外感を感じている者が多いが,介護・奉仕活動やレクリエーション等を行う社会参加活動に参加することにより,それらの問題の改善が期待できる。そこで,全国の保護観察所においては,保護観察に付されている少年を対象に,上記社会参加活動を実施し,その改善更生に向けた支援を行っており,今後も引き続き,少年の特性や地域の実情に応じて,多様な活動を実施していくこととしている。

また,少年院においても,矯正教育の一環として,地域の福祉施設等の協力を得て,社会奉仕活動等の院外教育を実施している。

<2> 被害者との関係改善に向けた加害者の取組の支援

近年,刑事司法の分野において,被害者やその親族の心情等について,一層の配慮を行うことが求められるようになってきており,各少年院及び少年刑務所においては,意図的・計画的に「被害者の視点を取り入れた教育」が実施されるよう,標準プログラム,指導案等の整備に努め,同教育により,自分の犯した罪と向き合い,犯した罪の大きさや被害者の心情等を認識し,被害者に誠意をもって対応していくとともに,再び罪を犯さない決意を固めさせるための働き掛けを行っている。

保護観察においても,個々の事案の状況に応じ,その処遇過程等において,少年が自らの犯罪と向き合い,犯した罪の大きさや被害者の心情等を認識し,被害者に対して誠意をもって対応していくことができるようになるための助言指導を行っている。

また,平成19年3月からは,被害者を死亡させ又はその身体に重大な傷害を負わせた事件により保護観察に付された少年に対して,犯した罪の重さや被害者の実情等を認識させながら被害者に対する謝罪の気持ちをかん養し,具体的なしょく罪計画を策定させるしょく罪指導を実施している。

さらに,家庭裁判所では,被害の実情や被害感情を少年に伝えて内省を深めさせるとともに,被害者の声を少年審判手続に反映するよう努めている。また,被害者に謝罪や弁償がされてなければ,少年や保護者に指導を行っている。

なお,法務省においては,諸外国における修復的司法についても,調査等を行っている。

キ 非行少年の家族への働き掛け(法務省,厚生労働省,最高裁判所)

少年の再非行を防止するために家族が果たす役割は大きい。そのため,各機関では,保護者の監護能力を高められるような様々な働き掛けを行っている。

児童相談所においては,保護者からの相談に直接応じるとともに,必要に応じて家庭訪問や児童相談所への招致により,家庭状況の確認や家族関係についての助言指導などを実施している。

また,非行の背景に保護者の虐待がある場合には,保護者に対するカウンセリング等の心理的な治療などを実施している。

家庭裁判所においては,少年の非行に家族関係が及ぼしている影響を見極めた上で,問題解決に向けて家族関係の調整を行ったり,社会奉仕活動に少年と保護者を参加させたり,保護者にも犯罪被害者の体験談を聞かせてその痛みを理解させたりするなどの働き掛けを行っている。

また,保護者会を実施して保護者の感情や経験を語り合う場を設けて少年に対する指導力を高めさせたり,保護者が主体的に養育態度を考え直し,監護についての責任を自覚するように働き掛けている。

少年院においては,家族関係にかっとうを抱えた在院者も少なくないことから,従来から,保護者会,各種行事や面会のため保護者が来庁した機会等を通して,家族関係調整のための取組を実施していたところであるが,平成19年の少年院法改正により,在院者の保護者に対する指導,助言その他の適当な措置が明文化されたことから,矯正教育に関する情報の提供,職員による面談の実施,教育活動への参加の促進,保護者会・講習会等の積極的な開催に努めている。

保護観察所においては,少年院に収容されている者の生活環境の調整や少年に対する保護観察処遇の中で,保護観察官や保護司が家族と面接を行っているが,家族関係や親の養育態度に問題が認められる場合には,少年の監護に関する責任を自覚させるために,保護者に対し,保護者会を実施するなどして監護能力が向上するよう働き掛けたり,適切に監護に当たるよう指導,助言等を行っている。

さらに,家庭裁判所や少年院でなされた保護者への働き掛け等との連携に努め,それらと一貫性のある生活環境の調整や保護観察処遇を実施するなど,保護処分の効果が最大限のものとなるよう努めている。

(10)いじめ・校内暴力対策(警察庁,文部科学省)

学校生活をめぐって,いじめ,暴力行為といった児童生徒の問題行動が憂慮すべき状況にあり,教育上の大きな課題であると考えている。

警察では,少年相談活動や学校との情報交換等により,いじめの早期把握に努めるとともに,いじめ事案を認知した場合は,積極的かつ的確な事案処理を行っている。

また,プライバシーに配意しつつ,警察が得たいじめの原因,実態等に関する情報を関係者に提供するなどにより,いじめの解決及び再発防止に努めている。

さらに,学校との連携の一層の強化を図るなど,校内暴力事件の早期把握に努め,悪質な事案に厳正に対処するとともに,学校内の非行集団による非行解明と集団の解体補導を推進しているほか,非行防止に関する情報交換を行うなど,内容に応じた適切な措置と再発の防止に努めている。

3 不登校・ひきこもり対策等

(1)心の問題への対応(厚生労働省)

不登校・ひきこもり,摂食障害,性の逸脱行為等の学童期や思春期にある青少年に多くみられる心の問題に対応するため,精神保健福祉センター,保健所,児童相談所等において,医師,保健師,精神保健福祉士等による相談を実施している。

また,保健所等において,妊娠・出産についての悩みに応ずるほか,妊娠について悩んでいる若者を対象に,個別に医学的,精神的,社会的な相談援助を行う場を設置する,モデル的相談事業を実施するなど様々な取組を進めている。

(2)不登校対策(文部科学省)

平成19年度から,不登校等の未然防止,早期発見・早期対応など,児童生徒の支援に効果的な取組について,これまで構築してきた関係機関と連携したサポート体制をいかしつつ調査研究を行う「問題を抱える子ども等の自立支援事業」を実施している。

また,平成17年度から,不登校児童生徒に多様な支援を行うため,不登校児童生徒及び保護者への指導・支援を行っているNPO,民間施設及び公的施設に対し,不登校児童生徒の実態に応じた効果的な学習カリキュラム,活動プログラム等の開発を委託しており,平成21年度も引き続き実施している。

(3)高校中途退学者対策(内閣府,文部科学省,厚生労働省)

内閣府では,高等学校中途退学者の進路状況や必要な支援を把握するため,平成20年度に,文部科学省の協力を得て緊急調査を実施した(参照ページ)。

(4)ひきこもり対策

ア 体験活動の推進(文部科学省)

文部科学省では,不登校,ひきこもり,ニートなど自立に支援を要する青少年の社会性をはぐくむため,自然体験,生活体験,社会体験等の体験活動の機会を継続的に提供するための取組を推進している。

イ 相談業務の充実(厚生労働省)

いわゆる「ひきこもり」については,地域精神保健福祉業務の一環として,精神保健福祉センター,保健所,児童相談所等において,本人や家族に対する医師,保健師,精神保健福祉士等による相談・支援を行っている。

また,相談業務をより適切に実施するため,対応ガイドラインを作成し,関係機関に配布するなど,地域精神保健福祉業務のより一層の充実を図っている。

4 労働市場で不利な条件下にある青少年の自立支援

(1)若年失業者等に対する支援等(厚生労働省)

若年失業者の就職を支援するため,東京,神奈川,愛知,大阪及び兵庫に設置しているヤングワークプラザにおいて,希望職種が明確になっていないフリーターを対象に,職業適性診断や職業カウンセリングの実施など,計画的できめ細かな個別の支援を実施している。

また,ヤングワークプラザ及び12道府県のハローワークにおいて,的確な求職活動を行えない年長フリーター等(25〜39歳)に対し,民間のノウハウを活用し,これらの者が相互に交流する場を設け,適職の探索や就職活動方法の習得等を行い,主体的に就職活動が展開できるように支援する「ジョブクラブ(就職クラブ)」方式の取組を実施している。

ニート等の若者の職業的自立を支援するため,平成17年度から,合宿形式による集団生活の中での労働体験等を通じて,働く自信と意欲を付与し就労等へと導く若者自立塾事業を全国30か所で実施している(平成21年度)。さらに,平成18年度から,各地域に「地域若者サポートステーション」を設置し,若者の置かれた状況に応じた専門的な相談を行うとともに,地域若者支援機関のネットワークの中核として各機関のサービスが効果的に受けられるようにしているところであり,平成21年度においては,設置拠点を拡充(77か所→92か所)するとともに,教育機関等とのネットワーク機能を強化し,若者・保護者に対し能動的に働き掛けるモデル事業等を実施している。

(2)障害者に対する支援等(厚生労働省,農林水産省)

「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭35法123)に基づき,事業主に対して障害者の雇用義務を課すとともに,実雇用率が低い事業主等に対して,障害者雇入れ計画の作成命令を行う等の障害者雇用率達成指導を行っている。

また,ハローワークを中心として,職業指導,職業紹介等の職業リハビリテーションを,医療・保健福祉・教育等の関係機関の連携のもとで実施しているほか,ハローワークや,地域障害者職業センター,障害者就業・生活支援センター,ジョブコーチ支援等により,障害者の職場定着支援を図っているなど,障害者一人一人の特性に配慮したきめ細やかな支援を行っている。

障害者の職業能力開発については,一般の職業能力開発校において,バリアフリー化を推進し,障害者の入校を促進しているほか,知的障害者等を対象とした訓練コースを設置して,障害者の受入れを促進し,職業訓練機会を提供している。

また,一般の職業能力開発校において受入れが困難な重度障害者等については,障害者職業能力開発校(全国19校)において,障害の特性に応じた職業訓練を実施している。

さらに,企業,社会福祉法人,特定非営利活動法人,民間教育訓練機関等,地域の多様な委託先を開拓して,就職に必要な知識・技能を習得するための委託訓練を拡充して実施している。

また,農林水産省では,農業分野での障害者の就労促進に向け,障害者就労マニュアルを作成するとともに,農業で働きたい障害者と農業法人等を対象とした研修会の開催等の普及啓発を実施している。

(3)非行少年に対する支援等(法務省)

少年院や少年刑務所においては,処遇の一環として,就労に対する心構えを身に付けさせ,就労意欲を喚起し,各種の資格取得を奨励しているほか,公共職業安定所等との連携による職業講話,職業相談,職業紹介,求人情報の提供等,求職活動を容易にするための就労支援を実施している。

保護観察所においては,少年院や少年刑務所等矯正施設に在院・在所中の少年について,矯正施設や家族,学校等と協力し,出院・出所後の就労先の調整・確保に努めている。

保護観察中の無職少年等に対しては,その処遇過程において,就労意欲がない原因や意欲があっても就労できない理由,就労しても継続しない理由等,不就労の原因となっている問題点の把握に努め,その解消を図るための助言指導を行っている。

また,公共職業安定所と連携し,職業相談,職業紹介,セミナー・事業所見学会,職場体験講習,トライアル雇用等の保護観察中の無職少年等に対する就労支援策を推進しているほか,就労後の相談,問題点の把握,問題解決のための助言等,就労継続のための支援を行っている(参照ページ)。

5 青少年の被害防止・保護

(1)児童虐待防止対策

ア 児童虐待の現状(厚生労働省)

児童虐待への対応については,平成12年11月,「児童虐待の防止等に関する法律」(平12法82)(以下,「児童虐待防止法」という。)が施行されたが,その後,平成16年には,児童虐待防止法及び児童福祉法の改正が行われ,制度的な対応について充実が図られてきたところである。しかしながら,子どもの生命が奪われるなど重大な児童虐待事件が跡を絶たず,全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数も増加を続け,平成19年度には児童虐待防止法制定直前の約3.5倍に当たる4万639件となるなど,依然として,社会全体で早急に取り組むべき重要な課題となっている。

イ 児童虐待防止対策の充実(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省,厚生労働省)

児童虐待は,子どもの心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるため,児童虐待の防止に向け,虐待の「発生予防」から「早期発見・早期対応」,さらには虐待を受けた子どもの「保護・自立支援」に至るまでの切れ目ない総合的な支援体制を整備,充実していくことが必要である。

<1> 児童虐待防止対策の充実に向けた取組(法務省,文部科学省,厚生労働省)

児童虐待については,その発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至るまで,切れ目なく総合的に支援していくため,関係省庁が連携して,施策の一層の充実を図っている。

○ 発生予防

厚生労働省では,発生予防に関しては,平成19年度から,生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し,子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握を行うなど,乳児のいる家庭と地域社会をつなぐ最初の機会とすることにより,乳児家庭の孤立化を防ぎ,乳児の健全な育成を確保するための「生後4か月までの全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」を実施している(平成20年度においては,全国の市区町村のうち72.2%にあたる1,247市区町村にて実施(平成20年度次世代育成支援対策交付金交付決定ベース))。

また,養育支援が必要な家庭に対して,保健師,助産師,子育て経験者等が訪問し,育児・家事の援助や具体的な育児に関する指導・助言等を行う「育児支援家庭訪問事業」や,子育て中の親子が気軽に集い,相談・交流等できる「地域子育て支援拠点事業」の設置を推進している。

文部科学省では,就学時健診等の機会を活用した子育て講座など,家庭教育に関する学習機会を提供することで,保護者の子育て不安の軽減や地域からの孤立の解消に努めている。

また,児童虐待に関する内容を盛り込んだ家庭教育に関するヒント集として「家庭教育手帳」を作成し,全国の教育委員会等に提供して,子育て講座など,家庭教育に関する学習機会などでの活用を図っている。

○ 早期発見・早期対応

厚生労働省では,早期発見・早期対応に関しては,市町村における「子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)」の設置促進・機能強化,児童福祉司の配置の充実など児童相談所の体制強化,虐待をした親自身への再発防止策として,家族再統合や家族の養育機能の再生・強化に向けた取組を行う親支援を推進している。(参照ページ)。

警察では,街頭補導,相談活動,通報,事件捜査・調査等を通じて,児童虐待事案の早期発見・被害児童の早期保護に努めている。

○ 人権擁護機関における相談

法務省の人権擁護機関においても,被害児童からの申告や人権相談のほか,新聞・雑誌等からの情報によって,児童虐待事案の情報を得た場合は,児童相談所等と連携し,被害児童の一時保護など適切な対応に努めるとともに,必要に応じて,加害者等に人権尊重理念について理解を深めるような啓発を行うことなどによって,被害児童の救済に努めている。

また,「児童虐待防止推進月間」中において,子どもの人権専門委員全国会議を開催し,児童虐待防止のための取組強化を図っている。

○ 保護・支援

厚生労働省では,保護・自立支援に関しては,児童養護施設等の小規模ケアの推進,個別対応職員や家庭支援専門相談員の配置等,ケア担当職員の質的・量的充実,里親委託の推進,身元保証人を確保するための事業などを実施している。

文部科学省においては,児童虐待等の問題に対応するため,教育分野に関する知識に加えて,社会福祉等の専門的な知識・技術を用いて,児童相談所等の関係機関等とのネットワークを活用するなど,児童生徒が置かれた様々な環境へ働き掛けたり,関係機関とのネットワークを活用して,問題を抱える児童生徒に支援を行う専門家であるスクールソーシャルワーカーについて,適切に配置できるよう,必要な経費を措置している。

また,平成21年度においては,児童虐待防止法の趣旨を踏まえ,学校における児童虐待の早期発見・通告,関係機関との連携,虐待を受けた子どもへの対応等について,教職員の意識啓発と対応スキルの向上を図るため,「児童虐待防止と学校」というタイトルで研修教材を作成し,都道府県・指定都市教育委員会に配布した。

警察では,警察官職務執行法に基づく犯罪の制止,立入等の権限行使,厳正な捜査,被害児童の支援,児童相談所の行う立入調査等に対する援助要請への的確な対応等,児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応を行っている。

○ 児童虐待による死亡事例等の検証

児童虐待による死亡事例等の検証は,事件の再発防止と対策を講ずる上での課題を抽出するために重要な意義を持つことから,社会保障審議会児童部会の下に設置されている「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」において,平成16年から実施されており,これまで4次にわたる報告が取りまとめられている。平成20年6月,同検証委員会において,第1次から第4次までの報告の総括報告書が取りまとめられた。

○ 関係法令の改正

平成19年には,児童虐待防止法及び児童福祉法の改正が行われ,平成20年4月に施行された。主な改正事項は,次のとおりである。なお,これに伴い,児童相談所運営指針の改正等が行われている。

a 児童の安全確認等のため,裁判官の許可状を得た上で,解錠等を伴う立入を可能とする立入調査等の強化

b 保護者に対する面会・通信等の制限の強化,都道府県知事が保護者に対し児童へのつきまといや児童の住居等付近でのはいかいを禁止できる制度の創設等

c 保護者に対する指導に従わない場合の措置の明確化

また,平成20年11月,新たな子育て支援サービスの創設,虐待を受けた子ども等に対する家庭的環境における養育の充実等の措置を講ずる「児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立した。主な内容としては,

a すべての乳児のいる家庭を訪問することにより,子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握,相談助言等の援助を行う「乳児家庭全戸訪問事業(旧生後4か月までの全戸訪問事業)」や,養育支援が必要な家庭に対して,訪問による養育に関する相談,指導・助言等の支援を行う「養育支援訪問事業(旧育児支援家庭訪問事業)」,乳幼児とその保護者が相互の交流を行う場所を開設し,子育てについての相談,情報提供,助言等の援助を行う「地域子育て支援拠点事業」等の子育て支援サービスの法定化

b 子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)の機能強化

c 里親制度の改正と施設内虐待の防止等の規定等

が盛り込まれたところである(一部を除き平成21年4月1日から施行)。

ウ 関係省庁・機関との連携(厚生労働省)

厚生労働省では,平成16年から11月を「児童虐待防止推進月間」と位置づけ,児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図るため,その期間中,関係府省庁や地方公共団体,関係団体等と連携した集中的な広報・啓発活動を実施している。平成20年度においては,月間標語の公募・決定,全国フォーラムの開催(11月2日〜3日・滋賀県大津市),広報啓発ポスター・チラシの作成,配布及び政府広報を活用した各種媒体(テレビ,新聞,雑誌等)による広報啓発などを実施した。また,児童虐待防止の啓発を図ることを目的に,民間団体(特定非営利活動法人児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボンキャンペーン」について後援を行っている。

エ 調査研究(文部科学省,厚生労働省)

厚生労働省では,平成14年度に設立された,児童虐待に特化した研究,研修,情報提供などを行う「日本虐待・思春期問題情報研修センター(通称:子どもの虹情報研修センター)」において実施されている児童虐待に関する臨床研究や,指導者の養成を目的に,高度かつ最新の専門知識と実践的な援助技術が習得できるような研修等の実施を支援している。

また,厚生労働科学研究においても,保護者への指導法の開発に関する研究など,児童虐待対策に関する研究を,従来から幅広い分野の研究者の参画を得て実施している。

文部科学省においては,児童生徒の深刻な状況や「児童虐待防止法」第4条の規定を踏まえ,国内・諸外国の児童虐待防止に向けた先進的取組等を収集・分析し,その成果について,平成18年5月に報告を取りまとめた。

また,平成21年度においては,本調査研究の成果を受け,児童虐待防止法の趣旨を踏まえ,学校における児童虐待の早期発見・通告,関係機関との連携,虐待を受けた子どもへの対応等について,教職員の意識啓発と対応スキルの向上を図るため,「児童虐待防止と学校」というタイトルで研修教材を作成し,都道府県・指定都市教育委員会に配布した。

(2)その他の要保護児童への対応(厚生労働省)

保護者のいない児童や保護者から適切な監護を受けられない児童等が健やかに成長できるよう,指導・支援の単位の小規模化等を推進し,児童養護施設等における処遇の向上に努めている。

また,家庭的な環境の下で児童を養育する「里親制度」についても,里親への委託を推進し,里親家庭への支援体制の充実を図るため,平成20年度から「里親支援機関事業」を実施し,里親と関係機関との連絡調整,里親家庭への訪問支援,里親による相互交流の促進など,里親への子どもの養育に関する支援や里親制度の積極的な普及啓発等を総合的に実施している。さらに,里親制度を普及させるためのCMを流したりする等,広く里親制度の周知が図られるよう広報・啓発活動にも努めている。

(3)青少年の福祉を害する犯罪対策

ア 人身取引対策(内閣官房)

人身取引は,重大な人権侵害であり,被害者となった女性や児童に深刻な肉体的・精神的な影響を与え,その被害の回復が非常に困難であることから,人道的な観点からも,迅速・的確な取組が必要とされている。

このような認識の下,政府は,平成16年4月に,内閣官房副長官補を議長とする「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を設置し,同年12月に,人身取引の防止・撲滅及び被害者保護などからなる包括的・総合的な対策として,「人身取引対策行動計画」を取りまとめ,同月,全閣僚を構成員とする「犯罪対策閣僚会議」に報告した。

行動計画においては,人身取引被害者の保護に際し,被害者が児童である場合も含め,被害者を保護の対象として明確に位置付け,被害者の状況に応じて,きめ細かな対応を行うこととしている。

政府では,策定後も,時宜に応じて関係省庁連絡会議及び同幹事会を開催し,行動計画のフォローアップを行っているほか,同計画の成果を犯罪対策閣僚会議へ報告するなどして,施策の着実な推進を図っている。

イ 取締り等(警察庁,法務省)

「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(平11法52。以下「児童買春・児童ポルノ法」という。)違反や「児童福祉法」違反等の福祉犯は,少年の心身に有害な影響を及ぼし,健全な育成を著しく阻害することから,警察では,その積極的な取締りと被害少年の発見保護に努めている。

<1> 福祉犯の被疑者の検挙状況(警察庁)

平成20年の福祉犯の検挙人員は,6,983人で,前年に比べ215人(3.2%)増加した(第2-3-4図)。このうち,暴力団員の検挙人員は,446人で,福祉犯における検挙人員の6.4%を占めている(第2-3-2表)。

第2-3-4図 福祉犯の法令別検挙人員(平成20年)
第2-3-4図 福祉犯の法令別検挙人員(平成20年)
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第2-3-2表 福祉犯の法令別暴力団等関係者の関与状況(平成20年)
第2-3-2表 福祉犯の法令別暴力団等関係者の関与状況(平成20年)
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<2> 児童買春・児童ポルノ問題(警察庁)

国際的にも問題となっている児童買春や児童ポルノは,児童の権利保護や少年の健全育成を図る上で大きな問題であることから,「児童買春・児童ポルノ法」による積極的な取締りに努めており,平成20年中は,1,732件,1,272人を検挙している。

<3> 「出会い系サイト」問題(警察庁,法務省)

警察では,「出会い系サイト」を利用した犯罪について,平成20年中は,「児童買春・児童ポルノ法」違反事件601件,青少年保護育成条例違反302件を検挙している。

また,平成20年中,「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(平15法83)違反で367件(うち119件が児童による誘引)を検挙している。

なお,「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律の一部を改正する法律」(平20法52)により,事業者に対する届出制の導入,児童を異性交際の相手方となるように誘う書き込み等の公衆閲覧防止義務の新設等の規制の強化,児童による出会い系サイトの利用を防止するための民間活動の促進に関する規定が新たに盛り込まれ,平成20年12月1日から施行されている。

検察庁においては,「児童福祉法」違反事件,「児童買春・児童ポルノ法」違反事件等青少年の福祉を害する犯罪及び人身売買事犯についても積極的に訴追し,厳正な科刑の実現に努めている。

ウ 被害相談・支援(厚生労働省)

平成19年度に児童相談所で受け付けた児童買春等被害相談は,40件であり,児童,家庭及び関係機関から,児童買春等の被害により保護を必要とする相談及び通告が児童相談所にあった場合には,児童の心身の状態,家庭環境,生活環境等について総合的に調査・判定を行い,以下の措置を実施している。

<1> 児童相談所への通告等により継続的なカウンセリング等を実施

<2> 緊急的な保護を必要とする場合は,児童相談所の一時保護所で一時保護を実施

<3> 総合的な判定の結果,児童の生活全般の立て直しが必要な場合は,児童養護施設,情緒障害児短期治療施設,児童自立支援施設等に入所措置を行い,保護及び指導を実施

<4> 心身の状態が医療を必要とする場合には,医療機関をあっせん

(4)その他の犯罪対策

ア 子どもを犯罪から守るための取組(内閣官房,内閣府,警察庁,総務省,法務省)

近年,子どもを対象とした殺人,暴行・傷害,性犯罪,略取誘拐等の犯罪が多数発生し,国民に強い不安を与えていることから,政府では,平成17年12月に内閣官房副長官補を議長とする「犯罪から子供を守るための対策に関する関係省庁連絡会議」を設置し,全通学路の緊急安全点検や路線バスを活用した通学時の安全確保などの緊急対策6項目を含む「犯罪から子どもを守るための対策」を取りまとめ,同月,全閣僚を構成員とする「犯罪対策閣僚会議」に報告した。

また,この対策については,平成18年以降,毎年12月,関係省庁連絡会議において,主要な成果を取りまとめるとともに,策定後の犯罪情勢や関係機関における取組の状況等を踏まえ改定を行っている。

警察庁では,子どもの犯罪被害等を防止するため,平成17年度から,公民館等の活動拠点を中心とした自主防犯活動を支援するための「地域安全安心ステーション」推進事業を実施(平成21年4月現在800地区整備)しているほか,平成17年6月からは,法務省から子どもを対象とした暴力的な性犯罪に係る受刑者の出所情報の提供を受け,出所者の更生や社会復帰を妨げないように配慮しつつ,犯罪の予防や捜査の迅速化等への活用を図っている。

そのほか,警察では,犯罪の被害者となっている子どもの早期保護等を図るため,警察庁の委託を受けた民間団体が,市民から匿名による事件情報の通報を,電話により受け,これを警察に提供して,捜査等に役立てるという匿名通報モデル事業(通称「匿名通報ダイヤル」)を平成19年10月から運用している。平成19年10月1日から平成20年9月30日までの通報受理件数は459件であり,このうち7件が事件解決等に結び付いた。

消防庁では,警察庁と連携して,自主防災組織等の地域コミュニティが地元消防本部,消防団,警察署,地域の小・中学校,PTA,老人クラブ,婦人会,防犯協会などと連携・協力し,地域の公民館等を防災・防犯活動の拠点=「地域安心安全ステーション」として,防災・防犯パトロールや防災訓練などを行うことにより,地域の安心・安全の確保を図る活動を実施する事業を推進している。(平成20年度までに412団体でモデル事業を実施)。

イ 学校における安全管理(文部科学省)

学校における事件等が大きな問題となっている状況を踏まえ,文部科学省では,平成14年度から,学校安全の充実に総合的に取り組む「子ども安心プロジェクト」を推進しており,警察官OB等からなるスクールガード・リーダーを全国に配置するなど地域社会全体で学校安全に取り組む「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」や,子ども自身が危険を予測し,回避する能力を身に付けることができるよう「防犯教室」の開催の支援に関する事業等を実施している。

また,平成20年6月には,「学校保健法」(昭33法56)が改正され,「学校保健安全法」と改められた。改正法においては,総合的な学校安全計画の策定・実施や,危険等発生時の対処要領の作成など学校の施設・設備の安全点検,日常生活における安全指導等を含めた取組が規定されたところである。

文部科学省で行った調査結果によれば,平成19年度に地域のボランティアによる巡回が行われた学校の割合は,67.4%で,その中でも小学校における割合は,92.6%,子どもを対象に防犯教室等を実施した学校の割合は,79.6%で,その中でも小学校における割合は,95.1%となっており,前年度と比較して増加若しくは横ばいであり,地域や学校における子どもの安全確保に向けた取組が推進されている。

(5)犯罪被害に遭った青少年とその家族等への対応(警察庁)

人格形成の途上にある少年が犯罪等により被害を受けた場合,その後の健全育成に与える影響が大きいことから,警察では,被害少年の再被害を防止するとともに,その立ち直りを支援するため,少年補導職員による指導助言のほか,被害少年に対するカウンセリング等,継続的な支援を行っている。

被害少年の支援に際しては,臨床心理学,精神医学等の高度な知識・技能や豊富な経験を有する部外の専門家を「被害少年カウンセリングアドバイザー」として委嘱し,その適切な指導・助言を受けながら,支援を実施している。

また,それぞれの地域において,保護者等との緊密な連携の下に,日常の少年を取り巻く環境の変化や生活状況を把握しつつ,きめ細かな訪問活動等を行うボランティアを「被害少年サポーター」として委嘱し,これらの者と連携した支援活動を推進している。

(6)いじめによる被害対策

ア 学校における被害相談(文部科学省)

いじめは教育上大きな課題となっており,文部科学省では,以下のような取組を行ってきた。

<1> 平成18年10月19日に通知を発出し,各都道府県・指定都市教育委員会や学校に対し,問題を隠すことなく,迅速に対応するよう,取組の徹底を求めた。平成18年11月17日に「文部科学大臣からのお願い」を発表し,子どもと大人社会一般に対していじめの問題について呼び掛けた。

<2> 省内に設置された「子どもを守り育てる体制づくり推進本部」において,平成19年1月に「いじめ・自殺問題に関する取組について」を取りまとめた。

<3> 子どもたちが全国どこからでも夜間・休日を含めて,いつでもいじめ等の悩みを相談することができるよう,全国統一の電話番号(0570-0-78310(なやみ言おう))により平成19年2月から全都道府県及び指定都市教育委員会で24時間いじめ相談ダイヤルを実施している。

<4> 平成20年度から,「いじめ総合対策支援事業」を実施し,いじめ等の問題行動が生じた際に外部の専門家の協力を得た効果的な取組の在り方や,いじめの未然防止・早期発見等に関する学校の取組を推進している。

特に,「ネット上のいじめ」に関しては,平成19年度から,「子どもを守り育てるための体制づくりのための有識者会議」を開催し,平成20年6月に,第二次まとめとして,「『ネット上のいじめ』から子どもたちを守るために−見直そう!ケイタイ・ネットの利用のあり方を−」を取りまとめた。

また,平成21年1月に各都道府県教育委員会等に向けて通知を発出し,情報モラル教育の充実,家庭や地域に対する働きかけ等,「ネットいじめ」などから子どもたちを守るための取組等について,各地域の実情に合わせた更なる取組の推進を行っている。

さらに,教育相談体制の充実,問題行動への毅然とした対応の促進などの取組を引き続き行っていく。

イ 関係機関と連携した取組(警察庁,法務省)

警察では,いじめの被害を受けた少年等に対して,保護者及び関係機関・団体との連携を図りつつ,被害少年の性格,環境,被害の原因,ダメージ程度,保護者の監護能力等に応じて,少年サポートセンターとの緊密な連携,少年補導職員によるカウンセリングの継続的な実施等,きめ細かな支援を行っている。

また,電話,ファックス,電子メールなどを活用し,いじめの被害を受けた少年等が相談しやすい環境の整備を進めるとともに,少年相談窓口の夜間,休日における対応の強化に努めているほか,都道府県教育委員会における教育相談窓口との連携協力を行っている。

法務省の人権擁護機関では,法務局・地方法務局及びその支局で開設している常設の人権相談所や,市町村役場やデパート,公民館等において臨時に開設する特設の人権相談所において人権相談に応じている。また,法務省のホームページ上に「インターネット人権相談受付窓口」(SOS-eメール)を開設して,パソコンや携帯電話からインターネットでいつでも相談できる窓口を設置しているほか,全国の小中学校の児童・生徒に「子どもの人権SOSミニレター」(便せん兼封筒)を配布するなど,「いじめ」を始めとする子どもの人権問題について相談に応じている。

さらに,法務局・地方法務局では,専用相談電話「子どもの人権110番」(フリーダイヤル)を開設し,子どもが相談しやすい体制の整備に努めている。平成20年における「子どもの人権110番」の利用件数は,21,353件であり,このうち,「いじめ」に関する相談は,3,517件となっている。

法務省の人権擁護機関では,人権侵害を受けた被害者等からの申告や人権相談等を通じて「いじめ」事案の情報を得た場合には,人権侵犯事件として調査し,「いじめ」があった,あるいは「いじめ」が継続して行われているなどその事実が認められた場合には,教職員や学校等に対して人権思想の啓発を行うことによって「いじめ」行為の中止や再発防止を図るなど,被害を受けた少年等の救済に努めている。

また,子どもの人権専門委員を中心とする人権擁護委員及び法務局・地方法務局の職員が,地域の学校を訪問するなどして,いじめをなくすための様々な啓発活動も行っている。

(7)自殺対策(文部科学省)

平成18年8月,文部科学省は,「児童生徒の自殺予防に向けた取組に関する検討会」を立ち上げ,同検討会は平成19年3月に「子どもの自殺予防のための取組に向けて(第1次報告)」を取りまとめた。同報告を受け,平成20年3月から「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」を開催し,自殺予防について調査研究を行っている。平成21年3月には,「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」のマニュアルを取りまとめ,教育委員会・学校に配付した。今後も,児童生徒の自殺予防に関する取組の充実に向けた検討を文部科学省において行うこととしている。

(8)災害・事故防止対策

ア 学校における防災教育及び交通安全教育(文部科学省,国土交通省,気象庁)

学校においては,子どもが犯罪被害,交通事故及び自然災害等の危険から身を守るため,子ども自身に危険を予測・回避する能力を習得させるとともに,家庭や地域と連携を図りながら,学校の教育活動全体を通じて,子どもの発達段階に応じた安全教育を推進している。

文部科学省では,平成19年度,平成20年度にそれぞれ小学生向け,中学生向けの防災教育教材を作成しており,平成21年度については高校生向けの防災教育教材を作成することとしている。

国土交通省では,平成19年度に小学校教諭向けの「水防災学習マニュアル」及び「水防災教育素材集」を作成し学校教育現場における防災教育の実施支援を行ったほか,平成20年度に小中学校における土砂災害防止教育に関する懇談会を開催するなど,土砂災害から命を守るための教育を推進している。

気象庁では,平成20年夏に多発した局地的大雨による事故や災害を踏まえ,防災気象情報の利活用の手引き「局地的大雨から身を守るために」やリーフレットを作成し,各市町村の教育委員会等へ配布するなど教育機関等への周知広報を行っている。

イ 防災指導(消防庁)

消防庁では,地震や風水害などの災害への備えや具体的な対応,初期消火,応急手当要領などに関する防災指導を,地域活動やインターネットを活用したe-ラーニング(防災・危機管理e-カレッジ)により行っている。

ウ 母親クラブの活動(厚生労働省)

地域における児童を持つ母親による児童健全育成活動である母親クラブでは,公園の遊具の安全性の点検や交通安全指導など,地域に密着した活動を行っており,厚生労働省では,これらの取組を支援するため,母親クラブの活動費の補助を行っている。

エ 水難・山岳事故対策(警察庁,文部科学省)

今日,日常生活の中でスポーツを実践する人々がますます増加してきており,その中で,海や川での水泳や登山・キャンプ等の野外で自然と触れ合いながら,様々な活動を行う野外活動への関心も高まってきている。

警察では,自治体や関係機関・団体等と連携し,安全対策についての働き掛けや,海浜・山岳パトロール等の活動を通じて,水難・山岳事故の防止に努めている。文部科学省においても,関係省庁とも連携を図り,適宜関係機関・団体等に対し,水泳や登山の事故防止について注意を喚起している。

また,各種の資料,パンフレット等の作成,指導者に対する講習会や研修会の実施などにより,事故防止に努めている。

6 外国人青少年の支援(内閣府,文部科学省)

義務教育段階にある外国人の子どもについても,公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には,国際人権規約等に基づき,日本人児童生徒と同様に無償で受け入れており,教科書の無償配布及び就学援助を含め,日本人と同一の教育を受ける機会を保障している。

文部科学省では,外国人の我が国の生活環境への円滑な適応を促進するため,平成19年度から,「外国人の生活環境適応加速プログラム」として

<1> ブラジル人学校等の教育状況や管理運営体制の改善等に資するため,ブラジル人学校やブラジル人子弟等を取り巻く喫緊の課題についての調査研究

<2> 外国人児童生徒の母国政府との情報交換及び教育分野での協力促進を図るための協議会の開催

<3> 「生活者としての外国人」のための日本語教室,日本語能力を有する外国人等を対象とした指導者養成,ボランティアの実践的研修等を行う「生活者としての外国人」のための日本語教育事業

<4> 学校における外国人児童生徒の受入体制の整備や不就学の外国人の子どもの就学促進に関する取組を支援する帰国・外国人児童生徒受入促進事業を実施している。

また,今般の厳しい雇用情勢の下で,日系人をはじめとする定住外国人の方々が困難な状況に置かれ,特にその子どもたちが就学等の面で厳しい状況にあることに鑑み,平成21年1月内閣府に「定住外国人施策推進室」を設置し,関係省庁連携の下,「定住外国人支援に関する当面の対策について」(平成21年1月30日) を取りまとめた。また,平成21年3月27日に「定住外国人施策推進会議」を立ち上げ,政府全体としての経済危機対策の取りまとめにあわせ,関係省庁連携の下,「定住外国人支援に関する対策の推進について」(平成21年4月16日)を取りまとめた。

文部科学省では,景気後退によって,ブラジル人学校等に通学しているブラジル人等の子どもの就学が困難になりつつある状況を受けて,平成21年1月30日に,主に平成20年度内の緊急支援策として,公立学校に転入する者に対する支援や,子どもたちの居場所づくり等を取りまとめた「定住外国人の子どもに対する緊急支援 〜 定住外国人子ども緊急支援プラン〜」を公表した。さらに,3月27日には,平成21年度予算の活用や既存の制度等の活用等を中心に取りまとめた「定住外国人の子どもに対する緊急支援(第2次) 〜定住外国人子ども緊急支援プラン〜」を公表した。


※12 小・中学校の通常の学級に在籍し,比較的軽度の言語障害,情緒障害,弱視,難聴等のある児童生徒を対象として主として各教科等の指導を通常の学級で行いながら,障害に基づく学習上又は生活上の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態。


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