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3 高等学校中途退学者及び中学校不登校生徒の緊急調査の結果から

高等学校中途退学者及び中学校不登校生徒の全体的な状況は以上のとおりですが,高等学校を中途退学したり,中学校段階において不登校状態にあった青少年は,その後,どのような生活を送っているのでしょうか。今回の調査結果から,その実態を探っていきたいと思います。

(1)調査の概要

本調査は,平成21年2月から3月にかけて,郵送によるアンケート調査の方法により実施したものであり,高等学校中途退学者については,全国の平成16年度中に高等学校を中途退学した人のうち1,595人に調査票を送付し,168人から回答を得ました。また,中学校不登校生徒については,全国の平成16年度中に中学校第3学年で不登校であった人のうち480人に調査票を送付し,109人から回答を得ました。

なお,本調査は,学校等の協力が得られた地域において実施したものであること及び回答者数の少なさから,統計的には十分といえるものではありませんが,高等学校中途退学者及び中学校不登校生徒の現状や必要な支援を把握するための調査として意義があると考え,お示しするものです。

(2)主な調査結果

ア 高等学校中途退学者の緊急調査

<1> 中途退学後約4年が経過した現在の状況としては,「仕事をしている」と回答した人が約半数(47.6%)と最も多く,次いで,「仕事にはついておらず,学校にも行っていない」が約2割(20.8%)となっています(図1)。総務省の就業構造基本調査(平成19年)では,本調査の対象者とほぼ同年代である20歳から24歳までの無業者のうち,家事も通学もしていない人の割合は5.9%であったことから,本調査において「仕事にはついておらず,学校にも行っていない」と回答した人の割合は,高いものといえます。

図1 現在の状況(高校中退者)
図1 現在の状況(高校中退者)
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また,現在,「学校に行っている」(17.3%),「仕事をしながら学校に行っている」(8.3%)と回答した人(計43人)に,どのような学校に行っているのかをさらに尋ねたところ,「通信制高校」が,約4割(41.9%)と最も高くなりました(図2)。

図2 どんな学校に行っているか(高校中退者)
図2 どんな学校に行っているか(高校中退者)
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一方,現在,「仕事をしている」(47.6%),「仕事をしながら,学校に行っている」(8.3%),「仕事をしながら,学校以外の場で勉強している」(4.8%)と回答した人(計102人)に,就いている仕事の形態について尋ねたところ,「パート・アルバイト」(41.2%)が最も多く,「派遣社員・契約社員」(12.7%)と合わせると,現在,仕事をしていると回答した人の半数以上が,非正規雇用の職に就いていることになります。他方,「正社員」は,36.3%でした(図3)。先の就業構造基本調査(平成19年)で同じくほぼ同年代の人のうち有業者について雇用形態をみると,「正社員」として働いている割合が55.6%と最も高く,次いで,「パート・アルバイト」(31.0%),「派遣社員・契約社員」(9.3%)となっており,高等学校を中途退学した人が正社員として働いている割合は,やや低いものといえます。

図3 どんな形態の仕事をしているか(高校中退者)
図3 どんな形態の仕事をしているか(高校中退者)
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<2> 中学校在学時(全学年を通して)の欠席状況については,「1/3くらい休んだ」(13.7%),「1/2くらい休んだ」(3.6%),「ほとんど休んだ」(7.1%)と回答した人を合わせると,回答者全体の約4分の1に及びます(図4)。文部科学省の学校基本調査によると,平成15年度間から平成19年度間にかけて長期欠席をした生徒(年度間に通算30日以上欠席した生徒(病気,経済的理由及び不登校等))の全生徒数に占める割合は約3.5〜3.8%で推移しており,高等学校中途退学者は中学校在学時において長期欠席傾向のある人が多いことがうかがわれます。

図4 中学校在学時の欠席状況
図4 中学校在学時の欠席状況
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<3> 高校をやめた理由としては,約半数が「高校の生活があわなかったから」(49.4%)を挙げています。次いで,「人間関係がうまく保てなかったから」(23.2%),「高校の勉強が嫌いだったから」(20.8%)の順となっています(図5)。

図5 高校をやめた理由(複数回答)
図5 高校をやめた理由(複数回答)
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高校を中途退学した人たちが,高校生活に違和感を感じたり,高校進学後に生じる対人関係や勉強についての問題に対処しきれずに,退学に至っている現状がうかがわれます。

また,ニート群(注)では,全体と比べて,「人間関係がうまく保てなかったから」「高校の勉強が嫌いだったから」「家庭の事情から」と回答した割合がやや高くなりました。

(注) 本調査では,<1>の「現在の状況」について,「仕事にはついておらず,学校にも行っていない」と回答した人の中で「夫又は妻」と同居していると回答した人を除いた人を,「ニート群」としています。

<4> 「高校をやめてから現在までに利用した施設・機関」についてみると,全体の約半数(48.2%)は,「公共職業安定所(ハローワーク),ジョブカフェ,地域若者サポートステーションなどの就労支援機関」を利用しており,次いで,「病院・診療所」(23.8%)となっています。他方,「何も利用したことがない」は,約3割(35.1%)でした。

また,ニート群では,全体と比べて「病院・診療所」(39.1%)と回答した人の割合が高くなっています(図6)。

図6 高校をやめてから現在までに利用した施設・機関(複数回答)
図6 高校をやめてから現在までに利用した施設・機関(複数回答)
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<5> 「これからの自分にとって大切なことは何か」という質問では,全体では,「自分で働いて収入を得ようとすること」(47.0%),「将来の希望を持つこと」(45.2%),「身のまわりのことを自分ですること」,「自分に自信を持つこと」(いずれも40.5%)という回答の割合が高くなっています。

ニート群では,全体と比べて,「自分で働いて収入を得ようとすること」(69.6%),「将来の希望を持つこと」(65.2%)という回答の割合が高くなっています(図7)。ニート群の人達は,必ずしも現状のままで良いと考えているわけではなく,むしろ,現状を変えたいという気持ちを持つ人が多いことがうかがわれます。

図7 これからの自分にとって大切なこと(高校中退者)(複数回答)
図7 これからの自分にとって大切なこと(高校中退者)(複数回答)
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<6> 「今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ」としては,全体では,「技術や技能の習得を手助けしてくれるところ」(39.3%)を挙げる人が最も多く,次いで,「就職に関する相談を受けられるところ」(36.3%)となりました(図8)。

図8 今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ(高校中退者)(複数回答)
図8 今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ(高校中退者)(複数回答)
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今後の生活設計についての回答をみると,技能習得の援助や就職の相談といった支援が必要とされていることがわかります。しかし,先にみたように,「高校をやめてから現在までに利用した施設・機関」について,「何も利用したことがない」とした人は,回答者の約3割に上ります。こうしたことから,支援を必要としている人に利用できる機関に関する情報がより確実に届くようにし,ニーズや状況に応じたきめ細やかな支援をどのように行っていくのかが,今後の課題といえます。

さらに,ニート群では,これらの就職等に直接つながる支援に加え,生活リズムの確立等,より広い範囲の支援を求めていることもうかがえることから,こういった様々なニーズに対応できるような支援の在り方も検討する必要があるでしょう。

イ 中学校不登校生徒の緊急調査

<1> 中学校卒業後約4年が経過した現在,「学校に行っている」と回答した人は約4割(39.4%),次いで,「仕事をしている」(26.6%),「仕事にはついておらず,学校にも行っていない」(16.5%)の順となりました(図9)。総務省の就業構造基本調査(平成19年)では,本調査の対象者とほぼ同年代である15歳から19歳の無業者のうち,家事も通学もしていない人の割合は2.3%であったことからすれば,本調査で「仕事にはついておらず,学校にも行っていない」と回答した人の割合は,高いものといえます。

図9 現在の状況(中学校不登校生徒)
図9 現在の状況(中学校不登校生徒)
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また,現在「学校に行っている」(39.4%),「仕事をしながら,学校に行っている」(7.3%)と回答した人(計51人)に,どのような学校に行っているのかをさらに尋ねたところ,「四年制大学」(29.4%),「専修学校,各種学校」(25.5%)の順となりました(図10)。

図10 どんな学校に行っているか(中学校不登校生徒)
図10 どんな学校に行っているか(中学校不登校生徒)
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一方,現在,「仕事をしている」(26.6%),「仕事をしながら,学校に行っている」(7.3%),「仕事をしながら,学校以外の場で勉強している」(0.9%)と回答した人(計38人)に就いている仕事の形態についてさらに尋ねたところ,「パート・アルバイト」(57.9%)の割合が最も高く,「派遣社員・契約社員」(5.3%)と合わせると,現在,仕事をしていると回答した人の6割以上が,非正規雇用の職に就いていることがわかりました。他方,「正社員」は,28.9%でした(図11)。中学校不登校生徒については,先の就業構造基本調査における同年代の人の状況と比較しても,有業者に占める「パート・アルバイト」(65.9%),「正社員」(27.7%)の割合と近い結果になっています。

図11 どんな形態の仕事についているか(中学校不登校生徒)
図11 どんな形態の仕事についているか(中学校不登校生徒)
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<2> 「最初に学校を休みはじめた直接のきっかけ」としては,全体では,「友人関係(いじめ・けんかなど)」(45.9%)を挙げる割合が最も高く,次いで,「勉強の問題(授業がよくわからない,成績が良くない,試験がきらいなど)」(34.9%)となっています。

また,ニート群では,「友人関係(いじめ,けんかなど)」(58.8%)に次いで,「入学や進級,転校をしたときに,周りになじめなかった」(41.2%),「学校の先生との関係(怒る,注意がうるさい,体罰を受けたなど)」(29.4%)となっており,友人や学校の先生との関係等,対人関係を最初に学校を休みはじめたきっかけとして挙げる割合が高くなりました(図12)。

図12 最初に学校を休みはじめた直接のきっかけ(複数回答)
図12 最初に学校を休みはじめた直接のきっかけ(複数回答)
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<3> 「中学校を卒業してから現在までに利用した施設・機関」については,全体では,「病院・診療所」(22.9%)が最も多く,次いで,「公共職業安定所(ハローワーク),ジョブカフェ,地域若者サポートステーションなどの就労支援機関」(11.0%)となりました。他方,半数以上の人が「何も利用したことがない」(56.0%)と回答しました。

ニート群では,利用した施設・機関としては,「病院・診療所」(52.9%),「上記以外の心理相談・カウンセリングなどをする民間の機関」(23.5%)を挙げる割合が高く,心身に何らかの問題を抱えていると思われる人の割合が高いことがうかがわれます。また,「何も利用したことはない」は23.5%であり,全体と比べて,中学校を卒業してから現在までに何らかの施設・機関を利用している割合が高くなっています(図13)。

図13 中学校を卒業してから現在までに利用した施設・機関(複数回答)
図13 中学校を卒業してから現在までに利用した施設・機関(複数回答)
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<4> 「これからの自分にとって大切なこと」については,全体では,「人とうまくつきあうこと」(62.4%)を挙げた割合が最も高くなりました。

ニート群では,「自分で働いて収入を得ようとすること」(88.2%)を挙げる人が最も多く,次いで,「人とうまくつきあうこと」,「生活のリズムをつくること」(いずれも76.5%)となっており,また,個々の選択肢への回答の割合も高くなっています(図14)。高等学校中途退学者への調査と同様に,ニート群の人達は,現状を変えたいという気持ちの強いことがうかがわれます。

図14 これからの自分にとって大切なこと(中学校不登校生徒)(複数回答)
図14 これからの自分にとって大切なこと(中学校不登校生徒)(複数回答)
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<5> 「今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ」としては,全体では,「就職に関する相談を受けられるところ」(39.4%)を挙げる人が最も多く,次いで,「技術や技能の習得を手助けしてくれるところ」(36.7%)となっています。

ニート群の回答も同様の順となっていますが,個々の選択肢の回答割合が高いことから,高等学校中途退学者への調査と同じく,より広い範囲の支援を求めていることがうかがわれます(図15)。

図15 今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ(中学校不登校生徒)(複数回答)
図15 今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ(中学校不登校生徒)(複数回答)
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中学校不登校生徒への調査では,高等学校中途退学者への調査以上に,支援施設・機関を利用したことがないと回答した割合が高かったのですが,支援を必要としている点に変わりはないようです。そこで,利用できる施設・機関についての情報が十分に行き渡るようにすることや,利用者にとって必要な支援やその在り方を適切に把握し,より充実させていくことが,今後も必要といえるでしょう。

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