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4 困難を抱える青少年への支援の取組

以上みてきたように,今回の調査結果からは,高等学校を中途退学したり,中学校段階において不登校状態にあった青少年の場合,様々な支援が必要とされているにもかかわらず,支援施設・機関の利用に結び付いていなかったり,施設・機関の利用がニート状態からの脱却に必ずしも繋がっていない現状がうかがわれます。

ところで,こうした中,全国のいくつかの先進的な地域においては,高等学校中途退学や中学校不登校経験を経てニートやひきこもり状態となることを防ぐため,様々な支援の取組が進められています。ここでは,そうした取組を行っている地域の中から,高知県,兵庫県及び札幌市における事例を紹介します。

(1)高知県における事例(学校教育からの切れ目のない支援を目指す取組)

高知県では,ニートやひきこもり傾向にある若者に対して自立に向けた支援を行うために,県教育委員会が中心となり,教育・福祉・医療・労働の関係機関と連携して「地域若者サポートステーション」(厚生労働省委託事業)等を活用した学び直しや就労に向けた誘導・支援を展開しています。

ア 取組のねらい

高知県は,中学校不登校生徒及び高等学校中途退学者(中学校不登校生徒については,平成19年度は745人で3.4%,高等学校中途退学者については,平成19年度は600人で,2.8%)や,若年無業者(平成19年度は5,300人で,3.3%)の割合が,全国的にみて高い状況にあります。

こうした実態を踏まえ,中学校卒業時又は高等学校中途退学時に進路未定であった者がニートやひきこもりにならないようにするため,平成19年6月から,県教委育委員会が中心となり,学校から切れ目のない支援策を進めています。

イ 取組の概要

中学卒業時又は高等学校中途退学時に進路未定であった者は,ひとたび学校との関係が途切れると,支援の手が届かなくなり孤立してしまう傾向がみられます。そこで高知県では,「若者はばたけネット」という情報をつなぐ仕組みを構築し,対象者の個人情報を学校や市町村を経由して県教育委員会で一元化できるようにしています(情報の入手に当たっては,原則として本人又は保護者から同意書の提出を受けています。)(図16)。

図16 「若者はばたけネット」の仕組み(高知県)
図16 「若者はばたけネット」の仕組み(高知県)

一元化された情報は,県教育委員会から「地域若者サポートステーション」に送られ,そこで個別相談が開始されます。そして,ソーシャル・スキルズ・トレーニングや多様なセミナー・体験活動等就学や就労に向けた支援が行われます(図17)。

図17 関係機関や地域社会と連携したネットワーク(高知県)
図17 関係機関や地域社会と連携したネットワーク(高知県)

現在,高知県では,「地域若者サポートステーション」を県内2か所に設置するとともに,4か所にサテライトを開設し,必要に応じて家庭訪問を行うなど,県全体での支援環境の整備に取り組んでいます。なお,平成20年度の「若者はばたけネット」を通じた支援の実績は5件にとどまっており,本年度は市町村における中学校卒業時の進路未定者の状況把握の徹底と中途退学者の在籍した高等学校への訪問など,個々の事例に丁寧に取り組んでいくこととしています。

(2)兵庫県における事例(不登校生徒等への体験・宿泊型施設による支援の取組)

次に,中学校不登校等を経験した青少年に対し,体験学習や寮での共同生活を通じた支援を行っている事例を紹介します。

ア 取組のねらい

兵庫県は,深刻化する不登校問題への対応を喫緊の課題と捉え,平成6年10月,公立としては全国初の不登校等の青少年を対象とした全寮制フリースクール「兵庫県立神出学園」を開設し,体験学習や共同生活を通じた支援を行っています。

神出学園の外観(兵庫県)

イ 取組の概要

<1> 学園には,宿泊コースと1日体験コースが設置されています。

宿泊コースでは,中学校を卒業した県内在住の20歳未満の男女で,不登校等により進路発見が困難な状況にありながらも,自分の生き方や進路を見つけたいという意欲があり,体験学習や寮での共同生活ができる人を対象として,以下のような支援を行っています。

I 個に適した支援…教務スタッフ(指導主事)と心理スタッフ(心理カウンセラー)による面談等を通して一人ひとりに応じた支援を受ける中で,自己理解を深め,自尊感情を高める。

II 多彩な体験プログラム…様々な体験プログラム等を通して,個性の伸張を図り,自己に適した進路発見をするとともに,自主性や協調性を体得する。

III 全寮制…寮生活を送る中で,仲間やスタッフとのふれあいを通して自立心や自主性を養い,円滑な人間関係を構築するスキルを学ぶ。

本コースの在籍期間は2年以内であり,6ヶ月を1ステージとして支援体制や方法を評価,検証し,対象者に応じた支援を行っています。また,学園開設後平成21年4月までに394人が同学園を修了し,現在,修了時に自分なりの進路を見いだしています(図18)。

図18 宿泊コース全修了者の進路状況(神出学園)
図18 宿泊コース全修了者の進路状況(神出学園)
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1日交流体験コースは,県内に在住する中学校卒業後25歳以下のひきこもり等の状態にある男女を対象とし,他者との触れ合いを円滑に行い,人間関係の構築を図る機会とすることを目的として,本年度から新設されました。同コースでは,動物との触れ合い,華道,スポーツ,陶芸など各自興味のあるプログラムと,農園,お菓子作り,ハイキングなどの集団でのプログラムの双方への参加を通じて,社会参加の意欲や自信を培うこととしています。

<2> また,同学園は,21の教育,保健・医療,福祉,研究機関等からなる「ひょうごユースケアネット推進会議」の事務局として,関係機関と連携しながら,青少年を取り巻く様々な心の問題等に対応する体制を整えています。「ひょうごユースケアネット推進会議」では,青少年問題の相談窓口の広報強化を図るとともに,ひきこもり問題やインターネットによる被害の相談対応充実のための事業も展開しており,NPO法人などの団体とも連携して,青少年の問題に積極的に取り組んでいます。

(3)札幌市における事例(「地域若者サポートステーション」の学校訪問支援)

次に,「地域若者サポートステーション」による定時制高等学校での支援の取組を紹介します。この取組は,同ステーションのスタッフが,学校現場に出向いて在学生の就労支援等に積極的に関わっていく,訪問支援(アウトリーチ)の一環として位置付けられます。

ア 取組のねらい

「地域若者サポートステーション」の一つである「北海道地域若者サポートステーション」では,来所する若者の中に,不登校・中途退学・進路未定者等,学校段階でつまづいた後,所属や相談先を失い,ひきこもり等社会的に孤立した状態に陥っている人が多かったことから,在学段階から対象者にアプローチする必要性を認識するようになりました。他方,札幌市内の定時制高等学校においても,進路未定のまま卒業を余儀なくされる生徒を減らすとともに,卒業・退学後の状況を追跡できるようにする必要があると考え,両者の連携が始まりました。

イ 取組の概要

平成18年度から北海道札幌星園高等学校(定時制昼間部)において,平成20年度からは市立札幌大通高等学校(午前部,午後部,夜間部)を加えた2校で,「北海道若者サポートステーション」から派遣されたキャリア・カウンセラーが,週2〜3日,授業時間内に開室される進路指導室において,在学生を対象とした進路等に関する個人面談を実施しています。

面談風景(札幌市)

卒業予定者に対しては,5月から7月にかけて一度ずつ面談を実施した後,進路指導担当教員との意見交換を重ねながら,就職希望者を中心に,目標が具体的に定まるまで,必要に応じて面談を繰り返し実施しています。また,放課後に任意で来室した生徒に対して,履歴書の書き方や模擬面接指導のほか,進路以外のことも含めた様々な相談にも応じています。

さらに,キャリア教育の一環として,様々な職業に就いている人やニート状態にあった人,ホームレス等から体験を聞き,意見交換を行う等の活動を実施しています。

職業等についての意見交換(札幌市)

こうした取組の結果,星園高校では,平成19年度及び平成20年度には,全員が明確な目標を持って卒業するに至っています。

本取組により,卒業や退学を境に学校との接点を失うことの多い青少年が,就労等に関する支援を必要とした時に利用し得る機関を,高等学校在学時から認識することが期待できます。

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