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特集 「子ども・若者ビジョン」〜先進的な取組事例の紹介〜

4 地域における多様な担い手の育成組

ビジョンでは,地域におけるつながりの弱体化が指摘されていることから「新しい公共」による子ども・若者を支える多様な活動等を支援することとしています。

また,一部地方公共団体で「子どもオンブズパーソン」等の名称で設けられている,子ども・若者に関する権利侵害等様々な問題を第三者的立場から調整しつつ解決していく仕組みの普及を図ることとしています。

これらに関連する施策のうち,川西市の子どもの人権オンブズパーソンの取組について紹介します。

(1)川西市子どもの人権オンブズパーソン

川西市 子どもの人権オンブズパーソン事務局

川西市子どもの人権オンブズパーソンは,日本で最初に,条例により設置された子どもの人権擁護・救済のための公的第三者機関です。平成11年より,いじめ,体罰,虐待等で苦しむ子どものSOSを受けとめ,子ども自身が権利の主体として問題解決に取り組めるよう支援してきました。

子どもは,おとなが考える以上に,おとなに話を聴いてもらえていないと感じています。多くのおとなは「子どものため」を思って子どもに関わりますが,おとな自身が日々の生活の中で余裕を失い,不安に苛まれていると,時に子どもの意見・心情が置き去りにされてしまいます。

オンブズパーソンは,親でも教員でもない立場で,何よりも子どもの話を聴くことを大切にしています。そのことが,「子どもの意見表明権」の保障を通じて「子どもの最善の利益」を確保するという,「子どもの権利条約」(児童の権利に関する条約)の理念の具体化へ向けた第一歩となります。

ア 設立の経緯

いじめ問題への取組を進めるために,平成7年に市教育委員会が「子どもの人権と教育」検討委員会を設置し,同検討委員会が「子どもの実感調査」(小6・中3対象)を実施しました。その結果,いじめによって「生きているのがとてもつらいほどの苦痛」を感じた生徒がクラスに1〜2人の割合で存在することが明らかになりました。

同検討委員会はこの結果を重く受けとめ,市教育委員会に「子どもの人権オンブズパーソン」の創設を提言しました。その後も議論を重ね,平成10年12月には市議会において全会一致で「川西市子どもの人権オンブズパーソン条例」を可決しました。

「川西市子どもの人権オンブズパーソン」のイメージ
「川西市子どもの人権オンブズパーソン」のイメージ

イ 制度運営の体制

現在(平成22年10月)の体制は,市長の委嘱を受けたオンブズパーソン3人(臨床心理学・教育学の大学教授2人,弁護士),相談員4人,専門員6人,事務局(行政職員)1人です。日常的な相談業務等は主に相談員が担っていますが,オンブズパーソンも積極的に相談者と会い,話を聴いています。

週1回,「研究協議」を開き,受け付けた相談,申立て,調査等について話し合い,課題整理を行っています。

ウ 役割と機能

オンブズパーソンの役割は,子どもの代弁者として,子どもの心情を周囲のおとなに届けることです。建設的な対話により人間関係を再構築し,子どもの心情を中心に据えて問題解決に取り組むことができるよう働きかけています。

子どもがSOSを発している時には,子どもを取り巻く人間関係が機能不全に陥っていることが多いため,オンブズパーソンが調整機能を発揮することが,子どもの傷つきからの回復を促し,子どもが少しでも安心して暮らせる状況をつくりだしていくことにつながります。

また,オンブズパーソンは条例上の権限に基づき,個々の子どものSOSからみえてきた課題を制度改善につなぐことができるので,子どもが安心して暮らせるまちづくりにも寄与しています。

エ 今後について

制度開始以来,「子どもの権利条約」(児童の権利に関する条約)の理念を具体化すべく地道に活動に取り組んできました。しかし,おとなの生活実態や労働環境が厳しさを増す中で,子どもを取り巻く人間関係は緊張に満ちたものとなり,追いつめられていく子どもたちは後を絶ちません。

「子ども・若者ビジョン」において「オンブズパーソン等の相談体制の普及」が重点課題に盛り込まれましたが,地方自治体ではもちろん,国レベルでも,子どものSOSを受けとめ,安心して暮らせるまちづくり,社会づくりに寄与する制度の充実を期待したいと考えています。

なお,制度運営状況の詳細については,以下のホームページを参照してください。
  (http://www.city.kawanishi.hyogo.jp/kurashi/shimin/jinken/kdm_onbs/kdm_onbs6.html

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