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2 「若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する調査)」結果から

高等学校を中途退学した人のその後の生活状況や必要としている支援,展望はどのようなものなのでしょうか。高等学校中途退学者数等の現状に触れつつ,本調査結果から見える高等学校中途退学者の姿を紹介していきたいと思います。

(1)調査の概要

本調査は,平成22年7月から同年9月にかけて郵送送付・郵送回収によるアンケート調査の方法により実施しました。調査対象は高等学校中途退学後概ね2年以内の者とし,協力を得られた都道府県及び政令市にある公立高校から,中途退学した2651人に対して調査票を送付し,1176人から有効回答を得ました(有効回答率44.4%)。

詳細な調査結果については内閣府HP※1に掲載していますので,御参照ください。

※1 https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/school/kaisetsu.html

(2)高等学校中途退学率の推移

平成21年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)(以下,「文部科学省調査」という。)によると,高等学校における中途退学率(在籍者数に占める中途退学者数の割合)は平成17年度以降2%程度で推移していたものの,平成21年度では1.7%と若干の減少傾向が見られました。ただし,このまま減少傾向をたどるのかについては,今後の推移を注視していく必要があるでしょう(第1部第1章第2節3(3)高等学校中途退学者参照)。

(3)現在していること

高等学校中途退学後概ね2年以内の彼ら/彼女らが現在していることとしては,「働いている」56.2%,「在学中」30.8%となっています(図1)。「働いている」人の内訳としては「フリーター・パートなど」が77.2%と圧倒的に多く,「正社員・正職員など」は17.1%となっています(図2)。平成22年労働力調査(総務省統計局,詳細集計)によると,本調査の対象者とほぼ同年齢と考えられる15〜19歳の者のうち雇用者は93万人であり,雇用者の内訳としては,「正規の職員・従業員」29万人(31.2%),「パート・アルバイト」61万人(65.6%)となっていることから,高等学校を中途退学した者が正社員・正職員として働いている割合は相対的に低いと考えられます。

図1 現在していること(複数回答)

図1 現在していること(複数回答)

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図2 現在「働いている」人の内訳(複数回答)

図2 現在「働いている」人の内訳(複数回答)

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(4)中途退学した理由

中途退学した原因について文部科学省調査で近年の推移を見ると,平成10年度以前は主たる原因として「進路変更」を挙げる者の割合が高かったものの,それ以降は「学校生活・学業不適応」を挙げる者の割合が最も高くなっています(第1部第1章第2節3(3)高等学校中途退学者参照)。

本調査結果において中途退学した理由として当てはまるかどうかを聞いたところ,「とても当てはまる」「まあ当てはまる」と回答した者の割合について見ると,「欠席や欠時がたまって進級できそうもなかったから」(54.9%)及び「校則など校風があわなかったから」(52.0%)が5割を超えており,「勉強がわからなかったから」(48.6%)や「人間関係がうまくいかなかったから」(46.3%)と回答した者も5割近くに上っています(図3)。

図3 中途退学した理由

図3 中途退学した理由

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(5)高等学校中途退学者を取り巻く家庭環境

高等学校中途退学者を取り巻く家庭環境はどのようなものなのでしょうか。支援の在り方を検討する上で,高等学校中途退学者である子ども本人の状況とともに,本人を取り巻いている家庭環境の状況についても見ていく必要があります。ここでは,保護者の学歴,世帯構成及び経済的なゆとりに着目して紹介していくこととします。

ア 保護者の学歴

本調査の対象者の保護者の学歴を見ると,「高校卒業」(父親38.0%,母親48.4%)が最も多く,「中学校卒業(高校中退を含む)」(父親18.7%,母親14.9%),「短大・大学卒業」(父親16.2%,母親15.1%),「専門学校卒業」(父親4.3%,母親11.3%)となっています(図4)。本調査の対象者の父親又は母親とほぼ同世代と考えられる35歳から49歳までの男女の最終卒業学校について,平成19年就業構造基本調査の結果を見ると,「高校」(男性42.3%,女性44.4%)が最も多く,「短大・大学以上(※)」(男性40.0%,女性36.0%),「専門学校」(男性10.9%,女性15.2%),「小学・中学」(男性6.3%,女性3.9%)となっており(図5),本調査の対象者の父母の学歴は高等学校を卒業していない者の割合が高く,高等教育機関を卒業した者の割合が低いことがうかがえます。

図4 保護者の学歴

図4 保護者の学歴

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図5 平成19年就業構造基本調査に見る35歳から49歳までの学歴分布

図5 平成19年就業構造基本調査に見る35歳から49歳までの学歴分布

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このことは,高等学校を卒業していない親を持つ子どもは,進路面で「高等学校を卒業しない」又は「短大・大学への進学が選択肢の一つにならない」という選択をすることが多いことを示している可能性もあり,その点を踏まえて高等学校卒業や高等教育機関への進学に対する動機づけを支援することも高等学校中途退学を防ぐことにつながると考えられます。

ただし,<1>就業構造基本調査は本人が回答しているのに対し,本調査は調査対象者である子どもが保護者の学歴を回答していること,<2>本調査では保護者の学歴を「わからない」(父親11.2%,母親7.4%)と回答した者や「無回答」(父親11.6%,母親2.8%)の者が一定数いること,<3>保護者の学歴についての子どもの認識が正しいか検証できないことから,就業構造基本調査と本調査との単純な比較はできないことに留意する必要があります。

イ 世帯構成

高等学校中途退学者が生活している「世帯」とはどのようなものなのでしょうか。本調査結果によると,同居している家族の人数(本人を除く。)は平均3.19人であり,3.2%の人はひとり暮らしをしています(図6)。ここでは同居している家族について,「「母親」のみ」又は「「母親」及び「兄弟姉妹」のみ」と回答した者を「母子世帯」,「「父親」のみ」又は「「父親」及び「兄弟姉妹」のみ」と回答した者を「父子世帯」と定義し,本調査の対象者の「ひとり親世帯」の割合を算出してみると,「母子世帯」240人(21.1%),「父子世帯」40人(3.5%)となります(図7)。これは,平成17年国勢調査(総務省統計局)の調査結果を基に算出した15歳以上20歳未満の子どものいる親族世帯に占める15歳以上20歳未満の子どものいる母子又は父子世帯の割合と比較すると,「母子世帯」では約3.6倍,「父子世帯」では約3.2倍,本調査結果のほうが高くなっています※2

図6 同居している家族の人数

図6 同居している家族の人数

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図7 ひとり親世帯の割合

図7 ひとり親世帯の割合

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ウ 経済的なゆとり

次に本調査の対象者の家族の経済的なゆとりを見ると,苦しいと回答した者(「苦しい」と「やや苦しい」の計)が63.0%となっています(図8)。また,主な収入源として「生活保護を受けている」と回答した者も3.8%おり(図9),本調査結果からは高等学校中途退学者の家族に経済的なゆとりがあるとは考えにくくなっています。

図8 経済的なゆとり

図8 経済的なゆとり

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図9 主な収入源(複数回答)

図9 主な収入源(複数回答)

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なお,本調査の対象者のうち「母子世帯」に該当する者(上述「イ 世帯構成」参照)について見ると,家族の経済的なゆとりについて苦しいと回答した者が79.2%,主な収入源として「生活保護を受けている」と回答した者が13.3%となっており,本調査の対象者全体よりも経済的に苦しい状況がうかがえます(本調査の対象者のうち「父子世帯」に該当する者については,母数が少ないため分析をしていません。)。また,中途退学した理由として「経済的な余裕がなかった」に「とても当てはまる」及び「まあ当てはまる」と回答した者(16.0%)について見ると,「母子世帯」及び「父子世帯」に該当する者(上述「イ 世帯構成」参照)の割合が44.4%となっています。

本調査結果から「ひとり親世帯」と高等学校中途退学との単純な関係性が明らかになったわけではありません。しかし,「ひとり親世帯」は経済的問題も含め様々な複合的問題を抱えている可能性があり,その要因を見極めた上で適切な対応をしていくことが求められています。

(6)中途退学者の抱く将来展望

ここまで高等学校中途退学者の「現在」に着目して本調査結果を紹介してきましたが,「将来」についてはどのように考えているのでしょうか。

ア 3年後の自分の姿を想像した今後の進路希望

まず,3年後の自分の姿を想像した今後の進路希望としては「正社員として働きたい」(35.9%)が最も多くなっており,正規雇用希望者が多いことがうかがえます(図10)。また,専門学校や大学への進学希望者も2割以上います。一方で,本調査の対象者の96.8%は19歳以下と年齢が若く,今後の進路希望について決まっていない者(「まだどうしていいかわからない」11.5%)もいることを考慮に入れて支援方策を検討していく必要があるでしょう(図11)。

図10 今後の進路希望

図10 今後の進路希望

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図11 平成22年4月現在の年齢

図11 平成22年4月現在の年齢

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イ 自分の将来への不安感

本調査の対象者の自分の将来への不安感を見ると,不安があると回答した者(「たいへん不安だ」と「やや不安がある」の計)は69.6%となっており,7割近くの者が何らかの不安を抱えていることがうかがえます(図12)。「現在していること」別に自分の将来への不安感について見てみると,現在「働いている(正社員・正職員など)」者のうち自分の将来に不安を抱えている者の割合は56.6%と,現在「高校に在学中(全日制・定時制)」の者(80.8%)と比較して低くなっており,就労している者の方が就学している者よりも相対的に不安感は低い傾向が見られます。

図12 「現在していること」別の自分の将来への不安感

図12 「現在していること」別の自分の将来への不安感

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ただし,相対的に不安感が低い「働いている(正社員・正職員など)」者であっても5割を超えており,高等学校中途退学者が抱く自分の将来像は楽観的なものではないことがうかがえます。

ウ 高卒の資格の必要性

本調査の対象者のうち,高等学校を辞めたことを後悔していると回答した者は23.7%にとどまっているものの(図13),中途退学後に高卒の資格は必要だと考えた者は78.4%に上っています(図14)。さらに,高等学校を辞めたことを後悔していないと回答した者のうち67.5%は中途退学後に高卒の資格は必要だと考えたと回答しており,高等学校中途退学者を支援する際には,中途退学したことに対する後悔の低さと高卒資格は必要だという認識の高さという一見相反する感情を抱えている者がいることに留意が必要となるでしょう。

図13 高等学校を辞めたことを後悔しているか

図13 高等学校を辞めたことを後悔しているか

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図14 中途退学後に高卒の資格は必要だと考えたか

図14 中途退学後に高卒の資格は必要だと考えたか

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(7)求められる支援

ア 必要なもの

本調査の対象者にとって必要なものを見ると,「進路や生活などについて何でも相談できる人」66.6%,「生活や就学のための経済的補助」63.1%となっています(図15)。7つの質問項目中5つの項目で半数以上の人が「必要」あるいは「ある程度必要」と回答しており,支援のニーズは高いと言えます。

図15 必要なもの

図15 必要なもの

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イ 社会サービスに関する認知度

本調査の対象者が社会サービスについてどのくらい知っているかを見ると,奨学金・高校授業料無償等の「進学支援制度」が52.6%となっている一方で,「仕事で困ったときに相談する方法」33.8%,「雇用保険」30.1%となっており,3割程度にとどまっています(図16)。若者のニーズに応えられる社会サービスを提供できる施設も既にあり,情報発信を通じて社会サービス全般に関する認知度を上げること自体も高等学校中途退学者への支援の向上につながると考えられます。

図16 社会サービスに関する認知度

図16 社会サービスに関する認知度

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ウ 高等学校を辞める際に相談をした人

本調査結果によると,高等学校を辞めることについて誰かに相談したかについて「相談した」と回答した者は77.9%であり(図17),実際に相談した人の内訳を見ると,「親」(90.0%)に次いで「高校の先生」(51.3%)となっている一方,「相談施設の職員」は1.5%となっています。このことから,親や高等学校の先生が中途退学に関する相談を受けた際,中途退学後にも利用できる各種相談機関についての適切な情報を提供できるようあらかじめ専門施設についての認知度を上げておくことが中途退学後に必要とされる支援へと結びつける有効な方法の一つになるのではないかと考えられます。

図17 辞める際に相談したか

図17 辞める際に相談したか

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図18 相談した相手(複数回答)

図18 相談した相手(複数回答)

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