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特集 高等学校中途退学者の意識と求められる支援

3 高等学校中途退学者への支援

本調査結果からは,高等学校中途退学者の多くが,就労,家庭環境,経済面等において様々なハンディキャップを負っていること,またそのうちの多くの者が将来への不安感を抱きつつ,多様な支援を必要としていることが読み取れました。

ここでは,地域で行われている高等学校中途退学者に対しての支援の取組例を紹介するとともに,今後の支援の在り方について考えます。

(1)高等学校中退者への様々な支援

○地域若者サポートステーションを活用した支援事業

地域において,高等学校中途退学者を孤立させず,社会との接点を維持させ,さらに新たに就学や就労に導くことは重要です。

厚生労働省では,地方自治体と協働し,ニート等の若者の自立を目指し,若者支援の実績やノウハウを持つ地域のNPO等に事業を委託し,「地域若者サポートステーション」(愛称:サポステ)を設置(平成23年度:全国で110か所)しています。地域若者サポートステーションでは,キャリア・コンサルタント等による専門的な相談等,自立に向けた様々な支援プログラムを実施しています。平成22年度からは「高校中退者等アウトリーチ事業」(平成23年度:全国60か所で実施)を実施し,高等学校等と連携の下,進路の決まっていないおおむね1年以内の高等学校中途退学者(予定者を含む)を対象に,訪問支援担当のキャリア・コンサルタント等による自宅等への訪問支援(アウトリーチ)を実施し,学校教育から地域若者サポートステーションへの円滑な誘導を行い,切れ目のない支援を通じ早期の自立・進路決定を促すものです。

○〜京都若者サポートステーションでの高校中退者等アウトリーチ事業〜

京都若者サポートステーション(平成22年度受託団体:(財)京都市ユースサービス協会)では,平成22年7月より高校中退者等アウトリーチ事業の一環として,京都市立の高等学校5校との連携事業を行っています。

各校あたり週1〜2回,キャリアコンサルタントを高等学校に派遣し,専用の個室でキャリア相談を行ったり,就職活動に必要なスキルの指導及び職業意識やキャリア形成にかかわる講義を行っています。

この事業の担当者は「高校中退者をできる限り減らすこと。中退がキャリア形成上いかに不利になるのかを伝えることで,高校生の進路選択をサポートしていきたい。」と抱負を語ってくれました。

(内閣府編(「よりそい〜不登校・ひきこもりに対する民間支援団体の活動事例集」より引用)

京都若者サポートステーションと高等学校との連携事業

京都若者サポートステーションと高等学校との連携事業

○情報の提供や相談の実施

高等学校中途退学者の場合,退学を契機に学校を通じた進路選択に関する情報が得にくくなることから,東京都では学校や関係機関を通じて中途退学者やその保護者に,リーフレット「みつけよう!みつけたい!これからの新たな道」を配布しています。今後の進路選択の参考となるよう,進学,技術・技能の習得,就労,就学資金等の問題について,制度の概要や相談機関の情報を掲載しています。

リーフレットの表紙

リーフレットの表紙

東京都教育相談センターでは,平成17年4月に「青少年リスタートプレイス※2」を設置しています。高等学校中途退学者等に対して,様々な就学支援及び就労支援を行い,進路選択,進路変更等の電話相談・来所相談等のほか,「進路相談会」,「就学サポート」等を実施しています。必要に応じて精神保健福祉センター,東京しごとセンター等の専門機関と連携し支援しています。平成22年度の相談件数は833回でした。

○高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験,旧大学入学資格検定)

本調査結果から,高等学校中途退学者のうち2割以上の者が,将来大学等への進学希望をもっていることがわかりました。高等学校中途退学者を始め高等学校を卒業していない人が,高等学校を卒業した人と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験として,文部科学省が実施している高等学校卒業程度認定試験があります。

試験の合格者は,国,公,私立のどの大学,短大,専門学校でも受験でき,就職や各種の資格試験等においても活用することができます。

近年の合格者数の最終学歴の推移(図19)をみてみると,高等学校中途退学者が7〜6割を占めています。本調査では,8割近くが「中退した後は,高卒の資格は必要」だと考えたと回答(図14参照)し,また本認定試験の認知度も6割を超しています。このことから,本認定試験が高等学校中途退学後,「高卒の資格」を得る主要な手段となっていると考えられます。

図19 高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)合格者数と合格者に占める高校中退者の割合

図19 高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)合格者数と合格者に占める高校中退者の割合

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○民間支援団体による「学びの場・居場所」の提供

中途退学を契機に社会との接点を無くし,ひきこもり等に陥るケースもあると言われています。そうした者に対し,NPO等の民間支援団体が「学びの場・居場所」を提供しています。

NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZA※3は,福岡市で活動を行っているフリースクールです。不登校をはじめ進学や中退で悩みを抱える若者を受け入れています。高等学校中途退学者については,「ESPERANZA」で基礎学習等を受けるとともに,その多くが通信制高等学校にも在学していることから,高等学校卒業に向けてサポートを行っています。

※3 http://www.esperanzahp.jp/別ウインドウで開きます

また,NPO法人トイボックス※4は,大阪府池田市において平成15年から「スマイルファクトリー」を運営しています。「スマイルファクトリー」は不登校やひきこもり,発達障害,自閉症等の小中高校生を対象にしています。特に池田市教育委員会とは事業委託等密接に連携しており,池田市在住の小・中学生についてはスマイルファクトリーに通った日数が,原籍校での指導要録の出席日数としてカウントされます。平成19年からは,技能連携校である通信制高等学校と連携し,高等学校卒業の資格が取れる「スマイルファクトリーハイスクール」を併せて運営しています。

このような,NPOが主体となった高等学校中途退学者への支援についても,近年,注目されています。

※4 http://www.npotoybox.jp/別ウインドウで開きます

○〜高等学校と就労支援機関との連携〜

平成23年3月14日,東京・六本木の日本学術会議講堂において,対談「高等学校と就労支援機関との連携」が開催されました。

パネラーには昼夜間三部定時制・通信制併設の単位制高校である東京都立一橋高等学校の村越和弘校長と高等学校中途退学者への学習・就労支援に重点を置く(財)札幌市青少年女性活動協会松田考さんが,高等学校と支援機関それぞれの立場から,高等学校中途退学者を支援していく上での課題や連携の在り方について発表及び対談を行いました。

高等学校が外部と連携する際の課題として,外部機関の認知度の問題に触れ,個人情報の取扱いや指導力等への不信感から,学校側には連携に対する実効性を疑問視する声も少なくなく,今後,それをどのように克服していくかについて具体的に議論が交わされました。

なお,この模様は,内閣府HP※5において,動画で見ることができます(平成23年度中)。

対談の模様

対談の模様

※5 http://wwwc.cao.go.jp/lib_004/youth/20110420discussion1.html別ウインドウで開きます

(2)高等学校中途退学者への支援の在り方

高等学校中途退学者は,フリーターや若年無業者等に至る可能性が高いと指摘されています。特に近年の若年労働者に対する厳しい雇用情勢の中では,高等学校中途退学者の中でも,就労意識が低い者や基礎学力を身に付けていない者は,正規雇用を得ることは難しいと言えます。

本調査結果からも,現在,働いている高等学校中途退学者のうち「正社員・正職員など」の割合は,同世代の雇用者の「正規の職員・従業員」の割合と比較して相対的に低いことが読み取れます。また,将来にわたって,こうした状況が継続することも危惧されています。

こうした高等学校中途退学者に対しては,中途退学前から高等学校と外部支援機関が連携して,職業選択や職業生活に関する知識の提供が望まれます。

○〜神奈川県立田奈高等学校「キャリア支援センター」〜

神奈川県立田奈高等学校は,神奈川県教育委員会が指定したクリエイティブスクールの1つです。クリエイティブスクールとは,中学校までに,自身の持てる力を必ずしも十分に発揮しきれなかった生徒を対象に,基礎学力と社会実践力を身に付けることを目的とした普通科の高等学校です。

特に田奈高等学校では,「支援」という視点から,教育相談,学習及びキャリア教育について様々な外部支援機関との連携を図っています。このうち,キャリア教育については,第1学年より夏休みに「職場見学体験」として生徒全員が近隣の様々な職種の事業所を1日訪問し就労体験を行うなど,就労意識を高めています。

また平成22年度より,校内に「キャリア支援センター」を設置し,ハローワークや地域若者サポートステーション等の外部支援機関と連携し,在校生の進路実現やキャリア教育に関する支援に加え,進路先が決定しないまま卒業していった生徒,卒業後に離職した卒業生及び中途退学して現在は定職に就いていない者への支援に当たっています。

一方,高等学校中途退学者に対し,高等学校卒業程度認定試験や高等学校への再入学等に関して,必要な情報や支援が得られるようにすることが重要です。

また,中途退学後においても様々な社会サービスを得られるよう,情報を継続的に提供するとともに,社会的孤立を防ぐためにも社会との接点を維持する必要があります。既述した地域若者サポートステーションを活用した支援事業等も,こうしたことの具体化の1つといえます。

このような支援事業を行う上で,高等学校中途退学者をどのようにして早い段階に把握していくかが課題となります。個人情報の適正な取扱いに配意しつつ,高等学校と関係諸機関との情報共有が望まれます。

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