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第2部 子ども・若者に関する国の施策

第3章 困難を有する子ども・若者やその家族の支援

第1節 困難な状況ごとの取組

1 ニート,ひきこもり,不登校の子ども・若者への支援等

(1) 社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者を地域において支援するための取組(内閣府,文部科学省,厚生労働省,各省庁)

平成22年4月に施行された「子ども・若者育成支援推進法」に基づき,ニートやひきこもり,不登校等の社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者に対し,教育,福祉,保健,医療,矯正,更生保護,雇用等様々な機関がネットワークを形成し,それぞれの専門性を生かして発達段階に応じた支援を行っていくことや,社会生活を円滑に営むことができるようにするために,関係機関の施設はもとより,子ども・若者の住居その他の適切な場所において,必要な相談,助言又は指導を行うことが必要とされている。

このため,子ども・若者支援地域協議会の設置の促進を図る,「子ども・若者支援地域協議会体制整備事業」を実施している。また,困難を有する子ども・若者に対する支援に携わる人材の養成を図るため,訪問支援(アウトリーチ)研修を始めとする各種研修を実施している。

また,平成22年2月~7月にかけて,子ども・若者支援地域協議会運営方策に関する検討会議を開催し,社会生活を円滑に営む上で困難を有する子ども・若者の支援のために,地方公共団体,高等学校,小・中学校,公的支援・相談機関,大学及び企業の各関係者に対して,子ども・若者支援に関する様々なネットワークを形成していく上で参考となる提案をまとめた報告書を作成し,内閣府ホームページにも公表している※15

※15 子ども・若者支援地域協議会運営方策に関する検討会議

また,内閣府では,平成24年度に今後の個別ケース支援の運営を充実させるため,複雑な背景要因を持った子ども・若者に対する支援の事例分析等を実施する。

文部科学省では,子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするため,「生徒指導・進路指導総合推進事業」において,ニート,ひきこもり等の子ども・若者を対象とした立ち直り支援及び社会性や就労意欲の向上のための体験活動の機会を提供するための取組等について,試行的な実践を自治体,特定非営利活動法人,民間団体等に委託し,成果の普及を図っている。その他,(独)国立青少年教育振興機構傘下の一部の国立青少年教育施設において,ニートやひきこもり等の困難を有する青少年に対する各種事業を行うとともに,その事業成果について横断的な検討・分析を行う調査研究に取り組んでいる。

(2) ニート等の若者への支援(厚生労働省)

ニート等の若者の職業的自立を支援するため,平成18年度から,各地域に「地域若者サポートステーション」を設置し,若者の置かれた状況に応じた専門的な相談を行うとともに,地域における若者支援機関のネットワークの中核として各機関のサービスが効果的に受けられるようにしているところである。平成24年度においては,設置拠点を拡充(115か所,前年度比5か所増)するとともに,高校中退者等を対象とした訪問支援(アウトリーチ)による学校教育からの円滑な誘導,公的職業訓練に移行した者等に対する生活支援,学力を含む基礎力向上に向けた継続的支援等を実施している。

(3) ひきこもりへの支援(厚生労働省)

いわゆる「ひきこもり」については,精神保健福祉センター,保健所,児童相談所等において,本人や家族に対する医師,保健師,精神保健福祉士等による相談・支援を行っている。

また,相談業務をより適切に実施するため,平成22年6月に支援に当たる専門機関の職員等に向けた「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」を作成し,関係機関に配布している。

さらに,ひきこもり状態にある者やその家族を早期に支援するために,医療・保健・福祉・教育・雇用等の関係機関と連携の下,ひきこもり専門相談窓口としての機能を担う「ひきこもり地域支援センター」の整備を推進している。

(4) 不登校の子ども・若者への支援(文部科学省)

不登校への対応については,未然防止や早期発見・早期対応の取組や,学校が家庭・地域・関係機関と連携した取組に加え,子どもたちの悩みや不安を受け止めて相談に当たる相談体制の整備が重要である。

そこで,文部科学省では,「生徒指導・進路指導総合推進事業」において,不登校等の問題行動等の未然防止及び早期発見・早期対応につながる取組や不登校等に対応するため関係機関が連携した取組を推進するため,関係機関との連携協力,専門的人材の活用,問題行動等への対応プログラムの開発等に関する試行的な実践を自治体,特定非営利活動法人,民間団体等に委託し,成果の普及を図っている。

また,教育相談体制の一層の充実を図るため,都道府県及び指定都市教育委員会が,「心の専門家」であるスクールカウンセラーを公立小・中学校に配置するために必要な経費及び児童生徒の置かれた環境に働きかけて問題を抱える児童生徒の支援を行うスクールソーシャルワーカーを配置するために必要な経費を支援している。

平成22年3月には,生徒指導に関する学校・教員向けの基本書として「生徒指導提要」を作成し,各教育委員会及び学校に配布した。ここでは,不登校等個別の課題ごとの対応の基本的な考え方について解説している。

(5) 心の問題への対応(文部科学省,厚生労働省)

児童生徒の不登校等の未然防止及び早期発見・早期対応のためには,子どもたちの悩みや不安を受け止めて相談に当たることや,関係機関等と連携して必要な支援をしていくことが大切である。

平成20年6月には「学校保健法」の改正が行われ,平成21年4月に「学校保健安全法」として施行された。この改正において,養護教諭と関係教職員が連携して,健康相談や保健指導を行うことや,必要に応じて地域の医療機関その他の関係機関と連携して健康相談や保健指導を行うことが規定されたところである。

教職員がメンタルヘルスを含む児童生徒の心身の健康問題に対応することができるよう,平成23年度には「教職員のための子どもの健康相談及び保健指導の手引」を作成し,全国の学校等に配布した。

また,「心の専門家」であるスクールカウンセラーや,教育分野に関する知識に加えて社会福祉等の専門的な知識・技術を有するスクールソーシャルワーカーの活用等教育相談体制の整備を支援しており,平成24年度においては,必要とされる学校等へのスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の適切な配置を図ることとしている。

さらに,学校・家庭・地域が協力して,子どもだけでなく親への相談体制の充実を図るため,子育てサポーターリーダーや民生委員・児童委員等の地域人材と専門的人材が連携して家庭教育支援チームを組織し,相談対応を行うなどの取組を支援している。

厚生労働省では,不登校・ひきこもり,摂食障害,性の逸脱行為等の学童期や思春期にある青少年に多くみられる心の問題に対応するため,精神保健福祉センター,保健所,児童相談所等において,医師,保健師,精神保健福祉士等による相談を実施している。また,こころの不調・病気に関する説明や,各種支援サービスの紹介など,治療や生活に役立つ情報を分かりやすくまとめた「みんなのメンタルヘルス総合サイト」別ウインドウで開きます,10代・20代とそれを取り巻く人々(家族・教育職)を対象に,本人や周囲が心の不調に気づいたときにどうするかなど分かりやすく紹介する「こころもメンテしよう~10代・20代のメンタルサポートサイト~」別ウインドウで開きますの2つのウェブサイトを厚生労働省ホームページ内に設置している。特に平成23年度は「こころもメンテしよう」の中に,こころの病気の症状や,セルフメンテナンスの方法を10代向けにわかりやすく紹介するアニメや動画などを新たに追加したところである。

(6) 高校中途退学者への支援(内閣府,文部科学省)

内閣府では,高等学校中途退学者の生活状況や抱えている問題等を把握するため,平成22年度に,文部科学省の協力を得て「若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者調査)」を実施した。中途退学後の状況や高卒資格の必要性など,中途退学者の置かれている状況や意識を踏まえた支援が実施されるよう,調査結果の周知と活用を図っているとろである。

2 障害のある子ども・若者の支援

(1) 障害のある子ども・若者の支援

ア 福祉施策(厚生労働省)

障害のある子ども・若者が地域で安心して生活ができるよう,「児童福祉法」(昭22法146)及び「障害者自立支援法」(平17法123)に基づき,市町村等が障害児通所支援やホームヘルプ等の必要な福祉サービスを提供しているところである。

障害保健福祉については,「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」(平22法71)が施行され,平成24年4月より障害児が身近な地域で支援を受けられるよう,障害種別等に分かれていた障害児施設について一元化するなど,障害児支援の強化を図っているところである。

また,第180回通常国会に提出している「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案」については,平成23年8月にまとめられた障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の「骨格提言」や同月に公布された「障害者基本法の一部を改正する法律」(平23法90)等を踏まえて,法の目的規定を改正し,他の人々との共生や社会的障壁の除去等を基本理念として新たに掲げるとともに,制度の谷間のない支援を提供するため障害者の定義に難病等を加え,障害福祉サービスの対象としている。

イ 教育に関する施策(文部科学省,厚生労働省)

<1> 特別支援教育(文部科学省)

障害のある子どもについては,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し社会参加するために必要な力を培うため,一人一人の障害の状態等に応じ,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級において,特別の教育課程や少人数の学級編制の下,特別な配慮をもって作成された教科書,専門的な知識・経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備等を活用して指導が行われている。

また,通常の学級においては,通級による指導※16のほか,習熟度別指導や少人数指導等の障害に配慮した指導方法,支援員の活用等一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われている。

※16 小・中学校の通常の学級に在籍している比較的障害の軽い子どもが,ほとんどの授業を通常の学級で受けながら,障害の状態等に応じた特別の指導を特別な場で受ける指導形態であり,言語障害,自閉症,情緒障害,学習障害,注意欠陥多動性障害,弱視,難聴等のある児童生徒を対象としている。

近年,特別支援学校に在籍する児童生徒の障害の重度・重複化が見られること,小・中学校において発達障害のある児童生徒への適切な指導及び必要な支援が求められること等,障害のある児童生徒の教育を取り巻く最近の動向を踏まえ,特別支援教育を推進するための制度の在り方について見直しが行われ,平成18年4月より通級による指導の対象に学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)が新たに加えられるとともに,平成18年6月に「学校教育法等の一部を改正する法律」(平18法80)が成立した(改正法は平成19年4月より施行)。

この改正法は,従来の盲・聾・養護学校の制度を,複数の障害種別を受け入れることができる特別支援学校の制度に転換することや,小・中学校等においても特別支援教育を推進することを法律上明確に規定すること等を主な内容とするものである。

これらの法改正も踏まえ,平成20年3月に幼稚園及び小・中学校の学習指導要領等が,平成21年3月に高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等が改訂された。

また,障害者の権利に関する条約(以下,「障害者権利条約」という。)の批准に係る対応として,平成22年6月に閣議決定された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」において,障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ,体制面,財政面も含めた教育制度の在り方について,平成22年度内に制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う,との方向性が示された。これを踏まえ,現在,「中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会」において専門的な調査審議が行われており,平成22年12月にはインクルーシブ教育システムの構築という障害者権利条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方について,方向性や就学相談・就学先決定の在り方に関する論点整理がとりまとめられ,公表された※17

※17 特別支援教育の在り方に関する特別委員会 論点整理 文部科学省別ウインドウで開きます

さらに,中央教育審議会の審議を踏まえて,平成23年8月に「障害者基本法の一部を改正する法律」(平23法90)が公布され,教育分野では,障害者がその年齢及び能力に応じ,かつ,その特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするため,可能な限り障害のある児童生徒が障害のない児童生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ,教育の内容及び方法の改善及び充実を図るなど必要な施策を講じなければならないこと等が新たに規定された。

平成23年7月には,中央教育審議会の「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」の下に「合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ」が開催され,平成24年2月にはその報告が取りまとめられ,公表された。同報告においては,合理的配慮の定義や決定方法,合理的配慮の基礎となる環境整備,学校における合理的配慮の観点等について提言されている※18

※18 合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ 報告 文部科学省別ウインドウで開きます

<2> 特別支援教育の一層の推進のための取組(文部科学省,厚生労働省)

○ 交流及び共同学習の充実

障害のある子どもと,障害のない子どもや地域の人々が活動を共にすることは,子どもの経験を広め,積極的な態度を養い,豊かな人間性や社会性を育む上で意義があるばかりでなく,地域の人々が障害のある子どもに対する正しい理解と認識を深めるためにも有意義である。特別支援学校及び小・中・高等学校の学習指導要領等においては,その充実を図るように規定している。

また,文部科学省においては,交流及び共同学習が一層推進されるよう,「交流及び共同学習事例集」の発行や「交流及び共同学習ガイド」のホームページへの掲載を行った。

さらに,平成22年度から特別支援学校と在籍する児童生徒が居住する地域の小・中学校との交流及び共同学習の推進に関する実践研究に取り組んでいるところである。

加えて,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において,小・中学校等の教員等を対象に「交流及び共同学習推進指導者研究協議会」を開催し,具体的な方策について伝達・普及を図るなど交流及び共同学習の充実に努めている※19

※19 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所別ウインドウで開きます

○ 障害の重度・重複化,多様化への対応

近年,特別支援学校に在籍する子どもの障害の重度・重複化,多様化が進んでおり,適切な教育的対応が求められている。

特別支援学校の学習指導要領においては,障害の重度・重複化等に応じた弾力的な教育課程が編成できるよう,児童又は生徒の障害の状態により特に必要がある場合には,各教科の目標及び内容の一部を取り扱わないこととしたり,自立活動を主として指導を行ったりすることができるほか,それぞれの障害についての専門性を有する教師間の協力や外部専門家の活用等様々な配慮事項を規定している。

また,一人一人の障害の実態に応じた指導を充実するため,個々の児童又は生徒の実態を的確に把握し,個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成することとしているほか,障害のため通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対しては,特別支援学校の教員を家庭や医療機関等に派遣して教育を行っている(訪問教育)。

さらに,障害の重度・重複化に伴い,日常的にたんの吸引をはじめとする医療的ケアを必要とする幼児児童生徒への対応が求められている。

このため,文部科学省では,平成10年度から,厚生労働省との連携の下,盲・聾・養護学校(現在の特別支援学校)と医療機関との連携の在り方等について実践的な研究を行い,体制整備を図ってきた。

平成23年6月に公布された「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平23法72)による社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正に伴い,平成24年4月から一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになったことを受け,これまで実質的違法性阻却の考え方に基づいて医療的ケアを実施してきた特別支援学校等の教員等についても,制度上実施することが可能となった。

これに関して,文部科学省としては,特別支援学校等において安全かつ適切な医療的ケアを提供するために必要な検討を行うため,平成23年10月から「特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議」を開催し,同年12月に同会議により報告書が取りまとめられた。これを受け,文部科学省として,特別支援学校等において,新制度を効果的に活用し,医療的ケアを必要とする児童生徒等の健康と安全を確保するに当たり留意すべき点等について整理し,都道府県・指定都市教育委員会等に通知した。※20

※20 特別支援学校等における医療的ケアの今後の対応について 文部科学省別ウインドウで開きます

○ 特別支援教育の充実のための体制整備

文部科学省では,平成19年4月の改正学校教育法の施行を踏まえ,体制整備を含む基本的な考え方や留意事項等について「特別支援教育の推進について」(初等中等教育局長通知)を発出し,学校や教育委員会等の取組を促進している※21

※21 特別支援教育の推進について 文部科学省別ウインドウで開きます

また,発達障害を含め障害のある幼児児童生徒への学校における支援体制を充実するため,都道府県に委託して,「特別支援教育総合推進事業」を実施している。同事業では,学校における「校内委員会」の設置,「特別支援教育コーディネーター」の指名,「個別の指導計画」,「個別の教育支援計画」の作成を促進する取組のほか,関係機関との連携,学校への巡回相談や専門家チームによる支援,各種研修等学校や地域における支援体制を強化する取組を行っている。

さらに,平成19年度から発達障害を含む障害のある児童生徒をサポートする「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が地方財政措置されているところであり,平成24年度は,公立幼稚園及び公立小・中・高等学校に約4万1500人の配置に係る経費,約476億円の財政措置を予定している。

なお,私立の特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級において,障害に適応した教育を実施する上で必要とする設備を学校法人が整備する場合には,国がその一部を補助している。

○ 就学支援

特別支援学校及び特別支援学級等への就学の特殊事情にかんがみ,これらの学校に就学する幼児児童生徒の保護者等への経済的負担を軽減し,就学を奨励するため,保護者の経済的負担能力に応じて,国及び地方公共団体は就学奨励費を支給している。

(2) 発達障害のある子ども・若者の支援

ア 福祉施策(厚生労働省)

自閉症,注意欠陥多動性障害(ADHD),学習障害(LD)などの発達障害についての国民の理解を促進し,地域において発達障害者を一貫して支援していくための国民や国・地方公共団体の責務等を定める「発達障害者支援法」(平16法167)が平成17年4月1日から施行された。

これを踏まえ,地域において,医療・保健・福祉・教育・雇用などの関係者と連携して,発達障害者やその家族に対する相談支援などを行う「発達障害者支援センター」の整備を推進しているところであり,平成23年度末現在において65都道府県・指定都市(未設置の相模原市についても平成24年度設置予定)に設置されているところである。これに加え,「発達障害者支援体制整備事業」により,乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応した支援を行うための支援関係機関のネットワークの整備を推進するとともに,発達障害に係る理解を深め,地域における支援につなげていくためのアセスメントツール(発達障害を早期発見し,その後の経過を評価するための確認票)の導入を促進する研修会の実施や,発達障害のある子どもを育てた親がその経験を活かし,子どもが発達障害の診断を受けて間もない親などに対して相談や助言を行うペアレントメンターの活動の推進や,その活動をコーディネートする者の配置などを行い,地域における発達障害者に対する支援体制の充実を図っている。

また,発達障害の早期支援として,平成23年度から,発達障害などに関して知識を有する専門員が保育所等を巡回し,施設の職員や親に対し,障害の早期発見・早期対応のための助言などの支援を行う「巡回支援専門員整備事業」を実施しており,平成24年度においては,実施市町村の拡大を図ることとしている。

併せて,先駆的な取組を通じて発達障害者への有効な支援手法を開発・確立する「発達障害者支援開発事業」を実施するとともに,全国の発達障害者支援センターの中央拠点としての役割を担う発達障害情報・支援センターにおいて,発達障害に関する各種情報を発信し,支援手法の普及や国民の理解の促進を図っている。

さらに,平成24年度予算においては,平成23年に発生した東日本大震災を踏まえ,発達障害の特性に配慮した災害時支援が必要との観点から,発達障害者支援センターなどの関係機関の連携による災害時の対応や避難場所の確保等など,災害時の支援に効果的な方法などをマニュアルなどとしてとりまとめ,今後の発達障害者に対する災害時支援の推進を図ることとしている。

イ 教育に関する施策(文部科学省,厚生労働省)

近年,小・中学校等の通常の学級に在籍している発達障害のある児童生徒等への教育的支援の必要性が高まっており,文部科学省では,平成15年3月の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」の提言を受け,モデル事業の実施や「小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」の作成・配布等を通じて,関係機関と連携した総合的な教育的支援体制の整備を図ってきた。

また,「発達障害者支援法」や「学校教育法等の一部を改正する法律」の施行等を踏まえ,幼稚園,小・中学校,高等学校,特別支援学校等のすべての学校において,発達障害を含む障害のある幼児児童生徒への支援体制を整備することを目指し,各都道府県への委託事業として「特別支援教育総合推進事業」を実施しているところである。

しかしながら,各学校における特別支援教育体制の整備状況について,文部科学省において実施した調査によると,公立の小・中学校においては基礎的な支援体制はほぼ整備されつつあるが,幼稚園や高等学校については体制整備に遅れが見られるところである。

このことを踏まえ,当該事業において地域を指定し,同地域において発達障害を含むすべての障害のある子どもの乳幼児期から成人期に至るまでの一貫した支援を行うための体制を整備できるよう支援を行うとともに,高等学校等を指定し,在籍する発達障害のある生徒に対する支援手法の開発や関係機関との効果的な連携方策等に関する実践研究を実施している。この事業を通じて,支援体制整備を進めることとし,取組成果については,文部科学省ホームページに掲載するなど,広く情報提供を行っているところである。

また,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の「発達障害教育情報センター」において,学校の教職員や保護者等に対し,発達障害に関する正しい理解や支援等に関する様々な教育情報,教員研修用の講座等をインターネットを通じて提供しており,厚生労働省とも連携をしながら,必要なコンテンツ等の充実を図っている※22

※22 発達障害教育情報センター別ウインドウで開きます

平成20年6月に,「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(平20法81)が成立し,国は検定教科用図書等において一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な発達障害等のある児童生徒が使用する教科用特定図書等の整備及び充実を図るため,必要な調査研究等を推進することとされた。これを受け,平成21年度から,「民間組織・支援技術を活用した特別支援教育研究事業」において,発達障害等のある児童生徒の障害特性,発達段階,教科の特性等に応じた教材等に関する調査研究を実施している。

さらには,学校における支援をより充実するためには,教職員に対する研修が不可欠であることから,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において各種研修を行っている。同研究所においては,各都道府県等において発達障害のある幼児児童生徒への支援について指導的な立場にある教職員の専門知識の習得や技能を高めるため,「発達障害教育指導者研究協議会」等が開催されている。

これらの取組を通じ,発達障害のある子どもに対し,乳幼児期から成人期に至るまで切れ目のない一貫した支援体制の充実を図っていくこととしている。

(3) 障害者に対する就労支援等(文部科学省,厚生労働省,農林水産省)

現在,「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭35法123)において,民間企業等に対し,雇用する労働者の一定割合(障害者雇用率:民間企業は1.8%)に相当する数以上の障害者を雇用することを義務づけている(障害者雇用率制度)。厚生労働省においては,この雇用率の達成に向け,ハローワークなどにおいて厳正な達成指導を実施し,障害者の雇用促進を図っている。

また,障害者が地域において自立して生き生きと暮らすことができるためには,雇用施策と福祉・教育施策との連携を図ることが重要である。そこで,ハローワークが中心となり,地域の福祉施設や特別支援学校等の関係機関と連携し,就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」を実施している。また,障害者自立支援法においても,一般就労への移行を支援する「就労移行支援」と,一般就労が困難な者に対して働く場を提供等する「就労継続支援」を行っているところである。

さらに,近年急増する精神障害や発達障害等がある求職者について,その障害特性に応じたきめ細かな就労支援を実施しその就労促進を図っている。特に,若年層の中には,発達障害等により,コミュニケーション能力や対人関係に困難を抱えている者が少なくない。このような者に対しては,ハローワークに配置している専門の相談員によるきめ細かな個別相談,支援等を実施する「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」を実施している。

障害者の職業能力開発については,一般の職業能力開発校において,バリアフリー化を推進し,障害者の入校を促進しているほか,発達障害者を対象とした訓練コースを設置して,障害者の受入れを促進し,職業訓練機会を提供している。

また,一般の職業能力開発校において受入れが困難な重度障害者等については,障害者職業能力開発校(全国19校)において,障害の特性に応じた職業訓練を実施している。

さらに,企業,社会福祉法人,特定非営利活動法人,民間教育訓練機関等,地域の多様な委託先を開拓して,就職に必要な知識・技能を習得するための委託訓練を拡充して実施している。

障害のある生徒が,生涯にわたって自立し社会参加していくためには,企業等への就労を支援し,職業的な自立を果たすことが重要である。このため,特別支援学校においては,生徒の障害の状態等に応じ,例えば,コンピュータや情報通信ネットワークを活用して,情報技術や情報処理の能力を育成したり,産業界との連携を図った職場体験の機会を設けたりするなど,時代の進展や社会の変化に対応した職業教育を行っている。特に,企業等における現場実習は,生徒の勤労観や職業観を育成し,学校生活から社会生活への円滑な移行を進める上で重要な学習活動であることから,積極的に取り組まれている。

また,障害のある生徒の就労を促進するためには,教育,医療,福祉関係機関が一体となった施策を講じる必要がある。

このため,文部科学省では,平成21年2月20日に,厚生労働省との連名通知を発出し,各都道府県の職業能力開発主管部と各都道府県教育委員会等に対して,その連携を強化し,特別支援学校の就職未内定者向けに,障害者職業能力開発校で実施する職業訓練についての情報提供等を行うよう配慮を求めた。また,平成22年6月11日には,各都道府県教育委員会等に対し,特別支援学校就労支援セミナー等労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用するなどして障害のある生徒の就労を支援するための効果的な取組を促しているところである。

さらに,特別支援学校と関係機関との連携による職業教育の改善に関する研究に取り組んでいるところである。

農林水産省では,農業分野における障害者就労を推進するため,農業者等に障害者就労の先進事例や就労マニュアル等の普及啓発を行うとともに,障害者の支援のための組織づくりや研究会の開催等を実施している。

3 非行・犯罪に陥った子ども・若者の支援等

(1) 総合的取組

ア 関係省庁の連携(内閣府,警察庁,文部科学省)

近年の少年非行等の情勢は,少年による社会の耳目を集める重大な事件の発生が後を絶たず,また,児童虐待事件や児童ポルノ事件等,少年が被害者となる事件が増加するなど,少年の非行防止及び保護の両面において予断を許さない状況となっている。政府としては,少年非行対策の推進について密接な連絡,情報交換,協議等を行うために,子ども・若者育成支援推進本部に少年非行対策課長会議を設置し,関係省庁が連携の上,少年非行対策の充実強化を図っている。

また,平成17年度から,文部科学省,警察庁,都道府県教育委員会及び管区警察局が共催して,「問題行動に対する連携ブロック協議会」を開催し,非行等の児童生徒の問題行動に対する地域における関係機関相互の緊密な連携を図っている。

文部科学省においては,「生徒指導・進路指導総合推進事業」において,問題行動等の未然防止,早期発見・早期対応につながる取組や,関係機関等と連携した取組,「学校問題解決支援チーム」等外部の専門家の協力を得た効果的な取組等について,試行的な実践を自治体,特定非営利活動法人,民間団体等に委託し,成果の普及を図っている。

平成22年度は,専門家や学校現場の関係者による研究会を立ち上げ,教育現場における暴力行為への効果的な対応の在り方について検討を行い,平成23年7月,「暴力行為のない学校づくりについて(報告書)」をとりまとめ,各教育委員会,学校へ配布した。

イ 法整備(法務省)

深刻な少年非行の現状に適切に対処するため,平成19年5月,「少年法等の一部を改正する法律」が成立し,同年11月1日に施行された。

この法律による改正は,主に,

・いわゆる触法少年に係る事件について,警察官による調査手続を整備する。

・おおむね12歳以上の少年について,家庭裁判所が特に必要と認める場合には少年院送致の保護処分をすることができることとする。

・保護観察に付された者が遵守すべき事項を遵守しなかった場合の措置等に関する規定を整備するとともに,少年院及び保護観察所の長が保護処分中の少年の保護者に対し指導,助言等をすることができる旨を明確化する。

・一定の重大事件について,国選付添人を付する制度を拡充する。

こと等を内容としている。

ウ 家庭,学校,地域の連携(内閣府,警察庁,法務省)

少年非行は,家庭,学校,地域社会のそれぞれが抱えている問題が複雑に絡み合って発生しており,次代を担う子ども・若者が非行に走らないよう育成することが国民的課題であるとの認識に立って,真剣に国民一人一人が,この問題に地道に取り組み,息の長い国民的運動にまで高めていくことが重要である。このような立場から,家庭,学校及び地域社会のより一層の緊密な連携の下に,一体的な非行防止対策を更に推進していく必要がある。

関係機関では,地域ぐるみの活動の強化に関して,例えば,

・地域の実情に応じた非行防止のための活動・行事の展開

・学校における非行防止教室や薬物乱用防止教室の開催

・地域における多様な活動機会や居場所づくり

・街頭補導活動の強化及びサポートチームの形成の推進

等に取り組んでいる。

エ 調査研究(内閣府,法務省)

内閣府では,青少年に対する薬物乱用対策に資するため,有識者による企画分析会議を立ち上げており,平成21年度は,未然防止の見地から,青少年を中心とした薬物への意識に関するインターネット調査を実施した。さらに,再乱用対策の見地から,平成22年度はスペイン,平成23年度はアメリカの若年層に対する薬物乱用対策について分析・検討を行った。

法務省法務総合研究所では,平成23年版犯罪白書において,非行少年や若年犯罪者に焦点を当てて特集を組み,その非行・犯罪の実態や再犯の要因,立ち直りを促す要因等について調査・分析を行った。

オ 「サポートチーム」等(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省)

「サポートチーム」は,少年の問題行動が多様化,深刻化している現状において,個々の少年の問題状況に着目し,的確な支援を行うため,学校,警察,児童相談所,保護観察所等の関係機関がチームを構成し,適切な役割分担の下に連携して対処するものである。

「サポートチーム」の円滑な組織化のためには,日常的な関係機関によるネットワークの構築や,必要に応じて「サポートチーム」への参加を求め得る団体等との緊密な連携を図っていくことが重要である。

カ その他の関係機関の連携(警察庁,法務省,文部科学省)

児童生徒の非行や校内暴力を防止するためには,学校と警察が密接に連携する必要があるため,全国の小学校,中学校及び高等学校の約94%の参加を得て,平成24年4月1日現在,約2700組織の学校警察連絡協議会が結成されている。

また,都道府県警察と都道府県教育委員会(庁)等との間で締結した協定,申合せ等に基づき,非行少年,不良行為少年その他の健全育成上問題を有する児童生徒に関する情報について警察・学校間で通知を行う,「学校・警察連絡制度」が各地で構築され,非行防止及び健全育成に関し,効果を上げつつある。

少年非行の深刻化に対処するため,少年のプライバシー等との調整を図りながら,関係機関が情報を共有し,各機関のなすべき役割を果たしていく必要がある。そこで,法務省では,保護処分の適正かつ円滑な執行を図るために,平成23年度から,全国の少年院において,家庭裁判所,地方更生保護委員会,保護観察所,少年鑑別所その他の関係機関の担当者が一堂に会し,在院者の少年院入院後の処遇経過,今後の処遇方針及び保護関係調整等について検討を行う処遇ケース検討会を実施している。

また,家庭裁判所,少年鑑別所,少年院,地方更生保護委員会及び保護観察所においては,少年院や保護観察における効果的な処遇及び連携の在り方を検討するため,定期的に協議会等を開いている。

さらに,処遇機関においては,必要に応じ,学校,警察及び福祉施設の職員とも個別事例の検討を行っている。

最近の少年非行の背景として,少年の規範意識や社会性の欠如,あるいは対人関係能力の未熟さが指摘されているが,次代を担う中学生に焦点を当てた非行防止活動を推進し,その健やかな育成を図る必要がある。

そこで,法務省においては,「中学生サポート・アクションプラン」を実施している。具体的には,非行問題に関する豊富な知識,保護観察対象者に対する処遇経験等を有する保護司(学校担当保護司)が,直接中学校へ赴き,非行問題,薬物問題をテーマにした非行防止教室,問題を抱えた生徒への指導方法等について教師との個別協議を実施するなどして,中学生の犯罪・非行の未然防止及び健やかな育成を図っている。

そのほか,多くの少年鑑別所が,地域レベルで整備が進められている少年相談機関のネットワークに参加し,非行問題の専門機関としての役割を果たしている。

キ スクールサポーター(警察庁)

退職した警察官等をスクールサポーターとして警察署等に配置するとともに,学校からの要請に応じて派遣している。スクールサポーターは「警察と学校の橋渡し役」として,学校における少年の問題行動等への対応,巡回活動,相談活動,児童の安全確保に関する助言等を行っている(平成24年4月1日現在,43都道府県,約600人が配置されている。)。

(2) 非行防止,相談活動等

ア “社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~(法務省)

法務省の主唱の下,犯罪予防活動の一環として,「“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~」が全国で実施されている。同運動は,すべての国民が,犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め,それぞれの立場において力を合わせ,犯罪や非行のない地域社会を築こうとする運動であり,運動の趣旨に賛同した様々な機関・団体により,各地域の実情に応じた方法による運動が展開されている。

具体的には,全国各地で,非行防止活動,子育て相談活動,地域で非行問題や非行に陥った少年の立ち直り支援を話し合うシンポジウム,ミニ集会活動,各種広報活動等のほか,作文コンテスト,ワークショップ,親子触れ合い行事等青少年の主体的参加を得た行事等を積極的に実施している。

イ 非行少年を生まない社会づくり(警察庁)

最近の少年非行の背景には,従来,少年の規範意識の醸成を担ってきた家庭や地域社会の教育機能の低下,少年自身のコミュニケーション能力の不足,少年がともすれば自分の居場所を見出せず孤立し疎外感を抱いている現状があり,こうしたことが少年の規範意識の低下の要因になっていると認められることから,次代を担う少年の健全な育成を図るためには,こうした問題の解決に社会全体で取り組む必要がある。

このため,警察では,平成22年12月から,「非行少年を生まない社会づくり」の取組を全国的に推進しており,問題を抱え非行に走る可能性がある少年に対して積極的に連絡して手を差し伸べ,社会奉仕活動への参加促進や就学・就労の支援等によりその立ち直りを支援する活動を行うとともに,少年非行に関する社会全体の理解を深め,厳しくも温かい目で少年を見守る社会気運の醸成を図っている。

ウ 非行防止教室(警察庁,文部科学省)

学校,家庭,地域等が十分連携を図り,子どもの豊かな人間性や社会性等を育むため道徳教育の充実を図るとともに,関係機関等と連携した非行防止教室の開催等により規範意識を養い,少年の非行防止に努めている。

警察では,警察職員を学校に派遣して少年警察ボランティア等の協力を得るなどして非行防止教室を開催し,具体的な非行事例等を題材にして直接少年に語り掛けることにより,少年自身の規範意識の向上を図り,少年の非行防止に取り組んでいる。

エ 多様な活動機会・居場所づくりの推進(警察庁,文部科学省)

警察では,少年の規範意識の向上及び社会との絆の強化を図る観点から,関係機関・団体及び地域社会と協力しながら,環境美化活動を始めとする少年の社会奉仕活動,生産体験活動等の社会参加活動や警察署の道場を開放して少年柔剣道教室等のスポーツ活動を行うなど,少年の多様な活動機会の確保と居場所づくりを推進している。

文部科学省では,関係省庁,民間団体等との連携の下,地域の人材を活用した子どもの様々な活動を支援する総合的な取組の推進を図っている。

オ 相談活動(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省)

少年補導センターは,地域住民に身近な市町村を中心に設立された機関であり,街頭補導,少年相談,有害環境の適正化等の活動を行っている。少年補導センターが扱う少年相談の内容は,非行に関するもののほか,いじめ,不登校,虐待の問題等様々である。

警察では,少年の非行,家出,自殺等の未然防止とその兆候の早期発見や犯罪,いじめ,児童虐待等に係る被害少年等の保護のために少年相談窓口を設け,心理学等の知識を有する少年補導職員や経験豊かな警察官等が,少年や保護者等からの相談を受け,必要な指導や助言を行っている。

また,ヤングテレホンコーナー等の名称で電話による相談を受けているほか,フリーダイヤルを導入したり,FAXや電子メールを活用したりするなど,少年相談を利用しやすい環境の整備に努めている。平成23年に警察が受理した少年相談の件数は,6万7391件で,前年に比べ7459件(10.0%)減少した(第2―3―1表)。

第2-3-1表 警察が受理した少年相談の状況(平成23年)

少年相談の内容をみると,少年自身からの相談では,交友及び犯罪被害の問題に関する悩みが多く,保護者からの相談では,家庭及び非行の問題に関する悩みが多い(第2―3―1図)。

第2-3-1図 少年相談の内容(平成23年)

相談後も継続的な指導・助言を必要とするケースは,平成23年は8242件で,全体の12.2%を占めている。

法務省の人権擁護機関では,子どもの人権問題について,人権擁護委員や法務局・地方法務局の職員が相談に応じている。

さらに,少年鑑別所は,主として家庭裁判所から観護の措置により送致された少年を収容するとともに,その資質の鑑別を行う施設であるが,子どもの非行等の問題に悩む学校関係者や一般市民からの相談等に応じる一般少年鑑別も行っている。一般少年鑑別においては,臨床心理学の専門職員である法務技官が助言や指導に当たっている。

その他,保護観察所や保護司の活動拠点である「更生保護サポートセンター」においても,犯罪予防活動の一環として,保護観察官や保護司が,子どもの非行や問題行動で悩む親等からの相談に応じている。

また,文部科学省では,いじめ問題の対応等の一つとして,子どもたちが全国どこからでも夜間・休日を含めて,いつでもいじめ等の悩みを相談することができるよう,全国統一の電話番号(0570-0-78310(なやみ言おう))により平成19年2月から全都道府県及び指定都市教育委員会で24時間いじめ相談ダイヤルを実施している。

カ 補導活動(内閣府,警察庁)

少年の非行を防止する上で,少年の問題行動の初期段階での適切な対応が極めて重要である。警察では,全国に設置された「少年サポートセンター」を中心として,繁華街や公園等少年の非行が行われやすい場所に重点を置いて日常的に補導活動を実施し,不良行為等の問題行動を早期に発見して,少年やその家庭に対する適切な助言,指導等に努めている。

また,警察では,少年指導委員,少年補導員及び少年警察協助員の少年警察ボランティアを委嘱しており,これらのボランティアは,少年補導活動や少年を取り巻く社会環境の浄化活動等地域に密着した活動を行っている。

内閣府では,街頭補導,少年相談,有害環境の適正化等の子ども・若者育成支援活動を行う機関として全国に設置されている「少年補導センター」の機能の充実・強化を図るため,センター職員等の知識や能力の向上のための研修を実施している。

キ 事件の捜査・調査

<1> 警察(警察庁)

警察は,非行少年を発見した場合は,必要な捜査又は調査を行い,検察官,家庭裁判所,児童相談所等の関係機関へ送致し,又は通告するほか,その少年の保護者等に助言を与えるなど,非行少年に対して適切な指導がなされるよう措置している。

○ 犯罪少年

犯罪少年(14歳以上20歳未満で罪を犯した少年)については,「刑事訴訟法」(昭23法131),「少年法」(昭23法168)等に規定する手続に従って,必要な捜査を遂げた後,罰金以下の刑に当たる事件は家庭裁判所に,禁錮以上の刑に当たる事件は検察官に送致又は送付する。

○ 触法少年

触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年)については,その者に保護者がいないか,又は保護者に監護させることが不適当と認められる場合には,児童相談所に通告し,その他の場合には,保護者に対して適切な助言を行うなどの措置を講じている。

また,調査の結果,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に触れると考えられる等一定の場合には,事件を児童相談所長に送致しなければならないこととされている。

○ ぐ犯少年

ぐ犯少年(20歳未満で一定の事由があって,その性格又は環境に照らして,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年)については,その者が18歳以上20歳未満の場合は,家庭裁判所に送致し,14歳以上18歳未満の場合は,事案の内容,家庭環境等から判断して家庭裁判所又は児童相談所のいずれかに送致又は通告し,14歳未満の場合には児童相談所に通告し,又は,その非行の防止を図るために特に必要と認められる場合には,保護者の同意を得た上で,補導を継続的に実施する。

<2> 検察庁(法務省)

検察官は,警察から送致されるなどした少年の犯罪について必要な捜査を行い,犯罪の嫌疑があると認めたときは,事件を家庭裁判所に送致する。犯罪の嫌疑がなくとも,ぐ犯などの事由がある場合も,同様に事件を家庭裁判所に送致する。

その際,検察官は,少年に刑罰を科すのが相当か,保護観察,少年院送致等の保護処分に付すのが相当かなど処遇に関する意見を付すことになっている。

また,検察官は,家庭裁判所から少年審判に関与すべき旨の決定があった場合に,これに関与し,裁判所の事実認定を補助することとなっている。

さらに,家庭裁判所から,刑事処分相当として検察官に送致された少年については,検察官は,原則として公訴を提起することとなっている。検察官が,このように十分な捜査を行い,事案を解明した上で適切な処理をすることは,少年犯罪に対する最も基本的で重要な対策であり,今後も一層充実させることとしている。

ク 非行集団対策(内閣府,警察庁)

ひったくり,路上強盗等の街頭犯罪は,その検挙人員の約6割が少年であり,暴走族や非行少年グループ等の非行集団によって敢行される各種の犯罪は,我が国の治安にとって看過できないものとなっている。

非行集団は,暴走行為,集団的暴行事件等の集団的な違法行為に限らず,遊興資金や背後にある暴力団等への上納金等の獲得を目的として,各種の犯罪を敢行することが少なくない。

また,暴力団等が非行集団を裏から支え,これを資金源としている実態もうかがえる。

このため,警察では,非行集団に対する取組を犯罪抑止対策の重要な柱と位置付け,少年部門,交通部門及び刑事部門の連携を強化して,非行集団の実態把握を徹底し情報収集に努めるとともに,非行集団やその予備軍となる非行少年,さらには,非行集団の背後にある暴力団等による犯罪を徹底的に取り締まり,非行集団の弱体化及び解体を図っているほか,少年の非行集団への加入阻止,離脱支援等の施策を推進している。

暴走族については,平成13年2月,暴走族対策関係8府省庁により,「暴走族追放気運の高揚」,「家庭,学校等における青少年の指導の充実」,「暴走行為阻止のための環境整備」,「暴走族に対する指導取締りの強化」等を柱とする暴走族対策の強化について申し合わせ,暴走族対策の強化を継続している。

共同危険行為等の禁止違反を始めとする各種法令を活用した取締りはもちろんのこと,暴走族への加入防止や暴走族からの離脱促進,車両の不正改造防止対策等総合的な暴走族対策を推進するとともに,暴走族追放条例等制定の促進等,暴走族を許さない社会環境づくりを,政府一体となって推進している。

さらに,地方公共団体においても,暴走族追放条例等の制定と,その的確な運用を行い,暴走族追放気運の高揚に努めている。

(3) 薬物乱用防止(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省,厚生労働省)

政府では,「第三次薬物乱用防止五か年戦略」(平成20年8月)及び「薬物乱用防止戦略加速化プラン」(平成22年7月)に基づき,関係省庁が連携して,子ども・若者に対する薬物乱用対策を推進している。

警察庁では,最近の薬物犯罪情勢や政府全体の薬物対策の取組強化等を踏まえ,平成22年に策定した「薬物対策重点強化プラン」等に基づき,薬物密輸・密売組織の徹底検挙,関係機関との連携による水際対策の推進等により薬物供給を遮断するとともに,児童生徒に対する薬物乱用防止教室,大学生や新社会人に対する薬物乱用防止講習会等の推進等による薬物需要の根絶を図るなど,総合的な薬物対策を推進している。

少年院においては,薬物に依存した少年はもとより,薬物の乱用経験がある少年も対象として,薬物問題指導プログラムを実施している。また,教育内容・方法を充実させ,職員の指導技術を向上させるという観点から,家庭裁判所等の関係機関の職員を招へいし,研究授業を実施するとともに,薬物依存から離脱するための効果的な指導方法について検討を行っている。

刑事施設においては,麻薬,覚せい剤その他の薬物に対する依存がある受刑者を対象に,改善指導として「薬物依存離脱指導」を実施している。同指導は,受刑者に対し,薬物依存の認識及び薬物使用に係る自分の問題を理解させた上で,今後薬物に手を出さずに生活していく決意を固めさせ,再使用に至らないための具体的な方法を考えさせることを目的に,薬物の薬理作用と依存症,薬物使用に関する自己洞察,再使用防止のための方策,出所後の生活の留意事項と社会資源の活用等についての指導を,グループワーク,講義,視聴覚教材の視聴等の方法により行っている。

保護観察所では,保護観察に付されている者に対し,自発的意思に基づく簡易薬物検出検査を実施するとともに,一定の条件を満たした者について,認知行動療法等に基づく覚せい剤事犯者処遇プログラムを実施している。また,再犯防止・社会復帰支援をより一層強化するため,地域の関係機関との連携,施設内処遇との一貫性を考慮した処遇等の充実に努めている。

文部科学省では,薬物乱用防止教育の充実を図るため,小学校,中学校及び高等学校において薬物乱用防止教室の開催を推進するとともに,大学生等を対象とした薬物乱用防止のための啓発用パンフレットを作成し,すべての大学等の新一年生に配布するなど,各種施策を実施している。

厚生労働省では,青少年の薬物乱用の入手先となっているインターネットを利用した密売事犯や,外国人による密売事犯等に対する取締りの強化とともに,地域における,青少年の薬物乱用防止・薬物依存症等に関する相談の充実,医療機関による対応の充実を図っている。

また,薬物の再乱用を防止するための取組として,都道府県と協力し,薬物依存症の正しい知識の普及を行い,また,保健所及び精神保健福祉センターにおける薬物相談窓口において,薬物依存症者やその家族に対する相談事業,家族教室の実施等により再乱用防止対策の充実を図っている。薬物問題に関連する相談窓口については,厚生労働省ホームページ等で紹介しており,平成22年度実績で,保健所6931件,精神保健福祉センター3474件の相談があった。

(4) 少年審判

家庭裁判所は,非行少年に対する調査・審判を行い,非行があると認めるときは,家庭裁判所調査官の調査結果等も考慮して,少年を保護処分(保護観察,児童自立支援施設等送致又は少年院送致)に付し,保護処分に付さない場合でも教育的措置(指導助言など)を講じる。また,犯行時14歳以上の少年に係る禁錮以上の刑に当たる罪の事件について,刑事処分を相当と認めるときは,検察官に送致する。

ア 受理の状況(最高裁判所)

平成23年における少年保護事件の全国の家庭裁判所での新規受理人員は,15万844人で,その非行別の内訳は,第2―3―2図のとおりである。

第2-3-2図 家庭裁判所の少年保護事件の新規受理人員非行別構成比(平成23年)

平成23年は前年と比較して1万2179人(7.5%減)減少している。増加人数の多い非行は,軽犯罪法違反(1090人・23.9%増),強盗致傷(93人・32.4%増),過失致死傷(65人・16.2%増)等で,減少人数の多い非行は,窃盗(4876人・8.3%減),道路交通事件(3158人・10.1%減),横領(2800人・15.6%減)等である。

イ 処理の状況(最高裁判所)

平成23年における少年保護事件の終局人員は15万985人で,このうち一般事件(交通関係事件を除く少年保護事件)が9万8949人,交通関係事件(業務上(重・自動車運転)過失致死傷,危険運転致死傷及び道路交通事件)が5万2036人となっている。

これを終局決定別にみると,第2―3―3図のとおりである。

第2-3-3図 家庭裁判所の少年保護事件終局決定別構成比(平成23年)

<1> 保護処分

平成23年に保護処分に付された少年は2万7459人で,その内訳は,一般事件が1万5895人(57.9%),交通関係事件が1万1564人(42.1%)である。前年と比較し2056人(7.0%減)減少している。

○ 保護観察

保護観察に付された少年は2万3654人で,その内訳は,一般事件が1万2409人(52.5%),交通関係事件が1万1245人(47.5%)であり,交通関係事件のうち8070人(71.8%)は交通短期保護観察に付されたものである。前年と比較し1948人(7.6%減)減少している。

○ 児童自立支援施設等送致

児童自立支援施設又は児童養護施設送致となった少年は281人である。この処分は,少年を児童福祉施設に送致するもので,その対象のほとんどが15歳以下の少年である。

○ 少年院送致

少年院送致となった少年は3524人で,その内訳は,一般事件が3209人(91.1%),交通関係事件が315人(8.9%)である。前年と比較して,一般事件は60人(1.8%減)減少し,交通関係事件は30人(8.7%減)減少している。

<2> 検察官送致

平成23年に刑事処分が相当であるとして検察官送致となった少年は3473人で,前年と比較して420人(10.8%減)減少している。そのうち3286人(94.6%)が交通関係事件によるものである。

<3> 児童相談所長等送致

知事又は児童相談所長送致は,少年の処遇を児童福祉機関の措置にゆだねるもので,児童自立支援施設等送致と同様にその対象のほとんどが15歳以下の少年であるが,毎年その数は少なく,平成23年は214人である。

<4> 審判不開始及び不処分

審判不開始及び不処分は,調査の結果,審判を開いたり保護処分に付することができず,又はその必要がないと認められる少年に対して行われる決定である。審判を開いたり保護処分に付する必要がないとしてこれらの決定がされる場合にも,調査及び審判の段階で,少年の問題性に応じて,裁判官,家庭裁判所調査官が,種々の教育的措置を講じることにより,再非行防止に向けた働き掛けをしている。例えば,非行の内容を振り返らせたり,被害の実情を伝えるなどする中で必要な助言・指導を行い,少年の反省を深めさせたり,学校等と連絡を取って生活態度や交友関係等の改善に向けた協力態勢を築いたり,「犯罪被害を考える講習」や地域の清掃といった社会奉仕活動への参加を促すなどの働き掛けを行っている。

また,少年の再非行を防止するために家族が果たす役割が大きいことから,家庭裁判所においては,少年の非行に家族関係が及ぼしている影響を見極めた上で,問題解決に向けて家族関係の調整を行ったり,少年と保護者に社会奉仕活動への参加を促すなどの働き掛けを行っている。

ほかにも,保護者会を実施して保護者の気持ちや経験を語り合う場を設けることにより,保護者の少年に対する指導力を高めさせたり,保護者が自らの養育態度を見つめ直し,監護者としての責任を自覚するように働き掛けている。

(5) 被害者への配慮(内閣府,警察庁,法務省,最高裁判所)

警察では,被疑少年の健やかな育成に留意しつつ,捜査上の支障のない範囲内で,少年事件の被害者等の要望に応じて,捜査状況等に関する情報を可能な限り提供するように努めている。

法務省では,全国の検察庁において,少年事件の犯罪被害者等を含むすべての犯罪被害者やその親族の心情等に配慮するという観点から,犯罪被害者等に,事件の処理結果等の情報を提供し,少年院,地方更生保護委員会及び保護観察所においては,少年院送致処分又は保護観察処分を受けた加害少年について,加害少年の健全な育成に留意しつつ,被害者等の希望に応じて,少年院における処遇状況に関する事項,仮退院審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している。検察庁,地方更生保護委員会及び保護観察所においては,刑事処分となった少年についても,被害者等の希望に応じて,事件の処理結果,裁判結果,加害者の受刑中の処遇状況に関する事項,仮釈放審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している※23

※23 更生保護における犯罪被害者等施策 法務省別ウインドウで開きます

また,「更生保護法」(平19法88)に基づき,地方更生保護委員会が,少年院からの仮退院の審理において被害者等の意見等を聴取する制度及び保護観察所が被害者等の心情等を保護観察中の加害少年に伝達する制度を実施している※24

※24 更生保護における犯罪被害者等の方々のための制度 法務省別ウインドウで開きます

「少年法」では,被害者への配慮の充実を図るために,

<1> 被害者等による記録の閲覧及び謄写

<2> 被害者等の申出による意見の陳述

<3> 被害者等に対する審判結果等の通知

<4> 一定の重大事件の被害者等による少年審判の傍聴

<5> 被害者等に対する審判状況の説明

の制度が設けられている。家庭裁判所は,これらの制度の適切な運用に努めているほか,被害者の心情等に十分配慮しながら,被害状況,被害感情等について,家庭裁判所調査官が被害者に直接会って話を聞くなどして,その声を少年審判手続に反映させている。

これらの制度のうち,平成20年12月15日から施行された<4>及び<5>について,同日から平成23年12月31日までの運用状況は次のとおりである。

審判の傍聴の対象となった事件は548件であり,そのうち250件について申出がされ,219件について審判の傍聴が認められている。申出が認められなかった27件については,審判が開始されず事件が終局したことによるもの,申出資格がない者からの申出によるものなどである。残りの4件については,申出後に取下げとなったものである。

次に,審判状況の説明の申出人数は1448人であり,そのうち1426人について申出が認められている。申出が認められなかった22人については,審判が開始されず事件が終局したことによるもの,申出資格がない者からの申出によるものなどである。

(6) 少年鑑別所等(法務省)

少年鑑別所は,主として家庭裁判所から観護措置の決定がされた少年を収容するとともに,医学,心理学,教育学,社会学その他専門的知識に基づいて,その資質の鑑別を行う施設である。観護措置による収容期間は,原則として2週間以内であるが,特に必要のあるときは,家庭裁判所の決定により,期間が更新(延長)されることがある(最長8週間)。鑑別の結果は,鑑別結果通知書として家庭裁判所に送付されて審判の資料となるほか,保護処分が決定された場合には,少年院,保護観察所に送付され,処遇の参考にされる。

また,少年鑑別所においては,退所する少年の多くが地域社会に戻り,処遇を受けていること等を踏まえ,少年の法的地位等を考慮しつつ,その健全な育成に配慮した観護処遇を実施している。

なお,鑑別には,上述の少年を収容して行う「収容鑑別」のほか,家庭裁判所からの請求に応じて,少年を収容せずに行う「在宅鑑別」,少年院,刑事施設,保護観察所等の法務省関係機関からの依頼に応じて行う「依頼鑑別」,地域住民,学校,職場等の一般からの依頼に応じて行う「一般少年鑑別」がある。

(7) 少年院,児童自立支援施設等

ア 少年院・少年刑務所等(法務省)

少年院は,家庭裁判所において少年院送致の保護処分に付された少年及び16歳に達するまでの間少年院において刑の執行を受ける少年を収容し,これに矯正教育を行う施設である。収容対象となる少年の年齢,犯罪的傾向の進度及び心身の故障の有無に応じて初等,中等,特別及び医療の4種類がある。

各少年院では,生活指導,職業補導,教科教育,保健・体育及び特別活動の各領域で構成される教育課程(在院者の特性及び教育上の必要性に応じた教育内容を総合的に組織した標準的な教育計画)を編成するとともに,個々の少年について,少年鑑別所及び家庭裁判所の情報や意見を参考にして個別的処遇計画を作成し,効果的な教育を実施するよう努めている。

刑事裁判において,懲役又は禁錮の実刑の言渡しを受けた少年は,刑執行のため,主に少年刑務所等に収容されるが,少年刑務所等においては,一人一人に個別担任を指定して個別面接や日記指導等の個別的な指導を行う等,心身が発達段階にあり,可塑性に富むなどの少年受刑者の特性に応じた矯正処遇を各少年の資質及び環境の調査の結果に基づいて実施している。

イ 児童自立支援施設(厚生労働省)

児童自立支援施設においては,不良行為をなし,又はなすおそれのある子ども等に対して,その自立を支援することを目的として,一人ひとりの状況に応じた支援・ケアを行っている。

(8) 更生保護,自立・立ち直り支援

ア 少年院からの仮退院,少年刑務所等からの仮釈放及び保護観察の概要(法務省)

少年院からの仮退院及び少年刑務所等からの仮釈放は,少年院及び少年刑務所等の矯正施設に収容されている者について,法律,判決又は決定によって定められている収容期間の満了前に仮に釈放し,その円滑な社会復帰を促す措置であり,少年院からの仮退院及び少年刑務所等からの仮釈放を許された者は,収容期間が満了するまでの間,保護観察を受ける。平成23年における少年院仮退院者は,全出院者の99.3%に当たる3601人(速報値)であった。

少年院からの仮退院及び少年刑務所等からの仮釈放に先立って,保護観察所は,出院・出所後の少年等を取り巻く環境(家庭,職場,交友関係等)が,その改善更生を促す上で適切なものとなるよう,引受人等との人間関係,出院・出所後の職業等について調整を行い,受入体制の整備を図っている。

保護観察は,非行があったり犯罪をした少年等に,社会生活を営ませながら,その改善更生を図る上で必要な生活及び行動に関する一定の事項(遵守事項及び生活行動指針)を守って健全な生活をするよう指導監督するとともに,自助の責任を踏まえつつ,就学・就職その他について補導援護することにより,少年等の改善更生を促すものであり,保護観察官と民間篤志家である保護司とが協働して,その実施に当たっている。

平成22年中に保護観察所が新たに開始した保護観察事件数は,成人事件を含め4万7562件であったが,このうち61.8%に当たる2万9408件が,家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年又は地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院を許された少年の事件であった。少年の保護観察に関する動向として近年では,暴走族に関係のある少年や無職少年の比率が高い比率を占める状態が続いている。

イ 保護観察の実効性の向上等(法務省)

複雑かつ困難な問題性を抱えた処遇困難な少年が増加していることを踏まえ,問題性の高いケースについては,保護観察官による直接的関与の程度を強めるなどにより重点的な働き掛けを行うほか,少年の持つ問題性,その他の特性を類型化し,各類型の特性に焦点を当てた処遇を実施している。

また,北海道雨竜郡沼田町において,主に少年院を仮退院した少年を対象とし,旭川保護観察所の駐在官事務所に併設された宿泊施設に居住させ,濃密な保護観察を実施するとともに,同町が運営する農場で農業実習を受けさせ,改善更生の促進を図る「沼田町就業支援センター」を平成19年10月から設置・運営している。

なお,保護観察における遵守事項を整理して充実させるとともに,保護観察の実施状況に応じて特別遵守事項の変更ができることとするなど更生保護の機能を充実強化する「更生保護法」が平成19年6月に成立し,平成20年6月1日に全面施行された。

ウ 処遇全般の充実・多様化

<1> 社会参加活動や社会貢献活動,社会奉仕活動等への参加(法務省)

保護観察においては,近年の犯罪や非行の態様の変化や個々の保護観察対象者の問題性に適切に対応できるよう,処遇の充実・多様化を図っている。

例えば,保護観察処分少年等に実施している社会参加活動は,社会性に乏しく,自己肯定感が得られない少年等が介護・奉仕活動に参加することにより,自分に対して肯定的な感情を抱くなど,その健全育成を期して実施している。

さらに,平成22年2月24日に法制審議会が法務大臣に対して行った答申(保護観察の特別遵守事項の類型に社会貢献活動を加えること)を受けて,平成23年度から,成人を含む保護観察対象者について,その同意に基づき,地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動(福祉施設での介護補助活動や公共の場所での清掃活動等)を行わせ,善良な社会の一員としての意識のかん養及び規範意識の向上を図る社会貢献活動を実施している。

<2> 被害者等の意見等を踏まえた適切な加害者処遇等の推進(法務省)

近年,刑事司法の分野において,被害者やその親族の心情等について,一層の配慮を行うことが求められるようになってきている。各少年院及び少年刑務所等においては,意図的・計画的に「被害者の視点を取り入れた教育」が実施されるよう,矯正教育・改善指導等の充実に努めており,同教育により,自分の犯した罪と向き合い,犯した罪の大きさや被害者の心情等を認識し,被害者に誠意をもって対応していくとともに,再び罪を犯さない決意を固めさせるための働き掛けを行っている。

保護観察においても,個々の事案の状況に応じ,その処遇過程等において,少年が自らの犯罪と向き合い,犯した罪の大きさや被害者の心情等を認識し,被害者に対して誠意をもって対応していくことができるようになるための助言指導を行っている。

また,平成19年3月からは,被害者を死亡させ又はその身体に重大な傷害を負わせた事件により保護観察に付された少年に対して,犯した罪の重さや被害者の実情等を認識させながら被害者に対する謝罪の気持ちをかん養し,具体的なしょく罪計画を策定させるしょく罪指導を実施している。

さらに,家庭裁判所では,被害の実情や被害感情を少年に伝えて内省を深めさせるとともに,被害者の声を少年審判手続に反映するよう努めている。また,被害者に謝罪や弁償がされてなければ,少年や保護者に指導を行っている。

エ 民間ボランティア・施設・団体等との連携(法務省)

地域社会の中で行う更生保護活動においては,官のみならず民間の協力が不可欠であるところ,地域の中で更生保護を支えている民間ボランティア・施設・団体としては,次のような人々が挙げられる。

<1> 保護司

「保護司法」(昭25法204)に定めるところにより,法務大臣から委嘱された非常勤の国家公務員である。処遇の専門家である保護観察官と協働して,保護観察,生活環境の調整,地域社会における犯罪予防活動等に当たっている。現在,全国で約4万8000人の保護司が法務大臣の定めた保護区ごとに配属され,地域事情に通じた利点をいかして活動している。

なお,保護司会と地域の関係機関・団体との連携を強化し,処遇活動,犯罪予防活動を始めとする更生保護の諸活動を一層促進するための拠点として,平成20年度から「更生保護サポートセンター」を導入してきたが,平成23年度にはすべての都道府県に計55か所設置された。

<2> 更生保護施設

「更生保護事業法」(平7法86)の定めるところにより,法務大臣の認可等を受けて設置・運営される施設であり,保護者がいないなどの理由で,改善更生が困難な少年院仮退院者や保護観察中の少年等を保護し,各種の生活指導や宿泊場所の提供,食事の供与,就労の援助等を行うことにより,その自立更生を支援している。少年専用の更生保護施設では,入所中の少年の円滑な自立更生を促進するための効果的なプログラムの実施等,処遇機能の充実化を図るための取組がなされている。平成24年4月現在,全国に更生保護施設は104施設あり,このうち少年を保護の対象とする施設は,84施設ある。なお,更生保護施設は平成20年(当時は101施設)までは,すべて「更生保護事業法」に基づく更生保護法人によって運営されていたところ,平成21年以降,社会福祉法人等の更生保護法人以外の法人が施設運営に参入している。

<3> 更生保護女性会

犯罪や非行のない明るい地域社会を実現しようとするボランティア団体であり,非行のある青少年の改善更生の援助,地域社会の非行防止,子育て支援活動など,地域に根ざした幅広い活動を展開している。

平成24年4月現在,全国で約18万人の会員が,市町村等を単位に地区会を結成し,全国各地で活動している。

<4> BBS(Big Brothers and Sisters Movement)会

非行など,様々な問題を抱える少年の悩み相談や学習支援等を通して,その自立を支援する「ともだち活動」を始め,非行防止や子どもの健全育成のための多彩な活動を行っている青年ボランティア団体である。

平成24年4月現在,全国で約4600人の会員が,市町村等を単位とした地区組織や大学を単位とした学域組織を結成し,全国各地で活動している。

<5> 協力雇用主

犯罪や非行歴のある人に,その事情を承知した上で職場を提供し,その人の立ち直りに協力しようとする民間の事業主で,平成24年4月現在,全国に約1万の事業主がいる。

犯罪や非行歴のある人は,そのために職業を得ることが難しく,また,就職しても職場での理解を得にくい場合があるため,協力雇用主は,健全な就業生活の確保に極めて重要な役割を果たしている。

そのほか,広く地域住民の理解と協力が不可欠であることから,法務省の主唱により実施している“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~等の機会において,非行防止と改善更生の援助について,国民一人一人の理解と協力を広く求めている。

(9) 非行少年・少年受刑者等に対する就労支援等(法務省,厚生労働省)

少年院や少年刑務所等においては,処遇の一環として,就労に対する心構えを身に付けさせ,就労意欲を喚起し,各種の資格取得を奨励しているほか,公共職業安定所等との連携による職業講話,職業相談,職業紹介,求人情報の提供等求職活動を容易にするための就労支援を実施している。

保護観察所においては,少年院や少年刑務所等矯正施設に在院・在所中の少年について,矯正施設や家族,学校等と協力し,出院・出所後の就労先の調整・確保に努めている。

保護観察中の無職少年等に対しては,その処遇過程において,就労意欲がない原因や意欲があっても就労できない理由,就労しても継続しない理由等,不就労の原因となっている問題点の把握に努め,その解消を図るための助言指導を行っている。

また,平成23年度から一部の保護観察所において,民間法人に委託し,矯正施設に在院・在所中から就職後の職場定着に至るまで専門家による継続したきめ細かな支援等を行う「更生保護就労支援モデル事業」を実施している。

ハローワークにおいては少年院,刑務所,保護観察所等と連携して,出院及び出所予定者,保護観察に付された少年等を対象とした職業相談,職業紹介,セミナー・事業所見学会,職場体験講習,トライアル雇用等の就労支援策を推進しているほか,就労後の相談,問題点の把握,問題解決のための助言等,就労継続のための支援を行っている。

(10) 少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動(警察庁)

警察では,問題を抱え非行に走る可能性がある少年に対して警察の方から積極的に連絡し,警察職員が継続的に声をかけるほか,少年の状況に応じて社会奉仕活動への参加促進,就学・就労の支援等を行う「少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動」を推進している。

(11) いじめ・暴力対策(警察庁,文部科学省)

いじめ,暴力行為といった児童生徒の問題行動は依然として相当数に上っており,教育上の大きな課題となっている。文部科学省では平成19年2月5日に通知を発出し,問題行動が起こったときには,粘り強い指導を行い,なお改善が見られない場合には,出席停止や懲戒などの措置も含めた毅然とした対応をとることを各都道府県・指定都市教育委員会や学校に対して求めている。また,「生徒指導・進路指導総合推進事業」においては,いじめや暴力行為等生徒指導上の課題について,未然防止,早期発見・早期対応につながる取組や関係機関等と連携した取組等について,試行的な実践を自治体,特定非営利活動法人,民間団体等に対して委託し,成果の普及を図っている。

平成22年3月には生徒指導に関する学校・教員向けの基本書として「生徒指導提要」を作成し,各教育委員会及び学校に配布した。本書では,いじめ,暴力行為等個別の課題ごとの対応の基本的な考え方について解説している。

平成22年度は,専門家や学校現場の関係者による研究会を立ち上げ,教育現場における暴力行為への効果的な対応の在り方についての検討を行い,平成23年7月,「暴力行為のない学校づくりについて(報告書)」をとりまとめ,各教育委員会,学校へ配布した。

警察では,少年相談活動や学校との情報交換等により,いじめの早期把握に努めるとともに,いじめ事案を認知した場合は,積極的かつ的確な事案処理を行っている。

また,プライバシーに配意しつつ,警察が得たいじめの原因,実態等に関する情報を関係者に提供するなどにより,いじめの解決及び再発防止に努めている。

さらに,学校との連携の一層の強化を図るなど,校内暴力事件の早期把握に努め,悪質な事案に厳正に対処するとともに,非行集団の実態解明と集団の解体補導を推進しているほか,非行防止に関する情報交換を行うなど,内容に応じた適切な措置と再発の防止に努めている。

4 子どもの貧困問題への対応

(1) 経済的困難を抱える家族への支援(文部科学省,厚生労働省)

再掲(第2章第1節5経済的支援の充実)

(2) ひとり親家庭への支援(厚生労働省)

母子家庭等対策については,「母子及び寡婦福祉法」(昭39法129)等に基づき,<1>子育て・生活支援策(保育所の優先入所等),<2>就業支援策(知識技能の習得に係る給付金の支給等),<3>養育費の確保策(養育費相談支援センターの設置等),<4>経済的支援策(児童扶養手当の支給等)といった総合的な自立支援策を展開している。

特に,平成24年度までの特別対策として,安心こども基金を活用し,高等技能訓練促進費の支給期間の延長等,母子家庭の母の就業支援策等の充実を図っている。さらに,平成22年8月分から父子家庭の父にも児童扶養手当を支給し(最初の支給時期は平成22年12月),ひとり親家庭の自立支援の拡充を図っている。

(3) 世代を超えた貧困の連鎖防止(内閣府,文部科学省,厚生労働省)

内閣府では,中学校3年生及びその保護者を対象とした「親と子の生活意識に関する調査」を実施し,分析の一つとして「相対的貧困層」に該当していると思われる者とそうでない者との比較も行った。

(4) 状況把握(厚生労働省)

最新の平成22年国民生活基礎調査での相対的貧困率は,全体で16.0%,子どもで15.7%となっている。一方,子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は14.6%であり,そのうち,大人が1人いる世帯の相対的貧困率は50.8%,大人が2人以上いる世帯の相対的貧困率は12.7%となっている。

また,OECDでは,2000年代半ばまでのOECD加盟国の相対的貧困率を公表しているが,これによると,我が国の相対的貧困率はOECD加盟国30か国中27位と高い水準となっており,特に子どもがいる現役世帯のうち大人が1人いる世帯の相対的貧困率が加盟国中最も高くなっている。

こうした指標等から,ひとり親家庭等,大人1人で子どもを養育している家庭において,特に,経済的に困窮しているという実態がうかがえる。

このため,ひとり親家庭に対する支援として,経済的な自立を可能とする就業支援策などの充実・強化を進めているほか,ひとり親家庭の経済的支援の拡充を図るため,平成22年8月から,児童扶養手当の支給対象を父子家庭にも拡大した(同年12月から支給開始)。また,生活保護の母子加算を引き続き支給する。

5 困難を有する子ども・若者の居場所づくり

(1) 非行少年の立ち直り支援

ア 「自立援助ホーム」の充実(厚生労働省)

施設等を退所したが,社会的自立が十分ではない児童等に対し,日常生活上の援助及び就業等の支援を行う「自立援助ホーム」(児童自立生活援助事業)の充実に努めている。

イ 立ち直り支援(警察庁,法務省)

警察では,少年が非行を繰り返さないために,少年本人に対する助言,指導等の補導を継続的に実施しているほか,社会奉仕活動や社会参加活動等の居場所づくりを推進するなど,少年の規範意識の向上及び社会との絆の強化を図る観点から,問題を抱えた少年の立ち直り支援活動を積極的に推進している。

現在,法務省が主唱する“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~等において,全国各地で,街頭での声掛け等の非行防止活動,地域で非行問題等を話し合うミニ集会等を実施・推進しており,今後とも,地域の子ども・若者育成支援に携わる機関や団体が幅広く連携し,地域が一体となって,多様な活動の機会や場所づくりを進めることとしている。

(2) 要保護児童の居場所づくり(厚生労働省)

保護者のいない児童や保護者から適切な監護を受けられない児童等が健やかに成長できるよう,指導・支援の単位の小規模化等を推進し,児童養護施設等における養育の向上に努めている。

また,要保護児童を家庭に迎え入れて養育する「里親制度」についても,里親への委託を推進し,里親家庭への支援体制の充実を図るため,平成20年度から「里親支援機関事業」を実施し,里親と関係機関との連絡調整,里親家庭への訪問支援,里親による相互交流の促進等,里親への子どもの養育に関する支援や里親制度の積極的な普及啓発等を総合的に実施している。さらに,里親制度を普及させるために毎年10月を里親月間とするなど,広く里親制度の周知が図られるよう広報・啓発活動にも努めている。

(3) グループホーム等の居場所づくり(厚生労働省)

児童養護施設等を退所した後に就労・自立を目指す子ども・若者が生活できる自立援助ホームの拡充を図っている。また,児童養護施設の本体施設の支援の下,地域社会の民間住宅を活用して,近隣住民との適切な関係を保持しつつ,家庭的な環境の中で養護するグループホーム(地域小規模児童養護施設)を計画的に整備している。

なお,児童養護施設等を退所し就職をしたものの仕事が続かない子ども・若者や住居等生活の基盤が確保できなくなる子ども・若者に対し,社会的に自立した地域生活を営むことができるよう,退所児童等アフターケア事業によりきめ細かな支援を行っている。

6 外国人等特に配慮が必要な子ども・若者の支援

(1) 外国人の子どもの教育の充実等(内閣府,文部科学省)

我が国では,外国人については就学義務が課されていないが,その保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には,国際人権規約や児童の権利条約等に基づき,無償で受け入れており,教科書の無償配布及び就学援助を含め,日本人と同一の教育を受ける機会を保障している。

文部科学省では,外国人の子どもを公立学校へ受け入れるに当たって,

<1> 外国人児童生徒等に対して日本語指導を行う教員の定数措置

<2> 日本語指導者等に対する研修の実施

<3> 就学ガイドブックの作成・配布

<4> 入学・編入学前後の外国人の子どもへの初期指導教室(プレクラス)の実施など,外国人児童生徒の公立学校への受入体制の整備を支援する補助事業(帰国・外国人児童生徒受入促進事業)

<5> 教員を中心とする関係者が,外国人児童生徒に対して適応指導,日本語指導を行えるような環境づくりを支援することに資する取組(外国人児童生徒の総合的な学習支援事業)

を実施している。

さらに,不就学等になっているブラジル人等の子どもに対し,日本語指導等を行う「虹の架け橋教室」を設け,公立学校等へ円滑に転入できるようにする「定住外国人の子どもの就学支援事業」を実施している。平成23年度は,自治体や大学,特定非営利活動法人等が設置する39教室で事業が行われている。この事業では,子どもを学校へとつなげるだけでなく,地域の行事への参加や社会見学を通じて,子どもたちやその保護者に日本社会と接する機会をも提供し,日本社会への受入れにも大きく寄与している。

(2) 定住外国人の若者の就職の促進等(内閣府,厚生労働省)

日系人を始めとする定住外国人の若者の就職を促進するため,日系人が集住する地域を管轄するハローワークによる日系人就業支援ガイダンスを実施するとともに,ガイダンス出席者を対象とした職業意識啓発指導,職業指導等個別の就職支援を実施している。

また,就職意欲が高い日系人等に対し,早期の就職を実現させるため,担当制による個々の求職者のニーズを踏まえた綿密な支援を行っている。

さらに,定住外国人が多く集住する都道府県において,訓練の受講に当たって一定の日本語能力を有する者に対して,その日本語能力等に配慮した職業訓練を実施している。

(3) 「日系定住外国人施策に関する行動計画」に沿った施策の推進(内閣府)

日本人の子孫として我が国と特別な関係にあることに着目してその受入れが認められ,我が国に在留する,ブラジル人及びペルー人を中心とする日系人及びその家族(以下,「日系定住外国人」という。)について,日本語能力が不十分であること等から再就職が難しく,生活困難な状況に置かれる者が増加したこと等を踏まえ,平成22年8月31日に,内閣府特命担当大臣(定住外国人施策)を議長とし,関係省庁の副大臣等で構成される「日系定住外国人施策推進会議」において,日系定住外国人を日本社会の一員として受け入れるための,国としての体系的・総合的な方針である「日系定住外国人施策に関する基本指針」を取りまとめ,さらに平成23年3月31日には,この「基本指針」に掲げた施策を具体化する「日系定住外国人施策に関する行動計画」を策定した。

現在,日系定住外国人施策は「日本語能力が不十分である者が多い日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れ,社会から排除されないようにする」との基本的な考え方に立って「日系定住外国人施策に関する行動計画」に基づいて,関係省庁の連携の下,日本語学習,子どもの教育,就労,社会生活等の各分野にわたって推進されているところである。

(4) 性同一性障害者等(法務省,文部科学省,各省庁)

法務省の人権擁護機関では,「子どもの人権を守ろう」及び「外国人の人権を尊重しよう」のほか,「性同一性障害を理由とする差別をなくそう」,「性的指向を理由とする差別をなくそう」等を年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会の開催や啓発冊子の配布等による啓発活動を実施している。

文部科学省においては,性同一性障害のある児童生徒への対応について,学級担任や管理職を始めとして,養護教諭,スクールカウンセラー等教職員等が協力して,児童生徒の実情を把握した上で相談に応じるとともに,必要に応じて関係医療機関とも連携するなど,児童生徒の心情に十分配慮した教育相談の徹底を関係者に対して依頼している。

(5) 十代の親への支援(厚生労働省)

妊娠・出産・育児について,医師や助産師等から専門的なアドバイスを受ける機会でもある妊婦健診について,必要な回数(14回程度)の妊婦健診を受けられるよう,平成20年度第2次補正予算等において公費負担の拡充を図り,平成24年度も公費助成を継続することとしたところである。

また,妊娠や出産等の悩みを抱える若者に対して,訪問指導等の母子保健事業を活用した支援や,保健医療施設等の相談者が利用しやすい施設において実施する女性健康支援センター事業を通じ,相談体制の充実を図っている。

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