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3 職業的自立や就労支援の取組

本調査結果からは,10代と20代の若者が将来の生活や就労に様々な不安を持っていること,2人に1人は仕事よりも家庭を優先していること,就労支援について公的相談機関に対する多様なニーズがあること,職場体験・インターンシップに相応の効果が見られることなどが読み取れました。

ここでは,公的相談機関による相談・支援機能を充実させるための取組やキャリア教育・職業教育を充実させるための取組,仕事と生活を調和させるための民間企業・組織の取組などについて紹介するとともに,それらを踏まえ,職業的自立や就労等支援について考えます。

(1)ハローワークによる失業者以外への支援の取組

○新卒応援ハローワーク合同就職面接会

大学院・大学・短大・高専・専修学校の学生で就職活動をしている者や,卒業後就職が決まっていない者(既卒3年以内の卒業生等)の就職をワンストップで支援する専門のハローワークとして,平成22年9月から,全都道府県に新卒応援ハローワークが設置されています。

新卒応援ハローワークでは,地元や全国の求人情報を提供しているほか,仕事探しに当たっての各種相談を行っています。また,ジョブサポーター※1が就職についてのアドバイスをしたり,エントリーシート・履歴書を作成する際の相談や面接を行ったりするほか,臨床心理士による心理的サポートもしています。平成22年度(平成22年9月~平成23年3月末)は延べ22万8952人が利用し,30万485人が就職を決定しています。

そのほか,年間を通じて,就職説明会や各種セミナーを開催しています。例えば,平成23年度に東京ビックサイトで開催された,東京都・東京新卒ハローワーク・ハローワーク八王子新卒応援ハローワークが主催した新規大卒者等合同就職面接会(平成24年2月)には,約1700人の学生等が参加し,約170社の企業と就職面接が行われました。

○大学や短期大学と新卒応援ハローワークの連携

各地で大学等と新卒応援ハローワークとの連携も進められており,次のような事例が報告されています。

(メールマガジンによる学生への求人情報の提供)

中小企業の割合が高い地域においては,企業がホームページを十分に整備しておらず,学生が地元の中小企業の情報を収集することが難しい状況にあった。そこで,ハローワークで受理した新卒者対象求人情報,面接会やセミナー等イベント情報,ハローワークの支援メニューやジョブサポーターのアドバイスなどを掲載したメールマガジンを大学等あてに発信したところ,学生に利用できる求人情報が増え,新卒応援ハローワークの周知が進み,学生が受けられる支援も増え,内定者数も増加した。

(ジョブサポーターの大学常駐による支援)

ある大学で,セミナーや模擬面接会などについて,学生からのニーズがあったが,大学だけではノウハウがなく,また年間スケジュールなどもあり,機動的に対応できない状態であった。そこで,ジョブサポーターが週3回大学の専用の教室に常駐し,定期的なキャリアカウンセリングを行ったほか,年間スケジュールに追加して小規模なセミナーや個別相談会を行い,大学主催の模擬面接に面接官として参加するなどして,学生に対する就職支援を充実させた。

新規大卒者等合同就職面接会

※1 ジョブサポーター:全国の新卒応援ハローワークやハローワークを拠点に,大学や高校などの新卒者・既卒者に対するさまざまな就職支援を専門に行う。

(学内企業説明会の開催)

ある大学で,未内定学生への就職支援のために,大学独自で学内企業説明会を開催するに当たり,広く企業に周知し,参加企業を集めたいと考えていた。そこで,新卒応援ハローワーク内に企業向けの「大学等学校情報紹介コーナー」を設けるなど,企業に対して周知を図るほか,学内企業説明会においては新卒ハローワーク相談ブースを設け,未内定者への就職相談を実施したところ,多くの企業が参加し,内定に結び付いた。

以上のように,ハローワークでは,新卒者等に対しても,様々な支援プログラムを準備し,大学等との連携を進めるなどしてその充実を図っています。就労支援については様々なニーズがあることを踏まえれば,引き続き,ハローワークを始めとする公的相談機関による支援プログラムの整備・充実と学校や企業等との連携を図っていく必要があると言えます。

(2)効果的なキャリア教育を実施するための取組

○小学生の職場見学「ゆめ・仕事ぴったり体験」(千葉県)

千葉県では,「実践,実習,現場体験に重点を置いたキャリア教育の推進」を図ることを目的とし,主に小学校高学年を対象に,児童が企業や役所などで働く人々に密着するという「ゆめ・仕事ぴったり体験」事業を実施しています。具体的には,半日間,小学生が働く大人にぴったりと密着して,仕事に取り組む大人の姿を観察し,大人が仕事にかける情熱を感じとり,あいさつやマナーの大切さを知り,働くこと,将来の夢へのイメージを膨らませるというものです。

仕事をする姿を見学したり,一部を体験したりすることで,その職業の内容について知ること,職場で多くの大人と接し,あいさつや礼儀など社会のルールに触れることで,人間関係の大切さに気付き,人として生きていく上での必要な資質を高めること,大人の仕事を身近に観察したり,大人と会話をしたりする中から,自分の将来の仕事や学校で学ぶことの意味などを考える機会とすること,中学校での職場体験の導入段階の活動とすること,学校・家庭・地域がそれぞれの役割を自覚するとともに,連携して時代を担う子どもたちを育てる場とすること,といったことをねらいとしています。

平成22年度において,90%の小学校が実施しており,実施した小学校を対象としたアンケートによると,「職業や働くことへの関心が高まってきた」(80.4%),「働くことの意味や大切さを意識するようになってきた」(65.9%)との結果となっています。また,千葉県のキャリア教育研究指定実践校による「ゆめ・仕事ぴったり体験」を受けた当該学校の児童に対するアンケート調査結果によると,「仕事をしている人を見てどう思いましたか」という質問に対し,「大変そう」と答えた者が64%,同じく「楽しそう」が33%,「機会があったらまた別の仕事をしている人を見てみたいと思いますか」という質問に対しては,「とても思う」と答えた者が83%,同じく「まあまあ思う」が17%となっています(表6)※2

※2 平成21年度小・中学校キャリア教育推進研究指定校『研究紀要 平成21年度キャリア教育実践研究のまとめ』(山武市立緑海小学校)から抜粋。

表6

酒屋の店員さんに仕事の内容をインタビュー

お父さんの仕事の一部を体験

○労働者としての権利を学び,スキルとネットワークを形成する視点からの授業実践

大阪府では,実践的なキャリア教育・職業教育に力を入れている高校を支援するため,「実践的キャリア教育推進校」事業を実施しています。その事業の指定校の一つである福泉高等学校では,学年ごとに,将来働くことの現実的なイメージをつくる,興味のある職業に至る道筋を理解する,自分の目標に向かって主体的に努力するといった方針を掲げ,キャリア教育に力を入れているところ,中でもユニークな実践として,井沼淳一郎教諭(現:堺東高等学校)による現代社会の授業が挙げられます。

井沼教諭による年間の授業は,授業で学んだスキルを生かして現実社会に参加していくこと,高校時代の様々な人間関係のネットワークを基にして,将来困ったときに助け合えるネットワークにつなげていくことを目指して,「働くこと」「生活すること」を教材化し,調べ学習を中心に,弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスを受けるなどして進められます。

調べ学習のテーマの一つに「アルバイト先から雇用契約書(労働契約書)をもらってみよう。」というものがあります。これは,正社員が前提ではない「働く権利」の学習が必要であるとの視点から設けられたものです。授業では,実際にアルバイト先から雇用契約書をもらってきて,それを素材にグループ討議を行ったり,雇用契約書を出してほしいと依頼したときの状況(なかなか出してくれない雇用主と交渉したり,むしろ勉強になったと雇用主から感謝されたりしたこと)などを発表したりして,専門家からアドバイスを受けながら,働くために必要な知識やスキルなどについて学んでいます。

○キャリア教育推進連携シンポジウム(文部科学省・厚生労働省・経済産業省主催)

平成24年1月26日,東京都千代田区にある有楽町マリオンにおいて,教育関係者・企業関係者等が一堂に会し,キャリア教育推進連携シンポジウムが開催されました。

キャリア教育を推進していくに当たっては,学校等の教育関係者と地域・社会や産業界の関係者が連携・協働し,お互いにそれぞれの役割を認識しながら一体となった取組を進めることが重要です。本シンポジウムは,このような垣根を超えた連携・協働によるキャリア教育の先進事例を世の中に広く共有し,キャリア教育の意義の普及・啓発を行い,その推進を図ることを目的として,文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省の主催により開催されたものです。

シンポジウムでは,アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)の創業者・最高顧問の大竹美喜氏による基調講演「与えられた道を選ぶより選び取る人生を――好きでたまらない仕事を見つけるために」が行われたほか,「みんなで創る子供たちの未来――キャリア教育の実践に当たって」をテーマにしたパネルディスカッション,キャリア教育アワード※3優秀賞を受賞した団体と学校関係者等による事例発表,キャリア教育アワード,文部科学大臣表彰※4,キャリア教育推進連携表彰※5の表彰式が行われました。

(3)仕事と生活の両立を図ることができる職場環境の整備

本調査では,若者の52.9%が仕事よりも家庭を優先するとしているほか,40歳くらいになったときには,親を大切にしている,幸せになっている,子どもを育てていると答える割合が相対的に多くなっていました。一方,「子ども・若者ビジョン」においても,大人社会の在り方の見直しとして,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」の実現に向けた取組を進めるとされています。そこで,ここでは,仕事と生活の調和を進めている企業・組織の取組について紹介します。

岡山県にある社会福祉法人愛誠会(介護老人福祉施設)は,職場に設けた「両立支援委員会」の提案による制度を毎年創設し,離職率を低下させた企業等として,「次世代のための民間運動 ~ワーク・ライフ・バランス推進会議~」※6が主催するワーク・ライフ・バランス大賞優秀賞を受賞しました。

従業員の働きがいや働きやすさを高めるための具体的な取組としては,託児施設を設置したほか,子のバースデイ休暇(中学就学前までの子の誕生日を休日とする)を創設して家族と過ごせる日を増やしたり,ノー残業デイを導入したり,経験に応じて自分を試す機会としてキャリアアップ研修を実施したり,子育て中の職員など約20名からなる両立支援委員会を設置して働きやすい職場をつるくための提言をするといったものです。これらの取組により,一般的に離職が多いと言われている介護施設の中で離職率が全国平均より低く,また,求人が厳しい介護業界の中で市外,県外からの新卒者が就職してきており,人口減少の地域にあって安定した人材の確保につながっています。さらに,働くことに対する職員の自己実現も図られ,職員の対応やサービスに対する利用者の評価も高くなっています。

※3 キャリア教育アワード:先進的な教育支援活動を行う企業・経済団体を経済産業大臣が表彰

※4 文部科学大臣表彰:キャリア教育の充実・発展に関し顕著な功績が認められる教育委員会等を表彰

※5 キャリア教育推進連携表彰:教育関係者と産業界等が連携してキャリア教育に取り組む団体を文部科学省・経済産業省の両省から表彰

※6 次世代のための民間運動 ~ワーク・ライフ・バランス推進会議~別ウインドウで開きます

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