第1部 子どもや若者の状況
第5章 安全と問題行動
第2節 犯罪や虐待による被害
1 犯罪被害
(1)20歳未満の者が被害者となる刑法犯の状況
20歳未満の者が被害者となった刑法犯の認知件数は,近年減少している。
20歳未満の者が被害者となった刑法犯の認知件数は,この10年で減少が続いており,平成24(2012)年には,206,133件となっている。学職別にみても,いずれの学職でも減少傾向にある。(第1-5-5図(1))
年齢別に罪種の構成割合をみると,6歳以上では窃盗がほとんどである一方,5歳以下では暴行・傷害が多い。(第1-5-5図(2))
(2)20歳未満の者の福祉を害する犯罪の被害
福祉犯の被害者となった20歳未満の者はおおむね横ばい。
福祉犯(児童買春・児童ポルノ禁止法,児童福祉法,青少年保護育成条例などの法令の違反)の被害者となった20歳未満の者は,この10年間おおむね7千人台前半で推移してきたが,平成24(2012)年には7千人台を下回り6,808人となった。学職別では,高校生が最も多く,次いで中学生となっている。(第1-5-6図(1))
このうち,児童買春・児童ポルノ禁止法違反についてみると,児童買春事犯の被害者は2000年代半ばから減少してきており,平成24年には471人である。中学生と高校生の被害者が多い。(第1-5-6図(2))
児童ポルノ事犯の被害者は,2000年代後半に急増した後,やや減少しており,平成24年には531人である。検挙を通じて特定された被害者では中学生と高校生が多いが,被害者を特定できない画像について年齢鑑定により事件化した事案の被害者が平成24年は733人おり,これを加えた1,264人でみると,小学生以下(年齢鑑定で可能性ありと認定されたものを含む。)が56.3%(711人)を占めている。児童ポルノ事犯の約半数は低年齢の子どもが被害者であると認められる。(第1-5-6図(3))
出会い系サイトに起因して犯罪被害に遭った18歳未満の者は,2000年代後半に大きく減少した後,この数年は横ばいで推移しており,平成24年には218人となっている。一方,SNSやプロフといったコミュニティサイトに起因して犯罪被害に遭った18歳未満の者は,2000年代後半に増加した後,やや減少しており,平成24年は1,076人となっている。被害者の年齢をみると,全体として16,17歳が多くを占めているが,コミュニティサイトを利用した犯罪被害では13歳以下の者が1割程度いる。(第1-5-7図)
2 児童虐待の状況
(1)児童相談所における相談対応件数
児童虐待に関する相談対応件数は年々増加。身体的虐待が最も多く,ネグレクト,心理的虐待が続く。被虐待児の4割以上が学齢前。
全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は,増加の一途をたどり,平成23(2011)年は59,919件となっている。(第1-5-8図(1))
虐待の内容では,身体的虐待が36.6%と最も多く,次いでネグレクトが31.5%,心理的虐待(29.5%),性的虐待(2.4%)の順となっている。この5年をみると,身体的虐待やネグレクトの割合が低下し,心理的虐待の割合が上昇している。(第1-5-8図(2))
被虐待児の年齢は,3歳未満が19.2%,3歳から学齢前が24.0%と,学齢前の子どもが4割以上を占めており,小学生が36.2%となっている。このことは虐待が早期から始まっていることを示している。また,学齢前が占める割合が若干上昇傾向にある。(第1-5-8図(3))
被虐待児の年齢ごとに相談種別の構成割合をみると,相対的に,心理的虐待やネグレクトは低年齢児に多く,年齢が上がるにつれて身体的虐待や性的虐待が増えている。(第1-5-8図(4))
主たる虐待者をみると,実母が59.2%と最も多く,実父が27.2%と続く。実父の割合が緩やかに上昇している。(第1-5-8図(5))
(2)児童虐待事件検挙件数
警察が検挙した児童虐待事件も,年々増加。身体的虐待と性的虐待が多い。検挙事案全体と比べ死亡事件では,被害者は低年齢,加害者は実母が多い。
警察が検挙した児童虐待事件も増加の一途をたどっており,平成24(2012)年は476人の子どもが被害に遭っている。統計を取り始めた平成11(1999)年以降で最多である。このうち,死亡した子どもは32人である。(第1-5-9図(1))
態様別にみると,身体的虐待が全体の72.9%,性的虐待が23.7%を占め,児童相談所における相談対応件数の内訳と比べ,身体的虐待と性的虐待がかなり多い。(第1-5-9図(2))
被害者の年齢をみると,低年齢児が多い点は児童相談所における相談対応件数と同様であるが,特に死亡事件では4歳以下の幼児が全体の約7割を占めている。(第1-5-9図(3))
加害者と被害者の関係をみると,検挙事案全体では実父が約4割,実母が約2割となっているが,死亡事件では実母が7割を超えている。(第1-5-9図(4))
3 児童養護施設入所児童等の状況
(1)入所・委託児童数
乳児院と児童養護施設は減少傾向,自立援助ホームと里親等委託は増加。
社会的養護を行う施設への入所状況をみると,乳児院23と児童養護施設24ではこのところ入所児童数は減少傾向にある一方,自立援助ホーム25の在籍人員は増加している。平成24(2012)年は,乳児院の入所児童数は3,000人,児童養護施設の入所児童数は29,399人,自立援助ホームの在籍人員は390人となっている。里親やファミリーホーム26への委託児童数は,2000年代に入ってから急増し,平成23(2011)年には4,966人となっている。(第1-5-10図)
(2)養護施設児等の状況
知的障害や発達障害のある者が増えている。
入所・委託児童の年齢をみると,養護施設児は10~14歳が約4割を占め,最も多い。里親委託児では5~9歳が全体の約3割となっている。(第1-5-11図(1))
入所・委託時の年齢は,養護施設児が5.9歳,里親委託児が5.5歳であり,里親委託児の委託時年齢が上昇傾向にある。平均入所・委託期間は,養護施設児が4.6年,里親委託児が3.9年で,里親委託児の平均委託期間が短くなっている。(第1-5-11図(2)(3))
乳児院児,養護施設児,里親委託児の心身の状況をみると,いずれも,知的障害や発達障害などの障害がある者の割合が高まっている。(第1-5-11図(4)~(6))
(3)入所・委託の理由
乳児院や児童養護施設では虐待を理由とした入所が増加。
入所理由別にみると,乳児院では「父母の精神疾患等」(19.1%)と「父母の虐待・酷使」(9.2%)が多い。児童養護施設では「父母の虐待・酷使」(14.4%)と「父母の放任・怠だ」(13.8%)が多い。里親委託では「養育拒否」(16.0%)と「父母の行方不明」(14.3%)が多い。一般的に虐待とされる「放任・怠だ」「虐待・酷使」「棄児」「養育拒否」を合計すると,乳児院では27.2%,児童養護施設では33.1%,里親委託では36.5%と多くの割合を占めており,乳児院や児童養護施設ではその割合が上昇している。(第1-5-12図)