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第2部 子ども・若者育成支援施策の実施状況

第2章 すべての子ども・若者の健やかな成長の支援

第4節 若者の職業的自立,就労等支援

1 就業能力・意欲の習得

(1)勤労観・職業観と職業的自立に必要な能力の形成
ア キャリア教育・職業教育の推進(文部科学省,厚生労働省,経済産業省)

現在の若者が直面する困難として,完全失業率や非正規雇用率の高さ,若年無業者の存在など「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないことが挙げられる。また,職業意識・職業観が未熟なこと,進路意識・目的意識が希薄なまま進学する者の増加など,若者の「社会的・職業的自立」に向けた課題がみられる。これらの原因・背景には,産業構造や就業構造の変化など社会全体を通じた構造的問題が存在しており,社会が一体となった対応が必要である。このような中で,学校教育においては,キャリア教育・職業教育を充実していくことが重要である38

文部科学省,厚生労働省,経済産業省の3省は,学校,地域,産業界が一体となって社会全体でキャリア教育を推進していこうという気運を高めるため,「キャリア教育推進連携シンポジウム」を実施している。平成24(2012)年度は,元中学校校長による基調講演,企業や学校関係者による事例発表,パネルディスカッション,「キャリア教育推進連携表彰」をはじめとする各種表彰の表彰式を行った。(第2-2-9図)

第2-2-9図 キャリア教育連携シンポジウム

文部科学省と経済産業省は,学校関係者や地域社会,産業界といった関係者の連携・協働による取組を表彰する「キャリア教育推進連携表彰」39を実施している。平成24年度は,応募のあった79団体の中から,最優秀賞1団体,優秀賞1団体,審査委員会特別賞1団体,奨励賞5団体を選定した。

文部科学省は,上記のほか,以下の取組を行っている40

  • 全国各地で高校の教員にキャリア教育の意義や重要性について理解を深めてもらうための「キャリア教育推進アシストキャラバン」の実施
  • キャリア教育の趣旨の周知と指導内容の充実を図るため,小学校・中学校・高校において,学校の特色を生かしたキャリア教育の年間指導計画を作成する際に参考となるパンフレットを作成・配布し,文部科学省ホームページにも掲載41
  • 学校や教育委員会におけるキャリア教育に関する研修のための動画コンテンツと資料を文部科学省ホームページで配信42
  • 学校が望む支援と地域・社会や産業界などが提供できる支援をマッチングさせる特設サイト「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」43を平成24年8月から運用(第2-2-10図)
    第2-2-10図 子どもと社会の架け橋となるポータルサイト

平成25(2013)年度には新たに,企業などによる出前授業などの教育活動支援,職場体験・インターンシップ受入れ先の開拓やマッチングを行う「地域キャリア教育支援協議会」の設置を促進し,学校で行うキャリア教育に対して地域密着型の支援が実施できるよう促す。

厚生労働省は,企業で働く者などを講師として中学校や高校に派遣し,職業や産業の実態,働くことの意義,職業生活を子どもに理解させ,考えさせる「キャリア探索プログラム」を実施している。平成24年度には,約3,455校において,約33.5万人の子どもが参加した。また,キャリア教育の企画・運用を担う人材を養成するための講習を行う「キャリア教育専門人材養成事業」を実施している。平成24年度は大学などのキャリアセンターの中核人材を主な対象として講習を実施した。平成25年度は,中学・高校・大学のキャリア教育に携わる者を主な対象として講習を実施する。

経済産業省は,先進的な教育支援活動を行っている企業・団体を表彰する「キャリア教育アワード」を実施している44。また,職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を「社会人基礎力」45として整理し,大学教育を通した育成や評価の取組の普及を図っている(第2-2-11図)。平成24年度は,以下の取組を行っており,地域の産学が互いに協働する教育が浸透し始めている。

第2-2-11図 社会人基礎力
  • 全国のモデル大学におけるゼミや研究室の教育活動を通して体系的な社会人基礎力の育成・評価を実施するプログラムの開発やノウハウブック「社会人基礎力育成の手引き」の制作
  • 「社会人基礎力」の育成事例を学生自身がプレゼンテーションする「社会人基礎力育成グランプリ」の開催(平成24年度で6回目,全国92大学の109チームが参加)
  • 大学教職員や企業人事担当者を対象に社会人基礎力の教育手法などについて発信・意見交換を行う「社会人基礎力育成研修会」の実施(全国6か所)

なお,一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会がキャリア教育コーディネーターの育成・研修や認定を行っている。

COLUMN NO.2
地域の大人とリアルな起業体験「ジュニアエコノミーカレッジ」

1 ジュニアエコノミーカレッジとは

全国の商工会議所や団体などで実施する「ジュニアエコノミーカレッジ」(以下「ジュニエコ」という。)は,「自ら決めて行動できる人材の育成」を目的に,小学校5,6年生を対象として,1チーム5名で模擬株式会社を設立し,計画,仕入れ,製造,販売,決算,納税までの一連のサイクルを体験する「自分力発揮」のプログラムである。「自分力」とは,すでに子どもが持っている様々な知識や経験を指す。

コラム2 子どもたちが銀行役の大人に対しお金の借り入れの相談をする様子

一般の販売実習や模擬店のように実際に売る・買うといった行為をするだけでなく,会社内での役職をチームで自由に設定するとともに,商品や販売の計画を自分たちで立て,会社の元手の確保のための企画への株主からの出資による資本金集めや銀行からのお金の借り入れなども体験するなど,子どもが「自分で決め行動すること」を身につけていけるようプログラム設計に工夫がされている。

この取組は,会津若松商工会議所青年部が平成12年に開始したもので,その後全国に広がった。平成23年に第1回キャリア教育アワード優秀賞を受賞,同年11月には,NPO法人ジュニアエコノミーカレッジが設立され,全国各地域の商工会議所青年部などと連携し,活動を行っている。平成25年現在,全国17地域で開催,これまでに延べ約4,000名がジュニエコに参加している。

2 ジュニアエコノミーカレッジの特徴

ジュニエコは,子どもに「自分力」を発揮してもらうために,「自ら決めるアウトプット」「教えないプログラム」「地元の大人が子どもを育てる」という特徴がある。

  • 自ら決めるアウトプット

    普段学校で「正しい答え」を出すことに慣れている子どもに,「正解のない問題」に取り組んでもらえるようガイドする。子どもが会社名,役職,借入の有無,商品や販売の計画などを自分たちで決め,決めたことに責任を持って会社を運営するような仕掛け作りをしている。

  • 教えないプログラム

    ジュニエコでは,株式会社の仕組み,事業計画書の必要性など,会社を設立・運営するために必要な知識だけしか教えない。その知識を基に,子どもが自分で決める体験をしてもらうのが狙いである。

  • 地元の大人が子どもを育てる

    子どもを教えるのは,各地域で商工業を営む地元の大人たちである。商売のプロが,手加減することなく真剣に子どもに向き合い,リアルな体験をしてもらうべくサポートしていく。保護者にも協力してもらい,子どもが安全に活動できる環境を整えている。

ジュニエコは全国展開の手法についても特徴的な要素を持っている。プログラム実施に必要となるガイドブックを作成し共通化を図る一方で,「現実の商売には正解はない」との観点から,特定の手法を限定してしまうような運営マニュアルは用意していない。代わって,これまでの他地域での取組内容のプラクティスを広めるための「伝える人」による説明会や各地域の事例や悩みを共有する「ジュニエコサミット」を開催している。こうした工夫により,地域独自に「これが自分たちの事業である」と胸を張っていえるような取組を進めてもらうことで,地域それぞれでの自立化が進んでいる。

コラム2 カリキュラムの例
イ インターンシップ(就業体験)の推進(文部科学省,厚生労働省,経済産業省)

職場体験やインターンシップ(就業体験)は,子どもが教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となる。異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること,子どもが自己の職業適性や将来設計について考える機会となり主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること,学校における学習と職業との関係についての子どもの理解を促進し学習意欲を喚起すること,職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることから,極めて高い教育効果が期待される。

文部科学省,厚生労働省,経済産業省は,大学におけるインターンシップの推進に向けて,企業や大学,NPOにおける「インターンシップ推進に当たっての基本的考え方」を見直す。インターンシップ実施に当たって順守すべき事項(労働法規の適用など)やトラブルへの対処方法を整理するとともに,インターンシップの拡充や単位化,大学間連携による実施を推進する。

文部科学省は,平成25(2013)年2月に体系的なキャリア教育・職業教育の推進に向けたインターンシップの更なる充実に関する調査研究協力者会議46を立ち上げ,大学などにおけるインターンシップの実施実態の把握と検証,キャリア教育・職業教育におけるインターンシップの位置付けの明確化,プログラムの質的向上や参加学生数の増加など質的・量的充実に向けた取組などの検討を行っている。また,前述の「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」などにより,キャリア教育の中核的な取組の一つとして,学校における職場体験やインターンシップの普及・促進に努めている。平成25年度には,前述の「地域キャリア教育支援協議会」によるインターン受入れ先の開拓とマッチングの促進も行う。

経済産業省は,地域における起業や中堅中小企業の中核的な人材の育成に教育的な効果が高い長期インターンシップのひな形の作成や,長期インターンシップを実施する大学や企業へのヒアリングを踏まえたノウハウブックの策定に取り組んだ。

ウ 女性若年層に対する啓発(内閣府,厚生労働省,文部科学省,経済産業省)

内閣府は,女性若年層に対して,女性の進出が遅れている理工系などの分野に関する情報提供を行っている。また,平成24(2012)年12月,女性の活躍促進や積極的改善措置(ポジティブ・アクション)に対する理解を深めるため,「働こう! なでしこ学生サミット」47を開催し,企業における女性の活躍促進に関する課題について女子学生が解決策の提案・プレゼンテーションを行う「学生コンペティション」を行った。

厚生労働省は,女子学生が的確に職業や進路を選択するために自らの将来を多角的に考える契機となる資料を作成し,高校や大学を通じて配布している。また,文部科学省と連携し,就職先を選択する際には「ポジティブ・アクション応援サイト」48などを参考にして各企業の女性の活躍状況やポジティブ・アクションの取組も考慮するよう,大学や高等専門学校を通じて,学生に対する啓発を図っている。

経済産業省は,平成24年度から,育児などで一度退職し再就職を希望する女性などに対して職場経験のブランクを埋める機会を提供するため,中小企業・小規模事業者が実施する職場実習を支援する「中小企業新戦力発掘プロジェクト」を実施している。

独立行政法人国立女性教育会館49は,多様なキャリア形成を支援するための研修や情報提供システムの運用に加えて,大学と連携し,女子学生を対象とし,就業も含めた女性としての生涯(ライフサイクル)形成の考え方を学ぶ研修を行っている。

(2)能力開発(厚生労働省,文部科学省)

国と都道府県は,職業に必要な知識・技能を習得させることにより若者の就職を支援するため,公共職業能力開発施設のほか,大学や短大を含む多様な民間教育訓練機関も活用しつつ,公共職業訓練を実施している。

また,求職者支援制度50により,雇用保険を受給できない若者などに対して,職業訓練を実施しつつ,訓練期間中の生活を支援するための給付金を支給し,ハローワークにおけるきめ細かな就職支援を行っている(第2-2-12図)。平成23(2011)年10月から平成25(2013)年3月末までに求職者支援訓練の受講を開始したのは約15万人である。平成23年度中に開始し,平成24(2012)年9月末までに終了したコースの訓練修了者の訓練終了3か月後の就職状況は以下のとおりである。

第2-2-12図 求職者支援制度
  • 多くの職種に共通する基本的能力を習得するための「基礎コース」の就職率は73.4%,就職者のうち雇用期間の定めがない就職者の割合は64.2%
  • 特定の職種の職務に必要な実践的な能力を一括して習得するための「実践コース」の就職率は75.1%,就職者のうち雇用期間の定めがない就職者の割合は67.7%

厚生労働省は,以下の取組によりジョブ・カード制度51を推進し,フリーターなど正社員経験の少ない者を含めた求職者の安定的な雇用への移行を促進している。(第2-2-13図)

  • ジョブ・カードを活用した,きめ細かなキャリア・コンサルティング
  • 企業実習と座学を組み合わせた訓練を含む実践的な職業訓練(職業能力形成プログラム)の機会の提供
  • 企業や訓練実施機関からの能力評価や職務経歴などのジョブ・カードへの取りまとめ

平成24年度にはジョブ・カード取得者数が約80万人に達している。また,工業高校や職業訓練校で技能を学ぶ学生や訓練生を対象として,若年技能者の人材育成を目的とした3級技能検定を毎年実施している。今般,受検機会の拡大を図るため,公共職業訓練と認定職業訓練の訓練時間の制限を廃止するなど受検資格を緩和した。こうした取組を通じて,若年者の技能修得意欲を向上させるとともに,教育訓練の成果を社会一般の評価として明確化するなど,能力を軸とした若年労働市場の基盤整備を図っている。

文部科学省は,産業界のニーズを踏まえた中核的専門人材養成を推進していく観点から,各成長分野において中核的役割を果たす人材養成の取組を先導する広域的な産学官コンソーシアムを組織化し,社会人や大学生,専門学校生が就労やキャリアアップに必要な知識・技術・技能を習得するための学習システムの構築を図っている。

2 就労等支援の充実

(1)高校生等に対する就職支援(文部科学省,厚生労働省)

文部科学省は,都道府県教育委員会などに対し,都道府県労働局と連携した一層の求人開拓と未就職卒業者への配慮を依頼するとともに,経済団体に対しても,新規高校卒業者の求人枠の維持・拡大や求人秩序の確立,適正な採用選考の実施を要請している。また,進路指導主事などと連携して就職を希望する生徒に就職相談や求人企業の開拓を行う「高等学校就職支援教員」(ジョブ・サポート・ティーチャー)を配置する経費が地方財政措置されており,高校で活用されている。

厚生労働省は,ジョブサポーター52を活用し,在学中からの働く意義や職業生活についての講習や,地元企業を活用した高校内企業説明会,求人情報の提供,職業適性検査や各種ガイダンス・セミナー,求人開拓,未内定者に対する一貫した個別支援(職業相談,応募先の選定,面接指導など)を,学校と一体となって実施している。

(2)大学生等に対する就職支援等
ア 学生に対する就職支援(文部科学省,厚生労働省,経済産業省)

文部科学省は,学生の厳しい雇用情勢を受け,関係府省と連携しながら,大学のキャリアカウンセラーとハローワークのジョブサポーターとの連携の促進などにより,就職支援体制を強化している。また,教育課程内外にわたり就業力の育成を目指して各大学が行う取組などを総合的に支援している。

厚生労働省は,

  • 大学院・大学・短大・高専・専修学校などの学生や卒業後未就職の者を専門に支援する「新卒応援ハローワーク」53を全国に設置(平成25(2013)年4月1日現在,57か所)し,広域的な求人情報の提供や,職業紹介,中小企業とのマッチング,求人開拓,就職支援セミナー・面接会の実施を行っている。ジョブサポーターを活用し,就職までの一貫した担当者制による個別支援(求人情報の提供,就職活動の進め方,エントリーシートの添削,面接指導など)や臨床心理士による心理的サポートを行っている。新卒応援ハローワークの支援により,平成24(2012)年度は延べ約71万人が利用し,約9万人の就職が決定した。(第2-2-14図)
  • 1人でも多くの新卒者・既卒者に「新卒応援ハローワーク」やジョブサポーターを知ってもらうため,学生向け・第二新卒向けの就職情報ポータルサイトを運営する民間企業の協力により,新規学校卒業予定者などに対する広報を実施している54
  • 卒業後3年以内の既卒者の就職を促進するため,雇用対策法に基づく「青少年雇用機会確保指針」の周知を進めている。
  • 文部科学省と経済産業省と連携し,未内定の学生・生徒が1人でも多く卒業までに就職できるよう,平成25年1~3月までを集中支援期間とし,「未内定就活生への集中支援2013」として,新卒応援ハローワークによる支援や,就職面接会,中小企業とのマッチングなどを集中的に実施した55。また,4~6月までを未就職卒業生に対する集中支援期間とし,「未就職卒業生への集中支援2013」として同様の支援を集中的に実施している56

平成25年度は,ジョブサポーターの全校担当制や,大学などへのジョブサポーターの相談窓口設置・出張相談の強化を図るとともに,中小企業団体・ハローワーク・大学などの間の連携強化・情報共有化などにより,関係府省一体となって新卒者・既卒者に対する就職支援を促進する。また,中小企業とのマッチングを強化するため,若者の採用・育成に積極的な「若者応援企業」の周知により,若者の就職支援を推進する。

経済産業省は,新卒者と既卒3年以内の未就職者に対し,中小企業・小規模事業者の事業現場で働く上で必要な技能・技術・ノウハウを習得する機会を提供するため,中小企業・小規模事業者が実施する職場実習を支援する「新卒者就職応援プロジェクト」を実施している。また,地域の中小企業支援機関や大学などが連携し,中小企業と学生との日常的に顔が見える関係構築から両者のマッチング,新卒者などの採用・定着までを一貫して支援する「地域中小企業の人材確保・定着支援事業」を実施している。平成24年度からは,両事業とも全国的に大規模に展開している。

イ 秩序ある就職・採用活動への取組(文部科学省)

大学などの卒業予定者の就職採用活動を,学生の学修に支障なく秩序ある形で行われるように,かつ,学生が適切な職業を選択するための公平な機会が得られるようにするという観点から,大学側が「大学,短期大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職について(申合せ)」を,企業側が「新規学卒者の採用・選考に関する企業の倫理憲章」をそれぞれ定め,双方が大学や企業へ十分周知し,尊重する形となっている。

文部科学省は,両者の合意を尊重し,学生の就職・採用活動が公平・公正かつ秩序ある形で行われるよう,その趣旨を周知徹底するための通知を各大学などに対して行っている。

(3)職業的自立に向けての支援
ア ジョブカフェにおける支援(厚生労働省)

厚生労働省は,都道府県が主体的に設置するジョブカフェ57(「若年者のためのワンストップサービスセンター」。平成25(2013)年4月現在46都道府県に設置。)において,企業説明会や各種セミナーを民間団体に委託して実施している。また,都道府県からの要望に応じ,ジョブカフェにハローワークを併設(平成25年4月現在40都道府県)し,若者を対象とした職業相談・職業紹介を行っている。平成24年度(平成24年4月~平成25年2月末時点)のサービス利用者数は約196万人,就職者数は約12万人に上る。

イ ハローワークにおける支援(厚生労働省)

厚生労働省は,フリーターなどが安定した職に就くことができるよう,ハローワークにおいて,支援対象者一人一人の課題に応じて,正規雇用化に向けた一貫したきめ細かな支援を実施している。平成24(2012)年度からは,特にフリーターの多い地域には支援拠点として,平成24年10月から東京都・愛知県・大阪府の3か所に「わかものハローワーク」を,また,4月から県庁所在地を中心にすべての都道府県に「わかもの支援コーナー」(50か所)を,そのほか「わかもの支援窓口」(161か所)を設置し,正規雇用化の支援を強化した58。これらの支援拠点では,

  • 求職者の希望職種やスキルを基に,個人の状況に応じたプランの作成
  • 担当者制による個別の職業相談・照会 
  • 求職者向け各種セミナー

などが実施されている。

ウ 若年者等トライアル雇用制度の活用による就職促進(厚生労働省)

厚生労働省は,「若年者等トライアル雇用」59を推進している。この制度は,職業経験や技能,知識の不足により就職が困難な若年者など(45歳未満)を,原則3か月試行雇用することにより,業務遂行に当たっての適性や能力を見極めるとともに求職者と求人者の相互理解を促進し,正規雇用への移行を図るものである。実施する事業主に対し,「試行雇用奨励金」(1人につき月4万円,最長3か月)を支給している。(第2-2-15図)

第2-2-15図 トライアル雇用制度
エ 若者の農林漁業への就業促進(農林水産省)

農林水産省は,若者が安心して農林漁業に就業していけるよう,資金の無利子貸付けや情報提供,就業相談会,作業実態や就労条件を理解してもらうためのトライアル雇用,各種研修を推進している。

オ 勤労青少年への福祉対策(厚生労働省)

厚生労働省は,「勤労青少年福祉法」(昭45法98)に基づき,勤労青少年の福祉対策を推進している。この法律に基づく「第9次勤労青少年福祉対策基本方針」(平成23(2012)~27(2015)年度)では,若者のより充実した職業生涯の実現に向け,その基盤となるキャリア形成の促進,自立を支える社会ネットワークの構築を目指すこととしている。また,働く若者の社会人・職業人としての自主的な努力を励ますために設けられている「勤労青少年の日」(毎年7月の第3土曜日)を中心とした啓発活動を行っている。

(4)起業支援(経済産業省)

経済産業省は,女性・若者/シニア起業家支援資金制度により,新規開業しておおむね5年以内の若者に対して,株式会社日本政策金融公庫による低利融資を実施している。

COLUMN NO.3
若者・女性の活躍推進に向けた取組 若者・女性活躍推進フォーラム

日本経済再生のためには産業競争力強化と,それを支える雇用や人材などに関する対応強化を車の両輪として進めることが不可欠であり,特に若年者や女性の雇用問題などに対してしっかりとした処方箋を提示していくことが喫緊の課題となっている。こうした課題認識の下,平成25年1月,日本経済再生本部において,安部内閣総理大臣から若者・女性の雇用に関わっている関係者の声を直接聞き,対応策を検討する旨の方針が示された。

これを踏まえ,「若者・女性活躍推進フォーラム」が開催されることとなり,地方開催を含めた有識者などからのヒアリングが行われ,課題の抽出・整理が進められた。

この検討の成果として,まず,平成25年4月19日の経済界との意見交換会において,

①平成27年卒業・修了予定者から就職活動時期を後ろ倒しすること

②子供が3歳になるまでは,希望する場合には,男女とも育児休業や短時間勤務を取得できるようにすること

③「2020年30%」の政府目標の達成に向けて,全上場企業において積極的に役員・管理職に女性を登用し,まずは,役員に一人は女性を登用すること

について,安倍内閣総理大臣から経済界に対して要請が行われ,経済界からは要請を踏まえて対応する旨の回答を得た。

他方,政府としては,

①に関連して,キャリア教育やインターンシップへの支援,中小企業の魅力を学生に発信する取組の強化

②に関連して,育児休業中・復職後の能力アップに取り組む企業への助成制度の創設や中小企業における育休復帰支援プラン(仮称)の策定支援など

③に関連して,助成金制度や税制上の措置の活用を通じた,女性の活躍促進や仕事と子育てなどの両立支援に取り組む企業の支援,好事例の顕彰の拡充など

を進めることとした。

また,フォーラムで提起された他の課題についても検討を進め,5月に若者・女性の活躍を積極的に推進するための具体的方策を盛り込んだ提言を取りまとめた(平成25年5月19日,第8回若者・女性活躍推進フォーラム)。本提言の柱は以下のようになっており,「成長戦略」と「骨太の方針2013」に盛り込まれることとなっている。

コラム3 平成25年2月13日 第1回若者・女性活躍推進フォーラム
コラム3 若者の活躍推進策

38 平成23(2011)年1月の中央教育審議会の答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」でこのような指摘がなされている。この答申では,①幼児期の教育から高等教育に至るまでの体系的なキャリア教育の推進,②実践的な職業教育の重視と職業教育の意義の再評価,③生涯学習の観点に立ったキャリア形成支援(生涯学習機会の充実,中途退学者などの支援)という3つの基本的方向性に沿った具体的な方策が提言されている。
39 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1312382.htm,http://www.meti.go.jp/press/2012/01/20130131001/20130131001.html
40 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm
41 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1312372.htm
42 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1315412.htm
43 http://kakehashi.mext.go.jp/
44 http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/career-education/index.html
45 http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.htm
46 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/055/index.htm
47 http://www.gender.go.jp/public/event/2012/nadeshiko.html
48 http://www.positiveaction.jp/pa/
49 http://www.nwec.jp/
50 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html
51 http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/job_card01/
52 平成24(2012)年度は,2,300人を全国に配置し,ジョブサポーターの支援により高卒と大卒等を合わせて約19万人の就職が決定した。
53 http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/05.html
54 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002svpl-att/2r9852000002svr2.pdf
55 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002sw3r.html
56 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xcty-att/2r9852000002xcvf.pdf
57 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha/jobcafe.html
58 窓口の所在地などは厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002k76u.html)を参照。
59 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/pdf/c02-1-youken2.pdf
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