[目次]  [戻る]  [次へ]

第2部 子ども・若者育成支援施策の実施状況

第3章 困難を有する子ども・若者やその家族の支援

第1節 困難な状況ごとの取組

1 ニート,ひきこもり,不登校の子ども・若者への支援等

(1)社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者を地域において支援するための取組(内閣府,文部科学省,厚生労働省,各省庁)

「子ども・若者育成支援推進法」に基づき,ニートやひきこもり,不登校といった社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者に対し,教育,福祉,保健,医療,矯正,更生保護,雇用などの様々な分野の関係機関がネットワークを形成し,それぞれの専門性を生かして発達段階に応じた支援を行っていくことや,社会生活を円滑に営むことができるようにするために,関係機関の施設はもとより,子どもや若者の住居その他の適切な場所において,必要な相談や助言,指導を行うことが必要とされている。

内閣府は,

  • 子ども・若者支援地域協議会60の設置の促進を図る,「子ども・若者支援地域協議会体制整備事業」を実施している。
  • 困難を有する子どもや若者に対する支援に携わる人材の養成を図るため,訪問支援(アウトリーチ)研修をはじめとする各種研修を実施している61。公的機関において相談業務に当たる職員に対して,総合的に支援するための法的仕組みや関係機関の役割などについて理解を深めることを目的とした研修を実施している。民間団体において相談業務に当たる職員に対しても,困難を有する子どもや若者の特性やその家族についての理解,支援方策についての学びを深めるとともに,継続した支援を行うための組織運営についても実践的に学ぶことを目的とした研修を実施している。
  • 支援に関する調査研究を行っている。平成24(2012)年度は,個別ケース支援の運営を充実させるための,複雑な背景要因を持った若者に対する支援の事例分析などを実施した。平成25(2013)年度は,この結果を踏まえ,今後の支援団体などの取組を充実させるための調査研究を実施する。

国立青少年教育施設では,ニートやひきこもり,不登校の子どもや若者に対する各種事業が実施されている。

(2)ニート等の若者への支援(厚生労働省)

厚生労働省は,ニートなどの若者の職業的自立を支援するため,各地域に「地域若者サポートステーション」(以下「サポステ」という。)62の設置を促進している。サポステでは,以下のようなサービスの多くを無料で受けることができる。(第2-3-1図)

第2-3-1図 地域若者サポートステーションとネットワークによる支援の流れ
  • 若者支援の専門家(キャリア・コンサルタントなど)による,一人一人に適切な支援メニューの作成や,必要に応じて外部の適切な支援機関や団体の紹介
  • コミュニケーションスキルアップのためのグループワークや面接訓練といったプログラム
  • 職場見学や職場体験
  • 保護者を対象としたセミナーや個別相談

平成24(2012)年度補正予算により,サポステ拡充を緊急人材育成・就職支援基金の事業として追加した。平成25(2013)年度末までに,設置拠点を拡充(160か所,前年度比44か所増)するとともに,学校などとの新たなネットワークの構築や積極的なアウトリーチ(訪問支援),「貧困の連鎖」の防止の観点から高校中退者に対する学び直しの支援などを行う。また,合宿形式を含む生活面のサポートと職場実習や資格取得支援を集中的に実施し,自信の回復や就職に必要な基礎的能力の獲得,基礎的資格の取得を図る「若年無業者等集中訓練プログラム」を実施する(第2-3-2図)。平成25年2月にとりまとめられた『地域若者サポートステーション』事業の今後のあり方に関する検討会報告書を踏まえ,若者支援のネットワークの中心として寄せられる期待に応えられるよう,拠点数や体制を強化していく(第2-3-3図)。

第2-3-2図 地域若者サポートステーション事業(平成24年度補正予算)
第2-3-3図 今後のサポステ機能のイメージ
(3)ひきこもりへの支援(厚生労働省)

いわゆる「ひきこもり」の相談・支援は,精神保健福祉センターや保健所,児童相談所において,医師や保健師,精神保健福祉士が,本人や家族に対して行っている。

厚生労働省は,相談業務をより適切に実施するため,支援に当たる専門機関の職員などに向けた「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」を関係機関に配布している。また,医療・保健・福祉・教育・雇用といった分野の関係機関と連携の下でひきこもり専門相談窓口としての機能を担う「ひきこもり地域支援センター」の整備を推進している(第2-3-4図)。「ひきこもり地域支援センター」は,平成25(2013)年2月現在,22道府県と16政令市に設置されている63。平成25年度には新たに,地域に潜在するひきこもりを早期に発見し,ひきこもりを抱える家族や本人に対するきめ細やかな支援が可能となるよう,継続的な訪問支援などを行う「ひきこもりサポーター」を都道府県・指定都市が養成し,市町村が家族や本人へサポーターを派遣する事業を行う。

第2-3-4図 ひきこもり地域支援センターの概要
(4)不登校の子ども・若者への支援(文部科学省)

不登校への対応については,未然防止や早期発見・早期対応の取組や,学校が家庭・地域・関係機関と連携した取組に加え,子どもの悩みや不安を受け止めて相談に当たる相談体制の整備が重要である。

文部科学省は,不登校の未然防止や不登校児への必要な支援の在り方を検討するための基礎資料として,不登校経験者の状況を把握するための追跡調査を実施している。また,平成24(2012)年度には,不登校などの未然防止や早期発見・早期対応につながる取組,不登校などに対応できる関係機関同士の連携した取組を推進するための試行的な実践を地方公共団体や民間団体などに委託し,成果の普及を図った。

なお,不登校の子どもへの相談・指導を行うために各都道府県・市町村教育委員会が設置している教育支援センター(適応指導教室)では,不登校の子どもが在籍する学校とも連絡をとりながら,子どもの実情に応じた学習指導を行っている。(学校内外での相談体制の整備については,第2部第2章第3節2「相談体制の充実」と次項を参照。)

(5)心の問題への対応(文部科学省,厚生労働省)

文部科学省は,教育相談体制の一層の充実を図るため,養護教諭と関係教職員による健康相談や保健指導,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置拡充を推進している。(家庭教育支援については,第2部第4章第1節1「家庭,学校及び地域の相互の関係の再構築」を参照。)

厚生労働省は,こころの不調・病気に関する説明や各種支援サービスの紹介など,治療や生活に役立つ情報を分かりやすくまとめた「みんなのメンタルヘルス総合サイト」64と,10代・20代とそれを取り巻く人々(家族・教育職)を対象に本人や周囲が心の不調に気づいたときにどうするかなど分かりやすく紹介する「こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~」65の2つのウェブサイトを厚生労働省ホームページに設置している。(学校内外の相談体制については,第2部第2章第3節2「相談体制の充実」を参照。)

(6)高校中途退学者への支援(内閣府,文部科学省,厚生労働省)

内閣府は,平成24(2012)年度に,高校中退者を含めた困難を有する若者などの家族を対象とした意識調査を実施した。

文部科学省は,「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」66の中で,高校中退の状況を把握し,公表している。

厚生労働省は,サポステ・学校連携推進事業により,サポステと学校,ハローワークが高校中退者の情報を共有し,支援が必要な者に対しサポステが積極的に訪問支援(アウトリーチ)を行うなど,きめ細かな支援を実施している。

2 障害のある子ども・若者の支援

(1)障害のある子ども・若者の支援
ア 特別支援教育の推進(文部科学省)

障害のある子どもの能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し社会参加するために必要な力を培うことが必要である。一方で,近年,子どもの障害の重度・重複化,多様化が進んでいる。

特別支援学校や小学校・中学校の特別支援学級では,一人一人の障害の状態などに応じ,特別の教育課程や少人数の学級編制の下,個別の指導計画や教育支援計画が作成され,特別な配慮をもって作成された教科書,専門的な知識・経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備を活用して,指導が行われている。通学が困難な子どもに対する訪問教育も行われている。通常の学級では,通級による指導67のほか,習熟度別指導・少人数指導といった障害に配慮した指導方法や支援員の活用など,一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われている。

文部科学省は,中央教育審議会初等中等教育分科会が平成24(2012)年7月に取りまとめた提言68も踏まえ,特別支援教育を推進するための以下のような取組を行っている69

  • 幼稚園,小・中学校,高校,特別支援学校といったすべての学校において,発達障害を含め障害のある子どもに対する学校の支援体制を整備するため,関係機関との連携や専門家チームによる支援に要する経費の一部補助
  • 公立の幼稚園・小学校・中学校・高校に発達障害を含む障害のある子どもをサポートする「特別支援教育支援員」を配置するための経費の地方財政措置や,私立学校が障害に適応した教育を実施する上で必要とする設備を整備する経費の一部補助
  • 「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(平20法81)に基づき,「民間組織・支援技術を活用した特別支援教育研究事業」において,子どもの障害特性,発達段階,教科の特性などに応じた教科用特定図書や教材,その支援技術に関する研究や普及推進
  • 特別支援学校教員に対する専門的な研修や,保護者を中心とする様々な人々が理解を深めるための取組

平成25(2013)年度には新たに,改正障害者基本法の趣旨を踏まえ,インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として,早期支援コーディネーターの配置による早期からの教育相談・支援体制の構築,合理的配慮協力員の配置による学校における合理的配慮の充実,インクルーシブ教育システム構築に関するデータベースの整備などを行う。

イ 特別支援教育への就学支援(文部科学省)

文部科学省と地方公共団体は,特別支援学校や特別支援学級への就学の特殊事情にかんがみ,これらの学校に就学する子どもの保護者などの経済的負担を軽減するため,保護者の経済的負担能力に応じて就学奨励費を支給している。

ウ 障害のある子どもと障害のない子どもや地域の人々との交流・共同学習(文部科学省)

障害のある子どもと障害のない子どもや地域の人々が活動を共にすることは,子どもの経験を広め,積極的な態度を養い,豊かな人間性や社会性を育む上で意義があるばかりでなく,地域の人々が障害のある子どもに対する正しい理解と認識を深めるためにも有意義である。

文部科学省は,こうした交流や共同学習が一層推進されるよう,「交流及び共同学習事例集」の発行や「交流及び共同学習ガイド」70のホームページへの掲載を行っている。また,特別支援学校に在籍する子どもの居住する地域の小・中学校との交流や共同学習の推進に関する実践研究に取り組んでいる。

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所71は,小・中学校の教員などを対象に「交流及び共同学習推進指導者研究協議会」を開催し,交流と共同学習の具体的な方策の伝達・普及を図っている。

エ 障害の特性に配慮した適切な福祉サービスの提供(厚生労働省)

障害のある子どもや若者が地域で安心して生活ができるよう,「児童福祉法」(昭22法146)と「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17法123)(以下「障害者総合支援法」という。)に基づき,市町村などが障害児通所支援やホームヘルプといった必要な福祉サービスを提供している。

「障害者自立支援法等の一部改正法」が平成24年4月から施行され,障害のある子どもに対し,障害種別で分かれていた障害児施設の一元化などを通じて,身近な地域で適切な支援が行われるようにするとともに,年齢や障害特性に応じた専門的な支援が提供されるよう質の担保が図られている。

「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」(平24法51)により,他の人々との共生や社会的障壁の除去などを「障害者総合支援法」の基本理念として新たに掲げるとともに,制度の谷間のない支援を提供するため障害者の定義に難病などを加え,障害福祉サービスなどの対象としている。

(2)発達障害のある子ども・若者の支援
ア 「発達障害者支援センター」72を核とした地域支援体制の強化(厚生労働省)

厚生労働省は,「発達障害者支援法」(平16法167)に基づき,地域において医療・保健・福祉・教育・雇用といった分野の関係者と連携し,発達障害者やその家族に対する相談支援を推進している73。具体的には,

  • 発達障害者支援体制整備事業により,発達障害者やその家族に対し,ライフステージを通じた一貫した支援体制の強化を図るため,都道府県・指定都市で,ペアレントメンター74の養成とその活動を調整する人の配置,アセスメントツール75の導入を促進する研修会などを実施している。
  • 巡回支援専門員整備事業により,発達障害に関して知識を有する専門員が保育所など子どもや親が集まる施設・場を巡回し,施設の職員や親に対し障害の早期発見・早期対応のための助言などの支援を行っている。平成24(2012)年度は実施市町村を拡大した。
  • 発達障害者支援開発事業により,先駆的な取組を通じて発達障害者への有効な支援手法を開発・確立するとともに,先進的な市町村の取組内容をマニュアルやプログラムとして取りまとめ,全国の取組の促進を図っている。
  • 全国の発達障害者支援センターの中央拠点としての役割を担う「発達障害情報・支援センター」76における情報発信や支援手法の普及を図っている。

COLUMN NO.4
発達障害者支援センターにおける支援

発達障害は,脳機能の発達が関係する生まれつきの障害で,症状も多様である。

「発達障害者支援センター」は,都道府県・政令指定都市に設置され,発達障害者やその家族,支援者や支援機関への助言に加えて,市町村の支援体制の構築,研修や啓発などを担う発達障害支援の中核的機関である。

コラム4 埼玉県発達障害者支援センター「まほろば」

ここでは,埼玉県発達障害者支援センターが行っている多岐にわたる支援のうち,幼児期・学齢期の早期支援と,青年期の就労支援について紹介する。埼玉県発達障害者支援センターの平成23(2011)年度の相談者の実人数は1,194人であり,特に,青年期の相談件数の増加が目立っている。

1 幼児期・学齢期の早期支援

幼児期・学童期では,家族をはじめとして,子どもの健診を行う保健センター,子どもが通う保育所や学校などからも相談や支援の依頼を受ける。また,特に幼児期については,障害児の通う児童発達支援センターなどと協力して,保育所などの巡回支援や保育士などへの研修を行っている。巡回支援では,依頼に応じて県内の保育所や幼稚園などを訪問し,発達障害の疑いのある子どもの特徴の捉え方や関わり方の工夫などを担当者と共に考え,早期支援に役立てている。早期支援を行うに当たっては,市町村の担当者や保健師などと共に,役割の分担を明確にした上で,連続性を大切にしたネットワークによる支援を行っている。

幼児期・学童期は子どもの健やかな発達を支援することが大切であるとともに,家族との安定した相互的な関わりを持つことも重要であるため,家族をはじめ,直接支援に関わる大人への理解の促進を大切にしている。

2 青年期の就労支援

青年期になると,本人や家族,障害福祉サービス事業所,就労支援機関,市町村の相談機関などから「働くこと」についての相談を受ける。知的障害などのために障害福祉サービス事業所で福祉就労している方の中でも特に支援の難しい方や,専門学校や大学を卒業するにあたりはじめて発達障害の診断を受け就職を希望する方など,相談する方の状況は様々だが,特に最近では後者のような相談が増えてきている。そこで,センターでは独自の取組として,コミュニケーションが苦手であるなど発達障害の特性が強く,働く意欲はあるが具体的な就労の進め方が分からないという方を対象に,「就労支援準備アセスメント」を平成23年度から始めた。このアセスメントは,模擬的な作業体験や自分を振り返る質問への回答などから,支援の必要度や,支援や訓練の方法などを見つけるものである。さらに,必要に応じて障害福祉サービス事業所や,障害者職業センター,障害者就業・生活支援センターなどの就労支援機関と個別支援会議を開催し,協力・連携している。

発達障害者や家族を支えるためには,幼児期から青年期まで様々な機関の協力体制が必要である。センターでは,市町村体制の整備や支援機関事業への協力などのバックアップ支援を実施し,地域における各機関との協力・連携をさらに進めて,発達障害のある方への支援の中核としての活動を続けている。

コラム4 支援のための体制
イ 学校における支援体制の整備(文部科学省)

近年,小学校や中学校の通常の学級に在籍している発達障害のある子どもへの教育的支援の必要性が高まっている。

文部科学省は,発達障害を含む障害のある子どもへの学校における支援体制の整備を推進している(詳細は,前項の「(1)障害のある子ども・若者の支援」を参照。)。また,平成25(2013)年度には新たに,発達障害に関する教職員の専門性向上を図るためのセミナー開催や育成プログラム開発を行う。

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の「発達障害教育情報センター」77は,発達障害のある子どもへの教育的支援について広く理解と協力を得るため,以下の取組を行っている。

  • 学校の教職員や保護者に対し,厚生労働省とも連携しながら,発達障害に関する正しい理解や支援に関する様々な教育情報,教員研修用の講座をインターネットを通じて提供
  • 学校における支援をより充実するため,教職員に対する各種研修
  • 発達障害のある子どもへの支援について指導的な立場にある教職員に対し,専門知識を習得させ,その技能を高めるため,発達障害教育指導者研究協議会を各都道府県で開催
(3)障害者に対する就労支援等(厚生労働省,文部科学省)

「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭35法123)は,民間企業などに対し,雇用する労働者の一定割合(障害者雇用率)に相当する数以上の障害者を雇用することを義務づけている(障害者雇用率制度)。平成25(2013)年4月からは,民間企業の障害者の法定雇用率を2.0%(従来1.8%)に引き上げ,更なる障害者雇用の促進を図っている。

厚生労働省は,障害者雇用率の達成に向け,ハローワークなどにおいて厳正な達成指導を実施しているほか,以下の取組を行っている。

  • ハローワークが中心となり,地域の福祉施設や特別支援学校といった関係機関と連携し,就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」
  • 「障害者総合支援法」に基づく,一般就労への移行を支援する「就労移行支援」と,一般就労が困難な者に対して働く場を提供する「就労継続支援」
  • 近年急増する精神障害や発達障害がある求職者について,障害特性に応じたきめ細かな就労支援
  • 発達障害などによりコミュニケーション能力や対人関係に困難を抱えている若者に対し,「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」において,ハローワークに配置している専門の相談員によるきめ細かな個別相談や支援
  • 障害者職業能力開発校(全国19校)において,職業訓練上特別な支援を要する障害者に重点を置きつつ,障害の特性に応じた職業訓練
  • 一般の職業能力開発校において,知的障害者や発達障害者などを対象とした訓練コースを設置し,職業訓練機会を提供するとともに,企業,社会福祉法人,特定非営利活動法人,民間教育訓練機関といった地域の多様な委託先を開拓し,就職に必要な知識・技能を習得するための委託訓練

特別支援学校では,子どもの障害の状態などに応じ,例えば,コンピュータや情報通信ネットワークを活用して,情報技術や情報処理の能力を育成したり,産業界との連携を図った職場体験の機会を設けたりするなど,時代の進展や社会の変化に対応した職業教育が行われている。特に,企業などにおける現場実習は,子どもの勤労観や職業観を育成し,学校生活から社会生活への円滑な移行を進める上で重要な学習活動であることから,積極的に取り組まれている。

3 非行・犯罪に陥った子ども・若者の支援等78

(1)総合的取組
ア 関係府省庁の連携(内閣府,各省庁)

子どもや若者による社会の耳目を集める重大な事件の発生が後を絶たないなど,予断を許さない状況となっている。

政府では,非行対策の推進について密接な連絡や情報交換,協議を行うため,子ども・若者育成支援推進本部の下に少年非行対策課長会議を設置し,関係府省が連携して対策の充実強化を図っている79

イ 家庭,学校,地域の連携

非行は,家庭,学校,地域のそれぞれが抱えている問題が複雑に絡み合って発生している。このため,家庭,学校,地域のより一層の緊密な連携の下に,一体的な非行防止と立ち直り支援を推進していく必要がある。

1 「サポートチーム」(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省)

「サポートチーム」は,多様化,深刻化している少年の問題行動の個々の状況に着目し,的確な支援を行うため,学校,警察,児童相談所,保護観察所といった関係機関がチームを構成し,適切な役割分担の下に連携して対処するものである。関係機関は,日常的なネットワークの構築などを通じて,「サポートチーム」の結成やその活動において緊密な連携を図っている。

警察庁と文部科学省は,サポートチームの効果的な運用を図るため,管区警察局との共催により問題行動に対する連携ブロック協議会を開催し,緊密な連携を図っている。

2 学校と警察の連携(警察庁,文部科学省)

子どもの非行や校内暴力を防止するためには,学校と警察が密接に連携する必要がある。このため,警察署の管轄区域や市町村の区域を単位に,すべての都道府県で学校警察連絡協議会が設置されている。平成25(2013)年4月1日現在,全国の小学校,中学校,高校の約97%の参加を得て,約2,600組織の学校警察連絡協議会がある。

また,都道府県警察と都道府県教育委員会などとの間で締結した協定や申合せに基づき,非行少年,不良行為少年その他の健全育成上問題を有する子どもに関する情報を警察・学校間で通知する「学校・警察連絡制度」が各地で構築され,非行防止と健全育成に関し効果を上げつつある。

3 スクールサポーター(警察庁)

警察は,退職した警察官などをスクールサポーターとして警察署などに配置するとともに,学校からの要請に応じて派遣している。スクールサポーターは「警察と学校の橋渡し役」として,学校における子どもの問題行動への対応や,巡回活動,相談活動,安全確保に関する助言を行っている。平成25年4月1日現在,43都道府県に約700人が配置されている。

4 更生保護サポートセンター(法務省)

処遇活動,犯罪予防活動をはじめとする更生保護の諸活動を一層促進するための拠点である「更生保護サポートセンター」が,平成24(2012)年度現在,全国に計155か所設置されている。「更生保護サポートセンター」には,保護司が駐在して,教育委員会や学校,児童相談所,福祉事務所,社会福祉協議会,警察,ハローワークといった様々な関係機関・団体と協力し,保護観察を受けている人の立ち直り支援や,非行防止セミナー,住民からの非行相談を行っている。

(2)非行防止,相談活動等
ア 非行少年を生まない社会づくり(警察庁)

最近の非行の背景には,従来,少年の規範意識の醸成を担ってきた家庭や地域社会の教育機能の低下,少年自身のコミュニケーション能力の不足,少年がともすれば自分の居場所を見出せず孤立し疎外感を抱いている現状が挙げられる。こうした問題の解決に社会全体で取り組む必要がある。

警察は,「非行少年を生まない社会づくり」の取組を全国的に推進している。具体的には,問題を抱え非行に走る可能性がある少年に対して積極的に連絡して手を差し伸べ,社会奉仕活動への参加促進や就学・就労の支援などにより,その立ち直りを支援する活動を行う「少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動」を推進している。特に,少年事件の共犯率が成人事件と比較して高く,不良交友関係が立ち直りの大きな阻害要因となっていることから,少年警察ボランティアなどと連携しながら,不良交友関係の解消や不良交友関係に代わる居場所づくりに努めている。このほか,地域住民などに対する地域の非行情勢などの積極的な情報発信により,非行に関する社会全体の理解を深め,厳しくも温かい目で少年を見守る社会気運の醸成を図っている。(第2-3-5図)

第2-3-5図 非行少年を生まない社会づくりの推進

COLUMN NO.5
「親子や地域との絆の再生」による非行少年を生まない社会づくり

非行少年を生まない社会づくりを推進するためには,問題を抱えた個々の少年に対し積極的に手を差し伸べ,地域社会との絆(きずな)の強化を図る中でその立ち直りを支援し,再び非行に走ることを防止するとともに,少年を厳しくも温かい目で見守る社会気運を醸成するなどの取組が重要である。ここでは,福井県警察の取組を紹介する。

1 概要

「親子や地域との絆の再生」をテーマに,少年警察ボランティアなどと協働した農業作業体験場の運営や大学生パートナーによるホースセラピーといった豊富なメニューによる立ち直り支援活動を推進しているほか,「愛・きずなレター」による少年たちの悩みの解消,プロ野球チームや劇団と連携した非行防止教室を実施するなど,非行少年を生まない社会づくりに向けた施策・事業を展開している。

(1) 豊富なメニューによる立ち直り支援活動の推進

少年警察ボランティアが中心となり,四季を通じて果物や野菜を栽培収穫することが可能な農業作業体験場を運営するほか,大学生パートナーによるホースセラピー活動,登山やカヌー教室,菓子作り,学習支援など,少年のニーズに応じた立ち直り支援活動を推進している。

コラム5 ホースセラピーの様子

(2) スクールサポーターの学校常駐による立ち直り支援活動

校内暴力で荒れた中学校に元警察官などのスクールサポーターを常駐させ,不良グループの生徒に対する立ち直り支援活動を推進するなど,学校関係者を支援している。

(3) 「愛・きずなレター」による悩みの解消

非行は,「悩みを誰にも相談できない」という孤独な状態が原因の一つであることから,モデル校を指定し,少年サポートセンターが子どもから手紙による悩み・不安の相談を受け付ける「愛・きずなレター」を活用し,子どもの悩み・不安の解消を図っている。

(4) 小学校から高校まで一貫した非行防止教室の開催

学校,少年警察協助員と協働し,県内すべての小学校・中学校・高校の子どもを対象に非行防止教室を開催しており,プロ野球独立リーグチームと連携した活動などを実施した。

コラム5 非行防止教室

(5) 園児の心を育む親子教室の開催

県内の保育園・幼稚園と連携し,早期に善悪の分別や道徳心を育むため,劇団員へ委託した親子参加型の寸劇や少年警察ボランティアと協働した紙芝居など,視覚に訴える方法で園児の規範意識の醸成を図っている。

2 効果・反響

立ち直り支援活動を通じて,日常的には保護者と会話をしない子どもが自ら学校での生活や交友関係に関する話をするようになるなど,親子の絆(きずな)が深まり,関係修復に大きな役割を果たした事例が認められた。また,スクールサポーターの常駐による校内暴力の抑止や「愛・きずなレター」を活用した子どもの悩み・不安を解消する活動についても多くの感謝の言葉が聞かれた。

イ 非行防止教室(警察庁,文部科学省,法務省)

警察は,職員の学校への派遣や少年警察ボランティアなどの協力により,非行防止教室を開催している。具体的な非行事例などを題材にして直接少年に語り掛けることにより,少年自身の規範意識の向上を図っている。

文部科学省は,学校,家庭,地域が十分な連携を図り,子どもの豊かな人間性や社会性などを育むため道徳教育の充実を図るとともに,関係機関と連携した非行防止教室の開催などにより規範意識を養い,子どもの非行防止に努めている。

法務省は,「中学生サポート・アクションプラン」として,中学生の犯罪・非行の未然防止と健やかな育成を図っている。このプランでは,非行問題に関する豊富な知識や保護観察対象者に対する処遇経験を有する保護司(学校担当保護司)が,直接中学校へ赴き,非行問題や薬物問題をテーマにした非行防止教室を開催したり,問題を抱えた子どもへの指導方法などについて教師との個別協議を行っている。

ウ 多様な活動機会・居場所づくりの推進(警察庁,文部科学省)

第2部第2章第1節2「多様な活動機会の提供」第2部第4章第1節3「放課後の居場所やさまざまな活動の場づくり」を参照。)

エ 相談活動(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省)

地域住民に身近な市町村を中心に設立されている青少年センター(青少年の育成を図ることを目的とし,相談活動などを行う機関を指す。少年補導センターや青少年育成センターといった名称で活動。)では,相談活動や街頭補導,有害環境の適正化に関する活動が行われている。青少年センターが扱う相談の内容は,非行に関するもののほか,いじめ,不登校,虐待の問題など様々である。

警察は,少年の非行や家出,自殺の未然防止とその兆候の早期発見や犯罪,いじめ,児童虐待などに係る被害少年の保護のための相談窓口を設けている。心理学などの専門知識を有する少年補導職員や非行の取り扱い経験の豊かな警察官などが,少年や保護者からの相談を受け,必要な指導や助言を行っている。ヤングテレホンコーナーといった名称によるフリーダイヤルなどでの電話相談,FAXや電子メールにより,利用しやすい環境の整備に努めている80。平成24(2012)年に警察が受理した相談の件数は,66,113件で,前年に比べ1,278件(1.9%)減少した(第2-3-6表)。相談内容をみると,少年自身からの相談では,交友問題や犯罪被害に関する悩みが多く,保護者からの相談では,家庭や非行の問題に関する悩みが多い(第2-3-7図)。相談後も継続的な指導・助言を必要とするケースは,9,200件で,全体の14.0%を占めている。(学校における相談体制については,第2部第2章第3節2(1)「学校における相談体制の充実」を参照。)

第2-3-6表 警察が受理した少年相談の状況(平成24年)
区分

相談者別
相談件数   性別(件)
うち電話相談 うちメール相談
  構成比(%)   構成比(%)   構成比(%) 男性 女性
合計 66,113 100.0 32,942 100.0 981 100.0 30,054 36,059
少年自身 13,535 20.5 5,062 15.4 418 42.6 6,274 7,261
  未就学 11 0.0 2 0.0 0 0.0 4 7
小学生 836 1.3 278 0.8 5 0.5 436 400
中学生 3,539 5.4 1,211 3.7 82 8.4 1,813 1,726
高校生 4,764 7.2 1,737 5.3 127 12.9 2,066 2,698
大学生 563 0.9 253 0.8 7 0.7 211 352
その他 349 0.5 108 0.3 18 1.8 145 204
有職少年 1,568 2.4 578 1.8 6 0.6 751 817
無職少年 1,379 2.1 654 2.0 3 0.3 511 868
不詳 526 0.8 241 0.7 170 17.3 337 189
保護者 31,488 47.6 16,284 49.4 115 11.7 9,631 21,857
その他 21,090 31.9 11,596 35.2 448 45.7 14,149 6,941
(出典)警察庁調べ

法務省は,子どもの人権問題について,人権擁護委員や法務局・地方法務局の職員による相談対応を行っている。また,少年鑑別所81でも,子どもの非行に悩む学校関係者や一般市民からの相談に応じており,臨床心理学の専門職員である法務技官が助言や指導に当たっている。「更生保護サポートセンター」でも,犯罪予防活動の一環として,保護司が子どもの非行や問題行動で悩む親からの相談に応じている。

オ 補導活動(内閣府,警察庁)

少年の非行を防止する上で,問題行動の初期段階での適切な対応が極めて重要である。

警察は,全国に設置された「少年サポートセンター」(第2-3-8図)を中心として,繁華街や公園といった非行が行われやすい場所に重点を置いて日常的に補導活動を実施し,不良行為などの問題行動を早期に発見して,少年自身やその家庭に対する適切な助言や指導に努めている。また,警察が委嘱する少年指導委員や少年補導員,少年警察協助員といった少年警察ボランティアが,補導活動や社会環境の浄化活動などの地域に密着した活動を行っている。

第2-3-8図 少年サポートセンター

市町村に置かれている青少年センターでも,市町村などから委嘱された少年補導委員による街頭補導や有害環境の適正化の活動が行われている。

カ 事件の捜査・調査
1 警察(警察庁)

警察は,非行少年を発見した場合は,必要な捜査や調査を行い,検察官や家庭裁判所,児童相談所といった関係機関へ送致または通告するほか,その少年の保護者に助言を与えるなど,非行少年に対して適切な指導がなされるよう措置している。

  • 犯罪少年(14歳以上20歳未満で罪を犯した者)

    「刑事訴訟法」(昭23法131)や「少年法」(昭23法168)に規定する手続に従って,必要な捜査を遂げた後,罰金以下の刑に当たる事件は家庭裁判所に,禁錮以上の刑に当たる事件は検察官に送致または送付する。

  • 触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした者)

    保護者がいないか保護者に監護させることが不適当と認められる場合には,児童相談所に通告する。その他の場合には,保護者に対して適切な助言を行うなどの措置を講じている。また,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に触れると考えられるなどの場合には,事件を児童相談所長に送致しなければならない。

  • ぐ犯少年(20歳未満で一定の事由があって,その性格や環境に照らして,将来,罪を犯し,または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある者)

    18歳以上20歳未満の場合は,家庭裁判所に送致している。14歳以上18歳未満の場合は,事案の内容や家庭環境から判断して家庭裁判所か児童相談所のいずれかに送致または通告している。14歳未満の場合には児童相談所に通告するか,その非行の防止を図るために特に必要と認められる場合には保護者の同意を得た上で補導を継続的に実施する。

2 検察庁(法務省)

検察官は,

  • 警察からの送致などを受けて必要な捜査を行い,犯罪の嫌疑があると認めたときは,事件を家庭裁判所に送致する。犯罪の嫌疑がなくとも,ぐ犯などの事由がある場合には,同様に事件を家庭裁判所に送致している。その際,少年に刑罰を科すのが相当か,保護観察や少年院送致といった保護処分に付すのが相当かなど,処遇に関する意見を付している。
  • 家庭裁判所から少年審判に関与すべき旨の決定があった場合に,これに関与し,裁判所の事実認定を補助している。
  • 家庭裁判所から刑事処分相当として検察官に送致された少年については,原則として公訴を提起している。

検察官が十分な捜査を行い事案を解明した上で適切な処理をすることは,少年犯罪に対する最も基本的で重要な対策であり,今後も一層充実させることとしている。

キ 非行集団対策(警察庁)

ひったくりや路上強盗といった街頭犯罪は,その検挙人員の約6割が少年である。暴走族や非行少年グループといった非行集団によって敢行される各種の犯罪は,我が国の治安にとって看過できないものとなっている。非行集団は,暴走行為や集団的暴行事件などの集団的な違法行為に限らず,遊興資金や背後にある暴力団への上納金の獲得を目的として各種の犯罪を敢行することが少なくない。また,暴力団が非行集団を裏から支え,これを資金源としている実態もうかがえる。

警察は,非行集団に対する取組を犯罪抑止対策の重要な柱と位置付け,少年部門,交通部門,刑事部門の連携を強化して,非行集団の実態把握を徹底し,以下の取組を行っている。

  • 非行集団やその予備軍となる非行少年,非行集団の背後にある暴力団による犯罪を,各種法令を活用して徹底的に取り締まることによる,非行集団の弱体化と解体
  • 少年の非行集団への加入阻止や離脱支援の推進
  • 車両の不正改造防止対策などの総合的な暴走族対策の推進や,暴走族追放条例制定の促進など暴走族を許さない社会環境づくりの推進
(3)薬物乱用防止(内閣府,警察庁,法務省,文部科学省,厚生労働省)

政府は,「第三次薬物乱用防止五か年戦略」(平成20(2008)年8月),「薬物乱用防止戦略加速化プラン」(平成22(2010)年7月),「合法ハーブ等と称して販売される薬物に関する当面の乱用防止対策」(平成24(2012)年8月)に基づき,関係府省が連携して,薬物乱用対策を推進している。

警察庁は,最近の薬物犯罪情勢や政府全体の薬物対策の取組強化を踏まえ,規制薬物乱用者の徹底検挙,薬物密輸・密売組織の実態解明の推進,関係機関との連携による水際対策の強化などにより,薬物供給を遮断するとともに,子どもに対する薬物乱用防止教室,大学生や新社会人に対する薬物乱用防止講習会などを行い,薬物需要の根絶を図っている。

法務省は,平成24年から少年院において,薬物への依存や乱用経験がある者を対象として,指導重点施設を指定して矯正教育プログラム(薬物非行)を実施している。また,教育内容・方法を充実させ,職員の指導技術を向上させるという観点から,家庭裁判所などの関係機関の職員を招へいし,研究授業を実施するとともに,薬物依存から離脱するための効果的な指導方法について検討を行っている。刑事施設では,麻薬や覚せい剤に対する依存がある受刑者を対象に,薬物依存離脱指導82を実施している。保護観察所では,保護観察に付されている者に対し,自発的意思に基づく簡易薬物検出検査を実施するとともに,一定の条件を満たした者に対して認知行動療法などに基づく覚せい剤事犯者処遇プログラムを実施している。また,再犯防止・社会復帰支援をより一層強化するため,地域の関係機関との連携,施設内処遇との一貫性を考慮した処遇の充実に努めている。

文部科学省は,薬物乱用防止教育の充実を図るため,厚生労働省や警察庁と連携して,小学校,中学校,高校において薬物乱用防止教室を開催している。また,厚生労働省と連携して,薬物についての有害性・違法性に関する正しい知識の周知に努めるとともに,小学校から大学生などに向けて,広く薬物乱用防止に係る啓発資料を作成し,配布している。

厚生労働省は,以下の取組を行っている。

  • 子どもや若者の乱用薬物の入手先となっている,インターネットを利用した密売事犯や外国人による密売事犯などに対する取締りの強化
  • 地域における薬物乱用防止・薬物依存症に関する相談の充実
  • 医療機関による対応の充実
  • 再乱用防止対策として,都道府県と協力した薬物依存症の正しい知識の普及や,保健所・精神保健福祉センターにおける薬物相談窓口における薬物依存症者やその家族に対する相談事業・家族教室の実施
  • 「合法ハーブ」などと称して販売される薬物の乱用が最近特に問題となっていることから,都道府県薬務課や公益社団法人日本薬剤師会・都道府県薬剤師会に対する子どもや若者の目につきやすい場所へのポスター掲示や子どもや若者が集まる機会をとらえてのチラシ配布の依頼,麻薬・覚醒剤乱用防止運動などにおける啓発実施の徹底,薬剤師会や薬物乱用防止指導員などとも連携した広報・啓発の実施,情報を一元的に収集・提供するために「あやしいヤクブツ連絡ネット」の立ち上げ

COLUMN NO.6
合法ハーブなどと称して販売される薬物に関する当面の乱用防止対策

1 対策とりまとめの経緯

最近,「合法」と称してハーブなどの形態で販売される,幻覚作用などを有する薬物を使用した者が,意識障害,嘔吐,痙攣,呼吸困難といった健康被害を起こす事案が多発している。

この種の薬物の乱用を防止するため,関係省庁で設置している薬物乱用対策推進会議において,平成24年8月に「合法ハーブ等と称して販売される薬物に関する当面の乱用防止対策」が取りまとめられた。

2 対策の内容

本対策の内容は,大きく「監視指導・取締りの強化」と「予防啓発の強化」の2本柱となっている。

「監視指導・取締りの強化」については,化学構造が類似している特定の物質群を包括的に指定する包括指定などによる指定薬物への指定の迅速化,この種の薬物を販売する可能性がある店舗などに対する指導・警告,規制薬物・指定薬物の取締りの強化,消費生活センターを通じて寄せられた情報や水際情報の共有促進といった施策が盛り込まれている。

「予防啓発の強化」については,薬物乱用防止教室や学校警察連絡協議会を通じて子どもと保護者に対する健康被害事例を情報提供する,都道府県薬務課や公益社団法人日本薬剤師会・都道府県薬剤師会に対してポスターやチラシの掲示や配布を依頼する,合法ハーブなどと称して販売される薬物の情報を一元的に収集・提供できる仕組みを設けるとともに相談に応じる体制を整備するといった施策が盛り込まれている。

コラム6 ポスター
(4)少年審判

家庭裁判所は,非行少年に対する調査・審判を行い,非行があると認めるときは,家庭裁判所調査官の調査結果なども考慮して,保護処分(保護観察,児童自立支援施設等送致,少年院送致)に付し,保護処分に付さない場合でも教育的措置(指導や助言など)を講じている。犯行時に14歳以上の者に係る禁錮以上の刑に当たる罪の事件について刑事処分を相当と認めるときは,検察官に送致する。(第2-3-9図)

第2-3-9図 少年事件処理手続概略図
ア 受理の状況(最高裁判所)

平成24(2012)年における少年保護事件の全国の家庭裁判所での新規受理人員は,132,142人であった。内訳をみると,窃盗(32.7%),道路交通事件(19.3%),業務上(重)過失致死傷等(17.3%)が多い。近年,少年保護事件の新規受理人員は減少傾向が続いており,平成24年は前年と比較して18,702人(12.4%減)減少した。特に,道路交通事件において減少傾向が顕著であり,10年前の平成14(2002)年における道路交通事件の新規受理人員を100とすると,平成24年は35の水準にまで減少している。(第2-3-10図)

イ 処理の状況(最高裁判所)

平成24(2012)年における少年保護事件の終局人員は137,301人で,このうち一般事件(交通関係事件を除く少年保護事件。以下同じ。)が87,533人(全体に占める割合63.8%),交通関係事件(業務上(重・自動車運転)過失致死傷,危険運転致死傷,道路交通事件。以下同じ。)が49,768人(同36.2%)となっている。終局決定別にみると,審判不開始が46.8%と最も多く,次いで保護処分が19.2%となっている。(第2-3-11図)

1 保護処分

保護処分に付された者は26,412人で,その内訳は,一般事件が15,454人(58.5%),交通関係事件が10,958人(41.5%)である。前年と比較し,1,047人(3.8%減)減少している。

  • 保護観察

    保護観察に付された少年は22,614人で,その内訳は,一般事件が11,959人(52.9%),交通関係事件が10,655人(47.1%)である。交通関係事件のうち7,699人(72.3%)は交通短期保護観察に付されたものである。前年と比較し1,040人(4.4%減)減少している。

  • 児童自立支援施設等送致83

    児童自立支援施設や児童養護施設に送致された者は270人である。

  • 少年院送致

    少年院送致となった者は3,528人で,その内訳は,一般事件が3,227人(91.5%),交通関係事件が301人(8.5%)と,一般事件がほとんどを占める。前年と比較して,一般事件は18人(0.6%増)増加し,交通関係事件は14人(4.4%減)減少している。

2 検察官送致

刑事処分が相当であるとして検察官送致となった者は3,418人で,そのほとんどを交通関係事件が占める(3,224人(94.3%))。前年と比較して55人(1.6%減)減少している。

3 児童相談所長等送致84

知事や児童相談所長に送致された者は,181人である。

4 審判不開始,不処分85

裁判官や家庭裁判所調査官は,審判を開いたり保護処分に付する必要がないとされる場合にも,調査や審判の段階で,少年の問題性に応じて,以下のような再非行防止に向けた働き掛けをしている。

  • 非行の内容を振り返らせ,被害の実情を伝えるなどする中で必要な助言・指導を行い,反省を深めさせる
  • 学校などと連絡を取って生活態度や交友関係の改善に向けた協力態勢を築く
  • 「犯罪被害を考える講習」や地域の清掃といった社会奉仕活動への参加を促す

また,再非行を防止するために家族が果たす役割が大きいことから,少年の非行に家族関係が及ぼしている影響を見極めた上で,問題解決に向けて家族関係の調整を行ったり,子どもと保護者に社会奉仕活動への参加を促すなどの働き掛けを行っている。ほかにも,保護者会を実施して保護者の気持ちや経験を語り合う場を設けることにより,保護者の子どもに対する指導力を高めさせたり,保護者が自らの養育態度を見つめ直し,監護者としての責任を自覚するように働き掛けている。

(5)被害者への配慮
ア 被害者への情報提供などの様々な制度や取組(警察庁,法務省,最高裁判所)

警察は,被疑少年の健やかな育成に留意しつつ,捜査上の支障のない範囲内で,被害者などの要望に応じて,捜査状況などに関する情報を可能な限り被害者などに提供するように努めている。

法務省は,

  • 全国の検察庁において,少年事件の被害者を含むすべての被害者やその親族の心情などに配慮するという観点から,被害者に,事件の処理結果などの情報を提供している。
  • 少年院,地方更生保護委員会,保護観察所において,加害少年の健全な育成に留意しつつ,被害者の希望に応じて,少年院送致処分や保護観察処分を受けた加害少年の,少年院での処遇状況に関する事項や仮退院審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項を通知している。
  • 検察庁,地方更生保護委員会,保護観察所において,被害者の希望に応じて,刑事処分となった少年に関し,事件の処理結果や,裁判結果,受刑中の処遇状況に関する事項,仮釈放審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項を通知している。
  • 「更生保護法」(平19法88)に基づき,地方更生保護委員会が,少年院からの仮退院の審理や刑事処分となった少年の仮釈放の審理において被害者の意見などを聴取する制度と,保護観察所が被害者の心情などを保護観察中の加害少年(刑事処分となった少年を含む。)に伝達する制度を実施している。(第2-3-12図)
    第2-3-12図 更生保護における被害者のための制度

家庭裁判所は,

  • 「少年法」に基づく,一定の重大事件の被害者による少年審判の傍聴や,被害者に対する審判状況の説明といった被害者のための制度86の適切な運用に努めている。
  • 調査や審判の段階で,被害者の心情などに十分配慮しながら,被害者から話を聞くなどして被害の実情や被害感情の把握に努め,被害者の声を少年審判手続に反映するよう努めている。
イ 被害者の心情を踏まえた適切な加害者処遇(法務省)

近年,刑事司法の分野において,被害者やその親族の心情などについて,一層の配慮を行うことが求められるようになってきている。

少年院や少年刑務所等では,「被害者の視点を取り入れた教育」が意図的・計画的に実施されるよう,矯正教育や改善指導の充実に努めている。この教育により,自分の犯した罪と向き合い,犯した罪の大きさや被害者の心情などを認識し,被害者に誠意をもって対応していくとともに,再び罪を犯さない決意を固めさせるための働き掛けを行っている。

保護観察でも,個々の事案の状況に応じ,その処遇過程において,少年が自らの犯罪と向き合い,犯した罪の大きさや被害者の心情などを認識し,被害者に対して誠意をもって対応していくことができるようになるための助言指導を行っている。また,被害者を死亡させたり,その身体に重大な傷害を負わせた事件により保護観察に付された少年に対しては,犯した罪の重さや被害者の実情などを認識させながら被害者に対する謝罪の気持ちをかん養し,具体的なしょく罪計画を策定させるしょく罪指導を実施している。

(6)少年鑑別所(法務省)

少年鑑別所は,主として家庭裁判所から観護措置の決定がされた少年を収容し,医学,心理学,教育学,社会学といった専門的知識に基づいて,その資質の鑑別を行う施設87である。観護措置による収容期間は,原則として2週間以内であり,特に必要のあるときは,家庭裁判所の決定により,期間が更新(延長)されることがある(最長8週間)。鑑別の結果は,鑑別結果通知書として家庭裁判所に送付されて審判の資料となるほか,保護処分が決定された場合には,少年院,保護観察所に送付され,処遇の参考にされる。退所する者の多くが地域社会に戻り,処遇を受けていることなどを踏まえ,少年の法的地位などを考慮しつつ,その健全な育成に配慮した観護処遇を実施している。

(7)少年院・児童自立支援施設等
ア 少年院・少年刑務所等(法務省)

少年院は,家庭裁判所において少年院送致の保護処分に付された者と,16歳に達するまでの間に刑の執行を受ける者を収容し,矯正教育を行う施設である88。生活指導,職業補導,教科教育,保健・体育,特別活動の各領域で構成される教育課程(在院者の特性と教育上の必要性に応じた教育内容を総合的に組織した標準的な教育計画)を編成している。個々の少年について,少年鑑別所と家庭裁判所の情報や意見を参考にして個別的処遇計画を作成し,効果的な教育を実施するよう努めている。

刑事裁判において懲役や禁錮の実刑の言渡しを受けた少年は,刑執行のため,主に少年刑務所等に収容される。少年刑務所等は,一人一人に個別担任を指定して面接や日記指導といった個別的な指導を行うなど,心身が発達段階にあり可塑性に富む少年受刑者の特性に応じた矯正処遇を,各少年の資質と環境の調査の結果に基づいて実施している。

イ 児童自立支援施設(厚生労働省)

児童自立支援施設89は,不良行為を行ったり,行うおそれのある子どもに対して,その自立を支援することを目的として,一人一人の状況に応じ,生活指導,学習指導,職業指導,家庭環境の調整を行う施設である。

厚生労働省は,児童自立支援施設運営指針90などにより,児童自立支援施設の質の確保と向上を図っている。

(8)更生保護,自立・立ち直り支援(法務省)
ア 少年院からの仮退院,少年刑務所等からの仮釈放

少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放とは,収容されている者を,法律や判決,決定によって定められている収容期間の満了前に仮に釈放し,その円滑な社会復帰を促す措置である。少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放を許された者は,収容期間が満了するまでの間,保護観察を受ける。平成24(2012)年における少年院仮退院者は,全出院者の99.4%に当たる3,421人(速報値)であった。

保護観察所は,少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放に先立って,出院・出所後の少年を取り巻く環境(家庭,職場,交友関係など)が,その改善更生を促す上で適切なものとなるよう,引受人などとの人間関係や出院・出所後の職業について調整を行い,受入体制の整備を図っている。

イ 保護観察

保護観察は,非行・犯罪に陥った少年に,社会生活を営ませながら,その改善更生を図る上で必要な生活行動に関する一定の事項(遵守事項と生活行動指針)を守って健全な生活をするよう指導監督するとともに,自助の責任を踏まえつつ,就学や就職などについて補導援護することにより,少年の改善更生を促すものである91。保護観察官と民間篤志家である保護司とが協働して,その実施に当たっている。平成23(2011)年に保護観察所が新たに開始した保護観察事件数の60.1%に当たる27,181件が,家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年や地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院を許された少年の事件であった。近年では,暴走族に関係のある少年や無職少年の比率が高い状態が続いている。

複雑かつ困難な問題を抱えた処遇困難な少年が増加していることを踏まえ,問題性の高いケースについては,保護観察官による直接的関与の程度を強めるなどにより,重点的な働き掛けを行っている。また,少年の持つ問題性やその他の特性を類型化し,各類型に焦点を当てた処遇を実施している。北海道雨竜郡沼田町の「沼田町就業支援センター」では,主に少年院を仮退院した少年を対象とし,旭川保護観察所の駐在官事務所に併設された宿泊施設に居住させ,濃密な保護観察を実施するとともに,同町が運営する農場で農業実習を受けさせ,改善更生の促進を図っている92。(第2-3-13図)

第2-3-13図 沼田町就業支援センター
ウ 処遇全般の充実・多様化
1 関係機関の連携

非行の深刻化に対処するため,少年のプライバシーなどとの調整を図りながら,関係機関が情報を共有し,各機関のなすべき役割を果たしていく必要がある。

法務省は,以下の取組により,保護処分の適正かつ円滑な執行を図っている。

  • 全国の少年院において,家庭裁判所,地方更生保護委員会,保護観察所,少年鑑別所といった関係機関の担当者が一堂に会し,在院者の少年院入院後の処遇経過や今後の処遇方針,保護関係調整について検討を行う処遇ケース検討会を実施
  • 家庭裁判所,少年鑑別所,少年院,地方更生保護委員会,保護観察所において,少年院や保護観察における効果的な処遇と連携の在り方を検討するため,定期的に協議会を開催
  • 処遇機関において,必要に応じ,学校,警察,福祉施設の職員とも個別事例の検討を実施
2 社会参加活動や社会貢献活動による改善更生の取組

保護観察では,社会性に乏しい少年を社会体験的な活動に参加させることにより,その健全育成を図る社会参加活動を実施している。また,福祉施設での介護補助活動や公共の場所での清掃活動など社会に役立つ活動を行い,他人から感謝されることで,自己有用感,規範意識や社会性の向上を図る社会貢献活動を実施している。

3 民間ボランティア・施設・団体等との連携

第2部第4章第3節2「地域における多様な担い手の育成」を参照。)

(9)非行少年に対する就労支援等(法務省,厚生労働省)

少年院や少年刑務所等は,処遇の一環として,就労に対する心構えを身に付けさせ,就労意欲を喚起し,各種の資格取得を奨励している。また,ハローワークなどとの連携による職業講話,職業相談,職業紹介,求人情報の提供といった就労支援を実施している。(第2-3-14図)

第2-3-14図 非行少年の処遇と社会復帰支援の概要

保護観察所は,矯正施設や家族,学校と協力し,出院・出所後の少年の就労先の調整・確保に努めている。保護観察中の無職少年に対しては,その処遇過程において,就労意欲がない原因や意欲があっても就労できない理由,就労しても継続しない理由など,不就労の原因となっている問題点の把握に努め,その解消を図るための助言指導を行っている。また,一部の保護観察所は,民間法人に委託し,矯正施設に在院・在所中から就職後の職場定着に至るまで専門家による継続したきめ細かな支援を行う「更生保護就労支援モデル事業」を実施している(第2-3-15図)。平成25(2013)年度からは,雇用の受皿を拡大するため,協力雇用主93による更なる雇用の拡大や,出院・出所後の若者の雇用に理解を示すソーシャルファーム(労働市場で不利な立場にある人々のための雇用機会の創出・提供に主眼を置いてビジネス展開を図る企業・団体など)の開拓・確保に努めている。

第2-3-15図 更生保護就労支援モデルの概要

ハローワークは,少年院や少年刑務所等,保護観察所と連携して,出院・出所予定者や保護観察に付された少年を対象とした職業相談,職業紹介,セミナー・事業所見学会,職場体験講習,トライアル雇用といった就労支援を推進している。また,就労後の相談,問題点の把握,問題解決のための助言など,就労継続のための支援を行っている。

厚生労働省は,施設などを退所したが社会的自立が十分ではない若者に対し,日常生活上の援助や就業支援を行う「自立援助ホーム」(児童自立生活援助事業)の充実に努めている。(第2部第3章2(1)「年長児の自立支援策の拡充」も参照。)

(10) いじめ・暴力対策(警察庁,文部科学省)

いじめ,暴力行為といった児童生徒の問題行動は依然として相当数に上っており,教育上の大きな課題となっている。

文部科学省は,これまで都道府県・指定都市教育委員会や学校に対して,

  • 問題行動が起こったときには,粘り強い指導を行い,なお改善が見られない場合には,出席停止や懲戒などの措置も含めた毅然とした対応をとること,
  • 問題行動の中でも特に校内傷害事件をはじめ,犯罪行為の可能性がある場合には,学校だけで抱え込むことなく,直ちに警察に通報し,その協力を得て対応すること

を求めてきた。平成24(2012)年11月2日には,学校と警察との更なる連携を促すため,「犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案に関する警察への相談・通報について(通知)」94を,都道府県・指定都市教育委員会教育長や都道府県知事,附属学校を置く国立大学法人学長宛てに発出した。この通知では,いじめは行為の態様により,傷害に限らず,暴行,強制わいせつ,恐喝,器物損壊等,強要,窃盗をはじめとした刑罰法規に抵触する可能性があることに触れつつ,以下の3点の周知徹底を図った。

  • いじめが犯罪行為として取り扱われるべきと認められるときは,いじめられている子どもを徹底して守り通すという観点から,学校はためらうことなく早期に警察に相談し,警察と連携した対応を取ることが重要であること
  • いじめられている子どもの生命や身体の安全が脅かされているような場合には,直ちに警察に通報することが必要であること
  • 学校内で犯罪行為として取り扱われるべきと認められる行為があった場合の対応について,日頃から保護者に周知を図り,理解を得ておくことが重要であること

また,平成25(2013)年1月には,警察庁から「学校におけるいじめ問題への的確な対応について」の通知(後述)が発出されたことを踏まえ,学校・教育委員会においても,警察におけるいじめ問題への対応の考え方を理解しつつ,これまで以上に,主体的に警察と連携・協力していく上での留意事項を示した通知を発出した95

警察は,少年相談活動やスクールサポーターの学校への訪問活動などにより,いじめの早期把握に努めるとともに,把握したいじめの重大性や緊急性,被害少年やその保護者などの意向,学校などの対応状況などを踏まえ,学校などと緊密に連携しながら,的確な対応を推進している。警察庁は,学校におけるいじめ問題への的確な対応を推進するため,平成25年1月に,「学校におけるいじめ問題への的確な対応について」96(通達)を都道府県警察に発出した。また,校内暴力についても,学校などとの連携により,早期把握に努め,悪質な事案に対する厳正な対処,非行集団の実態解明と集団の解体の推進,非行防止に関する学校などとの情報交換など,内容に応じた適切な措置と再発の防止に努めている。

4 子どもの貧困問題への対応

(1)経済的困難を抱える家族への支援(文部科学省,厚生労働省)

第2部第2章第1節5「経済的支援の充実」を参照。)

(2)ひとり親家庭への支援(厚生労働省)

第1部でみたとおり,子どもがいる現役世帯のうち,ひとり親家庭が特に経済的に困窮しているという実態がうかがえる。

厚生労働省は,「母子及び寡婦福祉法」(昭39法129)などに基づき,子育て・生活支援策(保育所の優先入所など),就業支援策(知識技能の習得に係る給付金の支給など),養育費の確保策(養育費相談支援センターの設置など),経済的支援策(児童扶養手当の支給など)といった総合的な自立支援策を展開している97。また,平成25(2013)年3月から施行された「母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法」(平24法92)により,母子家庭の母と父子家庭の父の就業支援に関する施策の充実や民間事業者に対する協力の要請を行っている。なお,平成24(2012)年度までの特別対策として,安心こども基金を活用し,高等技能訓練促進費の支給期間の延長などの就業支援策の充実を図った。

(3)世代を超えた貧困の連鎖の防止(内閣府,文部科学省,厚生労働省)

「社会保障制度改革推進法」(平24法64)の附則第2条では,「生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しに総合的に取り組み,保護を受けている世帯に属する子どもが成人になった後に再び保護を受けることを余儀なくされることを防止するための支援の拡充を図る」ことが規定されている。

厚生労働省は,ひとり親家庭に大学生などのボランティアを派遣し,子どもの学習支援や進学相談に応じる「学習支援ボランティア事業」を行っている。また,平成25(2013)年度には,貧困の連鎖を防止する観点から,

  • 生活保護世帯の子どもに対する学習支援・進路支援の充実
  • 生活保護世帯の親子への日常生活支援・養育相談等の充実
  • 生活困窮者に対する包括的な相談支援や,多様な就労支援や生活支援などを行う生活困窮者支援のモデル事業

などを行う。また,社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会が平成25年1月にとりまとめた報告書98を踏まえ,生活訓練や社会訓練を含む就労支援や生活困窮家庭の子どもへの学習支援の実施などを内容とする新たな生活困窮者の就労・自立支援策の制度化や生活保護制度の見直しのため,生活困窮者自立支援法案と生活保護法の一部を改正する法律案を閣議決定し,国会に提出した。

内閣府は,平成24年5月に公表した中学校3年生とその保護者を対象とした「親と子の生活意識に関する調査」において,分析の一つとして「相対的貧困層」に該当していると思われる者とそうでない者との比較も行った。

(4)状況把握(厚生労働省)

厚生労働省は,国民生活基礎調査により子どもの相対的貧困率を把握している。(第1部第3章第3節「子どもの貧困」を参照。)

5 困難を有する子ども・若者の居場所づくり

(非行少年の立ち直り支援については第2部第3章第1節3「非行・犯罪に陥った子ども・若者の支援等」を,要保護児童の居場所づくりとグループホームなどの居場所づくりについては第2部第3章第2節2「社会的養護の充実」を,それぞれ参照。)

6 外国人等特に配慮が必要な子ども・若者の支援

(1)「日系定住外国人施策に関する行動計画」に沿った施策の推進(内閣府)

日本人の子孫として我が国と特別な関係にあることに着目してその受入れが認められ,我が国に在留する,ブラジル人とペルー人を中心とする日系人とその家族(以下「日系定住外国人」という。)は,日本語能力が不十分であることなどから再就職が難しく,生活困難な状況に置かれる者が多い。

政府は,「日系定住外国人施策に関する行動計画」に基づき,「日本語能力が不十分である者が多い日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れ,社会から排除されないようにする」との基本的な考え方に立って,関係府省の連携の下,日本語学習,子どもの教育,就労,社会生活などの各分野にわたって推進している99

(2)外国人の子どもの教育の充実等(内閣府,文部科学省)

外国人には就学義務が課されていないが,その保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には,国際人権規約や児童の権利条約に基づき,無償で受け入れている。これにより,教科書の無償配布や就学援助を含め,日本人と同一の教育を受ける機会を保障している。

文部科学省は,外国人の子どもの公立学校への受入れに当たって,以下の取組を行っている100

  • 外国人の子どもなどに日本語指導を行う教員を配置するための加配定数措置
  • 日本語指導者に対する実践的な研修
  • 入学・編入学前後の外国人の子どもへの初期指導教室(プレクラス)や,学校と保護者との連絡調整などを行う際に必要な外国語が使える人材の配置といった地方公共団体が行う取組の支援
  • 教員を中心とする関係者が外国人の子どもに対し適応指導や日本語指導を行える環境作りを支援するための,「日本語能力測定方法」や「研修マニュアル」の開発
  • 不就学のブラジル人などの子どもに対して,日本語などの指導や学習習慣を確保するための教室を設け,主に公立学校への円滑な転入ができるようにする取組(定住外国人の子どもの就学支援事業)
(3)定住外国人の若者の就職の促進等(内閣府,厚生労働省)

ハローワークは,日系人をはじめとする定住外国人の若者の就職を促進するため,日系人のための就業支援ガイダンスを実施するとともに,ガイダンス出席者を対象とした職業意識啓発指導や職業指導といった個別の就職支援を実施している。また,就職意欲が高い日系人などに対し,早期の就職を実現させるため,担当制による個々の求職者のニーズを踏まえた綿密な支援を行っている。

定住外国人が多く集住する都道府県では,訓練の受講に当たって一定の日本語能力を有する者に対して,その日本語能力などに配慮した職業訓練が実施されている。

(4)性同一性障害者等(法務省,文部科学省,各省庁)

法務省は,人権擁護機関(法務省人権擁護局,法務局・地方法務局・支局,人権擁護委員)において,「子どもの人権を守ろう」や「外国人の人権を尊重しよう」のほか,「性同一性障害を理由とする差別をなくそう」,「性的指向を理由とする差別をなくそう」などを啓発活動の年間強調事項として掲げ,1年を通して全国各地で,講演会の開催や啓発冊子の配布などによる啓発活動を実施している。

文部科学省は,性同一性障害のある子どもへの対応について,学級担任や管理職をはじめ,養護教諭,スクールカウンセラー,教職員が協力して,実情を把握した上で相談に応じるとともに,必要に応じて関係医療機関とも連携するなど,子どもの心情に十分配慮した教育相談の徹底を関係者に対して依頼している。

(5)十代の親への支援(厚生労働省)

厚生労働省は,妊娠・出産・育児について,医師や助産師などから専門的なアドバイスを受ける機会でもある妊婦健診を必要な回数(14回程度)を受けられるよう,平成24(2012)年度までは公費助成を行い,平成25(2013)年度からは地方財政措置による恒常的な仕組みとした。また,妊娠や出産の悩みを抱える若者に対して,訪問指導などの母子保健事業を活用した支援や女性健康支援センター事業を通じた相談体制の充実を図っている。


60 「子ども・若者育成支援推進法」第19条で地方公共団体に設置の努力義務が課されている協議会。
61 「子ども・若者育成支援推進法」第18条では,国と地方公共団体は,人材の養成や資質の向上,体制整備に必要な施策を講ずるよう努めるものとされている。
62 http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/ys-station/。全国のサポステの連絡先はニートサポートネットの一覧(http://www.neet-support.net/about/supportstation_4.html)を参照。
63 「ひきこもり地域支援センター」の連絡先はhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/dl/hikikomori05.pdfを参照。
64 http://www.mhlw.go.jp/kokoro/
65 http://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/
66 http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/shidou/1267646.htm
67 小・中学校の通常の学級に在籍している比較的障害の軽い子どもが,ほとんどの授業を通常の学級で受けながら,障害の状態に応じた特別の指導を特別な場で受ける指導形態。言語障害,自閉症,情緒障害,学習障害,注意欠陥多動性障害,弱視,難聴などのある子どもが対象。
68 この提言では,インクルーシブ教育システムの構築のための特別支援教育の在り方,就学相談・就学先決定の在り方,障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮とその基礎となる環境整備,多様な学びの場の整備と学校間連携の推進,特別支援教育を充実させるための教職員の専門性の向上が盛り込まれている。
69 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm
70 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/010/001.htm
71 www.nise.go.jp/
72 平成24年度現在,すべての都道府県・指定都市に設置されている。
73 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hattatsu/index.html
74 発達障害者の子どもを持つ親であって,その経験を活かし,子どもが発達障害の診断を受けて間もない親などに対して助言を行う者。
75 発達障害を早期発見し,その後の経過を評価するための確認票。
76 http://www.rehab.go.jp/ddis/
77 http://icedd.nise.go.jp/
78 この項における「少年」は,少年法第2条に規定する「20歳に満たない者」を指す。
79 https://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hikou.html
80 http://www.npa.go.jp/higaisya/shien/torikumi/madoguchi.htm
81 主として家庭裁判所から観護の措置により送致された子どもを収容するとともにその資質の鑑別を行う施設。
82 受刑者に対し,薬物依存の認識と薬物使用に係る自分の問題を理解させた上で,今後薬物に手を出さずに生活していく決意を固めさせ,再使用に至らないための具体的な方法を考えさせることを目的に,薬物の薬理作用と依存症,薬物使用に関する自己洞察,再使用防止のための方策,出所後の生活の留意事項と社会資源の活用についての指導を,グループワークや講義,視聴覚教材の視聴の方法により行っている。
83 児童自立支援施設(不良行為をなし,またはなすおそれのある子どもを,入所または保護者の下から通わせて,必要な指導を行い,自立を支援する施設)などに送致するもの。その対象のほとんどが15歳以下の子どもである。
84 処遇を児童福祉機関の措置にゆだねるもの。児童自立支援施設等送致と同様にその対象のほとんどが15歳以下の少年であるが,毎年その数は少ない。
85 調査の結果,審判を開いたり保護処分に付することができず,又はその必要がないと認められる少年に対して行われる決定。
86 「少年法」では,被害者への配慮を充実するため,1被害者などによる記録の閲覧及び謄写,2被害者などの申し出による意見の聴取,3被害者などに対する審判結果などの通知,4一定の重大事件の被害者などによる少年審判の傍聴,5被害者などに対する審判状況の説明,の制度が設けられている。
87 鑑別には,上述の少年を収容して行う「収容鑑別」のほか,家庭裁判所からの請求に応じて,少年を収容せずに行う「在宅鑑別」,少年院,刑事施設,保護観察所などの法務省関係機関からの依頼に応じて行う「依頼鑑別」,地域住民,学校,職場などの一般からの依頼に応じて行う「一般少年鑑別」がある。http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse06.html
88 収容対象となる者の年齢,犯罪的傾向の進度,心身の故障の有無に応じて,初等,中等,特別,医療の4種類がある。http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse04.html
89 「児童福祉法」第44条に規定される施設。
90 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_07.pdf
91 http://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo01.html
92 http://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo19.html
94 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1327861.htm
95 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331896.htm
96 http://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/shounen/syounen20130124.pdf
97 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-katei/index.html
98 この報告書では,家庭の貧困や親の離婚,家庭崩壊により,子どもや若者が自立に必要な援助を親から得ることができず,低学力・低学歴の問題やコミュニケーション能力の面で著しい問題を抱え,教育・訓練機会にも恵まれないまま,ニートやひきこもりになっている例も少なからず見受けられることなどが指摘されている。そして,こうした連鎖を断ち切るためには,生活保護世帯も含めた貧困家庭の子どもに学校教育段階からアプローチし,自立まで責任を持って継続的に見守る体制を構築するとともに,経済的に困窮している若者は今後働く期間が長く将来のキャリアアップも期待できることから,その支援に力を注ぐことが必要であるとされている。http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002tpzu-att/2r9852000002tq1b.pdf
99 https://www8.cao.go.jp/teiju/index.html
100 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003.htm
[目次]  [戻る]  [次へ]