第2部 子ども・若者育成支援施策の実施状況
第3章 困難を有する子ども・若者やその家族の支援
第2節 子ども・若者の被害防止・保護
1 児童虐待防止対策
(1)児童虐待の現状(厚生労働省)
「児童虐待の防止等に関する法律」(平12法82)(以下「児童虐待防止法」という。)の累次の改正や,民法などの改正による親権の停止制度の創設101により,児童虐待への対応の充実が図られてきた。
しかしながら,子どもの生命が奪われるなど重大な児童虐待事件が後を絶たない。第1部でみたとおり,全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数も増加を続けており,平成23(2011)年度には児童虐待防止法制定直前の約5.2倍に当たる59,919件となっている。虐待による死亡事件も毎年50件前後ある。
(2)児童虐待防止対策の充実
児童虐待は,子どもの心身の発達と人格の形成に重大な影響を与えるため,発生予防から早期発見・早期対応,さらには虐待を受けた子どもの保護・自立支援に至るまでの切れ目ない総合的な支援体制を整備し,充実していくことが必要である。また,児童虐待は,家族の抱える社会的,経済的,心理的な要因の複合的な相互作用の結果として生じると考えられており,その防止には,福祉,医療,保健はもとより,教育,警察,司法,さらには民間団体など幅広い関係者が共通の認識に立って対応していくことが必要である。このように,児童虐待の防止は社会全体で取り組むべき重要な課題である。(第2-3-16図)

ア 発生予防(文部科学省,厚生労働省)
妊娠・出産・育児期の家庭は,産前産後の心身の不調や妊娠・出産・子育てに関する悩みを抱え,周囲の支えを必要としている場合がある。こうした家庭に適切な支援が差しのべられず,痛ましい児童虐待に至ってしまうことを防ぐ必要がある。
厚生労働省は,以下のような取組により相談しやすい体制の整備を推進している102。
- 生後4か月までの乳児がいるすべての家庭を訪問し,子育て支援に関する情報提供や養育環境などの把握,育児に関する不安や悩みの相談の援助を行う「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」
- 養育支援が特に必要な家庭に対して保健師や助産師,保育士が居宅を訪問し,養育に関する相談に応じ,指導や助言により養育能力を向上させるための支援を行う「養育支援訪問事業」
- 子育て中の親子が相談・交流できる「地域子育て支援拠点事業」
また,養育支援を特に必要とする家庭の把握・支援に関して市町村の児童福祉・母子保健などの関係部署や要保護児童対策地域協議会が具体的に留意すべき事項103や,医療機関との連携強化に関する留意事項104を,平成24(2012)年11月に地方公共団体へ通知した。
文部科学省は,保護者の子育て不安の軽減や地域からの孤立の解消のため,地域における就学時健診の機会を活用した子育て講座や,家庭教育に関する学習機会の提供,家庭教育支援チームによる相談対応の取組を支援している。(家庭教育支援については,第2部第4章第1節1「保護者等への支援を行う「家庭を開く」取組」を参照。)
イ 早期発見・早期対応,保護(警察庁,法務省,文部科学省,厚生労働省)
虐待を受けている子どもや支援を必要としている家庭を早期に発見し,適切な保護や支援を行うためには,関係機関の間で情報や考え方を共有し,適切な連携の下で対応していくことが重要である。
厚生労働省は,虐待に関する通告の徹底,児童相談所の体制強化のための児童福祉司の確保,市町村の体制強化,専門性向上のための研修やノウハウの共有を推進している。平成25(2013)年度には,これまで安心こども基金で実施してきた事業のうち,虐待通告のあった子どもの安全確認のための体制強化や通告先などの周知を図る広報啓発,児童相談所職員などの資質向上の事業を,継続して安定的に実施していくものとして,当初予算化した。また,関係機関の間で子どもや保護者に関する情報の交換や支援内容の協議を行う場である「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)」105の機能強化に向けた取組を推進している106。平成23(2011)年4月1日現在,要保護児童対策地域協議会または任意の虐待防止ネットワークを設置している市町村の割合は99.5%107とほぼすべての市町村で設置されている状況にあり,今後はその機能強化が課題である(第2-3-17図,第2-3-18図)。平成24(2012)12月には,要保護児童対策地域協議会を積極的に活用している地方公共団体の事例を「要保護児童対策地域協議会の実践事例集」108として取りまとめ,情報提供した。(虐待を受けた子どもへの対応は,第2部第3章第2節2「社会的養護の充実」を参照。)

警察は,街頭補導や相談活動,通報,事件捜査・調査を通じて,児童虐待事案の早期発見・被害児童の早期保護に努めている。警察官職務執行法に基づく犯罪の制止,立入などの権限行使,厳正な捜査,被害を受けた子どもの支援,児童相談所の行う立入調査などに対する援助要請への的確な対応など,子どもの安全の確認と確保を最優先とした対応を行っている。
法務省は,人権擁護機関において,被害を受けた子どもからの相談や近隣住民などからの情報によって児童虐待事案の情報を得た場合は,児童相談所などと連携し,被害を受けた子どもを一時保護させるといった適切な対応に努めている。また,事案に応じて加害者に対して説示を行うなど適切な措置を講じている。これにより,被害を受けた子どもの救済に努めている。
文部科学省は,関係府省の協力を得て,関係機関や民間団体が連携し,子どもを見守り育てるネットワーク推進会議109(平成24年12月末時点で5関係府省と42民間団体が参加)を設け,児童虐待問題への対応を含む子どもを対象とした相談体制の充実の取組を推進するための円滑な連携の在り方などについて検討している。
(3)事例検証・研究・研修(厚生労働省)
厚生労働省は,
- 社会保障審議会児童部会の下に設置されている児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会において児童虐待による死亡事例などを分析,検証し,事例から明らかになった問題点・課題と具体的な対応策を提言として毎年取りまとめている110。平成24(2012)年7月に,平成22(2010)年度に発生・表面化した児童虐待による死亡82事例(98人)を対象とした検証結果である第8次報告を取りまとめた。この報告を踏まえ,養育支援を要する家庭への早期支援,若年者などに向けた広報啓発の強化,子どもの安全を守るための対応の徹底,虐待対応機関の体制の充実,関係機関の連携強化を促すための通知111を地方公共団体へ発出した。
- 児童虐待に特化した研究や研修,情報提供を行う「日本虐待・思春期問題情報研修センター(通称:子どもの虹情報研修センター)」112が行う,児童虐待に関する研究や,指導者の養成を目的に高度かつ最新の専門知識と実践的な援助技術が習得できるような研修に対して支援を行っている。
- 厚生労働科学研究費補助金による研究として,虐待の発生,重症化の要因や保護者への指導法の開発に関する研究をはじめ児童虐待対策に関する研究を幅広い分野の研究者の参画を得て実施している。
2 社会的養護の充実(厚生労働省)
(1)社会的養護の現状と課題
社会的養護は,保護者のない子どもや被虐待児といった家庭環境上養護を必要とする子ども,生活指導を必要とする子どもに対し,公的な責任として,施設など113で社会的に養護を行う制度である。約47,000人の子どもが社会的養護の対象となっている。保護が必要な子どもが増加しており,ここ十数年で,児童養護施設の入所児童数は1.08倍,乳児院が1.17倍,里親等委託児童は2.34倍に増加している。児童虐待の増加に伴い,児童養護施設に入所している子どものうち半数以上が虐待を受けた子どもとなっている。また,障害のある児童が増加している。このため,児童虐待防止対策の一層の強化とともに,社会的養護の質・量ともに拡充が必要となっている。
現在,日本の社会的養護は,9割が乳児院や児童養護施設,1割が里親・ファミリーホームとなっている。厚生労働省は,ケア形態の小規模化や里親制度を推進することにより,今後十数年かけて,里親・ファミリーホーム114,グループホーム(地域小規模児童養護施設)115,児童養護施設などの施設(すべて小規模グループケア116)がそれぞれ概ね3分の1ずつという姿に変えていくことを目指している117。
(2)家庭的養護の推進
児童養護施設などでは,できる限り家庭的な環境の中で職員との個別的な関係性を重視したきめ細かなケアを提供していくことが求められている。
厚生労働省は,ケア形態の小規模化を図るため,児童養護施設,乳児院,情緒障害児短期治療施設,児童自立支援施設を対象とした小規模グループケアの実施や,グループホームの設置を進めている。平成24(2012)年11月には,「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について」(「小規模化等の手引き」)118を都道府県・指定都市・児童相談所設置市に通知した。この通知では,関係者に対して小規模化の意義や課題の周知を図るとともに,児童養護施設と乳児院に対しては小規模化・地域分散化を進める具体的方策を定めた「家庭的養護推進計画」を策定することを,都道府県に対しては「家庭的養護推進計画」を踏まえ平成26(2014)年度末までに「都道府県推進計画」を策定することを,それぞれ求めている。
(3)里親委託・里親支援の推進
里親制度119は,何らかの事情により家庭での養育が困難になったり受けられなくなった子どもに,温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度である。家庭での生活を通じて,子どもが成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより,子どもの健全な育成を図るものである。
厚生労働省は,里親委託優先の原則を明示した「里親委託ガイドライン」120に基づき,里親委託を推進している。里親支援機関事業や,児童養護施設と乳児院への里親支援専門相談員の配置(平成24年11月末現在115か所)により,地方公共団体の取組を促している121。里親制度を普及させるために毎年10月を里親月間とするなど,広く里親制度の周知が図られるよう広報・啓発活動にも努めている。(第2-3-19図)

(4)年長児の自立支援策の拡充
社会的養護の下で育った子どもは,施設などを退所し自立するに当たって保護者などから支援を受けられない場合が多く,その結果さまざまな困難に突き当たることが多い。このような子どもが他の子どもと公平なスタートが切れるように自立への支援を進めるとともに,自立した後も引き続き子どもを受け止め,支えとなるような支援の充実を図ることが必要である。
厚生労働省は,こうした支援の充実を図るため,以下の取組を実施している。
- 都道府県が行う児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)を推進するため,その費用を負担金で支弁
- 施設を退所した後の地域生活と自立を支援するとともに,退所した人同士が集まり,意見交換や情報交換・情報発信を行えるような場を提供する「退所児童等アフターケア事業」
- 施設などを退所する子どもは親がいないといった事情により身元保証人を得られないため,就職やアパートの賃借に影響を及ぼすことがないように施設長などが身元保証人となる場合の補助を行う「身元保証人確保対策事業」
(5)施設機能の充実
厚生労働省は,児童養護施設,乳児院,情緒障害児短期治療施設,児童自立支援施設,母子生活支援施設の5つの施設運営指針,里親及びファミリーホーム養育指針,第三者評価の基準により,施設運営の質の向上を図っている。また,平成24(2012)年度には,虐待を受けた子どもの増加に対応しケアの質を高めるため,社会的養護の施設の児童指導員や保育士の基本的な人員配置を30数年ぶりに引き上げた。
(6)被措置児童等に対する虐待の防止
施設入所や里親委託などの措置がとられた子ども(以下「被措置児童等」という。)への虐待があった場合には,その子どもを保護し,適切な養育環境を確保することが必要である。不適切な施設運営や事業運営が行われている場合には,施設や事業者を監督する立場から,「児童福祉法」に基づく適切な対応が必要となる。
厚生労働省は,「被措置児童等虐待対応ガイドライン」122により,被措置児童等への虐待の防止を図っている。このガイドラインでは,都道府県の関係部局の連携体制や通告があった場合の具体的対応のための体制をあらかじめ定めること,都道府県児童福祉審議会の体制を整備すること,関係施設の協議会との連携・協議を強化し被措置児童等への周知や子どもの権利についての学習機会の確保を図ることなどが具体的に示されている。
3 子ども・若者の福祉を害する犯罪対策
(1)取締り(警察庁,法務省)
「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(平11法52。以下「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。)違反や「児童福祉法」違反といった福祉犯は,被害者の心身に有害な影響を及ぼし,その健全な育成を著しく阻害する。
警察は,積極的な取締りと被害者の発見保護に努めている。平成24(2012)年の福祉犯の検挙人員は,7,622人で,前年に比べ224人(2.9%)減少した(第2-3-20図)。このうち,暴力団などの関係者の検挙人員は303人で,福祉犯における検挙人員の4.0%を占めている(第2-3-21表)。

計 | 児童 福祉法 |
売春 防止法 |
職業 安定法 |
労働 基準法 |
風営 適正化法 |
毒物及び 劇物 取締法 |
覚せい剤 取締法 |
青少年 保護 育成条例 |
児童買春・ 児童ポルノ 禁止法 |
その他 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
福祉犯の検挙人員数(A)(人) | 7,622 | 369 | 36 | 46 | 105 | 525 | 31 | 76 | 2,571 | 1,847 | 2,016 |
暴力団等関係者(B)(人) | 303 | 71 | 6 | 3 | 11 | 64 | 4 | 40 | 68 | 30 | 6 |
関与率(B/A)(%) | 4.0 | 19.2 | 16.7 | 6.5 | 10.5 | 12.2 | 12.9 | 52.6 | 2.6 | 1.6 | 0.3 |
暴力団等関係者の構成比(%) | 100.0 | 23.4 | 2.0 | 1.0 | 3.6 | 21.1 | 1.3 | 13.2 | 22.4 | 9.9 | 2.0 |
(出典)警察庁「児童虐待及び福祉犯の検挙状況等」 |
検察庁は,積極的に関係法令を適用し,厳正な科刑の実現に努めている。
(2)児童買春・児童ポルノ問題(内閣府,警察庁,総務省,経済産業省)
児童買春や児童ポルノは,子どもの権利や健やかな育成を著しく阻害するものであり,国際的にも問題となっている。政府では,平成25(2013)年5月に「第2次児童ポルノ排除総合対策」を策定し,関係省庁が連携して,児童ポルノ排除対策を推進している123。
内閣府は,平成24(2012)年11月,関係団体などで構成する第3回児童ポルノ排除対策推進協議会(会長:内閣府副大臣)を開催した。また,公開シンポジウムにより児童ポルノ根絶に向けた国民運動の輪が更に広がるよう呼びかけを行っている。平成24年度の公開シンポジウムでは,スウェーデン外務省国際法・人権条約局課長代理のカイレイニウス氏から「児童ポルノ排除に向けた国際的な取組」についての基調講演が行われた。さらに,専門家による「被害者支援と被害防止教育」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。(第2-3-22図)

警察は,児童ポルノ事件が極めて深刻な情勢にあることから,「児童買春・児童ポルノ禁止法」による積極的な取締りに努めている。平成24年には,過去最多の1,596件,1,268人を検挙した。また,出会い系サイトなどを利用し,個人的な「援助交際」(売春など)の勧誘を装って組織的に周旋を行う事犯や,飲食店,エステ店などの合法的な営業を装いながら,児童に卑猥な言動などで客に接する業務をさせるものが出現していることから,その実態把握の推進と情報の分析,積極的な取締りなどに努めている。
なお,児童ポルノの流通・閲覧を防止するため,インターネット・サービス・プロバイダなどの関連事業者によるブロッキングが実施されている。
(3)「出会い系サイト」や「コミュニティサイト」の問題(警察庁)
警察は,「出会い系サイト」に起因する事犯について,平成24(2012)年には,「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(平15法83)違反363件,「児童買春・児童ポルノ禁止法」違反事件251件,青少年保護育成条例違反50件を検挙している。また,出会い系サイト以外のコミュニティサイトを利用して子どもが犯罪被害に遭った事犯については,「児童買春・児童ポルノ禁止法」違反543件を検挙している。
(4)子どもの犯罪被害の防止
ア 学校における安全管理(文部科学省)
文部科学省は,「学校安全の推進に関する計画」124(平成24年4月閣議決定)に基づき,学校における安全管理を推進している。また,「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」として,警察官OBなどからなるスクールガード・リーダーによる学校の巡回や学校安全ボランティアに対する警備のポイントの指導,学校安全ボランティアの養成,各地域における子どもの見守り活動に対する支援,「子ども安心プロジェクト」として小学生や中学生,高校生を対象とした教育教材や教職員向け参考資料の作成を行っている。
イ 関係機関・団体からの情報の活用(警察庁)
警察庁は,法務省から子どもを対象とした暴力的な性犯罪に係る受刑者の出所情報の提供を受け,出所者の更生や社会復帰を妨げないように配慮しつつ,訪問による所在確認や同意を前提とした面談を取り入れるなど,犯罪の予防や捜査の迅速化への活用を図っている。
警察は,子どもが被害に遭った事案や,子どもに対する犯罪の前兆と思われる声掛けやつきまといの発生に関する情報が,迅速に保護者などに対して提供されるよう,警察署と学校・教育委員会との間で情報共有体制を整備している。これらの情報を,都道府県警察のウェブサイトで公開し,電子メールなどを活用した発信も行っている。また,被害者本人からの申告が期待しにくく潜在化しやすい犯罪を早期に認知して検挙に結び付けるため,警察庁から委託を受けた民間団体が少年福祉犯罪や児童虐待事案,人身取引事犯に関する通報を国民から電話やインターネットにより匿名で受け付け,事件検挙への貢献度に応じて情報料を支払う「匿名通報ダイヤル」を運用している。運用が開始された平成19(2007)年10月1日から平成24(2012)年12月31日までの通報受理件数は7,864件であり,このうち39件が事件解決に結び付いた。
ウ 人身取引対策(内閣官房,警察庁,法務省,外務省,文部科学省,厚生労働省,国土交通省)
人身取引は,重大な人権侵害であり,被害者に対して,深刻な肉体的・精神的な影響を与え,その被害の回復が非常に困難である。人道的な観点からも,迅速・的確な取組が必要とされている。
政府では,「人身取引対策行動計画2009」に基づき,人身取引対策に係る懸案に適切に対処し,政府一体となった対策を推進している。また,外国の関係機関,国際機関及びNGOとの協力を強化して,人身取引の防止を図るとともに,潜在化している可能性のある人身取引事案をより積極的に把握し,その撲滅と被害者の適切な保護を推進している。
4 犯罪被害に遭った子ども・若者とその家族等への対応(警察庁,法務省,文部科学省,厚生労働省)
人格形成の途上にある少年が犯罪などにより被害を受けた場合,その後の健やかな育成に与える影響が大きい。被害を受けた少年の心のケアに当たっては,その悩みや不安を受け止めて相談に当たることや,家庭・友人関係・地域・学校といった少年が置かれている環境に関する問題を解決すること,関係機関が連携して必要な支援をしていくことが大切である。
警察は,被害者の再被害を防止するとともに,その立ち直りを支援するため,少年補導職員による指導助言や被害者に対するカウンセリングを継続的に行っている。臨床心理学や精神医学といった高度な知識・技能や豊富な経験を有する部外の専門家を「被害少年カウンセリングアドバイザー」として委嘱し,その適切な指導・助言を受けながら,支援を実施している。また,それぞれの地域において,保護者などとの緊密な連携の下に日常の少年を取り巻く環境の変化や生活状況を把握しつつ,きめ細かな訪問活動などを行うボランティアを「被害少年サポーター」として委嘱し,これらの者と連携した支援活動を推進している。(第2-3-23図)

文部科学省は,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを活用し,関係機関とのネットワークを活用するなど多様な支援方法を用いて,被害を受けた子どもの立ち直りを支援する活動を推進している。さらに,子どもの心のケアの充実を図るため,基本的理解や対応方法,学校における体制づくりに関する指導資料を養護教諭や一般の教職員を対象に作成するとともに,管理職や養護教諭をはじめとする教職員,スクールカウンセラーなどを対象としたシンポジウムを開催している。
5 いじめ被害,自殺対策
(1)いじめ被害対策
いじめは,決して許されないことであるが,どの子どもにも,どの学校にも起こり得るものである。いじめの問題については,その兆候をいち早く把握し,迅速に対応することが必要である。
平成24(2012)年度には,いじめの問題を背景として生徒が自らその命を絶つという,痛ましい事案をきっかけに,いじめの問題が大きな社会問題となった。いじめの問題については,学校だけでなく関係機関が緊密に連携して,子ども一人一人に対するきめ細かな支援を行うことが必要である。
ア いじめ問題に対する総合的な取組の推進(内閣官房,文部科学省)
文部科学省は,平成24(2012)年7月,「すべての学校・教育委員会関係者の皆様へ」と題する文部科学大臣談話125を発表し,すべての学校・教育委員会関係者に対して対応を促した(第2-3-24図)。同年9月には,文部科学省として,当面,いつまでに,どのようなことに取り組むのかを示す「いじめ,学校安全等に関する総合的な取組方針」126を策定した(第2-3-25図)。具体的には,
- 学校・家庭・地域が一丸となって子どもの生命を守る
- 国・学校・教育委員会の連携を強化する
- いじめの早期発見と適切な対応を促進する
- 学校と関係機関との連携を促進する
ための国の取組を示している。


教育再生実行会議は,平成25(2013)年2月,「いじめの問題等への対応について」と題し,「いじめは絶対に許されない」「いじめは卑怯な行為である」との意識を日本全体で共有し,子どもを「加害者にも,被害者にも,傍観者にもしない」教育を実現するよう,以下のことを提言した。
- 心と体の調和のとれた人間の育成に社会全体で取り組む。道徳を新たな枠組みによって教科化し,人間性に深く迫る教育を行う
- 社会総がかりでいじめに対峙していくための法律を制定する
- 学校,家庭,地域,すべての関係者が一丸となって,いじめに向き合う責任のある体制を築く(相談体制の整備,実態把握のための定期的な調査,いじめ問題への適切な対応に努める学校や教職員の適正な評価,教職員配置の改善充実 など)
- いじめられている子を守り抜き,いじめている子には毅然として適切な指導を行う(第三者的な組織の活用,警察などの関係機関との連携,加害者への懲戒や出席停止措置 など)
イ 教育委員会や学校における未然防止や早期発見・早期対応の促進(文部科学省)
① いじめ問題への取組の徹底を図る通知
文部科学省は,これまでも各種通知などにおいて,都道府県・指定都市教育委員会や学校などに対し,いじめの早期発見・早期対応,いじめを許さない学校づくり,教育委員会による支援,すべての学校でのいじめに関する「アンケート調査」の実施,いじめが生じた際には問題を隠さず学校・教育委員会と家庭・地域が連携して対処していくべきこと,問題行動に対しては懲戒・出席停止を含め毅然とした対応をとることなどを求めてきた。
平成24(2012)年11月に公表した「いじめの問題に関する児童生徒の実態把握並びに教育委員会及び学校の取組状況に係る緊急調査」127においては,いじめの認知件数が約14万件にのぼり,いじめの実態把握に関するアンケート調査や,いじめの問題に関する研修の実施,学校と警察との連携などについて,教育委員会と学校の更なる取組の充実が求められる状況がみられた。このため,同年11月27日,調査の結果を踏まえた取組の徹底を求めるとともに,学校評価・教員評価における留意点を示した「『いじめの問題に関する児童生徒の実態把握並びに教育委員会及び学校の取組状況に係る緊急調査』を踏まえた取組の徹底について(通知)」128を発出し,都道府県・指定都市教育委員会教育長や都道府県知事,附属学校を置く国立大学法人学長に対し,以下をはじめとする取組の徹底を周知した。
- 当該調査で認知された事案について継続して十分な注意を払い,いじめられる子どもを守り通すとともに,いじめる子どもに対しては毅然とした対応と粘り強い指導を行う必要があること
- 教育委員会は,管下のすべての学校に対して「アンケート調査」の確実な実施を求めるとともに,個別面談・日記の活用など更に必要な取組を行うよう指導・助言に努める必要があること,管下の学校においていじめが把握された場合には速やかに報告を受け適切な連携を図ることが重要であること,家庭や地域,警察と適切な連携協力を図る必要があること
- 学校は,いじめ問題の取組を定期的に点検し全教職員で共有した上で取組の改善につなげる必要があること,定期的に子どもから直接状況を聞く手法として「アンケート調査」の実施や個別面談・日記の活用など更に必要な取組を推進する必要があること,いじめが生じた際は特定の教員が抱え込むことなく学校全体で組織的に対応することが重要であること,学校と警察などの関係機関との連携が重要であること
- 学校評価・教員評価では,いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく,問題を隠さず,適切な実態把握や対応が促されるよう留意する必要があること
② 新しい形のいじめへの対応
文部科学省は,インターネット上の掲示板などを利用した特定の子どもに対する誹謗中傷などのネット上のいじめに対応するため,子どもや保護者向けの啓発用リーフレットや学校や教職員向けの対応マニュアルを配布している。平成24(2012)年9月には,学校・教育委員会が実施している学校ネットパトロールの効率的・効果的な実施方法や継続的な実施の在り方に関する取組事例・資料集を取りまとめ,教育委員会などへ配布した129。
③ いじめ対策等総合推進事業
平成25(2013)年度には,以下をはじめとする様々な取組により,いじめ問題に対する取組を総合的に推進する。(第2-3-26図)
-
国と地方公共団体に,外部人材活用によるいじめ問題への支援体制を構築
- 国が多様な専門家を「いじめ問題アドバイザー」として委嘱し,いじめの問題への効果的な対応などについて,専門的な見地から助言を得られる体制を整備
- 幅広い外部専門家を活用していじめ問題などの解決に向けて調整,支援する取組の促進
-
未然防止
- 道徳教育総合支援事業:社会性や規範意識,思いやりなどの豊かな人間性を育む道徳教育を推進
- 対話・創作・表現活動などを通じた子どもの思考力,人間関係形成能力の育成
- 子どもの健全育成のための体験活動の推進
- 子どもの健全育成を目的として行う小・中・高校の体験活動の取組を支援
-
早期発見・早期対応
- スクールカウンセラーの配置拡充:全ての公立中学校に配置し,心のケアに加え,教員のカウンセリング能力などの向上のための校内研修を実施するとともに,公立小学校への配置を拡充(全公立小学校の65%)
- 生徒指導推進協力員・学校相談員の配置:子どもの悩みや不安などの相談を受けたり子どもの非行・問題行動などの早期発見,緊急時の対応などを実施
- 24時間いじめ相談ダイヤルを周知徹底するための紹介カードの配布を拡充
- スクールソーシャルワーカーの配置拡充:教育に関する知識に加え,社会福祉などの専門的な知識と経験を有する専門家であるスクールソーシャルワーカーの配置を拡充(1,113人→1,355人)
-
教職員などの指導体制整備の充実・教員研修の充実
- 教職員定数の改善:教育再生実行の基盤となる教職員などの指導体制の整備として教職員定数を改善。特に,その中で,いじめ問題への特別な指導を行う学校への支援のため,加配定数(400人)を増
- 教員研修の充実
-
いじめの未然防止,早期発見・早期対応,事後支援を行うなど,いじめ問題などへの対応に関する実践的な取組の調査研究を実施

ウ いじめ被害に関する相談対応(警察庁,法務省,文部科学省)
文部科学省は,子どもが全国どこからでも,夜間・休日を含めていつでもいじめなどの悩みを相談することができるよう,全国統一の電話番号(0570-0-78310(なやみ言おう))130を設定し,24時間いじめ相談ダイヤルを実施している。このダイヤルに電話すれば,原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関に接続され,電話を受けた相談機関は,都道府県・指定都市教育委員会の実状に応じて,児童相談所,警察,いのちの電話協会,臨床心理士会をはじめとする様々な相談機関と連携・協力し,対応している。平成25(2013)年度には,電話相談窓口紹介カードの配布対象を1学年分から4学年分へと拡大し,24時間いじめ相談ダイヤルの周知徹底を図る。
警察は,非行防止教室などの様々な機会を通じて子どもや保護者に対し,少年相談活動でいじめ事案に関する相談を受け付けていることを周知するとともに,少年サポートセンターの警察施設外への設置,少年相談室の整備,少年相談専用電話のフリーダイヤル化,電子メールによる相談窓口の開設など131,いじめを受けた子どもが相談しやすい環境の整備を進めている。また,相談者が求める場合には,警察から学校に連絡して,連携した対応を行うなど,相談者に安心感を与えられるよう努めている。さらに,いじめの被害を受けた子どもに対して,保護者及び関係機関・団体との連携を図りつつ,被害を受けた子どもの性格,環境,被害の原因,ダメージ程度,保護者の監護能力などに応じて,少年サポートセンターが中心となり,少年補導職員によるカウンセリングの継続的な実施などの支援を行うとともに,被害少年カウンセリングアドバイザーや被害少年サポーターの活用により,きめ細かな支援を行っている。警察庁は,これらの取組を推進するため,平成25年1月に「学校におけるいじめ問題への的確な対応について」(通達)を都道府県警察に発出した。
法務省は,人権擁護機関において,
- ホームページ上の「インターネット人権相談受付窓口」(SOS-eメール)132で,パソコンや携帯電話からインターネットでいつでも相談できる窓口の設置
- フリーダイヤルの専用相談電話「子どもの人権110番」(0120-007-110)133の開設
- 全国の小中学生を対象とした「子どもの人権SOSミニレター」(便箋兼封筒)134の配布
などを行い,いじめをはじめとする子どもの人権問題について相談に応じている。(第2-3-27図)

平成24(2012)年度は,これらの窓口の広報の強化を図るとともに,専用相談電話「子どもの人権110番」の受付時間を延長するなど取組の強化を図った。平成24年における相談件数は以下の通りである。(第2-3-28図)
- 「子どもの人権110番」の相談件数は,28,384件であり,このうち,いじめに関するものは,4,287件(15.1%)
- 「子どもの人権SOSミニレター」の相談件数は,21,544件であり,このうち,いじめに関するものは,7,705件

これらを通じていじめ事案の情報を得た場合には,人権侵犯事件として調査し,教職員や学校と連携していじめ行為の中止や再発防止を図るなど,いじめを受けた子どもの救済に努めている(第2-3-29図)。また,教職員や学校のいじめに対する対応が不十分であったと認められたときは,教職員や学校に改善を促すなど,適切な対応に努めている。さらに,人権擁護委員や法務局・地方法務局の職員が,学校を訪問するなどして,いじめをなくすための様々な啓発活動も行っている。平成25(2013)年度には,いじめの被害にあった子どもが相談しやすくするため,人権相談窓口の更なる周知広報を図るなど,いじめをはじめとする子どもの人権問題対策の強化を図る。

COLUMN NO.7
いじめなどをテーマとした人権教室
法務省の人権擁護機関では,子どもに対する啓発活動として,「人権教室」を実施している。「人権教室」では,学校などに人権擁護委員や法務局職員が赴き,ビデオや紙芝居などの様々な手法を用いて,「いじめ」などをテーマに子どもと共に命や思いやりの心の大切さを考えている。
一例として,宮崎市内の小学校では,小中学生から募集した人権感覚あふれる標語を基に,地元高校生と共に人権擁護委員と法務局職員が作成した「人権かるた」を用いて,人へのやさしさや思いやりの心,命を大切にする心を育む人権教室を実施した。
その他の地域でも,様々な工夫を凝らして,人権教室を実施しており,大きな成果を得ている。

(2)自殺対策(内閣府,文部科学省,厚生労働省)
政府では,「自殺対策基本法」(平18法85)に基づく「自殺総合対策大綱」により,関係府省庁で連携して,自殺対策を総合的に推進している。同大綱では,思春期は精神的な安定を損ないやすく,受けた心の傷は生涯にわたって影響する可能性があり,子どもや若者の自殺対策は重大な課題であるとされている。
文部科学省は,子どもの悩みや不安を受け止めて相談に当たることが大切であることから,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の拡充など教育相談体制の一層の充実を図っている。(第2部第2章第3節2「相談体制の充実」を参照。)
6 被害防止のための教育
(1)安全教育
ア 学校における安全教育(文部科学省)
学校では,子ども自身が危険から身を守ることができるよう,発達の段階に応じて,「主体的に行動する態度」を育成し,自ら危険を予測・回避する能力を習得させるとともに,家庭や地域と連携を図りながら,学校の教育活動全体を通じた安全教育を推進している。
文部科学省は,教職員などへの研修や,子どもの対応能力の向上を図るための「防犯教室」,「交通安全教室」,「防災教室」の開催を支援している。平成24(2012)年度には,防犯や交通安全の内容も含めた小学生を対象とした教育教材を作成した。また,東日本大震災の教訓を踏まえた新たな防災教育手法の開発を行うためのモデル事業を行うとともに,防災教育に関する教職員向けの総合的な参考資料を改訂した。
イ 警察が行う防犯教育・交通安全教育(警察庁)
子どもが被害者となる略取誘拐事件といった凶悪犯罪が依然として発生しているなど,子どもを取り巻く環境は依然厳しい状況にある。
警察は,子どもが犯罪に巻き込まれる危険を予見する能力や危険を回避する能力を向上させるため,学校や教育委員会と連携して,幼稚園や保育所,小学校において,防犯教室を開催している。この防犯教室は,学年や理解度に応じて,紙芝居や演劇,ロールプレイにより,子どもが参加,体験できるようにしている。また,関係機関・団体と協力しつつ,保育所や学校などにおいて,発達の段階に応じて以下の習得を目標に,交通安全教育を行っている。
- 幼児に対しては,基本的な交通ルールの遵守,交通マナーを実践する態度,日常生活において安全な道路の通行に必要な基本的技能と知識
- 小学生に対しては,歩行者や自転車の利用者として必要な技能と知識
- 中学生に対しては,自転車で安全に道路を通行するために必要な技能と知識
- 高校生に対しては,二輪車の運転者や自転車の利用者として安全に道路を通行するために必要な技能と知識
また,保護者を対象とした交通安全講習会や,交通ボランティアによる通学路における子どもに対する安全な行動の指導などを行っている。
ウ 防災に関する各種取組(内閣府,消防庁,国土交通省,気象庁)
内閣府は,防災意識の高揚,防災知識の普及を図るため,幼児から成人を対象に防災ポスターコンクールを実施している。また,自然災害の知識を身に付けたり,対策を始める際に参考となる情報として,「みんなで防災」のホームページを公開している135。
消防庁は,ホームページ上に「こどもぼうさいe-ランド」を開設し,幼児から中学生の子どもを対象に,地震や風水害などの災害への備えや具体的な対応などをわかりやすく解説している136(第2-3-30図)。また,指導者向けのテキストや参考資料を「チャレンジ! 防災48」137ページで公開している。

気象庁は,緊急地震速報を利用した避難訓練の支援,教職員向け研修での説明,防災学習素材の作成など,教育関係機関と連携した様々な取組を通じて,防災教育を支援している。また,東日本大震災以降,防災教育の重要性が改めて認識されていることにかんがみ,子どもが地震や津波,火山噴火,大雨といった自然災害から身を守れるよう,教育関係機関とより一層の緊密な連携を図っている。平成25(2013)年度は,地震,津波,大雨に関することに特に重点を置き,既存の取組に加え,津波や竜巻に関する映像資料や防災気象情報に関するリーフレットなども活用した防災教育への支援を行う。
(2)メディアを活用する能力の向上(内閣府,総務省,文部科学省)
社会の情報化が進展する中で,子どもが情報活用能力を身に付け,情報を適切に取捨選択して利用するとともに,インターネットによる情報発信を適切に行うことができるようにすることが重要な課題となっている。「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(平20法79。以下「青少年インターネット環境整備法」という。)では,学校教育,社会教育,家庭教育においてインターネットの適切な利用に関する教育の推進に必要な施策を講ずるものと規定されており,同法に基づき策定された青少年インターネット環境整備基本計画(第2次)に関連施策が盛り込まれている。
ア 情報モラル教育の推進(文部科学省)
小中学校の新学習指導要領では,各教科での指導を通して「情報モラルを身に付けること」や,道徳において「情報モラルに関する指導に留意すること」などが新たに規定されている。高校の新学習指導要領では,必履修教科である共通教科「情報」において情報モラルを指導することとされている。これらにより,学校における情報モラル教育の充実が図られている。
文部科学省は,情報モラル教育の指導が確実になされるよう,教員による指導の具体的な取組の参考となる「教育の情報化に関する手引」138や,小中学校の教員が情報モラル教育を行うための参考資料である「情報モラル教育実践ガイダンス」139を配布している。(第2-3-31図)

イ メディアリテラシーの向上(総務省)
総務省は,子どもが安全に安心してインターネットや携帯電話といった多様なICTサービスを使いこなす能力を取得する機会の増進と質の向上のため,以下の取組を行っている。
- 子どものICTメディアリテラシーを総合的に育成するプログラム140の内容の充実
- 実践的なメディアリテラシー育成のための効果的なモデルシステムを構築し,実証を行い,その成果を報告書に取りまとめ
- 可視化を通じたリテラシー能力の向上のため,平成24(2012)年6月から7月にかけて,リテラシー能力を測定するために開発したテストを全国の高校23校の協力を得て実施・分析
- 「インターネットトラブル事例集」141を用いた啓発
平成25(2013)年度は,上記モデルシステムについて,平成24年度の実証を踏まえ,PDCAサイクルによるモデルシステムの改善,更新を行い,実効性の高い普及モデルを構築し,その成果を報告書に取りまとめて普及展開を図る。
(3)労働者の権利(厚生労働省)
(第2部第2章第2節1(1)「社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)の推進」を参照。)
(4)消費者教育(消費者庁,文部科学省)
(第2部第2章第2節1(1)「社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)の推進」を参照。)
(5)女性に対する暴力(内閣府)
内閣府では,若年層に対して指導的立場にある者を対象に,「交際相手からの暴力の予防啓発指導者のための研修」を実施している。
COLUMN NO.8
体罰の問題に対する取組の推進
平成24年度には,大阪市において,部活動中の体罰が背景にある生徒の自殺事案が発生し,大きな社会問題となった。
体罰は,学校教育法第11条で禁止されており,文部科学省では,平成19年2月5日付け初等中等教育局長通知「問題行動を起こす子どもに対する指導について」において示しているとおり,教員等は,子どもへの指導にあたり,いかなる場合においても,身体に対する侵害(殴る,蹴る等),肉体的苦痛を与える懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間保持させる等)である体罰を行ってはならないとしている。
また,平成25年1月23日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知「体罰禁止の徹底及び体罰に係る実態把握について」においても,体罰禁止の趣旨の周知徹底と,体罰を行った教員等への厳正な対応を求めるとともに,体罰の実態について主体的に把握し,文部科学省に対して報告するよう求めている。
さらに,教育再生実行会議の提言も踏まえ,平成25年3月13日には,懲戒と体罰の区別について現場の教員が理解しやすい丁寧な説明を行うことを目的として,体罰と判断される行為や認められる懲戒等の具体例を示したり,部活動指導にあたっての留意事項を示した初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」を発出し,以下のような懲戒・体罰に関する考え方を示した。
