特集 地域における青少年育成活動
2 青少年センター
(1)青少年センターとは
青少年センターは,青少年育成を目的として,全国の市町村を中心に設置されている機関である。その具体的な名称は,青少年センターのほか,少年補導センター,青少年育成センター,青少年指導センター,青少年相談センター,少年センターなど,地域の実情や主たる活動内容に応じ,様々である(以下この特集において「センター」という。)。
センターでは,いじめ・不登校・非行といった子どもや若者とその保護者が抱える悩みに対する相談活動をはじめ,非行や不良行為を行っている者に対する街頭補導活動1,有害環境2の浄化活動,各種イベントをはじめとする広報啓発活動,就労支援,居場所づくりといった活動が地域の実情に応じて行われている。
センターの始まりは,昭和27(1952)年に当時の京都市警察本部に設置された「少年補導所」だとされている。それ以来,全国各地で設置が進み,地域社会において青少年育成に係る活動の拠点として機能してきた。
(2)概要
① 設置数
平成25(2013)年には,全国に703か所のセンターが設置されている。昭和43(1968)年には327か所であったが,その後増加を続けた。1990年代に入った頃から増加が緩やかとなり,2000年代に入ってからはおおむね横ばいで推移している。(図表1(1))
都道府県別にみると,北海道が最も多く48か所,次いで兵庫県に29か所のセンターが設置されている。30歳未満人口10万人ごとの設置数をみると,高知県,福井県,徳島県,和歌山県が多い。(図表1(2))
② 職員
センターで勤務する職員の内訳をみると,地方公共団体の「一般職員」(全体の39.8%)と「非常勤職員」(同35.8%)の割合がほとんどを占めている。わずかではあるが「教員」(同5.3%)や「警察職員」(同1.6%)が配置されているセンターもある。(図表2)
③ 少年補導委員数
センターでは職員の他に,民間有志の少年補導委員が活動している。少年補導委員とは,市町村などから委嘱され,街頭補導活動や相談活動,補導少年に係る家庭・学校・警察への連絡・通告,環境浄化活動,広報活動を行う者である。
平成24(2012)年度には,約6万人の少年補導委員が各地のセンターで活動している。少年補導委員数は,1970年代以降大きく増加した後,1980年代半ば頃からは7万人台でおおむね横ばいで推移した。しかし,2000年代以降から徐々に減少し,現在では,大きく増加する前の昭和50(1975)年頃と同じ水準となっている。(図表3)
④ 活動内容
センターの活動内容をみると,相談活動(全体の71.1%)や補導活動(同65.4%),有害環境浄化(同61.5%)といった主に非行防止に係る活動を行っているセンターが多い。広報啓発を行うセンターも過半数(同59.9%)を超えている。一方で,数は少ないが,学習支援その他の立ち直り支援(同22.3%)や就労支援(同10.1%)を行っているセンターもある。また,これらすべての活動を一つの施設で行っているセンターも全国に31か所(全体の4.4%)存在する。(図表4)
⑤ 「子ども・若者育成支援推進法」に基づく「子ども・若者総合相談センター」
「子ども・若者育成支援推進法」第13条では,地方公共団体は,子どもや若者の育成支援に関する相談に幅広く対応するため,単独か共同で,地域住民からの相談に応じ,関係機関の紹介や情報提供・助言を行う拠点(「子ども・若者総合相談センター」)としての機能を担う体制を確保するよう努めなければならないと規定されている。
全国に703か所あるセンターのうち,「子ども・若者総合相談センター」として位置付けられているものは45か所(全体の6.4%)である。活動内容をみると,相談活動(全体の97.8%)はほぼすべてのセンターで行われている。また,「子ども・若者育成支援推進法」の主要な目的の一つが社会生活を営む上で困難を抱える青少年の支援ということもあり,前述のセンター全体での活動内容と比べると,立ち直り支援や就労支援を行っているセンターの割合が相対的に高い。(図表5)
⑥ 相談件数
相談件数をみると,平成23(2011)年度は全体で約22万件である。約10年前の平成12(2000)年と比較すると,センター数がほぼ横ばいの中で相談件数は約5万件増加している。(図表6(1))
相談方法の内訳をみると,来所による相談が一番多く(全体の58.7%),次いで電話による相談(同38.0%),メールによる相談(同3.3%)となっている。(図表6(2))
相談者の内訳をみると,本人からの相談(全体の42.0%)が最も多く,次いで家族(同32.8%),学校(同15.6%)となっている。(図表6(3))
⑦ 街頭補導
街頭補導の実施回数は,平成23(2011)年度には約18万回となっている。この30年間減少傾向が続いており,近年は減少幅が大きくなっている。都道府県別にみると,兵庫県と愛知県が突出している。(図表7)
街頭補導した青少年の数は,平成23(2011)年度には約24万人となっている。1980年代半ばまでに急増し,昭和60(1985)年には約50万人に達したが,その後は減少傾向が続いている。補導1回当たりの補導した青少年の数は,平成23年度には1.34人となっている。都道府県別にみると,愛知県,兵庫県,静岡県が多い。(図表8)
街頭補導した青少年の状況に応じ,家庭や学校,警察といった関係機関への通告や連絡も行われている。平成23(2011)年度の警察などへの通告件数は1,274件(街頭補導された青少年の0.5%),学校,家庭などへの通告件数は3,237件(同1.3%)となっている。(図表9)
(3)具体的な活動内容
ここでは,先進的な取組を行っているセンターの活動を紹介する。
① 市原市青少年指導センター
前述のとおり,補導活動などを行っているセンターは多いものの,立ち直り支援や就労支援まで行っているセンターは少ない。また,「子ども・若者育成支援推進法」に基づく「子ども・若者総合相談センター」と位置付けられているセンターも全国で44か所に過ぎない。しかし,昭和40年代頃から少年補導委員などによる補導活動や相談活動といった非行防止活動を行い,さらには法に基づく「子ども・若者総合相談センター」として就労支援に関する相談などを行っているセンターも存在する。千葉県の市原市青少年指導センターはそうしたセンターの1つである。
市原市青少年指導センターは,市内に住む子どもや若者の健全な育成と非行の防止を図ることを目的として,昭和47(1972)年に設置されたセンターである。相談活動では,電話相談・来所相談・訪問相談・メール相談の4つの方法で相談を受け付けている。本人からの相談,保護者からの相談,学校からの相談など,年間でおよそ500件以上の相談を受け付け,相談を受け付けた後は面談を行ったり,関係する専門機関の紹介などを行っている。
非行化防止活動の一環として街頭パトロールが行われている。この街頭パトロールは,青少年補導員と呼ばれる市から委嘱を受けたボランティアや市の防犯対策室,警察署とも連携して,登下校時や夕方を中心に,年間を通じて延べ650回実施されている(平成23年度実績)。パトロールでは,子どもが集まりやすい場所や非行や犯罪の被害につながる危険な場所の見回りのほか,不審者の発見にも力を入れている。パトロールで得た情報は,生活安心メールと呼ばれるメーリングリストにより,市内の住民に配信して,情報提供を行っている。また,パトロール中は,補導活動とは別に子どもへの「声掛け」活動にも力を入れており,帰宅時刻の時間帯などに「早く帰りなさい」といった声をかけ,注意喚起を子どもに促している。このほか,非行化防止の啓発活動として,市内小・中・高校生を対象にポスターや標語を募集して作品展を開催したり,学校に赴き,薬物乱用防止,携帯電話の安全な使い方,道徳や規範意識についての出前教室を開催している。(図表10)

少年鑑別所などから家庭に戻ってきた子どもの社会復帰(学校復帰)を支援する活動も行っている。社会(学校)に戻った後の周囲との接し方や家族との接し方について,面談形式で1~4日間かけて助言やアドバイスを行っている。
平成24(2012)年度から,「子ども・若者育成支援推進法」に基づく「子ども・若者総合相談センター」として位置付けられた。これにより,従来の健全育成や非行に関する相談に加え,ニートやひきこもりなどに関する相談も受け付けるようになった。これらの相談に対しては,情報の提供や助言,地域若者サポートステーション(サポステ)やひきこもりの自助グループといった連携する専門機関や団体を相談者に対して紹介するなど,つなぎ役としての役割を担っている(図表11)。センターが連携している関係機関は40近くにも及ぶ。この相談センターを開設するに当たり,平成23(2011)年度は連携先の機関・団体との連携会議を開催し,趣旨説明と共通理解を図っている。

子どもの幅広い悩みや相談に対しては,こうした横のつながりは大変重要であり,今後も継続してこうした情報交換の場を開催し,さらなる連携に力を入れていきたいとしている。
② 広島市青少年総合相談センター
広島市青少年総合相談センターでは,いじめや不登校などに関する相談を受けるほか,専属の相談員が困難を抱えた子どもへの就労や就学への意識付けを行うことによる立ち直り支援を行っている。
専属の相談員による街頭相談や警察,学校といった関係機関との連携により支援対象となる非行少年を把握し,人間関係を築いていく中で,立ち直りに向けた指導・助言を行っている。例えば,「働きたい」という場合は,相談員がハローワークと連携し,一緒に仕事を探す手伝いをする。また,「高校へ行きたい」,「資格を取りたい」という場合は,市の担当者が少年とボランティアとの間に入り,就学に向け,勉強を1対1でサポートするための調整を行うなど,非行からの立ち直りに向けた支援を行っている。(図表12)

支援につながった事例の中で,長期にわたって指導・助言を行った結果,仕事と学業を両立するに至るケースがある(図表13)。このような成功事例もあるが,連絡が取れなくなり支援につながらないケースもある。

これらの取組は,暴走族などの非行少年グループが盛んに活動していたことをきっかけに,暴走族少年などの立ち直りを目的として始まった経緯がある。しかし,近年,暴走族の減少や携帯電話等の普及に伴い,数年前と比べて非行の実態把握が難しくなっており,対象となる子どもが把握しづらい,アプローチをしても支援に至りにくいという現状がある。今後は,地域や関係機関との連携を強化し,早期発見に努めることとしている。