第2部 子ども・若者育成支援施策の実施状況
第2章 全ての子ども・若者の健やかな成長の支援
第4節 若者の職業的自立,就労等支援
1 就業能力・意欲の習得
(1)勤労観・職業観と職業的自立に必要な能力の形成
ア キャリア教育・職業教育の推進(文部科学省,厚生労働省,経済産業省)
現在の若者が直面する困難として,完全失業率や非正規雇用率の高さ,若年無業者の存在など「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないことが挙げられる。また,職業意識・職業観が未熟なこと,進路意識・目的意識が希薄なまま進学する者の増加など,若者の「社会的・職業的自立」に向けた課題がみられる。これらの原因・背景には,産業構造や就業構造の変化など社会全体を通じた構造的問題が存在しており,社会が一体となった対応が必要である。このような中で,学校教育においては,キャリア教育・職業教育を充実していくことが重要である58。
文部科学省,厚生労働省,経済産業省の3省は,学校,地域,産業界が一体となって社会全体でキャリア教育を推進していこうという気運を高めるため,「キャリア教育推進連携シンポジウム」を実施している59。平成25(2013)年度は,「キャリア教育実践による効果について~学校と企業の両面から~」をテーマに,学校関係者・企業関係者による基調講演,事例発表,パネルディスカッションを行った。(第2-2-23図)

文部科学省と経済産業省は,学校関係者や地域社会,産業界といった関係者の連携・協働による取組を表彰する「キャリア教育推進連携表彰」60を実施している。平成25年度は,応募のあった75団体の中から,最優秀賞1団体,優秀賞2団体,審査委員会特別賞1団体,奨励賞3団体を選定した(第2-2-24図)。

文部科学省は,上記のほか,以下の取組を行っている61。
- 企業による出前授業などの教育活動支援,職場体験・インターンシップ受入れ先の開拓やマッチングなど,地域における学校のキャリア教育を支援する組織の整備の促進(地域キャリア教育支援協議会設置促進事業)62。平成25年度は9地域を採択。
- 高校普通科におけるキャリア教育の実践に関する調査研究63
- 全国各地で高校の教員にキャリア教育の意義や重要性について理解を深めてもらうための「キャリア教育推進アシストキャラバン」の実施
- キャリア教育の趣旨の周知と指導内容の充実を図るため,小学校・中学校・高校において,学校の特色を生かしたキャリア教育の年間指導計画を作成する際に参考となるパンフレットを作成・配布し,文部科学省ホームページにも掲載64
- 学校や教育委員会におけるキャリア教育に関する研修のための動画コンテンツと資料を文部科学省ホームページで配信65
- 学校が望む支援と地域・社会や産業界などが提供できる支援をマッチングさせる特設サイト「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」66の運用(第2-2-25図)

平成26(2014)年度には新たに,高校にインターンシップコーディネーターを配置する事業を行う。また,社会の変化や産業の動向などに対応した高度な知識・技能を身に付け,社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成するため,先進的な卓越した取組を行う専門高校を「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」として指定し,調査研究を行う。
厚生労働省は,企業で働く者などを講師として中学校や高校に派遣し,職業や産業の実態,働くことの意義,職業生活を子どもに理解させ,考えさせる「キャリア探索プログラム」を実施している。平成24(2012)年度には,約3,480校において,約33.7万人の子どもが参加した。また,キャリア教育の企画・運用を担う人材を養成するための講習を行う「キャリア教育専門人材養成事業」を実施している。平成25年度は,中学・高校・大学のキャリア教育に携わる者を主な対象として講習を実施した。
経済産業省は,先進的な教育支援活動を行っている企業・団体を表彰する「キャリア教育アワード」を実施している67。また,職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を「社会人基礎力」68として整理し,大学教育を通した育成や評価の取組の普及を図っている(第2-2-26図)。平成25年度は,以下の取組を行っており,地域の産学が互いに協働する教育が浸透し始めている。

- 「社会人基礎力」の育成・評価方法の優良事例を選出する「社会人基礎力を育成する授業30選」
- 「社会人基礎力」の育成事例を学生自身がプレゼンテーションする「社会人基礎力育成グランプリ」の開催(平成25年度で7回目,全国44大学の49チームが参加)
- 大学教職員や企業人事担当者を対象に社会人基礎力の教育手法などについて発信・意見交換を行う「産業界ニーズに対応した人材育成に関する研修会」の実施(全国7か所)
なお,一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会がキャリア教育コーディネーターの育成・研修や認定を行っている。
イ インターンシップ(就業体験)の推進(文部科学省,厚生労働省,経済産業省)
職場体験やインターンシップ(就業体験)は,子どもや若者が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となる。異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること,子どもや若者が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること,学校における学習と職業との関係についての子どもや若者の理解を促進し学習意欲を喚起すること,職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることから,極めて高い教育効果が期待される。
文部科学省は,体系的なキャリア教育・職業教育の推進に向けたインターンシップの更なる充実に関する調査研究協力者会議69において,大学などにおけるインターンシップの実施実態の把握と検証,キャリア教育・職業教育におけるインターンシップの位置付けの明確化,プログラムの質的向上や参加学生数の増加など質的・量的充実に向けた取組などの検討を行い,平成25(2013)年8月に「『インターンシップの普及及び質的充実のための推進方策について』意見の取りまとめ」70を公表した。また,それに基づき,文部科学省,厚生労働省,経済産業省は,「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(平成9年9月18日文部省,通商産業省,労働省)を平成26(2014)年4月に一部改正し,公表した。また,前述の「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」などにより,キャリア教育の中核的な取組の一つとして,学校における職場体験やインターンシップの普及・促進に努めている。前述の「地域キャリア教育支援協議会」によるインターン受入れ先の開拓とマッチングの促進も行っている。
経済産業省は,地域における起業や中堅中小企業の中核的な人材の育成に教育的な効果が高い長期インターンシップを推進するため,受入れ企業促進に向けたツール・メソッドの整備,産学をつなぐ専門人材のための活用ガイドの策定に取り組んだ。
ウ 女性若年層に対する啓発(内閣府,厚生労働省,文部科学省,経済産業省)
内閣府は,女性若年層に対して,女性の進出が遅れている理工系などの分野に関する情報提供を行っている。平成26(2014)年には,主に中学生・高校生を対象とし,研究者による講演や研究者とキャリアなどについて討議を行う「女子中高生の医理系進路選択支援~医理系の研究って,すっごくおもしろい!」71や,大学,企業,研究機関,メディア,海外などの様々な分野の最前線で活躍する理系の女性による講演やグループディスカッションを行う「理系の仕事~いつか未来を創るあなたへ」72を開催した。
厚生労働省は,女子学生が的確に職業や進路を選択するために自らの将来を多角的に考える契機となる資料を作成し,高校や大学を通じて配布している。また,文部科学省と連携し,就職先を選択する際には「ポジティブ・アクション応援サイト」73などを参考にして各企業の女性の活躍状況やポジティブ・アクションの取組も考慮するよう,大学や高等専門学校を通じて,学生に対する啓発を図っている。(第2-2-27図)

文部科学省は,男女ともに多様な選択が可能となるよう,男女共同参画の視点に立ったキャリア形成支援の推進を図るための教材を作成し,普及・啓発を図っている。
経済産業省は,育児などで一度退職し再就職を希望する女性などに対して職場経験のブランクを埋める機会を提供するため,中小企業・小規模事業者が実施する職場実習を支援する「中小企業新戦力発掘プロジェクト」を実施している。
独立行政法人国立女性教育会館74は,大学などと連携し,女子学生を対象に,就業も含めた女性としてのキャリア形成について学ぶ研修や支援サイトによる情報提供を行っている。
(2)能力開発(厚生労働省,文部科学省)
ア 公的職業訓練
厚生労働省は,都道府県とともに,職業に必要な知識・技能を習得させることにより若者の就職を支援するため,公共職業能力開発施設のほか,大学を含む多様な民間教育訓練機関も活用しつつ,公共職業訓練を実施している。また,求職者支援制度75により,雇用保険を受給できない若者などに対して,職業訓練を実施しつつ,訓練期間中の生活を支援するための給付金を支給し,ハローワークにおけるきめ細かな就職支援を行っている(第2-2-28図)。

イ ジョブ・カード制度,若年技能者の人材育成
厚生労働省は,以下の取組によりジョブ・カード制度76を推進し,求職者と求人企業とのマッチングや実践的な職業能力の習得と,安定的な雇用への移行などを促進している。(第2-2-29図)
- 一定の知識などを有するキャリア・コンサルタントによるジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングの実施
- 企業における実習と教育訓練機関などにおける座学を組み合わせた訓練を含む実践的な職業訓練(職業能力形成プログラム)の受講の機会の提供
- キャリア・コンサルティングにより整理された職務経歴書などのほか訓練終了後の職業能力評価の情報をとりまとめた「ジョブ・カード」の就職活動などにおける活用
平成26(2014)年1月末現在,ジョブ・カード取得者数は約103万人に達している。また,工業高校や職業訓練校で技能を学ぶ学生や訓練生を対象として,若年技能者の人材育成を目的とした3級技能検定を毎年実施している。若年者のものづくり離れ・技能離れがみられる中で,技能の魅力・重要性を啓発し,若年ものづくり人材の確保・育成を促すため,優れた技能者を「ものづくりマイスター」として認定し,若年技能者などへの技能継承などを支援する「若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター制度)」を平成25年度から開始した。平成26(2014)年度は,この制度によるものづくりマイスターの学校派遣などによる技能検定受検を目指す若者への実技指導,技能検定の裾野に当たる3級職種の新設などの「目指せマイスター」プロジェクトを推進し,技能検定受検などのものづくり分野への誘導を図っている。
こうした取組を通じて,若年者の技能修得意欲を向上させるとともに,教育訓練の成果を社会一般の評価として明確化するなど,能力を軸とした若年労働市場の基盤整備を図っている。
文部科学省は,産業界のニーズを踏まえた中核的専門人材養成を推進していく観点から,専修学校,大学,大学院,短期大学,高等専門学校,高校と産業界などが産学官コンソーシアムを組織し,社会人や大学生,専門学校生,高校生が就労やキャリアアップに必要な知識・技術・技能を習得するための学習システムの構築を図っている。
2 就労等支援の充実
(1)高校生等に対する就職支援(文部科学省,厚生労働省)
文部科学省は,都道府県教育委員会などに対し,都道府県労働局と連携した一層の求人開拓と未就職卒業者への配慮を依頼するとともに,経済団体に対しても,新規高校卒業者の求人枠の維持・拡大や求人秩序の確立,適正な採用選考の実施を要請している。また,進路指導主事などと連携して就職を希望する生徒に就職相談や求人企業の開拓を行う「高等学校就職支援教員」(ジョブ・サポート・ティーチャー)を配置する経費が地方財政措置されており,高校で活用されている。
厚生労働省は,ジョブサポーター77を活用し,在学中からの働く意義や職業生活についての講習や,地元企業を活用した高校内企業説明会,求人情報の提供,職業適性検査や各種ガイダンス・セミナー,求人開拓,未内定者に対する一貫した個別支援(職業相談,応募先の選定,面接指導など)を,学校と一体となって実施している。
(2)大学生等に対する就職支援等
ア 学生に対する就職支援(文部科学省,厚生労働省,経済産業省)
文部科学省は,学生の厳しい雇用情勢を受け,関係府省と連携しつつ,大学などの就職相談員とハローワークのジョブサポーターとの連携の促進などにより,大学などにおける就職支援体制を強化している。また,教育課程内外にわたり就業力の育成を目指して各大学が行う取組などを総合的に支援している。
厚生労働省は,
- 大学院・大学・短大・高専・専修学校などの学生や卒業後未就職の者を専門に支援する「新卒応援ハローワーク」78を全国に設置(平成26(2014)年4月1日現在,57か所)し,広域的な求人情報の提供や,職業紹介,中小企業とのマッチング,求人開拓,就職支援セミナー・面接会の実施を行っている。ジョブサポーターを活用し,就職までの一貫した担当者制による個別支援(求人情報の提供,就職活動の進め方,エントリーシートの添削,面接指導など)や臨床心理士による心理的サポートを行っている。また,新卒応援ハローワークなどに配置されているジョブサポーターを活用した全校担当制や,大学などへのジョブサポーターの相談窓口設置・出張相談を実施するなど,学校などとも連携を強化している。これらの新卒応援ハローワークの支援により,平成24(2012)年度は延べ約71万人が利用し,約9万人の就職が決定した。(第2-2-30図)
- 1人でも多くの新卒者・既卒者に「新卒応援ハローワーク」やジョブサポーターを知ってもらうため,学生向け・第二新卒向けの就職情報ポータルサイトを運営する民間企業の協力により,新規学校卒業予定者などに対する広報を実施している79。
- 卒業後3年以内の既卒者の就職を促進するため,雇用対策法(昭41法132)に基づく「青少年雇用機会確保指針」の周知を進めている。
- 文部科学省と経済産業省と連携し,未内定の学生・生徒が1人でも多く卒業までに就職できるよう,平成26年1~3月までを集中支援期間とし,「未内定就活生への集中支援2014」として,新卒応援ハローワークによる支援や,就職面接会,中小企業とのマッチングなどを集中的に実施した80。また,4~6月までを未就職卒業生に対する集中支援期間とし,「未就職卒業生への集中支援2014」として同様の支援を集中的に実施している81。
- 若者の採用・育成に積極的な中小・中堅企業を「若者応援企業」として積極的にPRなどを行う「若者応援企業宣言事業」を実施している。
平成26年度は,採用時に必要な社会的スキルが乏しいなど就職活動に困難を有する学生などを対象として,その特性に配慮した職業訓練の受講機会を提供し,若者の就職支援を促進する。また,新卒応援ハローワークに就職後の職場定着支援などの相談窓口を設置し,就職活動から職場で活躍するまでの総合的なサポートを実施する。
経済産業省は,新卒者などの未就職者に対し,中小企業・小規模事業者の事業現場で働く上で必要な技能・技術・ノウハウを習得する機会を提供するため,中小企業・小規模事業者が実施する職場実習を支援する「新卒者就職応援プロジェクト」を実施している。また,地域の中小企業支援機関や大学などが連携し,中小企業と学生との日常的に顔が見える関係構築から新卒者などの採用・定着までを一貫して支援する「地域中小企業の人材確保・定着支援事業」を実施している。
イ 秩序ある就職・採用活動への取組(文部科学省)
大学などの卒業予定者の就職・採用活動については,大学側が「大学,短期大学及び高等専門学校卒業予定者に係る就職について(申合せ)」を,企業側が「新規学卒者の採用・選考に関する企業の倫理憲章」をそれぞれ定め,双方が大学や企業へ十分周知し,尊重する形で行われてきたが,大学や経済団体から就職・採用活動開始時期の見直しがこれまで提言されてきた。
平成25(2013)年4月,安倍内閣総理大臣から経済団体に対し,近年の就職活動の過熱化を踏まえ学生の学修時間・留学などの多様な経験を行う機会を確保する観点から,平成27(2015)年度卒業・修了予定者からの就職・採用活動開始時期変更を要請した(第2-2-31図)。この要請内容は,「日本再興戦略」(平成25年6月閣議決定)にも盛り込まれ,これを受け日本経済団体連合会は,平成25年9月に,「採用選考活動に関する企業の倫理憲章」を見直し,「採用選考に関する指針」82を策定した。この就職・採用活動開始時期の変更を円滑に実現するため,平成25年11月には,経済3団体以外の外資系企業や中小企業などが加入する団体を含めた447の主要経済・業界団体に対し,再チャレンジ担当大臣・内閣府特命担当大臣,文部科学大臣,厚生労働大臣,経済産業大臣の連名により総理要請を周知した83。

文部科学省は,平成25年4月に文部科学大臣より大学などの関係団体に対し,国民や社会の期待に応える人材を育成するため,大学改革や大学教育の質的転換に積極的に取り組むよう要請した。また,大学などに対し,通知や説明会などを通じ,就職・採用活動開始時期変更の趣旨を周知している。
(3)職業的自立に向けての支援
ア ジョブカフェにおける支援(厚生労働省)
厚生労働省は,都道府県が主体的に設置するジョブカフェ84(「若年者のためのワンストップサービスセンター」。平成25(2013)年4月現在46都道府県に設置。)において,企業説明会や各種セミナーを民間団体に委託して実施している。また,都道府県からの要望に応じ,ジョブカフェにハローワークを併設(平成25年4月現在40都道府県)し,若者を対象とした職業相談・職業紹介を行っている。平成25(2013)年度のサービス利用者数は約168万人,就職者数は約12万人に上る。
イ ハローワークにおける支援(厚生労働省)
厚生労働省は,フリーターなどが安定した職に就くことができるよう,ハローワークにおいて,支援対象者一人一人の課題に応じて,トライアル雇用奨励金85の活用など,正規雇用化に向けた一貫したきめ細かな支援を実施している。特にフリーターの多い地域には支援拠点として,東京都・愛知県・大阪府の3か所に「わかものハローワーク」を,また,県庁所在地を中心に全ての都道府県に「わかもの支援コーナー」(50か所)を,それ以外の市町村に「わかもの支援窓口」(161か所)を設置し,正規雇用化の支援を強化している86。平成26(2014)年度には,わかものハローワークの設置箇所を28か所に拡大し,支援の充実を図る。これらの支援拠点では,
- 求職者の希望職種やスキルを基に,個人の状況に応じたプランの作成
- 担当者制による個別の職業相談・照会
- 求職者向け各種セミナー
などが実施されている。
ウ 若者の農林漁業への就業促進(農林水産省)
農林水産省は,若者が安心して農林漁業に就業していけるよう,給付金(年間150万円)の給付,資金の無利子貸付け,情報提供,就業相談会を実施するとともに,作業実態や就労条件を理解してもらうためのトライアル雇用,就業の場での研修を進めるための雇い主への助成,教育機関における研修を推進している。
エ 勤労青少年への福祉対策(厚生労働省)
厚生労働省は,「勤労青少年福祉法」(昭45法98)に基づき,勤労青少年の福祉対策を推進している。この法律に基づく「第9次勤労青少年福祉対策基本方針」(平成23(2012)~27(2015)年度)では,若者のより充実した職業生涯の実現に向け,その基盤となるキャリア形成の促進,自立を支える社会ネットワークの構築を目指すこととしている。また,働く若者の社会人・職業人としての自主的な努力を励ますために設けられている「勤労青少年の日」(毎年7月の第3土曜日)を中心とした啓発活動を行っている。
(4)起業支援(経済産業省)
経済産業省は,女性・若者/シニア起業家支援資金制度により,新規開業しておおむね7年以内の若者に対して,株式会社日本政策金融公庫による低利融資を実施している。
COLUMN NO.2
若者の「使い捨て」が疑われる企業などへの取組
若者の「使い捨て」が疑われる企業などが,社会的な問題となっている。
日本再興戦略(平成25年6月閣議決定)では,若者の活躍推進の観点から,「過重労働や賃金不払残業など若者の『使い捨て』が疑われる企業について,相談体制,情報発信,監督指導等の対応策を強化する。」とされている。

これを受け,厚生労働省は,若者の「使い捨て」が疑われる企業などへの取組の強化として,次のようなことを行った。
<1>平成25(2013)年9月1日(日)に若者の「使い捨て」が疑われる企業に関する全国一斉の無料電話相談を行い,1,044件の相談を受付。
長時間・過重労働 | 賃金不払残業 | その他の賃金不払 | 休日・ 休暇 |
解雇・ 雇止め |
最低賃金 | その他の労働条件 | パワハラ | セクハラ | その他の 職場いじめ |
その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
416 (39.8%) |
560 (53.6%) |
79 (7.6%) |
107 (10.2%) |
41 (3.9%) |
12 (1.1%) |
99 (9.5%) |
163 (15.6%) |
13 (1.2%) |
45 (4.3%) |
168 (16.1%) |
<2>同年9月を「過重労働重点監督月間」とし,若者の「使い捨て」が疑われる企業に対する,重点的な監督指導を実施。全国で5,111事業場に立入調査を行い,その82.0%に当たる4,189事業場において労働基準関係法令違反が認められたため,是正に向けた指導を行った。
重点監督実施事業場数 | 何らかの労働基準 関係法令違反が あった事業場数 |
違反事項 | ||
---|---|---|---|---|
労働時間 | 賃金不払残業 | 健康障害防止対策 | ||
5,111(100.0%) | 4,189(82.0%) | 2,241(43.8%) | 1,221(23.9%) | 71(1.4%) |
厚生労働省では,今後とも,過重労働が疑われる企業に対して,監督指導をしっかり行うとともに,相談体制や情報発信を強化していくこととしている。
平成26(2014)年度は,<1>「労働条件相談ダイヤル」の設置による夜間や休日における相談体制の強化や,<2>「わかものハローワーク」などにおいて職場における悩みに関する相談に対応する「在職者向け相談窓口」の設置,<3>労働基準法などの基礎知識・相談窓口をまとめた「労働条件相談ポータルサイト」の開設,<4>大学などでのセミナー実施による情報発信などを行う。
若者をはじめ,働く人が安心して活躍できる社会となることが望まれる。

COLUMN NO.3
「再チャレンジ懇談会」の開催
仮に失敗しても,意欲さえあれば何度でも再挑戦できる社会,そのための多様な機会をつくっていくという再チャレンジの推進は,安倍内閣の重要政策課題である。
このため,政府では,平成25(2013)年1月より,「若者・女性活躍推進フォーラム」を開催し,同年5月に,「我が国の若者・女性の活躍推進のための提言」を取りまとめた(平成25年版子ども・若者白書COLUMN3を参照。)。その成果を,今後の成長戦略である「日本再興戦略」に反映し,キャリア教育充実,就職支援機能の向上,就職・採用活動開始時期変更87,社会人の学び直し支援など再チャレンジを含む若者の活躍推進策が盛り込まれたところである。
さらに,本フォーラムに続いて再チャレンジに対する国民全体の意識の高揚を図るとともに,再チャレンジに関するベストプラクティスを社会に共有することを目的とした「再チャレンジ懇談会」を稲田再チャレンジ担当大臣の下で開催し,仕事をしていなかった若者や事業失敗者等様々な方と意見交換を行っている。
第1回の懇談会には,安倍総理大臣が出席し,壁にぶつかった経験がある若者などをしっかり生かしていく,全員が参加することによって日本は活力を取り戻していくことができること,「再チャレンジ懇談会」での意見を踏まえながら関連施策の推進に努めていきたい旨の発言がなされた。

政府では,引き続き,この懇談会において,実際に再チャレンジを果たし様々な分野で活躍されている若者・女性・高齢者など様々な世代の方々に参加いただき,それらを踏まえ,関連施策の推進等に活かしている。
(「再チャレンジ懇談会」については,首相官邸ホームページ(再チャレンジ懇談会)を参照。)
(「若者・女性活躍推進フォーラム」については,首相官邸ホームページ(若者・女性活躍推進フォーラム)を参照。)
〈「若者・女性活躍推進フォーラム(若者部分)」及び「再チャレンジ懇談会」を通じて実現・推進が図られた主要施策一覧〉
1.社会人の学び直し支援
- 中長期的なキャリア形成支援措置(雇用保険法の改正)
- 成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進
2.就職・採用活動時期変更の円滑な実施に向けた支援
(1)在学生に対するキャリア教育・就職支援機能の強化
- 産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業
- 中長期研究人材交流システム構築事業
- 公的賃貸住宅を活用した就職活動支援(試行実施)
(2)中小企業への就職支援策の充実・強化
- 若者応援企業宣言事業
- 地域中小企業の人材確保・定着支援事業
- 新卒者就職応援プロジェクト
(3)学卒未就職者への支援の拡充
- 新卒者等に対する就職支援
- 紹介予定派遣活用型正社員就職応援事業
3.起業の促進
- 中小企業ワンストップ総合支援事業(よろず支援拠点,支援ポータルサイトの運用)
- 新事業創出のための目利き支援人材育成等事業
4.事業失敗者等への支援
- 再チャレンジ支援融資の拡充
- 個人保証制度の見直し
5.若年無業者への支援
- サポステ卒業者ステップアップ事業
- 地域若者サポートステーションにおける体験先コーディネーターの配置
6.未来の地域経済を支える人材を共同で育成する仕組みの構築
- 地域企業人材共同育成事業
7.ハローワークの民間活用等
- 民間活用によるキャリア・コンサルティング等就職支援事業
- ハローワークの保有する求人情報の提供
- ジョブ・カードを活用した派遣労働者等の職業能力の向上等に係る調査・研究事業
(上記施策の詳細については,第4回再チャレンジ懇談会参考資料等を参照。)