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特集 今を生きる若者の意識~国際比較から見えてくるもの~

8 若者の意識から得られる施策への示唆

今後の子ども・若者育成支援施策に対する示唆について,<1>将来への希望,<2>結婚・育児に対する意識,<3>自国への認識の3つの観点から,考察する。

(1)将来への希望

日本の若者は諸外国の若者と比べ,自分の将来に明るい希望を持つことができていない。将来に明るい希望を持てるかどうかは,大きく分けると,<1>自分自身を肯定的に捉えられているか(内部要因),<2>自国の将来を肯定的に捉えられているか(外部要因)が関係すると考えられる。実際,自己肯定感が高い若者や自国の将来に明るいイメージを持っている若者は,将来への希望を持っている割合が高い2。(図表30)

では,自己肯定感が高い若者にはどのような特徴があるのか。分析結果からは,家族関係,学校生活,職場生活が充実し,満足している若者ほど,自己肯定感が高いことが読み取れる3(図表31)。先行研究4でも,親との信頼関係が成り立っている子に自信のある子が多いことや,家庭・学校・地域で自分が役に立つ存在であることを経験する機会を通じて自分の能力や存在意義を確認することで自信に変えていけるといった指摘がなされている。

これを踏まえると,以下のことが示唆される。まず,保護者が子育てに喜びや生きがいを感じることでより良い親子関係が築かれるよう,子育て支援や家庭教育支援を一層進めることが重要である。保護者が,子育てに対する不安や孤立を感じることなく,保護者自身の自己肯定感を持ちながら子どもと向き合える環境づくりを地域ぐるみで進めることが大切である。次に,学校教育においては,子どもたちが学校生活に一層満足できるよう,きめ細やかで質の高い教育の実現に向け教師が子どもたちと十分に向き合い指導できるような環境づくりを進めることなどが重要である。地域住民が子どもの学びに参加し,地域ぐるみで学校を支援する取組も有効であろう。

こうした取組により,家庭・学校・地域が一体となって,子ども・若者の成長を温かく時には厳しく見守り,支えることのできる環境づくりを一層進めることは,子ども・若者が社会とのかかわりを自覚し自己肯定感を育むことにつながり,ひいては子ども・若者が将来に明るい希望を持つことに寄与すると考えられる。

(子育て支援や家庭教育支援に関する施策は第2部第4章第1節1「保護者等への支援を行う「家庭を開く」取組」同第4節「子育て支援等の充実」を,学校づくりに関する施策は第2部第4章第1節2「外部の力も活用した「開かれた学校」づくり」を,それぞれ参照。)

(2)結婚・育児に対する意識

日本の若者は,早く結婚して自分の家庭を持ちたいという希望がある一方で,将来結婚している,あるいは子育てをしているといった将来イメージを持つことができていない。

結婚や育児に関して肯定的な将来イメージを持っている若者の特徴をみると,親子関係が良好であったり,働くことへの不安が少ない若者ほど,結婚や育児の将来像を前向きに捉えていることが確認できる5。(図表32)

子育て支援や家庭教育支援といった家族への支援を一層充実させるとともに,家族の大切さなどについての理解を促進することにより,若者が自らの家族形成に明るい将来像を描きやすいものとなるであろう。就労に関しては,若者の経済面における安定確保に向け,キャリア教育や職業的自立の支援を進め,若者の仕事に関する不安を払拭していかなくてはならない。子ども・若者が結婚や育児を希望していても,それをあきらめてしまわぬよう,これらの取組に一層力を入れて行く必要がある。

(子育て支援や家庭教育支援に関する施策は第2部第4章第1節1「保護者等への支援を行う「家庭を開く」取組」同第4節「子育て支援等の充実」を,家族の大切さなどについての理解促進に関する施策は第2部第4章第6節4「家族や地域の大切さ等についての理解促進」を,キャリア教育や職業的自立の支援に関する施策は第2部第2章第4節「若者の職業的自立,就労等支援」を,それぞれ参照。)

(3)自国への認識

日本の若者は,日本人としての誇りは高く,自国のために役立ちたいと思う者も諸外国と比べて多い。一方,「自らの参加で社会現象が少し変えられるかもしれない」と考える若者はそれほど多くない。日本のために何らか役に立ちたいのだけれども,具体的にどのように関与できるのか,また,自らの社会参加により具体的に社会を変えられるのかについては確たる意識を持つことができていないことが示唆される。分析結果をみると,自らの参加により社会現象を少しは変えられると考える若者は,自国のために役立ちたいという思いが強い。(図表33)

これらから,子ども・若者の社会形成・社会参加を促進する取組の重要性が示唆される。若者が主体的に社会の形成に参画しその発展に寄与する態度を身に付けるため,社会形成・社会参加に関する教育をはじめ社会形成への参画支援を一層進めることは,誇りある自国に役立ちたいという若者の思いにも応えることになるであろう。

(社会形成への参画支援に関する施策は第2部第2章第2節「子ども・若者の社会形成・社会参加支援」を参照。)


2 「将来への希望」を被説明変数とし,「自分自身に満足している」と「自国の将来性」を説明変数として回帰分析をすると,決定係数は低いものの,それぞれが高いほど「将来への希望」を持っており(ともに1%水準で有意),「自分自身に満足している」のほうが影響が大きいことが試算される。
3 「自分自身に満足している」を被説明変数とし,「家族といるときの充実感」「親から愛されている(大切にされている)と思う」「学校種別」「学校生活の満足度」「職場生活の満足度」(既卒者のみ)を説明変数として回帰分析をすると,決定係数は低いものの,<1>在学者については各項目が高いほど自分自身に満足している,<2>既卒者については「家族といるときに充実感」「学校生活の満足度」「職場生活の満足度」が高いほど自分自身に満足している(いずれも統計的に有意)ことが試算される。
4 本稿の執筆に当たり,以下をはじめとする文献を参考とした。
河地和子(2003)「自信力はどう育つか 思春期の子ども世界4都市調査からの提言」
根本橘夫(2007)「なぜ自信が持てないのか 自己価値感の心理学」
佐藤淑子(2009)「日本の子どもと自尊心」
古荘純一(2009)「日本の子どもの自尊感情はなぜ低いか」  ほか
5 「40歳になった時のイメージ(子どもを育てている)」を被説明変数とし,「家族といるときの充実感」「働くことに関する不安(そもそも就職できるか・仕事を続けられるか)」を説明変数として回帰分析をすると,決定係数は低いものの,「家族といるときの充実感」が高いほど,また,働くことに関する不安がないほど,40歳になった時に子どもを育てているイメージを持つことできている(ともに統計的に有意)ことが試算される。
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