第1章 子供・若者育成支援施策の新たな展開(第3節)

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第3節 すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクトの推進

経済的に厳しい状況に置かれたひとり親家庭や多子世帯が増加傾向にあることから,平成27(2015)年4月,関係府省による局長級の会議が設置され,自立を応援するための支援施策の検討が行われた。

また,児童虐待防止対策については,平成26(2014)年8月,内閣官房副長官及び関係府省の副大臣等からなる会議が設置され,同年12月に当面の対応策が取りまとめられた。

これらの会議において検討された施策は,いずれも全ての子供の安心と希望を実現するために必要なものであることから,平成27年8月には,両会議を統合し,「すべての子どもの安心と希望の実現に向けた副大臣等会議」が設置された。同会議は,同月,ひとり親家庭・多子世帯等自立支援策及び児童虐待防止対策の「施策の方向性」を取りまとめ,「子どもの貧困対策会議」(会長:内閣総理大臣)へ報告した。その後,同年12月には,財源確保も含めた政策パッケージとして,「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」を同副大臣等会議で取りまとめの上,同対策会議にて決定した(第1-3図)。同プロジェクトは,「ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト」及び「児童虐待防止対策強化プロジェクト」からなり,関係府省庁においては,これを踏まえ各種施策を着実に実施するとともに,平成28(2016)年通常国会(第190回国会)に「児童扶養手当法の一部を改正する法律案」等の関連法案を提出した。

第1-3図 すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト

なお,平成28年2月の同副大臣等会議において,同プロジェクトの愛称を「すくすくサポート・プロジェクト」(「すくサポ」)とすることが決定された。

1 ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト

経済的に厳しい状況に置かれたひとり親家庭や多子世帯の自立のためには,<1>支援が必要な者に行政のサービスを十分に行き届けること,<2>複数の困難な事情を抱えている者が多いため一人一人に寄り添った伴走型の支援を行うこと,<3>ひとりで過ごす時間が多い子供たちに対し,学習支援も含めた温かい支援を行うこと,<4>安定した就労を実現することなどが重要であり,就業による自立に向けた支援を基本にしつつ,子育て・生活支援,学習支援などの総合的な支援を実施することとした。

  • 児童のいる世帯のうち,ひとり親家庭の世帯の割合は上昇傾向。
  • ひとり親家庭の平均所得は,他の世帯と比べて大きく下回っており,子供の大学進学率が低い。
第1-5表 ひとり親家庭の現状
(1)児童のいる世帯の1世帯当たりの平均所得(平成25年)
(万円)
夫婦と未婚の子のみの世帯 699.1
ひとり親と未婚の子のみの世帯 268.0
(出典)厚生労働省「国民生活基礎調査」
(2)ひとり親家庭の子供の進学率
  ひとり親家庭 全世帯
高校等への進学率 93.9% 96.6%
大学等への進学率 23.9% 54.4%
(出典)「全国母子家庭等調査」(平成23年度),「学校基本調査」(平成27年度)
注 全世帯の高校等及び大学等進学について,通信制への進学者を除く。

ア 支援につながる

厚生労働省では,平成28(2016)年度においては,支援を必要とするひとり親が行政の相談窓口に確実につながるよう,相談窓口に関する分かりやすい情報提供やスマートフォンで検索できる支援情報ポータルサイトの活用等による相談窓口への誘導の強化を行いつつ,ひとり親家庭の相談窓口において,子育て・生活に関する内容から就業に関する内容まで,ワンストップで寄り添い型支援を行うことができる体制を整備し,必要に応じて,他の機関につなげることにより,総合的・包括的な支援を行う体制を整えることとしている。

また,相談窓口の認知度を高めるため,窓口の愛称を「こどもすくすくスクエア」と,相談員名を「こどもすくすくサポーター」とすること等を決定した。

イ 生活を応援

厚生労働省は,「母子及び父子並びに寡婦福祉法」(昭39法129)等に基づき,ひとり親家庭等の実情に応じた自立支援策を総合的に展開している。

また,

  • 放課後児童クラブ等終了後にひとり親家庭の子供の生活習慣の習得・学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくり
  • ひとり親家庭等の自立を促進するため,子供の修学等に必要な資金の貸付けを行う母子父子寡婦福祉資金貸付金による経済的支援
  • ひとり親に保証人がいない場合でも借りやすい仕組みとするため,保証人なしの場合に有利子となる資金の利率の引下げ

を行うこととしている。

さらに,児童扶養手当の多子加算額について,特に経済的に厳しい状況にあるひとり親家庭に重点を置いた改善を図ることとし,第2子の加算額を月額5千円から最大1万円(36年ぶりの引き上げ)に,第3子以降の加算額を月額3千円から最大6千円(22年ぶりの引き上げ)とするなどの「児童扶養手当法の一部を改正する法律」(平28法37)が平成28(2016)年通常国会(第190回国会)で成立した。

ウ 学びを応援

文部科学省では,家庭の経済状況にかかわらず,学ぶ意欲と能力のある全ての子供が質の高い教育を受けられるよう,幼児期から高等教育段階まで切れ目のない形での教育費負担の軽減に取り組んでいる。

初等中等教育段階においては,次の取組を行っている。

  • 幼稚園児の保護者に対する経済的負担の軽減や,公私立幼稚園間における保護者負担の格差の是正を図るため,入園料や保育料を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対し,幼稚園就園奨励費補助金により所要経費の一部補助を行っている。平成27年度は,市町村民税非課税世帯に当たる家庭の保護者負担軽減の拡充を行ったところであり,平成28年度は,低所得の多子世帯及びひとり親世帯等の保護者の負担軽減を図る。
  • 経済的理由により小学校・中学校への就学が困難と認められる子供の保護者に対して,各市町村が学用品の給与などの就学援助を行っている。
    • 就学援助率は上昇を続けている。
  • 高校生等に対しては,高等学校等の授業料に充てるために高等学校等就学支援金を支給している。また,非課税世帯及び生活保護世帯の授業料以外の教育費負担を軽減するため,各都道府県が実施する高校生等奨学給付金事業の支援を行っており,学年進行で着実に事業を実施するとともに,非課税世帯の給付額の増額を図る。

また,高等教育段階における取組としては,意欲と能力のある学生などが経済的理由により修学を断念することがないよう,独立行政法人日本学生支援機構が実施する大学等奨学金事業の充実や,各大学が実施する授業料減免への支援を行っている。

さらに,全ての子供が集う場である学校を貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして位置付け,

  • 家庭環境等に左右されず学校に通う子供の学力が保障されるよう,教職員等の指導体制の充実
  • 福祉部局との連携を図るスクールソーシャルワーカーの増員や貧困対策の重点加配
  • 経済的な理由や家庭の事情により,家庭での学習が困難であったり,学習習慣が十分に身についていない中学生等に対する,地域住民の協力やICTの活用等による原則無料の学習支援(地域未来塾)の拡充
  • 経済的困難を始めとする様々な問題を抱える孤立した家庭に対する,学校や地域の関係機関等と連携した家庭教育支援チーム等による訪問型支援の推進

等,総合的に取り組んでいる。

厚生労働省は,平成27(2015)年4月1日に施行された「生活困窮者自立支援法」(平25法105)に基づき,生活保護受給世帯の子供を含む生活困窮家庭の子供に対する学習支援事業を制度化し,貧困の連鎖の防止のための取組を強化した。この制度化により,子供の居場所づくりを含む学習支援の実施や,高校中退防止のための支援を含む進路相談,親に対する養育支援など,各自治体において地域の実情に応じ,創意工夫をこらした事業が実施されている。

エ 仕事を応援

厚生労働省では,より良い条件での就職や転職に向けた可能性を広げ,正規雇用を中心とした就業につなげていくため,高等学校卒業程度認定試験合格支援事業の支給対象にひとり親家庭の子供を追加するほか,就業に結び付きやすい資格を取得するため養成機関に通う際の生活費の負担軽減を図る高等職業訓練促進給付金の支給期間の延長等の拡充や,地方自治体が指定した教育訓練講座を受講し,修了した場合にその経費の一部を支給する自立支援教育訓練給付金の支給額の引上げ等を行うこととしている。

オ 住まいを応援

国土交通省は,ひとり親世帯・多子世帯等の子供を育成する家庭など住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定確保を図るため,低廉な家賃での公的賃貸住宅の供給の促進,空き家を活用した子育て世帯向けの賃貸住宅の整備,子育て支援施設等の併設による公的賃貸住宅団地の福祉拠点化への支援などを推進している。

カ 社会全体で応援

子供の貧困対策に関する官公民の連携・協働プロジェクトとして「子供の未来応援国民運動」が平成27(2015)年10月から始動した。具体的には,草の根で支援を行うNPO等に対しての助成などに活用する「子供の未来応援基金」を創設し,また,各種支援情報を一元的に集約した上で,地域別,属性等別,支援の種類別に検索できる総合的な支援情報ポータルサイト及びCSR活動2を行う企業等の支援リソースとNPO等が抱えているニーズの双方を掲載し,相互に検索できるマッチングサイトを整備した。平成28(2016)年度以降は,基金による事業の着実な実施や,ポータルサイトの情報量の充実などを行うこととしている。

また,内閣府では,「ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト」を効果あるものとするため,各地方自治体において,子供の発達・成長段階に応じて切れ目なく「つなぎ」,教育と福祉を「つなぎ」,関係行政機関,地域の企業,NPO,自治会などを「つなぐ」地域ネットワークの形成の支援を目的として,「地域子供の未来応援交付金」を創設した。

COLUMN NO.2
 みんな揃っていただきまーす。広がれ「子供食堂」の輪!

「ここはご飯を作る人がいっぱいいるね」,「(みんな揃って)いただきまーす。」食堂のような,おうちのような場所,そこは地域の人たちが,様々な事情を抱えた子供たちに無料や低価格で食事を提供する「子供食堂」である。

そんな「子供食堂」の活動が,現在,全国各地に相次いで誕生している。育ち盛りの子供に十分な栄養を摂ってもらうとともに,大人数で食卓を囲む楽しさを知ってもらう狙いもある。以下,その具体的な取組事例について述べる。

<1>要町あさやけ子ども食堂

要町あさやけ子ども食堂は,NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークが主催する事業で,店主の山田和夫氏が平成25(2013)年から月に2回,東京都豊島区要町の自宅を開放して,子供が一人でも入れる食堂と銘打って運営している。子供,親子連れ,ボランティア,見学者が各回平均40名以上集い,交流の拠点となっている。参加費は一食300円。食材は近所の寺院や,近隣の地元のスーパー,八百屋,会員からの提供のほか,近隣住民からも提供も受けている。

マスメディアで取り上げられ,これまでたくさんの見学者が訪れてきた。調理・配膳や子供の遊び相手などは,地域住民や大学生等がボランティアで担当している。わいわいガヤガヤ活気あふれる子供食堂は,参加する人みんなを元気にする。

あさやけ食堂の様子

<2>遊べる・学べる淡海子ども食堂

滋賀県社会福祉協議会滋賀の縁(えにし)創造実践センターは,「一人の不幸も見逃さない」「気づいたものが実践する」を基本姿勢に,志を同じくする滋賀県内の民間福祉関係者が分野や立場を越え参画し,設立した組織である。寂しさやしんどさを抱える子供たちが心の底から笑顔になれる居場所として,遊べる・学べる淡海子ども食堂を広げようと,立ち上げ支援や運営支援に取り組んでいる。心を元気にしてくれる「ごはん」を提供するだけでなく,地域のみんなが来られる場所にすること,そして貧困の連鎖,孤立から子供を守るために,孤立や生活困窮のSOSに気づき,支え合える地域をつくることを大事にしている。みんなでご飯を食べ,遊んだり,宿題をしたり,子供が信頼できる大人に出会って育つ場所を,センター会員と地域の人たちの思いと工夫で広げている。

平成27(2015)年度末で,滋賀県内で16か所の食堂が始まっており,県内各地で新たなひろがりを見せている。

遊べる・学べる淡海子ども食堂の写真

2 児童虐待防止対策強化プロジェクト

児童虐待の防止については,これまで,「児童虐待の防止等に関する法律」(平12法82)(以下「児童虐待防止法」という。)や「児童福祉法」(昭22法164)の累次の改正,「民法」(明29法89)などの改正による親権の停止制度の創設3により,制度的な充実が図られてきた。一方で,全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は一貫して増加し,平成26(2014)年度には児童虐待防止法制定直前の約7.6倍に当たる88,931件となっている。広報啓発の取組などによりこれまで気付かれなかった児童虐待が児童相談所に繋がるようになってきたと考えられる一方,児童虐待そのものが増えている可能性も否定できない状況にある。子供の生命が奪われるなど重大な児童虐待事件も後を絶たない。児童虐待は,子供の心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに,将来の世代の育成にも懸念を及ぼすため,その防止は,社会全体で取り組むべき重要な課題である。

  • 全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数は,児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べ,平成26年度には約7.6倍に増加。
  • 虐待者については,実母が半数以上を占める。

このような状況を踏まえ,「児童虐待防止対策強化プロジェクト」に基づき,発生予防から自立支援までの一連の対策の更なる強化を図ることとし,

  1. 児童虐待の発生予防として,地域社会から孤立している家庭へのアウトリーチ支援を積極的に行うことを含め,妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を通じて,妊娠や子育ての不安,孤立等に対応し,児童虐待のリスクを早期に発見・逓減する
  2. 発生時の迅速・的確な対応として,児童虐待が発生した場合に,児童の安全を確保するための初期対応が確実・迅速に図られるよう,児童相談所の体制整備や要保護児童対策地域協議会(第1-9図,第1-10図)の機能強化等を行う
    第1-9図 要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)
  3. 被虐待児童への自立支援としては,被虐待児童について,親子関係の再構築を図るための支援を強化するとともに,施設入所や里親委託の措置が採られることとなった場合には,18歳到達後や施設退所後等も含め,個々の児童の発達に応じた支援を実施し,自立に結びつける

などの対策を進めていくこととした。

児童虐待について発生予防から自立支援まで一連の対策の更なる強化等を図るため,「児童福祉法」の理念を明確化するとともに,子育て世代包括支援センターの法定化,市町村及び児童相談所の体制強化,里親委託の推進等の所要の措置を講ずる「児童福祉法等の一部を改正する法律案」が平成28(2016)年3月29日に閣議決定され,平成28年通常国会での成立を目指している。

平成28年4月,従前,内閣官房において担当していた児童虐待防止対策に関する企画及び立案並びに総合調整の業務について,「児童虐待防止対策に関する業務の基本方針について」(平成28年3月29日閣議決定)に基づき,厚生労働省に移管した。同省においては,「児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議」を開催するなど,児童虐待防止対策に関して行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整を行うこととされた。

ア 発生予防(文部科学省,厚生労働省)

文部科学省は,保護者の子育て不安の軽減や孤立感の解消のため,地域における就学時健診の機会を活用した子育て講座や,家庭教育に関する学習機会の提供,家庭教育支援チームによる相談対応の取組を支援している(家庭教育支援については,第4章第1節1(1)「家庭教育支援」を参照)。

厚生労働省は,子育て世代包括支援センターの法定化等を内容とした「児童福祉法等の一部を改正する法律案」を平成28(2016)年3月に国会に提出し,同センターを核として,産婦人科・小児科の医療機関等の地域の関係機関と連携しながら,妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を提供する仕組みの全国展開を図る。また,不安定な生活など,様々な事情により地域社会から孤立している子育て家族に対するアウトリーチ支援を強化するため,乳児家庭全戸訪問事業を全ての市町村において実施する。養育支援訪問事業についても,全ての市町村において実施することを目指すこととした。

イ 早期発見・早期対応,保護(警察庁,法務省,文部科学省,厚生労働省)

虐待を受けている子供や支援を必要としている家庭を早期に発見し,適切な保護や支援を行うためには,関係機関の間で情報や考え方を共有し,適切な連携の下で対応していくことが重要である。

文部科学省では,学校へのスクールソーシャルワーカー及びスクールカウンセラーの配置の充実や,教職員に対する児童相談所職員との合同研修への参加促進など,児童虐待を早期に発見し迅速かつ的確に対応できる体制の整備を進めている。

また,平成21(2009)年10月から運用を開始している児童相談所全国共通ダイヤルについて,より広く一般に周知し,児童虐待を受けたと思われる子供を見つけた時などに,ためらわずに児童相談所に通告・相談ができるように,平成27(2015)年7月1日から,これまでの10桁番号(0570-064-000)から3桁番号(189)に変更し,運用を開始した(第1-11図)。

第1-11図 児童相談所共通ダイヤル3桁化の広報資料

警察では,街頭補導や相談活動,通報,事件捜査・調査を通じて,児童虐待事案の早期発見・被害児童の早期保護に努めている。「警察官職務執行法」(昭23法136)に基づく犯罪の制止,立入などの権限行使,厳正な捜査,被害を受けた子供の支援,児童相談所の行う立入調査などに対する援助要請への的確な対応など,関係機関との連携を強化しながら子供の安全の確認と確保を最優先とした対応を行っている。

ウ 社会的養護の現状と課題

社会的養護は,保護者のない子供や被虐待児といった家庭環境上養護を必要とする子供,生活指導を必要とする子供に対し,公的な責任として,施設など4で社会的に養護を行う制度であり,約46,000人の子供が社会的養護の対象となっている(第1-12図)。

第1-12図 社会的養護の現状 

児童養護施設に入所している子供のうち半数以上が虐待を受けた子供であるほか,障害のある児童が増加している。このため,児童虐待防止対策の一層の強化とともに,社会的養護の質・量ともに拡充が必要となっている(第1-13図)。

  • 児童養護施設に入所している子供のうち,約6割は,虐待を受けている。
第1-13図 社会的養護の対象児童の被虐待経験

現在,日本の社会的養護は,約84%が乳児院や児童養護施設,約16%が里親・ファミリーホーム5での受入となっている。

児童養護施設などでは,できる限り家庭的な環境の中で職員との個別的な関係性を重視したきめ細かなケアを提供していくことが求められている。

厚生労働省は,ケア形態の小規模化を図るため,乳児院,児童養護施設,情緒障害児短期治療施設,児童自立支援施設を対象とした小規模グループケアの実施や,グループホームの設置を進めており,「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について」(「小規模化等の手引き」)6により,関係者に対して小規模化の意義や課題の周知を図っている。(第1-14図)

第1-14図 施設の小規模化と家庭的養護の推進

また,ケア形態の小規模化や里親等への委託等を推進するため,各都道府県市において,「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)」に基づき,平成27(2015)年度から平成41(2029)年度末までの15年間に,「本体施設入所児童の割合」,「グループホーム入所児童の割合」,「里親・ファミリーホームへの委託児童の割合」をそれぞれおおむね3分の1ずつにしていく「都道府県推進計画」を策定しており,計画に基づいた取組が開始されている。

エ 里親委託・里親支援の推進

里親制度7は,何らかの事情により家庭での養育が困難になったり受けられなくなったりした子供に,温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度である。家庭での生活を通じて,子供が成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより,子供の健全な育成を図るものである。

厚生労働省は,里親委託優先の原則を明示した「里親委託ガイドライン」8に基づき,里親委託を推進している(第1-15図)。里親支援機関事業や,児童養護施設と乳児院への里親支援専門相談員の配置(平成27年10月現在368か所)により,地方公共団体の取組を促している9。また,毎年10月を里親月間として定め,里親制度の普及促進に係る集中的な取組が地域の実情に応じてなされるよう要請している。

第1-15図 里親制度

オ 施設退所児童等の自立支援策の推進

社会的養護の下で育った子供は,施設などを退所し自立するに当たって,保護者などから支援を受けられない場合が多く,その結果さまざまな困難に突き当たることが多い。このような子供が他の子供と公平なスタートが切れるように自立への支援を進めるとともに,自立した後も引き続き子供を受け止め,支えとなるような支援の充実を図ることが必要である。

厚生労働省は,こうした支援の充実を図るため,以下の取組を実施している。

  • 都道府県が行う児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)を推進するため,その費用を負担金で支弁
  • 施設を退所した後の地域生活と自立を支援するとともに,退所した人同士が集まり,意見交換や情報交換・情報発信を行えるような場を提供する「退所児童等アフターケア事業」
  • 施設などを退所する子供は親がいないといった事情により身元保証人を得られないことが多いため,就職やアパートの賃借に影響を及ぼすことがないように施設長などが身元保証人となる場合の補助を行う「身元保証人確保対策事業」
  • 家賃相当額や生活費の貸付を行う事で安定した生活基盤を築くための「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業」を創設

カ 施設機能の充実

厚生労働省は,児童養護施設,乳児院,情緒障害児短期治療施設,児童自立支援施設,母子生活支援施設の5つの施設運営指針,里親及びファミリーホーム養育指針,第三者評価の基準により,施設運営の質の向上を図っている。

キ 被措置児童等に対する虐待の防止

施設入所や里親委託などの措置がとられた子供(以下「被措置児童等」という。)への虐待があった場合には,その子供を保護し,適切な養育環境を確保することが必要である。また,不適切な施設運営や事業運営が行われている場合には,施設や事業者を監督する立場から,「児童福祉法」に基づく適切な対応が必要となる。

このため,厚生労働省は,「被措置児童等虐待対応ガイドライン」10により,被措置児童等への虐待の防止を図っている。ガイドラインでは,都道府県の関係部局の連携体制や通告があった場合の具体的対応のための体制をあらかじめ定めること,都道府県児童福祉審議会の体制を整備すること,関係施設の協議会との連携・協議を強化し被措置児童等への周知や子供の権利についての学習機会の確保を図ることなどが具体的に示されている。


2 企業が社会に対して責任を果たし,社会とともに発展していくための活動(corporate social responsibility)。
3 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv-jinshin/#shinken
4 各施設の概要はhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/01.htmlを参照。
5 養育者の住居で養育を行う家庭的養護。
6 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/tuuchi-92.pdf
7 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/02.html
8 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_11.pdf
9 里親委託率を伸ばしている地方公共団体では,児童相談所への専任の里親担当職員の配置や,里親支援機関の充実,体験発表会,市町村と連携した広報,NPOや市民活動を通じた口コミなど,様々な努力が行われている。.
10 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/04.html
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