第2章 全ての子供・若者の健やかな育成(第1節)

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第1節 自己形成のための支援

1 日常生活能力の習得

(1)基本的な生活習慣の形成

子供の心身の健康や意欲は,正しい生活習慣の下での充足感のある生活が基盤となる。生活習慣づくりは,自己管理能力を身に付けていくことの基礎になることも期待される。

ア 学校教育における取組(文部科学省)

学校教育では,道徳や特別活動を始め学校の教育活動全体を通じて,基本的な生活習慣の形成を図るための指導が行われている。平成20(2008)年と21(2009)年に改訂された学習指導要領(以下「現行学習指導要領」という。)では,特に小学校低学年において,挨拶などの基本的な生活習慣や社会生活上のきまりを身に付け,善悪を判断し,人間としてしてはならないことをしないことに関する指導を重視するなど,道徳教育の充実を図っている。

文部科学省は,「心のノート」を全面改訂して作成した道徳教育用教材「私たちの道徳」を全国の小・中学生に配布した(第2-1図)。また,教育再生実行会議の第一次提言などを踏まえ,平成27(2015)年3月27日に,平成30(2018)年度から小学校,平成31(2019)年度から中学校において道徳を「特別の教科」に位置付けるための学習指導要領の一部改正などを行い,平成27年4月からは移行措置として,改正後の学習指導要領の全部又は一部について実施可能となっている。

第2-1図 「わたしたちの道徳」

イ 社会全体で取り組む子供の生活習慣づくり(文部科学省)

文部科学省は,早寝早起きや朝食をとるといった子供の望ましい基本的な生活習慣を育成し,生活リズムを向上させるため,「早寝早起き朝ごはん」全国協議会や民間団体と連携して「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進している(第2-2図)。平成27(2015)年度で国民運動を開始してから10年目を迎え,PTAを始め,経済界,メディア,有識者,市民活動団体,教育・スポーツ・文化関係団体,読書・食育推進団体,行政などの参加を得て,子供の基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる運動,ウェブサイトによる情報提供などを展開している。

第2-2図 早寝早起き朝ごはんに関する小学校低学年とその保護者向けリーフレット

また,平成27年度は,家庭と学校,地域の連携による中高生を中心とした子供の生活習慣改善のための実証研究として,新たに「中高生を中心とした生活習慣マネジメント・サポート事業」を実施した。同事業において,平成26年度に作成した中高生や保護者などを対象とした普及啓発資料や指導者用資料を活用しつつ,地域における先進的な取組を支援し,その効果を検証・分析した上で,広く周知することで,効果的かつ実践的な生活習慣改善の取組を全国に推進している。

ウ 青少年教育施設における取組(文部科学省)

青少年教育施設では,集団宿泊体験を通じて規律ある生活をする態度を養うため,学校や青少年団体に対して広く学習の場や機会が提供されている。

独立行政法人国立青少年教育振興機構は,学校や青少年団体などが全国の国立青少年教育施設を利用して行う活動に対して,必要な助言・指導などの支援を行っている。

エ 食育活動の推進(内閣府,文部科学省,厚生労働省,農林水産省)

  • 20代の朝食欠食率が特に高い数値で推移している。

子供に対する食育は,心身の成長と人格の形成に大きな影響を及ぼし,生涯にわたって健全な心と身体を培い,豊かな人間性を育んでいく基礎となるものである。近年,偏った栄養摂取といった食生活の乱れや肥満・痩身傾向が見られることから,子供が食生活に関して基本的な知識や習慣を身に付けられるよう,家庭や学校,地域における取組が重要である。

平成27(2015)年度は,「第2次食育推進基本計画」(平成23年3月31日食育推進会議決定)に基づき,朝食を欠食する国民の割合の減少を目標として掲げながら,子供や若者の食育の推進に取り組んできた。また,新たに作成した平成28(2016)年度からの5か年計画である「第3次食育推進基本計画」(平成28年3月18日食育推進会議決定)においては,従来の取組を継続しつつ,食育に関する知識,意識,実践について課題が多い若い世代を中心とした食育の推進を重点課題の一つとし,「栄養バランスに配慮した食生活を実践する若い世代の割合の増加」等,若い世代に関する目標も新たに設けて,子供や若者の食育の推進に一層取り組むこととしたところである。

さらに,内閣府では,平成27年版食育白書において「若い世代の食育の推進」を食育推進施策の課題と取組(特集)として取り上げるとともに,「食育ガイド」を用いて,一人一人の国民が自ら食育に関する取組が実践できるよう取り組んできた。

なお,内閣府が担ってきた食育推進基本計画の作成及びその実施等の食育推進に係る事務は,平成28年度から農林水産省へ移管された。

学校教育では,幼稚園教育要領や学習指導要領に食育の推進に係る記述が盛り込まれ,その内容の充実が図られている。文部科学省は,食に関する指導を行う栄養教諭の配置を促進しており,平成27年5月現在,全国の公立小中学校等で5,436名が配置されている。

厚生労働省は,妊娠中から適切な食生活を支援し,乳幼児期からの望ましい食習慣の定着を図るため,妊産婦や子育て家庭を対象とした食に関する学習機会や情報の提供を推進している。

農林水産省は,地域の実情に応じた食育活動や,消費者の様々なライフスタイルの特性・ニーズに対応した食育メニューを,関係者の連携のもと体系的に提供するモデル的な食育活動に対する支援を通じて,ごはんを中心に多様な副食を組み合わせ栄養バランスに優れた「日本型食生活」の実践を促進している。また,食や農林水産業への理解を深めるための教育ファームの実施などの食育を推進している。(第2-4図)。

第2-4図 農業体験活動

内閣府の食品安全委員会は,ホームページに「キッズボックス」を設け,子供向けの食品安全に関する情報をイラストを用いて分かりやすく解説している。また,小学校5・6年生とその保護者を対象とし,食品安全委員会委員との意見交換を通して食の安全について楽しく学び,理解を深めてもらう「ジュニア食品安全委員会」を夏休み期間中に開催している。

(2)規範意識等の育成(警察庁,総務省,文部科学省)

近年,いじめの社会問題化や重大事件の続発など,子供の問題行動は教育上の大きな課題となっている。善悪の判断といった規範意識や倫理観の育成を図ることが,これまで以上に求められている。このため,学校・家庭・地域が十分連携を図り,子供の豊かな人間性や社会性を育む取組を進める必要がある。

学校教育では,国語や道徳,特別活動を始め学校の教育活動全体を通じて,誰に対しても思いやりの心を持つことや広い心で自分と異なる意見や立場を大切にすることに関する指導が行われている。また,伝え合う力の育成を重視し,発表・討論を積極的に取り入れた学習活動が行われている。

青少年教育施設では,社会性や協調性を育むため,自然体験や集団宿泊体験といった様々な体験活動の機会と場が提供されている。

警察は,職員の学校への派遣や少年警察ボランティアなどの協力により,非行防止教室を開催している。具体的な非行事例を題材にして直接子供に語り掛けることにより,子供自身の規範意識の向上を図り,非行防止に取り組んでいる。また,教育委員会などの関係機関と連携し,中学生や高校生を対象とした犯罪被害者などによる講演会である「命の大切さを学ぶ教室」を開催したり,大学生を対象とした犯罪被害者支援に関する講義を実施したりすることなどを通じて犯罪被害者などへの配慮や協力への意識の涵養に努めている。

総務省は,子供のメディアリテラシー1を向上させるため,小学生・中学生・高校生用の教材を開発し,広く貸出しを行っている。また,ホームページ2にこの教材や小学校・中学校教員を対象とした授業実践パッケージを掲載し,提供している。

(3)体験活動の推進(文部科学省)

子供の「生きる力」を育む上で,自然体験を始め文化・芸術や科学に直接触れる体験的な活動が重要である。社会で求められるコミュニケーション能力や自立心,主体性,協調性,チャレンジ精神,責任感,創造力,変化に対応する力,異なる他者と協働する能力を育むためには,様々な体験活動が不可欠である。

このため,国や地方公共団体,地域,学校,家庭,民間団体,民間企業などがそれぞれの立場で自らの役割を適切に果たし連携して社会総ぐるみで,人づくりの“原点”である体験活動の機会を意図的・計画的に創出していくことが必要である(第2-5図)。また,NPOや子供会,青年団,青年会議所といった多くの民間団体が,様々な体験活動プログラムを企画・実施しており,これらの団体の活性化も求められている3(第2-6図,第2-7図)。

  • 子供の頃に自然体験や地域活動を多く経験した人の方が,大人になってから,意欲・関心や職業意識が高いことがうかがえる。
  • 学校以外の団体が行う自然体験活動への参加率は減少傾向にある。

文部科学省は,家庭や企業などへ体験活動に対する理解を求めていくための普及啓発を推進するとともに,体験活動の評価・顕彰制度に関する調査研究や体験活動を推進する企業の表彰に取り組んでいる(第2-8図)。また,家庭,学校,青少年関係団体,NPOなどをネットワーク化し,地域における持続可能な体験活動推進の仕組みづくりを支援している。

第2-8図 青少年の体験活動推進企業表彰

独立行政法人国立青少年教育振興機構は,社会全体で体験活動を推進する気運を高めるため,青少年団体と連携して,「体験の風をおこそう」運動を推進している(第2-9図)。毎年10月を「体験の風をおこそう推進月間」として,全国各地で体験活動に関する様々なイベントや全国的なフォーラムを実施し,子供の健やかな成長にとって,体験がいかに大切であるかを,広く家庭や社会に発信している。また,「子どもゆめ基金」事業により,民間団体が実施する特色ある取組や裾野を広げるような活動を中心に様々な体験活動へ助成を行っている。

第2-9図 「体験の風をおこそう」運動

(4)読書活動の推進(文部科学省)

読書は,子供にとって,言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことができないものである。

文部科学省は,「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平13法154)と「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第3次)」(平成25年5月閣議決定)に基づき,子供の読書活動を推進している4。具体的には,

  • 学校,図書館,読書ボランティア団体などによる読書コミュニティの構築を促進するため,「子どもの読書活動推進ネットワークフォーラム」を全国各地で開催し,子供の読書活動を推進する諸施策に関する情報提供などを行っている。
  • 国民の間に広く子供の読書活動についての関心と理解を深めるため,子ども読書の日(4月23日)(第2-10図)に「子どもの読書活動推進フォーラム」を開催し,著名人による記念講演や,優れた読書活動を行っている学校や図書館,ボランティア活動団体への文部科学大臣表彰の授与を行うとともに,子供の読書に関してホームページなどによる情報提供を行っている。
    第2-10図 子ども読書の日
  • 学校図書館の機能の一層の向上を図るため,蔵書や新聞配備,学校司書の配置に要する経費について地方財政措置を講じている。
  • 「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」なども踏まえ,公立図書館における読書環境の整備に努めている。

学校司書については,学校図書館がその機能を発揮する上で有効であることに鑑み,平成26(2014)年6月に「学校図書館法」(昭28法185)が改正され,法的に位置付けられた。これを踏まえ,文部科学省は学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議を開催し,学校図書館の運営に係る基本的な視点や学校司書の資格の在り方,その養成等の在り方に関する検討を行っている。

図書館は,子供が読書の楽しみを知ることのできる教育施設であり,子供の読書活動の推進に資する施設である。公民館は,子供の地域における多様な活動を支える施設であり,親子で参加する工作教室を始め子供を対象とした様々な教育活動が行われている。博物館は,豊富な学習資源と学芸員などの専門家を有しており,実験教室など子供を対象とした様々な教育活動が行われている。

文部科学省は,これらの施設が住民にとってより身近で利用しやすい施設となるよう,環境整備を推進している。

(5)体力の向上(文部科学省)

  • 小学5年生女子の1割強,中学2年生女子の約2割が1週間ほとんど運動をしていない。

ア 地域社会での体力向上の取組の推進

子供の体力は,低下傾向に歯止めがかかってきているが,体力水準の高かった昭和60(1985)年頃と比較すると,依然として低い水準にある。子供の体力低下は将来的に国民全体の体力低下につながり,ひいては社会全体の活力が失われる事態が危惧される。

そのため,スポーツ庁は,子供の体力向上に向けた総合的な施策を推進しており,「全国体力・運動能力,運動習慣等調査」の結果を踏まえ,学校や地域における体力向上に向けた取組を推進している。平成25(2013)年度からは,学校や家庭,スポーツ団体といった地域社会全体が連携して行う子供の体力向上に向けた取組の定着を図るモデル事業を実施している。平成28(2016)年度からは,本調査結果からみられる課題に対応した運動プログラム等を作成し普及するほか,教育委員会にPDCAサイクルを実施する実践研究を委託するなど,子供の体力向上に向けた取組を支援する。

イ 学校における体育・運動部活動の振興

学校の体育・保健体育は,心と体を一体としてとらえ,運動についての理解と合理的な実践を通して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力を育てるとともに,体力の向上を図り,明るく豊かな生活を営む態度を育てることをねらいとしている。

スポーツ庁は,中学校で必修とされている「武道」において,外部指導者の活用などによる安全かつ円滑な実施を推進している。平成27(2015)年度からは,体育を担当する教員の資質向上や指導力の強化などにより,体育における武道を含めた領域の指導の充実を図る取組を実施している。また,運動部活動においても,体罰を根絶し適切な指導を行うため,指導者の資質向上を図るとともに,スポーツ医・科学などを活用した運動部活動指導体制の構築などを推進している。

(6)生涯学習への対応(文部科学省)

社会経済の大きな変化の中で,生涯を通じて,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に生かすことのできる社会を実現することが求められている。特に,出産・育児のために仕事を離れる者が多いなど,安定した雇用を得にくい女性にとって,生涯にわたる学習機会の充実は重要である。

ア 高等教育機関における学修機会の充実に関する取組

大学などの高等教育機関は,生涯学習機関としての機能を社会一般に積極的に提供するよう期待されている。昨今,技術革新や産業構造の変化に伴い,社会人が高等教育機関で教育(再教育)を受ける必要性が高まるなど,その一層の充実が求められている。このため,公開講座の実施や,夜間の学部・学科の設置,昼夜開講制の実施,通信教育課程の設置といった対応5が進められている。

独立行政法人日本学生支援機構は,平成26(2014)年度から,若者の学び直しを支援するため,奨学金制度の弾力的運用(同学種間での再貸与の制限の緩和(例えば,在学中に無利子奨学金の貸与を受けて学部を卒業した後,別の学部で学び直す場合にも再度無利子奨学金の貸与を受けられるようにする))を行っている。

イ 学習した成果の適切な評価

生涯学習の成果を適切に生かすことのできる社会を実現するためには,学習成果の評価の社会的通用性を向上させることが必要である。そのため,民間教育事業者が提供する多様な教育サービスの質の向上や信頼性の確保に向けた取組が求められている。また,行政,大学,NPOといった関係者が各地で取り組んでいる生涯学習活動の成果を生かして社会的課題の解決を図る取組を全国的に推進することも重要である。

文部科学省では,中央教育審議会生涯学習分科会学習成果活用部会において,各種検定試験の質の保証・社会的活用の促進や,学習成果の活用による新たな学習機会や様々な活動を結び付けるための基盤の構想を通じて,「『学び』と『活動』の循環」を実現するための検討が進められており,引き続き審議を行う。また,民間教育事業者などが行う検定試験の評価や情報公開の取組を促進することにより,検定試験の質の確保や向上を図っている。また,民間教育事業者の質の保証のための評価や情報公開の仕組みの構築を検討している。さらに,生涯学習関係者などが一堂に会し,多様な主体が協働した地域づくり,社会づくりについての研究協議などを行い,その成果を発信するとともに,継続的な取組が推進されるよう様々な分野にまたがる関係者のネットワーク化を図る「全国生涯学習ネットワークフォーラム」を開催している。平成27(2015)年度は福島県で開催した。

ウ 女性の生涯学習

文部科学省は,平成27(2015)年度より,一旦離職した地域の女性人材を対象に,学びを通じた社会参画を促進するため,地域にある関係機関,大学,男女共同参画センター等によるネットワークの形成とその取組の在り方を検討し,全国へ向けた普及を進めている。

エ 男女共同参画のための生涯学習

文部科学省は,平成28(2016)年度より,高校生が進路選択に当たって進学・就職だけではなく結婚,出産,育児などのライフイベントを踏まえた生活の在り方についても総合的に考えることができるよう,若者のライフプランニングを支援する教材と指導の手引の作成に取り組んでいく。

2 学力の向上

(1)知識・技能や思考力・判断力・表現力,学習意欲等の「確かな学力」の確立(文部科学省)

初等中等教育については,現行の学習指導要領で,1.基礎的・基本的な知識・技能,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等,主体的に学習に取り組む態度(「確かな学力」),2.自らを律しつつ,他人と共に協調し,他人を思いやる心や感動する心など(「豊かな心」),3.たくましく生きるための健康や体力(「健やかな体」)のバランスを重視した「生きる力」を育むことを目指している(第2-12図,第2-13図)。

第2-12図 現行学習指導要領の理念
第2-13図 現行学習指導要領の概要

文部科学省は,現行学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向け,教職員定数の改善や新たに必要となる補助教材の作成・配布,理科教育設備の整備支援,理数教育や外国語教育その他の各教科や活動の充実を支援している。平成28(2016)年度には,

  • 全国学力・学習状況調査6による子供の学力や学習状況の把握・分析
  • 小学校・中学校等における理科の観察・実験活動の充実を図るため,観察実験アシスタントの配置支援や,「理科教育振興法」(昭28法186)に基づいた理科教育設備整備補助
  • 地域の人材・企業などの協力による,全ての子供たちの土曜日の教育活動の充実(詳細は,第4章第1節2「『チームとしての学校』と地域との連携・協働」を参照)

などを行う。

また現在,中央教育審議会にて次期学習指導要領に関する議論を行っており,「社会に開かれた教育課程」の理念を実現するため,学習指導要領等の構造的な見直しを行うこととしており,これからの時代に求められる資質・能力の明確化,「アクティブ・ラーニング」の視点からの学習・指導方法の改善7や,カリキュラム・マネジメントや学習評価の充実などが重要という認識の下,検討が行われている。

(2)基礎学力の保障等(文部科学省)

文部科学省は,基礎学力の保障のため,習熟度別少人数指導,ティーム・ティーチング,小学校の専科指導など指導方法の工夫・改善を行う学校や,特別な配慮が必要な学校などに対し,教職員の加配定数を措置している。平成27(2015)年度は,64,208人の加配定数を措置した。平成28(2016)年度は,時代の変化に対応した新しい教育や学校が抱える喫緊の課題に対応するため,525人の加配定数の改善を行う。また,補習や発展的な学習への対応などのため,退職教職員など約11,500人をサポートスタッフとして学校に配置する「補習等のための指導員等派遣事業」を引き続き実施する。

(3)高校教育の質の保証(文部科学省)

文部科学省は,高校教育の質の確保と向上を促すため,学習指導要領の改訂や各学校における学校評価の取組の推進などの多様な施策を実施している。現行学習指導要領では,以下の改善を図っている。

  • 高校教育の共通性と多様性のバランスを重視し,学習の基盤となる国語,数学,外国語における共通必履修科目の設定
  • 言語活動,理数教育,道徳教育,外国語教育の充実
  • 義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設けることの促進

また,高校教育の質の確保・向上のために,平成25(2013)年度からは,高校教育を通じて身に付けるべき資質・能力を評価する手法についての調査研究を行っている。

さらに,平成27(2015)年度より,定時制・通信制課程及び総合学科における支援・相談体制の構築,遠隔教育の普及推進などを先導的に実施している高等学校への支援を通じて,様々な観点から検証・実践を行う調査研究を実施している。

(4)学校教育の情報化の推進(文部科学省,総務省)

子供一人一人の能力や特性に応じた学びや子供同士が教え合い学び合う協働的な学びを推進する上で,ICT(情報通信技術)は重要な役割を果たすものと考えられる。

文部科学省8と総務省9は連携して,平成25(2013)年度まで「学びのイノベーション事業」と「フューチャースクール推進事業」10において実証研究を行い成果を取りまとめた。両省においては,平成26(2014)年度から,実証3地域12校において,クラウドなどの最先端技術を活用した新たな連携事業に取り組んでいる。具体的には,文部科学省の「先導的な教育体制構築事業」では,学校間,学校・家庭が連携した新しい学びを推進するための指導方法の開発など,先導的な教育体制を構築するための研究を行っている。一方,総務省の「先導的教育システム実証事業」では,学校間,学校と家庭がシームレスにつながる教育・学習環境を構築するため,クラウド・コンピューティングなどの最先端技術を活用した低コストで多種多様な端末に対応した教育クラウドプラットフォームの実証を行っている。併せて,同プラットフォームを活用して,企業,NPO,大学など多様な主体の参画の下,<1>学校・家庭・地域の連携,<2>地域活性化・まちおこし,<3>最先端学習スタイルの実現に資するモデルを実証している。また,平成28(2016)年度より「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」に取り組むこととしており,クラウドを活用した低コストかつ効果的なプログラミング教育の実施モデルを,地域における民間指導者の育成・活用方法等を含めて実証を行う。

このほか,文部科学省は,ICTを活用した教育効果の検証方法や指導方法の開発,教員のICT活用指導力の向上を図るための実証研究を実施した。また,デジタル教材などの充実,プログラムに関する教育についての教員向け指導手引書の作成,子供の情報活用能力に関する調査研究を行っている。さらに,平成27(2015)年度から,過疎化・少子高齢化が進む人口過少地域においてICTの活用により,遠隔地間における児童生徒の協働学習の充実などによる教育の質の維持向上を図るための実証研究を実施している。また,教員のICTの活用指導力の向上を図るため,教員養成課程を有する大学と連携して研究プログラムの策定に取り組む自治体や,ICTを活用した学びの実践体制構築を図るためのカリキュラム策定に取り組む自治体の支援を行うほか,ICT環境の整備・充実を図る取組を支援するため,「ICT活用教育アドバイザー」の自治体への派遣を行っている。

3 大学教育等の充実(文部科学省)

(1)大学教育の充実

ア 教育機能の充実

大学教育では,個々の授業科目などを超えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立する(ナンバリング11など)とともに,主体性を持って多様な人々と協力して学ぶことのできるアクティブ・ラーニングへの質的転換が推進されている。また,各大学において,産業界と連携した実践的な教育やインターンシップを通じたキャリア教育などの学生の社会的・職業的自立に関する組織的な教育活動の展開,教育内容・方法の改善,教育情報の公表などの取組が積極的に行われている。

文部科学省は,このような大学の取組を支援するため,個性・特色ある優れた取組に対し,以下を始めとする財政支援や情報発信を行っている12

  • 地域や分野に応じた大学間連携による教育・質保証システムの構築を支援する「大学間連携共同教育推進事業」
  • アクティブ・ラーニング,学習成果の可視化,高大接続改革,長期学外学修プログラムなど新たな教育改革の方向性に合致した先進的な取組を支援する「大学教育再生加速プログラム」

イ 教育研究の質の維持・向上

文部科学省は,大学教育の国際的通用性の確保や学生保護の観点から,大学を設置するのに最低限必要な最低基準として大学設置基準を定めるとともに,大学等の設置や組織改編に当たっては,設置計画が大学設置基準等の法令に適合しているかについての大学設置・学校法人審議会の審査を踏まえて認可を行っている。また,設置認可後は,設置計画履行状況などを調査することにより,設置認可から完成年度までの質の保証を行っている。また,全ての国公私立大学が文部科学大臣から認証された評価機関による定期的な評価を受ける認証評価制度により,恒常的に大学の教育研究の質の維持・向上を図っている。

ウ 高度な大学教育の充実

文部科学省は,俯瞰力と独創力を備え,広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成するため,産・学・官の参画を得つつ専門分野の枠を超えて博士課程前期・後期一貫した学位プログラムを構築・展開する「博士課程教育リーディングプログラム」事業を実施し,大学院教育の抜本的改革を支援している13

エ 学修支援サービス

各大学では,アクティブ・ラーニングなどを行う際に,優秀な大学院生が教育的配慮の下に学部学生に対する助言や実験・実習の教育補助業務を行うティーチング・アシスタント制度や,学生の学修過程や学修成果を長期にわたって収集する学修ポートフォリオなど,多様化した学生の学修活動を支援する取組を行っている。

文部科学省は,大学の取組に関する調査の結果を発信することで,大学の取組を促進している。

(2)専修学校教育の充実

専修学校14は,職業や生活に必要な能力の育成や教養の向上を図ることを目的とし,社会の変化に即応した実践的な職業教育を行う機関として大きな役割を果たしている。専門的な職業知識・技術の習得のほか,職業観・勤労観のかん養や自己学習能力の育成において相当の成果を挙げており,若者の職業的自立にも寄与している。

文部科学省は,専修学校教育の振興を図るため,以下のような取組を行っている。

  • 平成26(2014)年度から,企業などとの密接な連携を通じ,より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専修学校の専門課程を文部科学大臣が認定する「職業実践専門課程」制度を開始(認定学校数:833校,認定学科数:2,540学科(平成28(2016)年2月19日現在))
  • 専修学校を始めとした教育機関が産業界等と協働し,社会人等が学びやすい教育プログラムの開発・実証を行う「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進」
  • 東日本大震災により大きく変化した被災地の人材ニーズに対応し,復興の即戦力となる専門人材の育成を図る「東日本大震災からの復興を担う専門人材育成支援事業」
  • 教育装置・情報処理関係の設備整備などに対する補助,教員研修事業などの実施

1 次の3つを構成要素とする,複合的な能力のこと。
<1>メディアを主体的に読み解く能力,<2>メディアにアクセスし活用する能力,<3>メディアを通じコミュニケーションする能力。特に,情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ)コミュニケーション能力
2 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/hoso/kyouzai.html
3 平成25(2013)年1月,中央教育審議会は,体験活動の意義や効果を整理するとともに,現在の課題や今後の推進方策について「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」で提言した。
4 「子ども読書の情報館」ページhttp://www.kodomodokusyo.go.jp
5 このほか,科目等履修生制度の導入,履修証明制度の導入,大学・大学院入学資格の弾力化,高等学校卒業程度認定試験の実施,放送大学の充実など。
6 平成28年度調査は,国語,算数・数学の2教科で,対象学年(小6,中3)の全ての子供を対象とした悉皆調査と,同学年・教科について抽出による経年変化分析調査を行う。
7 子供の学びへの積極的関与と深い理解を促すような指導や学習環境を設定して,子供たちが自信を育み,必要な資質・能力を身に付けていくことができるようにするために,下記の三つの視点に立って学び全体を改善すること。
 <1> 習得・活用・探究という学習プロセスの中で,問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか
 <2> 他者との協働や外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深める,対話的な学びの過程が実現できているかどうか
 <3> 子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる,主体的な学びの過程が実現できているかどうか
8 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/main18_a2.htm
9 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/future_school.html
10 平成25(2013)年度は,中学校と特別支援学校で実証研究を実施。
11 授業科目に適切な番号を付し分類することで,学修の段階や順序等を表し教育課程の体系性を明示する仕組み。
12 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/index.htm
13 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/hakushikatei/1306945.htm
14 入学資格の差異により三つの課程(専門課程,高等課程,一般課程)が設けられている。高等学校卒業程度を入学資格とする専修学校専門課程(専門学校)には,平成26(2014)年度は高校卒業者の17.0%が進学している。
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