第2章 全ての子供・若者の健やかな育成(第2節)

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第2節 子供・若者の健康と安心安全の確保

1 健康教育の推進と健康の確保・増進等

(1)健康教育の推進(文部科学省)

学校では,「学校保健安全法」(昭33法56)に基づき,養護教諭と関係教職員が連携した組織的な保健指導や,地域の医療機関を始めとする関係機関との連携による救急処置・健康相談・保健指導の充実が図られている。性に関する問題については,子供が心身の発育・発達や健康,性感染症の予防に関する知識を確実に身に付け適切な行動を取れるようにすることを目的として,体育科や保健体育科,特別活動などを中心に学校教育全体を通じた指導が行われている。性に関する指導に当たっては,子供の発達の段階を踏まえることや学校全体で共通理解を図ること,保護者の理解を得ることに配慮すること,集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うことが大切である。(薬物乱用については,第3章第2節3(3)「薬物乱用防止」を参照。)

(2)思春期特有の課題への対応(文部科学省,厚生労働省)

  • 最近10年,肥満傾向児が減少している一方,痩身傾向児は増加傾向が続いている。

学校では,未成年者が飲酒や喫煙をしないという態度を育てることをねらいとした様々な教育が行われている。文部科学省は,子供が自らの心と体の健康を守ることができるよう,喫煙や飲酒,薬物乱用,感染症などについて総合的に解説した教材15を作成し,小・中・高校などに配布している。

厚生労働省は,「健康増進法」(平14法103)に基づく基本方針「健康日本21(第二次)」16と,母子保健の国民運動計画である「健やか親子21」17において,未成年者による喫煙と飲酒の根絶を目標に掲げ,シンポジウムやホームページを活用して,喫煙と飲酒による健康に対する影響についての情報提供を行っている。また,「健やか親子21(第2次)」18では,10代の人工妊娠中絶実施率や,10代の性感染症罹患率,児童・生徒における痩身傾向児割合の減少を実現することなどを目標とし,正しい知識の普及啓発を始めとする各種の取組を推進している。第2次の計画では,「すべての子どもが健やかに育つ社会」を実現することを目指し,3つの基盤課題と2つの重点課題を設定し,その一つとして,「学童期・思春期から成人期に向けた保健対策」を位置付け,指標の目標達成に向けて国民の主体的取組や,関係者,関係機関・団体や企業などの取組の充実を図っていく(第2-15図)。

第2-15図 健やか親子21(第2次)イメージ図

(3)妊娠・出産・育児に関する教育(文部科学省,厚生労働省)

学習指導要領においては,学校における性に関する指導として,児童生徒が妊娠,出産などに関する知識を確実に身に付け,適切な行動を取ることができるようにすることを目的とされており,これに基づき保健体育科を中心に学校教育活動全体を通して指導が行われている。

児童生徒に,家族の一員として家庭生活を大切にする心情を育むことや,子育てや心の安らぎなどの家庭の機能を理解させるとともに,これからの生活を展望し,問題意識をもって主体的によりよい生活を工夫できる能力と態度を身に付けさせることが重要である。このため,小学校,中学校,高等学校において,発達の段階を踏まえ,関連の深い教科を中心に,家庭・家族の役割への理解を深める教育がなされている。2008(平成20)年3月には小・中学校,2009(平成21)年3月には高等学校の学習指導要領を改訂し,家庭と家族の役割に気付かせる実践的・体験的な学習活動を一層重視するなど,教育内容の充実を図っている。

国立青少年教育振興機構では,親子や幅広い年齢の子供が参加する体験活動等を実施している。

厚生労働省は,専門的知識を有する医師や保健師等による健康教室や講演会の実施等により,妊娠・出産・育児に関する知識の普及啓発を図っている。

(4)10代の親への支援(厚生労働省)

厚生労働省は,妊娠・出産・育児について,医師や助産師などから専門的なアドバイスを受ける機会でもある妊婦健診を受けられるよう,平成25(2013)年度から必要な妊婦健診の回数,項目に係る費用の全てについて地方財政措置を講じている。また,悩みを抱える若者に対して,母子保健事業を活用した支援や女性健康支援センター事業を通じた相談体制の充実を図っている。

(5)安心で安全な妊娠・出産の確保,小児医療の充実等(厚生労働省)

ア 安心で安全な妊娠・出産の確保

厚生労働省は,妊娠や出産に係る経済的負担の軽減や,周産期医療体制の整備・救急搬送受入体制の確保,不妊治療への支援を行っている。また,妊娠期から育児期を通して安心して健康に過ごせるよう,妊娠や出産に関する情報提供や相談支援体制の整備を行うとともに,マタニティマークの普及啓発に努め,妊産婦にやさしい環境づくりの推進に取り組んでいる。

イ 地域における母子保健の充実

厚生労働省は,妊産婦と乳幼児の心身の健康保持・増進のため,市町村が行う妊産婦・乳幼児に対する健康診査や保健指導といった母子保健事業を推進している。また,平成26(2014)年度には,新たに出産直後の母子に対する心身のケアなどを行う産後ケア事業を含め,各地域の特性に応じた妊娠から出産,子育て期までの切れ目ない支援を行うためのモデル事業を実施した。平成27(2015)年度においては,妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対して切れ目なく総合的相談支援を提供するワンストップ拠点(子育て世代包括支援センター)の整備を行うとともに,地域の実情に応じて,退院直後の母子への心身のケア等を行う産後ケア事業等を実施している。

ウ 小児医療・予防接種の充実

厚生労働省は,子供が地域においていつでも安心して医療サービスを受けられるよう,小児医療(小児救急医療を含む。)に係る医療提供施設相互の医療連携体制の構築を推進している。また,小児初期救急センター,小児救急医療拠点病院,小児救命救急センターの整備の支援や,保護者の不安解消のための小児救急電話相談事業(#8000)の実施の支援などにより,小児救急医療を含め,小児医療の充実を図っている19。予防接種については,制度の見直しと充実を図っている。「予防接種法施行令」(昭23政令197)を改正し,水痘等については,平成26(2014)年10月から,「予防接種法」(昭23法68)に基づく定期接種とし,B型肝炎については,平成28(2016)年10月から,「予防接種法」に基づく定期接種とすることとしている。また,おたふくかぜ,ロタウイルス感染症について定期接種化に向けた検討を行っている。

2 子供・若者に関する相談体制の充実

(1)相談窓口の広報啓発等(内閣府)

内閣府では,児童虐待,いじめ,ひきこもり,不登校等,子供・若者が困難を抱えた場合に適切に相談を行うことができるよう,専門の相談窓口,相談機関についてホームページにおいて周知を図っている。

(2)子ども・若者総合相談センターの充実(内閣府)

子ども・若者総合相談センター20は,地方公共団体が子供・若者育成支援に関する相談に応じ,関係機関の紹介その他の必要な情報の提供・助言を行う拠点として設けるものである。幅広い分野にまたがる子供や若者の問題への相談に対し,一元的な受け皿になり,いわゆる「たらい回し」を防ぐとともに,他の適切な機関に「つなぐ」機能を果たすことが求められている。

内閣府は,子ども・若者総合相談センターとしての機能を担い得る青少年センターを始めとする公的相談機関などの職員を対象とした研修を実施している。

COLUMN NO.3
 岐阜市におけるワンストップ相談窓口の設置

各地方公共団体において,子供・若者育成支援に関する住民からの相談に応じ,関係機関の紹介,情報提供,助言を行う拠点機能が確保されることは重要である。

岐阜市においては,平成26(2014)年4月,「子ども・若者総合支援センター」(「エールぎふ」)(以下「センター」という。)を新設し,それまで教育分野,福祉分野それぞれで個別的に実施してきた相談支援業務を集約させた。また,これに合わせて,子供・若者に対する支援に関する全ての事項を所管する部局として,「子ども未来部」を新設した。

センターでは,0歳児から20歳に達するまでの子供・若者やその保護者,教職員等を対象として,発達の遅れ,虐待,いじめ,不登校,ひきこもり等,あらゆる悩みや不安についてワンストップで相談を受け付け,必要な支援を行うとともに,ケースによっては,医師,警察,弁護士,臨床心理士等,センターの外部の専門家,関係機関と連携して対応している。例えば,不登校の児童によるひとり親への暴力行為に関する相談を受け付けた事例においては,警察,児童相談所,学校等との拡大ケース検討会議を継続的に実施する中で,親の児童への接し方にも問題があることが判明したことから,児童への対応に加え,親へのカウンセリングも継続して実施し,現在,父子関係の改善及び児童の登校につながっている。

平成26年度相談実績

また,センターでは,相談者のケース管理を行うことにより,相談者が,その後に新たな相談・支援が必要となった場合にも過去の記録を基に有効な対応ができる,発達段階に応じた継続的な支援体制を整備している。

このほか,同市では,平成27(2015)年度より,子ども専用ダイヤルとメールアドレスを記載した「子どもホッとカード」を,市立のみならず,国立,私立を含む全小中高校の児童生徒に配付し,子供本人からの相談件数の大幅な増加につながっている。平成28(2016)年度からは,隣接市町の児童・生徒にも配付し,広域的な相談体制の構築に努めている。

子どもホッとカード
センターの様子親子教室

(3)学校における相談体制の充実(文部科学省)

子供が抱える問題の早期発見・早期対応のためには,子供の悩みや不安を受け止めて相談に当たることや,関係機関・団体と連携して必要な支援をしていくことが大切である。

前述のとおり,学校では,養護教諭と関係教職員が連携した健康相談や保健指導が行われている。

文部科学省は,学校における相談体制の充実のため,子供の臨床心理に関して高度に専門的な知識・経験を有するスクールカウンセラーや,教育分野に関する知識に加えて社会福祉の専門的な知識・技術を有し子供の置かれた様々な環境に働き掛けたり,児童相談所を始めとする関係機関・団体とのネットワークにより子供を支援するスクールソーシャルワーカーの配置の拡充を図ったりしている21(第2-16図)。平成28(2016)年度には,

  • スクールカウンセラーの配置拡充(公立小学校約15,500校(うち小中連携型配置約5,000校),全ての公立中学校約10,000校(うち週5日相談体制200校,小中連携型配置約2,500校))
  • スクールソーシャルワーカーの配置拡充(2,247人→3,047人)

を図る。また,教職員を対象とした研修会などを行っている。

第2-16図 スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー

(4)地域における相談体制の充実(厚生労働省,消費者庁)

厚生労働省は,地域における相談や医療機関での対応の充実のため,以下の取組を行っている。

  • 身近な場所に子育て親子が気軽に集まって相談・交流ができる「地域子育て支援拠点」の設置の推進や,子供やその保護者,妊娠している人が地域子育て支援拠点等の身近な場所で教育・保育・保健その他の子育て支援事業を適切に選択し円滑に利用できるよう,情報収集と提供,必要に応じた相談・助言などを行うとともに,関係機関との連絡調整などを行う「利用者支援事業」を推進
  • 不登校やひきこもり,摂食障害,性の逸脱行為,薬物乱用といった学童期や思春期に多くみられる心の問題に対応するため,精神保健福祉センターや保健所,児童相談所における,医師,保健師,精神保健福祉士による相談の推進
  • 性に関する健全な意識をかん養し正しい理解の普及を図るため,価値観を共有する同世代の仲間による相談・教育活動(「ピア・カウンセリング」と「ピア・エデュケーション」)の普及促進
  • 障害のある子供に関しては,平成24(2012)年4月に創設した障害児相談支援を平成27(2015)年4月から障害児通所支援を利用する全ての保護者に原則実施
  • 様々な子供の心の問題や,被虐待児の心のケア,発達障害に対応するため,都道府県における拠点病院を中核とし,各医療機関や保健福祉機関と連携した支援体制の構築を図る「子どもの心の診療ネットワーク事業」の実施
  • 仕事に悩む若者の相談窓口として,平日の夜間・土日に無料で相談を受け付ける「労働条件相談ほっとライン」(0120-811-610)の設置
  • ポータルサイト「確かめよう労働条件」22による,労働基準関係法令に関する基礎知識や相談窓口についての周知

消費者庁では,全国どこからでも身近な消費生活相談窓口を案内する消費者ホットラインについて,平成27年7月1日から,3桁の電話番号「188」番の運用を開始し,同ホットラインについて,消費者庁ウェブサイトへの掲載,啓発チラシの作成・配布,各種会議を通じて周知を行った。

(5)いじめ防止対策等

いじめは,いじめを受けた子供の教育を受ける権利を著しく侵害し,その心身の健全な成長と人格の形成に重大な影響を与えるのみならず,その生命や身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであるが,どの子供にも,どの学校でも起こり得るものである。

いじめの防止のための対策は,学校の内外を問わずいじめが行われなくなるようにすることや,全ての子供がいじめを行わず,また,いじめを認識しながら放置することがないよう,いじめの問題に関する子供の理解を深めることを旨として行われなければならない。また,いじめを受けた子供の生命と心身を保護することが特に重要であることを認識しつつ,国,地方公共団体,学校,地域住民,家庭などの関係者が連携することが必要である。

  • 小学校における被害経験率は,おおむね40%~60%で推移している。
  • いじめの認知件数は,ここ3年大きな変動はないが,小学校では高止まりの状態が続いている。
  • 警察が取り扱ったいじめに起因する事件の検挙・補導人員は,平成26年,前年の6割程度まで減少した。

平成25(2013)年6月には,第183回通常国会において,「いじめ防止対策推進法」(平25法71)が成立した。同法の成立を受け,文部科学省では同年10月,「いじめの防止等に関する基本的な方針」を策定した。「いじめの防止等のための普及啓発協議会」や,教員を対象とした「いじめの問題に関する指導者養成研修」を開催するなど,同法や方針の周知に取り組んでいる。

一方で,いじめを背景に子供が命を絶った疑いのある事案がなお発生している。特に,平成27(2015)年7月に岩手県矢巾町の中学生が自殺した事案では,生徒の訴えをいじめとして認知していなかったことや情報共有が不十分だったことが指摘された。これを受け,全国の学校で情報共有と組織的な対応を行うよう求めた。さらに,従来,問題行動等調査における千人当たりの認知件数の都道府県間の差が大きく,実態を正確に反映していると言いがたい状況があったことを受けて再調査を求めるなど,いじめの積極的な認知を徹底するよう努めている。

ア いじめ防止対策の総合的な推進(警察庁,文部科学省)

文部科学省は,これまでも各種通知などにおいて,都道府県・指定都市教育委員会や学校などに対し,いじめの早期発見・早期対応,いじめを許さない学校づくり,教育委員会による支援,全ての学校でのいじめに関する「アンケート調査」の実施,いじめが生じた際には問題を隠さず学校・教育委員会と家庭・地域が連携して対処していくべきこと,問題行動に対しては懲戒・出席停止を含め毅然とした対応をとることなどを求めてきた。平成28(2016)年度には,引き続き,いじめの問題を始めとする生徒指導上の諸課題に対する以下の取組を総合的に推進する。

  • 幅広い外部専門家を活用していじめの問題などの解決に向けて調整,支援する取組の促進
    • 第三者的立場から調整・解決する取組(平成28年度134地域(継続))
    • 外部専門家を活用して学校を支援する取組(平成28年度134地域(継続))
    • 学校ネットパトロールへの支援(平成28年度10地域(継続))
  • 未然防止
    • 道徳教育地域支援事業:社会性や規範意識,思いやりなどの豊かな人間性を育む道徳教育を推進
    • 対話・創作・表現活動などを通じた子供の思考力,人間関係形成能力の育成
    • 子供の健全育成のための体験活動の推進:小・中・高校などの農山漁村などでの体験活動の取組を支援(平成28年度322校)
  • 早期発見・早期対応
    • スクールカウンセラーの配置拡充:生徒指導で大きな課題を抱える公立中学校などで常時子供が相談できる体制づくりを推進するため週5日相談体制の実施(200校),公立小・中学校の相談体制の連携促進のための小中連携型配置(小学校:5,000校,中学校:2,500校),貧困対策のための重点加配(1,000校)
    • スクールソーシャルワーカーの配置拡充:教育に関する知識に加え,社会福祉などの専門的な知識と経験を有する専門家であるスクールソーシャルワーカーの配置を拡充(平成27年度2,247人→平成28年度3,047人),質向上のためのスーパーバイザー配置(47人),貧困対策のための重点加配(1,000人)
  • 教職員定数の加配措置・教員研修の充実
    • 教職員定数の加配措置:平成27年度は,いじめなどの問題行動への対応を行う学校への支援などのため,8,582人の加配定数を計上
    • 教員研修センターによるいじめの問題に関する指導者養成研修の実施
  • いじめの未然防止,早期発見・早期対応,事後支援を行うなど,いじめ問題などへの対応に関する実践的な取組の調査研究を実施

加えて,インターネットや携帯電話を利用したいじめ(ネットいじめ)に対応するため,子供や保護者向けの啓発用リーフレットを,教育委員会などへ配布している。

また,「いじめ防止対策推進法」に基づく取り組み状況の把握と検証を行うとともに,いじめの問題を含めた生徒指導上の諸問題に関して,より実効的な対策を講じるため,平成26(2014)年度より「いじめ防止対策協議会」を開催している。さらに,いじめの問題に主体的に取り組むリーダーとなる児童生徒を育成するとともに,全国各地での多様な取組の実施を一層推進するため,平成28年1月には「全国いじめ問題子供サミット」を開催した。

警察は,少年相談活動やスクールサポーターの学校への訪問活動などにより,いじめの早期把握に努めるとともに,把握したいじめの重大性や緊急性,被害を受けた子供やその保護者などの意向,学校などの対応状況などを踏まえ,学校などと緊密に連携しながら,的確な対応を推進している。警察庁は,「いじめ防止対策推進法」の施行に伴い,都道府県警察に対し平成25(2013)年9月に発出した「いじめ防止対策推進法の施行について」(通達),及び10月に発出した「いじめ防止基本方針の策定について」(通達)に基づき,学校におけるいじめ問題への的確な対応を一層推進している。

イ いじめの問題に関する相談対応(警察庁,法務省,文部科学省)

文部科学省は,夜間・休日を含め24時間いつでも子供のSOSを受け止めることができるよう,全国統一の電話番号23を設定し,24時間子供SOSダイヤルを実施している(いじめ問題に限らず子供のSOSを社会全体で受け止める趣旨を明確化するため,平成27(2015)年4月,これまでの「24時間いじめ相談ダイヤル」を名称変更した)。このダイヤルに電話すれば,原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関に接続され,電話を受けた相談機関は,都道府県・指定都市教育委員会の実状に応じて,児童相談所,警察,いのちの電話協会,臨床心理士会を始めとする様々な相談機関と連携・協力し,対応している。また,平成28(2016)年度から,より気軽に相談できるよう通話料を無料化している(新しい電話番号は0120-0-78310)。

警察は,非行防止教室などの様々な機会を通じて少年相談活動でいじめ事案に関する相談を受け付けていることを子供や保護者に周知するとともに,少年サポートセンターの警察施設外への設置,少年相談室の整備,少年相談専用電話のフリーダイヤル化,電子メールによる相談窓口の開設など24,いじめを受けた子供が相談しやすい環境の整備を進めている。また,相談者が求める場合には,警察から学校に連絡して,連携した対応を行うなど,相談者に安心感を与えられるよう努めている。さらに,いじめの被害を受けた子供に対して,保護者及び関係機関・団体との連携を図りつつ,被害を受けた子供の性格,環境,被害の原因,ダメージの程度,保護者の監護能力などに応じて,少年サポートセンターが中心となり,少年補導職員によるカウンセリングの継続的な実施などの支援を行うとともに,被害少年カウンセリングアドバイザーや被害少年サポーターの活用により,きめ細かな支援を行っている。

法務省の人権擁護機関においては,

  • ホームページ上の「インターネット人権相談受付窓口」(SOS-eメール)25で,パソコンや携帯電話からインターネットでいつでも相談できる窓口の設置
  • フリーダイヤルの専用相談電話「子どもの人権110番」(0120-007-110)26の開設
  • 全国の小中学生を対象とした「子どもの人権SOSミニレター」(便箋兼封筒)27の配布

などを行い,いじめを始めとする子供の人権問題について相談に応じている(第2-20図)。平成27年度には,いじめの被害に遭った子供が相談しやすくするため,人権相談窓口の更なる周知広報を図るなど,いじめを始めとする子供の人権問題対策の強化を図った。これらを通じていじめ事案の情報を得た場合には,人権侵犯事件として調査し,教職員や学校と連携していじめ行為の中止や再発防止を図るなど,いじめを受けた子供の救済に努めている(第2-21図)。また,教職員や学校のいじめに対する対応が不十分であったと認められたときは,教職員や学校に改善を促すなど,適切な対応に努めている。さらに,人権擁護委員や法務局・地方法務局の職員が学校を訪問し,人権の花運動や人権教室を実施したり,インターネット広告を実施したりするなどして,いじめをなくすための様々な啓発活動も行っている。

第2-20図 子どもの人権SOS-eメール,子どもの人権SOSミニレター
第2-21図 いじめに関し人権侵犯事件として救済措置を講じた具体例
  • いじめは,多くがアンケート調査など学校の取組をきっかけに発見につながっている。
  • 学校におけるいじめに関する人権相談及び人権侵犯事件は,平成26年調査ではともに前年を下回ったが,依然として高い水準にある。

(6)暴力対策等(警察庁,文部科学省)

暴力行為といった子供の問題行動は依然として相当数に上っており,教育上の大きな課題となっている。

  • 学校内における暴力行為の発生件数は,ここ数年おおむね横ばいであるが,中学校における発生件数の占める割合が多い。
  • 校内暴力事件の検挙・補導人員はここ数年減少傾向にある。

文部科学省は,都道府県・指定都市教育委員会や学校に対して,

  • 問題行動が起こったときには,粘り強い指導を行い,なお改善が見られない場合には,出席停止や懲戒などの措置も含めた毅然とした対応をとること
  • 問題行動の中でも特に校内傷害事件を始め,犯罪行為の可能性がある場合には,学校だけで抱え込むことなく,直ちに警察に通報し,その協力を得て対応すること

などを求めており,引き続き,都道府県などの関係者を集めた会議や研修会などの場を通じ,周知徹底を図っていく。また,平成27(2015)年2月に神奈川県川崎市で発生した中学1年生殺害事件を受け,文部科学省では,関係府省庁とも連携し,生命・身体に重大な被害が生じるおそれのある児童生徒に対する早期対応の指針を策定するとともに,<1>学校や教育委員会における組織的な対応,<2>警察を始めとする関係機関との連携,<3>課題を抱える家庭への支援の充実,<4>子供のSOSを受け止める取組の充実等を進めるよう全国の教育委員会等に要請した。

警察は,校内暴力についても,いじめ同様,スクールサポーターや学校警察連絡協議会などを活用した情報交換により,早期把握に努め,悪質な事案に対しては厳正に対処するなど,内容に応じた適切な措置を行うとともに再発の防止に努めている。

3 被害防止のための教育

(1)安全教育

ア 学校における安全教育(文部科学省)

学校では,子供自身が危険から身を守ることができるよう,発達の段階に応じて,「主体的に行動する態度」を育成し,自ら危険を予測・回避する能力を習得させるとともに,家庭や地域と連携を図りながら,学校の教育活動全体を通じた安全教育を推進している。

文部科学省は,教職員などへの研修や,子供の対応能力の向上を図るための「防災教室」,「交通安全教室」,「防犯教室」の開催を支援している。平成27(2015)年度には,自然災害や,登下校中に子供が巻き込まれる事件・事故が多発していることを踏まえ,防災教育を中心とした新たな安全教育手法の開発等を行うためのモデル事業を行った。

イ 警察が行う防犯教育・交通安全教育(警察庁)

子供が被害者となる略取誘拐事件といった凶悪犯罪が依然として発生しているなど,子供を取り巻く環境は依然厳しい状況にある。

警察は,子供が犯罪に巻き込まれる危険を予見する能力や危険を回避する能力を向上させるため,学校や教育委員会と連携して,幼稚園や保育所,小学校などにおいて,防犯教室を開催している。この防犯教室は,学年や理解度に応じて,紙芝居や演劇,ロールプレイ方式などにより,子供が参加,体験できるようにしている。

また,関係機関・団体と協力しつつ,保育所や学校などにおいて,発達の段階に応じて以下の習得を目標に,交通安全教育を行っている。

  • 幼児に対しては,基本的な交通ルールの遵守,交通マナーを実践する態度,日常生活において安全に道路を通行するために必要な基本的技能と知識
  • 小学生に対しては,歩行者や自転車の利用者として必要な技能と知識
  • 中学生に対しては,自転車で安全に道路を通行するために必要な技能と知識
  • 高校生に対しては,二輪車の運転者や自転車の利用者として安全に道路を通行するために必要な技能と知識

さらに,保護者を対象とした交通安全講習会や,交通ボランティアによる通学路における子供に対する安全な行動の指導などを行っている。

  • 20歳未満の者が被害者となった刑法犯の認知件数は,この10年減少が続いている。
  • 年齢別に被害を受けた罪種の構成割合を見ると,6歳以上では窃盗がほとんどである一方,5歳以下では暴行・傷害が多い

ウ 防災に関する各種取組(内閣府,消防庁,気象庁)

内閣府は,防災意識の高揚,防災知識の普及を図るため,幼児から成人を対象に防災ポスターコンクールを実施している。また,自然災害の知識を身に付けたり,対策を始める際に参考となる情報として,「みんなで防災」のホームページを公開している28

消防庁は,ホームページ上に「こどもぼうさいe-ランド」を開設し,幼児から中学生の子供を対象に,地震や風水害などの災害への備えや具体的な対応などを分かりやすく解説している29(第2-27図)。また,指導者向けのテキストや参考資料を「チャレンジ!防災48」30ページで公開している。

第2-27図 こどもぼうさいe-ランド

気象庁は,東日本大震災以降,防災教育の重要性が改めて認識されていることを鑑み,子供が地震・津波・噴火,大雨などによる自然災害から自らの身を守れるよう,教育関係機関と緊密な連携を図り,教材・資料の公開や避難訓練の支援,教職員向け研修での講義などにより,学校防災教育を支援している。具体的には,大雨災害に対する安全確保行動をシミュレートする能動的な学習プログラム「気象庁ワークショップ『経験したことのない大雨 その時どうする?』」の教材や運営マニュアルの作成・公開31,地震・津波や竜巻などに関するビデオ映像教材やリーフレットなどの作成・提供32,緊急地震速報を利用した避難訓練の支援など,全国の気象台が教育関係機関と連携して様々な取組を展開している。

(2)メディアを活用する能力の向上

社会の情報化が進展する中で,子供が情報活用能力を身に付け,情報を適切に取捨選択して利用するとともに,インターネットによる情報発信を適切に行うことができるようにすることが重要な課題となっている。「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(平20法79。以下「青少年インターネット環境整備法」という。)33では,学校教育,社会教育,家庭教育においてインターネットの適切な利用に関する教育の推進に必要な施策を講ずるものと規定されており,同法に基づき策定された「青少年インターネット環境整備基本計画(第3次)」34に関連施策が盛り込まれている。

ア 情報モラル教育の推進(文部科学省)

小学校・中学校・高校の現行学習指導要領では,各教科などの指導を通して「情報モラルを身に付けること」が規定されている。具体的には,小学校・中学校の道徳において「情報モラルに関する指導に留意すること」や,高校の必履修教科である共通教科「情報」において情報モラルを指導することとされている。これらにより,学校における情報モラル教育の充実が図られている。

文部科学省は,情報モラルに関する指導が確実になされるよう,教員による指導の具体的な取組の参考となる「教育の情報化に関する手引」35や,小中学校の教員が情報モラル教育を行うための参考資料である「情報モラル教育実践ガイダンス」36を周知・配布している(第2-28図)。また,いわゆる「ネット依存」を始めスマートフォンやソーシャルメディアの普及に伴うトラブルの発生など情報化の進展に伴う新たな課題に対応し適切な指導を行うため,平成25(2013)年度においては,教員が指導する際に役立つ動画教材や37教員向け指導手引書を作成し,教育委員会に周知・配布した。また,子供が被害者や加害者となる事案が発生していることを鑑み,平成27(2015)年度は,「情報モラル教育推進事業」において,情報の影の側面に対応した指導の充実を図るための取組を実施し,保護者向けの資料を作成する等情報モラル教育の一層の充実を図った。

第2-28図 情報モラル教育実践ガイダンス

イ メディアリテラシーの向上(総務省)

総務省は,子供が安全に安心してインターネットや携帯電話といった多様なICTサービスを使いこなす能力を取得する機会の増進と質の向上のため,以下の取組を行っている。

  • 子供のICTメディアリテラシーを総合的に育成するプログラム38の普及
  • 青少年のインターネットリテラシー等の現状を把握し,リテラシー向上施策を効果的に進めていくため,青少年のインターネットリテラシーを可視化するテスト及び情報通信機器(スマートフォン等)使用実態アンケートを全国の高校等75校の協力を得て実施し,分析した結果を「青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのリテラシー指標(ILAS:Intenet Literacy Assessment Indicator for Students)」として公表39
  • 「インターネットトラブル事例集」40を用いた啓発

(3)労働者の権利・義務に関する教育(厚生労働省)

第2章第4節1.「社会形成に参画する態度を育む教育の推進」を参照)

(4)消費者教育(消費者庁,文部科学省)

第2章第4節1.「社会形成に参画する態度を育む教育の推進」を参照)

(5)女性に対する暴力の防止(内閣府,警察庁)

内閣府では,女性に対する暴力の加害者及び被害者になることを防止する観点から,若年層に対する効果的な予防啓発を行うため,若年層に対して教育・啓発の機会を持つ教育機関の教職員,地方公共団体において予防啓発事業を担当している行政職員,予防啓発事業を行っている民間団体等を対象として研修を実施した。

警察では,ストーカー被害の未然防止・拡大防止に関する理解の増進を図るため,防犯教室等において,ストーカーの具体的事例,対応方法等を説明するなどして,被害者にも加害者にもならないための教育啓発を推進している。


15 中学生用http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/08111804.htm
高校生用http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/08111805.htm
16 国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な事項を示し,平成25(2013)年度から平成34(2022)年度までの国民運動の推進について定めている。
17 http://rhino.med.yamanashi.ac.jp/sukoyaka/(公式ホームページ)
18 平成27(2015)年から平成36(2024)年が計画期間とされている。
19 小児救急医療拠点病院,小児救急電話相談事業に対する支援は,平成25年度までは補助金であったが,平成26年度より,地域医療介護総合確保基金において実施可能となっている。
20 「子ども・若者育成支援推進法」第13条で,地方公共団体は,子ども・若者育成支援に関する相談に応じ,関係機関の紹介その他の必要な情報の提供・助言を行う拠点(子ども・若者総合相談センター)としての機能を担う体制を,単独で又は共同して確保するよう努めるものとされている。
21 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302910.htm
22 http://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
23 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1306988.htm
25 https://www.jinken.go.jp/soudan/PC_CH/0101.html
26 http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html
27 相談したいことを書き,裏面の封筒部分を切り取り,便箋部分を入れてポストに投函すると,最寄りの法務局・地方法務局に届く。切手を貼る必要はない。http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00013.html
28 http://www.bousai.go.jp/kyoiku/minna/index.html
29 幼児から小学校低学年向けhttp://open.fdma.go.jp/e-college/eland/nyuutai.html
小学校高学年から中学生向けhttp://open.fdma.go.jp/e-college/eland/syou_tyuu.html
30 http://open.fdma.go.jp/e-college/bosai/index.html
31 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jma-ws/index.html
32 http://www.jma.go.jp/jma/kishou/fukyu_portal/index.html
33 https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/law/index.html
34 https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/suisin/index.html
35 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm
36 http://www.nier.go.jp/kaihatsu/jouhoumoral/index.html
37 https://www.youtube.com/playlist?list=PLGpGsGZ3lmbA0d2f-4u_Mx-Bcn13GywDI
38 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/media_literacy.html
39 http://www.soumu.go.jp/main_content/000315097.pdf
40 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/jireishu.html
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