第2章 全ての子供・若者の健やかな育成(第4節)

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第4節 社会形成への参画支援

1 社会形成に参画する態度を育む教育の推進

(1)学校教育における取組(文部科学省)

学校教育では従来,小学校・中学校の社会科や高校の公民科を中心に,民主政治や政治参加,法律や経済の仕組み,勤労の権利と義務についての教育が行われている。また,消費者としての知識や態度を身に付けるため,社会科や家庭科を中心に子供の発達の段階に応じた指導が行われている。現行学習指導要領では,社会参画という視点を重視し,例えば,「社会生活を営む上で大切な法やきまり」(小学校),「契約の重要性」(中学校),「国民の司法参加」(小学校・中学校・高校),「消費者の自立の支援なども含めた消費者行政」(中学校)を新たに扱うこととするなど,教育内容の充実が図られている。

文部科学省は,中学生と高校生の社会参画に係る実践力を育成するため,平成25(2013)年度から,地域の抱える具体的な課題の解決に係る体験的・実践的な学習を学校と地域が連携して行うためのプログラム開発に関する調査研究を教育委員会などに委託して行い,その成果の普及に努めているところである。

(2)主権者教育(総務省,文部科学省)

平成27(2015)年6月の改正公職選挙法の成立により,平成28(2016)年6月19日の後に行われる国政選挙の公示日以後に公示・告示される選挙から,18歳以上の者が投票や選挙運動ができるようになることから,国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質や能力を育む教育(主権者教育)の充実や生徒の政治的活動等に係る考え方の整理が必要となった。

総務省では,若者の投票率が低下傾向にある中,若者の政治意識の向上を図るため,国や社会の問題を自分の問題として捉え,考え,行動する主権者となることができるよう,以下の取組を行い,主権者教育の推進に努めている。

  • 選挙権年齢引下げの意義を含め,政治や選挙等に対する理解を深めてもらうよう,若者向けの啓発イベントを全国の都道府県で開催
  • 選挙管理委員会が実施する学校現場での出前授業や,若者向けイベント等の主権者教育の取組を支援
  • 各地の選挙管理委員会と連携し,地域の啓発団体や若者を対象とした研修会等の開催

また,総務省と文部科学省で連携して,模擬選挙などの実践的活動についてのワークシートなども盛り込んだ政治や選挙等に関する副教材や教員用の指導資料を作成し,全国の全ての国公私立高等学校等に配布した。

文部科学省では,高等学校等における政治的教養を育む教育が推進されるとともに,高校生の政治的活動等に対する生徒指導が適切になされるよう,当時の時代背景や選挙権年齢が20歳以上であることを前提としていた昭和44(1969)年の通知を見直し,「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」(平成27年10月29日付け初等中等教育局長通知)を発出し,関連するQ&Aも作成した。

さらに,大学等においても,各自治体の選挙管理委員会と連携したキャンパス内における期日前投票所の設置やインターンシップなどを通じた学生等への啓発活動等が充実するよう,大学等における先進的な取組を周知している。

加えて,文部科学副大臣のもとに検討チームを設置し,国家及び社会の形成者として必要な教育を社会全体で推進する観点から,学校のみならず家庭,地域において,政治の仕組みなどについて必要な知識を習得させるにとどまらず,社会の中で自立し,他者と連携・協働しながら,地域の課題解決を主体的に担うことができる力を身に付けるための取組を検討し,報告書を取りまとめた。

今後,この報告書を受けて,文部科学省では,地域課題の解決に向けた実践的な体験活動などの取組を平成28年度から実施する。

COLUMN NO.5
 私たちも有権者~選挙権が18歳以上に引き下げ~

平成27(2015)年6月に公職選挙法の改正案が成立した。これに伴い,選挙権が18歳以上に引き下げとなることから,平成28(2016)年6月の法の施行を前に,これまで以上に高校生・大学生に対する主権者教育が盛んになっている。ここでは,2つの取組を紹介する。

【模擬選挙等を通じた主権者教育】

NPO法人YouthCreateは,「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動をしている団体である。具体的な取組として,高校生が普段生活している身近な地域の政治について考えたり,地方議員と直接話したりする機会をイベント,キャンペーン等を通じて提供している。

活動の一つとして,自治体の選挙管理委員会と協力の下,高校に出向いて,選挙について体験型の授業(模擬選挙)を実施している。授業の進め方の一例として,まず選挙や投票について講義を行い,その後,仮想の特別区の区議会議員の選挙などを想定した模擬選挙を実施する。そして,投票後,グループディスカッションを行い,他の人がどういう視点で考え,誰に投票したのか,意見を交わす。他者の意見に触れることで,新しい視点を知り,より深い投票ができるようにする狙いがあり,これは模擬選挙ならではと言える。

出前授業の様子

また,YouthCreateでは,模擬選挙だけではなく,ワークショップなど体験型のプログラムに力を入れている。例えば,平成27(2015)年,都立高島高校にて開催した「公園をつくろうワークショップ」では,架空の街に新たな公園ができるという設定の下,中学生,子を持つ母親,お年寄り,商店主,近所の人にそれぞれ役を割振り,意見交換をしながら一つの公園の姿を提案した。生徒たちからは「身近な例に触れることで,政治がぐっと身近に感じられるものになった」との感想が得られた。今後も活動を通し,政治へ関心を持つことが「かっこいい」と思われる社会を目指す。

【若者による政策コンテスト】

NPO法人ドットジェイピーは,若者の投票率の向上を目的とした団体である。累計20,200人の参加者数を誇る「議員インターンシッププログラム」をはじめ,「未来国会」「未来自治体」など若年層を対象とした社会学習プログラムを提供している。

平成24(2012)年から始まった「未来自治体」は,「もしあなたが地域のリーダーなら,30年後,あなたの街をどんな街にしたいですか?それを実現するための,10年後の地域の予算案を策定してください。」という課題について,大学生による政策コンテストを行う企画である。

流山市,鎌倉市,奈良市,仙台市,松阪市,茅ヶ崎市,氷見市などで実施するほか,平成27年(2015)からは「未来自治体 全国大会」も実施している。

〈未来自治体 全国大会の概要〉

応募:主に大学生。1チーム4~8名。

大会の流れ:

(1)全国7ブロックでの地区予選

(2)地区予選を突破した12チームについて予選(WEB投票)

(3)予選を勝ち抜いた4チームにより,東京で全国大会(決勝)

平成28年の第2回大会は,全国約18都道府県より122名の若者の参加があった。平成28年3月に開催された決勝では各チームからプレゼンテーションを行い,会場の観覧者の投票によって優勝チームを決定した。当日は,有識者等もゲストとして参加しており,プレゼンテーションの講評や優勝チームとのパネルディスカッションなどを行った。

大会では,若者らしく斬新で,かつ,現実性を備えた未来のビジョンが各チームから提案され,若者の声を社会に届ける場ともなっている。

未来自治体全国大会の様子

(3)法教育(法務省)

法務省は,法律専門家ではない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方や公正な判断力,社会への参加意識を身に付けるための教育(法教育)の普及・発展のため,以下を始め様々な取組を行っている66

  • 現行学習指導要領を踏まえた,学校教育における法教育の実践の在り方や教育関係者と法曹関係者による連携・協働の在り方について多角的な視点から検討を行うため,法務省で開催された法教育推進協議会67において,学校における法教育の実施状況について調査している。平成26(2014)年度には普通科高等学校,平成27(2015)年度には専門学科及び総合学科高等学校の調査研究を行った。
  • これらの調査研究は,法教育授業の一助となる教材の作成などに役立てている。平成26年度には前年度に実施した中学校における調査研究結果を踏まえ,中学生向け法教育教材を作成し,全国の中学校,教育委員会などに配布した。
  • 学校現場などへ法教育情報を提供することによって,法教育の積極的な実践を後押しするため,法教育に関するリーフレットを作成し,全国の教育委員会などに配布している。
  • 学校などの要請に応じて,法務省の職員を講師として派遣し,教員や児童・生徒に対して法的なものの考え方などについて説明する法教育授業を実施している(第2-47図)。
    第2-47図 職員による法教育授業

(4)租税教育(国税庁)

国税庁は,小学生から社会人手前までの子供や若者が租税の意義や役割を正しく理解し,健全な納税者意識を養うことができるよう,租税教育推進関係省庁等協議会(総務省・文部科学省・国税庁で構成)や民間団体と連携しながら,以下の取組を行い,租税教育の充実に向けた環境整備や支援に努めている68

  • 都道府県に設置された租税教育推進協議会(国,地方公共団体,教育関係者などで構成)を中心に,民間団体と連携・協力し,学校の教員を対象とした講習会の開催や,学校からの要請に基づく租税教室への講師派遣,租税教育用副教材の作成・配付,税に関する作文の募集などの実施
  • 国税庁ホームページに「税の学習コーナー」69を開設し,子供が自ら楽しみながら税を学習できるようクイズやゲームといったコンテンツの提供
  • 学校の教員を始め租税教育を行う指導者が利用できる電子媒体の教材である「租税教育用教材」の提供

(5)金融経済教育(金融庁)

金融経済教育の意義・目的は,金融リテラシーの向上を通じて,国民一人一人が経済的に自立し,より良い暮らしを送っていくことを可能とすることなどにある。そのため金融庁は,以下の取組を行うことにより,金融リテラシーの向上を図っている。

  • 金融庁や関係団体から構成される金融経済教育推進会議において,「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を項目別・年齢層別に具体化・体系化した「金融リテラシー・マップ」を平成27(2015)年6月に改訂・公表
  • 大学生に対し,「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を関係団体と連携して5大学で実施
  • 「基礎から学べる金融ガイド」70や「最低限身に付けるべき金融リテラシー」71(第2-48図)を金融庁ホームページで公表し,全国の高校・高専・短大・大学にも無償で配布。また,金融庁・財務局・財務事務所から高校などへ講師を派遣
    第2-48図 金融経済教育のための広報啓発資料

(6)労働者の権利・義務に関する教育(厚生労働省)

厚生労働省は,労働関係法制度を実際に活用することができるように,労働者としての権利,義務,各種制度についての理解の促進を図るため,学校の要望に応じて都道府県労働局などから講師を派遣し,労働関係法令の基礎知識について講義を行うなど,教育や啓発活動を推進している。

COLUMN NO.6
 労働法トラブルに備えて~これってあり?~

厚生労働省では,労働法に関する基本的な知識をわかりやすくまとめたハンドブック「知って役立つ労働法」を作成し,働く際に知っておきたい基本的な知識はもちろん,各種制度の最新情報を盛り込んでいる。また,「知って役立つ労働法」を基に,学生・生徒などを対象に,就職して働き始める前やアルバイトをする際に知っておくべき労働に関するルールをまとめたハンドブック「これってあり?~まんが知って役立つ労働法Q&A~(通称「まんが労働法」)」を平成27(2015)年4月に作成している。これらのハンドブックについては,ホームページに掲載し,誰でも自由にダウンロードして使える形で提供している。

「知って役立つ労働法」
「まんが労働法」

また,都道府県労働局における取組として,管内の大学等より要請がなされた場合には,大学等が主催する労働法制関連のセミナー等(※)へ労働局職員を講師として派遣するほか,アルバイトによる労働トラブル発生時等の相談先の周知等を行っている。

セミナー等では,上記ハンドブックに加えて,各都道府県労働局が地域性を踏まえて独自に教材を作成して講義等を行っている。

※ 平成26年4月1日~平成27年3月31日までの間に,のべ508大学等で,のべ661回セミナー等が開催され,のべ約5万8,000人の大学生等が参加している。

(7)消費者教育(消費者庁,文部科学省)

近年,経済の仕組みの変化や規制緩和の流れの中で,消費者トラブルは多発し,その内容も複雑化・高度化している。この中で,個々の消費者が豊かな生活を実現していくためには,子供の頃から経済行為の主体たる消費者としての基礎的な知識を身に付け,主体的に責任を持って意思決定を行いうる能力を持った消費者となることが重要である。

政府では,「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(平成25年6月閣議決定)72に基づき,消費者教育を推進している。

消費者庁は,この基本方針において今後検討すべき課題とされた事項を消費者教育推進会議で検討している。また,消費者教育関連の情報を集約した消費者教育ポータルサイト73において,最新教材等の収集・掲載等の運用などを行っている(第2-49図)。

第2-49図 消費者教育ポータルサイト

文部科学省74は,学校における消費者教育の充実を目的として,教科横断的な消費者教育のカリキュラム開発や,消費者教育を担う教員のための研修,学校における外部人材の活用,地域における教材開発についての実践的な調査研究を,都道府県教育委員会などに委託して行った。社会教育においては,各地域における消費者教育の推進を図るため,消費者教育の実践事例の報告及び多様な主体との連携・協働による消費者教育を促進する場として「消費者教育フェスタ」を実施。また,地域における消費者教育の推進体制作りを支援するため,消費者教育アドバイザーの派遣や実証的調査研究を行っている。平成28(2016)年度は,こうした従来の取組を充実させるとともに,消費者教育の指導者用啓発資料の活用を図る。

(8)社会保障制度についての情報提供・意識啓発(厚生労働省)

医療・介護・年金・雇用などの社会保障は,国民が安心して生活をする上で必須の制度である。子供や若者が給付と負担の構造や社会保障の意義を理解し当事者意識を持って考えることができるようにすることが重要である。

厚生労働省は,有識者会議「社会保障の教育推進に関する検討会」において学校における社会保障教育の在り方について検討を行い,今後取り組むべき課題を整理した報告書を平成26(2014)年7月に公表した。また,検討会において作成した高校生向け教材を全国の高等学校に無償配布するとともに,教員向けの研修会を実施するなど,教育現場への普及・啓発活動を行っている。

(9)外交や防衛についての情報提供・意識啓発(外務省,防衛省)

外務省は,外交問題に関する子供や若者の理解を深めるため,以下の取組を行っている。

  • 外務省ホームページにおいて,「キッズ外務省」75を始め動画や画像を活用した理解しやすいコンテンツの制作に努めるとともに,外交をより身近に感じられるよう外務省職員のエッセイやインタビュー記事といった「生の声」を掲載
  • 外務省職員が全国各地の高校に赴き講演する「高校講座」(平成27年度は119校)や全国各地の大学に赴き講演を行う「外交講座」(74講座)の実施
  • 外務省の仕事の内容を紹介し,省内見学を通じて外交に対する関心を高めていただくため,外務省への訪問を希望する小中高校生を受入れ(平成27年度は,計79校の1,519名が外務省を訪問)
  • 若手外務省職員との直接的な意見交換・交流の機会を通じて,外交政策への理解を深めていただくための外務省セミナー「学生と語る」(年2回)の実施
  • 学生を対象としたプレゼンテーション能力を競う「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」を開催

防衛省は,防衛省・自衛隊や防衛施策に関する子供や若者の理解を深めるため,以下の取組を行っている。

  • 小中高校生による部隊見学や隊内生活体験,大学生・大学院生による自衛隊生活体験ツアーを受入れ(小中高校生による部隊見学などについて平成26年度3,958件,延べ参加者数67,292人)
  • 自衛隊音楽まつりや富士総合火力演習において,小学生から大学生などを対象とした特別枠を設け優先的に案内
  • 若い世代を始めとする幅広い層に親しみをもってもらえるよう,「まんがで読む防衛白書」(平成27年度は新たな「日米防衛協力のための指針」をテーマに紹介)を作成
  • ソーシャルメディア(Twitter・Facebook)を活用。平成25(2013)年4月からは防衛省ホームページの一部をスマートフォンでの閲覧用に最適化して提供

2 ボランティアなど社会参加活動の推進(文部科学省)

学校教育では,総合的な学習の時間や特別活動において,子供の社会性や豊かな人間性を育むため,ボランティア活動を始めとする社会参加活動が行われている。

青少年教育施設では,ボランティアに関する各種事業が実施され,子供や若者が社会性を育む機会が提供されている。独立行政法人国立青少年教育振興機構は,学生ボランティアを支援する大学と地域関係機関の担当者の連携協力を深めるとともに学生間の交流と学び合いの機会を提供するため,「学生ボランティアと支援者が集う全国研究交流集会」を実施している。


66 http://www.moj.go.jp/housei/shihouhousei/index2.html
67 http://www.moj.go.jp/shingi1/kanbou_houkyo_kyougikai_index.html
68 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sozei_kyoiku/index.htm
69 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/index.htm
70 http://www.fsa.go.jp/teach/kou3.pdf
71 http://www.fsa.go.jp/news/25/sonata/20131129-1/01.pdf
72 http://www.caa.go.jp/information/index17.html
73 http://www.caa.go.jp/kportal/index.php
74 http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/syouhisha/
75 http://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/index.html
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