第5章 子供・若者の成長を支える担い手の養成(第1節)

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第1節 地域における多様な担い手の養成

1 民間協力者の確保

(1)保護司(法務省)

保護司は,「保護司法」(昭25法204)に定めるところにより,法務大臣から委嘱された非常勤の国家公務員である。民間人としての柔軟性と地域の実情に通じているという特性を生かし,処遇の専門家である保護観察官と協働して,保護観察,生活環境の調整,地域社会における犯罪予防活動に当たっている。平成28(2016)年1月1日現在,全国で約48,000人の保護司が法務大臣の定めた保護区ごとに配属され,それぞれの地域で活動している。

法務省は,近時,犯罪・非行の態様や保護観察に付された人の抱える問題の複雑化・多様化が進んでいることから,これらに適切に対応するため,幅広い世代・分野からの保護司適任者の確保に努めるとともに,保護司研修の充実を図っている。また,近年,保護司の確保が困難になっている状況に鑑み,幅広い分野から保護司候補者を得るとともに,新任保護司の不安を軽減するために,保護司の活動を組織としてサポートできるよう基盤整備に努めている。

(2)更生保護関係施設・団体(法務省)

保護司以外に,地域の中で更生保護を支えている民間の施設・団体として,次のような施設・団体が挙げられる。

法務省は,これらの施設・団体の自発性・自主性を尊重しながら,その活動の積極的な促進を図っている。

  • 更生保護施設

    「更生保護事業法」(平7法86)の定めるところにより,法務大臣の認可を受けるなどして設置・運営される施設である。保護者がいないなどの理由で改善更生が困難な少年院仮退院者や保護観察中の少年を保護し,各種の生活指導や宿泊場所の供与,食事の給与,就労の援助などを行うことにより,その自立更生を支援している。平成27(2015)年4月1日現在,全国に更生保護施設は103施設あり,このうち少年を対象とする施設は84施設ある。

  • 更生保護女性会

    犯罪や非行のない明るい地域社会を実現しようとするボランティア団体であり,非行のある少年の改善更生の援助,地域社会の非行防止,子育て支援活動など,地域に根ざした幅広い活動を展開している。平成27(2015)年4月1日現在,約170,000人の会員が,市町村などを単位に地区会を結成し,全国各地で活動している。

  • BBS(Big Brothers and Sisters Movement)会

    非行など様々な問題を抱える子供の悩み相談や学習支援を通して,その自立を支援する「ともだち活動」を始め,非行防止や子供の健全育成のための多彩な活動を行っている青年ボランティア団体である。平成27(2015)年4月1日現在,約4,500人の会員が,市町村などを単位とした地区組織や大学を単位とした学域組織を結成し,全国各地で活動している。

  • 協力雇用主

    犯罪や非行歴のある人に,その事情を承知した上で職場を提供し,その人の立ち直りに協力しようとする民間の事業主であり,平成27(2015)年4月1日現在,全国に約14,500の協力雇用主がいる。犯罪や非行歴のある人は,そのために職業を得ることが難しく,また,就職しても職場での理解を得にくい場合があるため,協力雇用主は,健全な就業生活の確保に極めて重要な役割を果たしている。

(3)人権擁護委員(法務省)

法務省は,様々な人権問題に対処するため,幅広い世代・分野の出身者に人権擁護委員を委嘱しており,平成28(2016)年1月1日現在,全国に約14,000人の人権擁護委員がいる。子供や若者に関する人権問題は,いじめや体罰,児童虐待,児童買春など,その対象や問題背景が多岐にわたることから,全ての人権擁護委員に対し,各種研修によりこれらの問題に関する知識の習得を図っている。また,人権擁護委員が組織する全国人権擁護委員連合会や都道府県人権擁護委員連合会,人権擁護委員協議会に設置されている子ども人権委員会や子ども部会が中心となり,子供から送られてくる相談の手紙に対する返信内容や子供を対象に実施している人権教室の実施方法について研究し,所属委員に対し研修を行っている。

(4)児童委員(厚生労働省)

児童委員は,民生委員をもって充てられ,平成27(2015)年4月1日現在,全国で約23万人が厚生労働大臣から委嘱されている。児童委員は,子供と妊産婦の生活の保護・援助・指導を行うが,必ずしも児童福祉の専門的知識を持つわけではないので,研修の実施によりその知識の習得に努めている。また,関係機関などと連携して活動を行っている。主任児童委員は,児童委員の中から約2万人が指名され,児童福祉に関する事項を主に担当し,関係機関と児童委員との連絡調整や,児童委員の活動に対する援助と協力を行っており,研修により専門的知識の習得に努めている(第5-1図)。

第5-1図 児童委員

(5)母子保健推進員(厚生労働省)

母子保健推進員は,市町村長の委嘱を受け,母性と乳幼児の健康の保持増進のため,家庭訪問による母子保健事業の周知,声掛け,健康診査や各種教室への協力を始め,地域の実情に応じた独自の子育て支援と健康増進のための啓発活動を行っている。

(6)少年警察ボランティア(警察庁)

警察は,少年の非行を防止し,その健全な育成を図るため,次のような少年警察ボランティア約58,000人を委嘱している(平成27年4月1日現在)(第5-2図)。

  • 少年指導委員(約6,600人)

    「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(昭23法122)に基づき,都道府県公安委員会から委嘱され,少年を有害な風俗環境の影響から守るため,少年補導活動や風俗営業所などへの立ち入りといった活動に従事

  • 少年補導員(約51,000人)

    警察本部長等から委嘱され,街頭補導活動や環境浄化活動を始めとする幅広い非行防止活動に従事

  • 少年警察協助員(約260人)

    警察本部長等から委嘱され,非行集団に所属する少年を集団から離脱させ,非行を防止するための指導・相談に従事

また,大学生や女性,PTA関係者などを委嘱することにより,幅広い世代・分野からの人材の多様化を図るとともに,少年サポートセンター等と連携した街頭補導活動,問題を抱える少年の立ち直り支援,インターネットを利用しての声掛け補導活動など活動の多様化を図っている。さらに,警察や全国少年警察ボランティア協会が行う各種研修会などの機会を利用して,非行の防止等健全育成のための活動を行うために必要な知識の提供に努めている。また,平成27(2015)年3月現在,大学生ボランティア(約5,700人)が全国で活動しており,少年と年齢が近く,その心情や行動を理解しやすいなどの特性をいかし,学習支援活動や少年の居場所づくり活動等にも取り組んでいる。

第5-2図 少年警察ボランティアによる立ち直り支援活動(農業体験)

(7)少年補導委員(内閣府)

内閣府では,地方公共団体が委嘱している少年補導委員(平成28年1月現在約6万人)の活動に関して,青少年センター関係者が集まる会議・会合等の機会を活用して,補導・相談の効果的な進め方などの情報共有を図っている。

COLUMN NO.12
 体験を通じて学ぶ~企業が取り組む人づくり~

子供たちの教育では,単に知識の詰め込みではなく,体験を通して学ぶアクティブ・ラーニングが推進されている。ここでは,文部科学省主催「青少年の体験活動推進企業表彰」の応募企業から企業による青少年育成の取組を紹介する。

○パナソニック株式会社 “映像制作支援プログラム「キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)」”

パナソニックでは,まさに「次世代の健全な育成なくして将来の世界・日本の発展はない」という考えのもと,「生きる力」を備えた人材育成に励んでいる。

本プログラムでは,小中学生と高校生を対象に,同一学校の5人以上のグループで「環境」「コミュニケーション」「スポーツ」からテーマを選び,半年余りをかけて5分間の映像を作成する。生徒たちは,映像専門家による指導のもと,企画・取材から,本格的な撮影機材を使用した撮影,編集まで,自分たちで行う。これらの体験を通じて,「創造性」「コミュニケーション能力」を高め「チームワーク」を養う狙いがある。また,本プログラムは世界各国で取り組まれており,国内の作品コンテストで優勝した学校は,各国の作品が集まるグローバルコンテストへエントリーでき,参加校同士の国際交流の機会にもなっている。

本プログラムにより,同社は平成27年度青少年の体験活動推進企業として文部科学大臣賞(大企業部門)を受賞した。同社では引き続き,学校等と連携しながら自社の強みを活かした人材育成に取り組んでいくこととしている。

制作の様子

○横河電機株式会社 “障害のある子供の余暇活動支援”

横河電機は,平成20年度に社会貢献を専門に担当する社会貢献室(現在はCSR課)を発足した。同室は地域のニーズ調査を実施した上で,東京都放課後子供教室を受託している「あきるのクラブ」との連携により,平成21年度より,小学生から高校生を中心とした障害のある子供とその兄弟姉妹を対象に,余暇活動支援を行っている。フラワーアレンジメントや外国人社員との異文化交流,ハイキング,ヒップホップダンス,あるいはサッカーなど,様々な教室が開かれ,YOKOGAWAグループ本社同好会(23種)組織を中心に,それらを趣味や特技とする社員が講師や指導者を務めている。プログラムによっては,地元のスポーツクラブなどとも連携して行われている。

障害児指導の専門家ではない社員が可能性を信じて子供たちと接することで,子供たちの主体性が引き出され,親や教師も驚くような成果が出るケースが見られている。身近な大人以外の地域資源(YOKOGAWAグループ社員)を活用することで「自分でできる」ことが増えていく成功体験の積み重ねは,子供たちの自信となり,大きな成長につながっていくことが期待される。こうした取組は,企業理念である『「よき市民」であれ』に合致するものであり,今後も,他企業との連携など取組を広げていくこととしている。

ハイキングの様子

2 同世代又は年齢の近い世代による相談・支援(内閣府・文部科学省)

内閣府は,地域で中心的役割を担っている青少年育成指導者,少年補導委員,青少年育成に関する活動を行う各種団体の指導者に対して,子供や若者に係る諸問題の状況について情報提供するとともに,政府の施策について理解を深め,様々な課題への対応能力の向上を図るため,研修会を開催している。平成27(2015)年度は,中央研修大会を東京で,ブロック研修会を全国6ブロック(岩手県,神奈川県,富山県,大阪府,愛媛県,沖縄県)で開催した。また,地域の若手指導者などのリーダーシップや企画力などの向上に資する青年リーダー研修会を東京で実施した(第5-3図)。

独立行政法人国立青少年教育振興機構を始めとする青少年教育施設は,青少年関係団体の指導者などを対象とした自然体験活動指導者養成や体験活動安全管理講習などの研修を行っている。

第5-3図 中央研修大会

COLUMN NO.13
 中高生の「やってみたい!」を引き出し,心に灯をともせ!

平成27(2015)年4月,東京都文京区に青少年プラザ「b-lab(ビーラボ)」がオープンした。文京区が教育センターとの複合施設として開設した区内初の中高生向け施設だ。中高生は,友人や職員と懇談したり,自習をしたり,バンド活動やダンス,料理など趣味の活動に取り組んだり,思い思いの時間を過ごすことができる。

b-lab館内の様子

施設のコンセプトは「中高生の秘密基地」。区から施設の運営を受託するNPO法人カタリバは,「生き抜く力を,子ども・若者へ」を理念とし,子供・若者の教育活動に取り組む団体である。区や同団体は,開設準備段階から中高生たちとの対話を重ね,施設の愛称や空間デザインなどにも,中高生の声が多く反映されている。オープン後も,中高生スタッフがイベントを企画したり,フリーペーパーの編集を行ったりするなど,施設の運営に積極的に関わっている。利用者の活動を支えるのは,施設の職員や大学生ボランティア(キャスト)だ。彼らはユースワーカーとして,中高生に自分自身の可能性や興味関心を発見する場を提供し,引き出した「やる気」に伴走する。

b-labは,様々な中高生の「居場所」であるとともに,彼らの成長やチャレンジを応援しているが,これはNPO法人カタリバの活動に合致している。

ここではカタリバの具体的な活動事例を2つ紹介する。

○MY PROJECT

(事業概要)高校生が,地域や自分の身の回りにある課題を解決するために,自分自身でプロジェクトを立ち上げ,実行することを通して学ぶ「課題解決型プロジェクト学習」。(平成26年度は,全国から184名が参加。)

(進め方)<1>プランニング期間<2>アクション期間<3>リフレクション期間

テーマ設定の主体性や実際にやってみた経験からの学びを重視しており,あくまで高校生が自ら取組み,それを「ユースワーカー」と呼ばれる専門スタッフや大学生ボランティアがサポートする形で行われる。

(実績)東日本大震災の経験から,避難が完了している家かどうかが分かる「安否札」の配付を自治会に提案した生徒の例では,プロジェクトの活動と学校生活との両立がうまくいかなくなっていたことから,ユースワーカーが,彼女に時間の使い方について優先順位づけを指導したり,学校などに活動を理解してもらうための説明能力の向上についてサポートをしたりした。また,自らが不登校だったという経験を踏まえ,不登校生徒をサポートする活動を開始した生徒に対しては,生徒の体調など無理がかからないよう,母親と連携し,活動のペース配分においてサポートを行った。

○カタリ場

(事業概要)主に高校生の進路意欲を高めるために行われる動機づけキャリア学習プログラム。大学生や社会人を中心に構成されるボランティアスタッフ(キャスト)が高校に出向いて授業を行う。

(進め方)<1>キャストとの座談会による自己分析<2>先輩の話(ロールモデルを見つける)<3>目標の設定(その日から取り組める行動をキャストと約束)

(実績)授業を受けた生徒の中で,「自分は価値のある人間だと思う」という問いに「そう思う」と回答した生徒は授業実施後に増加し,また「高校生活の過ごし方を変えようと思う」と回答した生徒も大多数にのぼった。

NPO法人カタリバでは,どの活動においてもユースワーカーが配置され,中高生たちが将来の目標に向かう一歩を踏み出せるよう,背中を押す役割を担う。ほとんどの中高生は,普段,大学生や社会人と接する環境も,将来についてリアリティを持って考える機会もない。だからこそ,中高生にとって年齢の近い先輩であり,相談しやすいユースワーカーの存在は大きい。身近に憧れの存在がいることで,将来に向けたビジョンが明確になり,自発的に社会参加へ向かうベースを生み出す。一方,ユースワーカーとして関わる大学生等キャストにとっても,中高生と接する中で自分自身の振り返りができるなど,自身の成長につながるものとなっている。

カタリ場の様子
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