第6章 創造的な未来を切り拓く子供・若者の応援(第1節)

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第1節 グローバル社会で活躍する人材の育成

1 自国の伝統・文化への理解促進等(文部科学省)

国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには,我が国や郷土の伝統や文化を受け止め,その良さを継承・発展させるための教育を充実することが必要である。このため,現行の学習指導要領では,各教科等で我が国の伝統や文化についての理解を深める学習を充実した。例えば,「国語」では,神話・伝承や古文・漢文に関する学習(小学校)を充実するとともに,「美術」では我が国の美術文化に関する学習(中学校)を,「音楽」では我が国の伝統的な歌唱や和楽器に関する学習(中学校)を充実している。

2 外国語教育の推進(文部科学省)

文部科学省では,グローバル化に対応した教育環境の更なる整備に向けて小・中・高等学校を通じた英語教育改革を進めるため,「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を取りまとめ,平成25(2013)年12月に発表し,同計画を具体化するため,平成26(2014)年2月に「英語教育の在り方に関する有識者会議」を開催し,同年9月に「今後の英語教育の改善・充実方策について(報告)」を取りまとめ,平成27(2015)年8月においては,次期学習指導要領の改訂に向けた方向性が示された。

これらにより示された方向性を踏まえ,文部科学省としては,英語教育の更なる充実・強化を図るため,平成26年度より教員等の英語力・指導力向上のための研修,外国語指導助手(ALT:Assistant Language Teacher)などの活用促進,小学校の英語教育における先取りした取組の支援,外部検定試験を活用した生徒の英語力の把握・分析及びそれを通じた指導改善などの取組を進めている。

また,総務省及び外務省と共に「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」を推進している。本プログラムは外国語教育の充実や,地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて,諸外国との相互理解を増進するとともに,我が国の国際化の促進に寄与することを目的としている。本プログラムにALTとして活躍する参加者は生徒が授業で生きた英語に触れたり,実際に英語を使ったりする機会を充実させるために重要な存在であり,平成27年度は,本プログラムにより27か国から招致した4,404人のALTが学校などで語学指導や国際理解のための活動に従事している。

3 海外留学と留学生受入の推進等(文部科学省)

文部科学省1は,異文化体験や同世代の外国人との相互コミュニケーションといった国際交流を通じて,初等中等教育段階から多様な価値観に触れる機会を確保することにより,子供に国際的な視野を持たせ,自らが主体的に行動できるようなグローバル人材の基盤を形成するため,都道府県や民間団体が行う以下のような取組を支援している。

  • 高校生に対する海外留学費用の一部支援や外国人高校生の日本の高校への短期招致
  • 海外勤務経験者や留学経験者の学校への派遣
  • 留学フェアの開催

そのほか,ドイツやオーストラリアなどの外国政府が主催する高校生派遣・招致事業の募集や選考に協力している。

また,平成26(2014)年度から,社会課題に対する関心と深い教養,コミュニケーション能力,問題解決力等の国際的素養を身に付け,将来,国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成に資する教育課程等の研究開発及び実践を行う高等学校等を「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」として26年度に56校,27年度に56校の計112校を指定し,支援している。

  • 日本人の海外留学者数は,平成16年をピークに減少傾向にある。
  • 外国人留学生は増加を続けており,中国からの留学生が最も多い。

4 海外子女教育の充実(文部科学省)

我が国の国際化の進展に伴って多くの日本人が子供を海外に同伴しており,平成27(2015)年4月現在,海外に在留している義務教育段階の子供の数は7万8,312人となっている(第6-3図)。

文部科学省では,海外子女教育の重要性を考慮し,日本人学校や補習授業校の教育の充実・向上を図るため,日本国内の義務教育諸学校の教員を派遣するとともに,退職教員をシニア派遣教員として派遣するなど,高い資質・能力を有する派遣教員の一層の確保に努めている(平成27年度は派遣教員1,084人,シニア派遣教員87人)。

さらに,教育環境の整備として,義務教育教科書の無償給与,教材の整備,通信教育などを行っている。

このほか,外国における災害,テロ,感染症などに対応するため,在外教育施設派遣教員安全対策資料の作成などを行うほか,有事の際には,関係省庁や現地の在外教育施設などと緊密な連携を図り,教職員や児童生徒の安全確保に努めるとともに,臨時休校等のため一時帰国した児童生徒の就学機会が確保されるよう,都道府県教育委員会等に周知を図っている。

なお,海外子女教育・帰国児童生徒教育に関する情報は,総合ホームページ(通称「CLARINET(クラリネット)2」)に掲載している。

5 オリンピック・パラリンピック教育の推進(文部科学省)

平成25(2013)年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会において,2020年オリンピック・パラリンピック競技大会を東京で開催することが決定した。国内では,平成32年の東京大会に向けた準備が加速している。

オリンピック憲章では,オリンピック精神(以下「オリンピズム」という。)は,「肉体と意志と精神のすべての資質を高めバランスよく結合させる生き方の哲学」であり,「スポーツを文化,教育と融合させ,生き方の創造を探求するものである」とされている。また,オリンピック・ムーブメントの目的は,「オリンピズムとオリンピズムの価値に則って実践されるスポーツを通じ,若者を教育することにより,平和でより良い世界の構築に貢献する」こととされており,パラリンピックは,そのビジョンとして「パラリンピックアスリートが,スポーツにおける卓越した能力を発揮し,世界に刺激を与え興奮させることができるようすること」を掲げている。さらに,パラリンピック・ムーブメントの発展により「スポーツを通じ,障害のある人にとってよりよい共生社会を実現する」ことを究極の目標としている。

文部科学省では,オリンピック・パラリンピックを始めとしたスポーツの価値や効果の再認識を通じて自己や社会の在り方を向上させることにより,スポーツの価値や効果の再認識を通じ,国際的な視野を持って世界の平和に向けて貢献できる人材を育成するため,オリンピック・パラリンピック・ムーブメントの中核の一つであるオリンピック・パラリンピック教育を推進する。

平成26(2014)年2月には,オリンピック・パラリンピック教育を推進するための基本的な考え方や具体的な内容・手法について検討を行う「オリンピック・パラリンピック教育に関する有識者会議」を開催し,平成27(2015)年7月に中間まとめを発表した。また,オリンピック・パラリンピック教育の推進のための効果的手法等に関するより実践的な調査研究を実施し,その成果を広く発信することにより,オリンピック・パラリンピック・ムーブメントを日本全国へ波及させるための土台を整備する「オリンピック・パラリンピック・ムーブメント調査研究事業」を実施している。

平成28(2016)年度においては,有識者会議における検討や上記の調査研究の成果も踏まえ,全国各地に,オリンピック・パラリンピック教育を推進するコンソーシアムを形成し,オリンピック・パラリンピックに関する市民フォーラムの開催やパラリンピック競技体験などを通じた共生社会への理解促進などオリンピック・パラリンピック・ムーブメントを全国に波及させる「オリンピック・パラリンピック・ムーブメント全国展開事業」を実施している。

6 国際交流活動

(1)国際交流を通じたグローバル人材の育成(内閣府,文部科学省,外務省)

内閣府は,若者の国際理解を促し,グローバル化に対応したリーダーシップ能力,異文化対応力を育成するとともに,日本人としてのアイデンティティの確立を図るため,青年国際交流事業を実施し,国内外の青少年の招聘・派遣等を通じた国際交流の機会を提供している(第6-4図)。平成27(2015)年度は,「国際青年育成交流事業」「日本・韓国青年親善交流事業」「日本・中国青年親善交流事業」「東南アジア青年の船事業」「次世代グローバルリーダー事業『シップ・フォー・ワールド・ユース・リーダーズ』」「青年社会活動コアリーダー育成プログラム」を実施した。これらの事業では,各国の若者とのディスカッションや交流活動の企画・実施における協働,共同生活,文化交流,訪問国での施設訪問やホームステイ,ボランティア活動などの多様な研修・交流プログラムを実施している。こうした活動を通じて,参加した若者は,リーダーシップ能力や異文化対応力を向上させるとともに,国境を越えた末永く続く深い友好関係を構築している。青年国際交流事業に参加した我が国の若者は,これまでに16,600人を超え,事業で得た成果を社会に還元するため,青少年育成や人道的支援,国際交流などの社会貢献活動を活発に行っている。また,日本青年国際交流機構を自主的に組織し,世界40か国以上で設立された外国の若者のOB・OG組織や全国47都道府県で設立された青年国際交流機構と連携して,諸外国と地域につながるネットワークを構築している。

第6-4図 青年国際交流事業

なお,平成28(2016)年度は,「青年社会活動コアリーダープログラム」に代えて,地域の共生社会の実現に向けた課題の解決の担い手を,先進事例のある外国に派遣し,実務に必要な能力を身に付ける機会を提供することを目的として,「地域課題対応人材育成事業『地域コアリーダープログラム』」を実施することとしている。

COLUMN NO.14
 船上での国際交流~「東南アジア青年の船」と「次世代グローバルリーダー事業『シップ・フォー・ワールド・ユース・リーダーズ』」

内閣府では,国内外の青少年の招聘・派遣等を通じた国際交流の機会として,青年国際交流事業を実施し,若者の国際理解を促し,グローバル化に対応したリーダーシップ能力,異文化対応力を育成するとともに,日本人としてのアイデンティティの確立を図っている。

青年国際交流事業の中でも,「東南アジア青年の船」と「次世代グローバルリーダー事業『シップ・フォー・ワールド・ユース・リーダーズ』」は,諸外国から招聘された青年と我が国の青年が一つの客船に乗り,船上や寄港国において共同で研修を行うというユニークなプログラムであり,参加青年に対し,船という閉ざされた空間や外国において,各国の青年と切磋琢磨しあうという貴重な経験を提供している。平成27年度は,「東南アジア青年の船」事業では,我が国の37人の青年が,アセアン10ヵ国の青年272人と客船でフィリピン,ベトナム,ラオス(航空機により代表団のみ訪問),ミャンマー,マレーシアを訪問した。「次世代グローバルリーダー事業」では,我が国の119人の青年が,オーストラリア,バーレーン,チリ,インド,メキシコ,ニュージーランド,ロシア,スリランカ,タンザニア,アラブ首長国連邦から招聘された青年102人と,客船でインド及びスリランカを訪問した。スリランカにおいては,船に大統領が訪問するなど,それぞれの事業の寄港先では,幅広い歓迎を受けた。

事業に参加した青年達は,その後,政府・国際機関や民間企業,非営利組織など多方面で活躍している。そして,その中には,後に起業に至った参加者も多い。

世界各国の青年と外国に船で渡航する事業として行われていた「世界青年の船」事業に平成9年度に参加した佐谷恭さんは,事業への参加が人生の大きな転機になった一人である。学生時代に参加した事業において,異なる文化をまたいだコミュニケーションの重要性を学んだ佐谷さんは,大手電機会社等での勤務後,起業し,現在,人々の交流の場となる飲食店の経営,シェアオフィス事業などを手掛けている。

また,「東南アジア青年の船」事業に平成21年度に参加した吉野慶一さんは,船上という日常と離れた空間でのアセアン各国の青年との研修・討論の経験を経て,社会課題の解決に自らの人生を賭けることを決めたという。吉野さんは,事業参加後,金融機関での職を辞し,インドネシア産のカカオを使用したチョコレートの製造・販売会社を起業,インドネシアの農家の所得向上,日本の消費者への新たな味覚の提供に取り組んでいる。

2人は,起業するにあたって,内閣府事業に参加した青年のネットワークが大いに役に立ったという。内閣府青年国際交流事業の特徴の一つが,事業実施後も続く参加青年のネットワークの存在である。事業既参加青年は,日本では全都道府県に組織を持つ「日本青年国際交流機構」に参加し活動しているほか,「世界青年の船」,「次世代グローバルリーダー事業」等の事業に参加した青年によるShip for World Youth Alumni Association Internationalや,「東南アジア青年の船」事業に参加した青年によるSSEAYP Internationalが国際的な組織として存在し,国境をまたいだ人と人のつながりが構築されている。それぞれの組織は,青少年育成や環境保全などの社会貢献活動を行っており,また,各国においては,我が国への理解を深める民間外交の担い手ともなっている。

吉野慶一さんの写真と佐谷さんの写真

(2)青少年の国際交流(文部科学省)

文部科学省は,子供や若者が国際社会の一員であることを自覚し,自分とは異なる文化や歴史に立脚する人々と共生していくことが重要な課題となっていることから,子供や若者が国内外の様々な人々との交流を通して多様な価値観に触れる機会を提供する事業を実施している。平成27(2015)年度は,「青少年教育施設を活用した国際交流」を実施し,スポーツ・文化施設や大学などの教育機関と協力することにより,質の高い体験活動・交流プログラムの機会を提供した。

また,ボーイスカウトの世界大会である「第23回世界スカウトジャンボリー」が平成27年7月28日から8月8日にかけて山口県山口市きらら浜において開催され,世界155の国と地域から約3万4千人が参加した。参加者は,キャンプを通じて様々な国からの子供や若者と共に生活することにより異文化を理解し世界中に友だちの輪を広げるとともに,期間中は,環境や平和などについて学ぶプログラムや自然体験のプログラムが行われた(第6-5図)。

独立行政法人国立青少年教育振興機構においても,様々な国際交流事業を実施している。例えば,絵本・童話を通してお互いの文化の特徴や共通性の認識を深めることを目的とする「日中韓子ども童話交流事業」を実施している(第6-6図)。この事業は,小学4年生から6年生にあたる日本・中国・韓国の子供100名が6泊7日の間行動を共にし,理解を深め合うもので,日中韓3か国で巡回開催している。平成27年度は,日本で開催し,平成28(2016)年度は中国で開催される予定である。

第6-5図 世界各国のスカウトが一堂に会した「第23回世界スカウトジャンボリー」
第6-6図 3か国の子供たちで絵本を作成する「日中韓子ども童話交流事業」

(3)スポーツの国際交流(外務省,文部科学省)

スポーツを通じた国際交流は国際相互理解を促進し国際平和に大きく貢献するとともに,青少年の身体・精神の健全な成長にも重要な役割を果たす。

文部科学省では,公益財団法人日本体育協会が行うアジア地区とのスポーツ交流事業や公益財団法人日本オリンピック委員会が行う国際交流事業に対して支援を行い,青少年も含めたスポーツ国際交流を支援している。

また,スポーツを通じた国際協力及び交流,国際的な人材養成の中核拠点の構築,国際的なアンチ・ドーピング推進の強化支援を柱とする,「Sport for Tomorrow」プログラムでは,開発途上国において,中学校体育カリキュラムの策定支援や小中学校での運動会開催等の事業を実施しており,こうした取組を通してスポーツの価値を伝え,青少年の健全な成長に貢献する。

外務省は,日本の青少年を諸外国に派遣するプログラム及び諸外国の青少年を日本に招へいするプログラムを実施し,国際交流を通じた国際的視野の拡大,国際理解や対日理解の促進に努めている。具体的には,日本とアジア大洋州諸国との間で「JENESYS(ジェネシス)2.0」,北米地域との間で「KAKEHASHI Project -The bridge for tomorrow-」を実施した。

(4)その他のグローバル人材の育成に資する取組(外務省,文部科学省)

外務省は,国際協力機構を通じた「青年海外協力隊派遣事業」により,開発途上国が要請する技術・技能を有する満20歳から39歳までの男女を募集,選考,訓練の上,開発途上国へ原則として2年間派遣している。派遣された協力隊員は,草の根レベルの技術協力を行い,相手国の経済・社会の発展に寄与するとともに,広い国際的視野を養い,得られた知識・経験を帰国後に社会へ還元している。同事業は,昭和40(1965)年に発足し,平成27(2015)年に50周年を迎え,同年11月には,国際協力機構が青年海外協力隊発足50周年記念式典を開催した。平成28(2016)年3月末現在,71か国に対し,2,041名(うち女性は1,182名)を派遣中であり,累積の派遣人数は,41,445名(うち女性は19,134名)である。

また,文部科学省は,持続可能な開発のための教育(ESD)を推進しており,我が国の提唱により始まった「国連持続可能な開発のための教育の10年」(2005年-2014年)を踏まえ,2015年からはユネスコを主導機関として,「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」の下で各国における取組が行われている。我が国においては,関係省庁連絡会議において平成28年3月に「我が国における『ESDに関するグローバル・アクション・プログラム』実施計画」を策定し,取組を進めている。


1 http://www.mext.go.jp/a_menu/01_f.htm
2 参照:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm
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