第2章 全ての子供・若者の健やかな育成(第1節)

[目次]  [戻る]  [次へ]

第1節 自己形成のための支援

1 日常生活能力の習得

(1)基本的な生活習慣の形成

子供の心身の健康や意欲は,正しい生活習慣の下での充足感のある生活が基盤となる。生活習慣づくりは,自己管理能力を身に付けていく基礎になることも期待される。

ア 学校教育における取組(文部科学省)

学校教育では,道徳や特別活動をはじめ学校の教育活動全体を通じて,基本的な生活習慣の形成を図るための指導が行われている。平成20(2008)年と21(2009)年に改訂された学習指導要領(以下「現行学習指導要領」という。)では,特に小学校低学年において,挨拶などの基本的な生活習慣や社会生活上のきまりを身に付け,善悪を判断し,人としてしてはならないことに関する指導を重視するなど,道徳教育の充実を図っている。

文部科学省は,「心のノート」を全面改訂して作成した道徳教育用教材「私たちの道徳」を全国の小・中学生に配布した(第2-1図)。また,教育再生実行会議の第一次提言などを踏まえ,平成27(2015)年3月27日に,平成30(2018)年度から小学校,平成31(2019)年度から中学校において道徳を「特別の教科」に位置付けるための学習指導要領の一部改正などを行い,平成27年4月からは移行措置として,改正後の学習指導要領の全部又は一部について実施可能となっている。

第2-1図 「私たちの道徳」

イ 社会全体で取り組む子供の生活習慣づくり(文部科学省)

文部科学省は,早寝早起きや朝食をとるといった子供の望ましい基本的な生活習慣を育成し,生活リズムを向上させるため,「早寝早起き朝ごはん」全国協議会や民間団体と連携して「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進している(第2-2図)。平成27(2015)年度で国民運動を開始してから10年目を迎え,PTAをはじめ,経済界,メディア,有識者,市民活動団体,教育・スポーツ・文化関係団体,読書・食育推進団体,行政などの参加を得て,子供の基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる運動,ウェブサイトによる情報提供などを展開している。平成28(2016)年度には,運動開始10周年を記念し,記念誌の作成や記念フォーラム・式典を開催した。

第2-2図 早寝早起き朝ごはんに関する小学校低学年とその保護者向けリーフレット

また,平成27年度から,家庭と学校,地域の連携による中高生を中心とした子供の生活習慣改善のための実証研究として,「中高生を中心とした生活習慣マネジメント・サポート事業」を実施しており,平成28年度は8地方公共団体で実施した。同事業において,平成26(2014)年度に作成した中高生や保護者などを対象とした普及啓発資料や指導者用資料を活用しつつ,地域における先進的な取組を支援し,その効果を検証・分析した上で,広く周知し,効果的かつ実践的な生活習慣改善の取組を全国に推進している。

ウ 青少年教育施設における取組(文部科学省)

青少年教育施設は,集団宿泊体験を通じて規律ある生活をする態度を養うため,学校や青少年団体に対して広く学習の場や機会を提供している。

独立行政法人国立青少年教育振興機構は,学校や青少年団体などが全国の国立青少年教育施設を利用して行う活動に対して,必要な助言・指導などの支援を行っている。

エ 食育活動の推進(内閣府,文部科学省,厚生労働省,農林水産省)

子供に対する食育は,心身の成長と人格の形成に大きな影響を及ぼし,生涯にわたって健全な心と身体を培い,豊かな人間性を育んでいく基礎となるものである。近年,特に20代の若者において,朝食欠食率の高さや偏った栄養摂取といった食生活の乱れが見られることから,子供の頃から食に対する基本的な知識や習慣を身に付け,意識を高め,心身の健康を増進する健全な食生活を実践することができるよう,家庭や学校,地域における取組が重要である(第2-3図,第2-4図)。

平成28(2016)年度からの5か年計画である「第3次食育推進基本計画」(平成28年3月18日食育推進会議決定)においては,従来の取組を継続しつつ,食育に関する知識,意識,実践について課題が多い若い世代を中心とした食育の推進を重点課題の一つとし,栄養バランスに配慮した食生活を実践する若い世代を増やす等,若い世代に関する目標も新たに設けて,子供や若者の食育の推進に一層取り組むこととしている。

学校教育では,幼稚園教育要領や学習指導要領に食育の推進に係る記述が盛り込まれ,その内容の充実が図られている。文部科学省は,食に関する指導を行う栄養教諭の配置を促進しており,平成28年5月現在,全国の公立小中学校等で5,765名が配置されている。

厚生労働省は,妊娠中から適切な食生活を支援し,乳幼児期からの望ましい食習慣の定着を図るため,妊産婦や子育て家庭を対象とした食に関する学習機会や情報の提供を推進している。

農林水産省は,健全な食生活の実現に当たり,「食育ガイド」や「食事バランスガイド」の活用を促進するほか,ごはんを中心に多様な副食を組み合わせ栄養バランスに優れた「日本型食生活」の実践や,食や農林水産業への理解を深めるための教育ファームの実施など食育活動を推進している(第2-5図)。

第2-5図 農業体験活動

内閣府の食品安全委員会は,ホームページに「キッズボックス」を設け,子供向けの食品安全に関する情報をイラストを用いて分かりやすく解説している。また,小学校5・6年生とその保護者を対象とし,食品安全委員会委員との意見交換を通して食の安全について楽しく学び,理解を深めてもらう「ジュニア食品安全委員会」を夏休み期間中に開催している。

(2)規範意識等の育成(警察庁,総務省,文部科学省)

近年,いじめの社会問題化や重大事件の続発など,子供の問題行動は教育上の大きな課題となっており,善悪の判断といった規範意識や倫理観の育成を図ることが,これまで以上に求められている。このため,学校・家庭・地域が十分連携を図り,子供の豊かな人間性や社会性を育む取組を進める必要がある。

学校教育では,国語や道徳,特別活動をはじめ学校の教育活動全体を通じて,誰に対しても思いやりの心を持つことや広い心で自分と異なる意見や立場を大切にすることに関する指導が行われている。また,伝え合う力の育成を重視し,発表・討論を積極的に取り入れた学習活動が行われている。

青少年教育施設では,社会性や協調性を育むため,自然体験や集団宿泊体験といった様々な体験活動の機会と場が提供されている。

警察は,職員の学校への派遣や少年警察ボランティアなどの協力により,非行防止教室を開催している。具体的な非行事例を題材にして直接子供に語り掛けることにより,子供自身の規範意識の向上を図り,非行防止に取り組んでいる。また,教育委員会などの関係機関と連携し,中学生や高校生を対象とした犯罪被害者などによる講演会である「命の大切さを学ぶ教室」を開催したり,大学生を対象とした犯罪被害者支援に関する講義を実施したりすることなどを通じて犯罪被害者などへの配慮や協力への意識のかん養に努めている。

総務省は,子供のメディアリテラシー1を向上させるため,小学生・中学生・高校生用の教材を開発し,広く貸出しを行っている。また,ホームページ2にこの教材や小学校・中学校教員を対象とした授業実践パッケージを掲載し,提供している。

(3)体験活動の推進(文部科学省)

子供の「生きる力」を育む上で,自然体験をはじめ文化・芸術や科学に直接触れる体験的な活動が重要である。社会で求められるコミュニケーション能力や自立心,主体性,協調性,チャレンジ精神,責任感,創造力,変化に対応する力,異なる他者と協働する能力を育むためには,様々な体験活動が不可欠である。

近年,学校以外の団体が行う自然体験活動への参加率は減少傾向にあるが(第2-6図,第2-7図),自然体験や地域活動を多く経験した人の方が,大人になってから,意欲・関心や職業意識が高いことがうかがえる(第2-8図)ことから,国や地方公共団体,地域,学校,家庭,民間団体,民間企業などがそれぞれの立場で自らの役割を適切に果たし連携して社会総ぐるみで,人づくりの“原点”である体験活動の機会を意図的・計画的に創出していくことが必要である。また,NPOや子供会,青年団,青年会議所といった多くの民間団体が,様々な体験活動プログラムを企画・実施しており,これらの団体の活性化も求められている3

文部科学省は,家庭や企業などへ体験活動に対する理解を求めていくための普及啓発を推進するとともに,体験活動の評価・顕彰制度に関する調査研究や体験活動を推進する企業の表彰に取り組んでいる(第2-9図)。また,家庭,学校,青少年関係団体,NPOなどをネットワーク化し,地域における持続可能な体験活動推進の仕組みづくりを支援している。

第2-9図 青少年の体験活動推進企業表彰

独立行政法人国立青少年教育振興機構は,社会全体で体験活動を推進する気運を高めるため,青少年団体と連携して,「体験の風をおこそう」運動を推進している(第2-10図)。毎年10月を「体験の風をおこそう推進月間」として,全国各地で体験活動に関する様々なイベントや全国的なフォーラムを実施し,子供の健やかな成長にとって,体験がいかに大切であるかを,広く家庭や社会に発信している。また,「子どもゆめ基金」事業により,民間団体が実施する特色ある取組や裾野を広げるような活動を中心に様々な体験活動へ助成を行っている。

第2-10図 「体験の風をおこそう」運動

(4)読書活動の推進(文部科学省)

読書は,子供にとって,言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きるための力を身につけていく上で欠くことができないものである。

文部科学省は,「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平13法154)と「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第3次)」(平成25年5月閣議決定)に基づき,子供の読書活動を推進している4。具体的には,次のような施策を推進している。

  • 学校,図書館,読書ボランティア団体などによる読書コミュニティの構築を促進するため,「子どもの読書活動推進ネットワークフォーラム」を全国各地で開催し,子供の読書活動を推進する諸施策に関する情報提供などを行っている。
  • 国民の間に広く子供の読書活動についての関心と理解を深めるため,「子ども読書の日」(4月23日)(第2-11図)に「子どもの読書活動推進フォーラム」を開催し,著名人による記念講演や,優れた読書活動を行っている学校や図書館,ボランティア活動団体への文部科学大臣表彰の授与を行うとともに,子供の読書に関してホームページなどによる情報提供を行っている。
    第2-11図 子ども読書の日
  • 学校図書館の機能の一層の向上を図るため,「第5次学校図書館図書整備等5か年計画(平成29年度~平成33年度)」を策定し,学校図書館図書の整備及び新聞配備に加え,新たに学校司書の配置についても計画に位置付け,これらの配置に要する経費について地方財政措置を講じている。
  • 「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」なども踏まえ,公立図書館における読書環境の整備に努めている。

平成26(2014)年6月に「学校図書館法」(昭28法185)が改正され,学校司書が法的に位置付けられた。これを踏まえ,文部科学省は学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議を開催し,学校図書館の運営に係る基本的な視点や学校司書の資格の在り方,その養成等の在り方に関する検討を行い,平成28(2016)年10月に報告書を取りまとめた。この報告書を踏まえ,文部科学省では,学校図書館の運営上の重要な事項について,その望ましい在り方を示した「学校図書館ガイドライン」や「学校司書のモデルカリキュラム」を作成し,教育委員会や大学等に対して普及・啓発活動を行った。

図書館は,子供が読書の楽しみを知ることのできる教育施設であり,子供の読書活動の推進に資する施設である。公民館は,子供の地域における多様な活動を支える施設であり,親子で参加する工作教室をはじめ子供を対象とした様々な教育活動を行っている。博物館は,豊富な学習資源と学芸員などの専門家を有しており,実験教室など子供を対象とした様々な教育活動を行っている。

文部科学省は,これらの施設が住民にとってより身近で利用しやすい施設となるよう,環境整備を推進している。

(5)体力の向上(文部科学省)

体力は,人間の健全な発達・成長を支え,より豊かで充実した生活を送る上で大変重要なものであり,子供の時期に活発な身体活動を行うことは,成長・発達に必要な体力を高めることはもとより,運動・スポーツに親しむ身体的能力の基礎を養い,病気から身体を守る体力を強化し,より健康な状態をつくっていくことにつながる。

平成10(1998)年から始まった新体力テストの合計点は,全体的に向上傾向にあり,子供の体力は低下傾向に歯止めがかかってきているが,子供の体力水準の高かった昭和60(1985)年頃と比較すると,依然として低い水準にある(第2-12図)。また,最近は運動をする子供とそうでない子供の二極化が見られ,特に中学校女子の約2割は1週間の総運動時間(体育の時間を除く)が60分未満となっている(第2-13図)。子供の体力低下は将来的に国民全体の体力低下につながり,ひいては社会全体の活力が失われる事態が危惧されている。

ア 地域社会での体力向上の取組の推進

スポーツ庁は,子供の体力向上に向けた総合的な施策を推進しており,「全国体力・運動能力,運動習慣等調査」の結果を踏まえ,学校や地域における体力向上に向けた取組を推進している。また,平成28(2016)年度からは,本調査結果からみられる課題に対応した運動プログラム等を作成し普及するほか,教育委員会にPDCAサイクルを実施する実践研究を委託するなど,子供の体力向上に向けた取組を支援している。平成29(2017)年度からは,楽しみながら多様な動きを身に付けることができる機会を幼稚園や放課後子供教室等で提供する事業を委託するなど,子供が日常的に運動する習慣の獲得を支援する。

イ 学校における体育・運動部活動の振興

学校の体育・保健体育は,心と体を一体としてとらえ,健康・安全や運動についての理解と合理的,計画的な実践を通して,生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続する資質や能力を育てるとともに,健康の保持増進のための実践力の育成と体力の向上を図り,明るく豊かで活力のある生活を営む態度を育てることをねらいとしている。

スポーツ庁は,体育・保健体育の授業の充実を図るために,平成29(2017)年度から,現場で抱えている諸課題を解決するプログラムを開発し,普及する取組を実施する。また,中学校で必修とされている「武道」において,平成27(2015)年度から,外部指導者の活用及び体育を担当する教員の資質向上や指導力の強化などにより,体育における武道を含めた領域の指導の充実を図る取組を実施している。

運動部活動については,運営の適正化を図るため,平成29年度,総合的な実態調査等を行うとともに,総合的なガイドラインを策定する。

(6)生涯学習への対応(文部科学省)

社会経済の大きな変化の中で,生涯を通じて,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に活かすことのできる社会を実現することが求められている。特に,出産・育児のために仕事を離れる者が多いなど,安定した雇用を得にくい女性にとって,生涯にわたる学習機会の充実は重要である。

ア 高等教育機関における学修機会の充実に関する取組

大学などの高等教育機関は,生涯学習機関としての機能を社会一般に積極的に提供するよう期待されている。昨今,技術革新や産業構造の変化に伴い,社会人が高等教育機関で教育(再教育)を受ける必要性が高まるなど,その一層の充実が求められている。このため,公開講座の実施や,夜間の学部・学科の設置,昼夜開講制の実施,通信教育課程の設置といった対応5が進められている。また,社会人の職業に必要な能力の向上を図る機会の拡大を目的として,大学等における社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的なプログラムを「職業実践力育成プログラム」(BP)として文部科学大臣が認定している。

独立行政法人日本学生支援機構は,平成26(2014)年度から,若者の学び直しを支援するため,奨学金制度の弾力的運用(同学種間での再貸与の制限の緩和(例えば,在学中に無利子奨学金の貸与を受けて学部を卒業した後,別の学部で学び直す場合にも再度無利子奨学金の貸与を受けられるようにする))を行っている。

イ 学習した成果の適切な評価

生涯学習の成果を適切に活かすことのできる社会を実現するためには,学習成果の評価の社会的通用性を向上させることが必要である。平成28(2016)年5月に中央教育審議会において,「個人の能力と可能性を開花させ,全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について(答申)」が取りまとめられた。本答申の第二部においては,「生涯学習による可能性の拡大,自己実現及び社会貢献・地域課題解決に向けた環境整備について」として,一人一人の生涯を通じた学習の成果の適切な評価・活用のための環境整備について提言された。具体的には,検定試験について,評価の仕組みの確立や情報公開の促進による,質の保証・社会的活用の促進について提言されている。また,学習成果を活用し新たな学習機会や様々な活動に結びつけるため,ICTを活用した生涯学習に関する基盤の構想について提言されている。本答申を踏まえ文部科学省では,検定試験の自己評価や第三者評価について検討するための「検定試験の評価等の在り方に関する調査研究協力者会議」を開催するとともに,第三者評価に関する調査研究において第三者評価の試行等を実施するなど関連する調査研究を実施している。

ウ 女性の生涯学習

文部科学省は,一旦離職した地域の女性人材を対象に,学びを通じた社会参画を促進するため,地域の関係機関,大学,男女共同参画センター等によるネットワークの形成とその取組の在り方を検討し,全国へ向けた普及を進めている。

エ 男女共同参画のための生涯学習

文部科学省は,平成28(2016)年度より,高校生が進路選択に当たって就職のみならず結婚,出産,育児などのライフイベントを踏まえた生活の在り方についても総合的に考えることができるよう,教材を作成している。平成29(2017)年度は,大学等において女性が子育てをしながら学ぶことのできる環境を整備するため保育環境整備を進めるとともに,若者がライフイベントを踏まえた上で進路や就労の選択を行えるよう,男女共同参画の視点に立ったライフプランニング支援の推進を図るなどのキャリア形成支援を推進する。

2 学力の向上

(1)知識・技能や思考力・判断力・表現力,学習意欲等の「確かな学力」の確立(文部科学省)

初等中等教育については,現行の学習指導要領で,

  1. 基礎的・基本的な知識・技能,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等,主体的に学習に取り組む態度(「確かな学力」)
  2. 自らを律しつつ,他人と共に協調し,他人を思いやる心や感動する心など(「豊かな心」)
  3. たくましく生きるための健康や体力(「健やかな体」)

のバランスを重視した「生きる力」を育むことを目指している(第2-14図,第2-15図)。

第2-14図 現行学習指導要領の理念
第2-15図 現行学習指導要領の概要

文部科学省は,現行学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向け,教職員定数の改善や新たに必要となる補助教材の作成・配布,理科教育設備の整備支援,理数教育や外国語教育その他の各教科や活動の充実を支援している。平成29(2017)年度には,

  • 全国学力・学習状況調査6による子供の学力や学習状況の把握・分析
  • 小学校・中学校等における理科の観察・実験活動の充実を図るため,観察実験アシスタントの配置支援や,「理科教育振興法」(昭28法186)に基づいた理科教育設備整備補助
  • 地域の人材・企業などの協力による,全ての子供たちの土曜日の教育活動の充実(詳細は,第4章第1節2「『チームとしての学校』と地域との連携・協働」を参照)

などを行う。

また,中央教育審議会においては,新しい時代に求められる資質・能力を子供たちに確実に育む学校教育の実現を目指し,次期学習指導要領に関する審議を進め,平成28(2016)年12月には「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を取りまとめ,平成29年3月末には幼稚園教育要領,小・中学習指導要領を改訂した。

(2)基礎学力の保障等(文部科学省)

文部科学省は,基礎学力の保障のため,習熟度別少人数指導,ティーム・ティーチング,小学校の専科指導など指導方法の工夫・改善を行う学校や,特別な配慮が必要な学校などに対し,教職員の加配定数を措置している。平成28(2016)年度は,64,733人の加配定数を措置した。平成29(2017)年度は,通級による指導や外国人児童生徒等教育の充実等の基礎定数化に加え,小学校専科指導の充実を含む395人の加配定数の改善を行う。また,補習や発展的な学習への対応などのため,退職教職員など多彩な人材約11,100人をサポートスタッフとして学校に配置する「補習等のための指導員等派遣事業」を引き続き実施する。

(3)高校教育の質の保証(文部科学省)

文部科学省は,高校教育の質の確保と向上を促すため,学習指導要領の改訂や各学校における学校評価の取組の推進などの多様な施策を実施している。現行学習指導要領では,以下の改善を図っている。

  • 高校教育の共通性と多様性のバランスを重視し,学習の基盤となる国語,数学,外国語における共通必履修科目の設定
  • 言語活動,理数教育,道徳教育,外国語教育の充実
  • 義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設けることの促進

また,高校教育の質の確保・向上のために,平成25(2013)年度からは,高校教育を通じて身に付けるべき資質・能力を評価する手法についての調査研究を行っている。

さらに,平成27(2015)年度より,定時制・通信制課程及び総合学科における支援・相談体制の構築,遠隔教育の普及推進などを先導的に実施している高等学校への支援を通じて,様々な観点から検証・実践を行う調査研究を実施しており,平成28(2016)年度においても,引き続き実施している。

(4)学校教育の情報化の推進(文部科学省,総務省)

子供一人一人の能力や特性に応じた学びや子供同士が教え合い学び合う協働的な学びを推進する上で,ICT(情報通信技術)は重要な役割を果たすものと考えられる。

文部科学省では,ICT環境整備を促進するため,第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)で目標とされている,教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数3.6人等の水準の達成に向け,「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26年~29年度)」を策定し,平成29(2017)年度まで単年度1,678億円(4年間総額6,712億円)の地方財政措置を講じている。平成28(2016)年3月現在,教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は,6.2人7となっている。

平成28年7月29日には,次期学習指導要領を見据えた情報活用能力の育成や教科指導におけるICT活用の充実等に向け,学校におけるICT環境整備を加速させる観点から,「教育の情報化加速化プラン」(文部科学大臣決定)を策定した。

同プランにおいては,「次世代学校・地域」の創生に向け,地方公共団体におけるICT環境の整備・充実を促進するための「教育ICT教材整備指針(仮称)」の策定や,子供たちが安心かつ安全にICTを活用できる学習環境の整備を図るために,教育版の情報セキュリティポリシーのガイドラインの策定等について検討を行うこととしている。

平成28年度においては,情報活用能力(プログラミングを含む)を各教科等の学習と効果的に関連付けて育成するためのカリキュラム・マネジメントの在り方や,アクティブ・ラーニングの視点からのICT活用等に関する調査研究を実施するとともに,ICT活用指導力に関する研修プログラムのモデルの創出や研修の充実等に取り組んでいる。

また,昨今のスマートフォン,ソーシャルネットワークサービス(SNS)などの普及を踏まえ,情報モラル教育に関する教材や教員向けの指導手引書等を作成・配布するとともに,各種セミナーの開催等を通じて,教員の指導力向上を図っている。

これらの取組に加え,ICT環境の整備・充実を図る自治体を支援するため,「ICT活用教育アドバイザー」の派遣を自治体のニーズに応じて行っており,本事業に加え,平成29年度からは,教職員の業務改善を図る観点などから,校務の情報化を推進するため統合型校務支援システムの導入の促進に資する取組等を実施する。

文部科学省8と総務省9は連携して,平成26(2014)年度から,実証3地域12校において,クラウドなどの最先端技術を活用した新たな実証事業(「先導的な教育体制構築事業」)に取り組んでいる。文部科学省においては,学校間,学校・家庭が連携した新しい学びを推進するための指導方法の開発など,先導的な教育体制を構築するための研究を行っている。また,総務省においては,学校間,学校と家庭が切れ目なくつながる教育・学習環境を構築するため,クラウド・コンピューティングなどの最先端技術を活用した低コストで多種多様な端末に対応した教育クラウド・プラットフォームの実証を行っている。併せて,同プラットフォームを活用して,企業,NPO,大学など多様な主体の参画の下,<1>学校・家庭・地域の連携,<2>地域活性化・まちおこし,<3>最先端学習スタイルの実現に資するモデルを実証している。

さらに,平成29年度より,文部科学省及び総務省が連携し,授業・学習面と校務面の両面でICT活用を連携させることにより,よりきめ細やかな指導や教員の指導力の向上,データに基づく学級・学校運営等を可能とする観点から,システムの構築やデータ等の管理,活用方法等に関する実証研究を連携して行う。文部科学省においては,主として指導・運営面について,学習指導・生徒指導や学級・学校運営の質の向上等に資する学習記録データ等の活用モデルや,個々の児童生徒の学びの活動をデータ化し,活用する際の個人情報の取扱い等についての整理等を行う。また,総務省においては,主として情報通信技術面について,児童生徒の成績等の個人情報を安全に取り扱いつつ,学習指導等において有効に活用するためのデータの整理・保存やデータ連携,認証の在り方等の技術的課題の整理やシステム導入・運用の基盤となるネットワークの推奨環境の明確化などを行う。

また,総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業では,平成28年度からクラウドを活用した低コストかつ効果的なプログラミング教育の実施モデルを,地域における民間指導者の育成・活用方法等を含めて実証を教育課程外で行った。平成29年度は,障害のある子供や突出した能力を示す児童生徒等に対するプログラミング教育の実施モデルの実証を教育課程外で行う。

3 大学教育等の充実(文部科学省)

(1)大学教育の充実

ア 教育機能の充実

大学教育では,個々の授業科目などを超えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立する(ナンバリング10など)とともに,主体性を持って多様な人々と協力して学ぶことのできるアクティブ・ラーニングへの質的転換が推進されている。また,各大学において,産業界と連携した実践的な教育やインターンシップを通じたキャリア教育などの学生の社会的・職業的自立に関する組織的な教育活動の展開,教育内容・方法の改善,教育情報の公表などの取組が積極的に行われている。

文部科学省は,このような大学の取組を支援するため,個性・特色ある優れた取組に対し,以下の事業をはじめとする財政支援や情報発信を行っている11

  • 地域や分野に応じた大学間連携による教育・質保証システムの構築を支援する「大学間連携共同教育推進事業」
  • アクティブ・ラーニング,学修成果の可視化,高大接続改革,長期学外学修プログラム,卒業時における質保証など新たな教育改革の方向性に合致した先進的な取組を支援する「大学教育再生加速プログラム」

イ 教育研究の質の維持・向上

文部科学省は,大学教育の国際的通用性の確保や学生保護の観点から,大学を設置するのに最低限必要な基準として大学設置基準を定めるとともに,大学等の設置や組織改編に当たっては,設置計画が大学設置基準等の法令に適合しているかについての大学設置・学校法人審議会の審査を踏まえて認可を行っている。また,設置認可後は,設置計画履行状況などを調査することにより,設置認可から完成年度までの質の保証を行っている。さらに,全ての国公私立大学が文部科学大臣から認証された評価機関による定期的な評価を受ける認証評価制度により,恒常的に大学の教育研究の質の維持・向上を図っている。

ウ 大学院教育の充実

文部科学省は,俯瞰力と独創力を備え,広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成するため,産・学・官の参画を得つつ専門分野の枠を超えて博士課程前期・後期一貫した学位プログラムを構築・展開する「博士課程教育リーディングプログラム」事業を実施し,大学院教育の抜本的改革を支援している12

エ 学修支援サービス

各大学では,アクティブ・ラーニングなどを行う際に,優秀な大学院生が教育的配慮の下に学部学生に対する助言や実験・実習の教育補助業務を行うティーチング・アシスタント制度や,学生の学修過程や学修成果を長期にわたって収集する学修ポートフォリオなど,多様化した学生の学修活動を支援する取組を行っている。

文部科学省は,大学の取組に関する調査の結果を発信することで,大学の取組を促進している。

(2)専修学校教育の充実

専修学校13は,職業や生活に必要な能力の育成や教養の向上を図ることを目的とし,社会の変化に即応した実践的な職業教育を行う機関として大きな役割を果たしている。専門的な職業知識・技術の習得のほか,職業観・勤労観のかん養や自己学習能力の育成において相当の成果を挙げており,若者の職業的自立にも寄与している。

文部科学省は,専修学校教育の振興を図るため,以下のような取組を行っている。

  • 平成26(2014)年度から,企業などとの密接な連携を通じ,より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専修学校の専門課程を文部科学大臣が認定する「職業実践専門課程」制度を開始(認定学校数:902校,認定学科数:2773学科(平成29年2月24日現在))
  • 専修学校をはじめとした教育機関が産業界等と協働し,地域や産業界の人材ニーズに対応した社会人等が学びやすい教育プログラムを開発・実証する取組を推進する「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進」事業の実施
  • 教育装置・情報処理関係の設備整備などに対する補助,教員研修事業などの実施

1 次の3つを構成要素とする,複合的な能力のこと。
<1>メディアを主体的に読み解く能力,<2>メディアにアクセスし活用する能力,<3>メディアを通じコミュニケーションする能力。特に,情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ)コミュニケーション能力
2 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/hoso/kyouzai.html
3 平成25年1月,中央教育審議会は,体験活動の意義や効果を整理するとともに,現在の課題や今後の推進方策について「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」で提言した。
4 「子ども読書の情報館」ページhttp://www.kodomodokusyo.go.jp
5 このほか,科目等履修生制度の導入,履修証明制度の導入,大学・大学院入学資格の弾力化,高等学校卒業程度認定試験の実施,放送大学の充実など。
6 平成29年度調査は,国語,算数・数学の2教科で,対象学年(小6,中3)の全ての子供を対象とした悉皆調査と,児童生徒の家庭における状況,保護者の教育に関する考え方等について抽出による保護者に対する調査を行う。
7 平成27年度学校における教育の情報化に関する実態等に関する調査
8 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/main18_a2.htm
9 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/index.html
10 授業科目に適切な番号を付し分類することで,学修の段階や順序等を表し教育課程の体系性を明示する仕組み。
11 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/index.htm
12 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/hakushikatei/1306945.htm
13 入学資格の差異により三つの課程(専門課程,高等課程,一般課程)が設けられている。高等学校卒業程度を入学資格とする専修学校専門課程(専門学校)には,平成28年5月現在では18歳人口の22.3%が進学している。
[目次]  [戻る]  [次へ]