特集 就労等に関する若者の意識

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調査結果のポイント

  • 依然として多くの若者が不安を抱えている
  • 仕事より家庭・プライベートを優先したい若者が増加
  • 転職を否定的に捉える若者は少ない

1 はじめに

  • 我が国では、急速に進む少子高齢化、それに伴う生産年齢人口の減少が大きな課題となっている。加えて、東京一極集中の傾向が継続し、地方において、人口減少や過疎化は特に深刻な状況となっている。政府としては、この課題の克服に向けて、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる全員参加型の社会の実現を目指しているところである。
  • 社会の中で自立し活躍するには、就労を通して経済的な基盤を築くことが大きな要素となるが、就労は、単に収入を得るための手段というだけではなく、その人と社会をつなぎ、自己実現を図るためのものでもあるなど、「働き方」は「暮らし方」そのものであると考えられる。こうした基本的考え方の下、ライフスタイルが多様化している現代において、個人の希望や事情により様々な働き方が受け入れられる環境が求められている中で、多様な働き方が可能となるよう働き方改革実行計画が策定され、また、「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月閣議決定)により、人生100年時代を見据えた「人への投資」が進められているところである。さらに、IoT、ビッグデータ、ロボット、人工知能などのイノベーションの登場は、これからの仕事の内容や働き方を劇的に変えていく可能性がある。
  • 今回の特集では、平成29(2017)年度に内閣府が行った、就労等に関する若者の意識を調査した「子供・若者の意識に関する調査」(以下「平成29年度調査」という。)の結果をもとに、若者が、働くことをどう捉え、職業選択に際してどのような事柄を重視しているのか、就職後にも学び続けることを希望しているのか、将来に対してどのような展望を持っているのか、などについて、過去の調査結果とも比較しながら分析した結果を紹介するとともに、若者に対するキャリア形成支援等について参考となる取組を紹介する。

2 就労等に関する若者の意識調査の結果

(1)調査の概要について

  • 平成29年度調査は、インターネット調査会社に登録してあるリサーチモニターである全国の16歳から29歳までの男女(有効回答数10,000)を対象に、平成29(2017)年10月27日から同年11月13日までの間に実施したインターネット調査である。
  • また、本特集では、平成23(2011)年度に内閣府が実施した「若者の考え方についての調査」1(以下「平成23年度調査」という。)における平成29年度調査と比較可能な設問に対する結果についても掲載している。

(2)就業に対する考え方及び初職の状況等について

ア 希望する雇用形態

  • 現在の就学・就業状況別に、「最も希望する雇用の形態等」についてみると、現在「正規雇用」者の96.0%、現在「学生」の88.4%が「正規雇用」を希望すると回答している。また、現在「非正規雇用」者の47.1%が「正規雇用」を希望すると回答している一方で、46.9%が「非正規雇用」を希望すると回答している。さらに、現在「自営業・自由業」者の60.4%が「自営業・自由業」を希望すると回答し、現在「専業主婦(主夫)」の68.9%が「非正規雇用」を希望すると回答している(図表1)。
    図表1 現在の就学・就業状況別の希望する雇用形態
  • 次に、希望する雇用形態別にその雇用形態を希望する最も重要な理由についてみると、「正規雇用」を希望する者の選択理由として多かった回答は、「安定していて長く続けられるから」、「収入が多いから」でそれぞれ59.0%、26.9%、「非正規雇用」を希望する者の選択理由として多かった回答は、「自由な時間が多いから」、「子育て、介護等との両立がしやすいから」でそれぞれ33.9%、28.0%、「自営業・自由業」を希望する者の選択理由として多かった回答は、「自由な時間が多いから」、「特別に指示されずに、自分の責任で決められるから」でそれぞれ28.9%、22.9%であった(図表2)。
    図表2 希望する雇用形態別選択理由(最も重要な理由)

イ 初職の状況

  • 現在就業している者、または、過去に就業したことがある者の初職(学校等を卒業または中途退学した直後の就業)の雇用形態についてみると、全体では、「正規雇用」が57.8%、「非正規雇用」が34.2%であった。このうち、「25歳から29歳」では、「正規雇用」が68.3%であり、「非正規雇用」の26.4%よりも多かったが、「16歳から19歳」では、「正規雇用」が30.6%であり、「非正規雇用」の53.1%よりも少なかった(図表3)。
    図表3 初職の雇用形態
  • 初職の雇用形態ごとに現在の就学・就業の状況についてみると、初職が「正規雇用」であった者のうち、現在「正規雇用」の者は72.5%、現在「非正規雇用」の者は13.4%、現在「働いていない」者は4.0%であった。初職が「非正規雇用」であった者のうち、現在「正規雇用」の者は12.6%、現在「非正規雇用」の者は45.3%、現在「働いていない」者は9.5%であった。また、学校等を卒業または中途退学した直後に「無業」であった者のうち、現在「正規雇用」の者は18.1%、現在「非正規雇用」の者は44.2%、現在「働いていない」者は13.7%であった(図表4)。
    図表4 初職の雇用形態と現在の就学・就業の状況

(3)仕事観について

ア 仕事をする目的

  • 仕事をする目的(2つまで回答)についてみると、「収入を得るため」と回答した者が84.6%と突出して多く、「仕事を通して達成感や生きがいを得るため」と回答した者が15.8%、「自分の能力を発揮するため」と回答した者が15.7%、「働くのがあたりまえだから」と回答した者が14.8%、「人の役に立つため」と回答した者が13.6%であった(図表5)。
    図表5 仕事をする目的(2つまで回答)

イ 仕事選択に際して重要視する観点

  • 仕事を選択する際に重要と考える観点について、「安定していて長く続けられること」及び「収入が多いこと」に、「とても重要」または「まあ重要」と回答した者は、ともに88.7%で最も多かった。次いで多かった項目は、「自分のやりたいことができること」の88.5%、「福利厚生が充実していること」の85.2%、「自由な時間が多いこと」の82.2%であった。一方、「実力主義で偉くなれること」と「特別に指示されずに、自分の責任で決められること」を「とても重要」または「まあ重要」と回答した者は、それぞれ51.6%、55.8%と比較的少なかった(図表6)。項目が異なるため単純な比較は困難であるが、平成23年度の調査時においても、「安定していて長く続けられる」、「収入が多い」、「自分の好きなことができる」といった類似の項目に「とても大切」または「まあ大切」と回答した者は多かった。
    図表6 仕事を選択する際に重要視する観点

ウ 仕事と家庭・プライベートとのバランス

  • 仕事と家庭・プライベート(私生活)のどちらを優先するかについてみると、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した者は63.7%であり、平成23年度の調査時における52.9%よりも多かった。
  • また、男女別に仕事と家庭・プライベート(私生活)のどちらを優先するかについてみると、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した男性は58.3%であり、女性の69.4%より少ないものの、平成23年度の調査時よりも10ポイント以上多く、半数を超えていた(図表7)。
    図表7 仕事と家庭・プライベート(私生活)とのバランス

エ 転職に対する意識

  • 転職に対する意識についてみると、「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職は絶対すべきではない」または「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職はできる限りしない方がよい」といった、転職に否定的な項目を選択した者は17.3%であり、2割に満たなかった。
  • また、男女別に転職に対する意識についてみると、転職に否定的な項目を選択した男性は21.4%であり、転職に否定的な項目を選択した女性の13.2%よりも多かった(図表8)。
    図表8 転職に関する意識

オ 学びの継続希望

  • より良い仕事に就くために就職後も学び続けることを希望しているかどうかについてみると、「条件が整えば、希望する」と回答した者が53.2%で最も多く、「希望する」が24.3%、「希望しない」が22.5%であった(図表9)。
    図表9 学びの継続の希望度

(4)働くことへの不安について

  • 働くことに関する不安についてみると、「十分な収入が得られるか」に、「とても不安」または「どちらかといえば不安」と回答した者が76.5%で最も多く、次いで多かった項目は、「老後の年金はどうなるか」の75.4%、「きちんと仕事ができるか」の73.5%、「仕事と家庭生活の両立はどうか」の72.2%、「勤務先での人間関係がうまくいくか」の71.4%であった。平成23年度の調査時と比べて、「とても不安」または「どちらかといえば不安」と回答した者は、全ての項目において少なかった(図表10)。
    図表10 働くことに関する不安

(5)キャリア教育・職業教育について

  • 受講経験があると回答した者が、キャリア教育や職業教育を受けた結果、役に立ったと考えている効果についてみると、「働く事の大切さがわかった」が61.7%で最も多く、次いで多かった項目は、「コミュニケーションスキルの重要性がわかった」の61.0%、「自分の考え方が広がった」の58.0%、「ビジネスマナー等がわかった」の51.3%、「就職先を選ぶ参考になった」の50.4%であった(図表11)。
    図表11 キャリア教育・職業教育の効果

3 おわりに

  • 平成29年度調査についてみると、就労により十分な収入を得られるのか、きちんと仕事ができるのか、仕事と家庭の両立はできるのか、勤務先での人間関係がうまくいくかなどについて、平成23年度の調査より少なくなっているものの、依然として多くの若者が不安を抱えていることが読み取れた。また、仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先したいと考える若者が増えていること、転職を否定的に捉えている若者がそれほど多くないことや、キャリア教育の効果を感じている若者が多いことなどが読み取れた。
  • また、人工知能、ロボット、IoTなどのイノベーションの登場により、仕事の内容や働き方などが大きく変わる可能性がある。これに伴い、時間的にも空間的にも、より柔軟なワークスタイルが選択できるようになるのではないかと考えられる。
  • こうした状況の中で、若者には、各自の意思や能力、置かれた個々の事情に応じて、多様で柔軟な働き方を選択しながら、より良い将来への展望を持ち、社会で活躍していくことが期待されている。若者が、子育てや介護との両立、ワーク・ライフ・バランスなども念頭に置きつつ、自身の暮らし方、生き方を検討し選択することができるような、キャリア教育や就労環境の整備が求められているといえるだろう。
  • 本特集の結びとして、若者を対象に、職業について考えるきっかけを提供したり、キャリア形成を支援したりしている取組についての事例をいくつか紹介することとしたい。
  • 事例紹介

    高校におけるキャリア教育

    ~岡山県立和気閑谷(わけしずたに)高等学校の取組~

    少子化による地域の衰退を防ぐためには教育の充実が重要という和気町の思いと、特色ある教育活動によって生徒の学力・意欲を伸ばし高校の魅力化を図りたいという和気閑谷高校の思いが一致し、平成25(2013)年度に開始された取組を紹介する。

    和気閑谷高校では、地域課題解決学習(総合的な学習の時間)に町役場、町教育委員会、町商工会、地域おこしに協力する人や企業などが協力・協働することを通して、地域の活性化を図るとともに、地域に愛着を持ち地域コミュニティの担い手になる人材を育成し、ひいては高校の魅力を高めることを目指している。

    具体的には、和気町役場が地域おこしに協力する人や企業を学習の支援職員として高校に常駐させたり、町教育委員会が主催行事への高校生受入れや高校主催行事への小中学生参加のためのつなぎ役を担ったり、商工会が高校生のインターンシップの受入れ、講師派遣や商品開発の支援などをしたり、駅前商店会が店頭スペースの提供やボランティアの受入れ、講師派遣などをしたりしている。

    そのほか、連携・協働する教育関係者、行政、地域、産業界の代表者が集まる連絡会を隔週で行い、情報共有するとともに、地域が必要としていることや支援職員の活動内容などを確認している。また、年5回の魅力化推進協議会では2020年に向けて学校と地域の在り方などを協議し、地域社会と高校双方の持続発展を指向した展開を目指している。

    (地元中学校での放課後学習支援)

    また、就職希望者は全員2年次にインターンシップを行うこととしており、役場や商工会が窓口となって受入れ先などを調整しているが、これを探究型インターンシップと位置付け、職業体験に加えて「働くことに関する現代的課題」について仮説を立て、体験やインタビューを通して仮説の検証や課題解決の提言をまとめることとしている。

    さらに、小中学校や町教育委員会と連携し、高校生が小中学生の先生役となり、英語や論語の出前授業や理科実験教室を行ったり、放課後学習支援を行ったりもしている。また、English Campでは、小中学生が英語に親しめるメニューを高校生が企画・実践している。これらは、高校生が主体となったプログラムであり、高校生の責任感や自己肯定感を醸成することができるとともに、小中学生に身近なロールモデルを提示することとなっている。また、連絡会の実施や毎年の学校内外の人々へのアンケート、生徒の到達度チェックなど計画・活動・評価・見直しのプロセスが確立しており、町ぐるみで生徒のキャリア形成を支援する取組となっている。さらに、「こくさいフォーラム in Wake」の開催や海外の高校(中国2校、韓国2校、台湾1校)との姉妹校協定に基づく交流などを通して、国際理解学習を深め、地球規模の視野で考え、地域視点で行動できる“グローカル人材”育成へ展開している。

    このように、和気閑谷高校の取組は、地域にある様々な教育資源を最大限に活用し、町内の小・中・高等学校の連携した取組を行政、商工会、地域事業所などが一体となってサポートするものとなっており、学校と町が協働して、多様な機会を子供たちに提供するシステムであるといえる。同時に、高校生の活動をきっかけに地域住民の意識も変容し始めており、町の活性化にもつながっている。

    このほか、

    • 学校外で取り組まれているキャリア教育(高知県「とさっ子タウン」)
    • 学校から離れてしまった若者に対する支援(子ども・若者支援地域協議会と連携した群馬県の取組)
    を紹介。

1 平成23年度調査は、全国の15歳から29歳までの男女(有効回答数3,000)を対象に、平成23年12月28日から平成24年1月13日までの間に実施したインターネット調査。
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