第2章 全ての子供・若者の健やかな育成

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第1節 自己形成のための支援

1 日常生活能力の習得

(1)基本的な生活習慣の形成

(学校教育における取組)
  • 学校教育では、道徳や特別活動をはじめ学校の教育活動全体を通じて、基本的な生活習慣の形成を図るための指導が行われており、特に小学校低学年において、挨拶などの基本的な生活習慣や社会生活上のきまりを身に付け、善悪を判断し、人としてしてはならないことに関する指導を重視している。
  • 平成27(2015)年に学習指導要領の一部改正等を行い、平成30(2018)年度から小学校、平成31(2019)年度から中学校において、「特別の教科 道徳」を全面実施することとしている。
(社会全体で取り組む子供の生活習慣づくり)
  • 文部科学省は、「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進している。平成29(2017)年度より、「早寝早起き朝ごはん」フォーラム事業や、中学生の基本的な生活習慣の維持・定着・向上を測るための「早寝早起き朝ごはん」推進校事業を実施している。
(食育活動の推進)
  • 「第3次食育推進基本計画」(平成28年3月18日食育推進会議決定)においては、食育に関する知識、意識、実践について課題が多い若い世代を中心とした食育の推進を重点課題の一つとし、栄養バランスに配慮した食生活を実践する若い世代を増やす等、若い世代に関する目標も新たに設けて、子供や若者の食育の推進に一層取り組むこととしている。
  • 文部科学省は、全国の公立小中学校等において食に関する指導を行う栄養教諭の配置を促進している。
  • 厚生労働省は、妊産婦や子育て家庭を対象とした食に関する学習機会や情報の提供を推進している。
  • 農林水産省は、「食育ガイド」や「食事バランスガイド」の活用を促進するほか、栄養バランスに優れた「日本型食生活」の実践や、食や農林水産業への理解を深めるための教育ファームの実施などを推進している。
  • 内閣府の食品安全委員会は、小学校5・6年生とその保護者を対象とし、食品安全委員会委員との意見交換を通して食の安全について楽しく学び、理解を深めてもらう「ジュニア食品安全委員会」を開催している。

(2)規範意識等の育成

  • 学校教育では、誰に対しても思いやりの心を持つことや広い心で自分と異なる意見や立場を大切にすることに関する指導が行われている。また、伝え合う力の育成を重視し、発表・討論を積極的に取り入れた学習活動が行われている。
  • 青少年教育施設では、社会性や協調性を育むため、自然体験や集団宿泊体験といった様々な体験活動の機会と場が提供されている。
  • 警察は、職員の学校への派遣や少年警察ボランティアなどの協力により、非行防止教室を開催している。
  • 総務省は、子供のメディアリテラシーを向上させるための教材の開発・貸出しや、教員を対象とした授業実践パッケージの提供を行っている。

(3)体験活動の推進

  • 文部科学省は、家庭や企業などへ体験活動に対する理解を求めていくための普及啓発を推進するとともに、体験活動の評価・顕彰制度に関する調査研究や体験活動を推進する企業の表彰に取り組んでいる。
  • 独立行政法人国立青少年教育振興機構は、社会全体で体験活動を推進する気運を高めるため、青少年団体と連携して、「体験の風をおこそう」運動を推進している。

(4)読書活動の推進

  • 文部科学省は、「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平13法154)と第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」(平成30年4月閣議決定)に基づき、子供の読書活動を推進している。
  • 文部科学省は、図書館、公民館、博物館等が住民にとってより身近で利用しやすい施設となるよう、環境整備を推進している。

(5)体力の向上

(地域社会での体力向上の取組の推進)
  • スポーツ庁は、子供の体力向上に向けた総合的な施策を推進しており、子供が日常的に運動する習慣の獲得を支援している。
(学校における体育・運動部活動の振興)
  • スポーツ庁は、体育・保健体育の授業の充実を図るために、平成29(2017)年度から、現場で抱えている諸課題を解決するプログラムを開発し、普及する取組を実施している。

(6)生涯学習への対応

(高等教育機関における学修機会の充実に関する取組)
  • 独立行政法人日本学生支援機構は、若者の学び直しを支援するため、奨学金制度の弾力的運用を行っている。
(学習した成果の適切な評価)
  • 中央教育審議会における答申(平成28年5月)では、検定試験について、評価の仕組みの確立や情報公開の促進による、質の保証・社会的活用の促進について提言されている。
(女性の生涯学習)
  • 文部科学省は、平成29(2017)年度より、「男女共同参画推進のための女性の学び・キャリア形成支援事業」において、大学等、地方公共団体及び男女共同参画センター等の関係機関が連携し、実証事業を行っている。

2 学力の向上

(1)「確かな学力」の育成

  • 文部科学省は、現行学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向け、教職員定数の改善、理科教育設備の整備支援、理数教育や外国語教育その他の各教科や活動の充実を支援している。平成30(2018)年度には、
    • 全国学力・学習状況調査による子供の学力や学習状況の把握・分析
    • 小学校・中学校等における理科の観察・実験活動の充実を図るため、観察実験アシスタントの配置支援や、「理科教育振興法」(昭28法186)に基づいた理科教育設備整備補助
    • 地域の人材・企業などの協力による、全ての子供たちの土曜日の教育活動の充実
    などを行う。
  • また、中央教育審議会答申(平成28年12月)を踏まえ、現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質の向上を図り、これからの時代に求められる資質・能力を育んでいくことを目指した学習指導要領改訂を行った。平成29(2017)年3月に幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領を、平成30(2018)年3月に新しい高等学校学習指導要領を公示したところであり、その理念の実現に向けた施策を着実に進めている。

(2)基礎学力の保障等

  • 文部科学省は、習熟度別少人数指導、ティーム・ティーチング、小学校の専科指導など指導方法の工夫・改善を行う学校や、特別な配慮が必要な学校などに対し、教職員の加配定数を措置している。

(3)高校教育の質の保証

  • 文部科学省は、高校教育の質の確保と向上を促すため、学習指導要領の改訂などの多様な施策を実施している。

(4)学校教育の情報化の推進

  • 文部科学省では、新学習指導要領の実施に向けた情報活用能力の育成に関する取組を進めている。
  • 文部科学省と総務省は連携して、平成29(2017)年度より、教職員が利用する「校務系システム」と、児童生徒も利用する「授業・学習系システム」間を安全かつ効果的・効率的に連携させ、校務の情報と学習記録データ等を有効につなげて活用することによる、教育の質の向上の実現等に関する実証事業を行っている。
  • 総務省では、平成28(2016)年度から「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業を実施し、平成29(2017)年度には、障害のある児童生徒を対象としたプログラミング教育の実施モデルの実証を行った。更に、平成30(2018)年度は、IoTへの興味・関心を高めた児童生徒が、放課後に地域で継続的・発展的に学習できる場の管理・運用のためのガイドラインを策定する。

3 大学教育等の充実

(1)大学教育の充実

(教育機能の充実)
  • 文部科学省は、アクティブ・ラーニング、学修成果の可視化、高大接続改革、長期学外学修プログラム、卒業時における質保証など新たな教育改革の方向性に合致した先進的な取組を支援する「大学教育再生加速プログラム」事業の実施や情報発信を行っている。
(教育研究の質の維持・向上)
  • 全ての国公私立大学が文部科学大臣から認証された評価機関による定期的な評価を受ける認証評価制度により、恒常的に大学の教育研究の質の維持・向上を図っている。
(大学院教育の充実)
  • 文部科学省は、産・学・官の参画を得つつ専門分野の枠を超えて博士課程前期・後期一貫した学位プログラムを構築・展開する「博士課程教育リーディングプログラム」事業を実施し、大学院教育の抜本的改革を支援している。
(学修支援サービス)
  • 文部科学省は、多様化した学生の学修活動を支援する取組に関する調査の結果を発信することで、大学の取組を促進している。

(2)専修学校教育の充実

  • 文部科学省は、専修学校教育の振興を図るため、以下のような取組を行っている。
    • より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専修学校の専門課程を文部科学大臣が認定する「職業実践専門課程」制度
    • 中長期的な人材育成に向けた産官学の協議体制の構築を進めるとともに、地域や産業界の人材ニーズに対応した社会人等が学びやすい教育プログラムの開発・実証等を実施する「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」

第2節 子供・若者の健康と安心安全の確保

1 健康教育の推進と健康の確保・増進等

(1)健康教育の推進

  • 学校では、「学校保健安全法」(昭33法56)に基づき、養護教諭と関係教職員が連携した組織的な保健指導や、地域の医療機関をはじめとする関係機関との連携による救急処置・健康相談・保健指導の充実が図られている。

(2)思春期特有の課題への対応

  • 文部科学省は、子供が自らの心と体の健康を守ることができるよう、喫煙や飲酒、薬物乱用、感染症などについて総合的に解説した教材を作成し、小・中・高校などに配布している。
  • 厚生労働省は、シンポジウムやホームページを活用して、喫煙と飲酒による健康に対する影響についての情報提供を行っている。また、10代の人工妊娠中絶実施率や性感染症罹患率、児童・生徒における痩身傾向児割合の減少を実現することなどを目標とし、正しい知識の普及啓発をはじめとする各種の取組を推進している。

(3)妊娠・出産・育児に関する教育

  • 学習指導要領においては、学校における性に関する指導として、児童生徒が妊娠、出産などに関する知識を確実に身に付け、適切な行動を取ることができるようにすることを目的とされており、これに基づき保健体育科を中心に学校教育活動全体を通して指導が行われている。
  • 厚生労働省は、専門的知識を有する医師や保健師等による健康教室や講演会の実施等により、妊娠・出産・育児に関する知識の普及啓発を図っている。

(4)10代の親への支援

  • 厚生労働省は、妊娠・出産・育児について、医師や助産師などから専門的なアドバイスを受ける機会でもある妊婦健診を受けられるよう、必要な妊婦健診の回数、項目に係る費用の全てについて地方財政措置が講じられるよう取り組んでいる。

(5)安心で安全な妊娠・出産の確保、小児医療の充実等

(安心で安全な妊娠・出産の確保)
  • 厚生労働省は、妊娠や出産に係る経済的負担の軽減や、周産期医療体制の整備・救急搬送受入体制の確保、不妊治療への支援、妊娠や出産に関する情報提供や相談支援体制の整備、マタニティマークの普及啓発等に取り組んでいる。
(地域における母子保健の充実)
  • 厚生労働省は、妊産婦と乳幼児の心身の健康保持・増進のため、市町村が行う妊産婦・乳幼児に対する健康診査や保健指導といった母子保健事業を推進している。
(小児医療・予防接種の充実)
  • 厚生労働省は、小児初期救急センター、小児救急医療拠点病院、小児救命救急センターの整備の支援や、小児の保護者等に対し小児科医等が電話で助言等を行う「#8000事業」の支援などにより、小児医療の充実を図っている。

2 子供・若者に関する相談体制の充実

(1)相談窓口の広報啓発等

  • 内閣府では、児童虐待、いじめ、ひきこもり、不登校等の困難を抱えた子供・若者が、適切な機関に相談することができるよう、専門の相談窓口や相談機関に関する情報をホームページに掲載して周知を図っている。

(2)子ども・若者総合相談センターの充実

  • 内閣府は、子ども・若者総合相談センターとしての機能を担い得る青少年センターをはじめとする公的相談機関の職員などを対象とした研修を実施している。

(3)学校における相談体制の充実

  • 文部科学省は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の拡充を図っている。また、教職員を対象とした研修会などを行っている。
図表3 スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー

(4)地域における相談体制の充実

  • 厚生労働省は、「地域子育て支援拠点」の設置、精神保健福祉センターや保健所、児童相談所における相談の推進、価値観を共有する同世代の仲間による相談・教育活動の普及促進、障害児通所支援を利用する原則全ての保護者に対する障害児相談支援、「子どもの心の診療ネットワーク事業」の設置等の取組を実施している。
  • 消費者庁は、全国どこからでも身近な消費生活相談窓口を案内する消費者ホットライン「188」番を運用している。

(5)いじめ防止対策等

図表4 いじめの認知(発生)件数
図表5 いじめに起因する事件の検挙・補導
(いじめ防止対策の総合的な推進)
  • 文部科学省は、平成30(2018)年度には、引き続き、いじめの問題をはじめとする生徒指導上の諸課題に対する以下の取組を総合的に推進する。
    • 幅広い外部専門家を活用していじめの問題などの解決に向けて調整、支援する取組の促進
    • 未然防止
    • 早期発見・早期対応
    • 教職員定数の加配措置・教員研修の充実
    • いじめの未然防止、早期発見・早期対応、事後支援を行うなど、いじめ問題などへの対応に関する実践的な取組の調査研究を実施
    加えて、インターネットや携帯電話を利用したいじめ(インターネット上のいじめ)に対応するため、子供や保護者向けの啓発用リーフレットを、教育委員会などへ配布している。また、いじめの問題に主体的に取り組むリーダーとなる児童生徒を育成するとともに、全国各地での多様な取組の実施を一層推進するため、平成30年1月には「全国いじめ問題子供サミット」を開催した。
  • 警察は、少年相談活動やスクールサポーターの学校への訪問活動などにより、いじめの早期把握に努めるとともに、学校などと緊密に連携しながら、的確な対応を推進している。
(いじめの問題に関する相談対応)
  • 文部科学省は、夜間・休日を含め24時間いつでも子供のSOSを受け止めることができるよう、全国統一の電話番号を設定しており、平成28(2016)年度から、より気軽に相談できるよう通話料を無料化している(電話番号は0120-0-78310)。また、いじめを含む様々な悩みに関する児童生徒の相談に関して、SNS等を活用する利点・課題等について検討を行うため、平成29(2017)年7月に有識者会議を開催し、平成30(2018)年3月、「SNS等を活用した相談体制の構築に関する当面の考え方(最終報告)」を取りまとめた。なお、平成30年から地方公共団体に対し、SNS等を活用した児童生徒向けの相談体制の構築を支援している。
  • 警察は、少年サポートセンターの警察施設外への設置、少年相談室の整備、少年相談専用電話のフリーダイヤル化、電子メールによる相談窓口の開設など、いじめを受けた子供が相談しやすい環境の整備を進めている。
  • 法務省の人権擁護機関は、「インターネット人権相談受付窓口(子どもの人権SOS-eメール)」、フリーダイヤルの専用相談電話「子どもの人権110番」(0120-007-110)、全国の小中学生を対象とした「子どもの人権SOSミニレター」(便箋兼封筒)の配布等を行っている。

(6)暴力対策等

  • 文部科学省は、都道府県・指定都市教育委員会や学校に対して、
    • 問題行動が起こったときには、粘り強い指導を行い、なお改善が見られない場合には、出席停止や懲戒などの措置も含めた毅然とした対応をとること
    • 犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことなく、直ちに警察に通報し、その協力を得て対応すること
    などを求めており、引き続き、都道府県などの関係者を集めた会議や研修会などの場を通じ、周知徹底を図っていく。
  • 警察は、校内暴力についても、いじめ同様、スクールサポーターや学校警察連絡協議会などを活用した情報交換により、早期把握に努め、悪質な事案に対しては厳正に対処するなど、内容に応じた適切な措置を行うとともに再発の防止に努めている。

3 被害防止のための教育

(1)安全教育

(学校における安全教育)
  • 文部科学省は、学校における学校安全教室(防犯教室、防災教室及び交通安全教室)の講師となる教職員等を対象とした都道府県教育委員会が実施する講習会を支援している。平成29(2017)年度には、防災教育を中心とした新たな安全教育手法の開発等を行うためのモデル事業を行った。
(警察が行う防犯教育・交通安全教育)
  • 警察は、幼稚園や保育所、小学校などにおいて、防犯教室を開催している。また、保育所、学校等において、交通安全教育を行っている。
(防災に関する各種取組)
  • 内閣府は、防災推進国民大会、防災ポスターコンクール、防災教育チャレンジプランを実施している。
  • 消防庁は、ホームページ上に「こどもぼうさいe-ランド」を開設し、幼児から中学生の子供を対象に、地震や風水害などの災害への備えや具体的な対応などを分かりやすく解説している。
  • 気象庁は、子供が地震・津波・噴火、大雨などによる自然災害から自らの身を守れるよう、教材・資料の公開や避難訓練の支援、教職員向け研修での講義などにより、学校防災教育を支援している。

(2)メディアの活用能力の向上

(メディアリテラシーの向上)
  • 総務省は、子供のICTメディアリテラシーを総合的に育成するプログラムの普及や、青少年のインターネットリテラシー等の現状を把握・分析し、「青少年がインターネットを安全に安心して活用するためのリテラシー指標」として公表する等の取組を行っている。

(3)女性に対する暴力の防止

  • 内閣府では、女性に対する暴力の加害者及び被害者になることを防止する観点から、若年層に対する効果的な予防啓発を行うため、若年層に対して教育・啓発の機会を持つ教育機関の教職員、地方公共団体において予防啓発事業を担当している行政職員、予防啓発事業を行っている民間団体等を対象として研修を実施した。
  • いわゆるアダルトビデオ出演強要問題や「JKビジネス」問題等の若年層の女性に対する性的な暴力については、平成29(2017)年3月に設置された「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・『JKビジネス』問題等に関する関係府省対策会議」において緊急対策を取りまとめ、同対策に基づき同年4月を「AV出演強要・『JKビジネス』等被害防止月間」と位置付け、政府一体となって必要な対策を緊急かつ集中的に実施した。さらに、その実施状況も踏まえ、同年5月、同対策会議において「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・『JKビジネス』問題等に関する今後の対策」を策定し、こうした問題の根絶に向けて取組を推進している。
  • 警察では、防犯教室等において、ストーカーの具体的事例、対応方法等を説明するなどして、被害者にも加害者にもならないための教育啓発を推進している。

第3節 若者の職業的自立、就労等支援

1 職業能力・意欲の習得

(1)キャリア教育・職業教育の推進

(キャリア教育・職業教育の推進)
  • 文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省は、学校、地域、産業界が一体となって社会全体でキャリア教育を推進する気運を高めるため、「キャリア教育推進連携シンポジウム」を実施している。
  • 文部科学省と経済産業省は、学校関係者や地域社会、産業界といった関係者の連携・協働による取組を表彰する「キャリア教育推進連携表彰」を実施している。
  • 文部科学省は、地元企業等と連携した職場体験やインターンシップ及び地元への愛着を深めるキャリア教育を推進している。
  • 厚生労働省は、企業で働く者などを講師として中学校や高校に派遣し、職業や産業の実態、働くことの意義、職業生活を子供に理解させ、考えさせる「キャリア探索プログラム」を実施している。
  • 経済産業省は、先進的な教育支援活動を行っている企業・団体を表彰する「キャリア教育アワード」を実施している。また、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を「社会人基礎力」として整理し、大学教育を通した育成や評価の取組の普及を図っている。
(インターンシップ(就業体験)の推進)
  • 文部科学省、厚生労働省、経済産業省では、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(平成9年文部省、通商産業省、労働省)を平成27(2015)年12月に一部改正し、各大学・産業界に周知を行い、インターンシップの普及・促進に努めている。
  • 文部科学省では、「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」などにより、キャリア教育の中核的な取組の一つとして、学校における職場体験やインターンシップの普及・促進に努めている。
  • 経済産業省は、長期インターンシップを推進するため、受入促進に向けたツール・メソッドの整備や産学をつなぐ専門人材のための活用ガイドを策定してホームページで公開している。
(女性若年層に対する啓発)
  • 内閣府は、女性若年層に対して、女性の進出が遅れている理工系などの分野に関して、ウェブサイト「理工チャレンジ(リコチャレ)」による情報発信や仕事体感イベントの開催等を行っている。
  • 厚生労働省では、学生が就職先を選択する際に各企業の女性の活躍状況、女性の活躍推進や仕事と育児・介護の両立のための取組も考慮できるよう、「女性の活躍・両立支援総合サイト」を運営している。
  • 経済産業省は、地域の関係機関と協力しながら、地域事業者の魅力発信や、地域内外の女性・若者・シニア等多様な人材とのマッチングの促進や定着を図る支援イベント等を実施した。

(2)能力開発施策の充実

(ハロートレーニング(公的職業訓練))
  • 厚生労働省は、公共職業能力開発施設のほか、大学を含む多様な民間教育訓練機関なども活用しつつ、公共職業訓練を実施している。また、求職者支援制度により、雇用保険を受給できない若者などに対して、職業訓練を実施しつつ、訓練受講を容易にするための給付金を支給し、ハローワークにおけるきめ細かな就職支援を行っている。
(ジョブ・カード、若年技能者の人材育成)
  • 厚生労働省は、平成27(2015)年10月からジョブ・カードを「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」のツールとして活用し、個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職などを促進している。
図表6 ジョブ・カード制度
  • 若年ものづくり人材の確保・育成を促すため「若年技能者人材育成支援等事業」を実施している。また、企業内の人材育成に取り組む事業主などに対して訓練経費や賃金の一部等を助成する「人材開発支援助成金」について、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭45法98)(以下「若者雇用促進法」という。)に基づく認定事業主が「特定訓練コース」の対象訓練を実施した場合に助成率の引き上げを実施し、企業内における若者への技能継承や中核人材の育成を図っている。
  • 文部科学省は、大学・専修学校等の教育機関が産業界等と協働し、地域や産業界の人材ニーズに対応した、社会人等が学びやすい教育プログラムを開発・実証する取組を推進している。

2 就労等支援の充実

(1)新卒者等に対する就職支援

(学生に対する就職支援)
  • 文部科学省は、大学などの就職相談員とハローワークのジョブサポーターとの連携の促進などにより、大学などにおける就職支援体制を強化している。
図表7 ジョブ・カード取得者数(累計)
  • 厚生労働省は、
    • 「新卒応援ハローワーク」を全国に設置し、広域的な求人情報の提供や、職業紹介、中小企業とのマッチング、求人開拓、就職支援セミナー・面接会の実施を行っている。ジョブサポーターによる、就職活動から職場で定着するまでの一貫した担当者制による個別支援や臨床心理士による心理的サポートを行っている。また、大学などへのジョブサポーターの相談窓口設置・出張相談を実施するなど、学校などとも連携を強化している。
    • 事業主に対して既卒3年以内新卒扱いについて周知を行うとともに、既卒者等の新規学卒枠での応募機会の拡大及び採用・定着の促進を図るため、平成28(2016)年2月より、既卒者及び中退者を対象とした助成金制度を創設し、当該助成金を活用した既卒者等の応募機会の拡大を推進した。
(秩序ある就職・採用活動への取組)
  • 大学生等の就職・採用活動の開始時期については、平成29(2017)年度卒業・修了予定者については、平成28(2016)年度と同様の時期(広報活動開始:3月、採用選考活動開始:6月)が維持された。平成29年度の就職・採用活動においても大きな問題は見られなかったことから、平成30(2018)年度も同様の時期にすることとなった。
  • 約440の経済団体・業界団体を通じて各企業に対し、内閣官房、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省から、就職・採用活動開始時期の変更の趣旨に沿った広報活動・採用選考活動を実施するよう要請を行った。

(2)職業的自立に向けての支援

(わかものハローワーク等における支援)
  • 厚生労働省は、フリーター等の正社員就職の推進のため、全国のハローワークでのきめ細やかな職業相談・職業紹介、職業訓練の情報提供・相談などを実施している。
(ジョブカフェにおける支援)
  • 厚生労働省は、都道府県が主体的に設置するジョブカフェ(「若年者のためのワンストップサービスセンター」)において、企業説明会や各種セミナーを民間団体に委託して実施している。
(若者の農林漁業への就業促進)
  • 農林水産省は、若者が安心して農林漁業に就業していけるよう、資金の交付、無利子融資、情報提供、就業相談会を実施するとともに、作業実態や就労条件を理解してもらうためのトライアル雇用、就業の場での研修を進めるための雇い主への助成、教育機関における研修を推進している。

(3)非正規雇用対策の推進

  • 厚生労働省は、正社員を希望する人の正社員転換や非正規雇用を選択する人の待遇改善を進めるため、平成28(2016)年1月に策定した「正社員転換・待遇改善実現プラン」等に基づき、各都道府県と連携して、非正規雇用労働者の希望や意欲・能力に応じた正社員転換・待遇改善を強力に推進している。

(4)若者雇用促進法の施行による就職支援

  • 平成27(2015)年度に成立した若者雇用促進法に基づく、①新卒者の募集を行う企業による職場情報の提供の仕組み、②ハローワークにおける一定の労働関係法令違反に係る求人者の求人不受理、③若者の雇用管理が優良な中小企業についての認定制度(ユースエール認定制度)等について、積極的な周知を図るとともに、その取組を促進した。

(5)若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対策の推進

  • 厚生労働省では、若者が安心して働くことができる環境づくりに向けて、過重労働や賃金不払残業など若者の「使い捨て」が疑われる企業等に対する監督指導を行い、労働基準関係法令違反等を確認したため、是正・改善に向けた指導を行った。また、学生アルバイト等の労働条件の確保については、「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査」に続き、「高校生に対するアルバイトに関する意識等調査」を実施し、その結果を踏まえ、平成28(2016)年7月に、文部科学省と連携し、高校生アルバイトが多い業界団体に対し、労働基準関係法令の遵守のほか、シフト設定等の課題への配慮を要請し、平成29(2017)年3月に同内容について再度要請を行った。さらに、厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」において決定した「『過労死等ゼロ』緊急対策」(平成28年12月)に基づき、以下の取組等を実施している。
    • 企業向けの労働時間の把握に関するガイドラインの策定・周知
    • 長時間労働等の事案について、企業全体への指導を行う仕組みの整備
    • 企業名公表制度の強化

    また、平成30(2018)年4月から、全ての労働基準監督署に、労働時間に関する法制度の周知及び指導を集中的に行うための特別チーム「労働時間改善指導・援助チーム」を編成し、そのチームの業務の一環として、長時間労働の抑制と過重労働による健康障害防止のため、「労働時間改善特別対策監督官」として任命された労働基準監督官が監督指導を行うこととしている。

3 働き方改革の実現

  • 政府は、若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある人も、一度失敗を経験した人も、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現を目指し、平成28(2016)年6月には、「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定し、関連施策のロードマップを策定した。
  • 「ニッポン一億総活躍プラン」では、働き方改革は一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジと位置付けられ、働き方改革の実現を目的とする実行計画の策定等に係る審議に資するため、内閣総理大臣を議長とする「働き方改革実現会議」が平成28(2016)年9月に開催された。同会議では、時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現などによる非正規雇用の処遇改善、女性・若者が活躍しやすい環境整備等が議論され、平成29(2017)年3月に「働き方改革実行計画」が取りまとめられた。本計画においては、子供・若者に関して、給付型奨学金の創設など誰にでもチャンスのある教育環境の整備のほか、若者の活躍に向けた支援・環境整備の推進として、高校中退者等に対する就労・自立支援、多様な選考機会の促進、若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対応策の強化等が盛り込まれた。引き続き、10年先を見据えたロードマップに沿って、施策を進めていく。

第4節 社会形成への参画支援

1 社会形成に参画する態度を育む教育の推進

(学校教育における取組)

  • 現行学習指導要領では、例えば、小学校では社会生活を営む上で大切な法やきまりなど、中学校では契約の重要性や、消費者の自立の支援なども含めた消費者行政など、高等学校では消費者に関する問題などについての学習が行われている。平成29(2017)年3月に改訂した新しい小・中学校の学習指導要領では、例えば、小学校では市町村による公共施設の整備を扱う際の租税の役割や、売買契約の基礎などについて、中学校では民主政治の推進と公正な世論の形成や選挙など国民の政治参加や、消費者被害の背景とその対応などについて新たに明記するとともに、平成30(2018)年3月に改訂した高等学校の新学習指導要領では、「公共」を新設するなど、主権者教育や消費者教育に関する内容の充実が図られている。

(主権者教育)

  • 総務省と文部科学省で連携して、平成27(2015)年度に作成・配布した政治や選挙等に関する副教材や教員用の指導資料を、平成29(2017)年度においても、副教材を全国の国公私立高等学校等の高校1年生を対象に配布した。
  • 総務省では、以下の取組を行い、主権者教育の推進に努めている。
    • 地方公共団体が策定する主権者教育の長期計画に対する支援
    • 主権者教育アドバイザー制度を創設し、選挙管理委員会及び学校等の教育機関が行う主権者教育の取組を支援
    • 各地の選挙管理委員会と連携し、地域の啓発団体や若者を対象とした研修会等の開催
    • 政治や選挙等に対する理解を深めてもらうよう、若者向けの啓発イベントを開催
  • 文部科学省では、高等学校における主権者教育の実施状況を調査し公表するとともに優れた取組について共有を図った。さらに、大学等においても、各自治体の選挙管理委員会と連携したキャンパス内における期日前投票や選挙管理委員会におけるインターンシップ等を通じた啓発活動が充実するよう、大学等における先進的な取組を周知している。

(法教育)

  • 法務省は、法教育の普及・発展のため、教材やリーフレットの作成、職員を派遣しての法教育授業を行っている。

(租税教育)

  • 国税庁は、学校からの要請に基づく租税教室への講師派遣、学校の教員を対象とした講習会の開催や、租税教育用副教材の作成・配付、税に関する作文の募集等を実施し、租税教育の充実に向けた環境整備や支援に努めている。

(金融経済教育)

  • 金融庁は、「金融リテラシー・マップ」の改訂、大学生に対する授業の実施、高校等へ講師の派遣等により、金融リテラシーの向上を図っている。

(労働者の権利・義務に関する教育)

  • 厚生労働省は、より早い段階から労働法教育を実施するために、高校、大学等での労働法教育プログラムや指導者用資料等を作成し、配布するなど、高校、大学等における労働法に関する知識のさらなる周知・啓発に取り組んでいる。

(消費者教育)

  • 消費者庁は、消費者教育関連の情報を集約した消費者教育ポータルサイトにおいて、最新教材等の収集・掲載等の運用などを行っている。
  • 文部科学省は、消費者教育の実践事例の報告及び多様な主体との連携・協働による消費者教育を促進する場として「消費者教育フェスタ」を実施。また、地域における消費者教育の推進体制づくりを支援するため、消費者教育アドバイザーの派遣等を行っている。

(社会保障制度についての情報提供・意識啓発)

  • 厚生労働省は、有識者会議「社会保障の教育推進に関する検討会」において作成した高校生向け教材を全国の高等学校に無償配布するとともに、教員向けの研修会を実施するなど、教育現場への普及・啓発活動を行っている。

2 ボランティアなど社会参加活動の推進

  • 学校教育では、総合的な学習の時間や特別活動において、子供の社会性や豊かな人間性を育むため、ボランティア活動をはじめとする社会参加活動が行われている。
  • 独立行政法人国立青少年教育振興機構は、「学生ボランティアと支援者が集う全国研究交流集会」を実施している。
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