第3章 困難を有する子供・若者やその家族の支援

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第1節 子供・若者の抱える課題の複合性・複雑性を踏まえた重層的な支援の充実

1 子ども・若者支援地域協議会を通じた縦と横の支援ネットワークの構築

  • 内閣府は、「子ども・若者育成支援推進法」に基づく「子ども・若者支援地域協議会」の設置及び活用を推進するため、平成29(2017)年度は、都道府県及び市町村を対象とした「子供・若者支援地域ネットワーク強化推進事業」を実施した。また、困難を有する子供・若者に対する支援に関する調査研究として、平成29年度は、自治体に対し、子供・若者支援に係るネットワークに関する調査を実施した。
図表8 子ども・若者支援地域協議会
図表9 子ども・若者支援地域協議会設置数の推移

2 アウトリーチの充実

  • 内閣府は、アウトリーチに携わる人材の養成を目的とした「アウトリーチ(訪問支援)研修」、困難を有する子供・若者に対する相談業務に従事する公的相談機関の職員や、NPO法人等の職員を対象に、適切な支援を行うために必要な知見等の習得を目的とした研修を実施し、子供・若者育成支援に関わる幅広い人材の養成に努めている。

第2節 困難な状況ごとの取組

1 若年無業者、ひきこもり、不登校の子供・若者の支援等

図表10 若年無業者数
図表11 不登校の状況

(1)若年無業者等の支援

  • 厚生労働省は、「地域若者サポートステーション」(以下「サポステ」という。)において、地方自治体と協働し、職業的自立に向けた専門的相談支援、就職後の定着・ステップアップ支援、若年無業者等集中訓練プログラムを実施している(15~39歳対象)。
図表12 地域若者サポートステーション事業

(2)ひきこもりの支援

  • 厚生労働省は、関係機関と連携の下でひきこもり専門相談窓口としての機能を担う「ひきこもり地域支援センター」の整備を推進している。平成30(2018)年度からは、より住民に身近な市町村でのひきこもり支援の充実・強化のため、ひきこもり支援関係機関へのバックアップ機能の強化等を図る。また、継続的な訪問支援などを行う「ひきこもりサポーター」を都道府県又は市町村が養成し、市町村が家族や本人へサポーターを派遣する事業を行っている。

(3)不登校の子供・若者の支援

  • 文部科学省は、平成28(2016)年12月に成立した、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の確保等に関する法律」(平28法105)を踏まえ、不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針を、平成29(2017)年3月に定め、不登校児童生徒への支援に係る施策として、平成29年度は学校以外の場における教育機会の確保等に関する調査研究を実施し、平成30(2018)年度においても引き続き同調査研究を実施する。

(4)高等学校中途退学者及び進路未決定卒業者の支援

  • 文部科学省は、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の中で、高校中退の状況を把握し、公表している。
  • 厚生労働省は、平成29(2017)年度より、「若年無業者等アウトリーチ支援事業」として、高校等とサポステ等との連携により、高校中退者等のニーズに応じたアウトリーチ(訪問)型等による切れ目ない就労支援を行っている。

2 障害等のある子供・若者の支援

(1)障害のある子供・若者の支援

(特別支援教育の推進)
  • 文部科学省は、特別支援教育を推進するための以下のような取組を行っている。
    • 地方公共団体が、就学前から学齢期・社会参加までの切れ目のない支援体制整備、特別支援教育専門家等配置、特別支援教育の体制整備を推進する場合に要する経費の一部補助
    • 文部科学省の委託事業で得られた実践事例を独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の「『合理的配慮』実践事例データベース」上で公表し、障害のある子供への「合理的配慮」の充実に役立つ情報の発信
(障害のある子供たちへの就学支援)
  • 文部科学省と地方公共団体は、障害のある子供の特別支援学校や小・中学校への就学の特殊事情に鑑み、これらの学校に就学する子供の保護者等の経済的負担を軽減するため、保護者等の経済的負担能力に応じて就学奨励費を支給している。
(障害のある子供と障害のない子供や地域の人々との交流及び共同学習)
  • 文部科学省は、平成29(2017)年3月に公示した新しい学習指導要領においても障害のある子供と障害のない子供との交流及び共同学習の機会を設けることを規定するとともに、教育委員会が主体となり、学校において、各教科やスポーツ、文化・芸術活動等を通じた交流及び共同学習の機会を設けることにより、障害者理解の一層の推進を図る取組等を行っている。
  • 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、教職員を対象に「交流及び共同学習推進指導者研究協議会」を開催し、交流・共同学習の理解促進と具体的な方策の普及を図っている。
(スポーツ活動)
  • 文部科学省では、スポーツ関係者と障害福祉関係者が連携・協働体制を構築し、地域において一体的に障害者スポーツを推進する取組を支援するとともに、障害児を含めた障害者の日常的なスポーツ活動を推進するため、特別支援学校等を活用した障害者のスポーツ活動の拠点づくりを推進するための支援を実施している。

(2)発達障害のある子供・若者の支援

(「発達障害者支援センター」を核とした地域支援体制の強化)
  • 厚生労働省は、「発達障害者支援法」(平16法167)に基づき、地域において医療、保健、福祉、教育及び労働といった分野の関係者と連携し、発達障害者やその家族に対する相談支援を推進している。
(学校における支援体制の整備)
  • 発達障害の可能性のある子供は通常の学級にも在籍しており、文部科学省は、発達障害を含む障害のある子供への学校における支援体制の整備を推進している。
  • 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、発達障害に関する正しい理解や支援に関する様々な教育情報、研修会等のイベント情報等をインターネットを通じて提供するとともに、「発達障害教育実践セミナー」を開催している。

(3)障害者に対する就労支援等

  • 厚生労働省は、障害者雇用率の達成に向け、ハローワークなどにおいて厳正な達成指導を実施しているほか、就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」、一般就労への移行を支援する「就労移行支援」、一般就労が困難な者に対して働く場を提供する「就労継続支援」等を実施している。
  • 文部科学省では、特別支援学校高等部や高等学校等において、福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援を充実させるための研究に取り組んでいる。

(4)障害者に対する文化芸術活動の支援

  • 文部科学省においては、全国高等学校総合文化祭において、特別支援学校の生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場を提供するとともに、小学校・中学校等に障害のある芸術家等を派遣し、車いすダンスの披露や体験等の機会等を提供している。また、障害者の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施、助成対象として採択した映画作品のバリアフリー字幕や音声ガイド制作への支援等、障害者の文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいる。

(5)慢性疾病を抱える児童等や難病患者の支援

  • 小児慢性特定疾病対策及び難病対策については、平成27(2015)年1月から「児童福祉法」(昭22法164)及び「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平26法50)に基づく医療費助成制度や児童福祉法に基づく小児慢性特定疾病児童等自立支援事業が都道府県等において実施されている。さらに、難病対策については平成27年9月に、小児慢性特定疾病対策については同年10月に基本方針が策定され、厚生労働省では、これらの法律及び基本方針に基づき小児慢性特定疾病児童等や難病患者に対して、総合的な対策を推進していくこととしている。

3 非行・犯罪に陥った子供・若者の支援等

(1)総合的取組

(家庭、学校、地域の連携)
  • 多様化、深刻化している少年の問題行動の個々の状況に着目し、的確な支援を行うため、学校、警察、児童相談所、保護観察所といった関係機関が「サポートチーム」を構成し、適切な役割分担の下に連携して対処している。
  • 警察署の管轄区域、市町村の区域等を単位に、全ての都道府県で学校警察連絡協議会が設置されている。また、非行少年、不良行為少年その他の健全育成上問題を有する子供に関する情報を警察・学校間で通知する「学校・警察連絡制度」が各地で構築されている。
  • 警察は、退職した警察官などをスクールサポーターとして警察署などに配置するとともに、学校からの要請に応じて派遣するなどしている。
  • 「更生保護サポートセンター」では、保護司が駐在し、様々な関係機関・団体と協力し、保護観察を受けている人の立ち直り支援や、非行防止セミナー、住民からの非行相談等を行っている。
  • 少年鑑別所は、「法務少年支援センター」として、少年や保護者などの個人からの相談に応じて情報の提供・助言等を行っている。

(2)非行防止、相談活動等

(非行少年を生まない社会づくり)
  • 警察は、少年の規範意識の向上及び社会との絆の強化を図るため、「非行少年を生まない社会づくり」の取組を全国的に推進している。
(非行防止教室)
  • 警察は、職員の学校への派遣や少年警察ボランティアなどの協力により、非行防止教室を開催している。
  • 法務省は、非行問題に関する豊富な知識や保護観察対象者に対する処遇経験を有する保護司が、直接小・中学校へ赴き、非行問題や薬物問題をテーマにした非行防止教室を開催したり、問題を抱えた子供への指導方法などについて教師と協議などをすることを通じて、小・中学生の犯罪・非行の未然防止と健全育成を図っている。
(相談活動)
  • 青少年センターでは、相談活動や街頭補導、有害環境の適正化に関する活動が行われている。
  • 警察では、相談窓口を設け、少年補導職員や警察官などが、必要な指導や助言を行っている。また、電話相談窓口「ヤングテレホンコーナー」を設置しているほか、FAXや電子メールによる相談も受け付けるなど、相談者が利用しやすい環境の整備を行っている。
  • 法務省は、人権擁護委員や法務局・地方法務局の職員による相談対応を行っている。また、少年鑑別所でも、「法務少年支援センター」として保護者や学校関係者などからの相談に応じている。「更生保護サポートセンター」でも、保護司が親などからの相談に応じている。
(補導活動)
  • 警察は、全国に設置された少年サポートセンターを中心として、少年警察ボランティアなどと連携し、繁華街や公園といった非行が行われやすい場所に重点を置いて、家出少年などの発見・保護活動及び深夜はいかいなど不良行為少年に対する補導活動を推進し、問題行動を早期に発見して、少年及びその保護者に対する的確な助言・指導を行っている。
(事件の捜査・調査)
  • 警察は、非行少年を発見した場合は、必要な捜査や調査を行い、検察官や家庭裁判所、児童相談所といった関係機関へ送致または通告するほか、その少年の保護者に助言を与えるなど、非行少年に対して適切な指導がなされるよう措置している。
  • 検察官は、警察からの送致などを受けて必要な捜査を行い、犯罪の嫌疑があると認めたときは、事件を家庭裁判所に送致する。その際、処遇に関する意見を付している。
(非行集団対策)
  • 警察は、非行集団の実態把握を徹底し、取り締まりによる、非行集団の弱体化と解体、少年の非行集団及び暴力団への加入阻止や離脱支援、暴走族対策などの取組を推進している。

(3)薬物乱用防止

図表13 薬物事犯で検挙された30歳未満の者
  • 政府では、「第四次薬物乱用防止五か年戦略」(平成25年8月)及び「危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策」(平成26年7月)に基づき、薬物乱用の根絶に向けた総合的な対策を推進している。
図表14 危険ドラッグ乱用者の検挙状況(平成29年)
  • 内閣府は、薬物乱用の危険性や正しい知識を青少年に分かりやすく伝えるため、薬物乱用対策マンガを作成して内閣府ホームページに掲載したり、相談窓口の周知を図るなどの啓発活動を推進している。
  • 警察は、薬物密輸・密売組織の実態解明及びその壊滅に向けた取締り、関係機関との連携による水際対策の強化などにより、薬物供給を遮断するとともに、規制薬物や指定薬物の乱用者の徹底検挙、子供に対する薬物乱用防止教室、大学生や新社会人に対する薬物乱用防止講習会などを行い、薬物需要の根絶を図っている。
  • 法務省は、少年院において、薬物に対する依存のある者を対象に、薬物非行防止指導を実施している。刑事施設では、麻薬や覚醒剤などの薬物に対する依存がある受刑者を対象に、薬物依存離脱指導を実施している。保護観察所では、保護観察に付されている者に対し、自発的意思に基づく簡易薬物検出検査を実施するとともに、一定の条件を満たした者に対して認知行動療法などに基づく薬物再乱用防止プログラムを実施している。
  • 文部科学省は、小学校、中学校、高校において薬物乱用防止教室を開催している。また、薬物乱用防止に係る啓発資料を作成し、広く配布している。
  • 厚生労働省は、インターネットを利用した密売事犯や外国人による密売事犯などに対する取締りの強化、危険ドラッグの指定薬物への迅速な指定、検査命令及び販売等停止命令の実施、危険ドラッグのインターネット販売店についてプロバイダなどに対して削除要請、地域における薬物乱用防止・薬物依存症に関する相談体制の充実、医療提供体制の充実等を実施している。

(4)少年審判

(受理の状況)
  • 平成29(2017)年における少年保護事件の全国の家庭裁判所での新規受理人員は、73,353人であった。
(処理の状況)
  • 平成29(2017)年における少年保護事件の既済人員は74,441人で、終局決定別にみると、審判不開始が38.4%と最も多く、次いで保護処分が22.7%となっている。

(5)加害者に対するしょく罪指導と被害者への配慮

(被害者への情報提供などの様々な制度や取組)
  • 警察は、捜査状況などに関する情報を可能な限り被害者などに提供するように努めている。
  • 法務省は、検察庁において、被害者に、事件の処理結果などの情報を提供している。少年院、地方更生保護委員会、保護観察所において、少年院での処遇状況に関する事項や仮退院審理に関する事項、保護観察の開始・終了や保護観察中の処遇状況に関する事項を通知している。
(被害者の心情を踏まえた適切な加害者処遇)
  • 少年院や少年刑務所等では、「被害者の視点を取り入れた教育」が意図的・計画的に実施されるよう、矯正教育や改善指導の充実に努めている。
  • 保護観察でも、少年が自らの犯罪と向き合い、犯した罪の大きさや被害者の心情などを認識し、被害者に対して誠意をもって対応していくことができるようになるための助言指導を行っている。

(6)施設内処遇を通じた取組等

(少年鑑別所)
  • 法務省は、再非行の可能性及び教育上の必要性を定量的に把握する「法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)」を効果的に活用し、再非行防止に資する鑑別の充実に取り組んでいる。
(少年院・少年刑務所等)
  • 少年院では、少年の特性に応じた矯正教育の目標、内容、期間や実施方法を具体的に定めた個人別矯正教育計画を作成し、きめ細かく処遇を実施している。
(児童自立支援施設)
  • 厚生労働省は、児童自立支援施設運営指針などにより、児童自立支援施設の質の確保と向上を図っている。

(7)社会内処遇を通じた取組等

(少年院からの仮退院、少年刑務所等からの仮釈放)
  • 保護観察所は、引受人などとの人間関係や出院・出所後の職業などについて調整を行い、受入体制の整備を図っている。
(保護観察)
  • 複雑かつ困難な問題を抱えた少年に対しては、保護観察官による直接的関与の程度を強めるなどにより、重点的な働き掛けを行っている。
(処遇全般の充実・多様化)
  • 法務省は、少年院において処遇ケース検討会を実施することなどにより、保護処分の適正かつ円滑な執行を図っている。
  • 「刑法等の一部を改正する法律」(平25法49)により、「更生保護法」に基づく保護観察の特別遵守事項の類型の一つに、社会貢献活動に関する規定が加えられ、平成27(2015)年6月に施行された。

(8)非行少年に対する就労支援等

  • 少年院や少年刑務所等は、処遇の一環として、就労に対する心構えを身に付けさせ、就労意欲を喚起し、各種の資格取得を奨励している。また、ハローワークなどとの連携による就労支援を実施している。
  • 保護観察所は、矯正施設や家族、学校と協力し、出院・出所後の少年の就労先の調整・確保に努めている。協力雇用主に対する支援の強化として、平成27(2015)年度から「就労・職場定着奨励金」及び「就労継続奨励金」の支給を実施している。
  • ハローワークは、少年院や少年刑務所等、保護観察所と連携して、出院・出所予定者や保護観察に付された少年を対象とした就労支援を推進している。
  • 厚生労働省は、施設などを退所した若者に対し、日常生活上の援助や就業支援を行う「自立援助ホーム」(児童自立生活援助事業)の充実に努めている。

4 子供の貧困問題への対応

図表15 児童のいる世帯の状況
図表16 ひとり親家庭の現状
  • 「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(平25法64)を踏まえ、政府は、平成26(2014)年8月に子供の貧困対策に関する基本的な方針をはじめ、子供の貧困に関する指標、指標の改善に向けた当面の重点施策、子供の貧困に関する調査研究等及び施策の推進体制等を定めた「子供の貧困対策に関する大綱」を策定し、子供の貧困対策を総合的に推進することとした。

(教育の支援)

  • 文部科学省では、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない形での教育費負担の軽減に取り組んでいる。
  • 厚生労働省は、「生活困窮者自立支援法」(平25法105)に基づき、生活保護受給世帯の子供を含む生活困窮家庭の子供に対する学習支援事業を制度化し、貧困の連鎖の防止のための取組を強化している。また、平成30(2018)年度より、高校を中退した人、中学卒業後進学していない人などを含む「高校生世代」や小学生等に対する支援の拡充に取り組んでいる。

(生活の支援)

  • 厚生労働省では、平成28(2016)年度においては、相談窓口に関する分かりやすい情報提供やスマートフォンで検索できる支援情報ポータルサイトの活用等による相談窓口への誘導の強化を行いつつ、ひとり親家庭の相談窓口において、子育て・生活に関する内容から就業に関する内容まで、ワンストップで寄り添い型支援を行うことができる体制を整備し、総合的・包括的な支援を行う体制整備を行った。
  • 放課後児童クラブ等終了後にひとり親家庭の子供の生活習慣の習得・学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくり、母子父子寡婦福祉資金貸付金による経済的支援、保証人なしの場合に有利子となる資金の利率の引下げを行った。

(保護者に対する就労の支援)

  • 厚生労働省では、平成29(2017)年度において、自立支援教育訓練給付金について、雇用保険の受給資格があり、一般教育訓練給付(費用の2割:上限10万円)の支給を受けることができるひとり親に対しても、費用の6割(上限20万円)との差額を上乗せして支給することとした。平成30(2018)年度においては、高等職業訓練促進給付金の支給を受け、准看護師養成機関を卒業した者が、引き続き、看護師の資格を取得するために、養成機関で修学する場合には、通算3年分の給付金を支給することとしている。

(住宅の支援)

  • 国土交通省は、低廉な家賃での公的賃貸住宅の供給の促進、子育て支援施設等の併設による公的賃貸住宅団地の福祉拠点化への支援などを推進している。

(経済的支援)

  • 厚生労働省は、児童扶養手当について、平成30(2018)年8月支給分から全部支給に係る所得制限限度額を30万円引き上げるとともに、手当額の算定基礎となる所得額から、公共用地の取得に伴う土地代金等を控除する見直しを行う予定としている。また、支払回数について、現行の年3回から年6回に増やすための関連法案を提出した。

(官公民の連携した取組)

  • 内閣府、文部科学省、厚生労働省及び独立行政法人福祉医療機構は、官公民の連携・協働プロジェクトとして「子供の未来応援国民運動」を推進しており、各種支援情報の発信や支援活動を行う団体とその活動をサポートする企業等とのマッチングの推進、民間資金を活用した「子供の未来応援基金」による草の根で支援を行うNPO等に対する支援等を行っている。本基金については、平成29(2017)年度末時点で約9億7,300万円の寄付が寄せられ、平成28(2016)年秋の第1回支援に続き、平成30(2018)年1月に第2回支援として、公募に申請のあった352団体から、基金事業審査委員会による審査等を経て、79団体を選定し、同年4月からの活動に支援金を交付することが決定された。
  • また、内閣府では、「地域子供の未来応援交付金」により、地方自治体が地域の実情に応じて子供の貧困対策を進めていくため、関係行政機関、企業、NPO等との地域ネットワークを形成するための取組を支援している。平成29(2017)年度においては、居場所づくりや相談窓口の設置等子供たちと「支援」を実際に結び付ける事業を実施する過程を通じて、関係行政機関等による連携体制を深化させる事業の実施を可能とするなど、より効果的な事業となるよう見直しを行った。

5 特に配慮が必要な子供・若者の支援

(1)自殺対策

  • 政府では、「自殺対策基本法」(平18法85)に基づく「自殺総合対策大綱」(平成24年8月閣議決定)について、平成28(2016)年から見直しに向けた検討に着手し、「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」が開催され、平成29(2017)年5月に報告書が取りまとめられ、ICTも活用した若者へのアウトリーチ策の強化を含め「若者の自殺対策の更なる推進」等が提言された。報告書等を踏まえて、新たな大綱の素案がまとめられ、パブリックコメントを経て、同年7月25日、自殺総合対策会議において大綱の案が策定され、同日、閣議決定された。
  • 新たな大綱では、重点施策の一つとして、「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」ことが掲げられた。特に若者は、自発的には相談や支援につながりにくい傾向がある一方で、インターネットやSNS上で自殺をほのめかしたり、自殺の手段等を検索したりする傾向もあると言われている。そのため、ICTを活用した若者へのアウトリーチ策の強化を始め、インターネット(スマートフォン、携帯電話等を含む。)を活用した支援策に係る情報提供の強化などにも取り組んでいくこととなっている。

(2)外国人の子供や帰国児童生徒の教育の充実等

  • 文部科学省は、外国人の子供の公立学校への受入れや帰国児童生徒を含む日本語指導が必要な児童生徒の教育の充実に当たって、対象児童生徒の数に応じて教員数を算定できるよう、基礎定数化の実施等を行っている。

(3)定住外国人の若者の就職の促進等

  • ハローワークでは、日系人を中心とした定住外国人の若者の就職を促進するため、就業支援ガイダンスを実施している。

(4)性同一性障害者等に対する理解促進

  • 法務省の人権擁護機関では、「性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう」などを啓発活動の強調事項として掲げ、各種啓発活動を実施している。
  • 文部科学省は、性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒への対応について、子供の心情に十分配慮した教育相談の徹底を関係者に対して依頼している。平成28(2016)年4月に、性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施についての教職員向け資料を公表し、全国の教育委員会等に周知した。

第3節 子供・若者の被害防止・保護

1 児童虐待防止対策

図表17 児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数
図表18 警察が検挙した児童虐待事件
  • 児童虐待について、発生予防から自立支援までの一連の対策の更なる強化を図るため、平成29(2017)年4月に全面施行された「児童福祉法等の一部を改正する法律」(平28法63)では、初めて子供を権利の主体として法律に位置付けるなど児童福祉法の理念を明確化するとともに、子育て世代包括支援センターの設置、市町村及び児童相談所の体制の強化、里親委託の推進等の所要の措置を講ずることとされた。さらに、平成29年5月に成立した「児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」(平29法69)では、虐待を受けている児童等の保護を図るため、家庭裁判所が都道府県等に対して保護者への指導を勧告することができることとする等、児童等の保護についての司法関与を強化する等の措置を講ずることとされた。
図表19 児童福祉法等の一部を改正する法律の概要
図表20 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律の概要

(発生予防)

  • 文部科学省は、保護者の子育て不安の軽減や孤立感の解消のため、地域における就学時健診の機会を活用した子育て講座や、家庭教育に関する学習機会の提供、家庭教育支援チームによる相談対応等の取組を支援している。
  • 厚生労働省では、児童福祉法等の一部改正を踏まえ、法定化された子育て世代包括支援センターを核として、産婦人科・小児科の医療機関等の地域の関係機関と連携しながら、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を提供する仕組みの全国展開を図ることとしている。さらに、乳児家庭全戸訪問事業及び養育支援訪問事業を、全ての市町村において実施することを目指している。

(早期発見・早期対応、保護)

  • 文部科学省では、学校へのスクールソーシャルワーカー及びスクールカウンセラーの配置の充実等、児童虐待を早期に発見し迅速かつ的確に対応できる体制の整備を進めている。
  • 児童福祉法等の一部改正に伴い、市町村は、子供とその家庭及び妊産婦等を対象に、実情の把握、子供等に関する相談全般から通所・在宅支援を中心としたより専門的な相談対応や必要な調査、訪問等による継続的なソーシャルワーク業務までを行う機能を担う拠点(市区町村子ども家庭総合支援拠点)の整備に努めなければならないとされたことを踏まえ、当該支援拠点の設置を推進している。
  • 児童相談所全国共通ダイヤル(189)について、平成28(2016)年4月に、音声ガイダンスの短縮や、平成30(2018)年2月に携帯電話等からの着信についてコールセンター方式の導入などの改善を進めている。
  • 警察では、街頭補導や相談活動、通報、事件捜査・調査を通じて、児童虐待事案の早期発見・被害児童の早期保護に努めており、関係機関との連携を強化しながら子供の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応を行っている。
  • 法務省の人権擁護機関は、児童虐待事案の情報を認知した場合は、事案に応じて、児童相談所などと連携し、子供を一時保護させたり、加害者に対して説示を行うなど適切な対応をとり、被害を受けた子供の救済に努めている。

(社会的養護の現状と課題)

  • 厚生労働省は、ケア形態の小規模化を図るため、乳児院、児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設を対象とした小規模グループケアの実施や、グループホームの設置を進めている。
  • 厚生労働省は、里親支援事業や、児童養護施設と乳児院への里親支援専門相談員の配置により、地方公共団体における里親委託推進に向けた取組を促しているほか、毎年10月を里親月間として定め、里親制度の普及促進に係る集中的な取組が地域の実情に応じてなされるよう要請している。

(施設退所児童等の自立支援策の推進)

  • 厚生労働省は、社会的養護の下で育った子供の自立への支援の充実を図るため、家賃相当額や生活費の貸付を行う事で安定した生活基盤を築くための「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業」の創設等を実施している。

(施設機能の充実)

  • 厚生労働省は、児童養護施設、乳児院、児童心理治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設の5つの施設運営指針、里親及びファミリーホーム養育指針、第三者評価の基準により、施設運営の質の向上を図っている。

(被措置児童等に対する虐待の防止)

  • 厚生労働省は、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」により、被措置児童等への虐待の防止を図っている。

2 子供・若者の福祉を害する犯罪対策

(1)子供・若者の福祉を害する犯罪対策

  • 警察は、積極的な取締りと被害者の発見保護に努めている。
  • 検察は、積極的に関係法令を適用し、厳正な科刑の実現に努めている。
(子供の性被害問題)
図表21 福祉犯の被害に遭った20歳未満の者
  • 平成26(2014)年6月、児童買春・児童ポルノ禁止法が一部改正され、平成27(2015)年7月から自己の性的好奇心を満たす目的での所持・保管罪について適用が開始された。
  • 政府では、平成29(2017)年4月に犯罪対策閣僚会議において策定された「子供の性被害防止プラン」(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)に基づき、児童買春、児童ポルノの製造等の子供の性被害を許さない国民意識の向上を図るとともに、児童に対する加害行為に使用されるツールに着目した対策などを総合的に推進している。
  • 平成28(2016)年度より、関係する民間団体等及び行政機関から構成される「子供の性被害撲滅対策推進協議会」(事務局:警察庁)が開催されている。
  • 内閣府では、平成29(2017)年7月、「青少年の非行・被害防止対策公開シンポジウム」を開催し、「子供の性被害の根絶を目指して」をテーマとして、基調講演やパネルディスカッションを行った。
  • 警察は、児童買春・児童ポルノ禁止法による積極的な取締りなどを行っている。
(出会い系サイトやSNSの問題)
  • 警察では、子供が援助交際を求めるなどのインターネット上の不適切な書き込みをサイバーパトロールによって発見し、書き込みを行った子供と接触して直接注意・助言などを行うサイバー補導を推進している。
図表22 出会い系サイト及びSNSに起因する事犯の被害に遭った18歳未満の者
(子供の犯罪被害の防止)
  • 文部科学省は、「第2次学校安全の推進に関する計画」(平成29年3月閣議決定)に基づき、学校における安全管理を推進している。また、元警察官などからなるスクールガード・リーダーによる学校の巡回等を行っている。
  • 警察庁は、法務省から子供を対象とした暴力的な性犯罪に係る受刑者の出所情報の提供を受け、犯罪の予防や捜査の迅速化への活用を図っている。
  • 警察は、子供が被害に遭った事案や、子供に対する犯罪の前兆と思われる声掛けやつきまといの発生に関する情報が、迅速に保護者などに対して提供されるよう、警察署と学校・教育委員会との間で情報共有体制を整備している。
  • 政府では、平成29(2017)年5月、人身取引対策推進会議の第3回会合を開催し、我が国における人身取引による被害の状況や、関係省庁による人身取引対策の取組状況等をまとめた年次報告「人身取引対策に関する取組について」を決定・公表するとともに、引き続き、人身取引の根絶を目指し、「人身取引対策行動計画2014」に基づく取組を着実に進めていくことを確認した。

(2)犯罪被害に遭った子供・若者とその家族等への対応

  • 警察は、少年補導職員による指導助言や被害者に対するカウンセリングを継続的に行っている。
  • 文部科学省は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、関係機関とのネットワークを活用するなど多様な支援方法を用いて、被害を受けた子供の心のケアを支援する活動を推進している。
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