特集 就労等に関する若者の意識

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1 はじめに

我が国では、急速に進む少子高齢化、それに伴う生産年齢人口の減少が大きな課題となっている。加えて、東京一極集中の傾向が継続し、地方において、人口減少や過疎化は特に深刻な状況となっている。政府としては、この課題の克服に向けて、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる全員参加型の社会の実現を目指しているところである。

社会の中で自立し活躍するには、就労を通して経済的な基盤を築くことが大きな要素となるが、就労は、単に収入を得るための手段というだけではなく、その人と社会をつなぎ、自己実現を図るためのものでもあるなど、「働き方」は「暮らし方」そのものであると考えられる。こうした基本的考え方の下、ライフスタイルが多様化している現代において、個人の希望や事情により様々な働き方が受け入れられる環境が求められている中で、多様な働き方が可能となるよう働き方改革実行計画が策定され、また、「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月閣議決定)により、人生100年時代を見据えた「人への投資」が進められているところである。さらに、IoT、ビッグデータ、ロボット、人工知能などのイノベーションの登場は、これからの仕事の内容や働き方を劇的に変えていく可能性がある。

そこで、今回の特集では、平成29(2017)年度に内閣府が行った、就労等に関する若者の意識を調査した「子供・若者の意識に関する調査」(以下「平成29年度調査」という。)の結果をもとに、若者が、働くことをどう捉え、職業選択に際してどのような事柄を重視しているのか、就職後にも学び続けることを希望しているのか、将来に対してどのような展望を持っているのか、などについて、過去の調査結果とも比較しながら分析した結果を紹介するとともに、若者に対するキャリア形成支援等について参考となる取組を紹介する。

2 就労等に関する若者の意識調査の結果

(1)調査の概要について

ア 調査の対象、時期、方法 等

平成29年度調査は、インターネット調査会社に登録してあるリサーチモニターである全国の16歳から29歳までの男女(有効回答数10,000)を対象に、平成29(2017)年10月27日から同年11月13日までの間に実施したインターネット調査である。

また、本特集では、平成23(2011)年度に内閣府が実施した「若者の考え方についての調査」1(以下「平成23年度調査」という。)における平成29年度調査と比較可能な設問に対する結果についても掲載している。

イ 回答者の属性

回答者の属性は次のとおりである(図表1-1、1-2、1-3)。

図表1-1 回答者の属性(年齢)
図表1-2 回答者の属性(現在の就学・就業状況)
図表1-3 回答者の属性(就業者の雇用形態)

なお、平成23年度調査における回答者の属性と大きな違いはない。

(2)就業に対する考え方及び初職の状況等について

ア 希望する雇用形態

現在の就学・就業状況別に、「最も希望する雇用の形態等」についてみると、現在「正規雇用」者の96.0%、現在「学生」の88.4%が「正規雇用」を希望すると回答している。また、現在「非正規雇用」者の47.1%が「正規雇用」を希望すると回答している一方で、46.9%が「非正規雇用」を希望すると回答している。さらに、現在「自営業・自由業」者の60.4%が「自営業・自由業」を希望すると回答し、現在「専業主婦(主夫)」の68.9%が「非正規雇用」を希望すると回答している(図表2)。

図表2 現在の就学・就業状況別の希望する雇用形態

次に、希望する雇用形態別にその雇用形態を希望する最も重要な理由についてみると、「正規雇用」を希望する者の選択理由として多かった回答は、「安定していて長く続けられるから」、「収入が多いから」でそれぞれ59.0%、26.9%、「非正規雇用」を希望する者の選択理由として多かった回答は、「自由な時間が多いから」、「子育て、介護等との両立がしやすいから」でそれぞれ33.9%、28.0%、また、「自営業・自由業」を希望する者の選択理由として多かった回答は、「自由な時間が多いから」、「特別に指示されずに、自分の責任で決められるから」でそれぞれ28.9%、22.9%であった(図表3)。

図表3 希望する雇用形態別選択理由(最も重要な理由)

イ 初職の状況

現在就業している者、または、過去に就業したことがある者の初職(学校等を卒業または中途退学した直後の就業)の雇用形態についてみると、全体では、「正規雇用」が57.8%、「非正規雇用」が34.2%であった。このうち、「25歳から29歳」では、「正規雇用」が68.3%であり、「非正規雇用」の26.4%よりも多かったが、「16歳から19歳」では、「正規雇用」が30.6%であり、「非正規雇用」の53.1%よりも少なかった(図表4)。

図表4 初職の雇用形態

初職の雇用形態ごとに現在の就学・就業の状況についてみると、初職が「正規雇用」であった者のうち、現在「正規雇用」の者は72.5%、現在「非正規雇用」の者は13.4%、現在「働いていない」者は4.0%であった。初職が「非正規雇用」であった者のうち、現在「正規雇用」の者は12.6%、現在「非正規雇用」の者は45.3%、現在「働いていない」者は9.5%であった。また、学校等を卒業または中途退学した直後に「無業」であった者のうち、現在「正規雇用」の者は18.1%、現在「非正規雇用」の者は44.2%、現在「働いていない」者は13.7%であった(図表5)。

図表5 初職の雇用形態と現在の就学・就業の状況

初職の継続状況についてみると、全体では、「現在も継続して勤務している」者が41.4%で最も多く、次いで、「1年以上3年未満で離職した」者が17.6%、「3か月以上1年未満で離職した」者が16.3%、「1か月以上3か月未満で離職した」者が8.7%であった。年齢階層別にみると、全ての年齢階層で「現在も継続して勤務している」者の割合がおおむね4割であったが、「16歳から19歳」では、「1か月未満で離職した」者が17.3%、「1か月以上3か月未満で離職した」者が15.5%であり、他の年齢階層よりも比較的短い期間で離職している者が多かった(図表6)。

図表6 初職の継続状況

初職の離職理由(複数選択可)についてみると、「仕事が自分に合わなかったため」が43.4%で最も多く、「人間関係がよくなかったため」が23.7%、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」が23.4%、「賃金がよくなかったため」が20.7%、「ノルマや責任が重すぎたため」が19.1%と続いている。

初職の離職理由の中で最も重要な理由についても、「仕事が自分に合わなかったため」が23.0%と最も多く、次いで、「人間関係がよくなかったため」が10.0%であった。なお、「結婚、子育てのため」の8.5%がこれに次いで多い理由であった(図表7)。

図表7 初職の離職理由

ウ 働いていない理由

現在「働いていない(求職中や家事手伝いの者を含む)」者が働いていない理由(複数回答)についてみると、「希望する業種・職種での採用がなかったから」が26.0%で最も多く、次いで、「健康上の理由のため」が21.8%、「特にやりたいことがないから」が18.5%、「人間関係がうまくいかないから」が17.4%であった。また、項目が異なるため単純な比較は困難であるが、平成23年度の調査時と比べて、「希望する業種・職種での採用がなかったから」、「特にやりたいことがないから」、「人間関係がうまくいかないから」と回答した者の多さが目立つ。一方、「他にやりたいことがあるから」、「どこにも採用されないから」と回答した者も平成23年度の調査時より多かったが、その違いはわずかであった(図表8)。

図表8 働いていない理由(複数回答)

(3)仕事観について

ア 仕事をする目的

仕事をする目的(2つまで回答)についてみると、「収入を得るため」と回答した者が84.6%と突出して多く、「仕事を通して達成感や生きがいを得るため」と回答した者が15.8%、「自分の能力を発揮するため」と回答した者が15.7%、「働くのがあたりまえだから」と回答した者が14.8%、「人の役に立つため」と回答した者が13.6%であった(図表9)。

図表9 仕事をする目的(2つまで回答)

イ 仕事選択に際して重要視する観点

仕事を選択する際に重要と考える観点について、「安定していて長く続けられること」及び「収入が多いこと」に、「とても重要」または「まあ重要」と回答した者は、ともに88.7%で最も多かった。次いで多かった項目は、「自分のやりたいことができること」の88.5%、「福利厚生が充実していること」の85.2%、「自由な時間が多いこと」の82.2%であった。一方、「実力主義で偉くなれること」と「特別に指示されずに、自分の責任で決められること」を「とても重要」または「まあ重要」と回答した者は、それぞれ51.6%、55.8%と比較的少なかった(図表10)。項目が異なるため単純な比較は困難であるが、平成23年度の調査時においても、「安定していて長く続けられる」、「収入が多い」、「自分の好きなことができる」といった類似の項目に「とても大切」または「まあ大切」と回答した者は多かった。

図表10 仕事を選択する際に重要視する観点

ウ 仕事と家庭・プライベートとのバランス

仕事と家庭・プライベート(私生活)のどちらを優先するかについてみると、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した者は63.7%であり、平成23年度の調査時における52.9%よりも多かった。

また、男女別に仕事と家庭・プライベート(私生活)のどちらを優先するかについてみると、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した男性は58.3%であり、女性の69.4%より少ないものの、平成23年度の調査時よりも10ポイント以上多く、半数を超えていた(図表11)。

図表11 仕事と家庭・プライベート(私生活)とのバランス

エ 仕事と家庭との関係

仕事と家庭との関係についてみると、「子育てと仕事を両立しにくい職業がある」に、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した者が86.2%で最も多く、次いで多かった項目は、「家庭のことを考えると転職や離職が難しくなる」の81.4%、「残業等でパートナーと生活時間帯を合わせるのが大変だ」の76.6%、「結婚すると就労しにくい職業がある」の76.4%であった。平成23年度の調査時には、「家庭を持つと就労しにくい職業がある」に、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した者が89.0%で最も多く、次いで多かった項目は、「家庭生活のことを考えると転職や離職が難しくなる」の88.9%、「家庭や子育てと仕事を両立できる企業が少ない」の84.4%であった(図表12)。平成23年度の調査時とは項目が異なるため単純な比較は困難であるが、類似した項目である「結婚すると就労しにくい職業がある」、「産前産後休業や育児休業を取得すると、職場にいづらくなる」、「家庭のことを考えると転職や離職が難しくなる」に、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した者は、平成23年度の調査時よりも少なかった。

図表12 仕事と家庭との関係

オ 転職に対する意識

転職に対する意識についてみると、「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職は絶対すべきではない」または「自分の能力や適性に合わない職場であっても、転職はできる限りしない方がよい」といった、転職に否定的な項目を選択した者は17.3%であり、2割に満たなかった。

また、男女別に転職に対する意識についてみると、転職に否定的な項目を選択した男性は21.4%であり、転職に否定的な項目を選択した女性の13.2%よりも多かった(図表13)。

図表13 転職に関する意識

転職する際に重要視することについてみると、「自分の興味ややりたいことが、賃金や労働条件より、とても重要」または「自分の興味ややりたいことが、賃金や労働条件より、どちらかといえば重要」と回答した者は49.4%、「賃金や労働条件が、自分の興味ややりたいことより、とても重要」または「賃金や労働条件が、自分の興味ややりたいことより、どちらかといえば重要」と回答した者は40.0%であった。

また、男女別に転職する際に重要視することについてみると、「賃金や労働条件が、自分の興味ややりたいことより、とても重要」または「賃金や労働条件が、自分の興味ややりたいことより、どちらかといえば重要」と回答した女性は45.0%であり、男性の35.3%よりも多かった(図表14)。

図表14 転職する際に重要視すること

カ 学びの継続希望

より良い仕事に就くために就職後も学び続けることを希望しているかどうかについてみると、「条件が整えば、希望する」と回答した者が53.2%で最も多く、「希望する」が24.3%、「希望しない」が22.5%であった(図表15)。

図表15 学びの継続の希望度

(4)働くことへの不安と相談状況について

ア 不安の傾向

働くことに関する不安についてみると、「十分な収入が得られるか」に、「とても不安」または「どちらかといえば不安」と回答した者が76.5%で最も多く、次いで多かった項目は、「老後の年金はどうなるか」の75.4%、「きちんと仕事ができるか」の73.5%、「仕事と家庭生活の両立はどうか」の72.2%、「勤務先での人間関係がうまくいくか」の71.4%であった。平成23年度の調査時と比べて、「とても不安」または「どちらかといえば不安」と回答した者は、全ての項目において少なかった(図表16)。

図表16 働くことに関する不安

イ 相談相手

働くことの悩み等について相談した相手についてみると、「親」と回答した者は52.9%、「周りの友人・知人(中学校、高校、大学時代の友人など。インターネットで知り合った友人を除く)」と回答した者は31.3%、「恋人・配偶者」と回答した者は23.4%であった。また、「悩みはあるが、誰にも相談したことがない」と回答した者は10.8%であった(図表17)。

図表17 相談相手(複数回答)

ウ 相談効果

働くことの悩み等について相談したことがどのようなことに役に立ったと考えているかについてみると、「自分の考え方が広がった」と回答した者が58.4%、「就職先を選ぶこと・働き続けることの参考になった」と回答した者が55.5%、「自分の考えや気持ちの整理がついた」と回答した者が53.7%であった(図表18)。

図表18 相談の効果

(5)将来の展望について

40代の将来像についてみると、「親を大切にしている」に、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した者が75.8%で最も多く、次いで多かった項目は、「幸せになっている」の73.0%、「子供を育てている」の67.8%であった。一方、「有名になっている」に、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した者は16.5%、「世界で活躍している」は19.0%、「海外での勤務経験を積んでいる」は19.4%と少なかった。

平成23年度の調査時には、「親を大切にしている」に、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した者が77.3%で最も多く、次いで多かった項目は、「幸せになっている」の72.5%、「子供を育てている」の65.3%であった。一方、「有名になっている」に、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した者は15.8%、「世界で活躍している」は18.3%と少なかった(図表19)。平成23年度の調査時から追加・変更した項目があるため、全体としての単純な比較は困難であるが、共通の項目については、平成23年度の調査時と同様の傾向であったと考えられる。

図表19 40代の将来像

(6)キャリア教育・職業教育について

ア 教育の効果

受講経験があると回答した者が、キャリア教育や職業教育を受けた結果、役に立ったと考えている効果についてみると、「働く事の大切さがわかった」が61.7%で最も多く、次いで多かった項目は、「コミュニケーションスキルの重要性がわかった」の61.0%、「自分の考え方が広がった」の58.0%、「ビジネスマナー等がわかった」の51.3%、「就職先を選ぶ参考になった」の50.4%であった(図表20)。

図表20 キャリア教育・職業教育の効果

イ 就労に関して教わりたかったこと

就労に関して学生時代に教えてほしかったことについてみると、「コミュニケーション能力やビジネスマナーなど、社会人としての基礎的知識」が47.1%で最も多く、次いで多かった回答は、「仕事に直接役立つ専門的知識・技能など」の43.4%、「世の中にある様々な職業の内容」の34.0%であった(図表21)。

図表21 就労に関して教わりたかったこと(複数回答)

3 おわりに

平成29年度調査についてみると、就労により十分な収入を得られるのか、きちんと仕事ができるのか、仕事と家庭の両立はできるのか、勤務先での人間関係がうまくいくかなどについて、平成23年度の調査より少なくなっているものの、依然として多くの若者が不安を抱えていることが読み取れた。また、仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先したいと考える若者が増えていること、転職を否定的に捉えている若者がそれほど多くないことや、キャリア教育の効果を感じている若者が多いことなどが読み取れた。

また、人工知能、ロボット、IoTなどのイノベーションの登場により、仕事の内容や働き方などが大きく変わる可能性がある。これに伴い、時間的にも空間的にも、より柔軟なワークスタイルが選択できるようになるのではないかと考えられる。

こうした状況の中で、若者には、各自の意思や能力、置かれた個々の事情に応じて、多様で柔軟な働き方を選択しながら、より良い将来への展望を持ち、社会で活躍していくことが期待されている。若者が、子育てや介護との両立、ワーク・ライフ・バランスなども念頭に置きつつ、自身の暮らし方、生き方を検討し選択することができるような、キャリア教育や就労環境の整備が求められているといえるだろう。

そこで、本特集の結びとして、若者を対象に、職業について考えるきっかけを提供したり、キャリア形成を支援したりしている取組についての事例をいくつか紹介することとしたい。

(1)学校外で取り組まれているキャリア教育~高知県「とさっ子タウン」~

学校外で子供たちが主役となって、社会の仕組みを学びながら、働くことの意義や様々な職業について考える体験型の取組の一つとして、高知県で実施されている「とさっ子タウン」について紹介する。

(とさっ子タウンの参加者)

「とさっ子タウン」は、小学4年から中学3年までの子供たちを対象に、仕事や遊びを楽しく体験しながら、社会の仕組みや地域への関心を高めるきっかけとして、平成21(2009)年度から毎年子供たちの夏休みの二日間を利用して開催されてきた。ドイツのミュンヘン市で行われているこどものまち「ミニ・ミュンヘン」を参考にして始められた「とさっ子タウン」は、毎年400名以上の子供が運営する「まち」であり、熱気あふれる学びの場となっている。

「とさっ子タウン」の目的は、地元高知ならではの仕事や文化の体験、子供たち同士のコミュニケーションのほか、社会の仕組みに関心を持つきっかけづくりにある。

「とさっ子タウン」では、市役所や税務署、新聞社、飲食関係の仕事や創作関係、娯楽関係など約40種の仕事が用意されているが、子供たちのアイディア次第で新たな仕事を起業するなど、仕事のバリエーションを増やすことも可能だ。子供たちはそれぞれ好きな仕事を選択して、専門家から仕事を教わりながら、「まち」を育て、運営していく。仕事をすることで仮想通貨「tos(トス)」を給料として得て、その中から税金を払ったり、買い物をしたりすることができる。選挙や議会も開催することができ、子供たちが協力しながら自分たちで自分たちの「まち」を変えていくことができる仕組みになっている。

このように、「とさっ子タウン」を通して子供たちは、社会にはいろいろな仕事があること、その仕事の大切さ、大事さを体験しながら学んでいく。「とさっ子タウン」は、興味を持って社会を真剣に考える最初の重要な機会となっていると言える。

また、「とさっ子タウン」は参加する子供たちのほかに、多くの高校生、大学生等がボランティアとして参加しており、彼らの学びの場ともなっている。

(2)高校におけるキャリア教育~岡山県立和気閑谷(わけしずたに)高等学校の取組~

少子化による地域の衰退を防ぐためには教育の充実が重要という和気町の思いと、特色ある教育活動によって生徒の学力・意欲を伸ばし高校の魅力化を図りたいという和気閑谷高校の思いが一致し、平成25(2013)年度に開始された取組を紹介する。

(地元中学校での放課後学習支援)

和気閑谷高校では、地域課題解決学習(総合的な学習の時間)に町役場、町教育委員会、町商工会、地域おこしに協力する人や企業などが協力・協働することを通して、地域の活性化を図るとともに、地域に愛着を持ち地域コミュニティの担い手になる人材を育成し、ひいては高校の魅力を高めることを目指している。

具体的には、和気町役場が地域おこしに協力する人や企業を学習の支援職員として高校に常駐させたり、町教育委員会が主催行事への高校生受入れや高校主催行事への小中学生参加のためのつなぎ役を担ったり、商工会が高校生のインターンシップの受入れ、講師派遣や商品開発の支援などをしたり、駅前商店会が店頭スペースの提供やボランティアの受入れ、講師派遣などをしたりしている。

そのほか、連携・協働する教育関係者、行政、地域、産業界の代表者が集まる連絡会を隔週で行い、情報共有するとともに、地域が必要としていることや支援職員の活動内容などを確認している。また、年5回の魅力化推進協議会では2020年に向けて学校と地域の在り方などを協議し、地域社会と高校双方の持続発展を指向した展開を目指している。

また、就職希望者は全員2年次にインターンシップを行うこととしており、役場や商工会が窓口となって受入れ先などを調整しているが、これを探究型インターンシップと位置付け、職業体験に加えて「働くことに関する現代的課題」について仮説を立て、体験やインタビューを通して仮説の検証や課題解決の提言をまとめることとしている。

さらに、小中学校や町教育委員会と連携し、高校生が小中学生の先生役となり、英語や論語の出前授業や理科実験教室を行ったり、放課後学習支援を行ったりもしている。また、English Campでは、小中学生が英語に親しめるメニューを高校生が企画・実践している。これらは、高校生が主体となったプログラムであり、高校生の責任感や自己肯定感を醸成することができるとともに、小中学生に身近なロールモデルを提示することとなっている。また、連絡会の実施や毎年の学校内外の人々へのアンケート、生徒の到達度チェックなど計画・活動・評価・見直しのプロセスが確立しており、町ぐるみで生徒のキャリア形成を支援する取組となっている。さらに、「こくさいフォーラムフォーラム in Wake」の開催や海外の高校(中国2校、韓国2校、台湾1校)との姉妹校協定に基づく交流などを通して、国際理解学習を深め、地球規模の視野で考え、地域視点で行動できる“グローカル人材”育成に取り組んでいる。

このように、和気閑谷高校の取組は、地域にある様々な教育資源を最大限に活用し、町内の小・中・高等学校の連携した取組を行政、商工会、地域事業所などが一体となってサポートするものとなっており、学校と町が協働して、多様な機会を子供たちに提供するシステムであるといえる。同時に、高校生の活動をきっかけに地域住民の意識も変容し始めており、町の活性化にもつながっている。

(3)学校から離れてしまった若者に対する支援~子ども・若者支援地域協議会と連携した群馬県の取組~

自らのキャリア形成や、働くことに対する不安解消のために、家族や友人、職場の同僚・上司などの身近な存在にだけでなく、専門的な助言を求めて、学校の先生、就職担当者、キャリアカウンセラーなどに相談する者は少なくない。しかし、高校の中途退学などにより、学校から離れてしまうと、こうした専門的な助言を受けられる相談相手は失われてしまう。ここでは、学校から離れてしまった者を対象とする支援に多機関と連携して取り組む群馬県の取組を紹介する。

(事業の概要図)

高校中退者の中には、高卒資格の取得を目指す者、就職を希望する者、大学進学を希望する者、あるいは、そもそも外出も難しいひきこもり状態にある者など、様々な状況の者がいる。群馬県では、それぞれの者が置かれた状況や希望内容に応じて、社会的自立に向けた支援を切れ目なく行うことができるよう、多機関連携の体制づくりを目指した。

具体的には、文部科学省の委託事業である、「学びを通じたステップアップ支援促進事業」2を活用し、「子ども・若者育成支援地域協議会」3(以下、「協議会」という。)と連携して高校中退者に対する再学習支援を行う体制を敷いた。協議会には、子供・若者の様々な相談に対応することができるよう、教育、就労、医療、福祉など多分野の関係機関が構成員として参加していることから、対象となる若者が置かれている状況や希望内容などに応じて、きめ細かな支援を行うことができる。

県内高校の協力により、高校を中途退学する時に、協議会による支援の希望の有無が生徒に確認され、希望がある場合には、その生徒に関する情報が協議会の事務局へ送付される。

協議会の事務局は、本人の希望内容に応じて、就労希望者は地域若者サポートステーション等の就労支援機関へ、高校への編入学や高卒資格取得を目指す者は再学習支援機関へつないでいくこととなる。また、ひきこもり状態にある者については、まずは専門家による訪問支援等の相談支援を行い、状態に一定の改善がみられた段階で、本人の希望内容に応じて、再学習支援や就労支援へつないでいくこととなる。

群馬県では、高校中退者をいかにこの事業につなげるか、という点がポイントであると考えている。なるべく多くの方の目に留まるよう、紙、WEB、メルマガ、QRコードなど、様々な広報媒体を活用し、本人用、保護者用、学校の先生用など、それぞれの対象別にメッセージも使い分けながら、こうした取組を発信している。特に、本人に対しては、置かれた状況や希望内容が様々であることを踏まえ、どんな目的であっても「若者を応援している」というメッセージが伝わるよう意識している。

(支援に関する同意書)(支援に関する説明資料)

また、平成30(2018)年度からは、市町村教育委員会と連携し、中学校を卒業する際に進学も就職もせず進路が未決定の者を、新たに支援対象としていく。

学校を離れたことにより、若者が自身の将来の展望を描けなくなるようであってはいけない。群馬県のこうした取組は、既にある地域ネットワークを活用した、伴走型の支援により、高校中退者等のキャリア形成を支えていこうとするものであるといえる。


1 平成23年度調査は、全国の15歳から29歳までの男女(有効回答数3,000)を対象に、平成23年12月28日から平成24年1月13日までの間に実施したインターネット調査。
2 高校中退者等を対象に、高等学校卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援のモデルとなる地方公共団体の取組について、実践研究を行うとともに、その研究成果の全国展開を図るもの。
3 「子ども・若者育成支援推進法」第19条で地方公共団体に設置の努力義務が課されている協議会であり、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者に対し、地域の関係機関が連携して支援するためのネットワーク。協議会の全ての構成機関に罰則付きの秘密保持義務が課せられている。
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