第2章 全ての子供・若者の健やかな育成(第4節)

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第4節 社会形成への参画支援

1 社会形成に参画する態度を育む教育の推進

子供や若者は次代を担う存在であり、彼らが自立した社会人として生きていくためには、世の中の仕組みや社会人としての権利・義務などに関する正しい知識を持ち、また、社会の形成者としての基本的な資質や能力、態度を身に付けておく必要があり、そのための教育や機会の提供が重要である。

(1)学校教育における取組(文部科学省)

学校教育では従来、小学校・中学校の社会科や高等学校の公民科に関する教科等において、例えば、我が国の民主政治や議会の仕組み、政治参加の重要性や選挙の意義、法や経済の仕組み、雇用と労働などの政治、法や経済に関する教育が行われている。また、消費者として主体的に判断し責任をもって行動できるようにするため、社会科や家庭科など関連する教科等において、例えば、小学校では社会生活を営む上で大切な法やきまりなど、中学校では契約の重要性や、消費者の自立の支援なども含めた消費者行政など、高等学校では消費者に関する問題などについての学習が行われている。また平成29(2017)年3月に改訂した小・中学校の新学習指導要領では、例えば、小学校では市町村による公共施設の整備を扱う際の租税の役割や、売買契約の基礎などについて、中学校では民主政治の推進と公正な世論の形成や選挙など国民の政治参加や、消費者被害の背景とその対応などについて新たに明記するとともに、平成30(2018)年3月に改訂した高等学校の新学習指導要領では、現代の諸課題に関わる学習課題の解決に向け、自己と社会の関わりを踏まえ、社会に参画する主体として自立することや、他者と協働してよりよい社会を形成すること等を目指す必履修科目として「公共」を新設したところである。このように、小・中・高等学校を通じて主権者教育や消費者教育などの充実を図ることなどにより、社会形成に参画する態度を育む教育の推進を図っている。

文部科学省は、小・中・高等学校において社会で自立し、持続可能な社会の形成に参画するために必要となる具体的な内容(例えば、政治参加、消費生活、税など)を習得し地域の課題の解決に取り組む体験的・実践的な学習プログラムを開発するための実践研究を教育委員会などに委託して行い、その成果の普及に努めているところである。

(2)主権者教育(総務省、文部科学省)

平成27(2015)年6月の公職選挙法(昭25法100)の改正に伴い、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質や能力を育む教育(主権者教育)を一層推進することが重要となった。

総務省と文部科学省では、連携して平成27年度から政治や選挙等に関する副教材や教員用の指導資料を作成・配布し、学校教育や出前授業の実施など、様々な取組を行ってきた。平成29(2017)年度においても、副教材を全国の国公私立高等学校等の高校1年生を対象に配布した。

また、総務省では、平成29年に開催した「主権者教育の推進に関する有識者会議」における取りまとめにおいて、様々な機関が連携して、発達段階に応じた題材や手法の取組計画を策定することが必要であるなどの提言がなされたことを踏まえ、以下の取組を行った。

  • 地方公共団体が策定する主権者教育の長期計画に対する支援
  • 主権者教育アドバイザー制度を創設し、選挙管理委員会及び学校等の教育機関が行う主権者教育の取組を支援
  • 各地の選挙管理委員会と連携し、地域の啓発団体や若者を対象とした研修会等の開催
  • 政治や選挙等に対する理解を深めてもらうよう、若者向けの啓発イベントを開催

文部科学省では、平成27年に設置した検討チームにおける取りまとめに基づき、国家及び社会の形成者として必要な教育を社会全体で推進する観点から、学校のみならず家庭、地域において、政治の仕組みなどについて必要な知識を習得させるにとどまらず、社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、地域の課題解決を主体的に担うことができる力を身に付けるための取組を推進しており、具体的には、以下の取組を行った。

  • 高等学校において、主権者教育の実施状況を調査し公表するとともに、優れた取組を共有
  • 大学等において、各自治体の選挙管理委員会と連携したキャンパス内における期日前投票や選挙管理委員会におけるインターンシップ等を通じた啓発活動が充実するよう、大学等における先進的な取組を周知

平成29年10月22日に、選挙権年齢が18歳以上となって初めて実施された第48回衆議院議員総選挙においては、10歳代の投票率は40.49%(18歳の投票率47.87%、19歳の投票率33.25%)となり、平成28(2016)年の参議院議員通常選挙に引き続き、20歳代の投票率を上回る結果となった。

また、進学等により引越しをする機会の多い、18歳・19歳に対し、住民票の異動について十分に周知するため、平成27年度から引越しをした際には住民票を異動すべき旨や不在者投票制度の手続きを記載したリーフレットの作成・配布を行っており、平成29年度においても全国の選挙管理委員会に配布を行った。なお、不在者投票については、投票用紙等をオンラインで請求することができるようにするなど有権者の利便性向上に努めている。

(3)法教育(法務省)

法務省は、法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方や公正な判断力、社会への参加意識を身に付けるための教育(法教育)の普及・発展のため、以下をはじめ様々な取組を行っている54

  • 学習指導要領を踏まえた、学校教育における法教育の実践の在り方や教育関係者と法曹関係者による連携・協働の在り方について多角的な視点から検討を行うため、法教育推進協議会55を開催している。同協議会では、平成24(2012)年度から平成27(2015)年度にかけて、学校における法教育の実施状況について調査を行い、その結果を踏まえて平成25(2013)年度には小学生向け法教育教材を、平成26(2014)年度には中学生向け法教育教材を作成し、全国の小中学校、教育委員会などに配布した。また、平成28(2016)年3月に同協議会の下に、実際に学校現場で教鞭を執っている教職員や法律関係者を構成員とする教材作成部会を設置し、平成29(2017)年度に小学生向け視聴覚教材を作成した。現在は、中学生向け視聴覚教材及び高校生向け法教育教材の作成に向けた検討を行っている。
  • 学校現場などへ法教育情報を提供することによって、法教育の積極的な実践を後押しするため、法教育に関するリーフレットを作成し、全国の教育委員会などに配布している。
  • 学校などの要請に応じて、法務省の職員を講師として派遣し、教員や児童・生徒に対して法的なものの考え方などについて説明する法教育授業を実施している(第2-52図)。
    第2-52図 職員による法教育授業

(4)租税教育(国税庁)

国税庁は、小学生から社会人手前までの子供や若者が租税の意義や役割を正しく理解し、健全な納税者意識を養うことができるよう、租税教育推進関係省庁等協議会(国税庁、総務省、文部科学省などで構成)を中心に、民間団体と連携しながら、以下の取組を行い、租税教育の充実に向けた環境整備や支援に努めている56

  • 各都道府県等に設置された租税教育推進協議会(国、地方公共団体、教育関係者などで構成)を中心に、民間団体と連携・協力し、学校からの要請に基づく租税教室への講師派遣や、学校の教員を対象とした講習会の開催、租税教育用副教材の作成・配付、税に関する作文の募集などの実施
  • 国税庁ホームページに「税の学習コーナー」57を開設し、子供が自ら楽しみながら税を学習できるようクイズやゲームなどのコンテンツの提供
  • 学校の教員をはじめ租税教育を行う指導者が利用できる電子媒体の教材である「租税教育用教材」の提供

(5)金融経済教育(金融庁)

金融経済教育の意義・目的は、金融リテラシーの向上を通じて、国民一人一人が経済的に自立し、より良い暮らしを送っていくことを可能とすることなどにある。そのため金融庁は、以下の取組を行うことにより、金融リテラシーの向上を図っている。

  • 金融庁や関係団体から構成される金融経済教育推進会議において、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を項目別・年齢層別に具体化・体系化した「金融リテラシー・マップ」を平成26(2014)年6月に作成(平成27年6月に改訂)
  • 大学生に対し、「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を関係団体と連携して10大学で実施(平成29年度)
  • 「基礎から学べる金融ガイド」58や「最低限身に付けるべき金融リテラシー」59(第2-53図)を金融庁ウェブサイトで公表し、全国の高校・高専・短大・大学にも無償で配布。また、金融庁・財務局・財務事務所から高校や大学などへ講師を派遣
    第2-53図 金融経済教育のための広報啓発資料

(6)労働者の権利・義務に関する教育(厚生労働省)

厚生労働省は、高校生などのより早い段階から労働法教育を実施するために、平成28(2016)年度に高校、平成29(2017)年度には大学等での労働法教育プログラムや指導者用資料等を作成し、配布するなど、高校、大学等における労働法に関する知識の更なる周知・啓発に取り組んでいる。

(7)消費者教育(消費者庁、文部科学省)

民法(明29法89)の成年年齢の引下げについて検討が行われていることを踏まえ、将来を担う全ての若者に対して、実践的な消費者教育を確実に行い、社会において消費者として主体的に判断し、責任を持って行動できるような能力を育むとともに、消費者市民社会の形成に参画することの意義などについての理解を促す必要があることが再確認されている。

政府では、「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(平成25年6月閣議決定。平成30年3月変更について閣議決定)60に基づき、消費者教育を推進している。

消費者庁は、消費者教育推進会議において、この基本方針の見直しや、若年者に対する消費者教育の機会の充実等の社会情勢等の変化に対応した課題について検討している。また、消費者教育関連の情報を集約した消費者教育ポータルサイト61において、最新教材等の収集・掲載等の運用などを行っている(第2-54図)。

第2-54図 消費者教育ポータルサイト

加えて、消費者庁は、平成28(2016)年度に高校生向け消費者教育教材「社会への扉」とその教師用解説書を、消費者教育推進会議での議論を踏まえて文部科学省等と連携して作成し、平成29(2017)年度には消費者行政新未来創造オフィスにおいて、徳島県と連携し、徳島県内の全ての高校でこの教材を使用した授業を行い、授業例を収集する取組を行っている。また、徳島県以外でも、地方公共団体等の協力の下、本教材を活用した実践授業を実施している。平成30(2018)年度はこれらの実証を踏まえて、「社会への扉」について、全国の学校教育現場での活用を推進する予定である(第2-55図)。

第2-55図 消費者教育教材「社会への扉」

文部科学省は、小・中・高等学校において、社会で自立し、持続可能な社会の形成に参画するために必要となる消費生活などの具体的な内容を習得し、地域の課題の解決に取り組む体験的・実践的な学習プログラムを開発するための実践研究を実施した62。社会教育においては、各地域における消費者教育の推進を図るため、消費者教育の実践事例の報告及び多様な主体との連携・協働による消費者教育を促進する場として「消費者教育フェスタ」を実施した。また、地域における消費者教育の推進体制づくりを支援するため、消費者教育アドバイザーの派遣や実証的調査研究を行っている。

(8)社会保障制度についての情報提供・意識啓発(厚生労働省)

医療・介護・年金・雇用などの社会保障は、国民が安心して生活をする上で必須の制度である。子供や若者が給付と負担の構造や社会保障の意義を理解し当事者意識を持って考えることができるようにすることが重要である。

厚生労働省は、有識者会議「社会保障の教育推進に関する検討会」において学校における社会保障教育の在り方について検討を行い、今後取り組むべき課題を整理した報告書を平成26(2014)年7月に公表した。また、同検討会において作成した高校生向け教材を全国の高等学校に無償配布するとともに、教員向けの研修会を実施するなど、教育現場への普及・啓発活動を行っている。

(9)外交や防衛についての情報提供・意識啓発(外務省、防衛省)

外務省は、外交問題に関する子供や若者の理解を深めるため、以下の取組を行っている。

  • 外務省ホームページにおいて、「キッズ外務省」63をはじめ、動画や画像を活用した理解しやすいコンテンツの制作に努めるとともに、外交をより身近に感じられるよう外務省職員のエッセイやインタビュー記事といった「生の声」を掲載
  • 外務省職員が全国各地の高校に赴き講演する「高校講座」(平成29年度は120校)や全国各地の大学に赴き講演を行う「外交講座」(平成29年度は58講座)の実施
  • 外務省の仕事の内容を紹介し、省内見学を通じて外交に対する関心を高めてもらうため、外務省への訪問を希望する小中高校生の受入れ(平成29年度は計204校)
  • 若手外務省職員との直接的な意見交換・交流の機会を通じて、外交政策への理解を深めてもらうための外務省セミナー「学生と語る」の実施
  • 学生を対象としたプレゼンテーション能力を競う「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」の開催

防衛省は、防衛省・自衛隊や防衛施策に関する子供や若者の理解を深めるため、以下の取組を行っている。

  • 小中高校生による部隊見学や隊内生活体験、大学生・大学院生による自衛隊生活体験ツアーの受入れ
  • 自衛隊音楽まつりや富士総合火力演習において、小学生から大学生などを対象とした特別枠を設け優先的に案内
  • 若い世代をはじめとする幅広い層に親しみをもってもらえるよう、「まんがで読む防衛白書」(平成29年版は「防衛省・自衛隊の国内外での活動を知ろう!」をテーマに紹介)を作成
  • ソーシャルメディアを活用。また、防衛省ホームページの一部をスマートフォンでの閲覧用に最適化して提供

2 ボランティアなど社会参加活動の推進(文部科学省)

学校教育における総合的な学習の時間・特別活動や、地域学校協働活動において、子供の社会性や豊かな人間性を育むため、ボランティア活動をはじめとする社会参加活動が行われている。

青少年教育施設では、ボランティアに関する各種事業が実施され、子供や若者が社会性を育む機会が提供されている。独立行政法人国立青少年教育振興機構は、学生ボランティアを支援する大学と地域関係機関の担当者の連携協力を深めるとともに学生間の交流と学び合いの機会を提供するため、「学生ボランティアと支援者が集う全国研究交流集会」を実施している。


54 http://www.moj.go.jp/housei/shihouhousei/index2.html
55 http://www.moj.go.jp/shingi1/kanbou_houkyo_kyougikai_index.html
56 http://www.nta.go.jp/taxes/kids/sozei_kyoiku/index.htm
57 http://www.nta.go.jp/taxes/kids/index.htm
58 http://www.fsa.go.jp/teach/kou3.pdf
59 http://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20131129-1/01.pdf
60 http://www.caa.go.jp/information/index17.html
61 http://www.caa.go.jp/kportal/index.php
62 http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/syouhisha/
63 http://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/index.html
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