第3章 困難を有する子供・若者やその家族の支援(第2節)
第2節 困難な状況ごとの取組
1 若年無業者、ひきこもり、不登校の子供・若者の支援等
15~39歳の若年無業者の数は、平成29(2017)年で71万人であり、15~39歳人口に占める割合は2.1%であった。共に前年を下回っている(第3-3図)。総務省が平成24(2012)年10月に実施した調査では、就業希望の若年無業者が求職活動をしていない理由として、病気・けがや勉強中の者を除くと、「知識・能力に自信がない」、「探したが見つからなかった」、「希望する仕事がありそうにない」といった回答が見られる(第3-4図)。
また、15歳~39歳の広義のひきこもり(「ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」、「自室からは出るが、家からは出ない」、「自室からほとんど出ない」、「ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」に該当する者)の推計数は、平成27(2015)年の調査では54.1万人であった。
小・中学生の不登校生徒数は、平成25(2013)年から28(2016)年にかけて、4年続けて前年を上回っている(第3-5図)。不登校の要因をみると、小・中学生では、家庭に係る状況、いじめを除く友人関係をめぐる問題、学業の不振等が多くみられる(第3-6表)。

高校中途退学者は減少傾向が続いており、平成28年度は約4万7,000人、中退率は1.4%となっている(第3-7図)。中退事由としては、進路変更、学校生活・学業不適応が多くみられる(第3-8表)。

このように、依然として困難を抱えた子供・若者が多く存在しており、それぞれが置かれている状況も様々である。困難な状況が長引くことのないように、関係機関が連携した支援が必要である。
(1)若年無業者等の支援(厚生労働省)
厚生労働省は、若年無業者等が充実した職業生活を送り、我が国の将来を支える人材となるよう「地域若者サポートステーション」(以下「サポステ」という。)において、地方公共団体と協働し、職業的自立に向けた専門的相談支援、就職後の定着・ステップアップ支援、若年無業者等集中訓練プログラムを実施している(15~39歳対象)(第3-9図)。サポステでは、以下のようなサービスの多くを無料で受けることができる。

- キャリアコンサルタントなどによる個別相談、支援計画の作成
- 個別・グループによる就労に向け踏み出すためのプログラム
- 就職した者への定着・ステップアップ相談
- 集中訓練プログラム(合宿形式を含むサポート、自信回復、職場で必要な基礎的能力付与、就職活動に向けた基礎知識獲得などを集中的に実施)
- 職場見学や職場体験
- 高校中退者等のニーズに応じたアウトリーチ型の相談支援
- 保護者を対象としたセミナーや個別相談
(2)ひきこもりの支援(厚生労働省)
厚生労働省は、保健・医療・福祉・教育・雇用といった分野の関係機関と連携の下でひきこもり専門相談窓口としての機能を担う「ひきこもり地域支援センター」の整備を推進している(第3-10図)。「ひきこもり地域支援センター」は、平成29(2017)年度末現在、66の都道府県と政令指定都市に設置されている2。平成30(2018)年度からは、より住民に身近な市町村でのひきこもり支援の充実・強化のため、ひきこもり支援関係機関へのバックアップ機能の強化等を図る。また、地域に潜在するひきこもりを早期に発見し、ひきこもりを抱える家族や本人に対するきめ細やかな支援が可能となるよう、継続的な訪問支援などを行う「ひきこもりサポーター」を都道府県又は市町村が養成し、市町村が家族や本人へサポーターを派遣する事業を行っている。そのほか、精神保健福祉センターや保健所、児童相談所、自立相談支援機関等において、医師や保健師、精神保健福祉士等による相談・支援を、本人や家族に対して行っている。

(3)不登校の子供・若者の支援(文部科学省、法務省)
不登校への対応については、未然防止や早期発見・早期対応の取組や、学校が家庭・地域・関係機関と連携した取組に加え、子供の悩みや不安を受け止めて相談に当たる相談体制の整備が重要である(第2章第2節2(3)「学校における相談体制の充実」を参照)。
文部科学省は、平成28(2016)年12月に成立した、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の確保等に関する法律」(平28法105)を踏まえ、不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針を、平成29(2017)年3月に定めた。
不登校児童生徒への支援に係る施策として、平成29年度は学校以外の場における教育機会の確保等に関する調査研究を実施し、平成30(2018)年度においても引き続き同調査研究を実施する。
そのほか、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの配置拡充など、教育相談体制の充実を図っている。
法務省の人権擁護機関においては、いじめをはじめとする人権問題について悩みを抱えている子供に対して、「インターネット人権相談受付窓口(子どもの人権SOS-eメール)」や「子どもの人権110番」を開設し、相談に応じている。
(4)高等学校中途退学者及び進路未決定卒業者の支援(文部科学省、厚生労働省)
文部科学省は、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」3の中で、高校中退の状況を把握し、公表している(第3-7図、第3-8表参照)。
また、平成29(2017)年度より、学力格差の解消及び高校中退者等の進学・就労に資するよう、高校中退者等を対象に、高等学校卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援のモデルとなる取組について実践研究を行うとともに、その研究成果の全国展開を図るための事業を実施している。
厚生労働省は、平成29年度より、「若年無業者等アウトリーチ支援事業」として、高校等とサポステ等との連携により、高校中退者等のニーズに応じたアウトリーチ(訪問)型等による切れ目ない就労支援を行っている。
2 障害等のある子供・若者の支援
(1)障害のある子供・若者の支援(文部科学省)
ア 特別支援教育の推進
障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立と社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズに応じ、多様な学びの場において適切な指導及び必要な支援を行う必要がある。現在、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通常の学級における障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」4)においては、特別の教育課程の下、個別の教育支援計画や個別の指導計画が作成され、特別な配慮により作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備などを活用して、指導が行われている。
文部科学省等では、特別支援教育を推進するための以下のような取組を行っている5。
- 切れ目ない支援体制整備に向けた取組として、地方公共団体が、①特別な支援を必要とする子供への就学前から学齢期、社会参加までの切れ目のない支援体制の整備、②特別支援教育専門家等の配置、③特別支援教育の体制整備の推進をする場合に要する経費の一部補助
- 小・中学校、高等学校等における発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援に当たって、①特別支援教育の視点を踏まえた学校経営構築の方法、②学習上のつまずきなどに対する教科指導の方向性の在り方、③通級による指導の担当教師等に対する研修体制の在り方や必要な指導方法、④学校における児童生徒の多様な特性に応じた合理的配慮の在り方、⑤学校と福祉機関との連携支援、支援内容の共有方法に関する研究
- 公立の幼稚園、小・中学校・高校に発達障害を含む障害のある子供をサポートする「特別支援教育支援員」を配置するための経費が地方財政措置されていることを踏まえた特別支援教育支援員の配置促進や、私立学校が障害に応じた教育を実施する上で必要とする設備を整備する経費の一部補助
- 特別支援教育に関わる教師に対する専門的な研修や、保護者をはじめ様々な人々が特別支援教育に対する理解を深めるための取組
- 文部科学省の委託事業で得られた実践事例を独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の「『合理的配慮』実践事例データベース」上で公表し、障害のある子供への「合理的配慮」の充実に役立つ情報の発信6
イ 障害のある子供たちへの就学支援
文部科学省と地方公共団体は、障害のある子供の特別支援学校や小・中学校への就学の特殊事情に鑑み、これらの学校に就学する子供の保護者等の経済的負担を軽減するため、保護者等の経済的負担能力に応じて就学奨励費を支給している。
ウ 障害のある子供と障害のない子供や地域の人々との交流及び共同学習
障害のある子供と、障害のない子供や地域の人々が活動を共にすることは、全ての子供の豊かな人間性や社会性を育成する上で意義があるだけでなく、地域の人々が障害のある子供に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっている。
文部科学省は、こうした学習活動が一層推進されるよう、平成29(2017)年3月に公示した新しい学習指導要領においても障害のある子供と障害のない子供との交流及び共同学習の機会を設けることを規定するとともに、教育委員会が主体となり、学校において、各教科やスポーツ、文化・芸術活動等を通じた交流及び共同学習の機会を設けることにより、障害者理解の一層の推進を図る取組等を行っている。また、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、平成29年7月に「心のバリアフリー学習推進会議」を開催し、平成30(2018)年2月に交流及び共同学習の一層の推進に向けた方策について提言を取りまとめた。提言を踏まえ、交流及び共同学習を通じた障害者理解を推進するなど更なる施策の充実を図るとともに、教育委員会や学校等に対して積極的な取組を促すこととしている。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所7は、都道府県で交流及び共同学習を推進する立場にある教職員を対象に「交流及び共同学習推進指導者研究協議会」を開催し、交流・共同学習の理解促進と具体的な方策の普及を図っている。
エ スポーツ活動
文部科学省においては、スポーツ関係者と障害福祉関係者が連携・協働体制を構築し、地域において一体的に障害者スポーツを推進するとともに、身近な場所でスポーツを実施できる環境を整備する取組を支援している。また、2020年東京大会のレガシーとして共生社会を実現するため、平成32(2020)年に全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の全国的な祭典を開催する「Specialプロジェクト2020」を推進するとともに、障害児を含めた障害者の日常的なスポーツ活動を推進するため、特別支援学校等を活用した障害者のスポーツ活動の拠点づくりを推進するための支援を実施している。
(2)発達障害のある子供・若者の支援
ア 「発達障害者支援センター」8を核とした地域支援体制の強化(厚生労働省)
厚生労働省は、「発達障害者支援法」9(平16法167)に基づき、地域において医療、保健、福祉、教育及び労働といった分野の関係者と連携し、発達障害者やその家族に対する相談支援を推進している。また、共生社会の実現に向けた取組が進められている近年の状況に鑑み、発達障害児者の支援をより一層充実させるための所要の処置を講じる「発達障害者支援法の一部を改正する法律」(平28法64)が平成28(2016)年5月25日に成立した。本改正により、国及び地方公共団体がライフステージを通じた切れ目のない支援を実施することや、家族なども含めたきめ細やかな支援を推進し、発達障害児者及びその家族が身近な場所で支援を受けられる体制を構築することなどが定められた。
これらの改正内容等を踏まえ、
- 平成30(2018)年度から、地域生活支援事業における「発達障害者支援体制整備事業」の一部を新たに「発達障害児者及び家族等支援事業」として独立させることとした。当該事業には、従来から実施しているペアレントメンター10の養成やペアレントトレーニング11等の実施に加え、発達障害児者の家族同士の支援を推進するため、同じ悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するピアサポート等の支援を新たに盛り込んだ。
- 都道府県等においては、平成28年度から、発達障害における早期発見・早期支援の重要性に鑑み、最初に相談を受けること又は診療することの多い小児科医などのかかりつけ医等の医療従事者に対して、発達障害に対する対応力を向上させるための研修を実施し、どの地域においても一定水準の発達障害の診療及び対応が可能となるよう医療従事者の育成に取り組んでいる。
さらに、平成30年度からは「発達障害専門医療機関ネットワーク構築事業」を創設し、都道府県・指定都市において、発達障害に関する医療機関のネットワークを構築し、発達障害の診療・支援等を行う医師を養成するための実地研修等を実施することを支援している。 - 「発達障害児者地域生活支援モデル事業」により、発達障害児者及びその家族が地域で安心して暮らしていけるよう、支援手法の開発、関係する分野との協働による支援や切れ目のない支援などを整備し、地域生活支援の向上を図っている。
- 国立障害者リハビリテーションセンターにおいては、全国の発達障害者支援センターの中央拠点としての役割を担う「発達障害情報・支援センター」を設置し情報発信や支援手法の普及を図っている(第3-11図)。また、平成28年度から、専門家等と連携を図りつつ、自治体等に対して地域における支援体制構築に向けた指導、助言を行っている。さらに、発達障害者支援に関する職員を対象とした専門的な知識・技能の習得を目指した研修を実施している。
イ 学校における支援体制の整備(文部科学省)
発達障害の可能性のある子供は通常の学級にも在籍しており、文部科学省は、発達障害を含む障害のある子供への学校における支援体制の整備を推進している(前項の「(1)障害のある子供・若者の支援」を参照)。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、以下の取組を行っている。
- 「発達障害教育推進センター」12において、学校の教職員や保護者等に対し、厚生労働省とも連携しながら、発達障害に関する正しい理解や支援に関する様々な教育情報、研修会等のイベント情報等をインターネットを通じて提供
- 平成29(2017)年度は、全体テーマを「通級による指導に期待されること」とし、最新情報の提供や取組の紹介、実践事例の報告、研究協議等を内容とした「発達障害教育実践セミナー」を開催
(3)障害者に対する就労支援等(文部科学省、厚生労働省)
「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭35法123)は、民間企業などに対し、雇用する労働者の一定割合(障害者雇用率)に相当する数以上の障害者を雇用することを義務づけている(障害者雇用率制度)。平成30(2018)年4月からは、精神障害者が障害者雇用率の算定基礎に加わり、民間企業の障害者雇用率は、従来の2.0%から2.2%に引き上げられた。
厚生労働省は、障害者雇用率の達成に向け、ハローワークなどにおいて厳正な達成指導を実施しているほか、以下の取組を行っている。
- ハローワークが中心となり、地域の福祉施設、特別支援学校、医療機関などの関係機関と連携し、就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」
- 障害者本人やその保護者等の就労に対する不安や中小企業の障害者雇用に関する不安を解消するため、地域の福祉施設、特別支援学校、医療機関などの関係機関と連携し、職場実習、就労支援セミナー、事業所見学会などの実施(福祉、教育、医療から雇用への移行推進事業)
- 「障害者総合支援法」に基づく、一般就労への移行を支援する「就労移行支援」、一般就労が困難な者に対して働く場を提供する「就労継続支援」、一般就労に伴う生活面の課題に対応できるよう関係機関との連絡調整等を行う「就労定着支援」
- 精神障害や発達障害がある求職者に対する、障害特性に応じたきめ細かな就労支援
- 発達障害などによりコミュニケーション能力や対人関係に困難を抱えている若者に対する、「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」における、ハローワークに配置している専門の相談員によるきめ細かな個別相談や支援
- 障害者職業能力開発校(全国18校)における、職業訓練上特別な支援を要する障害者に重点を置きつつ、障害の特性に応じた職業訓練
- 企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関といった地域の多様な委託先における、就職に必要な知識・技能を習得するための委託訓練
文部科学省では、特別支援学校高等部や高等学校等において、労働等の関係機関と連携し、障害のある生徒の就労支援を行う就労支援コーディネーターの配置など、福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援を充実させるための研究に取り組んでいる。
(4)障害者に対する文化芸術活動の支援(文部科学省、厚生労働省)
障害の有無にかかわらず、全ての子供たちが文化芸術に親しみ、優れた才能を活かして活躍することのできる社会を築いていくことは重要である。文部科学省においては、全国の高校生が芸術文化活動の発表を行う祭典である全国高等学校総合文化祭において、特別支援学校の生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場を提供するとともに、子供たちに質の高い文化芸術を鑑賞・体験する機会を確保することを目的として、小学校・中学校等に障害のある芸術家等を派遣し、車いすダンスの披露や車いすダンス体験等の機会等を提供している。また、障害者の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施、助成対象として採択した映画作品のバリアフリー字幕や音声ガイド制作への支援等、障害者の文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいる。
(5)慢性疾病を抱える児童等や難病患者の支援(厚生労働省)
小児慢性特定疾病対策及び難病対策については、平成27(2015)年1月から「児童福祉法」(昭22法164)及び「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平26法50)に基づく医療費助成制度や児童福祉法に基づく小児慢性特定疾病児童等自立支援事業が都道府県等において実施されている。
さらに、平成27年9月に「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」、同年10月に「小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針」が策定された。
厚生労働省では、これらの法律及び基本方針に基づき小児慢性特定疾病児童等や難病患者に対して、以下のような総合的な対策を推進していくこととしている。
- 小児慢性特定疾病児童等及び難病患者の医療費の負担軽減を図るため都道府県等が実施する医療費助成について、その費用の2分の1を負担
- 小児慢性特定疾病児童等の自立を支援するため、児童福祉法に基づき都道府県等が実施する相談支援事業、相互交流支援事業などの小児慢性特定疾病児童等自立支援事業について、その費用の2分の1を負担
- 小児期から成人期への移行期の小児慢性特定疾病児童等が個々の疾病の状況に応じ適切な医療を受け、さらに自身の疾病等の理解を深めるなどの自律(自立)支援を受けられるような移行期医療支援体制の構築を図るために必要なガイドの作成・周知を行うことで移行期医療を推進
- 症例数が少なく研究が進みにくい疾病について、データを集約し、治療に役立てるための調査研究を推進
- 専門医療機関とかかりつけ医の連携などによる、できる限り早期に正しい診断や治療が行われるために、医療提供体制を確保
- 日常生活での不安を解消していくため、難病相談支援センターなどを通じた相談支援体制を充実
- ハローワークに難病患者就職サポーターを配置し、難病相談支援センターと連携した就労支援を推進
3 非行・犯罪に陥った子供・若者の支援等
刑法犯少年の検挙人員、触法少年(刑法)の補導人員、ぐ犯少年の補導人員は、いずれも減少傾向にあり、また、軽犯罪法違反といった特別法犯少年の送致人員、触法少年(特別法)の補導人員も減少している。刑法犯少年の検挙人員について、少年の人口比においても減少しているが、刑法犯について成人の人口比と比較すると、依然として高い状態にある(第3-12図)。
年齢別にみると、触法少年(刑法)では、13歳が最も多いものの、12歳以下の占める割合が上昇傾向にあり、罪種別にみると、刑法犯少年、触法少年(刑法)ともに、窃盗が半数以上を占める。また、初発型非行(万引き、自転車盗、オートバイ盗、占有離脱物横領)の検挙人員は、減少傾向にある(第3-13図、第3-14図、第3-15図)。
刑法犯少年の非行については、14~20時の時間帯が40.9%、また、所有・消費目的によるものが61.4%となっている(第3-16図)。

(1)総合的取組
ア 関係府省庁の連携(内閣府、警察庁、法務省、文部科学省)
子供や若者による社会の耳目を集める重大な事件の発生が後を絶たないなど、子供・若者による非行・犯罪への対策は予断を許さない状況となっている。
政府では、非行対策の推進について密接な連絡や情報交換、協議等を行うため、子ども・若者育成支援推進本部の下に少年非行対策課長会議を設置し、関係府省庁が連携して対策の充実強化を図っている13。
イ 家庭、学校、地域の連携
非行は、家庭、学校、地域のそれぞれが抱えている問題が複雑に絡み合って発生している。このため、家庭、学校、地域のより一層の緊密な連携の下に、一体的な非行防止と立ち直り支援を推進していく必要がある。
① 「サポートチーム」(内閣府、警察庁、法務省、文部科学省)
「サポートチーム」は、多様化、深刻化している少年の問題行動の個々の状況に着目し、的確な支援を行うため、学校、警察、児童相談所、保護観察所といった関係機関がチームを構成し、適切な役割分担の下に連携して対処するものである。関係機関は、日常的なネットワークの構築などを通じて、「サポートチーム」の編成やその活動において緊密な連携を図っている。
警察庁と文部科学省は、サポートチームの効果的な運用を図るため、管区警察局との共催により問題行動に対する連携ブロック協議会を開催し、緊密な連携を図っている。
② 学校と警察の連携(警察庁、文部科学省)
子供の非行や校内暴力を防止するためには、学校と警察が密接に連携する必要がある。このため、警察署の管轄区域、市町村の区域等を単位に、全ての都道府県で学校警察連絡協議会が設置されている。平成29(2017)年4月1日現在、全国の小学校、中学校、高校の約98%の参加を得て、約2,300組織の学校警察連絡協議会が設置されている。
また、非行防止や健全育成を図るため、都道府県警察と都道府県教育委員会などとの間で締結した協定や申合せに基づき、非行少年、不良行為少年その他の健全育成上問題を有する子供に関する情報を警察・学校間で通知する「学校・警察連絡制度」が各地で構築されている。
③ スクールサポーター(警察庁)
警察は、退職した警察官などをスクールサポーターとして警察署などに配置し、学校からの要請に応じて派遣するなどしている。スクールサポーターは「警察と学校の橋渡し役」として、学校における子供の問題行動への対応や、巡回活動、相談活動、安全確保に関する助言を行っている。平成29(2017)年4月1日現在、44都道府県に約860人が配置されている。
④ 更生保護サポートセンター(法務省)
処遇活動、犯罪予防活動をはじめとする更生保護の諸活動を一層促進するための拠点である「更生保護サポートセンター」が、平成29(2017)年度現在、全国に計501か所設置されている。「更生保護サポートセンター」には、保護司が駐在し、教育委員会や学校、児童相談所、福祉事務所、社会福祉協議会、警察、ハローワークといった様々な関係機関・団体と協力し、保護観察を受けている人の立ち直り支援や、非行防止セミナー、住民からの非行相談等を行っている。
⑤ 法務少年支援センター(法務省)
少年鑑別所14は、「法務少年支援センター」として、非行・犯罪に関する問題や、思春期の少年たちの行動理解等に関する知識・ノウハウを活用して、少年や保護者などの個人からの相談に応じて情報の提供・助言等を行っているほか、児童福祉機関、学校・教育関係機関、NPO等の民間団体等、青少年の健全育成に携わる関係機関・団体と連携を図りながら、地域における非行・犯罪の防止に関する活動や、健全育成に関する活動の支援を行っている。
(2)非行防止、相談活動等
ア 非行少年を生まない社会づくり(警察庁)
警察は、少年の規範意識の向上及び社会との絆の強化を図るため、「非行少年を生まない社会づくり」の取組を全国的に推進している。具体的には、問題を抱え非行に走る可能性がある少年に積極的に連絡し、地域の人々と連携した多様な活動機会の提供や居場所づくりのための取組などによってその立ち直りを図る「少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動」を推進している。また、少年事件の共犯率が成人事件と比較して高く、不良交友関係が立ち直りの大きな阻害要因となっていることから、その実態の把握に努めるとともに、少年警察ボランティアなどと連携しながら、検挙・補導、SOSを発信している少年の発見・救出、個々の少年の立ち直り支援など、その解消に向けた対策を推進している(第3-17図)。

イ 非行防止教室(警察庁、文部科学省、法務省)
警察は、職員の学校への派遣や少年警察ボランティアなどの協力により、非行防止教室を開催している。具体的な非行事例などを題材にして直接少年に語り掛けることにより、少年自身の規範意識の向上を図っている。
文部科学省は、学校、家庭、地域が十分な連携を図り、子供の豊かな人間性や社会性などを育むため道徳教育の充実を図るとともに、関係機関と連携した非行防止教室の開催などにより規範意識を養い、子供の非行防止に努めている。
法務省は、非行問題に関する豊富な知識や保護観察対象者に対する処遇経験を有する保護司が、直接小・中学校へ赴き、非行問題や薬物問題をテーマにした非行防止教室を開催したり、問題を抱えた子供への指導方法などについて教師と協議などをすることを通じて、小・中学生の犯罪・非行の未然防止と健全育成を図っている。
ウ 多様な活動機会・居場所づくりの推進(警察庁、文部科学省)
(第2章第1節1(3)「体験活動の推進」、第4章第1節3「地域全体で子供を育む環境づくり」を参照)
エ 相談活動(内閣府、警察庁、法務省、文部科学省)
地域住民に身近な市町村を中心に設立されている青少年センター(青少年の育成を図ることを目的とし、相談活動などを行う機関を指す。少年補導センターや青少年育成センターといった名称で活動)では、相談活動や街頭補導、有害環境の適正化に関する活動が行われている。青少年センターが扱う相談の内容は、非行に関するもののほか、いじめ、不登校、虐待の問題など様々である。
警察では、非行、家出及び自殺の未然防止や、犯罪、いじめ及び児童虐待などに係る被害少年の保護のための相談窓口を設け、心理学などの専門知識を有する少年補導職員や警察官などが、様々な悩みを持つ少年やその保護者からのSOSを受け止め、必要な指導や助言を行っている。また、電話相談窓口「ヤングテレホンコーナー」を設置しているほか、FAXや電子メールによる相談も受け付けるなど、相談者が利用しやすい環境の整備を行っている15。平成28(2016)年に警察が受理した相談の件数は、66,035件で、前年に比べ1,254件(1.9%)増加した(第3-18表)。相談内容をみると、少年自身からの相談では、家庭、交友問題や犯罪被害に関する悩みが多く、保護者からの相談では、家庭や非行の問題に関する悩みが多い(第3-19図)。相談後も継続的な指導・助言を必要とするケースは、11,779件で、全体の17.8%を占めている(学校における相談体制については、第2章第2節2(3)「学校における相談体制の充実」を参照)。


法務省は、子供の人権問題について、人権擁護委員や法務局・地方法務局の職員による相談対応を行っている。また、少年鑑別所でも、「法務少年支援センター」として子供の非行や問題行動に悩む保護者や学校関係者などからの相談に応じており、臨床心理学などを専門とする職員が助言や情報提供を行っている。「更生保護サポートセンター」でも、犯罪予防活動の一環として、保護司が子供の非行や問題行動で悩む親などからの相談に応じている。
オ 補導活動(内閣府、警察庁)
少年の非行を防止する上で、問題行動の初期段階での適切な対応が極めて重要である。
警察は、全国に設置された少年サポートセンター(第3-20図)を中心として、警察が委嘱する少年警察ボランティアなどと連携し、繁華街や公園といった非行が行われやすい場所に重点を置いて、家出少年などの発見・保護活動及び深夜はいかいなど不良行為少年に対する補導活動を推進し、問題行動を早期に発見して、少年及びその保護者に対する的確な助言・指導を行っている。

市町村に置かれている青少年センターでも、市町村などから委嘱された少年補導委員による街頭補導や有害環境の適正化の活動が行われている。
不良行為による補導人員は平成17(2005)年以降減少傾向にある(第3-21図)。
カ 事件の捜査・調査
① 警察(警察庁)
警察は、非行少年を発見した場合は、必要な捜査や調査を行い、検察官や家庭裁判所、児童相談所といった関係機関へ送致または通告するほか、その少年の保護者に助言を与えるなど、非行少年に対して適切な指導がなされるよう措置している。
- 犯罪少年(14歳以上20歳未満で罪を犯した者)
「刑事訴訟法」(昭23法131)や「少年法」(昭23法168)に規定する手続に従って、必要な捜査を遂げた後、罰金以下の刑に当たる事件は家庭裁判所に、禁錮以上の刑に当たる事件は検察官に送致または送付する。
- 触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした者)
保護者がいないか保護者に監護させることが不適当と認められる場合には、児童相談所に通告する。その他の場合には、保護者に対して適切な助言を行うなどの措置を講じている。また、故意の犯罪行為により被害者を死亡させるなど罪に触れる行為をしたと考えられる場合には、事件を児童相談所長に送致しなければならない。
- ぐ犯少年(20歳未満で一定の事由があって、その性格や環境に照らして、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある者)
18歳以上20歳未満の場合は、家庭裁判所に送致している。14歳以上18歳未満の場合は、事案の内容や家庭環境から判断して家庭裁判所か児童相談所のいずれかに送致または通告している。14歳未満の場合には、児童相談所に通告するか、その非行の防止を図るために特に必要と認められる場合には保護者の同意を得た上で補導を継続的に実施する。
② 検察庁(法務省)
検察官は、
- 警察からの送致などを受けて必要な捜査を行い、犯罪の嫌疑があると認めたときは、事件を家庭裁判所に送致する。犯罪の嫌疑がなくとも、ぐ犯などの事由がある場合には、同様に事件を家庭裁判所に送致している。その際、少年に刑罰を科すのが相当か、保護観察や少年院送致といった保護処分に付すのが相当かなど、処遇に関する意見を付している。
- 家庭裁判所から少年審判に関与すべき旨の決定があった場合に、これに関与し、裁判所の事実認定を補助している。
- 家庭裁判所から刑事処分相当として検察官に送致された少年については、原則として公訴を提起している。
検察官が十分な捜査を行い事案を解明した上で適切な処理をすることは、少年犯罪に対する最も基本的で重要な対策であり、今後も一層充実させることとしている。
キ 非行集団対策(警察庁)
ひったくりや路上強盗といった街頭犯罪は、その検挙人員の約4割が少年である(第3-22図)。20歳未満の暴走族の人員は減少傾向にあるものの、依然、暴走族や非行少年グループといった非行集団によって敢行される各種の犯罪は、我が国の治安にとって看過できないものとなっている(第3-23図)。非行集団は、暴走行為や集団的暴行事件などの集団的な違法行為を敢行するだけでなく、所属する少年が特殊詐欺をはじめとした各種の犯罪を敢行するきっかけを作りだしていることが少なくない。
警察は、少年部門、交通部門、刑事部門の連携を強化して、非行集団の実態把握を徹底し、
- 非行集団やその予備軍となる非行少年などを、各種法令を活用して徹底的に取り締まることによる、非行集団の弱体化と解体
- 少年の非行集団及び暴力団への加入阻止や離脱支援
- 関係機関と連携した車両の不正改造防止対策や道路交通環境の整備などの暴走族対策
などの取組を推進している。
(3)薬物乱用防止(内閣府、警察庁、文部科学省、厚生労働省、法務省)
平成29(2017)年中における覚醒剤事犯で検挙された30歳未満の者は1,317人で長期的に減少傾向にある。一方、大麻事犯で検挙された30歳未満の者は平成26(2014)年から増加に転じ、平成29年中の検挙人員は1,471人となり、覚醒剤事犯の検挙人員を上回った。大麻については、検挙された者の約半数が30歳未満の者である(第3-24図)。また、危険ドラッグ乱用者の検挙人員では、2割弱を30歳未満の者が占めている(第3-25表)。

子供や若者の覚醒剤や大麻等の乱用の実態を把握し、その乱用の危険性や有害性について、広報啓発、教育に取り組むことが重要である。
政府では、犯罪対策閣僚会議の下に設置された薬物乱用対策推進会議において策定された「第四次薬物乱用防止五か年戦略」(平成25年8月)及び「危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策」16(平成26年7月)に基づき、関係府省庁が連携して、薬物乱用の根絶に向けた総合的な対策を推進している。
内閣府は、薬物乱用の危険性や正しい知識を青少年に分かりやすく伝えるため、薬物乱用対策マンガを内閣府ホームページに掲載するなど、薬物依存の怖さを伝えるとともに、相談窓口の周知を図るなどの啓発活動を推進している。
警察は、危険ドラッグを含む最近の薬物犯罪情勢や政府全体の薬物対策の取組強化を踏まえ、薬物密輸・密売組織の実態解明及びその壊滅に向けた取締り、関係機関との連携による水際対策の強化などにより、薬物供給を遮断するとともに、規制薬物や指定薬物の乱用者の徹底検挙、子供に対する薬物乱用防止教室、大学生や新社会人に対する薬物乱用防止講習会などを行い、薬物需要の根絶を図っている。
法務省は、少年院において、薬物に対する依存のある者を対象に、薬物非行防止指導17を実施している。刑事施設では、麻薬や覚醒剤などの薬物に対する依存がある受刑者を対象に、薬物依存離脱指導18を実施している。保護観察所では、保護観察に付されている者に対し、自発的意思に基づく簡易薬物検出検査を実施するとともに、一定の条件を満たした者に対して認知行動療法などに基づく薬物再乱用防止プログラムを実施している。また、再犯防止・社会復帰支援をより一層強化するため、厚生労働省と共同し、「薬物依存のある刑務所出所者等の支援に関する地域連携ガイドライン」を策定するなど、地域の医療・保健・福祉機関や民間支援団体との連携の強化、施設内処遇と社会内処遇との一貫性を考慮した処遇の充実に努めている。
文部科学省は、薬物乱用防止教育の充実を図るため、厚生労働省や警察庁と連携して、小学校、中学校、高校において薬物乱用防止教室を開催している。また、厚生労働省と連携して、薬物についての有害性・違法性に関する正しい知識の周知に努めるとともに、小学生から大学生などに向けて、薬物乱用防止に係る啓発資料を作成し、広く配布している。
厚生労働省は、以下の取組を行っている。
- 若者の乱用薬物の入手先となっている、インターネットを利用した密売事犯や外国人による密売事犯などに対する取締りの強化
- 関係機関・団体との連携した麻薬・覚醒剤乱用防止運動などの啓発活動の実施、派遣要請に応じた学校やイベント会場等への薬物乱用防止の専門家の訪問等の実施、情報を一元的に収集・提供するための「あやしいヤクブツ連絡ネット」の運用
- 危険ドラッグの指定薬物への迅速な指定
- 指定薬物である疑いのある物品などについて、検査命令及び販売等停止命令の実施
- 危険ドラッグのインターネット販売店について、プロバイダなどに対して削除要請の実施
- 依存症相談拠点の設置による地域における薬物乱用防止・薬物依存症に関する相談支援体制の充実
- 薬物依存症治療の専門医療機関及び治療拠点機関の選定による医療提供体制の充実
- 薬物依存症者やその家族に対する支援を行う自助グループを含む民間団体への支援
- 再乱用防止対策として、都道府県と協力した薬物依存症の正しい知識の普及や、保健所・精神保健福祉センターにおける薬物相談窓口における薬物依存症者やその家族に対する相談事業・家族教室の実施
(4)少年審判(最高裁判所)
家庭裁判所は、非行少年に対する調査・審判を行い、非行があると認めるときは、教育的な働き掛けも行いながら、少年が非行に至った原因などを検討し、その少年にとって最も適切と考えられる処分を決定する。保護処分には、保護観察、児童自立支援施設等送致及び少年院送致の三種類があり、審判を開いたり保護処分に付したりする必要がない場合などには、審判不開始や不処分にすることもある。犯行時に14歳以上の者に係る禁錮以上の刑に当たる罪の事件について刑事処分を相当と認めるときは、検察官に送致する(第3-26図)。

ア 受理の状況
平成29(2017)年における少年保護事件の全国の家庭裁判所での新規受理人員は、73,353人であった。内訳をみると、窃盗(25.9%)、道路交通保護事件(23.1%)、過失運転致死傷等(21.3%)が多い。近年、少年保護事件の新規受理人員は減少傾向が続いており、平成29年は前年と比較して8,645人(10.5%減)減少した(第3-27図)。

イ 処理の状況
平成29(2017)年における少年保護事件の既済人員(全人員(延べ人員)で全事件数と同数。以下同じ。)は74,441人で、このうち一般事件(交通関係事件を除く少年保護事件。以下同じ。)が41,497人(全体に占める割合55.7%)、交通関係事件((無免許)過失運転致死傷、(無免許)過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱、業務上(重)過失致死傷、(無免許)危険運転致死傷及び道路交通保護事件。以下同じ。)が32,944人(同44.3%)となっている。終局決定別にみると、審判不開始が38.4%と最も多く、次いで保護処分が22.7%となっている(第3-28図)。

① 保護処分
保護処分に付された者は16,899人で、その内訳は、一般事件が9,278人(54.9%)、交通関係事件が7,621人(45.1%)である。前年と比較し、2,305人(12.0%減)減少している。
- 保護観察
保護観察に付された少年は14,540人で、その内訳は、一般事件が7,120人(49.0%)、交通関係事件が7,420人(51.0%)である。前年と比較し1,868人(11.4%減)減少している。交通関係事件のうち5,094人(68.7%)は交通短期保護観察に付されたものである。
- 児童自立支援施設等送致19
児童自立支援施設や児童養護施設に送致された者は166人である。
- 少年院送致
少年院送致となった者は2,193人で、その内訳は、一般事件が1,992人(90.8%)、交通関係事件が201人(9.2%)と、一般事件が多くを占める。前年と比較して、一般事件は366人(15.5%減)、交通関係事件は57人(22.1%減)減少している。
② 検察官送致
刑事処分が相当であるとして検察官送致となった者は2,526人で、その多くを交通関係事件が占める(2,423人(95.9%))。前年と比較して284人(10.1%減)減少している。
③ 児童相談所長等送致20
知事や児童相談所長に送致された者は、159人である。
④ 審判不開始、不処分21
裁判官や家庭裁判所調査官は、調査や審判の段階で、少年に対し、その問題性を見極めた上で、以下のような再非行防止に向けた働き掛けをしている。
- 非行の内容を振り返らせ、被害の実情を伝えるなどする中で必要な助言・指導を行い、反省を深めさせる。
- 学校などと連絡を取って生活態度や交友関係の改善に向けた協力態勢を築く。
- 「犯罪被害を考える講習」や地域の清掃といった社会奉仕活動への参加を促す。
また、再非行を防止するために家族が果たす役割が大きいことから、少年の非行に家族関係が及ぼしている影響を見極めた上で、問題解決に向けて家族関係の調整を行ったり、少年と保護者に社会奉仕活動への参加を促したりするなどの働き掛けを行っている。ほかにも、保護者会を実施して保護者の気持ちや経験を語り合う場を設けることにより、保護者の少年に対する指導力を高めたり、保護者が自らの養育態度を見つめ直し、監護者としての責任を自覚するように働き掛けたりしている。このような働き掛けも行った上で、その少年について審判を開いたり保護処分に付したりする必要がないと考える場合には、審判不開始や不処分とすることがある。
(5)加害者に対するしょく罪指導と被害者への配慮
ア 被害者への情報提供などの様々な制度や取組(警察庁、法務省、最高裁判所)
警察は、被疑少年の健やかな育成に留意しつつ、捜査上の支障のない範囲内で、被害者などの要望に応じて、捜査状況などに関する情報を可能な限り被害者などに提供するように努めている。
法務省は、
- 全国の検察庁において、少年事件の被害者を含む全ての被害者やその親族の心情などに配慮するという観点から、被害者に、事件の処理結果などの情報を提供している。
- 少年院、地方更生保護委員会、保護観察所において、加害少年の健全な育成に留意しつつ、被害者の希望に応じて、少年院送致処分や保護観察処分を受けた加害少年に関し、少年院での処遇状況に関する事項や仮退院審理に関する事項、保護観察の開始・終了や保護観察中の処遇状況に関する事項を通知している。
- 検察庁、地方更生保護委員会、保護観察所において、被害者の希望に応じて、刑事処分となった加害少年に関し、事件の処理結果や、裁判結果、受刑中の処遇状況に関する事項、仮釈放審理に関する事項、保護観察の開始・終了や保護観察中の処遇状況に関する事項を通知している。
- 「更生保護法」(平19法88)に基づき、地方更生保護委員会が、少年院からの仮退院の審理や刑事処分となった少年の仮釈放の審理において被害者の意見などを聴取する意見等聴取制度と、保護観察所が被害者の心情などを保護観察中の加害少年に伝達する心情等伝達制度を実施している(第3-29図)。
家庭裁判所は、
- 「少年法」に基づく、一定の重大事件の被害者による少年審判の傍聴や、被害者などに対する審判状況の説明といった被害者のための制度22の適切な運用に努めている。
- 調査や審判の段階で、被害者の心情などに十分配慮しながら、被害者から話を聞くなどして被害の実情や被害感情の把握に努め、被害者の声を少年審判手続に反映するよう努めている。
イ 被害者の心情を踏まえた適切な加害者処遇(法務省)
近年、刑事司法の分野において、被害者やその親族の心情などについて、一層の配慮を行うことが求められるようになってきている。
少年院や少年刑務所等では、「被害者の視点を取り入れた教育」が意図的・計画的に実施されるよう、矯正教育や改善指導の充実に努めている。この教育により、自分の犯した罪と向き合い、犯した罪の大きさや被害者の心情などを認識し、被害者に誠意をもって対応していくとともに、再び罪を犯さない決意を固めさせるための働き掛けを行っている。
保護観察でも、個々の事案の状況に応じ、その処遇過程において、少年が自らの犯罪と向き合い、犯した罪の大きさや被害者の心情などを認識し、被害者に対して誠意をもって対応していくことができるようになるための助言指導を行っている。また、特に、被害者を死亡させたり、その身体に重大な傷害を負わせたりした事件により保護観察に付された少年に対しては、被害者に対する謝罪の気持ちをかん養し、具体的なしょく罪計画を策定させる指導を実施している。
(6)施設内処遇を通じた取組等
ア 少年鑑別所(法務省)
少年鑑別所は、①家庭裁判所等の求めに応じ、鑑別対象者の鑑別23を行うこと、②観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される者などに対し、必要な観護処遇を行うこと、③地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助を行うことを業務とする法務省所管の施設である。観護措置による収容期間は、原則として2週間以内であり、特に必要のあるときは、家庭裁判所の決定により、期間が更新(延長)されることがある(最長8週間)。鑑別の結果は、鑑別結果通知書として家庭裁判所に送付されて審判の資料となるほか、保護処分が決定された場合には、少年院、保護観察所に送付され、処遇の参考にされる。また、少年鑑別所の在所者については、心身の発達途上にあり、その健全な育成に配慮することが重要と考えられることから、在所者の自主性を尊重しつつ、情操を豊かにし、健全な社会生活を営むために必要な知識及び能力を向上させるための支援を実施している。
法務省は、少年鑑別所における鑑別・観護処遇の充実を図っている。特に、平成25(2013)年度から導入した、再非行の可能性及び教育上の必要性を定量的に把握する「法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)」を効果的に活用し、再非行防止に資する鑑別の充実に取り組んでいる。
イ 少年院・少年刑務所等(法務省)
少年院は、家庭裁判所において少年院送致の保護処分に付された者と、16歳に達するまでの間に刑の執行を受ける者を収容し、矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行う施設である24。矯正教育は、少年の特性に応じ、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導、特別活動指導を組み合わせて行うものであり、少年の特性に応じた矯正教育の目標、内容、期間や実施方法を具体的に定めた個人別矯正教育計画を作成し、きめ細かく行われている。
懲役や禁錮の実刑の言渡しを受けた少年は、刑執行のため、主に少年刑務所等に収容される。少年刑務所等は、一人一人に個別担任を指定して面接や日記指導といった個別的な指導を行うなど、心身が発達段階にあり可塑性に富む少年受刑者の特性に応じた矯正処遇を、各少年の資質と環境の調査の結果に基づいて実施している。
また、法務省は、少年院において、家族関係に葛藤を抱えた在院者も少なくないことから、家族関係調整のために、在院者の保護者その他相当と認められる者に対して、在院者の処遇に関する情報の提供、職員による面接の実施、教育活動への参加の促進、保護者会・講習会の積極的な開催に努めるとともに、必要に応じ、指導、助言その他の適当な措置をとっている。
ウ 児童自立支援施設(厚生労働省)
児童自立支援施設25は、不良行為を行った子供や行うおそれのある子供等に対して、その自立を支援することを目的として、一人一人の状況に応じ、生活指導、学習指導、職業指導、家庭環境の調整を行う施設である。
厚生労働省は、児童自立支援施設運営指針26などにより、児童自立支援施設の質の確保と向上を図っている。
(7)社会内処遇を通じた取組等(法務省)
ア 少年院からの仮退院、少年刑務所等からの仮釈放
少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放とは、収容されている者を、法律や判決、決定によって定められている収容期間の満了前に仮に釈放し、その円滑な社会復帰を促す措置である。少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放を許された者は、収容期間が満了するまでの間、保護観察を受ける。平成28(2016)年における少年院仮退院者は、全出院者の99.7%に当たる2,743人であった。
保護観察所は、少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放に先立って、出院・出所後の少年を取り巻く生活環境(家庭、職場、交友関係など)が、その改善更生を促す上で適切なものとなるよう、引受人などとの人間関係や出院・出所後の職業などについて調整を行い、受入体制の整備を図っている。
イ 保護観察
保護観察は、非行のある少年に、社会生活を営ませながら、その改善更生を図る上で必要な一定の事項(遵守事項と生活行動指針)を守って健全な生活をするよう指導監督するとともに、自助の責任を踏まえつつ、就学や就職などについて補導援護することにより、少年の改善更生を促すものである27。保護観察官と民間ボランティアである保護司とが協働して、その実施に当たっている。平成28(2016)年に保護観察所が新たに開始した保護観察事件数の53.9%に当たる19,047件が、家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年や地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院を許された少年の事件であった。保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。)及び少年院仮退院者について、平成28年における保護観察開始人員の非行名別構成比を男女別にみると、保護観察処分少年は、男女共に、窃盗、道路交通法違反の順に高く、次いで、男子は傷害、女子は過失運転致死傷であった。少年院仮退院者は、男子は、窃盗、傷害、詐欺の順に高く、女子は、覚せい剤取締法違反、窃盗、傷害の順に高かった。
複雑かつ困難な問題を抱えた少年に対しては、保護観察官による直接的関与の程度を強めるなどにより、重点的な働き掛けを行っている。また、少年の持つ問題性やその他の特性を類型化し、各類型に焦点を当てた処遇を実施している。
北海道雨竜郡沼田町の「沼田町就業支援センター」では、主に少年院を仮退院した少年を対象とし、旭川保護観察所沼田駐在官事務所に併設された宿泊施設に居住させ、濃密な保護観察を実施するとともに、同町が運営する農場で農業実習を受けさせ、改善更生の促進を図っている28(第3-30図)。

また、保護観察所では、少年院に収容されている者の生活環境の調整や少年に対する保護観察処遇の中で、保護観察官や保護司が家族と面接を行っている。家族関係や親の養育態度に問題が認められる場合には、子供の監護に関する責任を自覚させるために、保護者会を実施するなどして監護能力が向上するよう保護者に対し働き掛けるとともに、適切に監護に当たるよう指導や助言を行っている。さらに、家庭裁判所や少年院でなされた保護者への働き掛けとの連携に努め、それらと一貫性のある生活環境の調整や保護観察処遇を実施するなど、保護処分の効果が最大限のものとなるよう努めている。
ウ 処遇全般の充実・多様化
① 関係機関の連携
非行の深刻化に対処するため、少年のプライバシーなどとの調整を図りながら、関係機関が情報を共有し、各機関のなすべき役割を果たしていく必要がある。
法務省は、以下の取組により、保護処分の適正かつ円滑な執行を図っている。
- 全国の少年院において、家庭裁判所、地方更生保護委員会、保護観察所、少年鑑別所といった関係機関の担当者が一堂に会し、在院者の少年院入院後の処遇経過や今後の処遇方針、保護関係調整について検討を行う処遇ケース検討会を実施
- 家庭裁判所、少年鑑別所、少年院、地方更生保護委員会、保護観察所において、少年院や保護観察における効果的な処遇と連携の在り方を検討するため、定期的に協議会を開催
- 処遇機関において、必要に応じ、学校、警察、福祉施設の職員とも個別事例の検討を実施
② 社会参加活動や社会貢献活動による改善更生の取組
保護観察所は、社会性に乏しい少年を社会体験的な活動に参加させることにより、その健全育成を図る社会参加活動を実施している。また、平成25(2013)年6月に公布された「刑法等の一部を改正する法律」(平25法49)により、「更生保護法」に基づく保護観察の特別遵守事項の類型の一つに、社会貢献活動に関する規定が加えられ、平成27(2015)年6月に施行された。これは、少年や若者を中心とする保護観察対象者が、福祉施設での介護補助活動や公共の場所での清掃活動など社会に役立つ活動を行い、他人から感謝されることや周囲と協力しつつ任された役割をやり遂げることにより、自己有用感や社会性、規範意識の向上を図るためのものである。
(8)非行少年に対する就労支援等(法務省、厚生労働省)
少年院や少年刑務所等は、処遇の一環として、就労に対する心構えを身に付けさせ、就労意欲を喚起し、各種の資格取得を奨励している。また、ハローワークなどとの連携による職業講話、職業相談、職業紹介、求人情報の提供といった就労支援を実施している(第3-31図)。

保護観察所は、矯正施設や家族、学校と協力し、出院・出所後の少年の就労先の調整・確保に努めている。保護観察中の無職少年に対しては、その処遇過程において、就労意欲がない原因や意欲があっても就労できない理由、就労しても継続しない理由など、不就労の原因となっている問題点の把握に努め、その解消を図るための助言指導を行っている。平成26(2014)年度から本格実施してきた「更生保護就労支援事業」(一部の保護観察所が民間法人に委託し、矯正施設在院・在所中から就労に至るまでの、専門家による継続したきめ細やかな支援を実施するもの)について、平成29(2017)年度は20庁に拡大をして実施している(第3-32図)。さらに、協力雇用主29に対する支援の強化として、平成27(2015)年度から「就労・職場定着奨励金」及び「就労継続奨励金」の支給を実施しているほか、引き続き、出院・出所後の若者の雇用に理解を示すソーシャルファーム(労働市場で不利な立場にある人々のための雇用機会の創出・提供に主眼を置いてビジネス展開を図る企業・団体など)の開拓・確保に努めていく。

ハローワークは、少年院や少年刑務所等、保護観察所と連携して、出院・出所予定者や保護観察に付された少年を対象とした職業相談、職業紹介、セミナー・事業所見学会、職場体験講習、トライアル雇用といった就労支援を推進している。また、就労後の相談、問題点の把握、問題解決のための助言など、就労継続のための支援を行っている。
厚生労働省は、施設などを退所した若者に対し、日常生活上の援助や就業支援を行う「自立援助ホーム」(児童自立生活援助事業)の充実に努めている(第3章第3節1オ「施設退所児童等の自立支援策の推進」も参照)。
4 子供の貧困問題への対応
児童のいる世帯のうち、ひとり親家庭の世帯の割合は上昇傾向にあるが(第3-33図)、ひとり親家庭の平均所得は、他の世帯と比べて大きく下回っており、子供の大学進学率も低い状況にある(第3-34表)。家庭の経済状況等によって、子供や若者の将来の夢が断たれたり、進路の選択肢が狭まることのないように、教育、生活面、親の就労など、様々な支援が求められている。

子供の貧困問題への対応については、平成25(2013)年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(平25法64)が成立し、平成26(2014)年1月に施行されたことを受け、政府において子供の貧困対策を総合的に策定し、実施することとなった。本法を踏まえ、政府は、同年8月に子供の貧困対策に関する基本的な方針をはじめ、子供の貧困に関する指標、指標の改善に向けた当面の重点施策、子供の貧困に関する調査研究等及び施策の推進体制等を定めた「子供の貧困対策に関する大綱」(以下「子供の貧困大綱」という。)を策定し、子供の貧困対策を総合的に推進することとした。子供の貧困大綱については、策定後5年を目途に見直しを検討するとされており、「子供の貧困対策に関する有識者会議」を開催し、施策の実施状況や対策の効果等の検証・評価を行っている。
経済的に厳しい状況に置かれたひとり親家庭や多子世帯の自立のためには、①支援が必要な者に行政のサービスを十分に行き届けること、②複数の困難な事情を抱えている者が多いため一人一人に寄り添った伴走型の支援を行うこと、③ひとりで過ごす時間が多い子供たちに対し、学習支援も含めた温かい支援を行うこと、④安定した就労を実現することなどが重要であり、平成27(2015)年12月に「ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト」を策定し、就業による自立に向けた支援を基本にしつつ、子育て・生活支援、学習支援などの総合的な支援を実施することとした。
また、平成28(2016)年6月に策定された「ニッポン一億総活躍プラン」においても、希望する教育を阻む制約の克服や子育てが困難な状況にある家族・子供等への配慮・対策等の強化のための施策などについて、今後を見据えてどのように展開していくか示されたところである。さらに、平成29(2017)年12月に策定された「新しい経済政策パッケージ」においては、幼児教育の無償化の加速や、所得の低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を実現すること等を定めている。
ア 教育の支援(文部科学省、厚生労働省)
文部科学省では、家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供が質の高い教育を受けられるよう、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない形での教育費負担の軽減に取り組んでいる(第3-35図)。
初等中等教育段階においては、次の取組を行っている。
- 幼稚園児の保護者に対する経済的負担の軽減や、公私立幼稚園間における保護者負担の格差の是正を図るため、入園料や保育料を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対し、幼稚園就園奨励費補助金により所要経費の一部補助を行っている。平成29(2017)年度は、市町村民税非課税世帯第2子を無償にするとともに、低所得のひとり親世帯等について負担軽減措置の更なる拡充を行ったところであり、平成30(2018)年度は、年収約360万円未満相当世帯(市町村民税所得割課税額77,100円以下)について保護者負担の軽減を図る。
- 経済的理由により小学校・中学校への就学が困難と認められる子供の保護者に対して、各市町村が学用品の給与などの就学援助を行っている。要保護児童生徒の保護者への援助については、平成29年度より「新入学児童生徒学用品費等」の国庫補助単価の引き上げを行うとともに、入学前に支給した場合についても国庫補助の対象とした。
- 高校生等に対しては、高等学校等の授業料に充てるために高等学校等就学支援金を支給している。また、非課税世帯及び生活保護世帯の授業料以外の教育費負担を軽減するため、各都道府県が実施する高校生等奨学給付金事業の支援を行っており、平成29年度は非課税世帯への給付額の増額を行った。平成30年度においても、引き続き非課税世帯の給付額の増額を図る。
また、高等教育段階における取組としては、意欲と能力のある学生などが経済的理由により修学を断念することがないよう、独立行政法人日本学生支援機構が実施する大学等奨学金事業の充実や、各大学が実施する授業料減免への支援を行っている。特に大学等奨学金事業については、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しするため、平成29年度に給付型奨学金の創設・先行実施とともに、無利子奨学金の貸与基準を満たす希望者全員に対する貸与を実現した。平成30年度においては、給付型奨学金制度の本格的実施とともに、引き続き、無利子奨学金の貸与基準を満たす希望者全員への貸与の着実な実施を図る。
さらに、全ての子供が集う場である学校を貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして位置付け、
- 家庭環境等に左右されず学校に通う子供の学力が保障されるよう、教職員等の指導体制の充実
- 福祉部局等との連携を図るスクールソーシャルワーカーの配置の拡充や貧困・虐待対策の重点加配
等に取り組んでいる。
さらに、地域の教育資源を活用した子供の貧困対策として、
- 困難を抱える親子が共に学び育つことを支援する「地域の教育資源を活用した教育格差解消プラン」の実施
- 学習が遅れがちな中学生・高校生等を対象とする原則無料の学習支援(地域未来塾)の拡充
に取り組んでいる。
厚生労働省は、平成27(2015)年4月1日に施行された「生活困窮者自立支援法」(平25法105)に基づき、生活保護受給世帯の子供を含む生活困窮家庭の子供に対する学習支援事業を制度化し、貧困の連鎖の防止のための取組を強化している。この制度化により、学習面の支援はもちろんのこと、子供の居場所づくり・日常生活の支援や家庭訪問、進路相談、親への養育支援など、各自治体において地域の実情に応じ、創意工夫をこらした支援事業が実施されている。
また、平成30年度より、高校を中退した人、中学卒業後進学していない人などを含む「高校生世代」や小学生等に対する支援の拡充に取り組んでいる。
イ 生活の支援(厚生労働省)
厚生労働省では、平成28(2016)年度においては、支援を必要とするひとり親が行政の相談窓口に確実につながるよう、相談窓口に関する分かりやすい情報提供やスマートフォンで検索できる支援情報ポータルサイトの活用等による相談窓口への誘導の強化を行いつつ、ひとり親家庭の相談窓口において、子育て・生活に関する内容から就業に関する内容まで、ワンストップで寄り添い型支援を行うことができる体制を整備し、必要に応じて、他の機関につなげることにより、総合的・包括的な支援を行う体制整備を行った。
また、相談窓口の認知度を高めるため、窓口の愛称を「こどもすくすくスクエア」と、相談員名を「こどもすくすくサポーター」とすること等を決定した。
さらに、「母子及び父子並びに寡婦福祉法」(昭39法129)等に基づき、ひとり親家庭等の実情に応じた自立支援策を総合的に展開している。
また、
- 放課後児童クラブ等終了後にひとり親家庭の子供の生活習慣の習得・学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくり
- ひとり親家庭等の自立を促進するため、子供の修学等に必要な資金の貸付けを行う母子父子寡婦福祉資金貸付金による経済的支援
- ひとり親に保証人がいない場合でも借りやすい仕組みとするため、保証人なしの場合に有利子となる資金の利率の引下げ
を行った。
ウ 保護者に対する就労の支援(厚生労働省)
厚生労働省では、平成29(2017)年度において、自立支援教育訓練給付金について、雇用保険の受給資格があり、一般教育訓練給付(費用の2割:上限10万円)の支給を受けることができるひとり親に対しても、費用の6割(上限20万円)との差額を上乗せして支給することとした。平成30(2018)年度においては、高等職業訓練促進給付金の支給を受け、准看護師養成機関を卒業した者が、引き続き、看護師の資格を取得するために、養成機関で修学する場合には、通算3年分の給付金を支給することとしている。
エ 住宅の支援(国土交通省)
国土交通省は、ひとり親世帯・多子世帯等の子供を育成する家庭など住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定確保を図るため、低廉な家賃での公的賃貸住宅の供給の促進、子育て支援施設等の併設による公的賃貸住宅団地の福祉拠点化への支援などを推進しており、平成29(2017)年度には民間賃貸住宅や空き家を活用した住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度等を内容とする新たな住宅セーフティネット制度を創設し、住宅の改修や入居者負担の軽減等の支援を実施している。さらに、平成30(2018)年度から、既存の公営住宅や改良住宅の大規模な改修と併せて、子育て支援施設等の生活支援施設の導入を図る取組に対しても支援を行う。
オ 経済的支援(厚生労働省)
厚生労働省は、児童扶養手当について、平成30(2018)年8月支給分から
- 全部支給に係る所得制限限度額を30万円引き上げ
- 手当額の算定基礎となる所得額から、公共用地の取得に伴う土地代金等を控除
する見直しを行う予定としている。また、支払回数について、現行の年3回から年6回に増やすための関連法案を提出した。
さらに、未婚のひとり親家庭の母又は父を対象に、保育料の軽減や高等職業訓練促進給付金等の支給額の算定等において、寡婦控除又は寡夫控除のみなし適用を実施できるよう、各制度等の政令や通知を改正することとしている。
カ 調査研究等(内閣府)
子供の貧困対策を総合的に推進するに当たり、子供の貧困の実態を適切に把握した上で、そうした実態を踏まえて施策を推進していく必要がある。子供の貧困大綱においては、子供の貧困対策を更に適切に推進していくため、必要となる新たな指標の開発に向けた調査研究の実施について検討することとされている。平成29(2017)年度は、内閣府において、子供たちが置かれている貧困の状況及び実際に行われている各種の支援の実態を把握するため、地域における子供の貧困対策の実施状況及び実施体制についてアンケート調査を実施し、現状の把握・分析を行った。また、ヒアリングにより、地方自治体における先進事例を収集するとともに、対象自治体における子供の貧困対策の施策体系や施策の効果等について、分析を行った。
キ 官公民の連携した取組(内閣府、文部科学省、厚生労働省)
内閣府、文部科学省、厚生労働省及び独立行政法人福祉医療機構は、子供の貧困対策が国を挙げて推進されるよう、官公民の連携・協働プロジェクトとして「子供の未来応援国民運動」を推進している。主な事業としては、各種支援情報の発信や支援活動を行う団体とその活動をサポートする企業等とのマッチングの推進、民間資金を活用した「子供の未来応援基金」による草の根で支援を行うNPO等に対する支援等が挙げられる。
このうち、「子供の未来応援基金」については、企業や個人に子供の貧困に対する理解を求め、協力を呼び掛けてきた結果、平成29(2017)年度末時点で約9億7,300万円の寄付が寄せられ、平成28(2016)年秋の第1回支援に続き、平成30(2018)年1月に第2回支援として、公募に申請のあった352団体から、基金事業審査委員会による審査等を経て、79団体を選定し、同年4月からの活動に支援金を交付することが決定された。
また、内閣府では、「地域子供の未来応援交付金」により、地方自治体が地域の実情に応じて子供の貧困対策を進めていくため、関係行政機関(子供の貧困担当部署、教育・福祉部門等)、企業、NPO等との地域ネットワークを形成するための取組を支援している。平成29年度においては、居場所づくりや相談窓口の設置等子供たちと「支援」を実際に結び付ける事業を実施する過程を通じて、関係行政機関等による連携体制を深化させる事業の実施を可能とするなど、より効果的な事業となるよう見直しを行った。
COLUMN NO.4
地域に広がる子供の貧困対策のネットワーク
「子供の未来応援基金」を活用した支援事業の中から、地域における支援ネットワークづくりを進める団体の取組を紹介する。

NPO法人山科醍醐こどものひろばでは、「すべての子どもが、よりよい子ども時代を過ごすことができる環境を」という思いから、貧困に関係なく全ての子供たちが心豊かに育つ社会を目指して活動している。
学習支援や放課後の居場所づくり、遊びの支援など、様々な活動を行っている。活動に際しては、学校と連携して子供の参加につなげているほか、保護者や学校の関係者に限らず、子供に寄り添える大人が周りにいる地域づくりを目指して、ボランティアの参画を呼びかけている。ボランティアには、参加登録までに、事前の説明や複数回の体験など段階を設けることで、参加の不安を取り除く工夫をしている。また、教員・民生委員・児童委員・自治会などを中心に子供の貧困対策に興味のある方への子供支援のノウハウに係る研修会や、これから支援活動を行う予定の団体へのコンサルティングなども行っており、子供の貧困対策に取り組む地域ネットワークの拡大に努めている。
そのほか、山科・醍醐地域にある4拠点での食事、学習支援、居場所などの提供や、大学生・大学院生などと連携したフィールドワーク型の研究として子供の困難に関する調査なども行っている。

NPO法人ビーンズふくしまでは、困難を抱える子供たちが安心して生きられる環境づくりを目指し、子供たちの「ありのまま」を受け止め、一人一人に寄り添い、自立を支援する取組を行っている。
貧困であるが故に継続された複雑な家庭背景・環境の中で生きている子供たちは、自分たちを取り巻く劣悪な環境に困り感を持つこともなく、それが当たり前だと感じ、周りに助けを求めることもせず、地域から孤立した状態で生活していることが多い。このような状態が長期に及ぶと、子供たちは将来に生きる希望を見出せず、自立に向かうエネルギーが低下した状態に陥る。同法人は、子供が自立に向かう力を養い、貧困の連鎖を断ち切ることを目的に、家庭訪問の対象地域に、学校をはじめとする子供に関わる各機関や行政機関等、民間から行政までを含む支援チームを形成して情報共有やケース会議を行い、子供の状況に対応した適切な支援が提供できる地域資源との連携や地域の基盤整備等を実施している。
また、より多くの子供たちに適切な支援を届けるため、貧困の中で生きる子供たちの実状を発信し、子供たちが生きるエネルギーを蓄積して自立に向かうために必要な支援のノウハウを提供する取組も行っている。
5 特に配慮が必要な子供・若者の支援
(1)自殺対策(文部科学省、厚生労働省、関係府省庁)
30歳未満の若者の平成28(2016)年の死因をみると、10歳以上で自殺が一定の割合を占めるようになり、20歳代では約半数となっている(第3-36図)。また、自殺者について、厚生労働省・警察庁「平成29年中における自殺の状況」(平成30年3月)によると、平成29(2017)年、30歳未満の自殺者数は2,780人に上る。原因をみると「うつ病」などの健康問題が多く、19歳以下では「学業不振」や「進路に関する悩み」も挙げられている(第3-37図)。近年、自殺者数は減少しているものの、若年層の自殺対策は依然として課題である。
政府では、これまで「自殺対策基本法」(平18法85)に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として「自殺総合対策大綱」(以下「自殺対策大綱」という。)が平成19(2007)年6月に策定され、平成24(2012)年にその見直しが行われている。平成24年に見直された自殺対策大綱は、おおむね5年を目途に見直すこととされていたため、平成28年から見直しに向けた検討に着手し、新たな自殺対策大綱の案の作成に資するよう「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」(以下「検討会」という。)が開催された。検討会では、我が国の自殺死亡率(10万人当たりの自殺者数)は、近年、全体としては低下傾向にあるものの、19歳以下は平成10(1998)年以降おおむね横ばいであり、20歳代や30歳代は他の年代に比べてピーク時からの減少率が低く、また、前述のとおり若年層の死因に占める自殺の割合は高いという現状を踏まえ、若年層の自殺対策に関する議論が活発に行われ、平成29年5月に報告書が取りまとめられた。報告書においては、ICTも活用した若者へのアウトリーチ策の強化を含め「若者の自殺対策の更なる推進」等が提言された。報告書等を踏まえて、新たな大綱の素案がまとめられ、パブリックコメントを経て、平成29年7月25日、自殺総合対策会議において大綱の案が策定され、同日、閣議決定された。
新たな大綱では、重点施策の一つとして、「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」ことが掲げられた。具体的な対策として、「いじめを苦にした子どもの自殺の予防」、「学生・生徒等への支援の充実」、「SOSの出し方に関する教育の推進」などが挙げられている。特に若者は、自発的には相談や支援につながりにくい傾向がある一方で、インターネットやSNS上で自殺をほのめかしたり、自殺の手段等を検索したりする傾向もあると言われている。そのため、ICTを活用した若者へのアウトリーチ策の強化をはじめ、インターネット(スマートフォン、携帯電話等を含む。)を活用した支援策に係る情報提供の強化などにも取り組んでいくこととなっている。
COLUMN NO.5
座間市における事件の再発防止に関して
平成29(2017)年10月に座間市で発覚した9名の方々が亡くなられた事件は、若者が日常的に利用するSNSを利用し、自殺願望を投稿するなどした被害者の心の叫びに付け込んで、加害者が、言葉巧みに誘い出し殺害したという極めて卑劣な手口によるものとみられる。事件を受けて、政府は、「座間市における事件の再発防止に関する関係閣僚会議」を開催し、関係省庁における従来の取組を検証した上で、再発防止策を同年12月19日に取りまとめた。
再発防止策では、SNS等における自殺に関する不適切な書き込みへの対策として、自殺の誘引情報等の削除等に対する事業者・利用者の理解の促進、事業者・関係者による削除等の強化が掲げられている。このほか、インターネットを通じて自殺願望を発信する若者の心のケアに関する対策として、SNS等のICTを活用した相談機能の強化、若者の居場所づくりの支援等を進めていくことが掲げられている。今後、政府一体となって、検索事業者やSNS事業者、自殺対策関係NPO法人などの関係者の協力を得つつ、本再発防止策に迅速に取り組むこととし、その推進状況について確実に検証を行うとともに、検証の結果により新たに把握された課題について自殺対策大綱の見直し等に反映すること等とされている。

児童生徒の自殺予防のための取組として、文部科学省では、児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議30を開催し、自殺予防教育の在り方について調査研究を行っている。平成26(2014)年度には、学校における自殺予防教育導入の手引きである「子供に伝えたい自殺予防」、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂版及び「子供の自殺等の実態分析」について審議のまとめを作成し、これらの審議のまとめについて、各教育委員会等の生徒指導担当者や校長・教頭などの管理職を対象に「児童生徒の自殺予防に関する普及啓発協議会」を開催し、周知を図っている。
また、長期休業(夏・冬・春休み)明けにおいて、児童生徒の自殺が多く発生していることを受け、長期休業前、期間中、終了前における見守り等を各学校に依頼している。
さらに、子供の悩みや不安を受け止めて相談に当たることが大切であることから、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の拡充など教育相談体制の充実を図っている(第2章第2節2(3)「学校における相談体制の充実」を参照)。
(2)外国人の子供や帰国児童生徒の教育の充実等(文部科学省)
帰国児童生徒の人数は、平成28(2016)年度、小・中・高等学校等合わせて12,602人であった(第3-38図)。また、日本語指導が必要な外国人の子供は、平成20(2008)年度を境に減少していたが、平成26(2014)年度以降再び増加しており、ポルトガル語や中国語を母語とする者が多くなっている(第3-39図)。このような子供たちが、就学の機会を逸することのないよう、就学支援が重要である。
外国人には就学義務が課されていないが、その保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)や児童の権利条約に基づき、無償で受け入れている。これにより、教科書の無償配布や就学援助を含め、日本人と同一の教育を受ける機会を保障している。
文部科学省は、外国人の子供の公立学校への受入れや帰国児童生徒を含む日本語指導が必要な児童生徒の教育の充実に当たって、以下の取組を行っている31。
- 日本語能力に課題のある児童生徒への指導の充実のため、これまで都道府県からの申請に応じて、毎年度の予算の範囲内で措置していた教員の加配定数について、対象児童生徒の数に応じて教員数を算定できるよう、基礎定数化の実施(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律を一部改正、平成29年4月施行)
- 日本語指導者などに対する実践的な研修
- 教員を中心とする関係者が外国人児童生徒に対し適応指導や日本語指導を行える環境作りを支援するための、「日本語能力測定方法」の活用促進
- 帰国・外国人児童生徒の受入促進や、日本語指導の充実、支援体制の整備に関する地方公共団体の取組を支援する補助事業の実施
- 就学に課題を抱えている外国人の子供を対象に、公立学校や外国人学校などへの就学に必要な支援を学校外において実施する地方公共団体の取組を支援する補助事業の実施
- 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施の促進(学校教育法施行規則を一部改正、平成26年4月施行)
(3)定住外国人の若者の就職の促進等(内閣府、厚生労働省)
政府では、「日系定住外国人施策の推進について」(平成26年3月日系定住外国人施策推進会議決定)に基づき、「日本語能力が不十分である者が多い日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れ、社会から排除されないようにする」ことを施策の基本的な考え方として、関係府省の連携の下、日本語学習、子供の教育、就労、社会生活などの分野に関して各種の施策を推進している32。
日系人などの外国人集住地域のハローワークでは、日系人を中心とした定住外国人の若者の就職を促進するため、就業支援ガイダンスを実施するとともに、ガイダンス出席者を対象とした職業意識啓発指導や職業指導といった個別の就職支援を実施している。また、早期の就職を実現させるため、必要に応じて担当制による個々の求職者のニーズを踏まえた綿密な支援を行っている。
また、都道府県においては、訓練の受講に当たって一定の日本語能力を有する者に対して、その日本語能力などに配慮した職業訓練が実施されている。
(4)性同一性障害者等に対する理解促進(文部科学省、法務省)
法務省の人権擁護機関では、「子どもの人権を守ろう」や「外国人の人権を尊重しよう」のほか、「性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう」、「性自認を理由とする偏見や差別をなくそう」などを啓発活動の強調事項として掲げ、シンポジウム・講演会の開催や啓発冊子の配布を行っているほか、人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」を作成し、各法務局等における貸出しやインターネットによる配信を行うなど、各種啓発活動を実施している(第3-40図)。

文部科学省は、性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒への対応について、学級担任や管理職をはじめ、養護教諭、スクールカウンセラー、教職員が協力して、実情を把握した上で相談に応じるとともに、必要に応じて関係医療機関とも連携するなど、子供の心情に十分配慮した教育相談の徹底を関係者に対して依頼している。また、平成28(2016)年4月に、性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施についての教職員向け資料を公表し、全国の教育委員会等に周知した。平成29(2017)年度においても、各都道府県・政令市教育委員会の人権教育担当指導主事等を対象に、引き続き当該資料の周知を図った。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000180269.pdfを参照。
なお、重点的かつ集中的な指導が必要な在院者に対しては、重点指導施設において指導を実施している。また、薬物依存からの回復には、保護者の役割が重要であることから、重点指導施設では、薬物依存症に関する知識の付与、子供との良好なコミュニケーションの在り方等に関する保護者向けプログラムを実施している。